JP2007107028A - 鋼材 - Google Patents
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Abstract
【課題】小寸法のドライブシャフト等を作製した場合においても、優れた強度や靱性等を確保することが可能で、しかも、切削性も良好な鋼材を提供する。
【解決手段】所定量のC、Si、Mn、S、Al、Bを含有し、好ましくは、Nb、Tiの1種以上、Ni、Crの1種以上をさらに含有する鋼材に対し、高周波焼入れを施す。焼入れが施された後の鋼材の表面は、HVで640〜730を示す。また、HVで392を示す部位に至るまでの表面からの距離を有効硬化層深さt、鋼材の半径をrとするとき、t/rは0.4〜1.0であり、前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγは0.7以上である。
【選択図】図2
【解決手段】所定量のC、Si、Mn、S、Al、Bを含有し、好ましくは、Nb、Tiの1種以上、Ni、Crの1種以上をさらに含有する鋼材に対し、高周波焼入れを施す。焼入れが施された後の鋼材の表面は、HVで640〜730を示す。また、HVで392を示す部位に至るまでの表面からの距離を有効硬化層深さt、鋼材の半径をrとするとき、t/rは0.4〜1.0であり、前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγは0.7以上である。
【選択図】図2
Description
本発明は、例えば、ドライブシャフトの素材として好適な鋼材に関する。
自動車の走行機関を構成するドライブシャフトは、鋼材から作製されるのが一般的である。この種の鋼材には、切削加工等を施すことが比較的容易であることが要求される。その一方で、ドライブシャフトとしての耐久性を確保するべく、捩りトルクを付加した際に破断に至るせん断応力が高いこと、換言すれば、捩り強度が大きいことが必要である。このようなドライブシャフトを得るべく、鋼材として、例えば、JIS−S40C相当材が選定される。
ところで、近年における環境保護への関心の高まりに伴い、CO2やNOx等の排ガス量を低減するべく、自動車の燃費を向上させることが種々検討されている。この観点から、自動車の構成部材の寸法を小さくすることによって軽量化を図ることが試みられている。
同一鋼材から小寸法のドライブシャフトを作製すると、通常、強度等が低下してしまう。このため、小寸法のドライブシャフトを作製した場合であっても、十分な強度等を確保可能な鋼材が希求されている。
この希求に応えるべく、例えば、特許文献1には、構成元素の組成比、表面硬度、マルテンサイト率、硬化深さ比が所定の数値を満足する鋼材でドライブシャフトを構成することが提案されている。
また、特許文献2には、含有Cに対するフェライトの組織面積率、フェライトの結晶粒径が所定値以下である高周波焼入れ用鋼が開示されている。該特許文献2によれば、この高周波焼入れ用鋼は、ドライブシャフトの素材として好適である、とされている。
本発明は上記した技術に関連してなされたもので、部材が小寸法であっても該部材が優れた諸特性を示す鋼材を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係る鋼材は、質量%で、C:0.47〜0.50%、Si:0.15%以下、Mn:0.60〜0.75%、S:0.01〜0.03%、Al:0.01〜0.03%、B:0.002〜0.003%を含有し、且つNが0.008%以下、Oが0.0015%以下であり、
ビッカース硬度で392を示す部位に至るまでの表面からの距離を有効硬化層深さt、半径をrとするとき、t/rが0.4〜1.0であり、
前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγが0.7以上であることを特徴とする。ここで、Siは、測定機器によって測定可能な限界値(測定限界値)以上が含有されていればよい。
ビッカース硬度で392を示す部位に至るまでの表面からの距離を有効硬化層深さt、半径をrとするとき、t/rが0.4〜1.0であり、
前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγが0.7以上であることを特徴とする。ここで、Siは、測定機器によって測定可能な限界値(測定限界値)以上が含有されていればよい。
