JP2007098747A - インクジェット記録用紙、インクジェット記録方法および記録物 - Google Patents

インクジェット記録用紙、インクジェット記録方法および記録物 Download PDF

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Abstract

【課題】インク吸収性が良好で高速記録適性に優れ、高い耐候性と保存安定性を有する、高光沢・高品位のインクジェットプリントを与えるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供する。染料インクを用いた場合に画像濃度によらず均一な光沢感(光沢度、写像性)と優れたプリント耐候性と保存安定性を与えることができるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供する。
【解決手段】支持体上に、有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層としての多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録用紙、インクジェット記録方法および記録物に関する。
近年、インクジェット記録材料は、急速にその画質向上が図られ、写真画質に迫りつつある。特に、写真画質に匹敵する画質をインクジェット記録で達成するために、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の面からもその改良が進んでおり、高平滑性の支持体上に微粒子と親水性ポリマーからなる多孔質層を設けた空隙型の記録用紙は、高い光沢を有する、鮮やかな発色を示す、あるいはインク吸収性及び乾燥性に優れていることなどから、最も写真画質に近いものの一つになりつつある。特に、非吸水性支持体を使用した場合は、吸水性支持体に見られるようなプリント後のコックリング、いわゆる「しわ」の発生がなく、高平滑な表面を維持できるため、より高品位なプリントを得ることができ、徐々にインクジェット記録で作製する写真プリントの主流になってきた。
インクジェット記録は、一般にインク溶媒として水および水溶性溶剤を用いる水系インクを用いるものと、非水系の油性溶剤を用いるものとに分けられ、各々色材に染料を用いるタイプ、顔料を用いるタイプがあり、高画質の記録画像を得るためにはそれぞれのタイプに適応した専用紙が必要となる。インクに関しては、環境面、安全面から水系インクが主流となっている。
一方、水溶性染料インクを用いたインクジェットプリントは画像の鮮明性が高くかつ均一な表面光沢を有する写真画質に匹敵するカラープリントが得られる。しかしながら、この水溶性染料を用いたプリントでは、顔料インクに比較して保存性が悪く、太陽光あるいはオゾンや他の酸化性ガスなどによる褪色、更には画像の滲みが大きいことが課題となっている。特に微小な多孔質層を設けた空隙型の記録用紙では、染料と室内の空気との接触面積が広くなるため、空気中の酸化性ガスによる退色が大きく改良が望まれている。
例えば、インクにラテックスあるいは樹脂微粒子を添加することで、耐光性やオゾンガス褪色性を向上する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、インクにラテックスあるいは樹脂微粒子を添加する方法は、オゾンガス褪色防止効果に一定の効果を示すものの、以下の課題があることが判明した。
すなわち、第1の課題は、インクが付与されたところの光沢度が向上するが、白地は光沢度が変わらない。その結果、画像部/非画像部に光沢差が生じてしまうことである。
第2の課題は、インク量の多い高濃度部から中間濃度部では良好なオゾン褪色防止効果が認められるが、インク付与量の少ないところでの効果が不十分なため、むしろインク付与量が数ないところの褪色が目立ってしまう。あるいは2次色、多次色部で良好なオゾン褪色防止効果が認められるが、純色に近い部分で褪色が目立ってしまい、不自然が画像になってしまう。第3の課題は、白地に隣接した画像部位ではオゾンガス等の有害ガスに対する褪色防止効果が十分に得られていない。これは隣接する白地部からのオゾンガスの進入、及びオゾンガスの画像部への拡散によるものと考えられる。
上記課題に対して、画像保存性向上もしくは光沢向上を目的に、有色インク付着部位に無色の樹脂微粒子を含有する液を付与する技術が開示されているが(例えば、特許文献2、3参照)、プリントの光沢差の解消や、白地に隣接した画像部位でのオゾンガスに対する褪色防止効果が得られない。更に有色インク付与部ではインク溢れにより画質、光沢が劣化する。
また、有色インクの付与されていない領域に、無色インクを付与する技術が開示されている。例えば、実質的に着色剤を含有せず、樹脂微粒子を含有する無色インク付量を可変とすることで画像濃度域違いでも安定してオゾン褪色性、光沢性を改良する手段が開示されている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、樹脂微粒子を含有するインクを用いて多孔質インク受容層にプリントした場合には、プリント後に多孔質インク層のプリント表面で樹脂微粒子が自然融着することによって樹脂被覆膜が形成されることで、インク受容層に打ち込まれたインク中の各種溶剤が蒸発しきれずにインク受容層内部に封入、残存してしやすいため、プリント後の皮膜失透に起因する発色性の低下や、プリントが一定の熱湿条件下で保存されると残存溶媒の拡散とともに着色剤である染料が拡散し、画像がぼやけたり、鮮鋭感が劣化するといった、いわゆる滲み耐性やプリント後の経時保存での濃度変動が樹脂微粒子を含有しない通常のインクと比較しても大きく劣化するという問題が生じてしまうことが分かった。
また、本発明の水溶性金属塩を最表層に含有するインク受容層と樹脂微粒子を含有するインクを用いることにより、優れたインク吸収性と光沢均一性、保存安定性を両立できることを見出し、その結果、優れたプリント品質と耐候性を改良した記録用紙の提供が可能となることが分かった。
特開2002−240413号公報 国際特許第00/06390号明細書 特開2001−39006号公報 特開2005−88411号公報
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、インク吸収性が良好で高速記録適性に優れ、高い耐候性と保存安定性を有する、高光沢・高品位のインクジェットプリントを与えるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供することにある。特には、染料インクを用いた場合に画像濃度によらず均一な光沢感(光沢度、写像性)と優れたプリント耐候性と保存安定性を与えることができるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供することにある。
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1)支持体上に、下記で定義する有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層としての多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
有機微粒子A:SP値が18.41〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子で、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
有機微粒子B:下記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマーを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
Figure 2007098747
〔式中、Xは−O−または−N(R2)−を表し、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xが−O−の場合、Jは、炭素数2〜18を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有しても良いアルキレン基であり、Yは、ヒドロキシル基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表し、Xが−N(R2)−の場合、Jは、単結合または炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有してもよいアルキレン基であり、Yは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表す。〕
(2)少なくとも1種の樹脂微粒子を含有するインクジェット記録インクを用いてインクジェット記録用紙に記録するインクジェット記録方法において、該インクジェット記録用紙が支持体上に前記(1)項で定義する有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層として少なくとも1層の多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙であることを特徴とするインクジェット記録方法。
(3)前記樹脂微粒子を含有するインクジェット記録インクが、少なくとも1種の着色剤を含有する有色インクと、実質的に着色剤を含まない無色インクからなり、該無色インク中の樹脂微粒子のインクジェット記録媒体への付着量(g/m2)を、記録部位毎に該有色インクの樹脂微粒子の付着量に応じて可変させ両インクにより付与される樹脂微粒子総量を一定範囲内になるように調整制御したことを特徴とする前記(2)項に記載のインクジェット記録方法。
(4)前記上層の多孔質層が、少なくとも1種の水溶性多価金属化合物を含有することを特徴とする前記(2)〜(3)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
(5)前記(2)〜(4)のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法で作製したことを特徴とする記録物。
本発明によれば、インク吸収性が良好で高速記録適性に優れ、高い耐候性と保存安定性を有する、高光沢・高品位のインクジェットプリントを与えるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供することができる。特には、染料インクを用いた場合に画像濃度によらず均一な光沢感(光沢度、写像性)と優れたプリント耐候性と保存安定性を与えることができるインクジェット記録用紙、インクジェット記録方法、および記録物を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下、本発明を詳細に説明する。
