JP2007077555A - 高強度ワイヤロープ - Google Patents

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Abstract

【課題】低いよりべり値を有して、細く軽量で、高い破断荷重を持つ高強度ワイヤロープを提供する。
【解決手段】炭素含有量が1.01〜1.20重量%である過共析鋼にクロムを0.1〜0.3重量%添加した高炭素鋼線材を鉛パテンチングで引張強度1450〜1600N/mm2、絞り値20〜40%とし、ダイスボックス出口の線温を150℃以下のダイス伸線加工によりその直径を細径とされるとともに、矯正ローラに巻き付け、引張強度2350〜3000N/mm2でかつ捻回値20〜50回を有する素線をストランドに使用した。
【選択図】図1

Description

本発明は、高強度ワイヤロープ用素線からなる高強度ワイヤロープに関するものである。
この種のクレーンで代表される荷役機械における高強度ワイヤロープは、荷物の吊り上げ吊り下し要素として重要な位置を占め、設備の負荷の軽減のため細くて軽量でかつ高い破断荷重が要求されている。このような荷役機械用ワイヤロープには、JISG3525(ワイヤロープ:1998)で規定される6×Fi(25)、あるいは6×Fi(29)の構造のものや、ロープ心入りのIWRC6×Fi(29)やIWRC6×WS(31)、IWRC6×WS(36)、IWRC6×WS(41)の構造ものが使用されている。
高い破断荷重を得るために、高炭素鋼線材の加工度を上げた引張強度の高いワイヤロープの素線を使用し、さらによりべり値を小さくするためにロープ心と側ストランドの間にエラストマーなどを充填している(例えば、特許文献1参照。)。
個々の素線の破断荷重の合計(素線の集合破断荷重)と、実際のワイヤロープの破断荷重との差の比率であるよりべり値は、JISG3525(1998)付属書2に次の式(1)のような関係式が、よりべり値として規定されている。個々の素線の破断荷重が高く、かつよりべり値が小さければ、ワイヤロープの破断荷重が高くなる。
Fb=(100−κ)×Fa/100 ・・・・・・(1)
Fb:ロープ破断荷重(kN)、κ:よりべり値、
Fa:個々の素線の集合破断荷重(kN)
特開平5−171580号公報(第2頁、第1図)
従来、高い破断荷重の高強度ワイヤロープを得るために、そのワイヤロープの素線の集合破断荷重を高くなるように高炭素鋼線材の加工度をあげた引張強度の高いワイヤロープの素線を使用する技術では、炭素含有量が0.95%以上で減面率(加工度)が高くなると、伸線が困難となって断線したり、伸線が可能であったとしても出来上がった素線の靭性が低く、ロープに撚った後のよりべり値が高くなる。したがって、靭性が低い素線では、その素線の引張強度が高くても、ロープは高い破断荷重が出ないことにもなる。
しかし、よりべり値を小さくするためにエラストマーを充填すれば、余分な費用が発生する。
本発明は、このような従来技術の問題点を解決できるようにした高炭素含有量であって伸線加工度を高くして、引張強度を高く、靭性に優れ、素線同志の接触によって生じる圧痕に対する感受性が低く、余分な費用が発生するエラストマーを充填することなく、クレーンで代表される荷役機械における細くて軽い高強度ワイヤロープを提供することを目的とする。
本発明における高強度ワイヤロープの課題解決のための具体的手段は、次の通りである。
炭素含有量が1.01〜1.20重量%である過共析鋼にクロムを0.1〜0.3重量%添加した高炭素鋼線材を鉛パテンチングで引張強度1450〜1600N/mm2、絞り値20〜40%とし、ダイスボックス出口の線温を150℃以下のダイス伸線加工によりその直径を細径とされるとともに、矯正ローラに巻き付け、引張強度2350〜3000N/mm2でかつ捻回値20〜50回を有する素線をストランドに使用したことを特徴とする。
