JP2007106884A - セルロースアシレートフィルム、その製造方法、光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記式(I)から(IV)をすべて満たし、且つアシル基置換度が2.75から2.86であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム、その製造方法、該フィルムを用いた光学補償フィルム、偏光板および液晶表示装置。(I)0≦Re(590)≦10、(II)−50≦Rth(590)≦7、(III)|Re(400)−Re(700)|≦10、(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦35
【選択図】なし
Description
液晶表示装置用の部材のひとつである偏光板には偏光子の少なくとも片側に偏光子の保護フィルムが貼合によって形成されている。一般的な偏光子は延伸されたポリビニルアルコール(PVA)系フィルムをヨウ素または二色性色素で染色することにより得られる。多くの場合、偏光子の保護フィルムとしてはPVAに対して直接貼り合わせることができる、セルロースアシレートフィルム、なかでもトリアセチルセルロースフィルムが用いられている。偏光子の保護フィルムは、光学的等方性に優れることが重要であり、偏光子の保護フィルムの光学特性が偏光板の特性を大きく左右する。
また本発明においては、セルロースアシレートフィルムの溶液流延製膜方法において冷却ゲル化製膜法を用いる等により、フィルムの高速乾燥を実現することにより効果的に光学異方性、特に膜厚方向のレターデーションを低下させることに成功した。さらに、冷却ゲル化製膜法によれば、弾性率がより大きいセルロースアシレートフィルムを得ることができるという予期せぬ優れた効果を奏することを見出した。
これらの方法を用いることでアシル置換度の小さいセルロースアシレートを原料に用いた場合でも光学異方性の小さいセルロースアシレートフィルムが提供できることを見出した。
1)下記式(I)から(IV)をすべて満たし、且つアシル基置換度が2.75から2.86であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(I)0≦Re(590)≦10
(II)−50≦Rth(590)≦7
(III)|Re(400)−Re(700)|≦10
(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦35
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。]
2)オクタノール・水分配係数(logP値)が0〜10である化合物の少なくとも1種を、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%の割合で含むことを特徴とする上記1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
3)前記オクタノール・水分配係数(logP値)が0〜10である化合物が、下記一般式(1)から(6)のいずれかであらわされる化合物であることを特徴とする上記2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(2)
一般式(3)
一般式(4)
4)波長200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物の少なくとも1種を、セルロースアシレートに対して0.01〜30質量%の割合で含むことを特徴とする上記2)または3)に記載のセルロースアシレートフィルム。
5)前記アシル基がアセチル基であるセルロースアシレートを使用することを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
6)セルロースアシレート溶液を支持体上に流延する工程、流延膜をフィルムとして剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含むセルロースアシレートフィルムの製造方法において、残留揮発分が190%の状態から5%の状態になるまで1.5〜5分で乾燥することを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを製造する方法。
7)15℃以下に冷却した支持体上にセルロースアシレート溶液を流延し、残留揮発分が150〜330%の状態で該支持体から流延膜を剥離することを特徴とする上記6)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
8)前記セルロースアシレート溶液中のセルロースアシレート濃度が18〜24質量%であることを特徴とする上記6)または7)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
9)上記1)〜5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを含有することを特徴とする光学補償フィルム。
10)上記1)〜5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムまたは上記9)に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
11)上記1)〜5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、上記9)に記載の光学補償フィルム、または上記10)に記載の偏光板を少なくとも1枚用いたことを特徴とする液晶表示装置。
また、本発明によれば、従来よりも弾性率が大きいセルロースアシレートフィルムを得ることができる。
本明細書において、Re、Rthは各々、波長λにおける正面レターデーションおよび膜厚方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、正面の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および正面の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する。
セルロースアセテート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA21ADHはnx、ny、nzを算出する。
本明細書においては特に断らない限り、測定は25℃、60%RHの条件で行い、測定波長λは590nmを使用した。また、直接測定不可能な波長のレターデーションについては、Cauthyの式を用い、周辺の波長のレターデーション値よりフィッティングで求めた。
(II)−50≦Rth(590)≦7
(単位:nm。以下同様。)
(I)0≦Re(590)≦5
(II)−25≦Rth(590)≦7
であることがより好ましく、
(I)0≦Re(590)≦3
