JP2007080523A - 膜・電極接合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】 電解質膜の外周の寸法変化の差を小さくし、MEAの外周を保護することのできるMEAを提供する。
【解決手段】電解質膜と触媒層とからなるMEAにおいて、前記電解質膜の外周領域の寸法変化が、その内側領域の寸法変化よりも小さいこと、または前記電解質膜の外周領域の弾性率が、その内側領域の弾性率よりも大きいことを特徴とするMEA。
【選択図】図1

Description

本発明は、燃料電池の膜・電極接合体(以下、単にMEAともいう。)に関する。
近年、エネルギー・環境問題を背景とした社会的要求や動向と呼応して、常温でも作動して高出力密度が得られる燃料電池が移動体用電源、定置型電源として注目されている。燃料電池は、電極反応による生成物が原理的に水であり、地球環境への悪影響がほとんどないクリーンな発電システムである。特に、固体高分子型燃料電池は、比較的低温で作動することから、燃料電池自動車から携帯機器(例えば、携帯電話、携帯情報端末、携帯音楽プレイヤー、ノート型パソコンなど)までの各種移動体用の電源として期待されている。
こうした燃料電池の単セル構成は、一般的には、MEAをガス拡散層(以下、単にGDLとも称する。)、更にはセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、電解質膜(以下、単に膜とも称する。)が一対の電極(燃料極電極および空気極電極)により挟持されてなるものである。詳しくは、膜の両側に電極触媒層(以下、単に触媒層とも称する。)、GDL、セパレータの順に配されてなるのが一般的である。さらに、燃料電池の単セル構成では、単セルの外周部からの微量リークやクロスリークを防止する為に該外周部をシールするために、膜の両側(空気極側及び燃料極側)の電極、GDLが形成されている部分の外周部に額縁状のガスケットがそれぞれ配置されている。
こうした燃料電池の運転中の起動停止に伴って、GDLの端部(以下、エッジともいう)やガスケットが、MEAの外周を傷つけるという課題があった。MEAが傷つくと、ガスのクロスオーバーや電気的なショートが生じ、燃料電池の出力が低下する要因となる。そこで、GDLのエッジやガスケットが、MEAの外周を傷つけることを防止する対策がとられている。
特許文献1に記載の発明では、上記課題に対し、MEAの外周に額縁状の保護シートを貼り付けている。
また、MEAを燃料電池に組んだ際、反応ガスを導入または排出するマニホールドの付近では、高湿度ガスに接する領域と低湿度ガスに接する領域が隣り合う場合がある。例えば、水素と空気とをカウンターフローで流す構成の燃料電池においては、燃料極へ低湿度の水素が流入する領域と、酸素極から高湿度の空気が流出する領域とが、隣り合っている(例えば、特許文献2参照。)。
特許第3368907号公報 特開2004−213954号公報
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、MEAと新たに設けた保護シートとの寸法変化に差があり、その境界部には応力が発生するため、燃料電池の運転中にMEAを構成する電解質膜を傷つけてしまう恐れがあった。
そこで、本発明は、保護シートの有無によらず、電解質膜の傷つきを抑え、MEAの外周を保護することのできるMEAを提供することを第1の目的とする。
また、特許文献2に記載のような高湿度ガスに接する領域と低湿度ガスに接する領域が隣り合う領域においては、接するガスの湿度の違いにより膜の含水状態に差が生じる。含水状態の差により膜の寸法に差が生じるが、この寸法差により膜内部には応力が発生する。この繰り返しにより膜を傷つけてしまう恐れがあった。
そこで、本発明はまた、電解質膜の外周、特に高湿度ガスに接する領域と低湿度ガスに接する領域が隣り合う領域での傷つきの恐れをなくし、MEAの外周を保護することのできるMEAを提供することを第2の目的とする。
即ち、本発明の共通の目的は、電解質膜の外周の傷つきが生じる恐れをなくし、MEAの外周を保護することのできるMEAを提供することにあるといえる。
そこで、本発明は、電解質膜と触媒層とからなるMEAにおいて、
前記電解質膜の外周領域の寸法変化が、その内側領域の寸法変化よりも小さいことを特徴とするMEA(第1の構成要素とする)により上記第1の目的が達成される。
また、本発明は、電解質膜と触媒層とからなるMEAにおいて、
高湿度ガスに接する部位Aと低湿度ガスに接する部位Bとが電解質膜の面内で隣り合っており、部位Aを含む領域の寸法変化が、部位Bを含む領域の寸法変化よりも小さいことを特徴とするMEA(第2の構成要素とする)により上記第2の目的が達成される。
そして、これらの構成を組み合わせることで、本発明の双方の目的を達成することができるものである。
本発明の第1の構成要素によれば、電解質膜の外周領域の寸法変化が小さくなるので、保護シートを用いなくとも、電解質膜の外周領域における傷つきの恐れをなくすことができ、MEAの外周を保護することができる。
また、本発明の第2の構成要素によれば、電解質膜が接するガスの湿度に差が生じても、寸法変化の差が小さくなる。これにより、内部応力の発生が抑制され、電解質膜の傷つきの恐れをなくすことができ、MEAの外周を保護することができる。
以下、本発明につき、第1の構成要素と、第2の構成要素に分けて、それぞれの好適な実施形態を説明する。
I.本発明の第1の構成要素について
本発明の第1の構成要素は、電解質膜と触媒層とからなるMEAにおいて、前記電解質膜の外周領域の寸法変化が、その内側領域の寸法変化よりも小さいことを特徴とするものである。また、本発明の第1の構成要素は、前記電解質膜の外周領域の弾性率が、その内側領域の弾性率よりも大きいことを特徴とするものであるともいえる。
ここで、電解質膜の外周領域は、保護シートの有無によって異なり得るので、以下、それぞれの場合に分けて説明する。
(a)保護シートがない場合
寸法変化の小さい電解質膜の外周領域は、少なくともガスケットが、燃料電池の運転中にMEAを傷つけることを防止することができるように、当該傷つく領域をカバーすることができるものであればよい。好ましくは、ガスケットおよびGDLエッジの双方が、燃料電池の運転中にMEAを傷つけることを防止することができるように、当該傷つく領域をカバーすることができるものである。詳しくは、電解質膜の外周領域は、少なくともガスケットと接する部位を含む領域であればよく、好ましくはガスケットと接する部位と、GDLエッジが接する部位とを含む領域である。より好ましくは、触媒層に接する領域を除いた領域のうち、ガスケットと接する部位と、GDLエッジが接する部位とを含む領域に形成されてなるものである。
ここで、少なくともガスケットと接する部位を含む領域とし、GDLエッジが接する部位を任意要件としたのは、後述する第2実施形態に示す中間領域に外部領域機能の一部を担わせることができるためである。例えば、第2実施形態に示すように、外部領域でガスケットと接する部位を、中間領域でGDLエッジと接する部位をカバーすることで、ガスケットとGDLエッジの双方が燃料電池の運転中にMEAを傷つけることを防止することができるためである(図5B参照)。但し、図5Cのように中間領域には外部領域機能を担わせなくてもよい。より具体的な実施形態については、以下の各実施形態にて詳述する。なお、中間領域に関しては、保護シートがある場合の第3及び第4実施形態においても上記と同様に、外部領域機能の一部を担わせることもできるし、外部領域機能を担わせなくてもよい。後述する第3及び第4実施形態では、重複を避ける為、中間領域に関する説明は省略している。
外周領域の最適面積は、燃料電池のセル設計(例えば、MEAの縦横比、ガスケット仕様(Oリングのような細いシールか、パッキンのような広いシールか)、外周領域に流路を設ける場合(例:図12)の流路の径・形状など)によってそれぞれ対応させることが出来る。
(b)保護シートがある場合
寸法変化の小さい電解質膜の外周領域は、少なくとも保護シートの内縁と電解質膜とが接する部位(境界部)での寸法変化の差を小さくすることができるように、当該境界部(好ましくは当該保護シートの内縁近傍のみ)をカバーすることができるものであればよい。更に、ガスケットやGDLのエッジが接する部位を含む保護シートの設置領域の電解質膜にも外周領域(となる無機物の含有領域)を形成してもよい。より具体的な実施形態について、後述する第3、第4実施形態にて詳述する。
外周領域の最適面積は、上記(a)の保護シートがない場合と同様であり、燃料電池のセル設計によってそれぞれ対応させることが出来る。また、後述する中間領域についても、中間領域が外部領域機能の一部を担わない場合及び中間領域が外部領域機能の一部を担う場合のいずれにおいても、その最適面積は上記(a)の保護シートがない場合と同様であり、燃料電池のセル設計によってそれぞれ対応させることが出来る。
ここで、(1)電解質膜の寸法変化は、燃料電池の運転を想定した温度、例えば、80℃下での絶乾時に対するガス湿度95%での寸法変化率とする(以下同様である。)。かかる電解質膜の寸法変化は、以下の測定方法により求めることができる。なお、絶乾時とは、十分に乾燥された電解質膜をガス湿度ほぼ0%の雰囲気に置いたときをいうものとする。
電解質膜の寸法変化は、以下の測定方法により算出することができる。
まず、恒温恒湿槽に電解質膜を設置し、80℃・0%RHの条件下で2hr保持する。そして、この時の電解質膜の寸法Xを、槽内に設置したゲージで測定する。次に、80℃・95%RHの条件下で2hr保持する。そして、この時の電解質膜の寸法Yを同様に測定する。最後に、測定値から寸法変化率(Y−X)/Xを算出する。
(2)電解質膜の弾性率は、80℃・相対湿度95%での弾性率とする(以下同様である。)。かかる電解質膜の弾性率は、市販の動的粘弾性測定装置(恒温恒湿槽付き)を用いて測定することができる。
(3)電解質膜のガス透過性は、80℃・相対湿度95%での水素ガス透過率とする(以下同様である。)。かかる電解質膜のガス透過性は、市販のガス透過率測定装置(恒温恒湿槽付き)を用いて測定することができる。
次に、電解質膜の外周領域と内側領域の寸法変化の差、弾性率の差、ガス透過性の差などは、電解質膜の材質、ガス湿度や温度等により異なるが、おおむね以下に規定する範囲とするのが望ましい。なお、中間領域がある場合にも以下に規定する範囲とするのが望ましい。
上記外周領域の寸法変化は、上記内側領域の寸法変化よりも小さければよい。具体的には、10%以下、好ましくは4%以下の範囲である。同様に、外周領域の弾性率は、0.1GPa以上、好ましくは0.5GPa以上の範囲である。外周領域の寸法変化が10%を超える場合、弾性率が0.1GPa未満の場合、外周領域の寸法変化が十分に小さく出来ておらず、GDLのエッジやガスケットとの境界部に応力が発生するおそれがある。同様に、電解質膜の弾性率が小さくなり、GDLのエッジやガスケットによりMEA外周を傷つけるのを防止するのが困難となるおそれがある。
以下、本発明の第1の構成要素の具体的な実施形態につき、図面を用いて説明する。
(第1実施形態)
本発明に係るMEAの第1実施形態は、電解質膜の外周領域が、無機物を含有することを特徴とするものである。無機物の含有により、電解質膜の外周領域の寸法変化がその内側領域よりも小さくなる、および/または電解質膜の外周領域の弾性率がその内側領域よりも大きくなるので(図2参照)、保護シートを用いなくとも、MEAの外周を保護することができる。また、無機物の含有により、電解質膜の外周領域から外部へのガスの漏洩が小さくなるので、燃料電池を確実にシールすることもできる点で優れている。
(I)構成
本発明に係る第1実施形態のMEAを用いた燃料電池セルの基本構成を模式的に表した断面概略図を図1に示す。
図1に示すように、本実施形態の燃料電池セル21は、電解質膜1の両面には、触媒層2が接合され、その外側にはGDL3が配置されている。その外側には燃料極及び酸素極セパレータ4、5が配置されている。該セパレータ4、5の内部に設けられたガス流路(溝)6、7を通じて、水素含有ガス(以下、単にHとも略記する。)及び酸素含有ガス(以下、単にAirとも略記する。)が燃料極側及び酸素極側のGDL3、触媒層2にそれぞれ供給される。さらに、本実施形態では電解質膜1の外周領域には、無機物含有部1a(以下、単に含有部1aともいう)が設けてある(形成方法は後述する)。そして、ガスが外部へ漏洩することを防止するために、含有部1aとセパレータ4、5との間にガスケット8(詳しくは図11等参照)がそれぞれ配置されている。以下、各構成要件ごとに、説明する。
[電解質膜]
(1)電解質膜
電解質膜1の材質は、特に制限されるものではない。従来公知のものであれば特に制限されることなく用いることができる。具体的には、ポリマー骨格の全部又は一部がフッ素化されたフッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質、または、ポリマー骨格にフッ素を含まない炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質、などが挙げられる。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、−SOH、−COOH、−PO(OH)、−POH(OH)、−SONHSO−、−Ph(OH)(Phはフェニル基を表す)等の陽イオン交換基、−NH、−NHR、−NRR’、−NRR’R’’、−NH 等(R、R’、R’’は、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等を表す)等の陰イオン交換基などが挙げられる。
前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン−g−ポリスチレンスルホン酸系ポリマーなどが好適な一例として挙げられる。
