JP2007077620A - 既設屋根の改修方法および改修屋根構造 - Google Patents
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Abstract
【課題】 既設屋根の破損部分から石綿等の粉塵の飛散を効果的に防止する。
【解決手段】 既設の石綿スレート屋根材51の表面全面に被覆材を固着させて被覆層20を形成し、この石綿スレート屋根材51の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木25を固定する。次に、これら通気用垂木25間に断熱材26を嵌め込んで固定し、断熱材26と石綿スレート屋根材51との間に軒先から棟方向に延びる屋根通気層27を形成し、断熱材26の上に金属製屋根材30を施工する。
【選択図】 図3
【解決手段】 既設の石綿スレート屋根材51の表面全面に被覆材を固着させて被覆層20を形成し、この石綿スレート屋根材51の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木25を固定する。次に、これら通気用垂木25間に断熱材26を嵌め込んで固定し、断熱材26と石綿スレート屋根材51との間に軒先から棟方向に延びる屋根通気層27を形成し、断熱材26の上に金属製屋根材30を施工する。
【選択図】 図3
Description
本発明は、既設屋根に不具合が生じた場合などに、その既設屋根を破壊や破損することなく、その上に新しい屋根を葺く既設屋根の改修方法および改修屋根構造に関する。
戸建て住宅等の屋根は、粘土を成形して焼成した多数の瓦を屋根材として葺く形態が古くからあったが、以前より、安価、かつ手軽に施工することのできる屋根材として、主たる成分をセメントとする板状屋根材が広く普及している。しかしながら、この種の屋根材は、長期にわたって使用すると、水分の放散による反りや劣化による割れや破損が起こりやすいものが多く、これらの不具合は屋根材間に隙間を作って雨漏りを招くので、何らかの改修対策が施される。
ところで、上記板状屋根材や屋根を構成する化粧版として、セメントおよび石綿(アスベスト)を主原料とし、若干の混和材料と適量の水を加え、抄造して板状に成形した後、所定の含水率になるまで乾燥させた石綿スレート屋根材が、戸建て住宅の屋根に非常に多く使用されていることは、当業者には周知である。石綿は、天然に産する鉱物繊維で、耐熱性、耐薬品性、絶縁性等の諸特性に優れることから、屋根等の建設資材の他に、電気製品、自動車部品、家庭用品等、極めて多数の利用形態があり、関連する業種も、建設、造船、自動車、鉄道、電力・ガス、化学など多岐にわたっている。
このような利点を備える石綿ではあるが、健康に対する深刻な危険性が以前にも増して指摘されており、例えば、石綿の暴露に関連あるとして確認されている疾病としては、石綿肺、肺がん、悪性中皮腫の3疾患に加え、良性胸膜疾患として、胸膜炎、びまん性胸膜肥厚、円形無気肺(または無気肺性偽腫瘍)および胸膜プラークが挙げられる。これらはいずれも空気中に浮遊する石綿を吸入することにより発生するものであるが、例えば、肺がん発症には、石綿の暴露から15〜40年の潜伏期間があると言われており、また、石綿そのものが、最も細いクリソタイルという種類で太さが約0.02〜0.03μmと極めて細く判別し難いものであることから、明らかな疾病の原因として認知され難かったという側面もある。
上記の石綿スレート屋根材も、長期の使用によって石綿の飛散が起こり、環境や健康の被害をもたらす要因となるものであった。この石綿スレート屋根材の場合は、塗膜が紫外線や風雨によって全面的に劣化して保護膜としての機能を失うと石綿が剥離して飛散が起こり、さらに、酸性雨の影響や乾燥によって劣化が進行して表面が摩耗することにより、石綿は飛散する。そして、さらに経年することにより劣化が進むと、乾燥によって反りや割れ等の破損が生じ、風や雨によって石綿の飛散は増大する。特に、近年では酸性雨の影響が著しいため劣化の進行は早く、それだけ石綿の飛散量は多くなる。このような屋根材からの石綿の飛散は、屋根を補修する作業者が被害を受けるのみならず、周辺の住民に被害を及ぼすことになるので、早急な対策が望まれる。
そこで、既設屋根の撤去あるいは半永久的な暴露防止といった対策が講じられるべきであるが、石綿の暴露を防止しながら撤去するにはコストがかかる。また、撤去して廃材となった膨大な石綿スレート屋根材の処分は非常に困難である。そこで、既設屋根を撤去することなく、その上に新たな屋根材を葺き、既設屋根を封鎖する方法が経済的である。既設屋根の上に新たな屋根材を葺く技術は、例えば、特許文献1,2等に記載されている。
上記各文献等に記載されるように、新たな屋根材を既設屋根の上に施工しても、既設屋根の表面は露出しているので、極めて細い石綿が外部に出てしまう可能性があり、完全な石綿の飛散防止策にはなり得ない。
よって本発明は、既設屋根の劣化したり破損したりした部分から、石綿等の粉塵が飛散することを効果的に防止することができる既設屋根の改修方法および改修屋根構造を提供することを目的としている。