また、前記素線の矯正ローラへの合計巻き付け角度が800〜1500°であることが好ましい。
そして、本発明における高強度ワイヤロープのよりべり値が20%以下であることを特徴とする。
引張強度が高く、靭性に優れたワイヤロープ用素線を使用した本発明のワイヤロープは、素線同志の接触によって生じる圧痕に対する感受性が低く、よりべり値が低く、クレーンで代表される荷役機械等に最適な、細くて軽い高強度ワイヤロープとなる。
本発明の実施の形態を図面及び表に基づいて比較例とともに説明する。表1には、本発明に用いた高強度ワイヤロープ用素線の管理ポイントなどを示している。
Figure 2007077555
直径5.5mm高炭素鋼線材を、表1に従い鉛パテンチングを行い、略3分の1の直径
1.9mmに引抜ダイスで伸線加工した。なお、ダイスで直径を略3分の1に伸線加工するに際して、ダイスボックス出口の線温を150℃以下、伸線後に合計巻付け角度が800〜1500°になるような矯正ローラヘの巻き付けを行っている。
表2は、素線実施例と、素線比較例1〜3との組成(重量%)を示している。素線実施例は、炭素(C)含有量が1.01〜1.20重量%の過共析鋼にクロム(Cr)を0.1〜0.3重量%添加したもので、素線比較例1〜2は、炭素(C)含有量が1.01未満であり、クロム(Cr)は添加されていない。素線比較例3は、炭素(C)含有量が1.20重量%を越えている。
なお、炭素(C)、クロム(Cr)以外のシリコン(Si)、マンガン(Mn)、リン(P)、イオウ(S)の含有量は、JISG3506(硬鋼線材)のSWRH52〜82に該当したものである。
Figure 2007077555
そして、素線実施例と、素線比較例1〜3における鉛パテンチングの熱処理後の引張強度と引張破断後の直径の減少率である絞り値、引抜ダイスで伸線加工した直径1.9mmの引張強度と、ねじり試験におけるねじり破断時の捻回値(最小ねじり回数:JISG3525)を表3に示す。
Figure 2007077555
素線比較例3は、鉛パテンチング中に破断しパテンチング及び次工程の伸線加工ができなかったために、パテンチング後の引張強度と絞り値、伸線加工後の引張強度と捻回値は表示していない。炭素(C)含有量が1.01重量%未満で、クロム(Cr)を含有しない素線比較例1、2は、鉛パテンチングの引張強度が1450N/mm2未満で、ダイスで直径を略3分の1の1.9mmに伸線加工した引張強度が2350N/mm2未満である。
本発明に係る高強度ワイヤロープ素線は、炭素(C)含有量が1.01〜1.20重量%の過共析鋼にクロム(Cr)を0.1〜0.3重量%添加した線材を用いる。
炭素(C)は素線強度を確保するために1.01重量%以上は必要とするが、1.20重量%を越えると靭性の低下が著しく、通常のパテンチングや伸線加工は困難となるので、上記の範囲とする。クロム(Cr)は0.1重量%を下回ると必要とする引張強度が得られず、0.3重量%を上回ると通常の加工は困難になるという不都合を生じるので上記の範囲とした。
次に、図1に示すロープ心が入ったウォーリントンシール形ワイヤロープIWRC6XWS(36)をロープ実施例1、ロープ比較例1−1、1−2の3種類を製作し、表4に示すように、各々を比較して示している。
ロープ実施例1では、炭素含有量は1.05重量%の過共析鋼にクロム(Cr)を0.21重量%添加された高強度ワイヤロープ用素線、すなわち、前記素線実施例に該当するものを用いて製造したものである
ロープ比較例1−1、1−2では、炭素含有量が0.82重量%の共析鋼でクロムは添加されていない素線、すなわち前記素線比較例2に該当するものを用いて作成されたものである。なお、前記素線比較例1は素線比較例2よりも引張強度が低く、B種ロープの製造に不向きで、素線比較例1によるロープ比較例は製造せず、したがって素線比較例3と同様に表4中に表示していない。
