JP2007113514A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】空燃比制御を不安定にすることなく、十分なパージ処理を実行する。
【解決手段】エンジンECUは、クルーズコントロール中であると(S100にてYES)、基本パージ率pgr_baseからクルーズ時パージ補正量pgr_cc分だけ徐々に多くなるように実行パージ率pgrを算出するステップ(S130〜S170)と、クルーズコントロール中でなくなると(S180にてNO)、目標パージ率の最終値pgr(tar_fin)からクルーズ時パージ補正量pgr_cc分だけ徐々に少なくなるように実行パージ率pgrを算出するステップ(S190〜S230)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図3
【解決手段】エンジンECUは、クルーズコントロール中であると(S100にてYES)、基本パージ率pgr_baseからクルーズ時パージ補正量pgr_cc分だけ徐々に多くなるように実行パージ率pgrを算出するステップ(S130〜S170)と、クルーズコントロール中でなくなると(S180にてNO)、目標パージ率の最終値pgr(tar_fin)からクルーズ時パージ補正量pgr_cc分だけ徐々に少なくなるように実行パージ率pgrを算出するステップ(S190〜S230)とを含む、プログラムを実行する。
【選択図】図3
Description
本発明は、内燃機関の制御に関し、特に、燃料蒸発ガスのパージ処理についての制御に関する。
一般的に、内燃機関を搭載した車両においては、燃料タンク等からの蒸発燃料(ベーパ)をキャニスター等の捕集装置に一時的に吸着し、内燃機関の運転状態に応じてキャニスター等の捕集装置に吸着されていた燃料蒸発ガスをパージして内燃機関の吸気系に導入することにより、燃料蒸発ガスが大気に放散されることを防止している。
このように、燃料蒸発ガスをパージして内燃機関の吸気系に導入するパージ処理の実行時においては、パージされる燃料蒸発ガスの濃度、いわゆるパージガス濃度とその流量とに依存するパージ燃料量がインジェクタから噴射される燃料量に加えて内燃機関に導入される。この結果、空燃比の変動を生じ燃焼が悪化することから、このようなパージ処理を実行する際には、燃料噴射量の補正を実行して、内燃機関の性能の低下やエミッションの悪化という問題を避けることが要求される。
このパージ実行時には、吸入空気量に対するパージ流量の割合が一定になるよう、キャニスタと吸気通路との間のパージ通路に介装したパージ制御バルブのバルブ開度を制御するとともに、排気系に設けた空燃比センサからの出力によって燃料噴射量を補正制御し、空燃比の目標空燃比からのずれを補正するようにしている。
特開平10−115241号公報(特許文献1)は、パージ制御バルブの製造ばらつきや経年変化による流量特性変化を補償し、蒸発燃料混合気流量の変動による空燃比制御性の悪化を防止することができるエンジンの蒸発燃料処理装置を開示する。このエンジンの蒸発燃料処理装置は、燃料タンクからの蒸発燃料を貯溜するキャニスタと吸気系とを連通するパージ通路にパージ制御バルブを介装し、このパージ制御バルブのバルブ開度を制御して蒸発燃料混合気をパージするエンジンの蒸発燃料処理装置であって、パージ制御バルブに対する制御指令値の低開度域における無効分を、運転領域毎の空燃比の変化に基づいて学習補正する手段と、パージ制御バルブに対する制御指令値を、吸入空気量に対する蒸発燃料混合気のパージ流量を一定とするための基本値と、学習補正した無効分とに基づいて設定する手段とを備える。
特開平10−115241号公報
しかしながら、上述の特許文献1に開示された蒸発燃料処理装置においても、従来のパージ処理と同様に、燃料タンクの内部で発生した蒸発燃料は一時的にキャニスタに吸着保持され、キャニスタに保持された蒸発燃料は大気の吸入時にキャニスタに吸気負圧を導入することにより、吸入空気とともに吸気通路に導入されているにすぎない。このため、エンジンの種類(特に吸気負圧の小さい吸気系を有するもの)やエンジンの運転状態によっては、十分な負圧が発生しないで、適切なパージ処理が実行できないで、蒸発燃料が大気中に開放される可能性もあった。さらに、このような事態を回避するために、たとえば運転者のアクセルペダル開度が大きくなって新規空気量が増大する過渡応答に対応させてパージ量を増やすと、実際に内燃機関に導入されるパージ量には遅れ時間が生じるので、空燃比制御が不安定になるという問題があった。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、空燃比制御を不安定にすることなく、十分なパージ処理を実行することができる内燃機関の制御装置を提供することである。