本発明の既設屋根の改修方法は、既設屋根の表面全面に被覆材を固着させて被覆層を形成し、次いで、この既設屋根の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木を横方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、次いで、前記通気用垂木の間もしくは通気用垂木の上に、断熱材料のみからなる断熱材を配設するとともに、前記既設屋根と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層を設け、次いで、前記断熱材の上に金属製屋根材を施工することを特徴としている。
上記本発明の改修方法により、次の本発明の既設屋根の改修屋根構造を得ることができる。それは、既設屋根の表面全面に被覆材が固着されて被覆層が形成され、この既設屋根の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、これら通気用垂木の間もしくは上方に、断熱材料のみからなる断熱材が配設されるとともに、前記既設屋根と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層が設けられ、前記断熱材の上に金属製屋根材が施工されていることを特徴とする改修屋根構造である。
この改修屋根構造では、断熱材は、通気用垂木の間に嵌め込むか、あるいは通気用垂木の上に載せた状態とされる。前者の場合は、通気用垂木の高さよりも厚さの小さい断熱材を、既設屋根との間に屋根通気層となる空間を空けて通気用垂木に固定するなどの方法で、屋根通気層を確保することができる。屋根通気層の高さは、通気用垂木の高さと断熱材の厚さによって決まり、これらの可変要素を変更することによって、家屋に応じた断熱効果を得ることができる。後者の場合は、通気用垂木の高さが屋根通気層の高さとなるので、屋根通気層の高さを大きくとる場合には有利である。通気用垂木の上に配設される断熱材は、通気用垂木の上に固定された複数の桟木の間に配設してもよい。桟木は横方向に延び、軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配されて通気用垂木に固定される。いずれの場合も、金属製屋根材は通気用垂木に釘打ち等の手段で固定することができる。
また、本発明の既設屋根の改修方法は、既設屋根の表面全面に被覆材を固着させて被覆層を形成し、次いで、この既設屋根の上に、横方向に延びる複数の桟木を軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、次いで、これら桟木の間に発泡ウレタンを充填して断熱材を配設し、次いで、前記桟木の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木を横方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、次いで、これら通気用垂木の上に金属製屋根材を施工するとともに、この金属製屋根材と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層を設けることを特徴としている。
この改修方法により、次の本発明の既設屋根の改修屋根構造を得ることができる。それは、既設屋根の表面全面に被覆材が固着されて被覆層が形成され、この既設屋根の上に、横方向に延びる複数の桟木が軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、これら桟木の間に発泡ウレタンの充填による断熱材が設けられ、前記桟木の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、これら通気用垂木の上に金属製屋根材が施工され、この金属製屋根材と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層が設けられていることを特徴とする改修屋根構造である。
本発明に係る既設屋根の改修屋根構造によれば、被覆層により既設屋根の表面全面が覆われて露出しない状態が確保されるので、既設屋根の破損部分からの粉塵の飛散が効果的に防止される。既設屋根が上記石綿スレート屋根材で施工されている場合には、石綿の飛散を確実に防止することができる。
また、新たに施工した金属製屋根材によって既設屋根が風雨や紫外線等から保護されるので、既設屋根に損傷が起こりにくく、このため、新たに粉塵が生じることはなく、このことからも、粉塵の飛散防止が図られる。金属製屋根材は、軽量であるから家屋の躯体にかかる負担は軽く、また、亜鉛メッキ鋼板(トタン)等を用いれば安価であり、施工も簡単であるといった利点を備える。これに加えて、本発明で用いる断熱材は断熱材料のみ、あるいは発泡ウレタンのみでできているため極めて軽量であり、軽量の金属製屋根材と相まって、家屋の躯体への負担がより軽減するとともに、施工のし易さもより一層向上する。なお、金属製屋根材としては、亜鉛メッキ鋼板等の鉄板の他に、アルミニウム、銅、ステンレス等でできたものが用いられる。