t/r(硬化層比率)及びt/Rγをこのように設定することにより、硬度及び強度が確保される。硬度が大きい物質は、概ね強度も大きくなるからである。また、靱性も確保され、脆性破壊を起こし難くなる。
しかも、上記した成分・組成比とすることにより、切削性に優れた鋼材とすることもできる。
鋼材には、Nb、Tiのうちの1種以上が含有されていてもよい。これらは、鋼材中に含まれる遊離Nを捕獲する。これによりBNが生成してBが消費することが抑制されるので、Bによる粒界強度・焼き入れ性の向上効果が低減することを回避することができる。
なお、Nbの割合は0.04〜0.07%(質量%)とすればよく、Tiの割合は0.025〜0.04%とすればよい。勿論、0.04〜0.07%のNbと、0.025〜0.04%のTiが同時に存在していてもよい。
また、質量%で0.2%以下のNi、0.25%以下のCrの1種以上が含有された鋼材であってもよい。すなわち、0.2%以下のNiと0.25%以下のCrとが同時に存在していてもよく、いずれか一方のみが存在していてもよい。ここで、Ni又はCrは、測定限界値以上が含有されていればよい。
このような特性を示す鋼材を使用することにより、小寸法であっても強度に優れる部材を作製することが可能となる。この鋼材は、例えば、ドライブシャフトの素材として好適に採用することができる。
本発明によれば、成分、組成比、硬化層比率、有効硬化層深さと全硬化層深さの比を設定して鋼材を構成するようにしている。これにより、強度、特に破断強度に優れ、且つ切削性も良好な鋼材が得られる。
この鋼材は、切削性が良好であり、且つ組成変形能にも富むため、加工を施すことが極めて容易である。このような特性を示す鋼材を使用することにより、小寸法であっても強度に優れる部材を作製することが可能となる。また、靱性に優れるので、加工中に割れが生じ難い。
しかも、この鋼材は破断強度が高いので、長尺な軸部材、例えば、ドライブシャフトの素材として好適である。
以下、本発明に係る鋼材につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1は、ドライブシャフト10の長手方向に沿う全体概略側面図である。このドライブシャフト10は、長尺な中実体であり、その直径は22mmである。
ここで、ドライブシャフト10の材質である鋼材は、鉄及び不純物の他、少なくとも、C、Si、Mn、S、Al、Bを含有する。
不純物としては、N及びOが挙げられる。Nが過剰に存在すると、BとともにBNを形成し、このためにBの焼入れ性向上効果が乏しくなる。これを回避するべく、Nの割合は0.008%(80ppm)以下に設定される。
一方、Oが過剰に存在すると、各種の金属元素と結合して硬質な酸化物が過度に形成され、このためにドライブシャフト10の転動疲労寿命が低下する。これを回避するべく、Oは0.0015%(15ppm)以下に設定される。
Cは、焼入れ・焼戻し処理を施した後のドライブシャフト10の強度や硬度等を確保するための成分であり、その組成比は0.47〜0.50%(数字は質量%、以下同じ)に設定される。0.47%未満であると、強度を確保することが困難となる。また、0.50%よりも多いと、硬度が過度に上昇するので塑性変形加工や切削加工等を施すことが容易でなくなるとともに、粒界脆化に伴って脆性破壊を示すようになるので強度が低下する。特に、冷間加工における変形能が低減する。
Siは、ドライブシャフト10の脱酸に有用な元素であり、該ドライブシャフト10に測定値限界以上0.15%以下の割合で含まれる。0.15%を超えると、硬度が過度に上昇するので塑性変形加工や切削加工等を施すことが容易でなくなる。特に、冷間加工における変形能が低減する。
Mnは、ドライブシャフト10の高周波焼入れ性を向上させる。すなわち、Mnが存在することにより、ドライブシャフト10に対して高周波焼入れを行った場合、焼入れ前に比して硬度が顕著に上昇する。この効果を確実に得るべく、Mnの組成比は、0.60〜0.75%に設定される。0.75%を超えると、硬度が過度に上昇するので塑性変形加工や切削加工等を施すことが容易でなくなる。特に、冷間加工における変形能が低減する。