第1の発明に係る制御装置は、燃料蒸発ガスのパージ処理を実行する内燃機関を制御する。この制御装置は、車両制御システムからの要求に応じて、吸入空気量を算出するための算出手段と、算出された吸入空気量に応じて、パージ流量を算出するためのパージ流量算出手段と、空燃比を予め定められた値に制御するように、算出されたパージ流量に応じて、燃焼噴射量を補正するための手段とを含む。
第1の発明によると、車両制御システムとして、たとえば、クルーズコントロール機能を有し、クルーズコントロール機能からの要求による吸入空気量の過渡変化は、運転者のアクセルペダル開度からの要求による吸入空気量の過渡変化よりも、緩やかである。吸入空気量の過渡変化が緩やかであると、吸入空気量の変化による新規空気量の変化よりもパージ量の変化が遅れても、空燃比制御が不安定にならない(目標値から乖離しない)。このため、車両制御システムのクルーズコントロール機能が実行されているときには、そうでないときよりも、パージ流量を増大させる。その結果、空燃比制御を不安定にすることなく、十分なパージ処理を実行することができる内燃機関の制御装置を提供することができる。
第2の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、算出手段は、運転者により指示された車速を一定に保持するクルーズコントロール機能に基づいて要求トルクを算出し、要求トルクに基づいて、吸入空気量を算出するための手段を含む。
第2の発明によると、クルーズコントロール機能からの要求による吸入空気量の過渡変化は、運転者のアクセルペダル開度からの要求による吸入空気量の過渡変化よりも、緩やかであるので、空燃比制御が不安定にならない。このため、パージ量を増大させることができる。
第3の発明に係る制御装置においては、第1の発明の構成に加えて、算出手段は、運転者によるアクセルペダル操作量から算出された要求トルクおよびクルーズコントロール機能から算出された要求トルクとが調停された結果に基づいて算出された要求トルクに基づいて、吸入空気量を算出するための手段を含む。
第3の発明によると、トルクディマンド方式の車両制御システムにおいて、アクセルペダル操作量から算出された要求トルクおよびクルーズコントロール機能から算出された要求トルクとが調停(いずれか一方を優先させたり、中間値を採用したりする)された結果に基づいて、吸入空気量を算出できる。
第4の発明に係る制御装置においては、第1〜3のいずれかの発明の構成に加えて、パージ流量算出手段は、クルーズコントロール機能が作動しているときは、クルーズコントロール機能が作動していないときよりも、パージ流量が多くなるように算出するための手段を含む。
第4の発明によると、クルーズコントロール機能からの要求による吸入空気量の過渡変化は、運転者のアクセルペダル開度からの要求による吸入空気量の過渡変化よりも、緩やかであり、パージ量の変化が遅れても、空燃比制御が不安定にならないので、クルーズコントロール機能が実行されているときには、そうでないときよりも、パージ流量を増大させることができる。
第5の発明に係る制御装置においては、第1〜4のいずれかの発明の構成に加えて、車両制御システムは、トルクディマンド方式により車両を制御するシステムである。
第5の発明によると、トルクディマンド方式により車両を制御するので、車両の制御に直接作用する物理量である内燃機関のトルクを制御の基準値とすることにより、常に一定の操縦感覚を維持できる等、運転性を向上させることができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがってそれらについての詳細な説明は繰返さない。
図1に、本実施の形態に係る制御装置で制御されるエンジン10の全体構成図を示す。
エンジン10は、シリンダブロック100の上方にシリンダヘッド110が覆着されてなり、シリンダブロック100に形成されたシリンダ100A内にピストン120が摺動自在に保持されている。シリンダ100A内におけるピストン120の上下往復動がクランク軸130の回転運動に変換され、トルクコンバータ310および変速機構300(トルクコンバータ310および変速機構300を自動変速機と記載する場合がある)等へと伝達されるようになっている。
エンジン10は、シリンダブロック100の上方にシリンダヘッド110が覆着されてなり、シリンダブロック100に形成されたシリンダ100A内にピストン120が摺動自在に保持されている。シリンダ100A内におけるピストン120の上下往復動がクランク軸130の回転運動に変換され、トルクコンバータ310および変速機構300(トルクコンバータ310および変速機構300を自動変速機と記載する場合がある)等へと伝達されるようになっている。
