JP2007098821A - 液滴吐出ヘッド及び液滴吐出装置並びにそれらの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来と同じ構成で、リザーバのコンプライアンス、流路抵抗に係る問題を解決し、吐出性能が高い液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、それらの製造方法を得る。
【解決手段】液体を液滴として吐出するノズル孔31を複数有するノズル基板30と、各ノズル孔31に合わせて設けられ、振動して液体を加圧する振動板22を備える吐出室21となる複数の凹部21a及び複数の凹部21aに供給する液体をためるリザーバ26の一部となるリザーバ貫通溝穴26aを有するキャビティ基板20と、振動板22を振動させるための固定電極12及びキャビティ基板20との接面側にリザーバ26の一部となるリザーバ凹部16を有する電極基板10とを少なくとも備え、キャビティ基板20と電極基板10とが接合され、少なくともリザーバ貫通溝穴26aとリザーバ凹部16とによりリザーバ26を形成するものである。
【選択図】図1

Description

本発明は液滴吐出ヘッド、液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置等に関するものである。
例えばシリコン等を加工して微小な素子等を形成する微細加工技術(MEMS:Micro Electro Mechanical Systems)が急激な進歩を遂げている。微細加工技術により形成される微細加工素子の例としては、例えば液滴吐出方式のプリンタのような記録(印刷)装置で用いられている液滴吐出ヘッド(インクジェットヘッド)、マイクロポンプ、光可変フィルタ、モータのような静電アクチュエータ、圧力センサ等がある。
液滴吐出方式(代表的なものとして、インクを吐出して印刷等を行うために用いるインクジェットがある)は、家庭用、工業用を問わず、あらゆる分野の印刷(プリント)等に利用されている。液滴吐出方式は、微細加工素子である例えば複数のノズルを有する液滴吐出ヘッドを、対象物との間で相対移動させ、対象物の所定の位置に液体を吐出するものである。近年では、液晶(Liquid Crystal)を用いた表示装置を作製する際のカラーフィルタ、有機電界発光(Organic ElectroLuminescence :以下、OELという)素子を用いた表示基板(OLED)、DNA等、生体分子のマイクロアレイ等の製造にも利用されている。
滴吐出方式を実現する吐出ヘッドとして、吐出液体を溜めておく吐出室の少なくとも一面の壁(ここでは底壁とする。この壁は他の壁と一体形成されているが、以下、この壁のことを振動板ということにする)が撓んで形状が変化するようにしておき、振動板を撓ませて吐出室内の圧力を高め、吐出室と連通するノズルから液滴を吐出させるものがある。そして、このような液滴吐出ヘッドを製造する際の材料として、例えば、ガラス基板、シリコン基板が用いられる。そして、各基板に部材形成を行い、積層し、接合して製造をしている(例えば特許文献1参照)。
各吐出室は、リザーバと呼ばれる共通液室(同じ基板上に形成される)と連通しており、リザーバから液体の供給を受ける。各吐出室がリザーバを介してつながっている場合、ある吐出室が他の吐出室に影響(干渉)を及ぼす場合がある。例えばある吐出室の振動による圧力がリザーバを介して振動していない吐出室に加わり、振動していない吐出室に連通するノズルから液体を吐出させてしまうことがある。また、同時に複数のノズルから液体を吐出してしまい、リザーバから各吐出室に充分に液体供給が行えず、吐出する液滴の量が減ってしまうこともある。
前者に関しては、リザーバにおけるコンプライアンスを高めるとよい。また後者に関しては、コンプライアンスを高めるとともに、流路抵抗を低くするとよい。ここで、コンプライアンスを高めるために、例えばダイヤフラム等を設けて液体に加わる圧力を緩衝させているが、ダイヤフラム部分がシリコンを材料としている場合、コンプライアンスを高めるにはシリコンはかたく、そのため限界がある。
そこで、さらにリザーバの容積を大きくすると、加わった圧力で液体自身が圧縮できるだけの容量を確保できるため、コンプライアンスを高くすることができる。また、断面積が広がり、極端なアスペクト比でない限り、流路抵抗を低くすることができる。したがって、リザーバの容積を広げることが、液滴吐出ヘッドの吐出性能の安定につながる。
特開平11−115179号公報