本発明では、通気用垂木によって、金属製屋根材と既設屋根との間に屋根通気層を有する屋根構造を得ている。この屋根構造によると、日射により温度上昇した金属製屋根材の熱は、断熱材と屋根通気層との断熱効果によって室内に伝達しにくくなり、しかも屋根全体が、屋根通気層を通る空気で空冷されることと相まって、屋根自体の効果的な断熱および湿度低減が図られる。このため、室内の温度および湿度の上昇が抑えられるとともに、既設屋根および躯体が蒸れずに長持ちする。屋根通気層の通気による換気効果を高めるためには、屋根通気層に外気を導入させるための外気導入口を有する水切や面戸等が軒先に取り付けられている構造が好ましい。
また、既設屋根の表面に形成された被覆層は、新たに施工した金属製屋根材や断熱材によって紫外線や風雨の影響を受けず、また、屋根通気層の通気によって蒸れることが防がれるので、劣化し難く、例えば石綿飛散防止の効果を長期にわたって得ることができる。したがって、古い石綿スレート屋根の改修には、本発明の石綿飛散対策は工事中を含めて施工完成後も極めて有効である。
上記被覆材としては、軽量、かつ安価で、施工が比較的簡単なシーラー等の塗料、発泡ウレタン等の液状材料が好適に用いられ、既設屋根の表面に塗り固められて用いられる。また、このような被覆材で被覆層を形成した後に、該被覆層の上に防水シートを敷設してもよい。この場合には、防水シートで既設屋根をくるむように敷設することにより、既設屋根の表面の封鎖をより一層確実なものとすることができる。
また、本発明では、金属製屋根材の裏側に野地板を配設して上記通気用垂木または桟木などに適宜に固定し、この野地板の上に金属製屋根材を施工することができる。さらに、この場合には、防水効果を高める目的で、野地板の上に防水シートを敷設してもよい。
本発明によれば、既設屋根の表面を覆った被覆層により、既設屋根からの粉塵の飛散が効果的に防止されるといった効果を奏する。特に、既設屋根が石綿を含む材料を用いた屋根材で施工されている場合には、石綿の飛散が確実に防止され、周辺の環境や住民への石綿被害を防止することができる。また、断熱材と屋根通気層による換気・断熱作用が効果的に発揮され、結露や蒸れ、カビなどの発生が抑えられる。さらに、金属製屋根材は軽量であり、また、断熱材も断熱材料のみ、あるいは発泡ウレタンのみでできているため極めて軽量であるから、これらが相まって家屋の躯体にかかる負担が軽減するとともに、施工がし易い。
以下、図面を参照して本発明の実施形態:第1〜第4実施形態を説明する。これら図面で同一の構成要素には同じ符号を付してある。
[1]第1実施形態
図1は、改修を要する屋根を備えた外断熱工法住宅の一部を示しており、図2は屋根が改修された後の状態を示している。図3および図4は、改修された屋根構造の詳細を示す断面図である。
[1]第1実施形態
図1は、改修を要する屋根を備えた外断熱工法住宅の一部を示しており、図2は屋根が改修された後の状態を示している。図3および図4は、改修された屋根構造の詳細を示す断面図である。
図1に示すように、既設屋根は複数の石綿スレート屋根材51で構成され、これら石綿スレート屋根材51は、屋根用垂木52の上に野地板53が固定されてなる下地材54の、野地板53に固定されている。この住宅の外壁部60は、柱61と、隣り合う柱61の間に設けられた断熱材62とを備え、柱61の室外側には外壁材63が、また、室内側には内壁材64が、それぞれ施工されている。
柱61の上端には、梁65が架け渡されて固定されている。梁65の下方には、室内側の下面に内装材66が張られた天井67が施工されており、天井67の上小屋裏68が設けられている。また、雨樋69が固定される破風70と軒天井71とにより軒が形成され、軒天井71には、外部から軒先空間72に通じる換気口73が形成されている。
上記既設屋根を改修するにあたっては、まずはじめに、雨樋69を取り外してから、図2に示すように、露出する全ての石綿スレート屋根材51の表面に、シーラー等の塗料や発泡ウレタン等の液状材料からなる被覆材を塗装して硬化させ、所定厚さの被覆層20を形成する。被覆材の塗装作業は、石綿スレート屋根材51の上に作業者が乗って石綿が飛散することのないような配慮が求められる。なお、被覆材で被覆が困難な部分(例えば、破損が著しい部分や、軒先や開口部の断面部分)には、気密的に封入が可能な適宜なシートを貼って覆うとよい。
被覆材としてシーラーを用いる場合には、浸透性シーラーを石綿スレート屋根材51の表面に塗り、目止めする。この目止めによって石綿スレート屋根材51の表層にはシーラーの含浸層が形成され、石綿スレート屋根材51における劣化したセメント層内で石綿が凝固する状態となる。次に、シーラーの表面に、二液型塗料、塩化ビニル、アクリル、NAD、水性塗料、複層弾性材、単層弾性材等の上塗り材料を適宜選択して上塗りする。これによって塗膜層は強固なものになる。あるいは、発泡ウレタン等のプラスチック発泡材を塗り固めてもよい。
次に、被覆層20が表面に形成された石綿スレート屋根材51の上に、図3および図4に示すように、防水シート11を敷設する。防水シート11としては、気密性に富むアスファルトルーフィング等が好適に用いられる。防水シート11を敷設する際には、軒先を覆い既設屋根全体をくるむように敷設する。