クランク軸130は、エンジン10の始動時にはフライホイールを介してスタータと接続される。エンジン10と変速機構300との間には、トルクコンバータ310が設けられる。なお、変速機構300は、車速とスロットル開度とにより自動的にギヤ段を変速する変速機構であって、歯車式の自動変速機構であっても、ベルト式等の無段変速機構であってもよい。以下においては、ギヤ段を有する歯車式の自動変速機構であるとして説明する。
ピストン120の上方にはシリンダブロック100、シリンダヘッド110を室壁として燃焼室1000が形成され、燃焼室1000において燃料と空気との混合気の燃焼が行なわれ、その爆発力によりピストン120を上下往復動せしめる。混合気への点火はシリンダヘッド110を貫通し燃焼室1000内に突出して設けられた点火プラグ150により行なわれる。
混合気を構成する空気の供給は、シリンダヘッド110およびこれと接続された吸気管内部に形成された吸気通路1010により行なわれる。また、燃焼室1000からの排気は排気通路1020により行なわれる。シリンダヘッド110には、吸気通路1010と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える吸気バルブ160、排気通路1020と燃焼室1000との間の連通と遮断とを切り換える排気バルブ170が取り付けられている。
吸気管内にはフラップ状のスロットルバルブ190が設けられ、その開度に応じて吸気通路1010内の空気流が調整される。
混合気を構成する燃料の供給は、電磁式のインジェクタ210により行なわれる。このインジェクタ210は吸気通路1010を貫通して設けられ、先端ノズル部から吸気通路1010内(吸気通路1010または/および吸気ポート内)に燃料を噴射するようになっている。なお、このインジェクタ210の代わりにあるいは加えて、燃焼室120内に燃料を直接噴射するインジェクタを設けるようにしてもよい。
インジェクタ210への燃料供給は、燃料タンク250から吸い上げた燃料をフィードポンプ240により昇圧して供給される。このフィードポンプ240は電動ポンプである。
また、点火プラグ150、スロットルバルブ190、インジェクタ210等のエンジン10の各部を制御するエンジンコントロールコンピュータ(以下、エンジンECU(Electronic Control Unit)と記載する)60が設けられている。エンジンECU60は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等からなる一般的な構成のもので、各種センサからの検知信号等に基づいて、点火プラグ150を作動せしめ、スロットルバルブ190に制御信号を出力してスロットルバルブ190の開度(スロットル開度)を調整し、インジェクタ210に、制御信号により通電し所定のタイミングで所定時間、インジェクタ210のノズルを開く。
エンジンECU60に入力するセンサには、エアフローメータ510、クランク角センサ520、A/Fセンサ530、スロットル開度センサ540、アクセル開度センサ550、車速センサ560、ブレーキセンサ570、冷却水温センサ等がある。
エアフローメータ510は、吸気通路1010内を流通する空気流量を測定する。クランク角センサ520は、エンジン回転数NEを検知するためのパルス信号を出力する、A/Fセンサ530は、排気通路1020内の空燃比を測定する。スロットル開度センサ540は、スロットルバルブ190の開度を検知する。アクセル開度センサ550は、アクセルペダル420の開度(踏込み量)を検知する。車速センサ560は、車速(車輪の回転)を検出するためのパルス信号を出力する。ブレーキセンサ570は、ブレーキペダル430の踏込みを検知する。冷却水温センサは、エンジン10の温度を代表するエンジン冷却水温を検出する。
エンジンECU60は、エアフローメータ510等によって検知された吸入空気量に基づいて燃焼噴射量を制御する。このとき、エンジンECU60は、各センサからの信号に基づいて、最適な燃焼状態になるように、エンジン回転数およびエンジン負荷に応じた噴射量と噴射時期とを制御する。また、エンジンECU60は、クランク角センサ520やカムポジションセンサ等によって検知された信号(ノッキングセンサ等も含む)に基づいて、最適な点火時期になるように点火時期制御が行なわれる。このような制御により、エンジン10の高出力化および低エミッション化の両立を実現している。
一方、燃料タンク250に発生する燃料蒸発ガスを捕集する捕集容器であるキャニスタ1230が、ベーパ通路1260を介して燃料タンク250に接続されており、さらにキャニスタ1230はそこに捕集された燃料蒸発ガスをエンジン10の吸気通路1010に供給するためのパージ通路1280に接続されている。そして、パージ通路1280は、吸気通路1010のスロットルバルブ190下流に開口されたパージポート1290に連通されている。キャニスタ1230の内部には、周知のように、燃料蒸発ガスを吸着する吸着剤(活性炭)が充填されており、パージ中にキャニスタ1230内に逆止弁を介して大気を導入するための大気通路1270が設けられている。さらに、パージ通路1280には、パージ量を制御するパージ制御弁1250(以下、VSV(Vacuum Switching Valve)と記載する場合がある)が設けられており、このパージ制御弁1250の開度がエンジンECU60によりデューティ制御されることで、キャニスタ1230内でパージ処理される燃料蒸発ガス量、ひいてはエンジン10に導入される燃料量(以下、パージ量と記載する。)が制御されるように構成されている。