(有機微粒子A、有機微粒子B)
本発明においては、支持体上に、前記で定義される本発明の有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する表層下層としての多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙であることが特徴である。多孔質層の上部に設ける表層は、空隙層であり、実質的に、後述する各有機微粒子(本発明の有機微粒子A又は有機微粒子B)を含有しない層である。
はじめに、本発明に係る有機微粒子A及び有機微粒子Bについて、その詳細について説明する。
本発明に係る有機微粒子Aとは、SP値が18.41〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子で、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
本発明でいうSP(Solubility Parameter)値とは、溶解度パラメーターのことであり、物質の溶解性を予測するための一つの有用な尺度である。SP値の単位は(MPa)1/2で表され、25℃における値を指す。
有機溶媒のSP値に関しては、例えば、「POLYMER HANDBOOK」(J.Brandrup他、A Wiley−interscience Publication)のIV−337頁に記載されている他、各種の文献などに掲載されている。
代表的な水溶性有機溶媒(括弧内に、代表的なSP値を示す)の例としては、アルコール類(例えば、ブタノール(23.3)、イソブタノール(21.5)、セカンダリーブタノール(22.1)、ターシャリーブタノール(21.7)、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール(23.3)、ベンジルアルコール(24.8)等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール(29.9)、ジエチレングリコール(24.8)、トリエチレングリコール(21.9)、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(25.8)、ジプロピレングリコール(20.5)、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール(21.1)、ペンタンジオール、グリセリン(33.8)、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、エチレングリコールモノエチルエーテル(21.5)、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(17.6)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(23.3)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン(25.2)、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)等が挙げられる。
本発明において、特に好ましい水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル類、複素環類であり、これらから2〜3種選ばれるのが好ましい。
本発明に用いられる水溶性有機溶媒は、前述の代表的な水溶性有機溶媒の中で、SP値が18.41〜30.69(MPa)1/2のものである。
本発明に係るSP値が18.41〜30.69(MPa)1/2の範囲の水溶性有機溶媒としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエタノールアミン、2−ピロリドン等が好ましく用いられるが、特に好ましく用いられるのは、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(SP値19.437、沸点230℃)である。
本発明に係る水溶性有機溶媒は、沸点が120℃以上のものが選ばれる。沸点の上限は特に限定されないが、融点が30℃以下のものが好ましい。
本発明に係る有機微粒子Aは、SP値が18.41〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の上記水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子であり、かつガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、平均粒子径が100nm以下であることが特徴であり、重量平均分子量としては5000以上の高分子が好ましく、その材質としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、エラストマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル共重合体、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルアセタール、ポリアミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、SBR、NBR、ポリテトラフルオロエチレン、クロロプレン、タンパク質、多糖類、ロジンエステル、セラック樹脂等、従来公知のものから選ばれる。特に好ましい有機微粒子Aの材質は、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ロジンエステル系樹脂、(メタ)アクリレート系樹脂、SBR等であり、変成や共重合によって2種以上の単量体からなる樹脂も好ましく用いられ、樹脂に対して特定の修飾基を付加したものや脱離基を除いたものでもよく、2種以上の材質を混合して有機微粒子を形成してもよく、更には2種類以上の有機微粒子を混合して用いてもよい。
本発明でいう「有機溶媒により溶解する」とは、有機微粒子Aとインク中の水溶性有機溶媒が平衡状態で単一の相をなすことを指し、「有機溶媒により膨潤する」とは有機微粒子Aが同水溶性有機溶媒を吸収して体積を増加させることを言う。膨潤したときの好ましい体積増加率は2〜8倍である。
本発明に係る有機微粒子Aは、インクジェット記録中で溶解しないために、水に不溶でなければならない。ただし、インク吸収速度を妨げない範囲で水を吸収することは許される。有機微粒子Aの質量に対し20質量%までの水の吸収をしてもよい。また、本発明に係る有機微粒子Aは、顔料インクによるプリント後、該有機微粒子A含有層が軟化する程度の量含まれれば足りるが、好ましくは層中の固形分に対し質量比で50%以上であり、より好ましくは75%以上である。
また、本発明に係る有機微粒子Aには、水溶性有機溶媒に対する溶解や膨潤に支障のない範囲で架橋剤を使用してもよい。本発明において、架橋剤としては有機物・無機物を問わず、従来公知の架橋剤を適宜選択して用いることができる。
次いで、本発明に係る有機微粒子Bについて説明する。
本発明でいう有機微粒子Bとは、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマーを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子と定義する。
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の詳細について、以下説明する。
本発明の目的効果を好ましく発現せしめる観点から、有機微粒子Bとして、前記一般式(1)で表される繰り返し単位は親水性を有することが好ましく、具体的には、下記に示すアクリル系単量体、アクリルアミド系単量体及び/またはメタクリルアミド系単量体等の親水性単量体を重合させて得ることができるが、本発明ではこれらに限定されない。
Figure 2007098747
Figure 2007098747
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前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与しているのは、前記一般式(1)を形成する、X、J及び置換基Y等の各々の部分構造であるが、本発明においては、置換基Yにより親水性が付与されることが好ましい。
また、前記一般式(1)で表される繰り返し単位に親水性を付与する為に用いられる置換基としては、『薬物の構造活性相関(ドラッグデザインと作用機作への指針)』(化学の領域増刊122号)構造活性相関懇話会編、南江堂(1980)、p96〜103に記載のような、疎水性パラメータ(π)が負の置換基等を用いることができる。
本発明に係る有機微粒子Bは、前記一般式(1)で表されるような特定の繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上もつことが必要であるが、10質量%以上含有することが好ましい。
また、有機微粒子B自体としては、親水性ではあっても水溶性ではないことが好ましいので、10〜50質量%未満の範囲の含有率に調整されることが好ましい。
以下、本発明に係る有微微粒子Bの構成成分として用いられる、前記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマーの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
Figure 2007098747
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一方、有機微粒子Bを構成するポリマーの他の単量体成分としては、エチレン性不飽和基を有する従来公知の任意のものが選ばれる。これらは、単一の種類であっても、複数種類であっても良い。このような単量体の例としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸のアルキルエステルまたはアルキルアミド等であり、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、nーブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、または、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、または、ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート、ジブチルアミノメチルアクリレート、ジヘキシルアミノメチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、(t−ブチル)アミノエチルアクリレート、ジイソヘキシルアミノエチルアクリレート、ジヘキシルアミノプロピルアクリレート、ジ(t−ブチル)アミノヘキシルアクリレート等が挙げられる。これらのうち好ましく用いられるのは、スチレン、メチルメタアクリレート、n−ブチルアクリレートである。
