JP2007101808A - 垂直配向型超ねじれ液晶表示素子及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明の垂直配向型超ねじれ液晶表示素子は、基材の一面に電極と配向膜とを順に重ねて設け、該配向膜が相互に対向するように配してなる一対の基板と、該一対の基板の間に挟持されるように設けられた負の誘電異方性を有する液晶材料と、を少なくとも備えてなり、前記一対の基板は共に、前記液晶材料をなす液晶分子に対して80°〜86°のプレチルト角を与える配向制御能を有し、前記液晶材料は、少なくとも一種のカイラル剤を含有し、曲がりの弾性定数K33を広がりの弾性定数K11により除した値が1.25以上であり、前記配向膜によって規定されるねじれ角が180°以上280°以下である、ことを特徴とする。
【選択図】 図2
Description
しかし、前者の2層STN−LCD方式は液晶セルを2枚用いるので、厚さの増加、重量の増加を生じる。また、後者のフィルム補償STN−LCD方式は、実用レベルの黒表示を得ることができず、電極内で黒表示が可能であっても電極外では黒が浮き、コントラストを高くすることは困難であった。
しかし、垂直配向型ECBモード液晶表示素子は、急峻性を高くするために配向膜のプレチルト角を小さくしており、これが原因で、電圧無印加時の黒表示時に光抜けが起こり、コントラストの低下が生じることがある。
すなわち、本発明は、電極を有する2枚の基板間に負の誘電異方性を有する液晶材料が挟持された液晶表示素子であって、次の(1)〜(3)を満たすものである。
(1)前記2枚の基板は、共に、液晶分子に対して80°以上86°以下のプレチルト角を与える配向制御能を有すること。
(2)前記液晶材料は、少なくとも一種のカイラル剤を含有し、曲がりの弾性定数K33を広がりの弾性定数K11により除した値が1.25以上であること。
(3)前記液晶材料は、前記配向膜によって規定されるねじれ角が180°以上280°以下であること。
一方、電圧を印加すると、液晶分子は長軸方向を変化させるねじれ構造(螺旋配列)を取りながら倒れてリターデーションが大きくなり、光が透過する状態(明状態)となる。このとき、プレチルト角が80°〜86°の範囲とし、且つ弾性定数K33と広がりの弾性定数K11の比K33/K11が1.25以上とし、液晶材料のねじれ角が180°〜280°の範囲であるので、急峻性が良好となり、具体的には1.2以下の急峻性を与えることができる。
したがって、本発明は、急峻性が高く(1.2未満)、ヒステリシスの少ない垂直配向型超ねじれ液晶表示素子の提供に寄与する。
本発明で使用する基板は、基材の一面に電極と配向膜とを順に重ねて設けたものであり、液晶分子に対して80°〜86°のプレチルト角を与える配向制御能を有する。配向制御能は、例えば、基材の電極上にラビング法、射方蒸着法、光配向法等、斜方蒸着法等の公知の方法で配向膜を作製する方法により付与することができる。中でも、垂直配向膜に光を照射して配向制御能を付与する光配向法は、ラビング法のような光抜けを生じさせるようなキズが発生せず、容易に基板に対して配向制御能を付与することができるので好ましい。
使用する垂直配向膜は、直線偏光の紫外線を照射してプレチルトが80〜86°発生するものであればよい。
基材上に設ける電極としては、透明性を有し、抵抗が低い材質が望ましく、酸化インジウム膜、酸化スズ膜、酸化インジウム・酸化スズ(ITO)膜、酸化インジウム・酸化亜鉛膜等が挙げられる。電極をなす各膜は、蒸着法、スパッタ法などの一般的に用いられている方法によって形成し、必要に応じて、電極をパターニングしてもよい。電極をパターニングするには、例えば基材上にITO膜をマスクを介してスパッタリング法等で形成するか、ITO膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法等でエッチングしてもよい。
本発明で使用する液晶材料は、少なくとも一種のカイラル剤を含有し、曲がりの弾性定数K33を広がりの弾性定数K11により除した値が1.25以上であり、かつ、前記配向膜によって規定されるねじれ角が180°以上280°以下であるものが用いられる。このような条件を満たせば、構造等に特に限定はない。具体的には、通常この技術分野で液晶材料として認識されるものであれば良く、単一の液晶性化合物でなくてもよく、2種以上の液晶化合物の組成物であっても良く、適宜選択、配合して用いることができる。具体的に、使用できる液晶材料としては、トラン系、フルオロ系、ナフタレン系等の液晶化合物が挙げられる。
