JP2007103345A - チューブ状固体高分子型燃料電池、及びチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】触媒層の作製時に、触媒インクがガス流路に染み込んで該流路を塞ぐことがなく、ガス流通性を向上させるとともに、これにより発電性能を向上させたチューブ型燃料電池、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】棒状集電体1の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路2を備え、更に該棒状集電体1及び該燃料ガス流路2の外側に膜−電極接合体(MEA)6を備え、該燃料ガス流路2を燃料ガスが流れ該膜−電極接合体(MEA)6の外側に酸化ガスが流れる構造のチューブ状固体高分子型燃料電池であって、該燃料ガス流路2の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されているチューブ状固体高分子型燃料電池。
【選択図】図1
【解決手段】棒状集電体1の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路2を備え、更に該棒状集電体1及び該燃料ガス流路2の外側に膜−電極接合体(MEA)6を備え、該燃料ガス流路2を燃料ガスが流れ該膜−電極接合体(MEA)6の外側に酸化ガスが流れる構造のチューブ状固体高分子型燃料電池であって、該燃料ガス流路2の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されているチューブ状固体高分子型燃料電池。
【選択図】図1
Description
本発明は、棒状集電体を用いたチューブ状固体高分子型燃料電池、及び該チューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法に関する。
燃料電池は、電池内で水素やメタノール等の燃料を電気化学的に酸化することにより、燃料の化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換して取り出すものであり、近年、クリーンな電気エネルギー供給源として注目されている。特にプロトン交換膜を電解質として用いる固体高分子型燃料電池は、高出力密度が得られ、低温作動が可能なことから電気自動車用電源を始め、家庭用据え置き電源、携帯機器や可搬型電源など小型電池として期待されている。
これまでの固体高分子型燃料電池は、電解質(平面状板または平膜)の両側にそれぞれ燃料極、空気極(酸素極)となる触媒層を配置し、更に燃料ガス及び空気(酸素ガス)の流れる流路を形成した炭素あるいは金属製のセパレータ材料で挟み込むことによって、単セルと呼ばれるユニットを作製することにより構成されている。セルとセルの間にはセパレータがはさまれ、セルを積層した時に燃料極に入る水素と空気極に入る空気とが混合するのを防ぐ役割を果たすと共に、二つのセルを直列につなぐための電子導電体の役割も果たすものである。このような単セルを必要な数だけ重ね合わせることによって燃料電池スタックを組立て、更に燃料及び酸化剤ガスを供給する装置及び制御装置等と一体化して燃料電池とし、これにより発電を行うものである。
しかしながら、このような平面型燃料電池構成では、大面積の電極(燃料極、空気極)を幾枚も重ねるという設計に適してはいても、小型化の要請を始めとする外観・形状の自由度は低かった。最近、平面型の単セルのみを並列に並べるという設計も提案されており、このような場合小型チップを作製することが容易で、電池を組み込む小型機器の形状によってはメリットを有することもあるが、種々の小型機器の形状に柔軟に対応できるとは言い難い。特に、燃料極をどのように設計し燃料の効果的な流通を図るとともに、燃料の漏れを如何にして防ぐかといった課題が残されている。
そこで、下記特許文献1には、小型化が容易で、かつ燃料極の気密性を保持し、高い差圧にも耐え、機械的強度と共に柔軟性も有する高出力の燃料電池を提供することを目的として、従来平板型で積層されていた高分子電解質膜をチューブ状(中空)に形成して使用し、かつチューブの内側面(壁面)及び/又は外側面(壁面)に触媒を担持したカーボン繊維を設けそれぞれ燃料極及び空気極とした燃料電池が開示されている。
また、下記特許文献2には、単位電池の構成を単純化し、小型化・低コスト化を目的として、内径0.5〜10mmの中空形状のガス拡散電極層と、該ガス拡散電極層の外周に形成された高分子固体電解質膜層と、該高分子固体電解質膜層の外周に形成されたガス拡散電極層からなる固体高分子型燃料電池が開示されている。
更に、従来技術として、内部集電体に設けられたスリット、穴等のガス流路にPVAなどの樹脂を充填しMEA作製後、水などの液体でこの樹脂を洗い流してチューブ状固体高分子型燃料電池を製作する方法がある。しかし、該方法では、下記の問題点がある。
(1)充填した樹脂を除去する工程が必要となるため、製作工程が煩雑になる。
(2)チューブ型燃料電池の内部であるため、これを切断、破壊しない限り、充填した樹脂が完全に除去できているかを確認することが困難である。
(1)充填した樹脂を除去する工程が必要となるため、製作工程が煩雑になる。
(2)チューブ型燃料電池の内部であるため、これを切断、破壊しない限り、充填した樹脂が完全に除去できているかを確認することが困難である。