ただ、一方で液滴吐出ヘッドのノズルはますます高密度化する傾向にある。そのため、吐出室の間隔も狭まり、吐出室間の壁からの圧力伝達を防ぐために、吐出室の高さは低くなる傾向にある。そのため、同じ基板に形成されるリザーバの高さも低く、容積が小さくなっている。これを解消するために、リザーバを独立した基板で設けた液滴吐出ヘッドも提案されているが、その場合、リザーバ基板を新たに設ける必要があり、コストがかかることになる。
そこで、本発明は、従来と同じ構成で、リザーバのコンプライアンス、流路抵抗に係る問題を解決し、吐出性能が高い液滴吐出ヘッド、液滴吐出装置、それらの製造方法を得ることを目的とする。
本発明に係る液滴吐出ヘッドは、液体を液滴として吐出するノズル孔を複数有するノズル基板と、各ノズル孔に合わせて設けられ、振動して液体を加圧する振動板を備える吐出室となる複数の第1の凹部及び複数の第1の凹部に供給する液体をためるリザーバの一部となる貫通溝穴を有するキャビティ基板と、振動板を振動させるための固定電極及びキャビティ基板との接面側にリザーバの一部となる第2の凹部を有する電極基板とを少なくとも備え、キャビティ基板と電極基板とが接合され、少なくとも貫通溝穴と第2の凹部とによりリザーバを形成するものである。
本発明によれば、キャビティ基板だけでなく、電極基板にまたがる大きなリザーバを形成し、容積を大きくすることができるので、リザーバの容積を確保するため、リザーバ用に独立した基板を設けなくても、3つの基板により、コンプライアンスを高くしてクロストークを抑え、さらに流路抵抗を低くし、吐出室への液体供給を滞りなく行うことができる。そのため、リザーバ用の基板を独立して作製し、他の基板と接合するための材料、時間等のコストを削減することができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドのノズル基板は、リザーバの一部となる第3の凹部をさらに有し、第3の凹部、貫通溝穴及び第2の凹部によりリザーバを形成する。
本発明によれば、第3の凹部をノズル基板に形成してリザーバの一部とするようにしたので、さらに容積の大きいリザーバを有する液滴吐出ヘッドを得ることができる。
また、本発明に係る液滴吐出装置は、上記の液滴吐出ヘッドを搭載したものである。
本発明によれば、キャビティ基板だけでなく、電極基板に形成した第2の凹部により、リザーバの容積を大きくするようにして、コンプライアンスを高くし、流路抵抗を低くして吐出特性がよい液滴吐出ヘッドによる液滴吐出装置を得ることができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、液体を加圧する振動板を備える複数の吐出室となる複数の第1の凹部及び複数の吐出室に供給する液体をためるリザーバの一部となる貫通溝穴をキャビティ基板に形成し、静電気力により振動板を振動させるための固定電極及びキャビティ基板との接面側にリザーバの一部となる第2の凹部を電極基板に形成する工程と、キャビティ基板と電極基板とを接合し、さらにキャビティ基板と液体を液滴として吐出するノズル孔を複数有するノズル基板とを接合する工程とを有する。
本発明によれば、キャビティ基板だけでなく、電極基板にもリザーバの一部を形成し、
容積を大きくすることができるので、リザーバの容積を確保するため、リザーバ用に独立した基板を設けなくても、コンプライアンスを高くしてクロストークを抑え、さらに流路抵抗を低くし、吐出室への液体供給を滞りなく行うことができる液滴吐出ヘッドを製造することができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法では、第2の凹部をウェットエッチング法による加工を行って形成する。
本発明によれば、第2の凹部形成をウェットエッチング法で行うようにしたので、大量の液滴吐出ヘッドを製造する場合でも一括して形成加工を行うことができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法では、第2の凹部をドライエッチング法による加工を行って形成する。
本発明によれば、第2の凹部を精度良く製造する場合に都合がよい。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法では、第2の凹部をドリルによる研削による加工を行って形成する。
本発明によれば、例えば座繰り用ドリル等を用いて、第2の凹部を簡単に形成することができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、第2の凹部をサンドブラスト法による加工を行って形成する。
本発明によれば、第2の凹部形成を、炭化シリコン等の砥粒等を吹き付けるサンドブラスト法で行うようにしたので、簡単で精度の高い第2の凹部を形成することができる。