本発明に係る液晶表示素子においては、このような機能を有するカイラル剤を添加し、任意の自然ねじれのピッチを有する液晶材料を用いることにより、液晶表示素子の電圧変化に対する透過率変化の割合を示す急峻性が良好となり、走査線本数の高い画像表示が可能となる。
なお、カイラル剤の添加量により、液晶材料の自然ねじれのピッチは変化するので、必要とする液晶のピッチに応じてカイラル剤の添加量は適宜調節すればよい。
本発明で使用するカイラル剤としては、特に限定はなく、公知慣用のものを使用できる。例えば、S―811、R811、CB―15、MLC6247、MLC6248、R1011、S1011(メルク社製)等が挙げられる。
前記液晶材料の自然ねじれピッチをp、前記一対の基板同士の間隔をdと定義したとき、dをpにより除した値(d/pと表記)が0.55以上0.75以下の範囲にある液晶材料は、電気光学特性の良好な急峻性をもたらすとともに、ヒステリシスの発生を抑制する等の理由により、さらに好ましい。この(d/p)の値は、セルギャプを変化させる方法や、あるいは液晶に添加するカイラル剤の量を変化させる方法により、任意の値に設定することが可能となる。
次に、プレキソ印刷法や、インクジェット法や、スピンコート法を用いて、透明電極付き透明基板上に垂直配向膜を形成し、焼成した後、この垂直配向膜を光配向処理する。
その後、上側の基板と下側の基板との間にスペーサを介在させて基板間に均一な隙間を形成し、シール材で周囲を封じて固定する。この際、液晶の注入口となる部分は封止せずに開口した状態とする。
なお、スペーサの材質は特に限定されるものではなく、スペーサーとしては、プラスチックビーズやシリカ粒子などを分散させたり、基板上の所定の位置にカラム状の構造物を形成しスペーサーとして用いても良い。また、シール材の材質についても特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂やシリコン樹脂などに、ガラス繊維を粉砕して円柱状にしたスペーサを混ぜたものを用いることができる。
次に、液晶セル内部を真空にした後、液晶を注入し、注入口を接着剤でシールして密閉することにより、本発明に係る垂直配向型超ねじれ液晶表示素子が得られる。
本例では、プレチルト角は、配向膜を基板へ塗工する条件、焼成温度条件、配向処理条件の配向膜製作条件において、垂直配向型超ねじれ液晶表示素子を製作する場合と同一の条件で製作した、アンチパラレル型液晶配向素子の基板表面における、液晶分子のダイレクターと基板面間の角度をもってプレチルト角とした。
次に、波長254nm付近に輝線スペクトルを持つ直線偏光紫外線を基板面に対し、θ=45°で0.2〜0.5j/cm2照射して、配向膜付の基板を作成した。
前記配向膜付きの基板に直径5.5μmのスチレンビーズを含んだ熱硬化性接着剤を液晶注入口を残して塗布し、80℃で5分乾燥させた後、2枚の基板をアンチパラレル配向となるように配向膜を内側として重ね合わせて圧着し、接着剤を150℃で90分かけて硬化させた。
接着剤の焼成温度及び時間、あるいは光配向時の光強度は、実施例又は比較例で作成する液晶セルA〜Gと同じ条件にした。
液晶注入口より、カイラル剤が入っていない液晶を注入し、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止して、液晶セルを得た。該セルの液晶のプレチルト角を回転結晶法により測定し、プレチルト角とした。
透過率、急峻性等は、DMS501(オートロニック社製)を用いて測定した。具体的には、100Hzの矩形波を0Vrmsから徐々に高い電圧を印加して5Vrmsまで印加した後、0Vrmsまで、徐々に電圧を下げ、その各印加電圧における光透過率を測定した。
Tmin:電圧無印加時の透過率(%)
Tmax:0〜5Vrmsの電圧印加時の最大透過率(%)
Vr0.9:Tminを0%とし、Tmaxを100%とし、電圧を印加して、透過率が0.9%となる印加電圧(Vrms)
Vr90:Tminを0%とし、Tmaxを100%とし、電圧を印加して、透過率が90%となる印加電圧(Vrms)