(II)|Rth(590)|≦5
であることがより好ましく、
(I)0≦Re(590)≦2
(II)|Rth(590)|≦2
であることが特に好ましい。
(III)|Re(400)−Re(700)|≦10
(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦35
(III)|Re(400)−Re(700)|≦7
(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦25
であることがより好ましく、
(III)|Re(400)−Re(700)|≦5
(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦15
であることが特に好ましい。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えばプラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に見られる。
次に上述のセルロースを原料に製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートはセルロースの水酸基がアシル化されたものである。アシル基としては炭素原子数が2のアセチル基から炭素原子数が22のものまでいずれも用いることができる。セルロースの水酸基に置換する酢酸及び/又は炭素原子数3〜22の脂肪酸の結合度を測定し、計算によって置換度あるいは平均酢化度を得ることができる。その測定方法としては、ASTMのD−817−91に準じて実施することが出来る。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であり、セルロースアセテートにおいては、200〜550がより好ましく、250〜450が更に好ましく、280〜400が特に好ましい。重合度が高すぎるとセルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり、流延によりフィルム作製が困難になる。重合度が低すぎると作製したフィルムの強度が低下してしまう。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
セルロースアシレートの固有粘度特性は「6%粘度値」で表される。6%粘度は、メチレンクロライドとメタノールの質量比率91対9の混合溶媒にセルロースアシレートを6質量%溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃における流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
ここに、「粘度計係数=標準液の絶対粘度(cps)×溶液の密度(1.235g/cm3)/標準液の密度(g/cm3)/標準液の流下時間(秒)」である。
また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって評価される。数平均分子量Mnの好ましい範囲は5万から15万であり、より好ましくは7万から12万である。質量平均分子量Mwの好ましい範囲は13万から36万であり、より好ましくは20万から31万である。その多分散性指数Mw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、2.0〜4.0であることが好ましく、2.3〜3.4であることがさらに好ましい。Mw/Mnが小さすぎるとセルロースアシレート溶液の粘度が小さくなり、大きすぎると低分子成分が溶出しやすくなったり溶液粘度が大きくなったりして、いずれも好ましくない。Z平均分子量Mzの好ましい範囲は19万から80万であり、より好ましくは40万から65万である。
本発明のセルロースアシレートの製造においては、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて7頁〜12頁に詳細に記載されている。
本発明に用いるセルロースアシレートの粉体特性は、通常のものであれば特に問題ない。好ましい安息角は20度以上50度以下であり、25度以上45度以下が更に好ましい。好ましい嵩密度は0.3g/cm3以上0.75g/cm3以下であり、0.4g/cm3以上0.65g/cm3以下が更に好ましい。粒子サイズは0.01から10mmが好ましく、0.1から4mmが更に好ましい。このような範囲の粉体であれば、セルロースアシレートのハンドリングに問題を生ぜず、風送、自動計量など自動仕込みができる。
通常、セルロースアシレート合成過程で使用する硫酸、酢酸、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどがそのままあるいはセルロースアシレートと反応した形で残留している。また不純物として鉄イオンの混入も知られている。本発明においてセルロースアシレートに残留している上記諸物質の含有量の好ましい範囲は、硫酸量は30から150ppmであり、カルシウムは10から120ppmであり、マグネシウムは0.1から20ppmであり、鉄は3ppm以下である。また遊離酢酸は0.01から0.2%である。
本発明では、セルロースアシレート溶液に、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、光学的異方性を低下する化合物、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができる。これらについて以下に説明する。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、Rthを低下させる化合物(以下、Rth低下剤ともいう)の少なくとも1種を、セルロースアシレートに対して0.01〜30質量%含むことが望ましい。
数式(3):(RthA−Rth0)/A≦−1.0
数式(4):0.01≦A≦30
数式(3−1):(RthA−Rth0)/A≦−2.0
数式(4−1):0.05≦A≦25
であり、特に望ましくは、
数式(3−2):(RthA−Rth0)/A≦−3.0
数式(4−2):0.1≦A≦20
である。
セルロースアシレートフィルムのRth低下剤について説明する。
光学異方性を十分に低下させ、Re、Rthがともにゼロに近くなるようにするためには、フィルム中のセルロースアシレートが、正面方向及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いることが好ましい。また、光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを作製するに当たっては、上記のように、フィルム中のセルロースアシレートが正面及び膜厚方向に配向するのを抑制してRth低下剤のうち、オクタノール・水分配係数(logP値)が0〜10である化合物を選択することが好ましい。logP値が10以下の化合物であれば、セルロースアシレートとの相溶性に優れ、フィルムの白濁や粉吹きなどの不都合を生じない。またlogP値が0以上の化合物は、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアセテートフィルムの耐水性を悪化させるなどの問題が生じないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜7であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