本発明に係る有機微粒子Bは、水系エマルジョンとして調製し、塗布液を構成することが好ましく、その場合のエマルジョン粒子のイオン性は塗布液と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、有機微粒子Bを含有する層の塗布液のイオン性は、他の層の塗布液のイオン性と等しいか、または非イオン性であることが好ましい。また、最も好ましいのは有機微粒子Bと塗布液全てのイオン性がカチオン性または非イオン性であることである。
通常、インクジェット記録用紙は、室温下で使用されるが、使用前の保存状態は必ずしも室温とは限らず、特に、夏場の密閉された車中では非常に高温状態となるため、そのような環境を経た後でも支障なく使用できることが望まれる。このため、有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)は70℃以上であることが必要であるが、好ましくは、80℃以上であり、更に好ましくは、90℃〜120℃である。
前述の有機微粒子A及び有機微粒子Bのガラス転移温度(Tg)が70℃未満の場合には、加熱による有機微粒子の融着を生じやすくなり、その結果として、記録用紙表面の空隙が縮小または減少し、インク吸収速度の低減が起こりやすくなる。
ここで、本発明に係る有機微粒子の構成成分であるポリマーのTgは、共重合成分としての単量体単独重合体のTgおよび単量体組成比から質量分率によって計算で求めることが可能である。例えば、スチレン(単独重合体Tg=100℃=373K):n−ブチルアクリレート(単独重合体Tg=−54℃=219K)が4:1(質量比)の組成からなるポリマーのTgとしては、1/((1/373K)×4/5+(1/219K)×1/5)=327K(=54℃)と求められる。単量体単独重合体のTgについては、POLYMER HANDBOOK(A WILEY−INTERSCIENCE PUBLICATION)に多数の測定値が掲載されている。
また、有機微粒子AまたはBの平均粒子径は100nm以下であることが必要であるが、好ましくは60nm以下であり、更に好ましくは、20〜40nmであり、本発明に係る有機微粒子AまたはBは、従来公知の乳化重合法等により水中で合成されることが好ましい。その粒子径は、乳化剤の種類や量、単量体成分を調節するなど従来公知の手法により上述の20nm程度から100nm程度までの範囲になるように調節することが可能である。
本発明に係る有機微粒子の平均粒子径の測定法としては、例えば、有機微粒子含有層の断面や表面を電子顕微鏡で観察し、多数個の任意の有機微粒子の粒径を求め、その単純平均値(個数平均)として求める方法がある。なお、個々の粒径は、その投影面積に等しい円を仮定した時の直径で表したものである。又は別の方法としては、有機微粒子を適当な分散媒に分散させ、レーザー回折散乱式粒度分布測定によって粒径を求めることもできる。本発明に係る有機微粒子の形状は、真球形である必要はなく、針状でも板状でもよい。粒径は、体積から球換算で求められる。
本発明の効果を顕著に奏するために、多孔質層の支持体側に配置する最表層以外の下層として、有機微粒子A又はBの含有率は50〜90質量%であることが好ましいが、該表層中での有機微粒子同士の融着を効果的に防止し、インク吸収速度を更に高める観点から、後述する多孔質層で用いるのと同様の無機微粒子を含有しても良い。
本発明のインクジェット記録用紙は、前記有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層を有していることが特徴であるが、本発明でいう下層とは、支持体側に最も近い最下層に限定されることはなく、本発明の効果が発現する構成であれば、特に限定されるものではない。
本発明でいう最上層以外の下層を明示するための好ましい構成例を以下に列挙するが、本発明に係る層構成は、これらにのみ限定されるものではない。
1:支持体上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている層を最下層として有し、その上に空隙型インク吸収層(即ち、多孔質層)を設けた構成
2:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている層を設け、更にその上に、表面物性の改良を目的とした空隙型インク吸収層を設けた構成
3:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている層を設け、更にその上に、有害光をカットする目的で、紫外線吸収機能を有する空隙型インク吸収層を設けた構成
4:支持体上に空隙型インク吸収層を有し、その上に有機微粒子A又は有機微粒子Bが含まれている層を設け、更にその上に、マット剤を含む空隙型インク吸収層を設けた構成
上記に記載の構成例の内で、本発明の効果を最も発揮できるのは、有機微粒子A又は有機微粒子Bの含有層が最下層である場合である。
なお、有機微粒子の含有層とは、実質的に本発明の効果を発揮する有機微粒子を含有する層であり、例えば、他の層が少量の有機微粒子を含有していても、本発明に係る有機微粒子含有層とは見なさない。例えば、多層構成からなり、最下層から層毎に有機微粒子の含有率を徐々に低下させた構成の場合、有機微粒子を50質量%以上含有する層までを、本発明に係る有機微粒子含有層とする。
本発明に係る有機微粒子A又は有機微粒子Bを含む下層には、後述するインク吸収層で用いるのと同様の無機微粒子、バインダー成分等を含んでも良い。
次いで、本発明のインクジェット記録用紙を構成する多孔質インク受容層、支持体及びその他の構成要素について説明する。
(多孔質インク受容層)
本発明に係る多孔質インク受容層は、少なくとも無機微粒子と親水性バインダーから構成されている。
(多孔質インク受容層(無機微粒子))
無機微粒子としては、インクジェット記録用紙で公知の各種の固体微粒子を用いることができる。
無機微粒子の例としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
上記無機微粒子は、一次粒子のままで親水性バインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、また、二次凝集粒子を形成して親水性バインダー中に分散された状態で添加されても良いが、高インク吸収性を達成するという観点においては後者がより好ましい。上記無機微粒子の形状は、本発明では特に制約を受けず、球状、棒状、針状、平板状、数珠状の物であっても良い。
無機微粒子は、その平均粒径が3〜200nmのものが好ましい。平均粒径が200nm以下であれば、インク受容層の高光沢性を達成することができ、また、表面での乱反射による最高濃度の低下を防いで鮮明な画像を得ることができる。
本発明に係る無機微粒子としては、無機微粒子と少量の有機物(低分子化合物でも、高分子化合物でもよい)とからなる複合粒子でも、実質的には無機微粒子と見なす。この場合も乾燥被膜中に観察される最高次粒子の粒径をもってその無機微粒子の粒径とする。
上記無機微粒子と少量の有機物との複合粒子における有機物/無機微粒子の質量比は概ね1/100〜1/4である。
本発明に係る無機微粒子としては、低コストであることや高い反射濃度が得られる観点から低屈折率の微粒子であることが好ましく、シリカ、中でも気相法で合成されたシリカがより好ましい。
また、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることができる。
多孔質インク受容層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、親水性バインダーの種類に大きく依存するが、一般には記録シート1m2当たり、通常3〜30g、好ましくは5〜25gである。多孔質インク受容層に用いられる無機微粒子とポリビニルアルコールの比率は質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
無機微粒子の添加量に従い、インク吸収容量も増加するが、カールやひび割れ等が悪化しやすいため、空隙率のコントロールにより容量を増加させる方法が好ましい。好ましい空隙率は40〜85%である。空隙率は選択する無機微粒子、バインダーの種類によって、あるいはそれらの混合比によって、またはその他の添加剤の量によって調節することができる。
ここでいう空隙率とは、空隙層の体積における空隙の総体積の比率であり、その層の構成物の総体積と層の厚さから計算で求められる。また空隙の総体積は、ブリストー測定による飽和転移量、吸水量測定などによって簡易に求められる。
(多孔質インク受容層(親水性バインダー))
次いで、親水性バインダーの詳細について説明する。
本発明でいう親水性とは、単に水に可溶である他に、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル等の水混和性の有機溶媒と水との混合溶媒に可溶であることを言う。この場合、水混和性の有機溶媒の比率は、全溶媒量に対して通常50質量%以下である。また、親水性高分子とは、上記溶媒に室温で通常1質量%以上溶解するものをいい、より好ましくは3質量%以上溶解するものである。
インク受容層で用いられている親水性バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、カゼイン、澱粉、寒天、カラギーナン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール等の親水性ポリマーが挙げられるが、本発明においてはヒドロキシル基を有する親水性高分子を用いることが好ましく、ヒドロキシル基を有する親水性高分子がポリビニルアルコールであることが特に好ましい。
このポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に、平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられ、更に、ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、トリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
アニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平1−206088号に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号及び同63−307979号に記載されているようなビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号の記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載されているような疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
更に、変性ポリビニルアルコールとして、シリル基で変性したポリビニルアルコールも本発明ではポリビニルアルコールに含まれる。
また、ポリビニルアルコールは重合度、ケン化度や変性等の種類違いのものを2種類以上併用してもよい。
また、ポリビニルアルコールと共に、ゼラチン、ポリエチレンオキサイドまたはポリビニルピロリドンを併用することもできるが、これらの親水性ポリマーはポリビニルアルコールに対して好ましくは0〜50質量%、特に好ましくは0〜20質量%の範囲で用いることができる。
(多孔質インク受容層(カチオンポリマー))
本発明に係る多孔質層においては、上記ヒドロキシル基を有する親水性高分子とともに、カチオン性ポリマーを併用することができる。
本発明に使用できるカチオン性ポリマーの例としては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ジシアンジアミドポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジシアンジアミドホルマリン縮合物、エピクロルヒドリン・ジアルキルアミン付加重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ポリビニルイミダゾール、ビニルピロリドン・ビニルイミダゾール共重合物、ポリビニルピリジン、ポリアミジン、キトサン、カチオン化澱粉、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、ジメチルアミノエチルメタクリレート重合物、などが挙げられる。
または、化学工業時報平成10年8月15、25日に記載されているカチオン性ポリマー、三洋化成工業株式会社発行「高分子薬剤入門」に述べられる高分子染料固着剤が例として挙げられる。
本発明に使用できるカチオン性ポリマーの平均分子量としては2000〜50万の範囲であることが好ましく、更に好ましくは、3000〜10万の範囲である。
平均分子量とは数平均分子量のことであり、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィーから求めたポリエチレングリコール換算値をいう。
また、本発明に使用できるカチオン性ポリマーを塗布液にあらかじめ添加する場合、均一に塗布液に添加するのみならず、無機微粒子とともに複合粒子を形成する形で添加してもよい。無機微粒子とカチオン性ポリマーによって複合粒子を作製する方法としては、無機微粒子にカチオン性ポリマーを混合し吸着被覆させる方法、その被覆粒子を凝集させてより高次の複合粒子を得る方法、さらには混合して得られる粗大粒子を分散機によって、より均一な複合粒子にする方法などが挙げられる。
本発明に使用できるカチオン性ポリマーは概ね水溶性基を有するために水溶性を示すが、例えば共重合成分の組成によって水に溶解しないことがある。製造の容易性から水溶性であることが好ましいが、水に難溶であっても水混和性有機溶媒を用いて溶解し使用することも可能である。
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して概ね10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
カチオン性ポリマーはインク受容層1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
(多孔質インク受容層(硬化剤))
本発明に係るインク受容層では、インク受容層を形成する親水性バインダーの硬化剤を添加することが好ましい。
本発明で用いることのできる硬化剤としては、水溶性バインダーと硬化反応を起こすものであれば特に制限はないが、ホウ酸及びその塩が好ましいが、その他にも公知のものが使用でき、一般的には親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
本発明で用いることのできる硬化剤としては、例えば、エポキシ系硬化剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬化剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬化剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、アルミニウム明礬等が挙げられる。
ホウ酸またはその塩とは、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことをいい、具体的には、オルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸および八ホウ酸およびそれらの塩が挙げられる。
硬化剤としてのホウ素原子を有するホウ酸およびその塩は、単独の水溶液でも、また、2種以上を混合して使用しても良い。特に好ましいのはホウ酸とホウ砂の混合水溶液である。
ホウ酸とホウ砂の水溶液は、それぞれ比較的希薄水溶液でしか添加することが出来ないが両者を混合することで濃厚な水溶液にすることが出来、塗布液を濃縮化することができる。また、添加する水溶液のpHを比較的自由にコントロールすることができる利点がある。上記硬化剤の総使用量は、上記親水性バインダー1g当たり1〜600mgが好ましい。
本発明に係る多孔質インク受容層とからなる記録材料の膜面pHを低下させる目的で酸を用いることができ、例えば、硫酸、塩酸、硝酸、燐酸などの無機酸、クエン酸、ギ酸、酢酸、フタル酸、こはく酸、蓚酸、ポリアクリル酸などの有機酸を挙げることができる。
多孔質層からなる記録材料の膜面pHを増大させる目的で使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ほう砂、燐酸ナトリウム、水酸化カルシウム、有機アミンなどが挙げられる。
上記pH調整剤は、多孔質形成する塗布液中のpHが記録媒体の好ましい膜面pHと異なる場合に、特に好ましい。
インクジェット記録用紙の多孔質インク受容層の膜面pHは、インクの種類によっても異なるが、一般には、より酸性側で染料の耐水性や滲みが改善されるが、耐光性はより高pH側で改良される傾向が大きいため、使用するインクとの組み合わせで最適なpHは選定される。好ましい多孔質表面の膜面pHは、3〜7であり、3.5〜6.5が好ましく、4.0〜6.5がより好ましい。ここでいう膜面pHとは、J.TAPPI 49に規定される紙の表面pH測定方法にしたがって測定した値であり、具体的には、記録媒体表面に50μlの純水(pH=6.2〜7.3)を滴下し、市販の平面電極を用いて測定した値を言う。
(多孔質インク受容層(水溶性多価金属化合物))
本発明においては、多孔質層の少なくとも1層が、多価金属元素を含む化合物を含有することが好ましく、水溶性多価金属化合物を含有することがより好ましい。また、水溶性多価金属化合物を含有させる層は本発明の効果を発現させるためには、上層に含有させるのが好ましく、最上層に含有させるのがより好ましい。
本発明に係る水溶性多価金属化合物としては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、ストロンチウム、バリウム、ニッケル、銅、スカンジウム、ガリウム、インジウム、チタン、ジルコニウム、スズ、鉛などの金属の塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩、クロロ酢酸塩等が挙げられる。中でもアルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ジルコニウムからなる水溶性塩はその金属イオンが無色のため好ましい。更に、水溶性アルミニウム化合物、水溶性ジルコニウム化合物が長期保存時の滲み耐性に優れると言う点で特に好ましい。
水溶性アルミニウム化合物の具体例としては、ポリ塩化アルミニウム(塩基性塩化アルミニウム)、硫酸アルミニウム、塩基性硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(ミョウバン)、硫酸アンモニウムアルミニウム(アンモニウムミョウバン)、硫酸ナトリウムアルミニウム、硝酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、ポリ硫酸ケイ酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、塩基性乳酸アルミニウム等を挙げることができる。ここで、水溶性多価金属化合物における水溶性とは、20℃の水に1質量%以上、より好ましくは3質量%以上溶解することを意味する。
最も好ましい水溶性アルミニウム化合物は、インク吸収性の観点から塩基度が80%以上の塩基性塩化アルミニウムであり、次の分子式で表すことができる。
〔Al2(OH)nCl6-nm
(ただし、0<n<6、m≦10) 塩基度はn/6×100(%)で表される。
水溶性ジルコニウム化合物の具体例としては、炭酸ジルコニル、炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニル、硝酸ジルコニル、酸塩化ジルコニウム、乳酸ジルコニル、クエン酸ジルコニルが好ましい。炭酸ジルコニルアンモニウム、酢酸ジルコニルは特に好ましい。特に酸塩化ジルコニウム、酢酸ジルコニルが長期保存時の滲み耐性の点から好ましい。
(多孔質インク受容層(各種添加剤))
本発明に係るインクジェト記録用紙の多孔質インク受容層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができるが、特に、紫外線吸剤、酸化防止剤、ニジミ防止剤等の画像保存性向上剤を含有することが好ましい。