急峻性γ:Vr90/Vr0.9
透明性電極層を有する基板上に、垂直配向型配向膜溶液(日産化学工業製SE―1211)を、スピンコーターにより塗布した後、244℃で1時間焼成した。次に、波長254nm付近に輝線スペクトルを持つ直線偏光紫外線を基板面に対し、θ=45°で0.5j/cm2 照射し、配向膜付基板2枚を得た。 該基板に直径5.5μmのスチレンビーズを含んだ熱硬化性接着剤を液晶注入口を残して塗布し、80℃で5分乾燥させた後、2枚の基板を液晶を存在させた時のねじれ角が250°になるように配向膜を内側として重ね合わせて圧着し、接着剤を150℃で90分かけて硬化させ、液晶セルAを得た。
また、液晶素子Aのプレチルト角は約80.2°であった。
さらに、光路中に何も無い状態(空気のみ存在する状態)の光強度を100%とした場合、電圧無印加時の液晶素子Aを光路中に設置した時の光透過率は0.088(%)であった。
なお、この光透過率が低いということは、液晶素子において光抜けが少なく、コントラストが大きいことを意味する。
本例では、実施例1において、垂直配向型配向膜溶液の焼成温度を240℃に代えた他は、実施例1と同様にして、液晶素子Bを作製した。
実施例1と同様に、液晶素子Bの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.11であった。
また、液晶素子Bのプレチルト角は約85.8°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Bの光透過率は0.029(%)であった。
本例では、実施例1において、垂直配向型配向膜溶液の焼成温度を240℃に代えると共に、ねじれ角を200°になるようにさせた他は、実施例1と同様にして、液晶素子Cを作製した。このときのd/pは0.55であった。
実施例1と同様に、液晶素子Cの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.194であった。
また、液晶素子Cのプレチルト角は約85.8°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Cの光透過率は0.028(%)であった。
本例では、実施例1において、誘電率異方性が負であり、Δn=0.186、K33/K11=1.25の液晶組成物(II)にカイラル剤(メルク社製S−811)を約0.98%添加した他は実施例1と同様にして、液晶素子Dを作製した。このときのd/pは0.68であった。
実施例1と同様に、液晶素子Dの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.14であった。
また、液晶素子Dのプレチルト角は約80.2°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Dの光透過率は0.092(%)であった。
本例では、実施例1において、垂直配向型配向膜溶液の焼成温度を246℃に代えた他は、実施例1と同様にして、液晶素子Eを作製した。
実施例1と同様に、液晶素子Eの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.038であった。しかしながら、印加電圧の上昇時と下降時の電気光学特性の曲線が異なり、ヒステリシスが発生した。
通常の液晶ディスプレイとして使用する場合、ヒステリシスが発生すると、高い電圧を印加した状態から、中間の電圧Aを印加した時に得られる透過率と、低い電圧を印加した状態から、中間の電圧Aを印加した時に得られる透過率が異なるため、本来表示されるべき内容と表示が異なり、正確な表示が行えなくなり望ましくない。
また、液晶素子Eのプレチルト角は約77°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Eの光透過率は0.216(%)であった。
以上の結果より、この液晶素子Eは、実施例1〜4に比較して電圧無印加時の光抜けが大きいことが明らかである。
本例では、実施例1において、垂直配向型配向膜溶液の焼成温度を240℃に代えると共に、光照射時の光照射量を0.2j/cm2 とし、液晶材料Dを用いた他は、実施例1と同様にして、液晶素子Fを作製した。