また、Rth低下剤は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることがより好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムでは、耐久性や製造および加工の工程適正を向上させる目的で、使用する添加剤に解離性基が無い方が好ましく、下記一般式(1)〜(3)のいずれかで表される化合物がより好ましく、一般式(2)又は(3)で表される化合物が更に好ましい。
一般式(2)
なお、下記の一般式(1)または一般式(2)で表される化合物の好ましい例において、(A− )と付してある化合物が一般式(1)で表される化合物の具体例であり、(B− )と付してある化合物が一般式(2)で表される化合物の具体例である。
一般式(3)
前記一般式(3)で表される化合物は、更に下記一般式(7)で表される化合物であることが好ましい。
一般式(7)
一般式(8)
一般式(9)
一般式(11)
上記一般式(3)で表される化合物において、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X1、X2、X3およびX4は、それぞれ、単結合、−CO−、−NR5−R5は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)からなる群から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。X1、X2、X3およびX4の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR5−(から選ばれるのがより好ましい。
a、b、cおよびdは0以上の整数であり、a+b+c+dは2以上である。a+b+c+dは、2〜8であることが好ましく、より好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜4である。Q1は(a+b+c+d)価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2〜8が好ましく、2〜6がより好ましく、2〜4が最も好ましい。
有機基とは、有機化合物からなる基をいう。
上記一般式(7)において、R11、R12、R13およびR14は、それぞれ、水素原子、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。X11、X12、X13およびX14はそれぞれ独立に単結合、−CO−、−NR15−(R15は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。それぞれX11、X12、X13およびX14の組み合わせは特に限定されないが、−CO−、−NR15−から選ばれるのがより好ましい。k、l、mおよびnは0または1であり、k+l+m+n=2、3または4である。Q1は2〜4価の有機基(環状のものを除く)を表す。Q1の価数は2〜4が好ましく、2または3がより好ましい。
上記一般式(8)において、R21およびR22は、それぞれ、置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。Y1およびY2はそれぞれ独立に−CONR23−または−NR24CO−を表し、R23およびR24は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。L1は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR25−、アルキレン基およびアリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の有機基(環状のものを除く)を表す。L1の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR25−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
上記一般式(9)において、R31、R32、R33およびR34はそれぞれ置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、脂肪族基が好ましい。脂肪族基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、環状であることがより好ましい。脂肪族基および芳香族基が有していてもよい置換基としては後述の置換基Tが挙げられるが、無置換のものが好ましい。L2は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−CO−、−NR35−(R35は置換若しくは無置換の脂肪族基または置換若しくは無置換の芳香族基を表し、無置換のものおよび/または脂肪族基がより好ましい。)、アルキレン基、アリーレン基から選ばれる1種以上の基から形成される2価の連結基を表す。L2の組み合わせは特に限定されないが、−O−、−S−、−NR35−、およびアルキレン基から選ばれるのが好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのがさらに好ましく、−O−、−S−およびアルキレン基から選ばれるのが最も好ましい。
置換基Tとしては、例えばアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、
これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
一般式(4)
1つの化合物の中に含まれる2つ以上のR1およびR2は、それぞれ、同一であってもよいし、異なっていてもよい。好ましくは同一である。
一般式(6)、とくに一般式(6a)〜一般式(6c)で表される化合物の好ましい例を下記に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物、すなわちレターデーションの波長分散を低下させる化合物(以下、波長分散調整剤ともいう)を少なくとも1種、セルロースアシレートフィルム原料ポリマーの固形分に対して0.01〜30質量%含むことが好ましい。以下、波長分散調整剤について説明する。
数式(7):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−2.0
数式(8):0.01≦B≦30