次いで、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木25を、既設屋根上において横方向に等間隔をおいて互いに並行に配し、石綿スレート屋根材51に固定する。これら通気用垂木25は、図4に示すように、屋根用垂木52の直上に配し、防水シート11を挟んで、釘打ち等の手段で石綿スレート屋根材51に固定する。釘打ちの場合の釘は、石綿スレート屋根材51を貫通して野地板53に至るまで打ち込まれ、場合によっては屋根用垂木52まで打ち込まれる。所定数の通気用垂木25を固定したら、これら通気用垂木25に、その長手方向に間隔をおいて適宜な数の支持金具15を嵌め込む。そして、隣り合う通気用垂木25の間の空間に、断熱材料のみからなる板状の断熱材26を嵌め込むとともに支持金具15に固定し、通気用垂木25の間の空間を断熱材26で塞いだ状態とする。
断熱材26の厚さは通気用垂木25の高さよりも小さく、例えば通気用垂木25の高さの1/2から2/3程度の厚さのものが選択される。断熱材26は、支持金具15を介して通気用垂木25と上面を面一にした状態で通気用垂木25に支持されており、これによって、断熱材26と石綿スレート屋根材51との間には、軒先から棟方向に通じる屋根通気層27が形成される。通気用垂木25の高さは屋根用垂木52よりも高いものが用いられ、屋根通気層27の高さは通気用垂木25の高さに応じたものになる。なお、屋根通気層27の高さは、滞留が起きにくく良好な空気の流れが発生し易い観点から、20〜40mm程度が好適とされる。
断熱材26に成形される断熱材料としては、合成樹脂発泡断熱材を板状に成形したものなどが好ましく用いられる。具体的には、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、イソシアヌレート、フェノール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の合成樹脂を発泡させて得られた微細構造の発泡板や、ロックウール、グラスウール、炭酸カルシウム発泡体等の合成樹脂を使用しない材料を板状に成形したものが挙げられ、中でも、剛性、断熱性および透湿抵抗のいずれの特性も高いレベルのポリスチレンの押し出し発泡板や、ポリウレタン板等が最適である。
断熱材26の施工後、あるいは施工と並行して、既設の破風70および軒天井71の外側に、新たな破風70Aおよび軒天井71Aを施工する。軒天井71Aには、換気口73Aが形成されている。また、新設の破風70Aに、新たに雨樋69Aを取り付ける。
次に、図3および図4に示すように、通気用垂木25および断熱材26の上に野地板28を被せ、この野地板28を通気用垂木25に釘打ち等の手段で固定する。次いで、野地板28の上に、アスファルトルーフィング等の防水シート12を敷設し、この上に、亜鉛メッキ鋼板(トタン)等による金属製屋根材30を施工する。金属製屋根材30は、釘打ち等の手段により野地板28に固定され、必要に応じて部分的に通気用垂木25にも固定される。金属製屋根材30の施工後は、屋根通気層27および小屋裏68を外部に開放させる棟換気口を設けるとともに、軒先には、図2に示すように、外部から屋根通気層27に通じる外気導入口を備えた水切40を取り付ける。
以上の改修方法によって得られた屋根構造によれば、被覆層20および防水シート11により、石綿スレート屋根材51の表面全面が覆われて露出しない状態が確保される。したがって、石綿スレート屋根材51における劣化部分や破損部分から石綿が飛散することが確実に防止され、これによって周辺の環境や住民への石綿被害が抑えられる。また、被覆層20を形成した後は、作業者が石綿スレート屋根材51に乗って作業しても、傷が付いて石綿が飛散することが抑えられる。
本実施形態では、石綿スレート屋根材51の表面に被覆層20を形成してから、その上に防水シート11を敷設しているので、被覆層20と相まって石綿スレート屋根材51の封鎖状態がより一層確実になる。また、下地材54の野地板53と防水シート11によって屋根から小屋裏68もしくは室内に石綿が侵入することが防止される。さらに、地震等によって石綿スレート屋根材51が傷ついたり破損したりした場合には、石綿の飛散は防水シート11で防止される。
さらに、金属製屋根材30、防水シート11,12および断熱材26で石綿スレート屋根材51が風雨や紫外線等から保護されるので、石綿スレート屋根材51に損傷が起こりにくい。このため、損傷部分から新たに石綿が露出することはなく、このことからも、石綿の飛散防止が図られる。