Sは、Mnとともにドライブシャフト10の組織中でMnSを形成し、これにより該ドライブシャフト10の切削性を向上させる成分である。Sの組成比は、0.01〜0.03%に設定される。0.01%未満では切削性を向上させることが困難であり、0.03%を超えると、特に冷間加工時の変形能が低減する。
Alは、Siと同様に脱酸に寄与する成分である。Alの組成比が0.01%未満では、脱酸効果が乏しい。また、Alが過剰に存在すると、Al2O3等の酸化物系不純物が増加し、その結果、疲労特性、塑性変形加工時の変形能が低下する。このため、Alの上限は、0.03%に設定される。
Bは、粒界強度を向上させる成分である。また、Bが存在することにより、ドライブシャフト10の焼入れ性も向上する。Bの組成比は、0.002〜0.003%(20〜30ppm)に設定される。20ppm未満であると、粒界強度を向上させる効果に乏しい。また、30ppmを超えると、焼入れ性を低下させる。
また、ドライブシャフト10を構成する鋼材は、上記の元素の他、Nb、Tiのいずれか1種以上を含有するものであることが好ましい。Nが過剰量存在する場合、Bと余剰のNとでBNが生成する。このため、Bの量が減少し、その結果、Bによる粒界強度・焼き入れ性の向上効果が低減する。そこで、所定量のNb、Tiで遊離Nを捕捉することにより、この効果を確保する。
Nbは、0.04〜0.07%に設定される。0.04%未満では、遊離Nを捕捉する効果に乏しい。一方、0.07%を超えると、切削性、冷間加工時の変形能が低減する。
Tiは、0.025〜0.04%に設定される。Nb同様、0.025%未満では遊離Nを捕捉する効果に乏しく、0.04%を超えると切削性、冷間加工時の変形能が低減する。
ドライブシャフト10には、さらに、Ni、Crの1種以上が含まれていることが好ましい。
Niは、ドライブシャフト10の焼入れ性を向上させる成分である。換言すれば、Niが存在することにより、焼入れを行った後のドライブシャフト10の硬度が顕著に上昇する。また、ドライブシャフト10の耐食性が向上するとともに、低温での脆性も向上する。
Niは、0.2%以下に設定される。0.2%を超えると、焼戻しが困難となる。
Crは、Niと同様に、ドライブシャフト10の焼入れ性を向上させる成分である。すなわち、Crが存在することにより、焼入れを行った後のドライブシャフト10の硬度が上昇する。Crの組成比は、0.25%以下に設定される。0.25%を超えると、Crがセメンタイト中に濃縮するので、焼入れ時に炭素が鋼材に固溶することを妨げるようになる。
このドライブシャフト10は、上記の成分・組成比の鋼材からなる円柱体形状ワークに対し、例えば、旋削加工や転造加工等が施されることによって作製される。ドライブシャフト10としての成形加工が施された直後の表面の硬度は、Bスケールのロックウェル硬度(HRB)で表すとき、85〜93である。
その後、このドライブシャフト10に対し、強度を確保するための焼入れ・焼戻し処理が施される。
焼入れ方法としては、例えば、高周波によって加熱が行われる高周波焼入れ法を採用すればよい。この場合、先ず、ドライブシャフト10の表面が高周波誘導電流によって急激に加熱され、その後、該表面に対して冷却液が噴射されることによって急冷が行われる。なお、ドライブシャフト10の直径が22mmである本実施の形態における焼入れ条件は、例えば、誘導電流の周波数及び出力を概ね1〜40kHz、50〜100kW程度とし、且つ加熱時間を1〜5秒とすればよい。
次に、100℃〜A1点直下までの温度範囲内で、ドライブシャフト10に対して焼戻し処理を行う。これにより、ドライブシャフト10から残留応力が除去されるとともに、該ドライブシャフト10に経年変化が生じたり割れが発生したりすることが抑制されるようになる。
以上のようにして焼入れ・焼戻し処理が施されたドライブシャフト10の表面のビッカース硬度(HV)は、640〜730である。硬度が高い鋼材は概して強度も高く、また、この程度の硬度であれば、靱性が不十分となることもない。
また、該ドライブシャフト10では、半径方向、すなわち、表面から内部になるに従って、図2に示すように、硬度が低下する。本実施の形態においては、このようにドライブシャフト10の硬度を表面側から測定し、HVで392を示す部位までの距離(深さ)を有効硬化層深さtとする。なお、上記したようにドライブシャフト10の直径は22mmであるから、図2のグラフの横軸における11mmは、ドライブシャフト10における半径方向の中心を表す。