また、本発明に係る液滴吐出ヘッドの製造方法は、ガラスからなる電極基板をプレス加工して第2の凹部を形成する。
本発明によれば、簡単に、はやく第2の凹部を形成することができる。そのため、大量生産を行う場合に都合がよい。
また、本発明に係る液滴吐出装置の製造方法は、上記の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造する。
本発明によれば、キャビティ基板だけでなく、電極基板に形成した第2の凹部により、リザーバの容積を大きくするようにして、コンプライアンスを高くし、流路抵抗を低くして吐出特性がよい液滴吐出ヘッドを有する液滴吐出装置を製造することができる。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。図1では液滴吐出ヘッドの一部を示している。また、図2は液滴吐出ヘッドの断面図である。本実施の形態では、例えば静電方式で駆動する静電アクチュエータを用いるデバイスの代表として、フェイスイジェクト型の液滴吐出ヘッドについて説明する。(なお、構成部材を図示し、見やすくするため、図1、図2を含め、以下の図面では各構成部材の大きさの関係が実際のものと異なる場合がある。また、図の上側を上とし、下側を下として説明する)。
図1に示すように本実施の形態に係る液滴吐出ヘッドは、電極基板10、キャビティ基板20及びノズル基板30の3つの基板が下から順に積層されて構成される。ここで本実施の形態では、電極基板10とキャビティ基板20とは陽極接合により接合する。また、キャビティ基板20とノズル基板30とはエポキシ樹脂等の接着剤を用いて接合する。
電極基板10は、厚さ約1mmの例えばホウ珪酸系の耐熱硬質ガラス等の基板を主要な材料としている。本実施形態では、ガラス基板とするが、場合によっては例えばシリコン基板等とすることもできる。電極基板10の表面には、後述するキャビティ基板20の吐出室21となる凹部21aに合わせ、例えば深さ約0.3μmを有する複数の凹部11が形成されている。そして、凹部11の内側(特に底部)に、キャビティ基板20の各吐出室21(振動板22)と対向するように固定電極となる個別電極12が設けられ、さらにリード部13及び端子部14が一体となって設けられている(以下、特に区別する必要がない限り、これらを合わせて個別電極12として説明する)。振動板22と個別電極12との間には、振動板22が撓む(変位する)ことができる一定のギャップ(空隙)が凹部11により形成されている。個別電極12は、例えばスパッタ法により、ITO(Indium Tin Oxide:インジウム錫酸化物)を0.1μmの厚さで凹部11の内側に成膜することで形成される。さらに本実施の形態では、電極基板10には、各吐出室21に液体を供給するリザーバ(共通液室)31の一部となるリザーバ凹部16が設けられている。リザーバ凹部16の深さは特に限定するものではないが、ここでは約700μmとする。他にも外部のタンク(図示せず)から供給された液体をリザーバ26に取り入れるための液体取り入れ口15も設けられている。
キャビティ基板20は、例えば表面が(110)面方位のシリコン単結晶基板(以下、シリコン基板という)を主要な材料としている。キャビティ基板20には、吐出させる液体を一時的にためる吐出室21となる凹部(底壁が可動電極となる振動板22となっている)21aが形成されている。また、リザーバ凹部16と共にリザーバ26の一部となるリザーバ貫通溝穴26aも形成されている(ある程度の断面積を確保できていればリザーバ貫通溝穴26aとリザーバ凹部の形状が異なっていてもよい)。そして、キャビティ基板20の下面(電極基板10と対向する面)には、振動板22と個別電極12との間を電気的に絶縁するためのTEOS膜(ここでは、Tetraethyl orthosilicate Tetraethoxysilane:テトラエトキシシラン(珪酸エチル)を用いてできるSiO2 膜をいう)である絶縁膜23をプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:TEOS−pCVDともいう)法を用いて、0.1μm成膜している。ここでは絶縁膜23をTEOS膜としているが例えばAl23(酸化アルミニウム(アルミナ))を用いてもよい。さらに、外部の電力供給手段(図示せず)から基板(振動板22)に個別電極12と反対の極性の電荷を供給する際の端子となる共通電極端子27を備えている。