従来技術のチューブ型燃料電池は小型化という面では一定の効果を奏するものの、内部でのガス流通性に問題があり、このため発電性能にも限界があった。
そこで、本発明は、触媒層の作製時に、触媒インクがガス流路に染み込んで該流路を塞ぐことがなく、ガス流通性を向上させるとともに、これにより発電性能を向上させたチューブ型燃料電池、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、特定構造の棒状集電体の燃料ガス流路の一部または全部に特定の材料を充填することによって上記課題が解決されることを見出し、本発明に到達した。
即ち、第1に、本発明は、棒状集電体の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路を備え、更に該棒状集電体及び該燃料ガス流路の外側に膜−電極接合体(MEA)を備え、該燃料ガス流路を燃料ガスが流れ該膜−電極接合体(MEA)の外側に酸化ガスが流れる構造のチューブ状固体高分子型燃料電池の発明であって、該燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されていることを特徴とする。本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池は、燃料ガス流路の一部または全部に充填された多孔質材料中を燃料ガスがスムースに透過することから、膜−電極接合体(MEA)の外側を流通する酸化ガスと相まって、膜−電極接合体(MEA)での発電性能が向上する。
本発明において、前記燃料ガス流路の形状については、前記燃料ガス流路が、前記棒状集電体の外周側に軸方向に連通して設けられた1本以上のスリットである場合が好ましい。
本発明において、前記多孔質材料中に、前記棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されていると、ガス拡散性及び排水性が向上するのでより好ましい。
本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池の最大の特徴点である多孔質材料としては、無機質材料より成るセラミックス、無機質繊維の圧縮成形体、カーボン繊維の圧縮成形体、無機質材料と有機質結合材よりなる成形体、カーボン繊維と有機質結合材よりなる成形体、マイカ、無機質材料の多孔質焼結体、又は無機質繊維の不織布等の各種材料が適用される。例えば、アルミナ、シリカが挙げられ、特にγ−アルミナが好ましい。
前記多孔質材料の細孔の孔径は、該多孔質材料と接触する触媒層中の触媒微粒子の粒径との関係で設定される。触媒インクを塗布中に触媒微粒子が多孔質材料の細孔中に染み込んで細孔を閉塞することがないように考慮される。このため、多孔質材料の細孔の孔径は1nm〜100nmが好ましく、10nm〜40nmがより好ましい。多孔質材料の空孔率は40〜90%が好ましく、70〜90%が好ましい。
前記多孔質材料に導電性を付与し、燃料電池発電時のセル抵抗を低減させるために、前記多孔質材料中に、耐腐食性及び導電性を有する微粒子が混入されていることが好ましい。耐腐食性及び導電性を有する微粒子としては、例えば、カーボンブラック、金、白金等の微粒子が好ましく例示される。
本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池の中心部に配置される前記棒状集電体としては各種導電性材料が用いられる。例えば、金属材料または炭素材料が例示され、この中で、金が最も好ましい。
第2に、本発明は、上記のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法の発明であり、棒状集電体の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路を形成する工程と、該燃料ガス流路を備えた棒状集電体の該燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料を充填する工程と、該棒状集電体及び該燃料ガス流路の外側に膜−電極接合体(MEA)を作製する工程とを有する。
本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法において、燃料ガス流路の形状、多孔質材料に細孔径の傾斜構造を付与すること、多孔質材料の種類、細孔の孔径、空孔率、多孔質材料中に耐腐食性及び導電性を有する微粒子を混入すること、棒状集電体の材料等については上述の通りである。
本発明においては、多孔質材料がγ−アルミナである場合、前記多孔質材料を充填する工程が、γ−アルミナペーストを前記燃料ガス流路に塗布または充填し、焼成するものであることが好ましい。
また、前記膜−電極接合体(MEA)を作製する工程で用いる触媒ペースト中の粒子の2次粒子径が、100nm以上であることが、多孔質材料中の孔に染み込まないために好ましい。
第3に、本発明は、上記のチューブ状固体高分子型燃料電池の用途に関するものであり、携帯用機器の電源として利用することを特徴とする。本発明の燃料電池は、小型化が容易であり、しかも出力密度が高く、長期的な耐久性が期待でき、取扱いが容易であることから、電話機、ビデオカメラ、ノート型パソコンなどの携帯用電気・電子機器や可搬型電気・電子機器の電源として利用することができる。