実施例1と同様に、液晶素子Fの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.2であった。
また、液晶素子Fのプレチルト角は約86.2°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Fの光透過率は0.029(%)であった。
本例では、実施例1において、垂直配向型配向膜溶液の焼成温度を240℃に代えると共に、誘電率異方性が負であり、Δn=0.198、K33/K11=1.03の液晶組成物(III)にカイラル剤(メルク社製S―811)を約0.98%添加した他は、実施例1と同様にして、液晶素子Gを作製した。この時のd/pは0.68であった。
実施例1と同様に、液晶素子Gの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.229であった。
また、液晶素子Gのプレチルト角は約84.1°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Gの光透過率は0.036(%)であった。
本例では、液晶組成物(I)にカイラル剤(メルク社製S―811)を約0.64%添加して、液晶材料Hを得た。
ねじれ角を150°になるように配向膜を内側として貼り合わせ、液晶材料Hを用いた他は、実施例1と同様にして、液晶素子Hを作製した。このときのd/pは0.41であった。
実施例1と同様に、液晶素子Hの電気光学特性を測定した結果、急峻性γは1.324であった。
また、液晶素子Hのプレチルト角は約85.5°であった。
さらに、実施例1と同様に光透過率を評価した結果、液晶素子Hの光透過率は0.027(%)であった。
上述した実施例および比較例の結果を、表1に纏めて示す。
図2および図3より、以下の点が明らかとなった。
(1)本発明の構成を満たす液晶素子Aは、広い範囲のチルト角(81°〜89°)やツイスト角(180°〜270°)において、急峻性γを1.2以下とすることができる。
(2)これに対して、本発明の構成を満足しない液晶素子Gは、急峻性γが1.2を越えるものとなる。
以上の結果より、本発明によれば、急峻性が高く(1.2以下)、かつ、ヒステリシスの少ない垂直配向型超ねじれ液晶表示素子が得られることが判明した。
Claims (4)
- 基材の一面に電極と配向膜とを順に重ねて設け、該配向膜が相互に対向するように配してなる一対の基板と、該一対の基板の間に挟持されるように設けられた負の誘電異方性を有する液晶材料と、を少なくとも備えてなり、
前記一対の基板は共に、前記液晶材料をなす液晶分子に対して80°〜86°のプレチルト角を与える配向制御能を有し、
前記液晶材料は、少なくとも一種のカイラル剤を含有し、曲がりの弾性定数K33を広がりの弾性定数K11により除した値が1.25以上であり、前記配向膜によって規定されるねじれ角が180°以上280°以下である、
ことを特徴とする垂直配向型超ねじれ液晶表示素子。 - 前記ねじれ角が240°以上270°以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直配向型超ねじれ液晶表示素子。
- 前記液晶材料の自然ねじれピッチをp、前記一対の基板同士の間隔をdと定義したとき、前記dを前記pにより除した値が0.55以上0.75以下であることを特徴とする請求項1に記載の垂直配向型超ねじれ液晶表示素子。
- 基材の片面に電極と配向膜とを順に重ねて設け、該配向膜が相互に対向するように配してなる一対の基板と、該一対の基板の間に挟持されるように設けられた負の誘電異方性を有する液晶材料と、を少なくとも備えてなり、
前記一対の基板は共に、前記液晶材料をなす液晶分子に対して80°〜86°のプレチルト角を与える配向制御能を有し、前記液晶材料は、少なくとも一種のカイラル剤を含有し、曲がりの弾性定数K33を広がりの弾性定数K11により除した値が1.25以上であり、前記配向膜によって規定されるねじれ角が180°以上280°以下である垂直配向型超ねじれ液晶表示素子の製造方法であって、
前記プレチルト角を発生させる方法として光配向処理を用いることを特徴とする垂直配向型超ねじれ液晶表示素子の製造方法。
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