ノズル基板30についても、例えばシリコン基板を主要な材料とする。ノズル基板30には、複数のノズル孔41が形成されている。各ノズル孔41は、振動板22の駆動により、吐出室21からの液体を液滴として外部に吐出する。ノズル孔41を複数段で形成すると、液滴を吐出する際の直進性向上が期待できる。本実施の形態ではノズル孔41を2段で形成する。また、ノズル基板30の下面には吐出室21とリザーバ26とを連通させるためのオリフィス32が設けられている。さらに、本実施の形態では、リザーバ26の一部となって、リザーバ26の容積を大きくし、さらに振動板22が撓むことでリザーバ26方向に加わる圧力を緩衝してクロストークを防ぐ効果をより高めるためにダイヤフラム33を設けている。ダイヤフラム33としてノズル基板30の下面に深さ約60μmの凹部を形成する。
図2において、吐出室21はノズル孔41から吐出させる液体をためておく。吐出室21の底壁である振動板22を撓ませることにより、吐出室21内の圧力を高め、ノズル孔41から液滴を吐出させる。ここで、本実施の形態では、電極とすることができ、かつエッチング工程の際に都合がよい高濃度のボロンドープ層をシリコン基板に形成し、振動板22を構成するものとする。
発振回路41は、ワイヤ、FPC(Flexible Print Circuit)等の配線42を介して電気的に端子部14、共通電極端子27と接続され、個別電極12、キャビティ基板20(振動板22)に電荷(電力)の供給及び停止を制御する。発振回路41は例えば24kHzで発振し、個別電極12に0Vと30Vのパルス電位を印加して電荷供給を行う。発振回路41が発振駆動することで、個別電極12に電荷を供給して正に帯電させ、振動板22を相対的に負に帯電させると、静電気力により個別電極12に引き寄せられて撓む。これにより吐出室21の容積は広がる。そして電荷供給を止めると振動板22は元に戻るが、そのときの吐出室21の容積も元に戻り、その圧力により差分の液滴が吐出する。この液滴が例えば記録対象となる記録紙に着弾することによって印刷等の記録が行われる。また、封止部材25は、異物、水分(水蒸気)等がギャップに浸入しないように、ギャップを外気から遮断し、密閉するために設ける。
本実施の形態は、電極基板10にリザーバ凹部16を設け、またキャビティ基板20にリザーバ貫通溝穴26aを設けて、リザーバ26の容積をできる限り増やすようにしたものである。リザーバ26の容積を増やすことで、コンプライアンスが増し、流路抵抗が低くなるため、リザーバ26を介したクロストークの発生を防ぐことができる。しかも、電極基板10にリザーバ凹部16を形成し、キャビティ基板20を厚くすることなしに容積を増やすため、吐出室21の壁面の高さ(凹部21aの深さ)を低く保つことができ、吐出室21の隔壁におけるクロストークも防ぐことができる。
ここで、電極基板100の厚さが約1mmであり、リザーバ凹部16の深さを約700μm(0.7mm)程度とする。従来のリザーバは、厚さ約180μmの基板に対して、深さ約150μmであったことから考えると、(700+180)/150=約5.9倍、ダイヤフラム33も含めると約6.3倍の容積増となる。
図3は第1の実施の形態に係る液滴吐出ヘッドの電極基板10の作製工程を表す図である。図3に基づいて電極基板10の作製方法について説明する。なお、実際には、ウェハ単位の複数個分の液滴吐出ヘッドについて、各工程を行い、部材を同時形成するが、図3ではその一部分だけを示している(以下、図4についても同じ)。
約1mmのガラス基板61の一方の面に対し、例えば、クロム(Cr)膜62を0.03μm成膜する。そして、さらに金(Au)膜63を0.07μm成膜する(図3(a))。ここでクロムは金をマスクとしてガラス基板をエッチングする際の下地材となる。クロム膜62、金膜63の形成は、化学的気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition )法、物理的蒸着(PVD:Physical Vapor Deposition )法等で行う。例えば、PVD法としては、スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティング等の方法がある。
金膜63の成膜後、金膜63上の全面にフォトレジスト(図示略)を塗布する。そして、フォトリソグラフィ(Photolithography)法を用いて、金膜43上の全面に塗布したフォトレジスト用の感光性樹脂をマスクアライナ等で露光し、現像液で現像することで、ガラス基板61に、後に電極基板11の凹部11となる部分を形成するためのフォトレジストパターン64を形成する(図3(b))。