これら紫外線吸剤、酸化防止剤、ニジミ防止剤としては、アルキル化フェノール化合物(ヒンダードフェノール化合物を含む)、アルキルチオメチルフェノール化合物、ヒドロキノン化合物、アルキル化ヒドロキノン化合物、トコフェロール化合物、チオジフェニルエーテル化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、O−,N−,S−ベンジル化合物、ヒドロキシベンジル化合物、トリアジン化合物、ホスホネート化合物、アシルアミノフェノール化合物、エステル化合物、アミド化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、2−ヒドロキシベンゾフェノン化合物、アクリレート、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物(所謂TEMPO化合物を含む。)、2−(2−ヒドロキシフェニル)1,3,5,−トリアジン化合物、金属不活性化剤、ホスフィット化合物、ホスホナイト化合物、ヒドロキシアミン化合物、ニトロン化合物、過酸化物スカベンジャー、ポリアミド安定剤、ポリエーテル化合物、塩基性補助安定剤、核剤、ベンゾフラノン化合物、インドリノン化合物、ホスフィン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジト化合物、アミジン化合物、糖化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が挙げられる。
これらの中でも、アルキル化フェノール化合物、2個以上のチオエーテル結合を有する化合物、ビスフェノール化合物、アスコルビン酸、アミン系抗酸化剤、水溶性又は疎水性の金属塩、有機金属化合物、金属錯体、ヒンダードアミン化合物、ヒドロキシアミン化合物、ポリアミン化合物、チオ尿素化合物、尿素化合物、ヒドラジド化合物、ヒドロキシ安息香酸化合物、ジヒドロキシ安息香酸化合物、トリヒドロキシ安息香酸化合物等が好ましい。
また、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
(多孔質インク受容層(支持体))
次いで、本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体について説明する。
本発明で用いる支持体は従来インクジェット記録用紙に公知のものを適宜使用できる。
本発明で用いることのできる吸水性支持体としては、例えば一般の紙、布、木材等からなるシートや板等を挙げることができるが、特に紙は基材自身の吸水性に優れかつコスト的にも優れるために最も好ましい。紙支持体としては、LBKP、NBKP等の化学パルプ、GP、CGP、RMP、TMP、CTMP、CMP、PGW等の機械パルプ、DIP等の古紙パルプ等の木材パルプを主原料としたものが使用可能である。また、必要に応じて合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質も原料として適宜使用することができる。
上記紙支持体中には必要に応じて、サイズ剤、顔料、紙力増強剤、定着剤等、蛍光増白剤、湿潤紙力剤、カチオン化剤等の従来公知の各種添加剤を添加することができる。
紙支持体は前記の木材パルプなどの繊維状物質と各種添加剤を混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機等の各種抄紙機で製造することができる。また、必要に応じて抄紙段階又は抄紙機にスターチ、ポリビニルアルコール等でサイズプレス処理したり、各種コート処理したり、カレンダー処理したりすることもできる。
本発明で好ましく用いることのできる非吸水性支持体には、プラスチック樹脂フィルム支持体、あるいは紙の両面をプラスチック樹脂フィルムで被覆した支持体が挙げられる。
プラスチック樹脂フィルム支持体としては、ポリエステルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリプロピレンフィルム、セルローストリアセテートフィルム、ポリスチレンフィルムあるいはこれらの積層したフィルム支持体等が挙げられる。これらのプラスチック樹脂フィルムは透明、または半透明なものも使用できる。
本発明で特に好ましい支持体は、紙の両面をプラスチック樹脂で被覆した支持体であり、最も好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂で被覆した支持体である。
以下、最も好ましいポリオレフィン樹脂の代表であるポリエチレンでラミネートした非吸水性の紙支持体について説明する。
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプにポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を加えて抄紙される。木材パルプとしては、例えば、LBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下であることが好ましい。
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlであることが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と、42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は、20質量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量は50〜250gが好ましく、特に70〜200gが好ましい。原紙の厚さは50〜210imが好ましい。原紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して、高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118に規定の方法に準ずる)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては、前述の原紙中に添加できるサイズ剤と同様のものを使用することができる。原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定した場合、5〜9であることが好ましい。
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
また、多孔質インク受容層を塗布する面側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して1〜20質量%、好ましくは2〜15質量%である。
ポリオレフィン層中には白地の調整を行うための耐熱性の高い顔料や蛍光増白剤を添加することができる。着色顔料としては、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。蛍光増白剤としては、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1,8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベン等が挙げられる。
紙の表裏のポリエチレンの使用量は、多孔質インク受容層の膜厚やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、一般にはポリエチレン層の厚さは多孔質インク受容層側で15〜50im、バック層側で10〜40imの範囲である。表裏のポリエチレンの比率は多孔質インク受容層の種類や厚さ、中紙の厚み等により変化するカールを調整する様に設定されるのが好ましく、通常は表/裏のポリエチレンの比率は厚みで概ね3/1〜1/3である。
更に、上記ポリエチレン被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で、縦方向が20〜300N、横方向が10〜200Nであることが好ましい
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で、縦方向が0.1〜2N、横方向が0.2〜2Nが好ましい
3)圧縮弾性率:≧9.8kN/cm2
4)表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い
5)裏面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で、100〜800秒が好ましい
6)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい
7)白さ:JIS−P−8123に規定されるハンター白色度で、90%以上が好ましい。また、JIS−Z−8722(非蛍光)、JIS−Z−8717(蛍光剤含有)により測定し、JIS−Z−8730に規定された色の表示方法で表示したときの、L*=90〜98、a*=−5〜+5、b*=−10〜+5が好ましい。
上記支持体の多孔質インク受容層面側には、多孔質インク受容層との接着性を改良する目的で、下引き層を設けることができる。下引き層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましい。これらバインダーは、記録媒体1m2当たり0.001〜2gの範囲で用いられる。下引き層中には、帯電防止の目的で、従来公知のカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤を少量含有させることができる。
上記支持体の多孔質インク受容層面側とは反対側の面には、滑り性や帯電特性を改善する目的でバック層を設けることもできる。バック層のバインダーとしては、ゼラチンやポリビニルアルコール等の親水性ポリマーやTgが−30〜60℃のラテックスポリマーなどが好ましく、またカチオン性ポリマーなどの帯電防止剤や各種の界面活性剤、更には平均粒径が0.5〜20im程度のマット剤を添加することもできる。バック層の厚みは、概ね0.1〜1imであるが、バック層がカール防止のために設けられる場合には、概ね1〜20imの範囲である。また、バック層は2層以上から構成されていても良い。
本発明のインクジェット記録用紙の製造方法において、多孔質インク受容層塗布液を塗布する際に用いることのできる塗布方式あるいは塗布装置としては、例えば、カーテン塗布方法、あるいは米国特許第2,761,419号、同第2,761,791号公報に記載のホッパーを使用するスライドビード塗布方法、エクストルージョンコート法等を用いることができるが、本発明においては、特に、スライド型カーテン塗布装置あるいはスライドホッパー型塗布装置を用いることが好ましく、これらの塗布装置は、高速、薄膜、多層同時塗布が可能であり、その特徴により写真感光材料、インクジェット記録用紙、磁気記録材料等の塗布装置として広く用いられている。