クルーズコントロールECU62は、運転者がアクセルペダル420を操作することなく、このエンジン10が搭載された車両の車速が一定になるように、エンジン10のトルクを制御することを、エンジンECU60に要求する。
このクルーズコントロールECU62においては、運転者のアクセルペダル操作とは独立にエンジン出力トルクを制御することが可能なエンジン10と自動変速機とを備えた車両において、運転者のアクセルペダル操作量や車両の運転条件等に基づいて算出された正負の目標駆動トルクを、エンジントルクと自動変速機の変速ギヤ比で実現する「駆動力制御」という考え方に基づいて車両を制御する。なお、「駆動力要求型」や「駆動力ディマンド型」や「トルクディマンド方式」などと呼ばれる制御手法も、これに類する。
トルクディマンド方式のエンジン制御においては、アクセル操作量とエンジン回転数と外部負荷とに基づき、エンジンの目標トルクを算出し、この目標トルクに応じて燃料噴射量と供給空気量とを制御する。あるいは、クルーズコントロールECU62からの目標トルクに応じて燃料噴射量と供給空気量とを制御する。
このようなトルクディマンド方式のエンジン制御においては、実際は、要求出力トルクに対し、エンジン10やパワートレーン系(トルクコンバータ310、変速機構300等)でロスとなる摩擦トルクなどの損失負荷トルクを加えて、目標トルクとして算出し、これを実現するように燃料噴射量と供給空気量を制御することになる。
このトルクディマンド方式のエンジン制御によると、車両の制御に直接作用する物理量であるエンジンのトルクを制御の基準値とすることにより、常に一定の操縦感覚を維持できる等、運転性を向上させることができる。
このようなトルクディマンド方式において、クルーズコントロールは、車両の運転を支援するという機能を有する。
図2を参照して、本実施の形態に係る車両制御システム2000の全体ブロックについて説明する。なお、制動系、操舵系、サスペンション系などは、図示を省略している。
車両制御システム2000は、アクセル操作入力検知部2100と、PDRM(Power Train Driver Model)2200と、PTM(Power Train Manager)2400、エンジン制御部2600および変速制御部2700とから構成される。アクセル操作入力検知部2100は、図1のアクセル開度センサ550に相当する。
アクセル操作入力検知部2100は、運転者がエンジントルクの要求値を入力する、最も一般的なデバイスであるアクセルペダル420の開度を検知する。ここで、検知されたアクセルペダル開度(以下、アクセル開度を記載する場合がある)は、PDRM2200に出力される。
PDRM2200は、ドライバモデル2210と調停部2220とを含む。アクセル操作入力検知部2100で検知されたアクセル開度に基づいて、エンジンの基準スロットル開度を、マップや関数から算出する。このマップや関数は、非線形なものである。調停部2220は、たとえば上述したクルーズコントロールECU62などの運転支援部2300において算出されたエンジンの要求スロットル開度と、ドライバモデル2210にて算出された基準スロットル開度とを調停する。なお、調停部2220は、たとえば、そのときの車両の状態に基づいて、運転支援部2300において算出された要求スロットル開度と、ドライバモデル2210にて算出された基準スロットル開度とのいずれか一方を優先させたりする関数や、いずれか大きい開度を選択する関数や、いずれか小さい開度を選択する関数等で実現される。
PTM2400は、調停部2410と、エンジントルク要求部2420と、自動変速機のギヤ段決定部2430とを含む。
調停部2410は、たとえばVSC(Vehicle Stability Control)やVDIM(Vehicle Dynamics Integrated Management)などのブレーキ制御・車両運動補償部2500において算出されたエンジンの要求スロットル開度と、PDRM2200にて算出された要求スロットル開度とを調停する。なお、調停部2410も調停部2220と同様に、たとえば、そのときの車両の状態に基づいて、ブレーキ制御・車両運動補償部2500において算出されたエンジンの要求スロットル開度と、PDRM2200にて算出された要求スロットル開度とのいずれか一方を優先させたりする関数や、いずれか大きい開度を選択する関数や、いずれか小さい開度を選択する関数等で実現される。調停部2410で調停された要求スロットル開度に基づいて、エンジントルク要求部2420において要求エンジントルクTEREQおよび要求エンジン回転数NEREQが算出され、ギヤ段決定部2430においてギヤ段が決定される。これらについての詳細は後述する。