ロープ実施例1、ロープ比較例1−1、1−2のロープ径、破断荷重、単位重量などの測定もJISG3525(1998)に則している。またロープの測定した実際径が公称径の許容差を満足しているので、その公称径を記載している。なお、表4には、JISG3525(ワイヤロープ:1998)の付表8より公称径28mm、35.5mmの規格(破断荷重B種)を併せて表示している。
Figure 2007077555
図1中の1は、ロープ心、2は、側ストランドで、それらの間にはエラストマーなどの充填はない。もちろん、通常のロープ用グリースが素線に塗布されていても良い。
ロープ実施例1並びにロープ比較例1−1のロープ公称径は28mm、ロープ比較例1−2は35.5mmで、いずれもJISG3525(1998)の破断荷重B種を満足するB種ワイヤロープである。
ロープ実施例1の高強度ワイヤロープ用素線は、前述のように、表1の鉛パテンチングや伸線加工の各管理ポイントに合格し、側ストランド2の高強度ワイヤロープ用素線は線径1.68mmにおいて、引張強度が2550N/mm2である。なお、比較例1−1の側ストランド2の素線は線径1.68mmにおいて、その引張強度は1710N/mm2である。したがって、ロープ実施例1の素線は、引張強度がB種(1770N/mm2級:JISG3525(1998)表2)の略144%と従来を大きく上回っており、比較例1−1、1−2の素線強度はB種に適合している。
ロープ実施例1のワイヤロープのよりべり値は16.5%で、JISG3525(1998)に示された25%(付属書2表1)より格段に低く良好である。
ロープ実施例1、ロープ比較例1−1、ロープ比較例1−2のワイヤロープの引張疲労試験結果を図2に示す。図2の●印はロープ実施例1、△印はロープ比較例1−1、▲印はロープ比較例1−2で、◇、◆、□、■の各印は、△や▲印と同様に前記素線比較例1や2に該当するものを用いて作成された各種のロープ径のロープ比較例である。
本発明のロープ実施例1のワイヤロープの疲労限と、ロープ比較例1−1、1−2並びにその他のロープ比較例のワイヤロープの疲労限との間には、図2のように差はみられず、ロープ実施例1のワイヤロープの引張疲労限に対する性能はロープ比較例と同等の性能を示している。ロープ実施例1は、高強度でありながら十分な引張疲労限を有している。
本発明のロープ実施例1では、図1に示すようなロープ心1の素線と側ストランド2の素線における接触する素線(δ1とδ2:図1)や側ストランド1の接触する素線(δ3とδ4:図1)に生じる圧痕に対する感受性が低く、よりべり値が16.5%と低く、高い破断強度を有して優れた疲労限を有する高強度のワイヤロープである。
ロープ心1及び側ストランド2の素線はともに、前記表1の鉛パテンチングの管理ポイントに入っている靭性に優れた捻回値の大きいものである。
このロープ実施例1のワイヤロープの破断強度は、表4に示すように、公称径28mmより4サイズ太い公称径35.5mmの破断荷重を有している。単位重量は、公称径28mmの規定を有しているので、公称径35.5mmのものより37.8%軽量のものといえる。
図3に示すロープ心1が入ったフィラー形ワイヤロープIWRC6XFi(29)をロープ実施例2、ロープ比較例2−1、2−2の3種類製作し、表4に示すように、各々を比較して示している。あわせて、JISG3525(1998)の付表8より公称径28mm、35.5mmの規格(破断荷重B種)を表示している。なお、ロープ実施例2、ロープ比較例2−1、2−2のロープ径、破断荷重、単位重量などの測定もJISG3525(1998)に則している。