数式(7−2):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−3.0
数式(8−2):0.05≦B≦25
であり、さらに望ましくは、
数式(7−3):(ΔRthB−ΔRth0)/B≦−4.0
数式(8−3):0.1≦B≦20
である。
これら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
(式中、Q31は含窒素芳香族ヘテロ環、Q32は芳香族環を表す。)
芳香族炭化水素環として、好ましくは炭素数6〜30の単環又は二環の芳香族炭化水素環(例えばベンゼン環、ナフタレン環など)であり、より好ましくは炭素数6〜20の芳香族炭化水素環、更に好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素環である。最も好ましくはベンゼン環である。
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
上記のRth低下剤、波長分散調整剤の他に、本発明のセルロースアシレートフィルムには、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、剥離剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、分子量が3000以下の化合物の総量は、セルロースアシレート質量に対して5〜45%であることが望ましい。より好ましくは10〜40%であり、さらに望ましくは15〜30%である。これらの化合物としては上述したように、Rth低下剤、波長分散調整剤、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、剥離剤、赤外吸収剤などであり、分子量としては3000以下が望ましく、2000以下がより望ましく、1000以下がさらに望ましい。これら化合物の総量が5%未満であると、セルロースアシレート単体の性質が出やすくなり、例えば、温度や湿度の変化に対して光学性能や物理的強度が変動しやすくなるなどの問題がある。またこれら化合物の総量が45%超であると、セルロースアシレートフィルム中に化合物が相溶する限界を超え、フィルム表面に析出してフィルムが白濁する(フィルムからの泣き出し)などの問題が生じやすくなる。
本発明では、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを製造することが好ましく、セルロースアシレートを有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いてフィルムは製造される。本発明の主溶媒として好ましく用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、および炭素原子数が1〜7のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。二種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。
[仕込み溶解工程]
Rthをゼロに近くするためには、できるだけアシレート置換度の高いセルロースアシレートを使用するほうが有利であるが、そのようなセルロースアシレートは室温撹拌だけでは溶解せず、冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施することが避けられなかった。しかし本発明のように通常広く用いられているアシレート置換度のセルロースアシレートの溶解は、室温撹拌だけで難なく溶解できることが一つの特徴である。従って本発明においてはセルロースアシレートの溶解方法に制限はない。ポリマー溶解方法として広く一般に使用される方法が使用可能である。それでも非常に短時間に溶解を終了させたい場合は、高温溶解方法は有効である。
流延に先立って金網やネルなどの適当なろ材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などを除去しておく。セルロースアシレート溶液のろ過は絶対ろ過精度が1から100μmのフィルターが用いられる。ろ過はろ過精度の大きなフィルターから複数段に渡って順次細かなフィルターでろ過してもよい。好ましい最終段階のろ材のろ過精度は1から50μmである。3から20μmろ材が更に好ましい。ろ過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下であり、1MPa以下が特に好ましい。ろ過圧が低いのは問題ないが、高すぎるとろ材の破損の恐れが高くなったり、不純物や不溶解物が漏れる可能性が大きくなり、好ましくない。
<ろ過閉塞係数測定方法>
有効面積12.5cm2の円板内に直径3.8mmの孔を61個設けた多孔板に支えられたろ紙(孔径47μm、厚さ1.32mm、密度0.32g/m3)に、36℃に保温したセルロースアシレート溶液を7ml/分の流量でろ過を行い、ろ過圧力が一時的に安定した時から3.5時間ないし4時間圧力上昇を観測した。横軸にろ過時間を取り、縦軸にP0/P0.64をプロットしたグラフを作成し、そのプロットの直線近似式をもとめた。P及びP0はろ過圧及び初期ろ過圧を表す。
求めた直線の傾きを、ろ過閉塞係数式[−Ks=3.5×傾き]に代入してろ過閉塞係数Ksを算出する。なおここで、使用するろ紙の孔径はろ紙のバブルポイント値から計算した値である。また送液にはギアポンプ(川崎重工製KA1)を使用した。
本発明のセルロースアシレート溶液のドープ透明度としては85%以上であることが好ましい。より好ましくは88%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。本発明においてはセルロースアシレートドープ溶液に各種の添加剤が十分に溶解していることを確認した。具体的なドープ透明度の算出方法としては、ドープ溶液を1cm角のガラスセルに注入し、分光光度計(UV−3150、島津製作所)で550nmの吸光度を測定した。溶媒のみをあらかじめブランクとして測定しておき、ブランクの吸光度との比からセルロースアシレート溶液の透明度を算出した。
セルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して送り、流延ダイの手前であらかじめ調製しておいたRth低下剤、波長分散調整剤、マット剤溶液、UV吸収剤溶液、剥離剤溶液あるいは可塑剤溶液などをインラインで混合する。これら添加液の混合は逐次に混合してもよいし、あるいはそれらの一部あるいは全部をあらかじめ混合しておいた上でセルロースアシレート溶液と混合してもよい。マット剤溶液は予めUV吸収剤溶液、Rth低下剤、あるいは波長分散調整剤などと混合した後、セルロースアシレート溶液と混合すると、マット剤の凝集防止効果が得られるため好ましい。