エンジン制御部2600(図1のエンジンECU60に相当する)は、PTM2400から入力された、要求エンジントルクTEREQおよび要求エンジン回転数NEREQに基づいてエンジン10を制御する。変速制御部2700は、PTM2400から入力された、ギヤ段に基づいて自動変速機を制御する。
本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60は、調停部2220において、運転支援部2300(図1のクルーズコントロールECU62に相当する)にて算出された要求スロットル開度を、ドライバモデル2210にて算出された基準スロットル開度よりも優先させる場合に(より具体的には、クルーズコントロールECU62により、クルーズコントロールが実行されている場合に)、適正なパージ量(パージ率)を設定することが特徴である。特に、クルーズコントロールが実行されている場合には、そうでない場合よりも、より多くのパージ量を処理する。
なお、以下の説明では、トルクディマンド方式において運転者以外によるトルク要求のとして、クルーズコントロールを例示として説明する。本発明は、このクルーズコントロールに限定されるものではない。
図3を参照して、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60により実行されるプログラムの制御構造について説明する。なお、以下に説明するプログラムは、予め定められたサイクルタイムt(tはたとえば8msec程度である場合が多い)で繰り返し実行される。
ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、エンジンECU60は、クルーズコントロール中であるか否かを判断する。このとき、エンジンECU60は、図1のクルーズコントロールECU62からの要求信号、図2の調停部2220における調停の状態に基づいて、クルーズコントロール中であるか否かを判断する。クルーズコントロール中であると(S100にてYES)、処理はS110へ移される。もしそうでないと(S100にてNO)、処理はS230へ移される。
S110にて、エンジンECU60は、目標パージ率変更時間T(基本パージ率から目標パージ率に変更するのに要する時間であって、この時間Tが長いほど緩やかな変化になる)を決定する。この目標パージ率変更時間Tについては、予め設定されて変更されない値であっても、車両の状態に応じて変更されるものであってもよい。
S120にて、エンジンECU60は、プログラム処理上必要な定数NをN=目標パージ率変更時間T/サイクルタイムtにより算出する。なお、Nは2以上の整数として算出される。S130にて、エンジンECU60は、プログラム処理上必要な変数Iを初期化(I=1)する。
S140にて、エンジンECU60は、実行パージ率pgrを、基本パージ率pgr_base+(pgr_cc/N)×Iにより算出する。なお、パージ率は、パージ流量/全吸気量で表わされる比率である。また、基本パージ率pgr_baseは、予めエンジンECU60内のメモリ(RAM、ROM)にマップとして記憶されている。さらに、クルーズ時パージ補正量pgr_ccは、予めエンジンECU60内のメモリに記憶されていたり、エンジン10の状態により算出されたりする。
S150にて、エンジンECU60は、変数Iに1を加算する。S160にて、エンジンECU60は、変数Iが定数Nよりも小さいか否かを判断する。変数Iが定数Nよりも小さいと(S160にてYES)、処理はS140へ戻される。もしそうでないと(S160にてNO)、処理はS170へ移される。なお、S160にてNOのときとは、S140およびS150の処理が繰り返し実行されて変数Iが1ずつ加算されていき、変数Iが定数Nに等しくなったときである。
S170にて、エンジンECU60は、実行パージ率pgrを、目標パージ率の最終値pgr(tar_fin)として、基本パージ率pgr_base+クルーズ時パージ補正量pgr_ccにより算出する。
S180にて、エンジンECU60は、クルーズコントロール中であるか否かを判断する。クルーズコントロール中であると(S180にてYES)、処理はS170へ戻される。もしそうでないと(S180にてNO)、処理はS190へ移される。