ドライブシャフト10の半径をrとするとき、有効硬化層深さtと半径rの比である硬化層比率t/rは、0.4〜1.0である。0.4未満の場合、有効硬化層の厚みが十分ではなく、このため、ドライブシャフト10の破断強度が小さくなる。
また、図2から諒解されるように、ビッカース硬度は、有効硬化層深さを超えると減少の度合いが緩やかとなり、10mmを超えると略一定となる。全硬化層深さは、このように、硬度が略一定となり母材(生地)との硬度の差異が区別できない位置までの距離として定義される。
本実施の形態において、全硬化層深さをRγとするとき、有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγは、0.7以上である。0.7よりも小さいと、硬化された部位の厚みが十分ではない。なお、有効硬化層深さtが全硬化層深さRγに比して大きい場合はない。
すなわち、硬化層比率t/rを0.4〜1.0、前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγを0.7以上とすることにより、強度及び靱性に優れるドライブシャフト10が得られる。
なお、上記した実施の形態では、鋼材としてドライブシャフト10を例示して説明したが、最終製品は特にこれに限定されず、その他のもの、例えば、等速ジョイントを構成するアウタ部材であってもよい。
Cを0.48%、Siを0.12%、Mnを0.68%、Sを0.012%、Alを0.023%、Bを24ppm、さらに、Niを0.09%、Tiを0.04%、Crを0.14%、Pを0.006%、Cuを0.09%、Oを14ppm、Nを70ppm含有する鋼材のインゴットを作製した。次に、このインゴットに対して熱間鍛造加工、高周波焼入れを行って直径22mmのドライブシャフト10を3本作製した。なお、高周波焼入れは、周波数を一定とする一方、焼入れ時間を種々変化させて実施した。
各ドライブシャフト10における深さとビッカース硬度との関係(平均値)を図3〜図5にそれぞれ示すとともに、有効硬化層深さt、硬化層比率t/r、有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγ、その破断強度を図6に示す。ここで、図3は、焼入れ時間を最長とした場合のグラフであり、図5は、焼入れ時間を最短とした場合のグラフである。また、図4は、焼入れ時間をその中間とした場合のグラフである。なお、t/Rγと破断強度との関係は、図7にも示した。
図6及び図7から、硬化層比率t/rを大きくし、且つ有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγを大きくすることにより、破断強度が大きなドライブシャフト10となることが明らかである。
10…ドライブシャフト
Claims (3)
- 質量%で、C:0.47〜0.50%、Si:0.15%以下、Mn:0.60〜0.75%、S:0.01〜0.03%、Al:0.01〜0.03%、B:0.002〜0.003%を含有し、且つNが0.008%以下、Oが0.0015%以下であり、
ビッカース硬度で392を示す部位に至るまでの表面からの距離を有効硬化層深さt、半径をrとするとき、t/rが0.4〜1.0であり、
前記有効硬化層深さtと全硬化層深さRγの比t/Rγが0.7以上であることを特徴とする鋼材。 - 請求項1記載の鋼材において、質量%で、Nb:0.04〜0.07%、Ti:0.025〜0.04%のうちの1種以上を含有することを特徴とする鋼材。
- 請求項1又は2記載の鋼材において、質量%で、Ni:0.2%以下、Cr:0.25%以下のうちの1種以上をさらに含有することを特徴とする鋼材。
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2006
- 2006-09-22 WO PCT/JP2006/318886 patent/WO2007043317A1/ja active Application Filing
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