(記録方法・インク)
次に本発明の記録用紙を用いてインクジェット記録する方法について説明する。
本発明の記録用紙は水系顔料インクおよび染料インクの記録用紙として好適に使用される。
水系染料インクとは、水溶性の染料を色材に使用したインクで、インク溶媒として水あるいは水と混和性の高い有機溶剤を混合してなるインクである。染料としては、従来公知のアゾ系染料、キサンテン系染料、フタロシアニン系染料、キノン系染料、アントラキノン系染料等をスルホ基あるいはカルボキシ基を導入して水溶性を向上させた、酸性染料や直接染料あるいは塩基性染料が代表的に用いられる。
一方、顔料インクに用いられる顔料としてはインクジェットで従来公知の各種の無機もしくは有機の顔料インクを使用することが出来る。無機顔料インクの例としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄などを挙げることが出来る。また、有機顔料としては、各種のアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、インジゴ系顔料、あるいは水溶性染料と多価金属イオンを反応させて得られるレーキ顔料などを挙げることが出来る。
これらの顔料粒子は親水性ポリマーや界面活性剤などの各種の分散剤や分散安定化剤と共に用いることが好ましい。顔料粒子はこれらの分散在野分散安定化剤により平均粒子径が70〜150μm程度にまで分散されたものを用いることが好ましい。
上記染料および顔料のインク中の濃度は染料もしくは顔料の種類、インクの使用する形態(濃淡インクを使用するか否か)、更には用紙の種類にも依存するが、概ね0.2〜10質量%である。
インク中には各種の溶媒が用いられるがそのようなインク溶媒としては、水あるいは水と混和性の高い有機溶剤を、単独あるいは水と混合して使用することができる。具体的には、エタノール、2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、2−ピロリジノン、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、トリエタノールアミン、N−エチルモルホリン、トリエチレンテトラミン等のアミン類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられ、これらの溶剤は単独で用いても、併用しても良い。
また、上記インクにはインク溶媒の浸透性を高める目的およびその他の目的で各種界面活性剤を使用することが出来る。そのような界面活性剤としては、アニオン性またはノニオン性の界面活性剤が好ましく用いられる。中でもアセチレングリコール系界面活性剤は特に好ましい。
(無色インク)
次に本発明に係る皮膜形成能を有する樹脂微粒子を含有する実質的に無色のインクについて説明する。
本発明に係る記録インクは、皮膜形成能を有する樹脂微粒子と液体媒体からなるが、好ましくは樹脂微粒子、水溶性溶剤及び水を主成分としてなる。
本発明に係る樹脂微粒子においては、ガラス転移温度(Tg)が−50〜10℃であることが好ましく、より好ましくは−20〜10℃であり、更に好ましくは−10〜10℃である。ガラス転移点が−50℃以上であれば、プリント後の保存後も安定に本発明の効果を発現することができ、ガラス転移点が10℃以下であれば、プリント保存後の折れ割れといった皮膜故障の防止やプリント直後の均一な皮膜形成を得ることができる。
また、本発明に係る樹脂微粒子においては、プリント環境によらず、インク中の樹脂微粒子が自然融着により記録用紙の多孔質層表面に樹脂皮膜を安定に形成させる点から最低造膜温度(MFT)が−60〜10℃であることが好ましい。本発明においては、樹脂微粒子の最低造膜温度を制御するために造膜助剤を添加してもよい。造膜助剤は、可塑剤とも呼ばれ樹脂ラテックスの最低造膜温度を低下させる有機化合物である。
樹脂微粒子としては、本発明の効果を発現するものであれば特に制約はなく、例えば水溶性樹脂でも水不溶性樹脂でもよいが、本発明の効果をより効果的に発現するには、水不溶性樹脂で水に分散されたものがよい。樹脂の具体例としては、アクリロニトリル、スチレン、アクリレート類(アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)、酢酸ビニル、ブタジエン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン、ウレタン、オレフィン(エチレン、プロピレン)、またはこれらのモノマーを2つ以上組み合わせた共重合体が好ましい。
本発明に係る樹脂微粒子は、平均粒径が10〜200nmであることが好ましく、よりこのましくは10〜150nm、更に好ましくは10〜100nmである。
樹脂微粒子の平均粒径が10nm以上であれば、樹脂微粒子が空隙層内部に浸透せず、空隙層表面に存在するため、光沢性能の点で好ましい。また樹脂微粒子の平均粒径が200nm以下であれば、樹脂微粒子がある程度小さいため、空隙層表面でのレベリング性の点で有利となり、光沢性能の点で好ましい。
樹脂微粒子の平均粒径は光散乱方式や、レーザードップラー方式を用いた市販の粒径測定装置、例えばゼータサイザー1000(マルバーン社製)等を用いて、簡便に測定することができる。
また、用いる熱可塑性樹脂は臭気及び安全性の観点から残存するモノマー成分が少ない方が好ましく、重合体の固形分質量に対して3%以下が好ましく、更に1%以下が好ましく、特に0.1%以下が好ましい。
樹脂微粒子を含み、実質的に着色剤を含まない液体は、樹脂を0.1〜10質量%及び水溶性媒体を1〜50質量%含有し、必要に応じて、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防ばい剤等の各機能性化合物を含んでもよい。さらに本発明に係る液体は実質的に着色剤を含まないが、これは記録液としての機能を実質的にもたないことを意味しており、それ以外の目的、例えばインク残量確認のためや、白地にプリントする場合の白地色調調整のため、吐出性確認のため等に、わずかに色味付けをしてもよい。
本発明に係る無色インクに添加できる、有機溶媒、界面活性剤及びその他の添加剤としては色材を含有する記録液に添加することができるものを用いることができる。
本発明に係る記録インク及び無色インクは、安定吐出するために、高光沢発現、オゾン耐性を高めるために、インクの表面張力は40mN/m以下であることが好ましく、20〜40mN/mであることがより好ましい。同様の理由でインク粘度は1.5〜10mPa・sが好ましく、3.0〜8.0mPa・sがより好ましい。
(無色インク付与量・付与方法)
次にインクジェット記録媒体上への無色インク付与領域について説明する。無色インクの付与領域はインクジェット記録媒体の少なくとも一部に付与することができる。本発明の効果のためには無色インクは記録インクの付与されていない領域、及び記録インクが付与されている領域にも併せて付与することが好ましい。
無色インクの付与量は、記録インク、無色インク、インクジェット記録媒体の特性により、最も効果が得られる適量が異なるが、少なくとも2ml/m2以上付与することが好ましい。ただし、20ml/m2より多くの無色インクを付与すると、画質劣化や光沢低下が起こり好ましくない。また無色インクの付与量は画素毎に記録インク量と無色インクの総量を一定範囲内になるように調整することが好ましい方法である。このときの総量の最低量としては、2ml/m2以上であることが好ましく、より好ましくは8ml/m2以上である。
また、記録インク中に含まれる樹脂微粒子と無色に含まれる樹脂量を考慮して、画素ごとに、両インクにより付与される樹脂総量を制御することも好ましい。この時、各画素の総樹脂量は0.05g/m2〜1g/m2にすることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.5g/m2にすることである。
次に、無色インクの付与方法について説明する。
無色インクの付与方法としては、画像中のすくなくとも一部に選択して付与できる方法であればよいが、記録インク同様にインクジェットヘッドを用いて付与する方法が好ましい。このとき、無色インク用のヘッドは一つでも、複数用意して、異なる組成の無色インクを付与してもよい。また、無色インク用ヘッドは、記録インクと同じキャリッジに固定しても良いし、別にしてもよい。無色インクの付与は、記録インクの記録前でも同時でも後でもよいが、好ましくは同一キャリッジに固定し、同時か記録インク記録後の付与することが本発明の効果をより発現する上で好ましい。
(インクpH調整剤)
次に、本発明のインクはpH調整剤として、アルキルアミン、アルカノールアミン類を用いることができる。pH調整剤は、記録媒体にインクが着弾したときのインクpHの急激な変化を抑制する効果がある。これは色材を含む、含まないに関わらず、インク中に上記アミン類含有させることで、着弾時の微粒子の記録媒体に含有される素材との相互作用による析出や、凝集を抑制することができ好ましい。
具体的に適用できるアルキルアミン類としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、モノエチルアミン、ジメチルエチルアミン等が挙げられる。また、アルカノールアミン類としては、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、実施例中で「%」は、特に断りの無いかぎり質量%を表す。
実施例1
〔支持体の作製〕
木材パルプ(LBKP/NBSP=50/50)100質量部に対して、ポリアクリルアミドを1質量部、灰分(タルク)を4質量、カチオン化澱粉を2質量部、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を0.5質量部、及び種々の添加量のアルキルケテンダイマー(サイズ剤)を含有するスラリー液を調製し、長網抄紙機で坪量が170g/m2になるように基紙を抄造した。これにカレンダー処理した後、7質量%のアナターゼ型酸化チタンおよび少量の色調調整剤を含有する密度0.92の低密度ポリエチレン樹脂を320℃で厚さ28μmになるように溶融押し出しコーティング法で基紙の片面を被覆し、鏡面クーリングローラーで直後に冷却した。次いで、反対側の面を密度0.96の高密度ポリエチレン/密度0.92の低密度ポリエチレン=70/30の混合した溶融物を同様に溶融押し出し法で、厚さが32μmになるように被覆した。インク受容層を設ける側の面の60度光沢度は56%、中心線平均粗さRaは0.12μmであった。