S190にて、エンジンECU60は、変数Iを初期化(I=1)する。S200にて、エンジンECU60は、実行パージ率pgrを、目標パージ率の最終値pgr(tar_fin)−(pgr_cc/N)×Iにより算出する。なお、クルーズコントロールが開始されたときと同じ変化率(ただし、増加ではなく減少)で、クルーズコントロールが終了したときにパージ率を減少させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。パージ率を増加させるときの変化率とパージ率を減少させるときの変化率とを別に設定するようにしてもよい。このときには。たとえば、パージ率を増加させるときに用いる定数Nと、パージ率を減少させるときに用いる定数Nとを、異なるようにすればよい。
S210にて、エンジンECU60は、変数Iに1を加算する。S220にて、エンジンECU60は、変数Iが定数Nよりも小さいか否かを判断する。変数Iが定数Nよりも小さいと(S210にてYES)、処理はS200へ戻される。もしそうでないと(S210にてNO)、処理はS230へ移される。なお、S220にてNOのときとは、S200およびS210の処理が繰り返し実行されて変数Iが1ずつ加算されていき、変数Iが定数Nに等しくなったときである。
S230にて、エンジンECU60は、実行パージ率pgrを、基本パージ率pgr_baseとする。
以上のような構造およびフローチャートに基づく、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECU60の動作について、図4および図5を用いて説明する。なお、図4が本発明に対応し、図5が従来技術に対応する。
エンジン10が運転中で、トルクディマンド方式でエンジン10から発生するトルクが要求される。車両の運転者のアクセルペダル操作によらないで車両を設定速度で走行させるクルーズコントロールが実行されると(S100にてYES)、目標パージ率を変化さる時間Tが決定される。定数Nが算出され、変数Iが初期化される。実行パージ率pgrが、基本パージ率pgr_base+(pgr_cc/N)×Iにより算出される。すなわち、図4(D)に示すように、クルーズコントロール中は、基本パージ率pgr_baseよりも大きな実行パージ率pgrが設定される。さらに、その実行パージ率pgrは、基本パージ率pgr_baseからクルーズ時パージ補正量pgr_cc分だけ徐々に増加される。
図4(B)の点線および図5(B)の実線に示すように、クルーズコントロールが実行されていないときの運転者のアクセル操作は、その変化の度合いが大きい。このため、新規空気量が図4(C)の点線および図5(C)の実線に示すように、短い時間で大きく変動する。この新規空気量の変動に対応するように(目標パージ率を一定としても)、図4(E)の点線および図5(E)の実線に示すように、パージVSV制御量(デューティ)が短い時間で大きく変動する。このため、図4(F)の点線および図5(F)の実線に示すように、エンジン10に吸入されるパージ流量が短い時間で大きく変動する。さらに、このパージ流量の変動に対して、この変動があっても空燃比を一定にするために、図4(G)の点線および図5(G)の実線に示すように、インジェクタ210からの燃料噴射量が減量補正されるが、その減量値が短い時間で大きく変動する。このため、図4(H)の点線および図5(H)の実線に示すように、空燃比A/Fが安定しない。
一方、クルーズコントロールが実行されているときの(アクセル操作に対応するスロットル開度)は、その変化の度合いが小さい。このため、新規空気量が図4(C)の実線に示すように、短い時間で大きく変動しないでゆっくりと変化する。この新規空気量の変動に対応するように、図4(D)に示すように目標パージ率を(徐々に)増加させても、図4(E)の実線に示すように、パージVSV制御量(デューティ)が短い時間で大きく変動しないでゆっくり変化する。このため、図4(F)の実線に示すように、エンジン10に吸入されるパージ流量が短い時間で大きく変動しないでゆっくりと増加する。さらに、このパージ流量の変動に対して、この変動があっても空燃比を一定にするために、図4(G)の実線に示すように、インジェクタ210からの燃料噴射量が減量補正されるが、その減量値が短い時間で大きく変動しないで安定している。このため、図4(H)の実線に示すように、空燃比A/Fが安定する。
これは、運転者のアクセルペダルの操作に対応してスロットルバルブの開度が決定される場合には、運転者がアクセルペダルを一定の割合(時間変化率)でゆっくり踏み増ししたり、ゆっくり戻したりすることは容易ではない。その一方、クルーズコントロール等の車両の制御システムからのトルクディマンド要求によると、スロットルバルブの開度に対応するアクセルペダルの開度の時間変化率は、運転者による操作に比較して安定している。