添加剤が混合されたセルロースアシレート溶液(ドープ)は加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延される。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルロースアシレート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたり、あるいは研磨によって表面粗さが0.05μm以下に仕上げされたステンレス板やドラムが用いられる。本発明において金属支持体の表面温度は15℃以下が好ましく、−50〜5℃が更に好ましく、−35〜0℃が特に好ましい。支持体温度は低いほどドープが速くゲル化するため好ましいが、経済性を考えると−25〜−5℃であることが一番好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高,低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよく、特にこの方法は高粘度溶液を用いる冷却ゲル化流延法においては好ましい流延方法である。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
本発明で行われる冷却ゲル化は、特開昭62−115035号公報に記されている如き、冷却ゲル化流延法の使用が、乾燥が速く生産性に優れるため好ましい。該方法では金属支持体は15℃以下に冷却され、支持体表面温度が上昇しない程度の温度と風量の乾燥風を、2秒以上あてて乾燥することが好ましい。この方法ではフィルムは主に冷却による粘度上昇あるいは冷却ゲル化により自己保持性が付与されるため、高残留揮発分でも剥離可能になる。剥離時の好ましい残留揮発分は150から330%であり、更に好ましくは190から310%である。ここで残留揮発分とは、固形分(乾燥終了後にフィルムとして残る成分)を100%とした時、フィルム中の揮発性成分の割合をいう。剥離時の好ましいフィルム温度は5から−50℃であり、更に好ましくは0から−35℃であり、特に好ましくは−5から−25℃である。本方法では非常に残留溶剤が多い状態でフィルムを支持体から剥離するため、その後の乾燥は両面から行われ、従って急速乾燥になる。このように急速に乾燥することによりRthを効果的に低減できると推定される。また片面乾燥の時間を短くできるので、トータルの乾燥時間を大幅に短縮でき、コスト及び環境負荷の削減効果も大きい。
(残留揮発分の定義)
(フィルム中の揮発成分重量/フィルム中の不揮発成分の重量)×100
(揮発分の測定手順)
採取した未乾フィルムの重量を測定し、その未乾フィルムを十分に乾燥して溶剤を蒸発させる。該乾燥したフィルムの重量を測定する。その重量は上記式中の「フィルム中の不揮発成分の重量」にあたる。「フィルム中の揮発成分重量」は採取直後のフィルム重量から乾燥後のフィルム重量を引いた値にあたる。
高揮発分でフィルム(流延膜)を金属支持体から剥離すると、その後の乾燥過程でフィルムは収縮しやすく、収縮の過程で面状を悪くする。面状悪化防止のため、本発明では以下に述べるような方法で延伸したり収縮を抑えながら乾燥するのが好ましい。
本発明ではフィルムを支持体から剥離する時、フィルムは支持体速度の1.01倍から1.4倍の速度で引っ張り、面状悪化を防止する。また引張速度比が大きくなるほど、フィルムの流延方向弾性率を大きく出来る。剥離されたフィルムは例えば特開昭62−115035号公報や特開昭62−46625号公報に記されている如き、幅規制装置(例えばテンター装置)によりフィルム両端を保持されて、フィルムの収縮を規制しながらあるいは幅方向に延伸しながら乾燥される。幅規制装置の入り口と出口におけるフィルム幅の比は、0.75から1.4が好ましい。幅方向に延伸するとフィルムの幅方向弾性率を大きく出来るので好ましい。乾燥は50〜150℃の熱風を吹き込むことによって行われる。幅規制装置の中を2から5段階に区切り、順次乾燥風の温度を低い方から高いほうに変化させることが好ましい。最初は50〜100℃の風を用いることが好ましく、70〜90℃が更に好ましい。温度が高すぎるとフィルムが発泡しやすくなる。最終段においては130〜150℃の風を用いることが好ましく、135〜145℃が更に好ましい。150℃を越えるとフィルムの弾性が著しく小さくなり、高速搬送が難しくなる。
フィルム中の残留溶剤分が20%以下になった後、フィルムを幅規制装置からはずし、更に100から150℃の温度で乾燥する。幅規制装置によって変形している両耳部を切り落とし、両端部にナーリングを付与して巻き取る。ナーリングの幅は3mm〜50mm、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmであり、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。巻き取る長さは1ロールあたり100〜10000mが好ましく、より好ましくは500〜6000mであり、さらに好ましくは1000〜4000mである。
本発明の出来上がり(乾燥後)のセルロースアシレートフィルムの厚さは、30から180μmの範囲が好ましい。更に38〜100μmの範囲が好ましく、特に38〜82μmの範囲が最も好ましい。
フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
冷却ゲル化流延による本発明のセルロースアシレートフィルムの好ましい弾性率は4.2GPaから6GPaである。剥離後幅方向に収縮させないようにすれば流延方向も幅方向もともに4GPa以上の弾性率を得られることを見出した。特に幅方向に5%以上延伸することにより、流延方向も幅方向もともに4.2GPa以上の弾性率を得られることを見出した。一方冷却ゲル化流延によらないセルロースアシレートフィルムの弾性率は流延方向も幅方向もともに4GPa前後である。液晶表示装置に使用するためには、弾性率は大きい事が好ましい。セルロースアシレートフィルムの弾性率を大きくすることにより、液晶表示装置に使用される偏光板のポリビニルアルコールフィルムの収縮を抑える効果が大きくなり、その結果液晶表示装置の周辺部における光漏れを減少することが出来る。本発明のセルロースアシレートフィルムの更に好ましい弾性率は4.3Gから5.5GPaであり、特に好ましい弾性率は、4.4Gから5.2GPaである。
セルロースアシレートの寸法変化率は小さいことが好ましい。60℃、90%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化および90℃、3%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも±2%以内であることが望ましい。寸法変化率が大きいと液晶表示装置に装填したときにフィルムに応力を生じ、その結果応力によるレターデーションが発生し、液晶表示装置の光漏れの原因となる。また寸法変化が大きいと、液晶表示装置に反りを生じる可能性が高くなり、好ましくない。