本発明は、棒状集電体の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路を備え、該燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されていることにより、燃料ガス流路の一部または全部に充填された多孔質材料中を燃料ガスがスムースに透過する。この結果、膜−電極接合体(MEA)の外側を流通する酸化ガスと相まって、膜−電極接合体(MEA)での発電性能が向上する。また、燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されていることにより、触媒層の作製時に、触媒インクがガス流路に染み込んで該流路を塞ぐことがなく、ガス流通性を向上させるとともに、これにより発電性能が向上する。
特に、前記多孔質材料中に、前記棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されていると、ガス拡散性及び排水性が向上するので、発電性能がより向上する。
更に、本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池は、棒状集電体を中心とするチューブ状であることから、小型化に対応できるのみならず、棒状集電体及びチューブの長さや大きさを適宜設計することにより、またチューブからなるユニットを適宜接続することにより種々の出力に対応した電池を得ることができる。棒状集電体に充填された多孔質材料の部分は気密性に優れているので、特に燃料極を構成するのに適している。加えて、本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池は、形状柔軟性に優れているのみならず強度も保てるため、燃料電池の設計で問題となるスタック材料の問題も解決できる。
図1に、本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池の模式図を示す。棒状集電体1の外周側に該棒状集電体1の軸方向に連通する燃料ガス流路2となるスリットが4本設けられている。更に、該棒状集電体1及び該燃料ガス流路2の外側に、電極触媒層3、高分子電解質膜4、電極触媒層5からなる膜−電極接合体(MEA)6がチューブ状に配置されている。図示されないが、他の集電体が膜−電極接合体(MEA)6の外側に配置される。該燃料ガス流路2には、その軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されている。該燃料ガス流路2を燃料ガス(H2)が流れ、該膜−電極接合体(MEA)6の外側を酸化ガス(空気またはO2)が流れる。実用上は、上記燃料電池単セルを並列及び/又は直列してスタック化する。
図1では、多孔質材料は該燃料ガス流路2の全部に充填されているが、一部に充填されていても良い。また、図1では、燃料ガス流路2が、前記棒状集電体1の外周側に軸方向に連通して設けられた4本のスリットであったが、スリットの本数には制限はない。
図2に、本発明のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造工程の概略を断面模式図で示す。棒状集電体1の外周側に、該棒状集電体1の軸方向に連通する燃料ガス流路2を形成する(図2(a))。該燃料ガス流路2を備えた棒状集電体1の該燃料ガス流路2の一部または全部に(図2では全部)、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料であるγ−アルミナを充填する(図2(b))。次に、該棒状集電体1及び該燃料ガス流路2の外側に、電極触媒層3、高分子電解質膜4、電極触媒層5からなる膜−電極接合体(MEA)6をチューブ状に配置して、チューブ状固体高分子型燃料電池とする。
図3に、本発明の、多孔質材料中に、棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されたチューブ状固体高分子型燃料電池の製造工程の概略を断面模式図で示す。基本的には、図2に示すチューブ状固体高分子型燃料電池の製造工程と同じである。
(1)内部集電体のガス流路が、細孔を持つセラミックス、好ましくはγ−アルミナで満たされている構造である。
(2)(1)のセラミックスに、触媒層側は小さく、内部集電体側は大きくなるような細孔径の傾斜層構造を付与する。ここで、傾斜層構造は、最低2層であり、徐々に大きくなるような構造でも良い。
(3)(1)のセラミックスにカーボンブラック、金、白金等の耐腐食性と導電性を持った微粒子を予め混入している構造とすることも好ましい。
(2)(1)のセラミックスに、触媒層側は小さく、内部集電体側は大きくなるような細孔径の傾斜層構造を付与する。ここで、傾斜層構造は、最低2層であり、徐々に大きくなるような構造でも良い。
(3)(1)のセラミックスにカーボンブラック、金、白金等の耐腐食性と導電性を持った微粒子を予め混入している構造とすることも好ましい。
上記(1)により、MEA作製時の第1層である触媒層となる触媒ペーストを塗布時に、ペーストが微細孔内に染み込まないため、発電時にガスの触媒層への拡散を阻害しないため性能が向上する。又、流路を満たした固体をMEA作製後に除去する必要が無いため、生産性が向上する。
上記(2)により、ペーストの染込み防止には寄与しない部分(内部集電体側)の細孔を大きくすることによりガスの拡散性が向上し、性能が向上する。又、排水性が向上し、水によるガス流路の閉塞が防止されガス拡散が促進、性能が向上する。