この支持体の酸化チタン含有層側に、コロナ放電した後、ゼラチン0.05g/m2を下引き層として塗布した。
一方反対側には、平均粒径約1.0μmのシリカ微粒子(マット剤)と少量のカチオン性ポリマー(導電剤)を含有するスチレン/アクリル系エマルジョンを、乾燥膜厚が約0.5μmになるように塗布して、インク受容層を塗布するための支持体を作製した。
バック面側は、光沢度が約18%、中心線平均粗さRaは約4.5μm、ベック平滑度は160〜200秒であった。
このようにして得られた支持体の基紙の含水率は7.0〜7.2%であった。
また、この支持体の不透明度は96.5%、白さは、L*=95.2、a*=0.56、b*=−4.35であった。
〔インクジェット記録用紙101の作製〕
(インク受容層塗布液の調製)
下記の手順に従って、下記の組成からなるインク受容層用塗布液を調製した。
〈シリカ分散液1の調製〉
水 71L
ホウ酸 0.27kg
ほう砂 0.24kg
エタノール 2.2L
カチオン性ポリマー(P−1)25%水溶液 17L
退色防止剤(AF1 *1)10%水溶液 8.5L
蛍光増白剤水溶液(*2) 0.1L
全量を純水で100Lに仕上げた。
Figure 2007098747
無機微粒子として、気相法シリカ(日本アエロジル社製、アエロジル300:平均一次粒子径 約7nm)を50kg用意し、これに上記添加剤を添加した後、特開2002−47454号公報の実施例5に記載された分散方法により分散してシリカ分散液1を得た。
*1:退色防止剤(AF−1) HO−N(C24SO3Na)2
*2:チバ・スペシャリティーケミカルズ社製、UVITEX NFW LIQUID
〈シリカ分散液2の調製〉
上記シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマー(P−1)を、カチオン性ポリマー(P−2)に変更した以外は同様にして、シリカ分散液2を調製した。
Figure 2007098747
第1層、第2層、第3層及び第4層の各インク受容層用塗布液を、以下の手順で調製した。
〈第1層用塗布液〉
シリカ分散液1の610mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
220ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
界面活性剤(SF1)5%水溶液 1.5ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第2層用塗布液〉
シリカ分散液1の630mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
ポリブタジエン分散液(平均粒径約0.5μm、固形分濃度40%) 15ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第3層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
〈第4層用塗布液〉
シリカ分散液2の650mlに、40℃で攪拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)の5%水溶液
180ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA245)の5%水溶液
80ml
界面活性剤(花王製;コータミン24P)の6%水溶液 3ml
界面活性剤(ネオス社製;フタージェント400S)の4%水溶液 1ml
純水で全量を1000mlに仕上げた。
Figure 2007098747
上記のようにして調製した各塗布液を、20μmの捕集可能なフィルターで2段ろ過した。
上記各塗布液は、いずれも40℃において30〜80mPa・s、15℃において30000〜100000mPa.sの粘度特性を示した。
(塗布)
このようにして得られた各塗布液を、上記作製したポリオレフィンで両面を被覆した支持体の表側に、第1層(35μm)、第2層(45μm)、第3層(45μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を同時塗布した。なお、各層のかっこ内の数値は、それぞれの湿潤膜厚を示す。塗布は、各塗布液を40℃で4層式カーテンコーターを用い、塗布幅:約1.5m、塗布速度:100m/分で同時塗布を行った。
塗布直後に8℃に保持した冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃、相対湿度20%以下で30秒間、60℃、相対湿度20%以下で120秒間、55℃、相対湿度20%以下で60秒間、各々の乾燥風を吹き付けて乾燥した。恒率乾燥域における皮膜温度は8〜30℃であり、減率乾燥域で皮膜温度が徐々に上昇した後、23℃、相対湿度40〜60%の調湿ゾーンで調湿して記録用紙101を得た。
〔インクジェット記録用紙102の作製〕
(有機微粒子エマルジョン(L−I)の調製)
n−ブチルアクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:t−ブチルメタクリレート=10:50:20:20(質量比)のモノマーに、乳化剤としてステアリルトリメチルアンモニウムクロライドを添加し、重合開始剤として2,2′−アゾビス−4−シアノ吉草酸水溶液を30分かけて連続的に添加し4時間反応させて、Tgは76℃、平均粒子径が30nmの有機微粒子エマルジョン(L−I)を調製した。
(記録用紙102の作製)
支持体上に、液温45℃の下層塗布液をワイヤーバーにて塗布、本発明の有機微粒子エマルジョン(L−I)が5.0g/m2、気相法微粒子シリカ(アエロジル300)が2.5g/m2、アクリル系エマルジョン(平均粒子径30nm、Tg=−30℃)が0.5g/m2となるように下層塗布を行い、乾燥した後、40℃、80%RHの恒温槽中に12時間保存した。
次いで、上記下層塗布品の上に、記録用紙101の作製と同様に上層の多孔質層を塗布した以外は同様にして記録用紙102を作製した。
〔インクジェット記録用紙103の作製〕
〈シリカ分散液3の調製〉
上記シリカ分散液1の調製において、カチオン性ポリマーP−1に代えて、塩基性塩化アルミニウム水溶液(多木化学製:タキバイン#1500、Al23として23.75%含有、塩基度83.5%)をSiO2/Al23比率が8となるように使用した以外は同様にして、シリカ分散液3を調製した。
また、上記調製したシリカ分散液3は、30μmの濾過精度を有するアドバンテック東洋社製のTCP−30タイプのフィルターを用いて濾過を行った。
(記録用紙103の作製)
上記記録用紙102の作製において、第4層(最上層)に用いたシリカ分散液2をシリカ分散液3に変更した。更に第4層のSiO2付量を2.0g/m2となるように変更し、記録用紙上の全シリカ微粒子付量が記録用紙102と等しくなるように第3層の塗布膜厚を調整した以外は同様にして、記録用紙103を作製した。
〔インクジェット記録用紙104の作製〕
上記記録用紙103の作製において、第3層に酢酸ジルコニル(第一稀元素化学工業製:ジルコゾールZA)をZrO2換算付量で0.12g/m2になるよう塗布直前にインライン添加した以外は同様にして、記録用紙104を作製した。
〔インクジェット記録用紙105の作製〕
(有機微粒子エマルジョン(L−2)の調製)
t−ブチルメタクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=30:55:15(質量比)のモノマーを用い、公知の方法に従い乳化重合して、有機微粒子エマルジョン(L−2)を調製した。上記調製に用いた界面活性剤は、エマルゲン220(花王製)で、総モノマー量に対して固形分として5質量%添加した。以上のようにして調製した有機微粒子エマルジョン(L−2)に含有される有機微粒子の平均粒子径は、レーザー散乱法で測定したところ40nmであり、また、前述の方法により各構成モノマーのTgより計算で求めたガラス転移温度(Tg)は103℃であった。
(記録用紙105の作製)
上記記録用紙104の作製において、下層の有機微粒子をL−1からL−2に替えた以外は同様にして、記録用紙105を作製した。
〔各有機微粒子の溶解性試験〕
上記記録用紙102〜105の作製に使用した有機微粒子エマルジョン(L−I)、(L−2)を、ジエチレングリコールモノブチルエーテル〔SP値19.437(MPa)1/2、沸点230℃〕と室温で混合した結果、全て溶解した。
〔樹脂微粒子含有の染料インク、無色インク〕
(インクセットの調製)
《樹脂微粒子含有有色インク調製》
下記のようにしてインクセットを調製した。インクセットは、イエロー、マゼンタ、シアン及び黒の濃色インクと、マゼンタ及びシアンの淡色インクの6色のインクから構成される。
〈濃色インク(イエロー、マゼンタ、シアン及び黒)の調製〉
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 10質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10質量%
染料(*1) 3質量%
トリエタノールアミン 1質量%
樹脂微粒子(SX1105:日本ゼオン製、Tg 0℃、SBR) 1質量%
界面活性剤(オルフィンE1010:日信化学製、アセチレングリコール系活性剤)
0.5質量%
純水 残部
*1:染料は、イエローはダイレクトイエロー86、マゼンタは下記マゼンタ染料−1、シアンはダイレクトブルー199、黒はフードブラック2を使用した。
〈淡インク(マゼンタ及びシアン)の調製〉
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 10質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10質量%
染料(*2) 0.8質量%
トリエタノールアミン 1質量%
樹脂微粒子(SX1105:日本ゼオン製、Tg 0℃、SBR) 1質量%
界面活性剤(オルフィンE1010:日信化学製、アセチレングリコール系活性剤)
0.5質量%
純水 残部
*2:染料は、マゼンタは下記マゼンタ染料−1、シアンはダイレクトブルー199を使用した。
Figure 2007098747
《樹脂微粒子を含有しない有色インク調製》
上記樹脂微粒子含有有色インクにおいて、樹脂微粒子を除いた以外は樹脂微粒子含有有色インクと同様にして調製した。
《樹脂微粒子含有無色インク調製》
ジエチレングリコール 10質量%