偏光板は、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護フィルムからなっている。この透明保護フィルムとして、本発明のセルロースアシレートフィルムを用いることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光子の両側に使用してもよいし、片側だけに使用してもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロースアシレートフィルムを偏光板の保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
(a)40.0≦TT≦45.0
(b)30.0≦PT≦40.0
(c)CT≦2.0
(d)95.0≦P
本発明の偏光板は、波長λにおける直交透過率をCT(λ)としたときに、CT(380)、CT(410)、CT(700)が下記式(e)〜(g)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(e)CT(380)≦2.0
(f)CT(410)≦1.0
(g)CT(700)≦0.5
(k)−10.0≦ΔP≦0.0
(ただし、変化量とは試験後測定値から試験前測定値を差し引いた値を示す)
より好ましくは−5.8≦ΔCT≦5.8、−9.5≦ΔP≦0.0、更に好ましくは、−5.6≦ΔCT≦5.6、−9.0≦ΔP≦0.0である。
本発明の偏光板は、60℃90%RHの条件下に500時間静置した場合の直交透過率の変化量ΔCT、偏光度変化量ΔPが下記式(h)、(i)の少なくとも1つ以上を満たすことが好ましい。
(h)−3.0≦ΔCT≦3.0
(i)−5.0≦ΔP≦0.0
(l)−3.0≦ΔCT≦3.0
(m)−2.0≦ΔP≦0.0
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償フィルムとして用いると特に効果がある。なお、光学補償フィルムとは、一般に液晶表示装置に用いられ、位相差を補償する光学材料のことを指し、位相差板、光学補償シートなどと同義である。光学補償フィルムは複屈折性を有し、液晶表示装置の表示画面の着色を取り除いたり、視野角特性を改善したりする目的で用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは光学的異方性が小さく、また波長分散が小さいため、余計な異方性を生じず、複屈折を持つ光学異方性層を併用すると光学異方性層の光学性能のみを発現することができる。
本発明に使用可能なディスコティック液晶性化合物の例には、様々な文献(C.Destrade et al.,Mol.Crysr.Liq.Cryst.,vol.71,p.111(1981);日本化学会編、季刊化学総説、No.22、液晶の化学、第5章、第10章第2節(1994);B.Kohne et al.,Angew.Chem.Soc.Chem.Comm.,p.1794(1985);J.Zhang et al.,J.Am.Chem.Soc.,vol.116,p.2655(1994))に記載の化合物が含まれる。
本発明において、使用可能な棒状液晶性化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が含まれる。以上のような低分子液晶性化合物だけではなく、高分子液晶性化合物も用いることができる。
上記した様に、光学異方性層はポリマーフィルムから形成してもよい。ポリマーフィルムは、光学異方性を発現し得るポリマーから形成する。そのようなポリマーの例には、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー)、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸エステルおよびセルロースエステル(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート)が含まれる。また、これらのポリマーの共重合体あるいはポリマー混合物を用いてもよい。
セルロースアシレートフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合は、偏光素子の透過軸と、セルロースアシレートフィルムからなる光学補償フィルムの遅相軸とをどのような角度で配置しても構わない。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償フィルムを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層(下塗り層)を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に50μm〜2mmの厚さを有する。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。本発明のセルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、特開平6−148429号、特開平8−50206号、特開平9−26572号の各公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl. Phys.、Vol.36(1997)p.143や、Jpn.J.Appl. Phys.、Vol.36(1997)p.1068)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとして特に有利に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートのReレターデーション値を0乃至150nmとし、Rthレターデーション値を70乃至400nmとすることが好ましい。Reレターデーション値は、20乃至70nmであることが更に好ましい。VA型液晶表示装置に二枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は70乃至250nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置に一枚の光学的異方性ポリマーフィルムを使用する場合、フィルムのRthレターデーション値は150乃至400nmであることが好ましい。VA型液晶表示装置は、例えば特開平10−123576号公報に記載されているような配向分割された方式であっても構わない。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、IPSモードおよびECBモードの液晶セルを有するIPS型液晶表示装置およびECB型液晶表示装置の光学補償シートの支持体、または偏光板の保護フィルムとしても特に有利に用いられる。これらのモードは黒表示時に液晶材料が略平行に配向する態様であり、電圧無印加状態で液晶分子を基板面に対して平行配向させて、黒表示する。これらの態様において本発明のセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板は視野角拡大、コントラストの良化に寄与する。