また、新たに施工された金属製屋根材30は軽量であるから、家屋の躯体にかかる負担は軽く、また、安価であり、施工も簡単に行える。被覆材が上記のシーラー等の塗料や発泡ウレタンであれば、これらも軽量であることから、躯体への負担がより一層抑えられる。特に、石綿スレート屋根材51は、粘土瓦よりもかなり軽く(1/3程度)、これを使用した住宅の躯体は、その重量に適合するように設計されているため、石綿スレート屋根材51に匹敵するか、もしくはそれよりも軽量の金属製屋根材30を使用することは、なるべく軽量の新たな屋根材を既設屋根の上に施工する上で極めて有効である。さらに、断熱材26は断熱材料のみでできているため極めて軽量であり、軽量の金属製屋根材30と相まって、家屋の躯体への負担がより軽減し、また、施工のし易さもより一層向上する。
次に、この屋根構造によれば、軒先の水切40の外気導入口から流入した空気(図2のDで示す)は、屋根通気層27を上昇して、棟換気口から外部に排気される。一方、軒天井71A,71の換気口73A,73から軒先空間72に流入した空気(図2のEで示す)は、小屋裏68を上昇して、同じく棟換気口から外部に排気される。日射により温度上昇した金属製屋根材30の熱は、断熱材26と、この断熱材26の直下の屋根通気層27との断熱効果によって、既設の石綿スレート屋根材51や下地材54には伝達しにくくなる。そして、石綿スレート屋根材51や下地材54に伝達した一部の熱は小屋裏68に達するが、その熱は、小屋裏68を上昇する空気によって棟換気口から外部に排出される。このような断熱および換気の作用により、室内の温度上昇が効果的に抑えられるとともに、屋根や躯体が蒸れずに長持ちする。
また、被覆層20は、金属製屋根材30、防水シート11,12および断熱パネル26によって紫外線や風雨の影響を受けず、また、屋根通気層27の通気によって蒸れることが防がれるので、劣化し難く、石綿飛散防止の効果が長期にわたって維持される。
なお、本実施形態では、防水シート11,12を敷設しているが、これら防水シート11,12は必要に応じて敷設されるもので、一方もしくは双方が省略される場合もある。また、新設する金属製屋根材30が固定される野地板28も省略することがあり、その場合には、金属製屋根材30は通気用垂木25に固定される。
[2]第2実施形態
図5および図6に示す第2実施形態の改修屋根構造は、上記第1実施形態の断熱材26が通気用垂木25の間ではなく、通気用垂木25の上に載せられている。通気用垂木25の上には、横方向に延びる複数の桟木29が、軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配され、通気用垂木25に釘打ち等の手段で固定されている。断熱材26は、これら桟木29の間に嵌め込まれ、断熱材26と石綿スレート屋根材51との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層27が形成されている。
図5および図6に示す第2実施形態の改修屋根構造は、上記第1実施形態の断熱材26が通気用垂木25の間ではなく、通気用垂木25の上に載せられている。通気用垂木25の上には、横方向に延びる複数の桟木29が、軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配され、通気用垂木25に釘打ち等の手段で固定されている。断熱材26は、これら桟木29の間に嵌め込まれ、断熱材26と石綿スレート屋根材51との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層27が形成されている。
この改修屋根構造は、既設屋根の石綿スレート屋根材51の上に固定した複数の通気用垂木25の上に桟木29を固定し、次いで、隣り合う桟木29の間に断熱材26を嵌め込んで通気用垂木25の上に載せ、必要に応じて断熱材26を通気用垂木25あるいは桟木29に固定し、次いで、野地板28を桟木29に固定し、この後、防水シート12、金属製屋根材30を施工するといった手順で得られる。この第2実施形態では、通気用垂木25の上に断熱材26を配設するので、通気用垂木25の高さが屋根通気層27の高さとなる。したがって、同じ高さの屋根通気層27を得るのであれば、用いる通気用垂木25は第1実施形態のものより高さの低いものとなる。
[3]第3実施形態
図7および図8に示す第3実施形態の改修屋根構造は、上記第2実施形態の桟木29を省略しており、断熱材26を挟んで野地板28が通気用垂木25に固定され、野地板28の上に防水シート12を挟んで金属製屋根材30が施工されている。この場合には、第2実施形態の構造よりも桟木29が無い分の軽量化が図られる。
図7および図8に示す第3実施形態の改修屋根構造は、上記第2実施形態の桟木29を省略しており、断熱材26を挟んで野地板28が通気用垂木25に固定され、野地板28の上に防水シート12を挟んで金属製屋根材30が施工されている。この場合には、第2実施形態の構造よりも桟木29が無い分の軽量化が図られる。
なお、上記第2および第3実施形態では、防水シート11,12を敷設しているが、これら防水シート11,12は必要に応じて敷設されるもので、一方もしくは双方が省略される場合もある。また、新設する金属製屋根材30が固定される野地板28も省略することがあり、その場合の金属製屋根材30は、断熱材26を貫通させた釘等によって通気用垂木25に固定される。
[4]第4実施形態