次に、例えば、塩酸又は硫酸(クロム膜62の場合)、あるいは王水又は酸素や水の存在下でシアン化物イオンを含む溶液(金膜63の場合)によりウェットエッチングを行い、金膜63及びクロム膜62の不要な部分を除去する(図3(c))。その後、フォトレジスト64を除去する。これによりガラス基板41上には、クロム膜62及び金膜63による凹部11となる部分のエッチングパターンが形成される。次に、例えばふっ酸水溶液(HF)によりガラス基板61をエッチングして、凹部11を形成する(図3(d))。ここまでの工程の代わりに、例えばナノインプリント技術による型押しにより凹部11を形成することもできる。
その後、個別電極12の形状に合わせてマスク65を形成した後、スパッタ法等により、所定の部分にITOを0.1μm成膜して個別電極12を形成する(図3(e))。
マスク65を除去した後、ガラス基板61の両面に、マスクのためのドライフィルム66を貼付する。パターニングを行ってドライフィルム66のリザーバ凹部16及び液体取り入れ口15となる部分を開口した後(図3(f))、サンドブラスト法を用いて、深さ約700μmのリザーバ凹部16を形成する。また、例えばリザーバ凹部16の裏面から液体取り入れ口15となる穴を形成する(図3(g))。ここで、ドリル等の切削加工により液体取り入れ口15を形成してもよい(この場合には、液体取り入れ口15に対応する部分のドライフィルムも開口する必要はない)。そして、ドライフィルム66を除去して電極基板10を作製する(図3(h))。
図4は第1の実施の形態に係るキャビティ基板20の作製から液滴吐出ヘッドの製造までを表す図である。シリコン基板61の片面(電極基板10との接合面側となる)を鏡面研磨し、例えば約180μmの厚みの基板を作製する。次に、シリコン基板61のボロンドープ層62を形成する面(鏡面研磨した面)を、B23を主成分とする固体の拡散源に対向させて石英ボートにセットする。これらを窒素雰囲気の縦型炉に入れ、シリコン基板61中にボロンを拡散させ、ボロンドープ層62を形成する(図4(a))。
そして、TEOSによる酸化シリコンのハードマスク(以下、TEOSハードマスクという)63を例えば、プラズマCVD法により1.5μm成膜する。ここで、熱酸化を行ってシリコン基板61の表面を酸化してハードマスクを形成してもよい。TEOSハードマスク63を成膜した後、吐出室21となる凹部21a、リザーバ貫通溝穴26a、電極取出し口24となる部分のTEOSハードマスク63をエッチングするため、レジストパターニングを施す。そして、例えばフッ化化合物系のフッ酸(HF)、バッファードフッ酸(BHF)の水溶液を用いてTEOSハードマスク63が無くなるまで、それらの部分をエッチングしてTEOSハードマスク63をパターニングし、それらの部分について、シリコン基板61を露出させる。エッチングした後にレジストを剥離する(図4(b))。
次に、ウェットエッチングを行う。まず、エッチング速度を上げるために、接合済み基板を35wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、吐出室21(凹部21a)、リザーバ貫通溝穴26、電極取出し口24となる部分の厚みが約10μmになるまで異方性ウェットエッチング(以下、ウェットエッチングという)を行う。さらに、面荒れ等を抑制して仕上がりをよくするため、接合済み基板を3wt%の濃度の水酸化カリウム水溶液に浸し、ボロンドープ層62が露出し、エッチングの進行が極度に遅くなるエッチングストップが十分効いたものと判断するまでウェットエッチングを続ける(図4(c))。ここでは、リザーバ貫通溝穴26をウェットエッチングで形成しているが、リザーバ凹部16と形状を合わせるためにドライエッチング等を用いて形成してもよい。
ウェットエッチングを終了すると、接合済み基板をふっ酸水溶液に浸し、シリコン基板61表面のTEOSハードマスク63を剥離する。そして、例えばプラズマCVD法により、ボロンドープ層62を形成した面に絶縁膜23を0.1μm成膜する。凹部21aを形成した面に対しては、絶縁膜23と同様の方法で液体保護膜を成膜する場合もある。さらに共通電極端子27となる部分を開口したマスクを、シリコン基板61に取り付ける。そして、例えばプラチナ(Pt)をターゲットとしてスパッタ等を行い、共通電極端子27を形成する(図4(d))。
キャビティ基板20と電極基板10を360℃に加熱した後、電極基板10に負極、キャビティ基板20に正極を接続して、800Vの電圧を印加して陽極接合を行う。リザーバ貫通溝穴26a及び電極取出し口24となる部分のボロンドープ層62を除去する。除去については、ピン等で突いて割ってもよいし、例えばRIEドライエッチング等でエッチングを行ってもよい。そして、電極取出し口24の部分に合わせて開口したシリコンマスクを、接合済み基板のシリコン基板61側の表面に取り付け、蒸着等により封止部材25を形成して、ギャップを封止する(図4(e))。