この態様においては、前記偏光板の保護膜と保護膜と液晶セルの間に配置された光学異方性層のレターデーションの値は、液晶層のΔn・d(屈折率差×厚み)の値の2倍以下に設定するのが好ましい。またRth値の絶対値|Rth|は、25nm以下、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下に設定するのが好ましいため、本発明のセルロースアシレートフィルムが有利に用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平9−197397号公報に記載がある。また、モリ(Mori)他の論文(Jpn.J.Appl.Phys.Vol.38(1999)p.2837)に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体または偏光板保護フィルムとしても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al.,SID98 Digest,1089(1998))に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、またハードコートフィルム、防眩フィルム、反射防止フィルムへの適用が好ましく実施できる。LCD、PDP、CRT、EL等のフラットパネルディスプレイの視認性を向上する目的で、本発明のセルロースアシレートフィルムの片面または両面にハードコート層、防眩層、反射防止層の何れかあるいは全てを付与することができる。このような防眩フィルム、反射防止フィルムとしての望ましい実施態様は、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の54頁〜57頁に詳細に記載されており、本発明のセルロースアシレートフィルムも好ましく用いることができる。
液体クロマトグラフィー法により、以下の条件で測定した。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: 東ソーTSKgel GMH(東ソー(株)製を2本接続して使用した。)
カラム温度:29℃
試料濃度: 0.2質量/容量%
流量: 0.8ml/lmin
(校正は、標準試料 Mw=772000〜6900迄の6サンプルによる校正曲線を使用した。)
メチレンクロライドとメタノールの質量比率91対9の混合溶媒にセルロースアシレートを6質量%溶解し、オストワルド粘度計を用いて25℃における流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
ここに、粘度計係数=標準液の絶対粘度(cps)×溶液の密度(1.235g/cm3)/標準液の密度(g/cm3)/標準液の流下時間(秒) である。
表2のD1からD5の組成物をそれぞれミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した。本発明のセルロースアシレート溶液D1〜D4にはRth低下剤として、logP値がそれぞれ4.2及び3.1である下記化学構造のカルボンアミド系Rth低下剤(A−13)またはスルホンアミド系Rth低下剤(SA−19)を使用した。また、D1、D3及びD4では波長分散調整剤としてUV−102を使用した。温度は20から30℃で、約4時間攪拌した。これらの溶液を平均孔径34μmのろ紙でろ過した。溶液D4を除いて著しいろ圧上昇は認められなかった。一方溶液D4はろ過圧上昇が著しく、途中でろ過を打ち切った。ろ圧上昇の原因は使用したセルロースアシレートが十分に溶解していないためであった。
表2のD6及びD7の組成物をそれぞれミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解した。温度は25から40℃で、約1時間攪拌した。この溶液をギアポンプで熱交換器に送り、70ないし75℃の温度に10分間保った後、冷却熱交換器にて30℃に冷却した。これらの溶液を平均孔径47μmのろ紙で、続いて平均孔径20μmの焼結金属フィルターでろ過した。この液を再びギアポンプで熱交換器に送り出し、溶液の温度を84℃にした後フラッシュ濃縮装置に導入して濃縮し、更に平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した。できたセルロースアシレート溶液の固形分濃度を測定し、セルロースアシレートの濃度を算出すると、いずれも20.5から21.5質量%の間であった。
平均粒径16nmのシリカ粒子(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製)20質量部及びメタノール80質量部を30分間よく攪拌混合してシリカ粒子分散液とした。この分散液を下記の組成物とともに分散機に投入し、さらに30分以上攪拌して各成分を溶解し、平均孔径20μmの不織布フィルターでろ過し、マット剤溶液を調製した。
平均粒径16nmのシリカ粒子分散液 12.0質量部
メチレンクロライド 68.5質量部
エタノール 11.8質量部
1−ブタノール 0.7質量部
セルロースアシレート溶液(D6) 11.3質量部
下記組成の液を作成し、平均孔径47μmのろ紙でろ過し、添加剤溶液を調製した。
波長分散調整剤(UV−102) 7.3質量部
メチレンクロライド 55.3質量部
エタノール 9.5質量部
1−ブタノール 0.6質量部
セルロースアシレート溶液(D6) 12.8質量部
ギアポンプで送液したセルロースアシレート溶液D1からD3及びD5をダイから冷却したステンレスドラム上に均一に流延し、短時間で冷却ゲル化させてドラムから剥離した。剥離の際、流延方向に約10%延伸した。このフィルムの両端をテンターで把持し、フィルム幅方向に約10%延伸した。その後テンターに把持されたフィルムを2段階の温度で2分づつ熱風乾燥させた。その後フィルムをテンターからはずして更に20分間140℃で乾燥した。表3の製膜条件C1によりフィルムF11からF15を作成し、製膜条件C2によりフィルムF21からF25を作成した。いずれのフィルムも輝点異物は少なかった。弾性率はいずれも、流延方向、幅方向共に4.2GPa以上であった。90℃24時間処理によるフィルムの収縮はいずれも、流延方向、幅方向共に2%未満であった。できたフィルムの光学特性と膜厚を表4に示す。Rth低下剤を使用しないF15及びF25は、レターデーションが大きくなった。Rth低下剤の中でも特にA−13使用はRth低下効果が大きい。また波長分散調整剤UV−102の使用により、波長による膜厚方向レターデーションの変動幅が減少した。