前記炭化水素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質としては、具体的には、ポリサルホンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトンスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルスルホン酸系ポリマー、ポリベンズイミダゾールアルキルホスホン酸系ポリマー、架橋ポリスチレンスルホン酸系ポリマー、ポリエーテルサルホンスルホン酸系ポリマー等が好適な一例として挙げられる。
電解質膜1の材質は、高いイオン交換能を有し、化学的耐久性・力学的耐久性、などに優れることから、前記フッ素系ポリマーであってイオン交換基を備えた電解質を用いるのが好ましく、なかでも、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)などがより好ましく利用できる。
電解質膜1の膜厚は、得られる燃料電池の特性を考慮して適宜決定することができるが、5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μm、特に好ましくは15〜30μmである。電解質膜の膜厚が5μm以上であると製膜時の強度や燃料電池作動時の耐久性の点から好ましく、100μm以下であると燃料電池作動時の出力特性の点から好ましい。
なお、本発明では、燃料電池の酸素極及び燃料極の両電極間に介在される電解質成分を含有してなる構成部材を、電解質膜と称したが、決してその名称に拘泥されるものではなく、燃料電池に用いられる使用目的からみて、例えば、電解質層や電解質などと称される場合であっても、本発明でいう電解質膜に含まれる場合があることはいうまでもない。他の構成要件についても同様であり、その名称に拘泥されるものではなく、使用目的に照らしてその同一性を判断すればよい。
(i)電解質膜の外周領域
本実施形態では、電解質膜1の外周領域に含有部1aを設けてあることを特徴とする。この含有部1aでは、その寸法変化が、その内側領域の無機物非含有部1b(以下、単に非含有部1bともいう)よりも小さい、ないしその弾性率が、その内側領域の非含有部1bよりも大きいとする要件を具備すべく無機物を含有してなるものである。この際、寸法変化ないし弾性率は、無機物の配合量によって調整することができる。すなわち、無機物を含有することにより、含有部1aでは非含有部1bよりも弾性率を高めることができ(図2参照)、寸法変化を抑えることもできる。例えば、燃料電池自動車に搭載する場合に想定される低温域(冬期の発電停止時の温度)〜高温域(夏期の発電中の動作温度)に相当する−30〜100℃という極めて幅広い温度域にて、含有部1aを非含有部1bより弾性率を高く維持することができる。
本実施形態では、外周領域の含有部1aの寸法変化が小さくなるので、保護シートを用いなくとも、GDLエッジ3aやガスケット8が燃料電池の運転中にMEAを傷つけるのを防止することができ、MEAの外周を保護することができる。また、保護シートを用いていないため、MEAと保護シートの境界部に発生していた応力による膜の損傷もない点で優れている。含有部1aの平面形状は、ガスケット8(ガスケットの平面形状は、図12A、B等を参照のこと)と同様に、電解質膜の全外周辺部にわたって、ほぼ額縁状に形成されることが好ましい。
含有部1aへの無機物の含有量は、上記作用効果を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。含有部1aへの無機物の含有量は、電解質に対して、3〜50質量%、好ましくは10〜25質量%である。無機物の含有量が3質量%未満の場合には、GDLのエッジ3aやガスケット8が燃料電池の運転中にMEAを傷つけるのを十分に防止するのが困難となる恐れがある。一方、50質量%を超える場合には、膜の柔軟性が損なわれ、破損しやすくなる問題がある。電解質膜1中の無機物の含有量は、例えば、熱重量分析における重量変化などにより測定することができる。
上記無機物は、上記作用効果を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではなく、具体的には、SiO、TiO、Al、ZrOなどが挙げられる。中でもSiOが好ましいものの1つといえる。これは、製造過程において、液状のシラン系化合物(無機物の前駆体化合物)溶液を用いることで、電解質膜1内に、より均一に含浸させることができる点で優れている。さらに低温で重合反応(架橋)して、所望の大きさ(ナノサイズ)の無機物を形成することができる点でも優れている。
上記無機物の形態としては、特に制限されるものではなく、架橋ネットワーク、粒子状、不定形状等、その製造条件を調製することにより任意の形態とすることができるが、機械的特性の観点から、好ましくは粒子状である。
上記無機物の大きさ(平均粒子径)は、形態によっても異なるが、網目構造の電解質膜1の微細な孔内表面に主に形成されることから、通常5〜200nm、好ましくは10〜50nmの範囲である。なお、不定形状の場合には、最大長とする。無機物の大きさ(平均粒子径)は、例えば、X線回折における無機物(粒子)の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径、あるいは透過型電子顕微鏡像より得られる無機物(粒子)の粒子径の平均値を求めることにより得ることができる。
本実施形態での電解質膜1の外周領域は、ガスケット8及びGDLのエッジ3aが、燃料電池の運転中にMEAを傷つけることを防止することができるように、当該傷つく領域をカバーすることができるものであればよい。即ち、電解質膜1の外周領域は、少なくともガスケット8と接する部位と、GDLのエッジ3aが接する部位とを含む領域であればよい。例えば、触媒層2のエッジ2aより外側の外周領域全域でもよい。また、ガスケット8と接する部位からGDLエッジ3aが接する部位までを含む領域としてもよい。更に、ガスケット8と接する部位と、GDLエッジ3aが接する部位のみを含む領域としてもよいなど、特に制限されるものではない。なお、電極反応領域である触媒層のエッジ2aより内側にも含有部1aを設けて外周領域としてもよいが、この際には、プロトン移動を妨げるなどにより電極反応に影響を与えないように無機物の含有量や大きさなどを十分に留意する必要がある。なお、外周領域の上記規定は、後述する第2及び第3実施形態にも適用し得るものである。
本実施形態(更には他の実施形態を含む)では、電解質膜に無機物が含有されることで、含有部1aの弾性率が高まり、寸法変化を小さくでき、ガス透過性も低く抑えることが出来る。例えば、無機物の前駆体化合物(例えば、TEOS)を電解質膜の網目構造の微細孔内部に含浸し、重合反応することで、ナノサイズの無機物(SiO)を形成できる。このナノサイズの無機物(SiO)は、微視的にみれば、微粒子ないし3次元網目構造をしており、電解質膜との間で物理的ないし化学的に結びついた状態になっているものと思われる。そのため、図3(更には図9)に示すように、発電(起動停止)を繰り返しても、電解質膜に含有された無機物が流亡し難く、含有部1aの特性を保持することができる。そのため含有部1aにおけるガスケットやGDLエッジによる損傷、更には保護シートとの境界部における応力発生を抑えMEAを保護することができる。その結果、水素クロスオーバー量に関しても長期間安定して抑えることができる(図3、9の実施例と比較例を対比参照のこと)。更に、図4に示すように水素透過係数に関しても幅広い温度域で小さく抑えることができるなど、低いガス透過性を長期間安定して保持することができる。
(ii)含有部1aの形成方法
含有部1aの形成方法としては、特に制限されるものではない。好ましくは、電解質膜の外周領域に無機物を含有させる工程(含有部1aの形成方法)が、無機物を含む溶液を含浸する段階(含浸段階という)と、含浸後溶液中の溶媒を除去する段階(溶媒除去段階という)とを有することを特徴とする。これにより、無機物を所望の部位にのみ含有させることができるので、それ以外の部位におけるプロトン移動を妨げることがない。その結果、発電性能を維持したまま、無機物の含有による簡易な方法で、電解質膜の寸法変化ないし弾性率の差を小さくすることができる。より好ましくは、前記無機物を含む溶液として、無機物の前駆体化合物(単に無機物前駆体ともいう)を含む溶液(単に無機物前駆体溶液ともいう)を用い、溶媒除去段階にて、該無機物前駆体の重合反応を行って無機物を形成することを特徴とするものである。以下、各段階ごとに説明する。
(a)含浸段階
当該含浸段階では、電解質膜の外周領域に無機物を含む溶液を含浸すればよい。好ましくは無機物を含む溶液として、無機物前駆体溶液を用い、該溶液を電解質膜の所定の部位(ガスケット8と接する部位と、GDLのエッジ3aが接する部位とを含む外周領域)に塗布などして含浸するものである。より詳しくは、例えば、電解質膜1の中央(無機物非含有部1bに相当する部分)にはマスキングをし、その外周領域(マスキングがない、含有部1aに相当する部分)に、無機物前駆体溶液を塗布して含浸するものである。
上記無機物前駆体としては、シラン系化合物、金属アルコキシド化合物などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。好ましくは機械的特性の点からシラン系化合物である。上記シラン系化合物としては、例えば、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、エトキシジメトキシビニルシラン、ジエトキシメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、(アクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラアセチルオキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランメチルトリアセチルオキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、n−ペンチル・メチルジメトキシシラン、n−ペンチル−メチルジエトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジメトキシシラン、シクロヘキシル・メチルジエトキシシラン、フェニル・メチルジメトキシシラン、フェニル・メチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等のジアルコキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン、ジメチルジフェノキシシランなどが挙げられるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは単独で使用しても、混合物として使用してもよい。これらの中でも、コストの観点から、TEOSがより好ましいものといえる。
上記金属アルコキシド化合物を構成する金属としては、チタン、アルミニウム、ジルコニウムからなる群から選ばれた少なくとも一つの金属を含むことが好ましい。金属アルコキシド化合物としては、具体的には、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−t−ブトキシチタンといったチタニウムアルコキシド、トリ−イソプロポキシアルミ、トリ−n−ブトキシアルミといったアルミニウムアルコキシド、テトラ−n−ブトキシジルコニウムといった加水分解速度の速いチタニウムアルコキシド、アルミニウムアルコキシド、ジルコニウムアルコキシドを挙げることができる。
上記無機物前駆体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用しても良い。例えば、上記シラン系化合物と金属アルコキシド化合物を組み合わせて用いることで、シラン系化合物と金属アルコキシド化合物とを重合反応(縮合反応)させてプロトン伝導性の無機物を形成することもできる。
前記溶媒は、無機物前駆体を加熱重合させる際の温度環境下で揮発(除去)させることができるものが望ましい。かかる溶媒としては、無機物前駆体の種類にもよるが、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エトキシエタノール等の各種アルコール、アセトン等のケトン類、トルエン、キシレン類、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)といった塩基性溶媒などを用いることが出来るが、これらに制限されるものではない。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。電解質溶解の抑制の点から少なくとも水を含む混合溶媒が好ましく、より好ましくは水である。なお、DMF、DMAc、NMP、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリルなどの電解質膜を溶解し得る溶媒を使用する場合には、電解質膜を溶解させないように使用量や条件にて行う必要がある。
溶液中の無機物前駆体の濃度は、次の段階(溶媒除去段階)で形成される含有部1a中の無機物含有量が所望の範囲になるように適宜決定すればよい。
電解質膜への溶液の塗布・含浸方法としては、特に制限されるものではなく、例えば、スプレー塗布法、カレンダー印刷方式による塗布法、ダイコート塗布法、インクジェット方式による塗布法などの従来公知の各種塗布法、ディッピング方法など従来公知の各種浸漬法などを利用することができる。電解質膜に均一に塗布することが出来る点で、スプレー塗布方法が好ましい。
含浸段階での温度条件に関しては、この段階で無機物前駆体が重合反応しない程度の温度に保持するのがよい。
なお、雰囲気ガス、圧力条件などに関しては、特に制限されるものではなく、大気中、常圧(大気圧)下で行えばよい。
(b)溶媒除去段階
当該溶媒除去段階では、前段階で電解質膜に溶液を含浸した後、該溶液中の溶媒を除去すればよい。好ましくは、電解質膜に無機物前駆体溶液を含浸後、所定の温度で該溶液中の溶媒除去と無機物前駆体の重合を行って無機物を形成するのが好ましい。例えば、電解質膜にシラン系化合物水溶液を含浸後、真空オーブン中で加熱することにより、水の除去とシラン系化合物の重合反応を行う。これにより、図1に示すように、電解質膜1の外周領域にナノサイズのSiOを所定量含有した含有部1aを形成することができる。