図9および図10に示す第4実施形態の改修屋根構造は、既設屋根の石綿スレート屋根材51の上に、横方向に延びる複数の桟木29が、軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配されている。これら桟木29は、屋根下地材54の野地板53あるいは屋根用垂木52に釘打ち等の手段で固定されている。そして、これら桟木29の上には、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木25が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定されており、これら通気用垂木25の上に、野地板28、防水シート12、金属製屋根材30が施工されている。そして、石綿スレート屋根材51の上に形成された被覆層20の上であって、隣り合う桟木29の間には、発泡ウレタンが充填されて断熱材26Aが設けられており、この断熱材26Aと、金属製屋根材30が固定された野地板28との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層27が形成されている。
図9および図10に示す第4実施形態の改修屋根構造は、既設屋根の石綿スレート屋根材51の上に、横方向に延びる複数の桟木29が、軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配されている。これら桟木29は、屋根下地材54の野地板53あるいは屋根用垂木52に釘打ち等の手段で固定されている。そして、これら桟木29の上には、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木25が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定されており、これら通気用垂木25の上に、野地板28、防水シート12、金属製屋根材30が施工されている。そして、石綿スレート屋根材51の上に形成された被覆層20の上であって、隣り合う桟木29の間には、発泡ウレタンが充填されて断熱材26Aが設けられており、この断熱材26Aと、金属製屋根材30が固定された野地板28との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層27が形成されている。
この改修屋根構造は、まず、既設屋根の石綿スレート屋根材30の上に複数の桟木29を固定し、次いで、隣り合う桟木29の間の石綿スレート屋根材51上に発泡ウレタンを充填して断熱材26Aを設け、次いで、桟木29の上に複数の通気用垂木25を固定し、この後、桟木29の上に野地板28、防水シート12、金属製屋根材30を施工するといった手順で得られる。
この第4実施形態では、断熱効果は高いものの紫外線の影響で劣化し易い発泡ウレタンからなる断熱材26Aが金属製屋根材30で覆われて日射から保護されるので、劣化しにくく、断熱効果が長期にわたって保持される。また、その断熱材26Aを、石綿スレート屋根材51上に形成された被覆層20の表面に密着させることができるので、被覆層20とともに石綿スレート屋根材51の表面の封鎖状態がより一層確実になる。
なお、この第4実施形態では、上記各実施形態で敷設してある既設屋根上の防水シート11を省略しているが、必要に応じてこの防水シート11は敷設される。また、逆に、新設の金属製屋根材30の下の防水シート12は必要に応じて敷設されるもので省略される場合もあり、野地板28も同様に省略される場合がある。
11,12…防水シート
20…被覆層
25…通気用垂木
26,26A…断熱材
27…屋根通気層
28…野地板
29…桟木
30…金属製屋根材
40…水切
51…石綿スレート屋根材(既設屋根)
20…被覆層
25…通気用垂木
26,26A…断熱材
27…屋根通気層
28…野地板
29…桟木
30…金属製屋根材
40…水切
51…石綿スレート屋根材(既設屋根)
Claims (10)
- 既設屋根の表面全面に被覆材を固着させて被覆層を形成し、
次いで、この既設屋根の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木を横方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、
次いで、前記通気用垂木の間もしくは通気用垂木の上に、断熱材料のみからなる断熱材を配設するとともに、前記既設屋根と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層を設け、
次いで、前記断熱材の上に金属製屋根材を施工することを特徴とする既設屋根の改修方法。 - 既設屋根の表面全面に被覆材を固着させて被覆層を形成し、
次いで、この既設屋根の上に、横方向に延びる複数の桟木を軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、
次いで、これら桟木の間に発泡ウレタンを充填してなる断熱材を配設し、
次いで、前記桟木の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木を横方向に間隔をおいて互いに平行に固定し、