マット剤溶液1.6質量部、添加剤溶液2.2質量部の割合で送液しながら、スタチックミキサーで連続的に混合した。この混合液3.8質量部をセルロースアシレート溶液D6の80質量部中に注入しながら、スタチックミキサーで連続的に混合し、加圧ダイから冷却ドラム上に流延した。ドラムから剥離する際流延方向に約10%延伸し、テンターでは収縮を規制し幅を維持した他、表3に示すC3条件で流延及び乾燥を行い、長巻きフィルムF31を得た。またマット剤溶液1.6質量部を各セルロースアシレート溶液(D6、D7)80質量部中に注入しながら、スタチックミキサーで連続的に混合し、加圧ダイから冷却ドラム上に流延した。ドラムから剥離する際流延方向に約10%延伸し、テンターでは収縮を規制し幅を維持した他、表3に示すC3条件で流延及び乾燥を行い、長巻きフィルムF32及びF33を得た。いずれも巻取りでのフィルム幅は134cm、巻き長さは2600mであった。いずれのフィルムも輝点異物は少なかった。弾性率はいずれも流延方向が4.5GPa、幅方向は3.6GPaであった。90℃24時間処理によるフィルムの収縮はいずれも、流延方向、幅方向共に2%未満であった。できたフィルムの光学特性と膜厚を表4に示す。
ギアポンプで送液したセルロースアシレート溶液D1を加圧ダイから15℃のステンレス無端ベルト上に均一に流延し、最初の20秒間は60℃の熱風で、次の30秒間は80℃の熱風で、次の30秒間は120℃の熱風で合計約80秒間乾燥した後ステンレスベルトから剥離した。剥離の際、流延方向に約3%延伸した。表3の示すC4条件で乾燥を行い、フィルムF41を得た。いずれのフィルムも輝点異物は少なかった。弾性率は流延方向が3.5GPa、幅方向は3.3GPaであった。90℃24時間処理によるフィルムの収縮は、流延方向、幅方向共に2%未満であった。できたフィルムの光学特性と膜厚を表4に示す。金属支持体上での片面乾燥時間が長いため、Rthがプラス側に大きくなってしまった。
本発明のセルロースアシレートフィルムF31を、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬した。室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.1規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、さらに100℃の温風で乾燥した。このようにして、表面をケン化したセルロースアシレートフィルムを得た。市販のセルロースアセテートフィルムTD80UF(富士写真フイルム(株)製)にも同様の表面ケン化処理を行った。
また偏光膜の両面にケン化処理したTD80UFを1枚づつ貼り合わせ、偏光板P0を作成した。
一枚のガラス基板上に、隣接する電極間の距離が20μmとなるように電極を配設し、その上にポリイミド膜を配向膜として設け、ラビング処理を行なった。別に用意した一枚のガラス基板の一方の表面にポリイミド膜を設け、ラビング処理を行なって配向膜とした。二枚のガラス基板を、配向膜同士を対向させて、基板の間隔(ギャップ;d)を3.9μmとし、二枚のガラス基板のラビング方向が平行となるようにして重ねて貼り合わせ、次いで屈折率異方性(Δn)が0.0769及び誘電率異方性(Δε)が正の4.5であるネマチック液晶組成物を封入した。液晶層のd・Δnの値は300nmであった。
作製したIPSモード液晶セルの両面に実施例または比較例として作成した偏光板を、その吸収軸が液晶セルのラビング方向と平行になるよう、且つ本発明あるいは比較例のセルロースアシレートフィルムが液晶セル側になるように貼り付けた。続いて、IPSモード液晶セルのもう一方の側に偏光板P0をクロスニコルの配置で貼り付けた。
このように作製した液晶表示装置の黒の色味を極角60度における全方位角方向で観察し、色味変化を比較した。偏光板P31〜P32の偏光板を用いたものは色味変化が少なかったが、それに比較して偏光板P41を用いたときは、色味変化が大きくなった。
Claims (11)
- 下記式(I)から(IV)をすべて満たし、且つアシル基置換度が2.75から2.86であることを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(I)0≦Re(590)≦10
(II)−50≦Rth(590)≦7
(III)|Re(400)−Re(700)|≦10
(IV)|Rth(400)−Rth(700)|≦35
[式中、Re(λ)は波長λnmにおける正面レターデーション値(単位:nm)、Rth(λ)は波長λnmにおける膜厚方向のレターデーション値(単位:nm)である。] - オクタノール・水分配係数(logP値)が0〜10である化合物の少なくとも1種を、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%の割合で含むことを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記オクタノール・水分配係数(logP値)が0〜10である化合物が、下記一般式(1)から(6)のいずれかであらわされる化合物であることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
一般式(2)
一般式(3)
一般式(4)
- 波長200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物の少なくとも1種を、セルロースアシレートに対して0.01〜30質量%の割合で含むことを特徴とする請求項2または3に記載のセルロースアシレートフィルム。
- 前記アシル基がアセチル基であるセルロースアシレートを使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレート溶液を支持体上に流延する工程、得られた流延膜をフィルムとして剥離する工程、剥離したフィルムを乾燥する工程を含むセルロースアシレートフィルムの製造方法において、残留揮発分が190%の状態から5%の状態になるまで1.5〜5分で乾燥することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを製造する方法。
- 15℃以下に冷却した支持体上にセルロースアシレート溶液を流延し、残留揮発分が150〜330%の状態で該支持体から流延膜を剥離することを特徴とする請求項6に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 前記セルロースアシレート溶液中のセルロースアシレート濃度が18〜24質量%であることを特徴とする請求項6または7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを含有することを特徴とする光学補償フィルム。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムまたは請求項9に記載の光学補償フィルムを少なくとも1枚用いたことを特徴とする偏光板。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、請求項9に記載の光学補償フィルム、または請求項10に記載の偏光板を少なくとも1枚用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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