ここで、溶媒除去段階の温度条件としては、無機物前駆体や溶媒の種類や圧力条件等にもよるが、80〜140℃、好ましくは100〜120℃の範囲である。80℃未満の場合には、溶媒除去に時間を要する。また、重合反応が十分に促進されず、反応終了までに長時間を要することにもなる。140℃を超える場合には電解質が軟化して形状が保持されないおそれがあり、また使用可能な溶媒の種類が制限されるおそれがある。
圧力条件としては、特に制限されるものではないが、効率よく溶媒を除去して重合反応時間を短縮するには、真空オーブンなどを用いて、0.01〜10Pa程度に減圧して乾燥及び重合反応を行うのが望ましい。0.01Pa未満の場合には大型の減圧装置が必要となる。10Paを超える場合には減圧乾燥効果が十分に得られないおそれがある。
溶媒除去時間としては、溶媒が十分に除去でき、無機物前駆体の重合反応が終了していればよく、特に制限されるものではない。
雰囲気としては、特に制限されるものではなく、大気雰囲気でよい。減圧雰囲気とする際には、装置内を予め窒素ガス等の不活性ガスでバージしてもよいが、特に必要はない。
また、本実施形態による当該溶媒除去段階は、前記含浸段階後、速やかに行うものである。これは、前記含浸段階での塗布後に所定時間放置して塗布した領域からその周辺領域に無機物前駆体溶液を拡散させるようにしてもよいが、かかる実施形態は、本実施形態とは別の第2実施形態として規定する。そのため、本実施形態では、含浸段階での塗布後に30分以内に溶媒除去段階を行うものとし、第2実施形態では、含浸段階での塗布後に30分を超えて放置、好ましくは180分以上放置して溶媒除去段階を行うものとする。
なお、電解質膜1の中央に触媒層2を配置する前に、含有部1aを形成しておくのが望ましいが、触媒層2(更にはGDL3)を配置した後に、含有部1aを形成するようにしてもよい。
また、本発明では、固体形状の無機物(例えば、ナノサイズの無機物微粒子)を含有する分散液を電解質膜に塗布含浸させ、その後、分散媒を除去して含有部1aを形成するようにしてもよい。
なお、本発明のMEA及び燃料電池の製造方法としては、上記した含有部1aの形成方法以外は、特に制限されるものではなく、従来公知の製造方法を適宜利用して行うことが出来るものであるため、ここでの説明は省略する。
(iii)電解質膜の内側領域
本実施形態では、電解質膜1の内側領域は、基本的には、上記外周領域よりも内側にある領域をいい、非含有部1bで構成されているものである。上記外周領域が、1つの連続した領域であれば、当該外周領域よりも内側にある領域を内側領域とすることが出来る。一方、上記外周領域が、2つ以上に分離した領域、例えば、ガスケット8と接する部位と、GDLのエッジ3aが接する部位の2つに分離されている場合には、当該2つの領域のうち相対的に内側にあるGDLのエッジ3aが接する部位(領域)よりも内側にある領域を内側領域とすることが出来る。この場合、ガスケット8と接する部位と、GDLのエッジ3aが接する部位とに挟まれた領域や、ガスケット8と接する部位よりも外側の領域にも、非含有部1bを形成し得る。そこで、これらの領域も、内側領域に含めてもよい。少なくとも、2つの外周領域の方が、無機物を含有することで、これら以外の領域(非含有部1b)よりも寸法変化が小さくなっており、本発明の構成要件を満足し得るためである。
[触媒層]
電解質膜の両面(空気極側および燃料極側)にそれぞれ接合される触媒層2は、いずれも導電性担体に触媒粒子が担持されてなる触媒物質(以下、電極触媒ともいう)とプロトン導電性を有する電解質樹脂(以下、バインダともいう)で構成されている。
(1)電極触媒
各触媒層に含まれる電極触媒は、触媒粒子を担持した導電性担体からなる。
(i)触媒粒子
導電性担体に担持される触媒粒子としては、アルミニウム、ケイ素、リン、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、ガリウム、ゲルマニウム、セレン、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、すず、アンチモン、テルル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、鉛およびビスマスよりなる群から選択される1種、もしくは、この群から選択される少なくとも2種の合金を用いることができる。発電特性、耐久性、一酸化炭素などに対する耐被毒性および耐熱性などの点から、白金、白金−鉄合金、白金−コバルト合金、白金−ニッケル合金、白金−モリブデン合金、または白金−ルテニウム合金が好ましい。
触媒粒子の平均粒子径は、1〜30nmが好ましい。平均粒子径が1nm以上であると比表面積に見合った触媒活性が得られる点から好ましく、30nm以下であると触媒活性の点から好ましい。本発明における触媒の平均粒子径は、X線回折における触媒粒子の回折ピークの半値幅より求められる結晶子径、または透過型電子顕微鏡像より得られる触媒粒子の粒子径の平均値を求めることにより得ることができる。
(ii)導電性担体
導電性担体は、触媒を所望の分散状態で担持させるための比表面積を有し、集電体として機能する導電性を有しているものであればよい。導電性担体の材質としては、例えば、ケッチェンブラックTMまたはアセチレンブラックなどのカーボンブラック、活性炭、コークス、天然黒鉛または人造黒鉛などのグラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ガラス状炭素粉体、およびカーボンナノチューブなどの主成分がカーボンであるものが好ましい。なお、「主成分がカーボンである」とは、主成分として炭素原子を含むことをいい、炭素原子のみからなる、実質的に炭素原子からなる、の双方を含む概念である。場合によっては、燃料電池の特性を向上させるために、炭素原子以外の元素が含まれていてもよい。なお、実質的に炭素原子からなるとは、2〜3質量%程度以下の不純物の混入が許容されることを意味する。
導電性担体の平均一次粒子径は、2nm〜1μmが好ましく、より好ましくは5〜200nm、特に好ましくは10〜100nmである。平均一次粒子径が2nm以上であると有効な導電性ネットワークを形成するという点から好ましく、1μm以下であると触媒層の厚みを適切な範囲で制御できる点から好ましい。
導電性担体への触媒粒子の担持は公知の方法で行うことができる。
例えば、触媒金属を第一の溶媒に溶解して触媒金属水溶液を調製する。次に、カーボン粒子などの導電性担体、触媒金属水溶液、および還元剤を第二の溶媒に加えた混合液を調製し、触媒金属を還元・析出させカーボン粒子などの導電性担体に担持させることができる。次に、濾過により固形分を分離した後、固形分を乾燥することにより電極触媒を得ることができる。
触媒金属水溶液として、触媒として白金を用いる場合、塩化白金酸溶液またはジニトロジアミン白金錯体溶液などを用いることができる。還元剤として例えば、炭素数1〜6の有機酸類、アルコール類、炭素数1〜3のアルデヒド類、水酸化ホウ素ナトリウムおよびヒドラジンなどを用いることができる。炭素数1〜6の有機酸類としては特に限定されないが、ギ酸、酢酸、シュウ酸またはクエン酸などが挙げられる。アルコール類としては特に限定されないが、メタノール、エタノール、エチレングリコール、2−プロパノールまたは1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。炭素数1〜3のアルデヒド類としては特に限定されないが、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはアクロレインなどを用いることができる。第二の溶媒として、水を用いることができる。
導電性担体に対する触媒粒子の含有率は特に限定されないが、5〜80質量%が好ましく、より好ましくは10〜75質量%、特に好ましくは15〜70質量%である。触媒粒子の含有量が5質量%以上であると高い触媒活性を維持できる点で好ましく、80質量%以下であると高い耐久性を維持できる点で好ましい。触媒粒子の担持量は誘導結合プラズマ発光分光法(ICP)により求めることができる。
(2)バインダ
触媒層に含まれるプロトン導電性を有するバインダ(ないし高分子電解質)は、電極触媒の少なくとも一部を被覆しているのが好ましい。これにより、プロトン伝導性などを向上させるだけでなく、電極構造を安定して維持することができ、電極性能を高めることができる。
上記バインダとしては、特に限定されないが、上述の電解質膜の項で記載した高分子電解質を好ましく用いることができる。即ち、Nafion溶液などのパーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン導電体の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン導電体などからなるイオン交換樹脂が挙げられる。パーフルオロスルホン酸ポリマー系のプロトン導電体として、具体的には、炭素原子とフッ素原子のみからなる重合体だけではなく、水素原子が全てフッ素原子と置換されていれば酸素原子等を含有するものなどが挙げられ、CF=CFに基づく重合単位とCF=CF−(OCFCFX)−O−(CF−SOHに基づく重合単位(式中、Xはフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、mは0〜3の整数であり、nは1〜12の整数であり、pは0又は1である。)とを含む共重合体などがある。
バインダと導電性担体との質量比は、順に、0.3:1〜1.3:1が好ましく、より好ましくは0.5:1〜1.1:1である。導電性担体質量に対してバインダ成分である高分子電解質の質量比が0.3倍以上であると触媒層内の良好なイオン伝導性の点で好ましく、1.3倍以下であると触媒層内のガス拡散及び水の排出の点で好ましい。
各触媒層には、さらに、撥水性高分子や、その他の各種添加剤が含まれていてもよい。撥水性高分子が含まれていることにより、得られる触媒層の撥水性を高めることができ、発電時に生成した水などを速やかに排出することができる。撥水性高分子の混合量は、本発明の作用効果に影響を与えない範囲で適宜決定することができる。上述の撥水性高分子として例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、または、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレンもしくはこれらのモノマーの共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体など)などのフッ素系の高分子材料などを用いることができる。
本発明における触媒層の厚さ(片面)は、特に限定されないが、0.1〜100μmが好ましく、より好ましくは1〜20μmである。触媒層の厚さが0.1μm以上であると所望する発電量が得られる点で好ましく、100μm以下であると高出力を維持できる点で好ましい。
[GDL]
GDL3は、MEAの構成部材に含めてもよいし、MEA以外の燃料電池セル21の構成部材としてもよい。GDL3としては、特に限定されないが、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性及び多孔質性を有するシート状材料を基材とする多孔質基材などが挙げられる。また、GDLでも触媒層と同様に撥水性を高めてフラッディング現象を防ぐために、公知の手段を用いて、前記GDLの撥水処理を行ったり、前記GDL上に炭素粒子集合体からなる層を形成してもよい。
本発明のMEAの構成を有する燃料電池において、触媒層2、GDL3、および電解質膜1の厚さは、燃料ガスの拡散性などを向上させるには薄い方が望ましいが、薄すぎると十分な電極出力が得られない。従って、所望の特性を有するMEA(燃料電池)が得られるように適宜決定すればよい。
[セパレータ]
燃料極及び酸素極セパレータ4、5としては、カーボンペーパー、カーボンクロス、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製や、ステンレス等の金属製のものなど、特に制限されるものではなく、従来公知のものを用いることができる。また、前記セパレータ4、5は、空気と燃料ガスとを分離する機能を有するものであり、それらの流路を確保するために所望の形状に加工されたガス流路(溝)6、7が形成されているのが望ましく、従来公知の技術を適宜利用することができる。セパレータ4、5の厚さや大きさ、流路溝6、7の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。なお、後述する第2の構成要素におけるセパレータの流路溝の形状は、ガス流入側やガス流出側に高湿度ガス領域と低湿度ガス領域が隣り合って形成されるような流路溝6、7の形状(例えば、図12や17の形状など)に対して、より有効に作用し得るものといえるが、これらに限定されるものではない。
[ガスケット]
上記ガスケット8は、気体、特に酸素や水素ガスに対して不透過であればよいが、一般的には、ガス不透過材料からなるOリングなどの単一の不透過部により構成されていればよい。さらに、必要に応じて、電解質膜1や酸素極及び燃料極触媒層2のエッジとの接着を目的とする接着部を設けてなる、接着剤付きのガスシールテープ等のような複合的な構成としてもよい。Oリングやガスシールテープの不透過部を構成する材料は、設置後に所定の圧力がかかった状態で、酸素や水素ガスに対して不透過性を示すものであれば特に制限されない。
こうした不透過部を構成する材料のうち、Oリングを構成する材料としては、例えば、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)等のフッ素系の高分子材料、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂などが挙げられる。
一方、ガスシールテープ等の不透過部を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)などが挙げられる。また、ガスシールテープ等の接着部を構成する材料としては、電解質膜1や酸素極及び燃料極触媒層2と、ガスケット8を密接に接着できるものであれば特に制限されないが、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤などが使用できる。
上記ガスケット8の形成方法は、特に制限されず、公知の方法が使用できる。例えば、電解質膜1上に、あるいは触媒層2のエッジを被覆しながら電解質膜1上に、上記接着剤を、5〜30μmの厚みになるように塗布した後、上記したようなガス不透過材料を10〜200μmの厚みになるように塗布し、これを25〜150℃で、10秒〜10分間加熱することによって硬化させる方法が使用できる。または、予め、ガス不透過材料をシート状に成形した後に、この不透過膜に接着剤を塗布して、ガスケット8を形成した後、これを電解質膜1上に、あるいはガスケット8の一部を被覆しながら電解質膜1上に、貼り合わせてもよい。この際、不透過部の厚みは、特に制限されないが、15〜40μmが好ましい。また、接着部の厚みは、特に制限されないが、10〜25μmが好ましい。
上記ガスケット8については、市販のものを購入して用いてもよい。ここでいう市販のものには、購入者側の仕様(寸法、形状、材料、特性など)に応じてメーカーが製造したような発注品ないし特注品等も含まれるものとする。
(第2実施形態)
本発明に係るMEAの第2実施形態は、第1実施形態において、電解質膜の外周領域とその内側領域との間に、寸法変化が外周領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域(中間領域という)を形成すること、および/または弾性率が外周領域よりも小さく、かつその内側領域よりも大きい領域(中間領域)を形成することを特徴とするものである。これにより、寸法変化ないし弾性率が、電解質膜の外周領域から内側領域に向けて段階的ないし連続的に変化するので(図6参照)、寸法変化ないし弾性率の差がある部位(外周領域と内側領域との境界部)に生じる応力を低減することができる。
ここで、電解質膜の外周領域を形成すべき部位に関しては、上記第1の構成要素にて説明したとおりであるので、ここでの説明は省略する。
電解質膜の中間領域を形成すべき部位に関しては、上記した中間領域機能を発現させることができるように、上記した外部領域とその内側領域との間に形成されていればよく、特に制限されるものではない。中間領域では、寸法変化ないし弾性率が、(1)均一な領域として形成されていてもよし、(2)段階的あるいは連続的に変化するように形成されていてもよい。上記(1)の場合には、図5Cに示すように、外部領域、中間領域、内側領域ごとに寸法変化ないし弾性率が段階的に変化するように形成されていてもよい。この場合には、内側領域は、触媒層に接する領域を除いた領域に形成されているのが望ましい。また、上記(2)の場合には、触媒層に接する領域内に中間領域の一部が入り込んでいてもよい(図5B参照)。この場合、中間領域中の無機物の濃度勾配を持たせることにより、触媒層に接する領域中の中間領域では、プロトン移動を妨げないように、内側領域に近い特性(寸法変化率や弾性率)に調整することができるためである。この際の中間領域と外部領域や内側領域との境界は、図5A、Bに示すように、必ずしも明確ではない。そこで、例えば、無機物を用いて中間領域や外部領域を形成する場合には、外部領域の無機物濃度の減少が確認されれば、中間領域とし、無機物が確認されなくなれば、内側領域とすればよい。ただし、かかる確認方法に何ら制限されるものではなく、例えば、それぞれの部位から切り出した試験片の弾性率測定により確認するようにしてもよい。
また、上記要件を満足するための電解質膜の中間領域の形成個所や面積に関しても、該中間領域が外部領域機能の一部を担うか否かで異なる。その為、以下に場合分けして説明する。
(a)中間領域が外部領域機能の一部を担わない場合(図5C参照)
この場合、中間領域の形成個所は、GDLのエッジ3aと接し得る領域の内縁ないしその近傍から触媒層2のエッジ2aの外縁ないし近傍までの間が好適であるといえる(図5C参照)。
中間部1b内部の無機物の濃度分布は、均一であってもよいし、含有部1aから非含有部1bに向けて濃度が低減するように濃度勾配を持たせても良い。製造方法が簡便であり、また境界部での応力の低減効果に優れる後者が望ましいといえる。
外周領域と中間領域の寸法変化の差は、5%以下、好ましくは2%以下である。同様に、内側領域と中間領域の寸法変化の差も、5%以下、好ましくは2%以下である。上記外周領域と中間領域の寸法変化の差が5%を超える場合、当該境界部における応力を十分に抑えるのが困難となるおそれがある。
また、弾性率は寸法変化率とは異なり、外周領域(ガスケットとの接触部位)のみが重要である。したがって、当該実施形態でも外周領域の弾性率が、0.1GPa以上、好ましくは0.5GPa以上の範囲であればよく、中間領域の弾性率は、外周領域の弾性率と内側領域の弾性率の間にあればよい。
(b)中間領域が外部領域機能の一部を担う場合(図5B参照)
この場合の中間領域の形成個所は、ガスケット8と接し得る領域の内縁ないしその近傍から触媒層2のエッジ2aの外縁ないしその近傍までの間が好適である(図5B参照)。
中間部1b内部の無機物の濃度分布は、均一であってもよいし、含有部1aから非含有部1bに向けて濃度が低減するように濃度勾配を持たせても良い。製造方法が簡便であり、また境界部での応力の低減効果に優れる後者が望ましいといえる。
また、外周領域と中間領域の寸法変化の差に関しては、中間部1b内部の無機物の濃度分布が均一であってもよい場合には、上記(a)と同様である。一方、中間部1b内部の無機物に濃度分布がある場合には、中間領域の寸法変化の値を一義的に決定するのは困難である。この場合には、まず、中間領域を上記に規定する方法(外部領域の無機物濃度の減少が確認されれば、中間領域とし、無機物が確認されなくなれば、内側領域とする方法)により確定する。その後、中間領域を濃度勾配に沿って適当な間隔で複数分割(例えば、3分割)し、各分割区分ごと寸法変化を測定し、これらを平均した値を中間領域の寸法変化の値としてもよい。この場合でも、外周領域と中間領域の寸法変化の差は、概ね上記(a)と同様であればよい。
(I)構成
本発明に係る第2実施形態のMEAを用いた燃料電池セルの基本構成を模式的に表した断面概略図を図5に示す。
図1に示す第1実施形態との違いは、図5に示すように、電解質膜1の含有部1aと非含有部1bとの間に、寸法変化が外周領域の含有部1aよりも大きく、かつその内側領域の非含有部1bよりも小さい領域の中間部1cを設けたことである。これにより、含有部1a、中間部1c、非含有部1bの順に弾性率を高めることができ(図6参照)、寸法変化を抑えることもできる。この含有部1a、中間部1c、非含有部1b間の弾性率ないし寸法変化は、−30〜100℃の幅広い温度域において保持することができる。
上記したように、本実施形態では、電解質膜1の含有部1aと非含有部1bとの間に中間部1cを設けた以外は、図1に示す第1実施形態と同様であり、各構成要件の重複説明を避ける為に、以下では、この点についてのみ説明する。
(1)電解質膜の中間部1c
本実施形態の中間部1cは、例えば、前記含有部1aと非含有部1bとの間の領域に、無機物を相対的に低濃度で含有する領域を形成することにより得られる。これは、含有部1aと非含有部1bとの間に寸法変化の差が生じており、その境界部に応力が発生するため、運転中に破損が生じるという問題点を、中間部1cを設けることにより解消したものである。即ち、中間部1bを設けて当該境界部の寸法変化ないし弾性率の差をより小さくすることで、当該境界部に生じる応力を低減し、第1及び第2実施形態の作用効果を有効に奏することができる。
なお、中間部1cの形成個所、面積、外部領域との面積比、寸法変化、弾性率、ガス透過性、外周領域や内側領域と中間領域との寸法変化や弾性率やガス透過性の差等については、上記した中間領域にて場合分けして説明した内容と同様である為、ここでの説明は省略する。
(2)中間部1cの形成方法
中間部1cの形成方法としては、特に制限されるものではない。好ましくは、第1実施形態で説明した含有部1aの形成方法を利用するものである。即ち、外周及び中間領域に無機物を含有させる工程(含有部及び中間部の形成方法)が、無機物を含む溶液を含浸する段階(含浸段階)と、含浸後所定の時間が経過した後に溶液中の溶媒を除去する段階(溶媒除去・無機物拡散段階)とからなるものである。より好ましくは、前記無機物を含む溶液として、無機物前駆体溶液を用い、溶媒除去・無機物拡散段階にて、該無機物前駆体の重合反応を行って無機物を形成するものである。以下、各段階ごとに説明する。
(a)含浸段階
含浸段階は、第1実施形態で説明した(a)含浸段階と同様である為、ここでの説明は省略する。
(b)溶媒除去・無機物拡散段階
溶媒除去・無機物拡散段階では、電解質膜に溶液を含浸後、所定の時間(放置時間)が経過した後に溶液中の溶媒を除去すればよい。好ましくは、電解質膜の外周領域に無機物前駆体溶液を含浸後、所定の時間が経過した後に所定の温度で該溶液中の溶媒除去と無機物前駆体の重合を行って外周領域及び中間領域に所定量の無機物を形成し、含有部1aと中間部をまとめて形成するものである。
本実施形態の含有部1a及び中間部1cの形成方法と、第1実施形態での含有部1aの好適な形成方法との違いは、含浸段階にて溶液を含浸後、所定時間が経過した後に、溶媒の除去、更には無機物前駆体の重合反応を開始することである。上記所定時間(放置時間)の経過中には、外周領域(含有部1a)から内側(非含有部1b)に向かって溶液が拡散するため、含有部1aと非含有部1bとの間に、無機物含有量の勾配をもつ中間部1cが形成される。この場合には、図5A、Bに示すように、無機物の濃度勾配が、いわば連続的に形成されることになる。これにより、図5Bに示すように、外周領域の含有部1a(無機物前駆体の含浸部)では高弾性部となり、中間領域である中間部1c(無機物前駆体の拡散部)では中弾性領域となる(図6参照のこと)。言い換えれば、含有部1a、非含有部1b、中間部1cの寸法変化は、無機物の配合量(含有量)によって弾性率を所望の値にすることで適宜調節できる。この弾性率は、例えば、上記無機物前駆体を含む溶液の濃度や上記放置時間を適宜調節することで所望の値にすることができる。特に中弾性領域では、無機物の濃度に比例する形で、外周から内側に向けて弾性が徐々に低下するように形成されている(弾性の勾配が形成されている)。実際には、含有部1aの境界部近傍も無機物の濃度勾配が形成されており、この領域を含めてより広い範囲で濃度勾配が形成され、明確な境界部が消失し、該境界部で生じる応力も大幅に低減される形になっている。このように、無機物の含有による簡易な方法で、含有部1aと中間部1cを形成でき、この間で寸法変化、更には弾性率が連続的に変化するので、寸法変化の差がある部位に生じる応力をより一層低減することができる。発生する応力が緩和される作用により、MEAの耐久性が上がる効果も得られるものである。
ここで、溶液を含浸後から溶媒除去を開始するまでに経過させる時間(放置期間)は、溶液中の無機物前駆体の濃度、溶媒の種類、電解質膜の材質や厚さ、中間部1cの領域幅等によって適宜決定すればよい。
上記経過させる時間(放置期間)中の雰囲気ガス、温度条件、圧力条件などに関しても特に制限されるものではなく、大気中、常温常圧下で行えばよい。
なお、上記経過させる時間(放置期間)後の溶媒除去に関しては、第1実施形態で説明した(b)溶媒除去段階と同様である為、ここでの説明は省略する。
ただし、本発明では、上記に示す形成方法に何ら制限されるものではなく、例えば、第1実施形態で説明した好適な含有部1aの形成方法を用いて、含有部1aと中間部1cとを別々に形成しても良い。即ち、含有部1aを形成する際には、非含有部1bと中間部1cに相当する部分をマスキングして、所望の無機物前駆体濃度の溶液を塗布後、直ちに溶媒除去と重合反応を開始する。これにより電解質膜の外周領域に含有部1aを形成する。次に、中間部1cを形成する際には、非含有部1bと含有部1aに相当する部分をマスキングして、無機物前駆体を相対的に低濃度で含有する溶液を塗布後、直ちに溶媒除去と重合反応を開始する。これにより電解質膜の外周領域と内側領域の間に中間部1cを形成するようにしてもよい(なお、含有部1aと中間部1cの形成順序は逆でもよい。)。この場合には図5Cに示すように、含有部1a、中間部1c、非含有部1bの間で無機物濃度が段階的(階段状)に変化するが、含有部1a及び中間部1c内部の無機物は、濃度勾配が殆ど無く均一に形成されている。この場合でも、図5Cに示すように無機物前駆体の高濃度含浸部である外周領域(含有部1a)では高弾性部となり、無機物前駆体の低濃度含浸部である中間領域(中間部1c)では中弾性領域となる(図6参照)。
(第3実施形態)
本発明に係るMEAの第3実施形態は、前記電解質膜の外周に保護シートを設置し、少なくとも前記保護シートの設置領域とその内側との間に、寸法変化が保護シート設置領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域(外部領域)を形成すること、および/または弾性率が、保護シート設置領域よりも小さく、かつその内側領域よりも大きい領域を形成することを特徴とするものである。本実施形態によれば、寸法変化の差が生じる保護シートの設置領域の内縁と接する部位(境界部)に外部領域を形成してため、該境界部での寸法変化を小さくすることができ、この境界部に生じる応力を低減できる。
ここで、上記第1の構成要素の「(b)保護シートがある場合」で規定した「電解質膜の外周領域」は、少なくとも保護シートの内縁と電解質膜とが接する部位(境界部)での寸法変化の差を小さくすることができるように、当該境界部(保護シートの内縁近傍のみ)をカバーすることができるもの(第4実施形態)であればよい。本実施形態では、更に、ガスケットやGDLのエッジが接する部位を含む保護シートの設置領域部分の電解質膜にも外周領域を形成してなるものである(第3実施形態)。
なお、保護シート設置領域の寸法変化、弾性率、ガス透過性は、電解質膜に保護シートを設置した状態のいわば、保護シート/電解質膜/保護シートの3層構造体における寸法変化、弾性率、ガス透過性をいうものとする(図8、9参照のこと)。