あらかじめ別工程で作製していたノズル基板30を、例えばエポキシ系接着剤により、接合済み基板のキャビティ基板20側から接着し、接合する。そして、ダイシングラインに沿ってダイシングを行い、個々の液滴吐出ヘッドに切断し、液滴吐出ヘッドが完成する(図4(f))。
以上のように実施の形態1によれば、電極基板10にリザーバ凹部16を形成し、キャビティ基板20にリザーバ貫通溝穴26aを設け、電極基板10とキャビティ基板20にまたがる容積の大きなリザーバ26を形成した液滴吐出ヘッドを得るようにしたので、3層の基板構造の液滴吐出ヘッドで、リザーバ用に独立した基板を設けた4層の基板構造と同様に、コンプライアンスを高くしてクロストークを抑え、さらに流路抵抗を低くし、吐出室への液体供給を滞りなく行うことができる。そのため、リザーバ用の基板を独立して作製し、他の基板と接合するための材料、時間等のコストを削減することができる。さらに、ノズル基板30にダイヤフラム33を設けると、さらに容積を大きくでき、また吐出性能を高めることができる。そして、リザーバ凹部16はサンドブラスト法で簡単に形成することができる。
実施の形態2.
上記の実施の形態1では、サンドブラスト法を用いてリザーバ凹部16の形成を行ったが、これに限定するものではない。例えば、ウェットエッチング法を用いて、ガラスをエッチングすることにより、リザーバ凹部16を形成することができる。一度に大量に作製することができるので、都合がよい。また、ドライエッチング法を用いてもよい。ここで、ウェットエッチング法を用いる場合は、例えば前述したフッ化化合物系の水溶液、アルカリ系の水酸化カリウム(KOH)水溶液等をエッチャントとする。また、ドライエッチングの場合には、SF6 (六フッ化シリコン)をガスとして用いる。さらに、例えば、ダイヤモンド粒子を研削用砥石とした座繰り用のドリルを用いて所望の形に研削することで、リザーバ凹部16を形成することができる。場合によっては、溶融したガラスをプレス等することでリザーバ凹部16を簡単に成型することもできる。
実施の形態3.
図5は上述の実施の形態で製造した液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置(プリンタ100)の外観図である。また、図6は液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。図5及び図6の液滴吐出装置は液滴吐出方式(インクジェット方式)による印刷を目的とする。また、いわゆるシリアル型の装置である。図9において、被印刷物であるプリント紙110が支持されるドラム101と、プリント紙110にインクを吐出し、記録を行う液滴吐出ヘッド102とで主に構成される。また、図示していないが、液滴吐出ヘッド102にインクを供給するためのインク供給手段がある。プリント紙110は、ドラム101の軸方向に平行に設けられた紙圧着ローラ103により、ドラム101に圧着して保持される。そして、送りネジ104がドラム101の軸方向に平行に設けられ、液滴吐出ヘッド102が保持されている。送りネジ104が回転することによって液滴吐出ヘッド102がドラム101の軸方向に移動するようになっている。
一方、ドラム101は、ベルト105等を介してモータ106により回転駆動される。また、プリント制御手段107は、印画データ及び制御信号に基づいて送りネジ104、モータ106を駆動させ、また、ここでは図示していないが、発振駆動回路を駆動させて振動板4を振動させ、制御をしながらプリント紙110に印刷を行わせる。
ここでは液体をインクとしてプリント紙110に吐出するようにしているが、液滴吐出ヘッドから吐出する液体はインクに限定されない。例えば、カラーフィルタとなる基板に吐出させる用途においては、カラーフィルタ用の顔料を含む液体、有機化合物等の電界発光素子を用いた表示パネル(OLED等)の基板に吐出させる用途においては、発光素子となる化合物を含む液体、基板上に配線する用途においては、例えば導電性金属を含む液体を、それぞれの装置において設けられた液滴吐出ヘッドから吐出させるようにしてもよい。また、液滴吐出ヘッドをディスペンサとし、生体分子のマイクロアレイとなる基板に吐出する用途に用いる場合では、DNA(Deoxyribo Nucleic Acids :デオキシリボ核酸)、他の核酸(例えば、Ribo Nucleic Acid:リボ核酸、Peptide Nucleic Acids:ペプチド核酸等)タンパク質等のプローブを含む液体を吐出させるようにしてもよい。その他、布等の染料の吐出等にも利用することができる。