上記(3)により、セラミックスに導電性付与することが可能となり、燃料電池発電時のセル抵抗を低減できる。
次に、本発明の実施例及び比較例を図面を参照してさらに詳細に説明する。
[比較例1]
図4に示すように、チューブ型燃料電池において内部集電体は電気導電性、ガス拡散性の両立と共に、MEA作製時の基板となる。よって、直接内部集電体に触媒ペーストを塗布すると、ガス流路をペーストが覆ってしまい、MEA作製後、発電時にガスが触媒層にうまく拡散しない、または閉塞してしまうという問題があった。
図4に示すように、チューブ型燃料電池において内部集電体は電気導電性、ガス拡散性の両立と共に、MEA作製時の基板となる。よって、直接内部集電体に触媒ペーストを塗布すると、ガス流路をペーストが覆ってしまい、MEA作製後、発電時にガスが触媒層にうまく拡散しない、または閉塞してしまうという問題があった。
[比較例2]
図5に示すように、従来、このガス流路に予めポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂を満たし、MEA作製後にPVAは水溶性樹脂であるので、水等の溶媒で溶かして除去し、発電時のガス流路を確保していた。しかし、PVAを完全に除去できているかを確認することはMEAを破壊しない限り困難であり、また、この除去工程が必要なため、生産性が低下する。
図5に示すように、従来、このガス流路に予めポリビニルアルコール(PVA)等の樹脂を満たし、MEA作製後にPVAは水溶性樹脂であるので、水等の溶媒で溶かして除去し、発電時のガス流路を確保していた。しかし、PVAを完全に除去できているかを確認することはMEAを破壊しない限り困難であり、また、この除去工程が必要なため、生産性が低下する。
[実施例1]
図6に、チューブ型燃料電池においてγ−アルミナを内部集電体のガス流路であるスリットに満たした構造とその製造方法を示す。本発明では、内部集電体のガス流路を確保するため、微細な穴を持つγ−アルミナをこの流路に満たす事により、MEA作製時の触媒ペーストの染み込みを防ぎ、且つMEA作製後の除去工程を必要とする事無く、発電時のガス拡散性も確保した構造とした。
図6に、チューブ型燃料電池においてγ−アルミナを内部集電体のガス流路であるスリットに満たした構造とその製造方法を示す。本発明では、内部集電体のガス流路を確保するため、微細な穴を持つγ−アルミナをこの流路に満たす事により、MEA作製時の触媒ペーストの染み込みを防ぎ、且つMEA作製後の除去工程を必要とする事無く、発電時のガス拡散性も確保した構造とした。
具体的には、一般的製法により作製したγ−アルミナ溶液を内部集電体にディップコート法により、ガス流路に塗布する。このγ−アルミナの微孔の孔径は1nm〜100nm、望ましくは10nm〜40nmで、空孔率は40〜90%、望ましくは70%から90%である。白金を担持したカーボンを触媒とする触媒ペースト中の粒子の2次粒子径が、100nm以上であることが知られているので、上記の様なγ−アルミナの細孔径であれば、触媒の染み込みを防ぐことが出来る。
[実施例2]
実施例1では、内部集電体のガス流路を確保するため、微細孔を持つセラミックス等をこの流路に満たす事により、MEA作製時の触媒ペーストの染み込みを防ぎ、且つMEA作製後の除去工程を必要とする事無く発電時のガス拡散性も確保した構造を示した。
実施例1では、内部集電体のガス流路を確保するため、微細孔を持つセラミックス等をこの流路に満たす事により、MEA作製時の触媒ペーストの染み込みを防ぎ、且つMEA作製後の除去工程を必要とする事無く発電時のガス拡散性も確保した構造を示した。
しかし、上記構造のままでは触媒ペーストの染み込み防止に寄与しないガス流路部分までも微細孔を持つセラミックス等で満たされたしまうため、ガスの拡散性の確保が不十分であり、また排水性も悪いため、ガス拡散性阻害による性能低下が生じることが懸念される。
そこで、本実施例2では、ガス流路部に満たしたセラミックの触媒ペーストの染込み防止には寄与しない部分(内部集電体側)の細孔を大きくすることによりガスの拡散性および排水性を向上させ、性能向上を実現する。
具体的には、図3のように異なる細孔径を有するセラミックスをディップコート法(スプレー法等他の塗布方法でも可)により、順に内部集電体に塗布し、外側から内側に向かって細孔径が大きくなるような多層構造を付与する。最外層は触媒ペースト(粒子径100nm以上)の染込み防止のため細孔径1〜100nmであり、好ましくは10〜40nmとし、空孔率40〜90%であり、好ましくは70〜90%のセラミックスで形成させる。最内層は、ガス拡散性および排水性確保のため、細孔径100nm〜50μmであり、好ましくは10〜50μmとし、空孔率40〜90%であり、好ましくは70〜90%のセラミックスで形成させる。
図7に、このように作製した内部集電体にMEAをディップコート法により作製したセルの内側ガスの圧力損失を示す。ここで、ガス:H2(ドライ)、温度:80℃、背圧:100kPa、セル長さ:20mmとした。又、図8に、発電性能(I−V曲線)を示す。ここで、外側カソード(空気):100ccm、ハブラ温度:80℃、内側アノード(H2):50ccm、ハブラ温度:80℃とし、背圧:100kPa、セル温度:80℃とした。