電解質膜における外周領域の面積及び寸法変化、内側領域の寸法変化、外周領域と内側領域の寸法変化の差については、上記第1の構成要素の「(b)保護シートがある場合」で規定した通りであるので、ここでの説明は省略する。
また、保護シート設置領域の面積に関しても、電解質膜における外周領域の面積と同様の範囲であればよい。但し、本実施形態では、保護シートの内縁と電解質膜とが接する部位(境界部)をカバーする必要上、外周領域を保護シート設置領域及び保護シート設置領域の内縁から内側に0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmの領域まで形成するのが望ましい。保護シート設置領域の内縁から内側に0.5mm未満の場合には保護シートを設置する際の位置決めが難しくなるほか、保護シートの内縁と電解質膜とが接する部位(境界部)を十分にカバーするのが困難となる。5mmを超える場合には電極触媒層に接する領域が制限されたり、電極触媒層に接する領域にも外部領域を形成する必要が生じるおそがある。
この際、外周領域の形成個所のうち保護シート設置領域に関しては、当該領域全体に形成してもよいし、必要な部分にのみ形成してもよい(第4実施形態を除く)。
(I)構成
本発明に係る第3実施形態のMEAを用いた燃料電池セルの基本構成を模式的に表した断面概略図を図7に示す。
本実施形態と第1実施形態との違いは、図7に示すように、電解質膜1の外周に、保護シート9を設けたことである。保護シート9は、電解質膜1とガスケット8との接触と、電解質膜1とGDLエッジ3aとの接触とを、防止するために貼り付けるなどして設けられている。
上記したように、本実施形態では、電解質膜1の外周に、保護シート9を設けた以外は、第1実施形態と同様であり、各構成要件の重複説明を避ける為に、以下では、当該相違部分についてのみ説明する。
(1)保護シート
本実施形態では、保護シート9の設置領域とその内側との間に、寸法変化が、保護シート9の設置領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域を形成するものである。すなわち、保護シート9の設置領域とその内側との間に無機物を含有することにより、この含有部1aでは、保護シート9の設置領域(保護シート9の取り付け部)よりも高く、かつその内側領域の非含有部1bよりも低くすることができる(図8参照)。これにより弾性率を高め、寸法変化を抑えることができる。具体的には、当該領域にも無機物の含有領域として含有部1aを形成してなるものである。即ち、保護シート9の内縁(内側エッジ)9eよりも、含有部1aの内縁(内側エッジ)1eの方が、より内側に位置するように形成されている。即ち、含有部1aが、保護シート9の内縁9eよりも内側まで形成されてなるものである。これにより、無機物の含有による簡易な方法で、本実施形態による効果を得ることができる。更に、保護シート9のみを設けた従来法では、MEAと保護シートとの寸法変化に差があり、その境界部9e近傍には応力が発生するため、運転中に破損が生じるおそれがあった。一方、本実施形態では、保護シート9の内縁9eよりも内側まで含有部1aが形成されてなるため、MEAと保護シートとの寸法変化の差を小さくでき、その境界部6eでの応力を低減することができる。その結果、運転中に破損が生じるのを効果的に抑制することができ、電池の長寿命化を図ることが出来る。
なお、本実施形態では、無機物の含有領域が、保護シート9の内縁9eよりも内側まで形成されていればよい。この無機物の含有領域は、本実施形態による作用効果を有効に発揮することができるものであればよく、含有部1aのみであってもよいし、含有部1aと中間部1cから構成されていてもよい。特に中間部1cを有する場合には、第2実施形態の効果を享受することが出来る点で優れている。この際、保護シート9の内縁9e近傍までは含有部1aとし、更にその内側に中間部1cを設けるのが望ましいといえる。
なお、保護シート9の外縁9fは、ガスケット8による傷つき易さを抑えることができればよく、当該ガスケット8と接触し得る領域まであればよい。好ましくは図7に示すように電解質膜の外縁1fまで形成しておくのがよい。これにより、保護シート9の位置決めが極めて容易となる利点もある。
ここで、保護シート9を構成する材料としては、酸素や水素ガスに対して不透過であって、上記使用目的を達成することができるものであれば、特に制限されるものではない。化学的に安定であるものが好ましく、例えば、接着剤付きの、フッ素系樹脂、ポリオレフィンやポリエステル等の熱可塑性樹脂、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリイソブチレンゴム等のゴム材料などが挙げられる。
上記フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、4フッ化エチレン−ペルフロロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)等のフッ素系の高分子材料などが挙げられる。
上記接着剤としては、例えば、ポリオレフィン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー等のホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル、ポリオレフィン等のオレフィン系接着剤等が挙げられる。
保護シート9は、外周領域1aを形成後に従来と同様にして形成すればよく、例えば、上記した接着剤を用いて電解質膜に接着固定しても良いし、熱圧着などの方法により、該保護シート9を熱融着させて固定してもよい。
また、保護シート9の厚さとしては、図7AまたはBに示すように、触媒層2と同じ厚さにしてもよいが、特に制限されるものではない。例えば、GDL3の内側にMIL層を形成する場合には、触媒層+MIL層の厚さとしてもよい。この場合、GDL3のMIL層は、保護シート9に重なる部分には形成しないようにすればよい。保護シートの厚さは、MEAの設計(GDL・MIL・触媒層の厚さな)やセルの設計(面圧の狙い値など)に応じて適宜決定すればよく、特に制限されるものではない。
なお、保護シート9を触媒層2と同じ厚さにし、保護シート9と触媒層2とが隙間無く接したものを形成するのが望ましい。これにより、図7Bに示すように、GDL3のエッジ3aが保護シート9に段差無く接する(被覆する)ように形成することができる点で優れている。また、隙間がないため、振動や衝撃に対する補強効果を有する。
なお、保護シート9の設置に応じて、ガスケット8の厚さ(長手方向に垂直な断面の直径)も適宜変更すればよい。
本実施形態(更には他の実施形態を含む)でも、第1実施形態で説明したように、電解質膜に無機物が含有されることで、含有部1aの弾性率が高まり、寸法変化を小さくでき、ガス透過性も低く抑えることが出来る。例えば、無機物の前駆体化合物(例えば、TEOS)を電解質膜の網目構造の微細孔内部に含浸し、重合反応することで、ナノサイズの無機物(SiO)を形成できる。このナノサイズの無機物(SiO)は、微視的にみれば、微粒子ないし3次元網目構造をしており、電解質膜との間で物理的ないし化学的に結びついた状態になっているものと思われる。そのため、図9に示すように、発電(起動停止)を繰り返しても、電解質膜に含有された無機物が水蒸気などにより流亡し難く、含有部1aの特性を保持することができる。そのため、含有部1aにより保護シート9との境界部における応力発生を抑えMEAを保護することができる。その結果、保護シートのみを形成した比較例に比して、水素クロスオーバー量を長期間安定して抑えることができる(図9の実施例と比較例を対比参照のこと)。
(第4実施形態)
本発明に係るMEAの第4実施形態は、寸法変化ないし弾性率が保護シート設置領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域(外部領域)に、無機物の含有領域を形成してなる第3実施形態において、該無機物の含有領域を、保護シートの内縁近傍にのみ形成することを特徴とするものである。本実施形態によれば、無機物を必要な部位にのみ含有するので、無機物の使用量を少量としながらも、第3実施形態の効果を得ることができる。
上記無機物の含有領域(外周領域)の最適面積は、先に述べたとおり、燃料電池のセル設計(例えば、MEAの縦横比、ガスケット仕様(Oリングのような細いシールか、パッキンのような広いシールか)、外周領域に流路を設ける場合(例:図12)の流路の径・形状など)によってそれぞれ対応させることが出来る。
(I)構成
本発明に係る第4実施形態のMEAを用いた燃料電池セルの基本構成を模式的に表した断面概略図を図10に示す。
本実施形態と第3実施形態との違いは、無機物の含有領域(含有部1aの領域)を保護シート9の設置部(貼り付け部)の内縁近傍のみにしたことである。この領域は、第1実施形態の含有部1aの形成方法で説明した「(a)含浸段階」において、当該領域(図10の含有部1aに相当する部分)以外をマスキングすることで形成することができる。
上記したように、本実施形態では、電解質膜1の外周に、無機物の含有領域(含有部1aの領域)を保護シート9の設置部の内縁近傍のみにしたこと以外は、第3実施形態と同様である為に、以下では、この点についてのみ説明する。
(1)無機物の含有領域
第4実施形態では、電解質膜1の外周のGDL3のエッジ3aが接する部位やガスケット8と接する部位は、保護シート9を設置することで保護している。そこで、第4の実施形態での無機物の含有領域は、保護シート9とMEAとの間で応力が生じ、運転中に破損が生じるのを防止することができるように、当該応力が生じる領域をカバーすることができるものであればよい。さらに、第3実施形態の区別する観点から、第4の実施形態では、保護シート9とMEAとの境界部を含む領域のうち、保護シート9の内縁近傍のみを無機物の含有領域とするものである(図10参照のこと)。
本実施形態でも、無機物の含有領域は、含有部1aのみで構成されていてもよいし(図10参照)、含有部1aと中間部1cから構成されていてもよい。
本発明では、上記第1の構成要素(更には第2に構成要素)において、電解質膜の寸法変化を小さくする手段ないし弾性率を高める手段として、無機物を含有させる手段を用いて説明しているが、必ずしもこれに制限されるものではなく、他の手段を用いてもよい。例えば、紫外線や電磁波などで硬化する樹脂(前駆体)などを用い、溶液状態で塗布含浸でき、その後、溶媒除去時に紫外線や電磁波を照射することで、ナノサイズの樹脂粒子を形成でき、寸法変化が小さくあるいは弾性率を高くできるのであれば、有機物も当該手段として利用可能である。
II.本発明の第2の構成要素について
本発明の第2の構成要素は、電解質膜と触媒層とからなるMEAにおいて、高湿度ガスに接する部位Aと低湿度ガスに接する部位Bとが電解質膜の面内で隣り合っており、電解質膜の少なくとも前記部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理が施されていることを特徴とするものである。また、本発明の第1の構成要素は、電解質膜の少なくとも前記部位Aを含む領域に弾性率を大きくする処理が施されていることを特徴とするものである。これらにより、前記部位Aと前記部位Bの寸法変化の差を小さく、若しくは前記部位Aと前記部位Bの弾性率の差を大きくすることができる。以下、特に断らない限り、寸法変化と弾性率のいずれかを中心に説明するが、これにより弾性率についても同様にことが言える。
電解質膜が高湿度ガスに接する部位Aとしては、(1)電解質膜が酸素極から流出する酸素含有ガスに接する部位(図12Bの符号14aに接する部位など)、(2)電解質膜が燃料極へ流入する水素含有ガスに接する部位(図17Aの符号14bに接する部位など)が挙げられる。電解質膜が低湿度ガスに接する部位Bとしては、(1)電解質膜が燃料極から流出する水素含有ガスに接する部位(図12Aの符号15aに接する部位など)、(2)電解質膜が酸素極へ流入する酸素含有ガスに接する部位(図17Bの符号15bに接する部位など)が挙げられる。ただし、ガス流路の形状等によっても異なることから、これらに制限されるものではない。
また、部位Aを含む領域としては、特に制限されるものではないが、好ましくは触媒層に接する領域を除いた領域に設けるのが望ましい。例えば、触媒層に接する領域を除いた領域のうち、図14および/または図19の破線で囲った領域のように、ほぼ部位Aに合致する領域としてもよい。あるいは図15および/または図20の破線で囲った領域のように、部位Bを含む領域までも含めても良い。さらには、図16の破線と一点鎖線とで挟まれた領域のように、触媒層に接する領域を除いたほぼ全領域までも含めても良い。ここで、「少なくとも部位Aを含む領域」という場合には、電解質膜中の複数箇所に部位Aがある場合、このうちの少なくとも1つの部位Aを含む領域であればよいものとする。例えば、酸素極から流出する酸素含有ガスに接する部位(図12Bの符号14aに接する部位)と、燃料極へ流入する水素含有ガスに接する部位(図17Aの符号14bに接する部位)の2箇所に部位Aがある場合、少なくとも一方の部位Aを含む領域であればよい。したがって、本発明では、例えば、上記2箇所に部位Aがある場合、少なくとも一方の部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理が施されていればよい。好ましくは電解質膜中の複数箇所に部位Aがある場合、これら全ての部位Aを含む領域に対して、寸法変化を小さくする処理が施されているのが望ましい。
部位Bを含む領域としては、特に制限されるものではないが、好ましくは触媒層に接する領域を除いた領域に形成するのが望ましい。例えば、触媒層に接する領域を除いた領域のうち、ほぼ部位Bに合致する領域としてもよい。あるいは図15および/または図20の破線で囲った領域のように、部位Aを含む領域までも含めても良い。さらには、図16の破線と一点鎖線とで挟まれた領域のように、触媒層に接する領域を除いたほぼ全領域までも含めても良い。これらの場合には、部位Aを含む領域と、部位Bを含む領域とが同じ範囲になる(図15、図16、図20参照)。