グリセリン 10質量%
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 10質量%
トリエタノールアミン 1質量%
樹脂微粒子(SX1105:日本ゼオン製、Tg 0℃、SBR) 1質量%
界面活性剤(オルフィンE1010:日信化学製、アセチレングリコール系活性剤)
0.5質量%
純水 残部
《樹脂微粒子を含有しない無色インク調製》
上記樹脂微粒子含有無色インクにおいて、樹脂微粒子を除いた以外は樹脂微粒子含有無色インクと同様にして調製した。
《インクジェット記録装置》
図1に記載のように、一吐出動作あたりのインク液滴量が調整可能で、記録インクとしてY,M,C,K及びLM(淡色マゼンタ)、LC(淡色シアン)の6色と無色インクの各記録ヘッドを搭載したピエゾ型インクジェット記録装置を準備した。
上記条件にて、インク中の樹脂微粒子の有無により、表1に記載の組み合わせで画像101A〜105Bを作製した。
各インクは、それぞれ液滴量は4pl、記録解像度は1440dpi×1440dpi(dpi:2.54cmあたりのドット数を表す)にて画像記録部位の最大総吐出インク量は17ml/m2で画像形成した。
無色インクは、液適量と記録用紙に対する付着量が可変制御できるようにして、記録解像度は1440dpi×1440dpiで、記録画像の作製と同時に、全画素あたりのインク付着量が最低でも17ml/m2となるように記録インクの吐出量にあわせて無色インクの吐出量を可変させて印字した。
尚、上記印字に用いたインクジェット記録装置について、以下に、図1を参照して説明する。
記録ヘッドは、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式のいずれでもよいが、樹脂微粒子含有のインクの射出安定性の観点からピエゾ方式を用いた。
各記録ヘッドには、図示しない記録インク用カートリッジと無色インクカートリッジから、配管用のチューブが通ってインクが供給される。記録ヘッドは、記録キャリッジに、走査方向に沿って7個並んで配置されており、それぞれ6色の記録インク用と無色インク用に使用される。
[記録用紙の各特性の評価]
以上により作製した各記録用紙について、以下に記載の方法に則り、各評価を行った。
〈発色性の評価〉
純正インクにより黒のベタ画像を印字し、12時間自然乾燥した後、得られた黒の濃度をGretagMacbeth光学濃度計を用いて測定し、これを発色性の尺度とした。
〈滲み耐性の評価〉
23℃、55%RHの環境下で、マゼンタのベタ画像を背景にした線幅が約0.3mmのブラックラインをプリントし、6時間自然乾燥した後、透明クリアファイルに挿入した。これをクリアファイルのまま、36℃、80%RHの環境下で5日間放置して、保存前後のでブラックラインの線幅をマイクロデンシトメーターで測定(反射濃度が最大濃度の50%の部分の幅を線幅とした)し、下式で表される線幅変化率を求め、この値を長期保存後の滲み耐性の尺度とした。この値が小さいほど滲み耐性が良好であることを示し、実用上問題がないレベルは140%以下と判断した。
線幅変化率=(保存後のブラックラインの線幅/保存前のブラックラインの線幅)×100
◎:線幅変化率が100%以上〜125%未満
○:線幅変化率が125%以上〜140%未満
△:線幅変化率が140%以上〜160%未満
×:線幅変化率が160%以上〜180%未満
××:線幅変化率が180%以上
〈オゾン褪色性〉
Y、M、C、Kの各8段のウエッジ画像を23℃55%RHの環境下でプリントし、24時間放置した後、反射濃度をGretagMacbeth光学濃度計で測定し、次いでオゾン濃度5ppm(24℃60%)の環境に100時間曝露し、再度反射濃度を測定し、色素残存率=(曝露後の濃度)/(曝露前の濃度)×100(%)を求め、下記基準に従いオゾン褪色性を評価した。
◎:全濃度域の平均色素残存率が90%以上
○:全濃度域の平均色素残存率平均が80%以上〜90%未満
△:全濃度域の平均色素残存率が70%以上〜80%未満
×:全濃度域の平均色素残存率が60%以上〜70%未満
××:全濃度域の平均色素残存率が60%未満
以上により得られた結果を表1に示す。
Figure 2007098747
※:画像No.について
末尾にAがつくもの:樹脂微粒子を含有しないインクで印字したものである
末尾にBがつくもの:樹脂微粒子を含有する本願インクで印字したものである
L−I(有機微粒子エマルジョン):n−ブチルアクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート:t−ブチルメタクリレート=10:50:20:20(質量比)の有機微粒子エマルジョン、Tgは76℃、平均粒子径が30nm
L−2(有機微粒子エマルジョン):t−ブチルメタクリレート:スチレン:2−ヒドロキシエチルメタクリレート=30:55:15(質量比)の有機微粒子エマルジョン、Tgは103℃、平均粒子径が40nm
SX1105:SBR系ラテックス(日本ゼオン製、Tg 0℃、平均粒径109nm(樹脂微粒子))
表1より明らかなように、本発明で規定す有機微粒子A又はBを含有させた多孔質層である下層を設け、表層に多孔質層を設けた記録用紙は、比較例に対し発色性、滲み耐性、オゾン褪色性が向上していることが分かる。また、上層の多孔質層に多価金属化合物を添加した本発明の記録用紙は、本発明の効果が更に向上していることが分かる。
実施例2
〔インクジェット記録用紙201の作製〕
記録用紙103の作製において、本発明の有機微粒子(L−1)を含有する下層(最下層)を塗布しなかった以外は同様にして記録用紙201を作製した。
〔インクジェット記録用紙202の作製〕
記録用紙103の作製において、第1層に有機微粒子(L−1)の付量が2.0g/m2となるようにL−1を添加して塗布する以外は同様にして記録用紙202を作製した。
〔インクジェット記録用紙203の作製〕
記録用紙103の作製において、第1層、第2層に有機微粒子(L−1)の付量が2.0g/m2となるようにL−1を均等に添加して塗布する以外は同様にして記録用紙203を作製した。
〔インクジェット記録用紙204の作製〕
記録用紙103の作製において、第1層、第4層(最上層)、に有機微粒子(L−1)の付量が2.0g/m2となるようにL−1を均等に添加して塗布する以外は同様にして記録用紙204を作製した。
実施例1と同様に評価を行った。
結果を表2に示す。
Figure 2007098747
表2より明らかなように、本発明で規定す有機微粒子A又はBを含有させた多孔質層である下層を設けることで、発色性、滲み耐性、オゾン褪色性が改良されていることが分かる。また、最上層に本発明の有機微粒子を含有させた層を設けた場合には滲み耐性が劣化するばかりでなく、発色性、オソン耐性も劣ることがわかる。
本発明のインクジェット記録方法で用いられるインクジェットプリンタの一例を示す斜視図である。
符号の説明
22 記録ヘッド
23 キャリッジ

Claims (5)

  1. 支持体上に、下記で定義する有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層としての多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
    有機微粒子A:SP値が18.41〜30.69(MPa)1/2で、かつ沸点が120℃以上の水溶性有機溶媒により溶解又は膨潤する水に不溶の有機微粒子で、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
    有機微粒子B:下記一般式(1)で表される繰り返し単位を共重合成分として5質量%以上含有するポリマーを有し、ガラス転移温度(Tg)が70℃以上で、かつ平均粒子径が100nm以下の有機微粒子。
    Figure 2007098747
    〔式中、Xは−O−または−N(R2)−を表し、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xが−O−の場合、Jは、炭素数2〜18を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有しても良いアルキレン基であり、Yは、ヒドロキシル基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表し、Xが−N(R2)−の場合、Jは、単結合または炭素数2〜8を有する、エーテル構造またはチオエーテル構造を有してもよいアルキレン基であり、Yは、水素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、アルコキシル基またはカルバモイル基を表す。〕
  2. 少なくとも1種の樹脂微粒子を含有するインクジェット記録インクを用いてインクジェット記録用紙に記録するインクジェット記録方法において、該インクジェット記録用紙が支持体上に請求項1で定義する有機微粒子A又は有機微粒子Bを含有する最表層以外の下層として少なくとも1層の多孔質層と、1層以上の上層としての多孔質層とを有するインクジェット記録用紙であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  3. 前記樹脂微粒子を含有するインクジェット記録インクが、少なくとも1種の着色剤を含有する有色インクと、実質的に着色剤を含まない無色インクからなり、該無色インク中の樹脂微粒子のインクジェット記録媒体への付着量(g/m2)を、記録部位毎に該有色インクの樹脂微粒子の付着量に応じて可変させ両インクにより付与される樹脂微粒子総量を一定範囲内になるように調整制御したことを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録方法。
  4. 前記上層の多孔質層が、少なくとも1種の水溶性多価金属化合物を含有することを特徴とする請求項2〜3のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録方法で作製したことを特徴とする記録物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010046896A (ja) * 2008-08-21 2010-03-04 Fujifilm Corp クリアインク、インクセット、及びインクジェット記録方法
JP2012107079A (ja) * 2010-11-15 2012-06-07 Dic Corp 有機無機複合組成物乳化分散体

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