図7から、本実施例2により、圧力損失が実施例1より低下し、ガスの拡散性が大幅に向上したことが分かる。また、図8より、本実施例2により、発電性能が、実施例1より、大幅に向上することが分かる。これらの効果は、ガス拡散性向上による濃度過電圧の低減に因るものと考えられる。
本発明は、チューブ状固体高分子型燃料電池は、燃料ガス流路の一部または全部に充填された多孔質材料中を燃料ガスがスムースに透過することにより、触媒層の作製時に、触媒インクがガス流路に染み込んで該流路を塞ぐことがなく、ガス流通性を向上させるとともに、これにより発電性能が向上する。特に、前記多孔質材料中に、前記棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されていると、ガス拡散性及び排水性が向上するので、発電性能がより向上する。これにより、燃料電池の実用化と普及に貢献する。
1:棒状集電体、2:燃料ガス流路、3:電極触媒層、4:高分子電解質膜、5:電極触媒層、6:膜−電極接合体(MEA)。
Claims (16)
- 棒状集電体の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路を備え、更に該棒状集電体及び該燃料ガス流路の外側に膜−電極接合体(MEA)を備え、該燃料ガス流路を燃料ガスが流れ該膜−電極接合体(MEA)の外側に酸化ガスが流れる構造のチューブ状固体高分子型燃料電池であって、該燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料が充填されていることを特徴とするチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記燃料ガス流路が、前記棒状集電体の外周側に軸方向に連通して設けられた1本以上のスリットであることを特徴とする請求項1に記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記多孔質材料中に、前記棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されていることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記多孔質材料がγ−アルミナであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記多孔質材料の、細孔の孔径が1nm〜100nmであり、空孔率が40〜90%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記多孔質材料中に、耐腐食性及び導電性を有する微粒子が混入されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 前記棒状集電体が、金属材料または炭素材料からなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池。
- 棒状集電体の外周側に該棒状集電体の軸方向に連通する燃料ガス流路を形成する工程と、該燃料ガス流路を備えた棒状集電体の該燃料ガス流路の一部または全部に、該燃料ガス流路の軸方向に連通する連通孔を有する多孔質材料を充填する工程と、該棒状集電体及び該燃料ガス流路の外側に膜−電極接合体(MEA)を作製する工程とを有するチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記燃料ガス流路を形成する工程が、前記棒状集電体の外周側に軸方向に連通して設けられた1本以上のスリットを形成するものであることを特徴とする請求項8に記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記多孔質材料中に、前記棒状集電体の外周側から内部集電体側に向かって細孔径が大きくなる傾斜構造が付与されていることを特徴とする請求項8または9に記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記多孔質材料を充填する工程が、γ−アルミナペーストを前記燃料ガス流路に塗布または充填し、焼成するものであることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記多孔質材料の、細孔の孔径が1nm〜100nmであり、空孔率が40〜90%であることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記多孔質材料中に、耐腐食性及び導電性を有する微粒子を予め混入しておくことを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記棒状集電体が、金属材料または炭素材料からなることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 前記膜−電極接合体(MEA)を作製する工程で用いる触媒ペースト中の粒子の2次粒子径が、100nm以上であることを特徴とする請求項8乃至14のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池の製造方法。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のチューブ状固体高分子型燃料電池を電源として備えたことを特徴とする可搬型電気・電子機器。
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