上記高湿度ガス及び低湿度ガスは、後述する実施形態にて詳述するため、ここでの説明は省略する。ただし、これらの実施形態に例示するものに制限されるものではない。
上記部位Aと上記部位Bが電解質膜の面内で隣り合うとは、1つの電解質膜の一方の面(表面)ともう一方の面(裏面)を同一面内として捉え、隣り合っていれば良い(一部重複していてもよい。図12Aと図12B、または図17Aと図17Bを参照のこと)。部位Aと部位Bとは、電解質膜の一方の面(表面)ともう一方の面(裏面)を同一面内とすれば重複する領域があってもよい。
寸法変化を小さくする処理とは、電解質膜の少なくとも部位Aを含む領域において、処理前に比して処理後の寸法変化を小さくする処理をいう。
電解質膜の寸法変化、弾性率(更にはガス透過性)の測定方法は、第1実施形態で説明したのと同様である為、ここでの説明は省略する。
上記部位Aと部位Bの寸法変化の差は、10%以下、好ましくは1〜5%以下となるように処理されているのが望ましい。ここで、電解質膜の上記部位Aの寸法変化は、80℃下での絶乾時に対する高湿度状態でのガス湿度95%での寸法変化率とする(以下同様である。)。また、電解質膜の上記部位Bの寸法変化も同様である。
上記部位Aと部位Bの寸法変化の差(図13のL、図18のL)が10%を超える場合には、隣り合う部位Aと部位Bとの間に形成される境界部での寸法変化や弾性率の差を小さくし難く、内部応力の発生を抑制するのが困難となる。その結果、電解質膜の傷つきを抑制するのが困難となるおそれがある。なお、寸法変化の差の下限値は特に制限されるものではないが、1%未満の場合には、電解質膜の種類によっては、部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理を施すことによって電解質膜に求められる特性が低下するおそれがある。
以下、本発明の第2の構成要素の好適な実施形態につき、図面を用いて説明する。
(第5実施形態)
本発明に係るMEAの第5実施形態は、少なくとも部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理(ないし構造)として、電解質膜に無機物を含有させることにより、前記寸法変化が小さい領域を形成していることを特徴とするものである。さらに、本実施形態では、前記高湿度ガスが、酸素極から流出する酸素含有ガスであることを特徴とするものである。即ち、高湿度ガスに接する部位Aが、酸素極から流出する酸素含有ガスに接する部位となり、これと隣り合う低湿度ガスに接する部位Bが、燃料極から流出する水素含有ガスに接する部位となるものである。本実施形態によれば、無機物の含有による簡易な処理で、電解質膜の寸法変化の差を小さくすることができる。また、酸素極から流出する酸素含有ガスが、反応生成水によりに高湿度になっても、電解質膜の寸法変化の差を小さくすることができる。その結果、ガス流出側の電解質膜の内部応力の発生が抑制され、電解質膜の傷つきが抑制される。
(I)構成
本発明に係る第5実施形態のMEAを用いた燃料電池セルの基本構成を模式的に表した断面概略図を図11に示す(図12のA−A線の断面概略図である)。図12は、図11の燃料電池セルのうち、セパレータの構成及びガスケットの取り付け位置、並びにガス流路上の酸素極から流出する酸素含有ガスによる高湿度領域と、これと隣り合った燃料極から流出するHガスによる低湿度領域を模式的に表した平面概略図である。このうち、図12Aは、燃料極セパレータの構成及び燃料極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。図12Bは、酸素極セパレータ及び酸素極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。
本実施形態の基本的な構成は、他の実施形態と同様である。即ち、図11ないし図12に示すように、電解質膜1の両面には、触媒層2が接合され、その外側にはGDL3が配置されている。その外側には燃料極セパレータ4および酸素極セパレータ5が配置され、燃料極セパレータ4にはH入口10とH流路溝6とH出口11とが設けられ、酸素極セパレータ5にはAir入口12とAir流路溝7とAir出口13とが設けられている。これらのガス流路6、7には、各ガスの混合や外部への流出を防止するためのガスケット8が設けられている。各反応ガスは、まず入口10、12から流路溝6、7に流入し、流路溝6、7を流通する過程でGDL3内に拡散した後、触媒層2に到達し、HとAir中のOとの電気化学反応により発電が進行する。
Air流路溝7を流通するAirは、発電により生成した水により加湿されるため、高湿度状態になる。一方、H流通溝6を流通するHは、燃料極から酸素極へのプロトン移動に水が同伴されることにより除湿されるため、低加湿状態になる。ここで、高湿度Airと低湿度Hとは、図11A、Bに示すように異なるガス流路6、7を通じて出口13、11に向かうため、ガス流出側の電解質膜1の面内(表面と裏面)には、湿度が異なるガス領域14a、15aに接する部位A、Bが隣り合って生じる。詳しくは、高湿度ガス領域14aに接する部位Aは、電解質膜1の酸素極に接する面において、酸素極触媒層2に接する領域からAir出口13に向かうAir流路に接する部位に生じる(図12B、図14の破線で囲まれた部分を参照のこと)。低湿度ガス領域15aに接する部位Bは、電解質膜1の燃料極に接する面において、燃料極触媒層2に接する領域からH出口11に向かうH流路に接する部位に生じる(図12A参照のこと)。
上記したようにガス流出側でガス湿度が異なる場合には、従来は、図13に示すように、電解質膜の高湿度領域14aに接する部位A(図13では単にAir出口と表記した)と低湿度領域15aに接する部位B(図13では単にH出口と表記した)の間には大きな寸法変化の差(L)が生じる。そこでは、電解質膜1の内部にせん断応力が発生する。そして、この応力が運転中に繰り返し生じることにより、その部位が傷つく恐れが生じる場合がある。
そこで、本実施形態では高湿度Airが出口13へ向かう経路の寸法変化を抑制するため、その経路の高湿度領域14aに接する部位Aを含む領域(図14の破線で囲まれた領域)の電解質膜に、無機物を含有させて無機物含有領域1aを形成したものである。なお、本実施形態では、図14に示すものに何ら制限されるものではなく、例えば、図15や図16に示すように、当該経路の高湿度領域14aに接する部位Aを含むさらに広い領域(図15の破線で囲まれた領域や図16の破線で囲まれた領域の外側の領域)に、無機物を含有させて無機物含有領域1aを形成したものであっても良い。なお、この無機物は、触媒層2に接する領域には含有させないのが望ましい(図14〜16参照のこと)。かかる構成とすることにより、プロトン伝導性が要求される部位である触媒層2に接する領域に無機物が混在しなくなるので、発電性能を維持したまま、本実施形態の効果を得ることができる点で優れている。また、上記無機物含有領域1aと無機物非含有領域との間に、第2実施形態で説明したような低濃度の中間部1cを形成しても良い。これにより、寸法変化ないし弾性率が段階的ないし連続的に変化するので、寸法変化や弾性率の差がある部位に生じる応力を低減することができる。この際には、プロトン伝導性を損なわない範囲内で該中間部の一部が触媒層2に接する領域に入っていてもよい。即ち、中間部の無機物の濃度勾配を持たせることにより、当該触媒層2に接する領域に入り込む無機物の濃度をプロトン伝導性を損なわない程度にまで小さく制御できるためである。
特に図16に示すように、無機物含有領域1aを電解質膜1の触媒層2に接する領域を除いた外周領域全体に形成するのが以下の点で優れている。即ち、電解質膜1の外周領域から外部へのガスの漏洩が小さくなるので、燃料電池を確実にシールすることができる。また、図16に示す態様では、本発明の第1の構成要素の第1、第3実施形態)を具備することにもなるので、本発明の第1の構成要素における作用効果をも享受することができる。また、図16に示す態様では、以下に示す第6実施形態であるガス流入側の電解質膜の寸法変化の差も小さくすることができる。その結果、ガス流出側及びガス流入側双方の電解質膜の内部応力の発生が抑制され、電解質膜の傷つきが抑制される。更に、数十から数百の燃料電池セルを積層して燃料電池スタックを形成するような場合には、図16に示す態様では、電解質膜の外周領域に十分な強度(高弾性率)を持たせることが出来るので、電解質膜の取り扱い性(作業性)、特にハンドリングに優れており、作業効率や位置合わせなどが素早く正確に行える。また、量産過程で搬送作業や積層作業等を自動化(機械化)しやすいなどの点でも優れている。なお、図16に示す態様において、上記した種々の作用効果が得られる範囲内で、無機物の使用量低減が図れるように、図16に示す内側の破線と外側の一点破線で挟まれた領域まで無機物含有領域1aを減らしてもよい。この一点破線は、燃料極及び酸素極側のガスケット8が接する部位よりも外側になるように設けられている。
以上の観点から、部位Aを含む領域に相当する含有部1aへの無機物の含有量は、上記に規定する作用効果を有効に発現し得るものであれば特に制限されるものではない。含有部1aへの無機物の含有量は、電解質に対して、好ましくは3〜50wt%、より好ましくは10〜25wt%である。無機物の含有量が3wt%未満の場合には、電解質膜1が接するガスの湿度に差が生じる場合に、隣り合う部位A、B間での寸法変化の差を小さくするのが困難となる恐れがある。一方、50wt%を超える場合には、膜の柔軟性が損なわれ、破損しやすくなる問題がある。電解質膜1中の無機物の含有量は、例えば、熱重量分析における重量変化などにより測定することができる。
ここで、上記含有部1aに用いることのできる無機物の種類、無機物の形態、該無機物の大きさ(平均粒子径)については、第1の構成要素で説明した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
更に、第2の構成要素の燃料電池セルの基本構成である、電解質膜、触媒層、GDL、セパレータ、ガスケット等の構成部材については、第1の構成要素の燃料電池セルと同様であり、第1の構成要素で説明した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。なお、保護シートに関しても、第2の構成要素の燃料電池セルの基本構成を示す図11には図示していないが、第1の構成要素の燃料電池セルで説明した内容と同様にして用いることが出来るため、ここでの説明は省略する。
(2)含有部1aの形成方法
本実施形態の含有部1aの形成方法は、第1の構成要素の第1実施形態、更には第2〜4実施形態で説明した含有部1aの形成方法と同様であるので、ここでの説明は省略する(具体例を実施例5に示した)。
(第6実施形態)
本発明に係るMEAの第2の構成要素における第6実施形態は、第5実施形態と同様に、少なくとも部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理(ないし構造)として、電解質膜に無機物を含有させることにより、前記寸法変化が小さい領域を形成していることを特徴とするものである。さらに、本実施形態では、前記高湿度ガスは、燃料極へ流入する水素含有ガスであることを特徴とするものである。即ち、高湿度ガスに接する部位Aが、燃料極へ流入する水素含有ガスに接する部位となり、これと隣り合う低湿度ガスに接する部位Bが、酸素極へ流入する酸素含有ガスに接する部位となる。本実施形態によれば、無機物の含有による簡易な処理で、電解質膜の寸法変化の差を小さくすることができる。また、燃料極に流入する水素含有ガスの加湿を増し、高湿度にした場合にも、電解質膜の寸法変化の差を小さくすることができる。その結果、ガス流入側の電解質膜の内部応力の発生が抑制され、電解質膜の傷つきが抑制される。
(I)構成
本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第6実施形態の構成は、基本的に図11に示す第1実施形態の燃料電池セルの構成と同じである。図17は、図11の燃料電池セルの構成のうち、セパレータの構成及びガスケットの取り付け位置、並びにガス流路上の燃料極へ流入する水素含有ガスによる高湿度領域と、これと隣り合った酸素極へ流入する酸素含有ガスによる低湿度領域を模式的に表した平面概略図である。このうち、図17Aは、燃料極セパレータの構成及び燃料極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。図17Bは、酸素極セパレータ及び酸素極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。
本実施形態の基本構成は、図11に示すように第1実施形態と同様であるが、取り扱うガスの種類(ガスの流れ方向)が異なり、高加湿Hと低加湿Airで発電する方式としている(図17参照)。このため、ガスの入口側において湿度が異なるガスに接する領域が生じる。詳しくは、図17A、Bに示すように、湿度が異なるガスが、入口10、12から異なるガス流路6、7に向かうため、ガス流入側の電解質膜1の面内(表面と裏面)には、湿度が異なるガス領域14b、15bに接する部位A、Bが隣り合って生じる。ここで、高湿度ガス領域14bに接する部位Aは、電解質膜1の燃料極に接する面において、H入口10から燃料極触媒層2に接する領域に向かうH流路に接する部位に生じる(図17A、図19の破線で囲まれた部分を参照のこと)。低湿度ガス領域15bに接する部位Bは、電解質膜1の酸素極に接する面において、Air入口12から燃料極触媒層2に接する領域に向かうAir流路に接する部位に生じる(図17B参照のこと)。
上記したようにガス流入側でガス湿度が異なる場合には、従来は、図18に示すように、電解質膜の高湿度領域14bに接する部位A(図18では単にH入口と表記した)と低湿度領域15bに接する部位B(図18では単にAir入口と表記した)の間には大きな寸法変化の差(L)が生じる。そこでは、電解質膜1の内部にせん断応力が発生する。そして、この応力が運転中に繰り返し生じることにより、その部位が傷つく恐れが生じる場合がある。