次いで、これら通気用垂木の上に金属製屋根材を施工するとともに、この金属製屋根材と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層を設けることを特徴とする既設屋根の改修方法。 - 既設屋根の表面全面に被覆材が固着されて被覆層が形成され、
この既設屋根の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、
これら通気用垂木の間もしくは上方に、断熱材料のみからなる断熱材が配設されるとともに、前記既設屋根と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層が設けられ、
前記断熱材の上に金属製屋根材が施工されていることを特徴とする既設屋根の改修屋根構造。 - 前記通気用垂木の上に、横方向に延びる複数の桟木が軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に配されて通気用垂木に固定され、
これら桟木の間に前記断熱材が配設され、
この断熱材の上に前記金属製屋根材が施工されていることを特徴とする請求項3に記載の既設屋根の改修屋根構造。 - 既設屋根の表面全面に被覆材が固着されて被覆層が形成され、
この既設屋根の上に、横方向に延びる複数の桟木が軒先から棟方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、
これら桟木の間に発泡ウレタンの充填による断熱材が設けられ、
前記桟木の上に、軒先から棟方向に延びる複数の通気用垂木が横方向に間隔をおいて互いに平行に固定され、
これら通気用垂木の上に金属製屋根材が施工され、
この金属製屋根材と前記断熱材との間に、軒先から棟方向に通じる屋根通気層が設けられていることを特徴とする既設屋根の改修屋根構造。 - 前記被覆材は、塗料、発泡ウレタン等の液状材料であって、前記既設屋根の表面に塗り固められる材料であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の既設屋根の改修屋根構造。
- 前記被覆層の上に防水シートが敷設されていることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の既設屋根の改修屋根構造。
- 前記金属製屋根材の裏側に野地板が配設され、この野地板の上に前記金属製屋根材が施工されていることを特徴とする請求項3〜7のいずれかに記載の既設屋根の改修屋根構造。
- 前記野地板と前記金属製屋根材の間に防水シートが敷設されていることを特徴とする請求項8に記載の既設屋根の改修屋根構造。
- 軒先に、前記屋根通気層に外気を導入させるための外気導入口を有する水切が取り付けられていることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の既設屋根の改修屋根構造。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005264634A JP2007077620A (ja) | 2005-09-13 | 2005-09-13 | 既設屋根の改修方法および改修屋根構造 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2005264634A JP2007077620A (ja) | 2005-09-13 | 2005-09-13 | 既設屋根の改修方法および改修屋根構造 |
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JP2007077620A true JP2007077620A (ja) | 2007-03-29 |
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ID=37938213
Family Applications (1)
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Country Status (1)
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2010059730A (ja) * | 2008-09-05 | 2010-03-18 | Fuji Ultrasonic Engineering Co Ltd | スレート建材の補修・補強処理工法 |
JP2014148795A (ja) * | 2013-01-31 | 2014-08-21 | Okamoto Kosan Kk | 既存屋根の断熱工法 |
-
2005
- 2005-09-13 JP JP2005264634A patent/JP2007077620A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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