実施の形態1に係る液滴吐出ヘッドを分解して表した図である。 液滴吐出ヘッドの断面図である。 第1の実施の形態に係る電極基板10の作製工程を表す図である。 キャビティ基板20の作製から液滴吐出ヘッドの製造までの図である。 液滴吐出ヘッドを用いた液滴吐出装置の外観図である。 液滴吐出装置の主要な構成手段の一例を表す図である。
符号の説明
10 電極基板、11 凹部、12 個別電極、13 リード部、14 端子部、15 液体取り入れ口、16 リザーバ凹部、20 キャビティ基板、21 吐出室、22 振動板、23 絶縁膜、24 電極取出し口、25 封止部材、26 リザーバ、26a リザーバ貫通溝穴、27 共通電極端子、30 ノズル基板、31 ノズル孔、32 オリフィス、33 ダイヤフラム、41 発振回路、42 配線、51 ガラス基板、52 クロム膜、53 金膜、54 フォトレジストパターン、55 マスク、56 ドライフィルム、61 シリコン基板、62 ボロンドープ層、63 TEOSハードマスク、100 プリンタ、101 ドラム、102 液滴吐出ヘッド、103 紙圧着ローラ、104 送りネジ、105 ベルト、106 モータ、107 プリント制御手段、110 プリント紙。

Claims (10)

  1. 液体を液滴として吐出するノズル孔を複数有するノズル基板と、
    各ノズル孔に合わせて設けられ、振動して前記液体を加圧する振動板を備える吐出室となる複数の第1の凹部及び該複数の第1の凹部に供給する前記液体をためるリザーバの一部となる貫通溝穴を有するキャビティ基板と、
    前記振動板を振動させるための固定電極及び前記キャビティ基板との接面側に前記リザーバの一部となる第2の凹部を有する電極基板とを少なくとも備え、
    前記キャビティ基板と前記電極基板とが接合され、少なくとも前記貫通溝穴と第2の凹部とによりリザーバを形成することを特徴とする液滴吐出ヘッド。
  2. 前記ノズル基板は、前記リザーバの一部となる第3の凹部をさらに有し、該第3の凹部、前記貫通溝穴及び第2の凹部により前記リザーバを形成することを特徴とする請求項1記載の液滴吐出ヘッド。
  3. 請求項1又は2記載の液滴吐出ヘッドを搭載したことを特徴とする液滴吐出装置。
  4. 液体を加圧する振動板を備える複数の吐出室となる複数の第1の凹部及び前記複数の吐出室に供給する液体をためるリザーバの一部となる貫通溝穴をキャビティ基板に形成し、静電気力により前記振動板を振動させるための固定電極及び前記キャビティ基板との接面側に前記リザーバの一部となる第2の凹部を電極基板に形成する工程と、
    前記キャビティ基板と前記電極基板とを接合し、さらに前記キャビティ基板と前記液体を液滴として吐出するノズル孔を複数有するノズル基板とを接合する工程と
    を有することを特徴とする液滴吐出ヘッドの製造方法。
  5. 前記第2の凹部をウェットエッチング法による加工を行って形成することを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  6. 前記第2の凹部をドライエッチング法による加工を行って形成することを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  7. 前記第2の凹部をドリルによる研削による加工を行って形成することを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  8. 前記第2の凹部をサンドブラスト法による加工を行って形成することを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  9. ガラスからなる前記電極基板をプレス加工して前記第2の凹部を形成することを特徴とする請求項4記載の液滴吐出ヘッドの製造方法。
  10. 請求項4〜9のいずれかに記載の液滴吐出ヘッドの製造方法を適用して液滴吐出装置を製造することを特徴とする液滴吐出装置の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009101643A (ja) * 2007-10-24 2009-05-14 Seiko Epson Corp 液体噴射ヘッド及び液体噴射装置
CN113584486A (zh) * 2021-08-31 2021-11-02 深圳市宇通瑞特科技有限公司 一种蚀刻喷淋均压装置

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