そこで、本実施例では、入口側の領域に対して、第1実施形態と同様の無機物を含有する処理を行った。詳しくは、本実施形態では高湿度Hが入口10から触媒層2に接する領域へ向かう経路の寸法変化を抑制するため、その経路の高湿度領域14bに接する部位Aを含む領域(図19の破線で囲まれた領域)の電解質膜に、無機物を含有させて無機物含有領域1aを形成したものである。なお、本実施形態では、図19に示すものに何ら制限されるものではなく、例えば、図20や図16に示すように、当該経路の高湿度領域14bに接する部位Aを含むさらに広い領域(図20の破線で囲まれた領域や図16の破線で囲まれた領域の外側の領域)に、無機物を含有させて無機物含有領域1aを形成したものであっても良い。なお、本実施形態でも、第1実施形態と同様に、この無機物は、触媒層2に接する領域には含有させないのが望ましい(図16、19〜20参照のこと)。これにより第1実施形態で説明したと同様の効果を得ることができる。また、第1実施形態で説明したと同様に、上記無機物含有領域1aと無機物非含有領域との間に、本発明の第1の構成要素の第2実施形態において説明した中間部1cを形成しても良い。これにより、第1実施形態で説明したと同様の効果を得ることができる。この際にも、プロトン伝導性を損なわない範囲内で該中間部の一部が触媒層2に接する領域に入っていてもよい。
なお、ガスの流し方は、本実施形態および第1実施形態の構成に限るものではなく、これら以外の流し方であってもよい。湿度が異なるガスに接する領域が隣り合って生じる場合には、本発明の第2の構成要素の上記第1ないし第2実施形態による無機物を含有する処理が有効である。
なお、本発明では、上記した第1の構成要素のMEAの構成と、上記した第2の構成要素のMEAの構成とを適宜組み合わせてもよい。これによりそれぞれの効果を併せ持ちことができるものである。具体的には、例えば、図16に示す幅広い領域に無機物含有領域1aを形成することにより双方の構成を持たせることができるが、更に当該構成に保護シートを設置してもよいなど、特に制限されるものではない。
次に、本発明に係る燃料電池としては、上記第1および/または第2の構成要素のMEAを用いてなることを特徴とするものである。
本発明の燃料電池では、上記MEAを用いた燃料電池が所望する電圧等を得られるように、セパレータを介してMEAを複数積層して直列に繋いだスタックを形成してもよい。燃料電池の形状などは、特に限定されず、所望する電圧などの電池特性が得られるように適宜決定すればよい。
前記燃料電池の種類としては、特に限定されず、高分子電解質型燃料電池;アルカリ型燃料電池、リン酸型燃料電池に代表される酸型電解質の燃料電池;ダイレクトメタノール型燃料電池、マイクロ燃料電池などが挙げられる。また、前記燃料電池は、搭載スペースが限定される車両などの移動体用電源の他、定置用電源などとして有用であるが、特にシステムの起動停止や出力変動が頻繁に発生する自動車用途で特に好適に使用できる。特に高分子電解質型燃料電池は、小型かつ高密度・高出力化が可能であることから、定置用電源の他、搭載スペースが限定される自動車などの移動体用電源などとして有用である。
以下に、本発明の第1の構成要素を実施例1〜4に基づき、本発明の第2の構成要素を実施例5〜6に基づいて具体的に説明する。なお、本発明の第1及び第2の構成要素は、これらの実施例のみに限定されることはない。
(実施例1)
(1)構成
実施例1では、図1に示す本発明のMEAを用いた燃料電池セルの第1実施形態の構成を用いた。
図1に示すように、本実施例1の燃料電池セル21では、電解質膜1の両面に触媒層2が接合され、その外側にはGDL3が配置されている。その外側にはセパレータ4が配置され、セパレータ4、5の内部に設けられたガス流路6、7を通じて、ガスがGDL3、触媒層2に供給される。さらに、電解質膜1の外周領域には、含有部1aが設けてある(形成方法は後述)。そして、ガスが外部へ漏洩することを防止するために、含有部1aとセパレータ4との間にガスケット8が配置されている構成とした。
(2)含有部1aの形成方法
電解質膜1には8×8cmの面積に切り出したナフィオンを用いた。電解質膜1の中央(非含有部1bに相当する部分:5×5cmの面積)にはマスキングをし、その外周全体(マスキングがない、含有部1aに相当する部分)に、テトラエトキシシラン(TEOS)をH2Oに溶解した溶液を塗布、含浸した。その後速やかに(溶液塗布後、およそ30分以内に真空オーブンに入れ)、真空オーブン中で100℃で24時間加熱することにより、HOの除去とTEOSの重合反応を行った。これにより、電解質膜1の外周に約10wt%のSiOを含有する含有部1aを形成した。なお、本実施例1における含有部1aの形成領域は、電解質膜1の外縁1fからGDLエッジ3aより内側までの領域とした。
(3)作用・効果
図2に、含有部1aと非含有部1bとの弾性率の比較を示す(各部を切り出して測定した)。SiOの含有により、含有部1aの弾性率が上昇した。これにより、GDLエッジ3aやガスケット8が電解質膜1の外周(本実施例1では含有部1aが形成されている)を傷つきが防止される。実際に、MEAを作成し発電試験を行い、本実施例の効果を確認した。
触媒層2には、市販の白金担持カーボンとナフィオン溶液を1:1の比率で混合した触媒インクを使用し、5×5cmの面積で形成した。また、GDL3には市販のカーボンペーパーを、セパレータ4にはカーボン樹脂の成型品を、ガスケット8にはフッ素系樹脂のOリングを用いた。発電温度は70℃であり、片側の燃料極セパレータ4のガス流路6には相対湿度90%の水素ガスを、もう片側の酸素極セパレータのガス流路7には相対湿度90%の空気を流し、電流密度1A/cmで発電を継続した。発電は1日に1回停止し、膜の破損を診断するため、定期的に水素クロスオーバー量を測定した後、再起動した。起動停止回数の増加に伴う水素クロスオーバー量の変化を図3に示す。従来技術(比較例1)の燃料電池セル21では、起動停止回数の増加とともに、GDL3のエッジ3aやガスケット8が電解質膜1に徐々に食い込み、破損を進行させた(水素クロスオーバー量が増大した)。一方、本実施例1では、水素クロスオーバー量の増加が抑制され、電解質膜1の破損が抑制されていることが確認できた。
なお、従来技術(比較例1)の燃料電池セル21は、電解質膜1に含有部1aを設けることなく、全て非含有部1bとした以外は、本実施例と同様にして燃料電池セル21を形成したものを用いた。
さらに、含有部1a(本実施例の電解質膜の構成)と非含有部1b(従来技術の電解質膜の構成)との水素透過係数の比較を図4に示す。SiOの含有により水素透過係数が低下した。これにより、電解質膜1の外周から外部へのガスの漏洩が抑制されることが確認できた。
(実施例2)
(1)構成
実施例2では、図5に示す本発明のMEAを用いた燃料電池セルの第2実施形態の構成を用いた。
第1実施形態との違いは、電解質膜1の含有部1aと非含有部1bとの間に、寸法変化が外周領域の含有部1aよりも大きく、かつその内側領域の非含有部1bよりも小さい領域の中間部1cを設けたことである。
(2)中間部1cの形成方法
実施例1との違いは、溶液を塗布した後、1時間が経過した後に、HOの除去・TEOSの重合反応(真空オーブン内での加熱)を開始することである。所定時間の経過中には、含有部1aから非含有部1bに向かって溶液が拡散するため、含有部1aと非含有部1bとの間に、無機物含有量の勾配をもつ中間部1cが形成された。これにより、電解質膜1の外周に、含有部1a+中間部1cの合計で約10wt%のSiOを含有する領域が形成されたことになる。
(3)作用・効果
図6に、含有部1aと非含有部1bと中間部1cとの弾性率の比較を示す(各部を切り出して測定した)。含有部1aから非含有部1bにかけて、弾性率が連続的に変化するので、弾性率が異なる部位の境界に生じる応力が緩和される。これにより、実施例1よりも、電解質膜1の破損がさらに抑制される。
(実施例3)
(1)構成
実施例3では、図7に示す本発明のMEAを用いた燃料電池セルの第3実施形態の構成を用いた。
実施例1との違いは、電解質膜1の外周に、保護シート9を貼り付けたことである。保護シート9は、電解質膜1とガスケット8との接触と、電解質膜1とGDLエッジ3aとの接触とを、防止するために貼り付けられている(従来技術(比較例2)と同様)。保護シート9の材料は、化学的に安定であるものが好ましく、本実施例3では接着剤付きフッ素系樹脂シートを用いた。なお、含有部1aは、保護シート9の内縁9eよりも内側まで形成した。
(2)作用・効果
図8に、含有部1aと非含有部1bと保護シート9の貼り付け部との弾性率の比較を示す(各部を切り出して測定した)。従来技術(比較例2)では、非含有部1bと保護シート9とから構成されていたため、両者の弾性率が大きく異なっていた。このため、その境界の部位には大きな応力が発生し、電解質膜1の破損が生じていた。一方、実施例3では、含有部1aの存在により、弾性率が段階的に変わるので、発生する応力が緩和され、電解質膜1の破損が抑制された。実際に、MEAを作成し発電試験を行い、本実施例の効果を確認した結果を、図9に示す(発電条件は実施例1と同じ)。従来技術(比較例2)の燃料電池セル21では、起動停止回数の増加とともに、弾性率の境界領域に応力が繰り返し生じ、破損が生じた(水素クロスオーバー量が増大した)。一方、本実施例3では、電解質膜1の破損が抑制された(水素クロスオーバー量の増加が抑制された)。
なお、従来技術(比較例2)の燃料電池セル21では、電解質膜1に含有部1aを設けることなく、全て非含有部1bとした以外は、実施例3と同様にして燃料電池セルを形成したものを用いた。
(実施例4)
(1)構成
実施例4では、図10に示す本発明のMEAを用いた燃料電池セルの第4実施形態の構成とした。
実施例3との違いは、含有部1aの領域を保護シート9の貼り付け部の内縁近傍のみにしたことである。詳しくは、含有部1aの領域を保護シート9の内縁を中心に内側及び外側にそれぞれ2mmの幅で形成した。この領域は、実施例1において溶液を塗布する工程において、当該領域以外をマスキングすることで形成した。これにより、電解質膜1の外周の保護シート9の貼り付け部の内縁近傍のみに約10wt%のSiOを含有する含有部1aが形成された。
(2)作用・効果
含有部1aを必要な部位にのみ形成するので、TEOSの使用量を少量(実施例3でのTEOSの使用量の10%程度)としながらも、実施例3と同様の効果を得た。
(実施例5)
(1)構成
実施例5では、図11及び図12に示す本発明のMEAを用いた燃料電池セルの第5実施形態の構成を用いた。
図11、12に示すように、本実施例5の燃料電池セル21では、電解質膜1の両面に触媒層2が接合され、その外側にはGDL3が配置されている。その外側には燃料極セパレータ4および酸素極セパレータ5が配置され、燃料極セパレータ4にはH入口10とH流路溝6とH出口11とが設けられ、酸素極セパレータ5にはAir入口12とAir流路溝7とAir出口13とが設けられている。これらのガス流路6、7には、各ガスの混合や外部への流出を防止するためのガスケット8が設けられている。各反応ガスは、まず入口からガス流路溝6、7に流入し、流路溝6、7を流通する過程でGDL3内に拡散した後、触媒層2に到達し、HとAir中のOとの電気化学反応により発電が進行する。
Air流路溝7を流通するAirは、発電により生成した水により加湿されるため、高湿度状態になる。一方、H流通溝6を流通するHは、燃料極から酸素極へのプロトン移動に水が同伴されることにより除湿されるため、低加湿状態になる。ここで、高湿度Airと低湿度Hとは、図12に示すように異なる経路で出口13、11に向かうため、電解質膜1の面内(表面と裏面)には、湿度が異なるガスに接する領域が生じる。ガス湿度が異なる場合には、従来技術(比較例3)は、図13に示すように、両領域間には寸法変化の差が生じる。そこでは、電解質膜の内部にせん断応力が発生する。そして、この応力が運転中に繰り返し生じることにより、その部位が傷つく恐れが生じる場合がある。
そこで、本実施例5では高湿度Airが出口6へ向かう経路の寸法変化を抑制するため、その経路を含む領域(図14の1a)に無機物粒子を含有させた。なお、この無機物粒子は、触媒層に接する領域には含有させない。また、本実施例5の燃料電池セル21は、電解質膜1の含有部1aの形成位置を図14に示す破線で囲まれた領域とした以外は、実施例1と同様にして燃料電池セルを形成したものを用いた。更に従来技術(比較例3)の燃料電池セル21は、電解質膜1に含有部1aを設けることなく、全て非含有部1bとした以外は、本実施例5と同様にして燃料電池セルを形成したものを用いた。
(2)含有部1aの形成方法
電解質膜1にはナフィオンを用いた。電解質膜1において、高湿度AirがAir出口13へ向かう経路に接する部位Aを含む領域(図14の破線で囲まれた領域)以外の部分にはマスキングをし、当該部位Aを含む領域(マスキングがない、含有部1aに相当する部分)に、テトラエトキシシラン(TEOS)をHOに溶解した溶液を塗布、含浸した。その後、真空オーブン中で100℃で24時間加熱することにより、HOの除去とTEOSの重合反応を行った。これにより、電解質膜1の部位Aを含む領域(図14の破線で囲まれた領域)に約10wt%のSiOを含有する含有部1aを形成した。なお、実施例1における含有部1aの形成領域は、Air出口13側の高湿度Air領域14a(図12B参照)のみに形成し、H入口側10の高湿度水素含有ガス領域14b(図17A参照)には形成しなかった。
(3)作用・効果
図13に、無機物(SiO)含有なし(従来技術(比較例3)の電解質膜の構成)と無機物(SiO)含有あり(本実施例5の電解質膜の構成)の電解質膜における、ガス湿度に対する寸法変化の比較を示す。無機物(SiO)の含有により、電解質膜の寸法変化が抑制される。図13から明らかなように、高湿度時(Air出口)と低湿度時(H出口)との寸法変化の差が、電解質膜内部に生じるせん断応力に関係するため、無機物含有なし(従来技術)での寸法変化の差Lに比較して、無機物含有あり(本実施例5)での寸法変化の差Lの方が小さくなっており、内部応力を小さくすることができる。図中の寸法変化の差L、Lは、Air出口(網掛け範囲)中央部での寸法変化と、H出口(網掛け範囲)中央部での寸法変化の差をとした。また、図13の横軸の「Air出口」(網掛けした範囲)は、Air出口13へ向かう経路の高湿度領域14aに接する部位Aのガス湿度に相当する範囲を示している。図13の横軸の「H出口」(網掛けした範囲)は、H出口11へ向かう経路の低湿度領域15aに接する部位Bのガス湿度に相当する範囲を示している。また、図13では、本実施例5及び比較例3のいずれも、電解質膜1の部位Aの部分について、実験を行った。