このスロットルバルブ開度により変化する新規空気量の変化によりパージ流量が変化するが、吸気管にはある程度の容積があるので、パージ流量の変化は、新規空気量の変化よりも遅れて発生する。この結果、空燃比制御が不安定になる(目標空燃比に収束しないで上下に変動する)。このように、空燃比制御の不安定要因をできるだけ回避するためには、クルーズコントロールが実行されていないときには、基本パージ量でパージ処理を行なわざるを得ない。クルーズコントロールが実行されているときには、たとえ上記のような遅れ時間があるとしても、過渡変化が緩やかであるので、空燃比制御が不安定になりにくい。さらに、パージ流量を増加させても(パージ率を増加させても)、過渡変化が緩やかであるので、空燃比制御が不安定になりにくい。そのため、本実施の形態においては、クルーズコントロールが実行中であると、パージ率を増加させて、かつ、空燃比(A/F)を安定化できる。
なお、クルーズコントロールが中止されると、パージ率を減少させるが、このときには、パージ率を増加させたときと同じように、パージ率を徐々に減少させる。
以上のようにして、本実施の形態に係る制御装置であるエンジンECUによると、車両の運転者以外からのスロットルバルブの開度を変化させるような要求があって、新規空気量の変化が緩やかであるときには、パージ率を上昇させるようにした。これにより、空燃比制御を不安定にすることもなく、適正にパージ処理を実行することができる。
なお、上述した実施の形態においては、クルーズコントロールを、トルクディマンド方式において車両の運転者以外によるスロットルバルブの開度を変化させる運転支援制御の一例として説明したが、本発明はこれに限定されない。クルーズコントロールではなく、他の運転支援制御によりスロットルバルブの開度が変化する場合であってもよい。さらに、車両の速度が、ある速度(たとえば、40km/h)以上であると、エンジン10は比較的安定に運転されている。このため、車速に対して適宜な速度範囲を設定して、その速度範囲内のときには、上述したようにパージ率を上昇するようにしてもよい。これは、空燃比が不安定になって、エンジン10の回転数が低下するときであっても、車両の速度が、ある速度以上であると、駆動輪によりエンジン10を被駆動状態にできるので、エンジン10の回転数の低下(落ち込み)は回避できるということでもある。
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
10 エンジン、60 エンジンECU、62 クルーズコントロールECU、150 点火プラグ、160 吸気バルブ、170 排気バルブ、190 スロットルバルブ、210 インジェクタ、300 変速機構、310 トルクコンバータ、420 アクセルペダル、430 ブレーキペダル、520 クランク角センサ、530 A/Fセンサ、540 スロットル開度センサ、550 アクセル開度センサ、560 車速センサ、570 ブレーキセンサ、1000 燃焼室、1010 吸気通路、1020 排気通路、2000 車両制御システム、2100 アクセル操作検知部、2200 PDRM、2210 ドライバモデル、2220 調停部、2300 運転支援部、2400 PTM、2410 調停部、2420 エンジントルク要求部、2430 ギヤ段決定部、2500 ブレーキ制御・車両運動補償部、2600 エンジン制御部、2700 変速制御部。
Claims (5)
- 燃料蒸発ガスのパージ処理を実行する内燃機関の制御装置であって、
車両制御システムからの要求に応じて、吸入空気量を算出するための算出手段と、
前記算出された吸入空気量に応じて、パージ流量を算出するためのパージ流量算出手段と、
空燃比を予め定められた値に制御するように、前記算出されたパージ流量に応じて、燃焼噴射量を補正するための手段とを含む、内燃機関の制御装置。 - 前記算出手段は、運転者により指示された車速を一定に保持するクルーズコントロール機能に基づいて要求トルクを算出し、前記要求トルクに基づいて、前記吸入空気量を算出するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記算出手段は、運転者によるアクセルペダル操作量から算出された要求トルクおよびクルーズコントロール機能から算出された要求トルクとが調停された結果に基づいて算出された要求トルクに基づいて、前記吸入空気量を算出するための手段を含む、請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
- 前記パージ流量算出手段は、クルーズコントロール機能が作動しているときは、前記クルーズコントロール機能が作動していないときよりも、前記パージ流量が多くなるように算出するための手段を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
- 前記車両制御システムは、トルクディマンド方式により車両を制御する、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御装置。
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