本実施例のガス湿度に対する電解質膜の寸法変化を以下の方法により測定した。
実施例5の構成の電解質膜では、含有部を0.5×5cmの大きさに切り出した。同様に、比較例3の電解質膜では、非含有部1bを0.5×5cmの大きさに切り出した。これらの矩形サンプルを恒温恒湿槽内に設置し、長手方向の上端を固定し、下端に0.1gの錘をつけて、乾燥状態から、徐々にサンプル全体を均一に加湿しながら、サンプル下端の寸法の伸びを測定し、乾燥時に対する寸法変化率を算出した。
また、触媒層2に接する領域にはこの無機物を含有させないため、プロトン伝導性、すなわち発電性能を損なうことなく、MEAの耐久性を上げることができた。
(実施例6)
(1)構成
基本構成は実施例5と同様であるが、ガスの流れ方向が異なり、高加湿Hと低加湿Airで発電する方式としている(図17)。このため、入口側において湿度が異なるガスに接する領域が生じる(図18)。そこで、本実施例6では、図19に示すように、入口側の領域に対して、実施例5と同様の無機物を含有する処理を行って含有部1aを形成した。
なお、ガスの流し方は、本実施例6および実施例5の構成に限るものではなく、これら以外の流し方であってもよい。湿度が異なるガスに接する領域が生じる場合には、本発明の第2の構成要素による無機物の含有処理が有効である。
(2)無機物粒子の含有部の形成方法
電解質膜1にはナフィオンを用いた。電解質膜1において、高加湿HがH入口10へ向かう経路に接する部位Aを含む領域(図19または図20の破線で囲まれた領域)以外の部分にはマスキングをし、当該部位A(マスキングがない、含有部1aに相当する部分)に、テトラエトキシシラン(TEOS)をHOに溶解した溶液を塗布、含浸した。その後、真空オーブン中で100℃で24時間加熱することにより、HOの除去とTEOSの重合反応を行った。これにより、電解質膜1の部位Aを含む領域に約10wt%のSiOを含有する含有部1aを形成した。なお、本実施例1における含有部1aの形成領域は、H入口10側の高湿度水素含有ガス領域14b(図17A参照)のみに形成し、Air出口13側の高湿度Air領域14aには形成しなかった。
(3)作用・効果
図18に、無機物含有なし(従来技術(比較例4))と無機物含有あり(本実施例6)との寸法変化の比較を示す。実施例5と同様に、電解質膜の寸法変化が抑制され、電解質膜内部に生じる内部応力を小さくすることができた。
実施例1で用いた、本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第1実施形態の代表的な構成を模式的に表した断面概略図である。 第1実施形態の構成を有する電解質膜の無機物含有部と無機物非含有部の温度による弾性率変化を示すグラフである。 実施例1および比較例1で作製した燃料電池セルの運転結果として、起動停止回数に対する水素クロスオーバー量の増加の様子を示すグラフである。 実施例1で用いた電解質膜(外周領域に無機物含有部を有する)と従来技術(比較例1)で用いた電解質膜(全体が無機物非含有部である)の温度による水素透過係数変化を示すグラフである。 図5Aは、実施例2で用いた、本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第2実施形態の代表的な構成を模式的に表した断面概略図である。 図5Bは、図5Aの電解質膜端部上面側の外周領域近傍を拡大して表した断面概略図である。 図5Cは、第2実施形態の他の構成例として、電解質膜の外周領域の無機物が段階的に変化させた例を表した断面概略図である。 第2実施形態の構成を有する電解質膜の無機物含有部と中間部と無機物非含有部の温度による弾性率変化を示すグラフである。 図7Aは、実施例3で用いた、本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第3実施形態の代表的な構成を模式的に表した断面概略図である。 図7Bは、第3実施形態の他の構成例として、保護シートが触媒層に接するように設置され、電解質膜の無機物含有部の内縁が触媒層の外縁よりも内側まで形成されている例を表した断面概略図である。 第3実施形態の構成を有する電解質膜の無機物含有部と無機物非含有部と保護シート貼り付け部(電解質膜の無機物含有部に保護シートを貼り付けたものを用いて測定した)の温度による弾性率変化を示すグラフである。 実施例3および比較例2で作製した燃料電池セルの運転結果として、起動停止回数に対する水素クロスオーバー量の増加の様子を示すグラフである。 図10Aは、実施例4で用いた、本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第4実施形態の代表的な構成を模式的に表した断面概略図である。 図10Bは、第4実施形態の他の構成例として、保護シートが触媒層に接するように設置され、電解質膜の無機物含有部の内縁が触媒層の外縁よりも内側まで形成されている例を表した断面概略図である。 図11Aは、実施例5で用いた、本発明に係るMEAを用いた燃料電池セルの第5実施形態の代表的な構成を模式的に表した断面概略図である(図12のA−A線の断面概略図である)。 図11Bは、図11AのMEAのエッジ部分の拡大図である。 図11の燃料電池セルの構成のうち、セパレータの構成及びガスケットの取り付け位置、並びにガス流路上の酸素極から流出する酸素含有ガスによる高湿度領域と、これと隣り合った燃料極から流出するHガスによる低湿度領域を模式的に表した平面概略図である。このうち、図12Aは、燃料極セパレータの構成及び燃料極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。 図12Bは、酸素極セパレータ及び酸素極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。 ガス湿度と実施例5の電解質膜の寸法変化の関係を示すグラフである。実施例5で用いた電解質膜(Air出口の高湿度領域に無機物含有部を有する)と従来技術(比較例3)で用いた電解質膜(全体が無機物非含有部である)のガス湿度による電解質膜の寸法変化の関係を示すグラフである。 第5実施形態の構成を有する電解質膜の寸法変化を小さくする処理が施されている領域の1例として、電解質膜のAir出口の高湿度ガスに接する部位Aを含む若干広い領域(破線で囲まれた台形領域)に無機物含有部が形成されている例を表した平面概略図である。 第5実施形態の構成を有する電解質膜の寸法変化を小さくする処理が施されている領域の他の1例として、電解質膜のAir出口の高湿度ガスに接する部位A及びこれに面内で隣り合った低湿度ガスに接する部位Bを含む広い領域(破線で囲まれた矩形領域)に無機物含有部が形成されている例を表した平面概略図である。 第5実施形態の構成を有する電解質膜の寸法変化を小さくする処理が施されている領域の更に他の1例として、電解質膜のAir出口の高湿度ガスに接する部位A及びこれに面内で隣り合った低湿度ガスに接する部位Bを含むより広い外周領域(破線で囲まれた外側の領域)に無機物含有部が形成されている例を表した平面概略図である。 図17は、図11の燃料電池セルの構成のうち、セパレータの構成及びガスケットの取り付け位置、並びにガス流路上の燃料極へ流入する水素含有ガスによる高湿度領域と、これと隣り合った空気極へ流入するAirガスによる低湿度領域を模式的に表した平面概略図である。このうち、図17Aは、燃料極セパレータの構成及び燃料極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。 図17Bは、酸素極セパレータ及び酸素極側のガスケットの取り付け位置等を模式的に表した断面概略図である。 ガス湿度と実施例6の電解質膜の寸法変化の関係を示すグラフである。実施例6で用いた電解質膜(H入口の高湿度領域に無機物含有部を有する)と従来技術(比較例4)で用いた電解質膜(全体が無機物非含有部である)のガス湿度による電解質膜の寸法変化の関係を示すグラフである。 第6実施形態の構成を有する電解質膜の寸法変化を小さくする処理が施されている領域の1例として、電解質膜のH入口の高湿度ガスに接する部位Aを含む若干広い領域(破線で囲まれた台形領域)に無機物含有部が形成されている例を表した平面概略図である。 第6実施形態の構成を有する電解質膜の寸法変化を小さくする処理が施されている領域の他の1例として、電解質膜のH入口の高湿度ガスに接する部位A及びこれに面内で隣り合った低湿度ガスに接する部位Bを含む広い領域(破線で囲まれた矩形領域)に無機物含有部が形成されている例を表した平面概略図である。
符号の説明
1 電解質膜、
1a 無機物含有部、
1b 無機物非含有部、
1c 中間部、
1e 無機物含有部の内縁、
1f 無機物含有部の外縁、
2 触媒層、
2a 触媒層エッジ、
3 GDL、
3a GDLエッジ、
4 燃料極セパレータ、
5 酸素極セパレータ、
6 Hガス流路(溝)、
7 Airガス流路(溝)、
8 ガスケット、
9 保護シート、
9e 保護シートの内縁(エッジ)、
9f 保護シートの外縁(エッジ)、
10 H入口、
11 H出口、
12 Air入口、
13 Air出口、
14a ガス流出側の高湿度領域、
14b ガス流入側の高湿度領域、
15a ガス流出側の低湿度領域、
15b ガス流入側の低湿度領域、
21 燃料電池セル。

Claims (18)

  1. 電解質膜と電極触媒層とからなる膜・電極接合体において、
    前記電解質膜の外周領域の寸法変化が、その内側領域の寸法変化よりも小さいことを特徴とする膜・電極接合体。
  2. 前記外周領域とその内側領域との間に、
    寸法変化が、外周領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域を形成することを特徴とする請求項1に記載の膜・電極接合体。
  3. 前記電解質膜の外周領域は、無機物を含有していることを特徴とする、請求項1または2に記載の膜・電極接合体。
  4. 前記無機物を含有した外周領域とその内側領域との間に、無機物を外周領域よりも相対的に低濃度で含有する領域を形成することを特徴とする、請求項2または3に記載の膜・電極接合体。
  5. 前記無機物を含有する外周領域が、電解質膜の外周領域に無機物またはその前駆体を含む溶液を含浸する段階と、含浸後所定の時間が経過した後に溶液中の溶媒を除去する段階によって得られることを特徴とする、請求項3または4に記載の膜・電極接合体。
  6. 前記電解質膜の外周に保護シートを設置し、保護シートの設置領域とその内側との間に、寸法変化が、保護シート設置領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域を形成していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の膜・電極接合体。
  7. 前記寸法変化が保護シート設置領域よりも大きく、かつその内側領域よりも小さい領域に、無機物の含有領域を形成し、
    該無機物の含有領域を、前記保護シートの内縁よりも内側まで形成していることを特徴とする、請求項6に記載の膜・電極接合体。
  8. 前記無機物の含有領域を、前記保護シートの内縁近傍にのみ形成することを特徴とする、請求項7に記載の膜・電極接合体。
  9. 電解質膜と電極触媒層とからなる膜・電極接合体において、
    高湿度ガスに接する部位Aと低湿度ガスに接する部位Bとが電解質膜の面内で隣り合っており、
    電解質膜の少なくとも部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理が施されていることを特徴とする膜・電極接合体。
  10. 前記高湿度ガスは、酸素極から流出する酸素含有ガスであることを特徴とする請求項9に記載の膜・電極接合体。
  11. 前記高湿度ガスは、燃料極へ流入する水素含有ガスであることを特徴とする請求項9または10に記載の膜・電極接合体。
  12. 前記電解質膜の少なくとも部位Aを含む領域に寸法変化を小さくする処理として、電解質膜に無機物を含有する処理が施されていることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項に記載の膜・電極接合体。
  13. 前記電解質膜のうち、電極触媒層に接する領域を除いた領域に、前記無機物を含有することを特徴とする、請求項12に記載の膜・電極接合体。
  14. 無機物を含有する電解質膜が、電解質膜に無機物またはその前駆体を含む溶液を含浸する段階と、電解質膜に含浸された前記溶液中の溶媒を除去する段階によって得られてなることを特徴とする、請求項12または13に記載の膜・電極接合体。
  15. 請求項1〜8のいずれかに記載の膜・電極接合体の構成と、請求項9〜14のいずれかに記載の膜・電極接合体の構成とを組み合わせてなることを特徴とする膜・電極接合体。
  16. 膜・電極接合体の製造方法において、前記電解質膜に無機物を含有させる工程が、電解質膜に無機物またはその前駆体を含む溶液を含浸する段階と、溶液中の溶媒を除去する段階とを含むことを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の膜・電極接合体の製造方法。
  17. 前記溶液中の溶媒を除去する工程が、電解質膜に無機物またはその前駆体を含む溶液を含浸する工程での含浸後、所定の時間が経過した後に行うことを特徴とする、請求項16に記載の膜・電極接合体の製造方法。
  18. 請求項1〜15に記載の膜・電極接合体を用いてなることを特徴とする燃料電池。
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