ロープ実施例2の炭素含有量などはロープ実施例1と同様で、ロープ比較例2−1、2−2の炭素含有量などもロープ比較例1−1、1−2と同様である。
ロープ実施例2、ロープ比較例2−1並びにロープ比較例2−2のロープ公称径もロープ実施例1、ロープ比較例1−1並びにロープ比較例1−2と同様にJISG3525(1998)の規格を満足するB種ワイヤロープである。
ロープ実施例2の素線は、表1の鉛パテンチングや伸線加工の各管理ポイントに合格し、側ストランド2の外層素線径1.68mmにおける引張強度が2550N/mm2であり、その強度レベルはB種(1770N/mm2級:JISG3525(1998)表2)の略144%と規格B種の強度を大きく上回っている。なお、ロープ比較例2−1の外層素線径1.68mmにおける引張強度は1710N/mm2でロープ比較例1−1と同様である。
ロープ実施例2のよりべり値は16.9%で、JISG3525(1998)に示された25%(付属書2表1)より格段に低く良好である。
次に、ロープ実施例2、ロープ比較例2−1、ロープ比較例2−2の曲げ疲労試験結果を図4に示す。試験条件は、安全率を7、シーブ径とロープ径の比を16として、S字曲げ試験を行った。図4の●印はロープ実施例2、△印はロープ比較例2−1、□印はロープ比較例2−2で、◇印は、同様に前記素線比較例1に該当するものを用いて作成されたその他のロープ径のロープ比較例である。
本発明のロープ実施例2の繰り返し曲げ回数による1ピッチあたりの素線断線数と、ロープ比較例2−1、2−2並びにその他のロープ比較例の素線断線数とに差はみられず、ロープ実施例2の曲げ疲労に対する性能はロープ比較例と同等の性能を示している。
本発明のロープ実施例2は、ロープ実施例1と同様にロープ心1の素線と側ストランド2の素線や側ストランドの素線同志の各接触部に生じる圧痕に対する感受性が低く、よりべり値が低く、高い破断強度を有して優れた曲げ疲労特性を有する高強度のワイヤロープである。
このロープ実施例2のワイヤロープの破断強度は、表4に示すように、公称径28mmより4サイズ太い公称径35.5mmの破断荷重を有している。単位重量は、公称径28mmの規定を有しているので、公称径35.5mmのものより37.8%軽量のものである。
次に、図5に示すワイヤロープ6X37をロープ実施例3、ロープ比較例3−1、3−2の3種類製作し、表4に示すように、各々を比較して示している。あわせて、JISG3525(1998)の付表4、付属書2表1より公称径26mm、32mmの規格(破断荷重A種)を表示している。なお、ロープ実施例3、ロープ比較例3−1、3−2のロープ公称径、破断荷重、単位重量などの測定もJISG3525(1998)に則している。
ロープ実施例3の炭素含有量などはロープ実施例1、2と同様で、ロープ比較例3−1、3−2の炭素含有量などもロープ比較例1−1、1−2、2−1、2−2と同様である。
ロープ実施例3並びにロープ比較例3−1のロープ公称径は26mm、ロープ比較例3−2のロープ公称径は32mmで、いずれも同様にJISG3525(1998)の規格を満足するワイヤロープである。
ロープ実施例3の素線は、表1の鉛パテンチングや伸線加工の各管理ポイントに合格し、側ストランド2の外層素線径1.28mmにおける引張強度が2610N/mm2であ
り、その強度レベルはA種(1620N/mm2級:JISG3525(1998)表2)の略161%と従来を大きく上回っている。なお、ロープ比較例3−1の外層素線径1.28mmにおける引張強度は1650N/mm2である。
ロープ実施例3のよりべり値は16.5%で、JISG3525(1998)に示された17%(付属書2表1)と同様で良好である。なお、ロープ比較例3−1のよりべり値は17.5%である。
ロープ実施例3の可撓度は1011、ロープ比較例3−1の可撓度は1049で同等であって、ロープ実施例3の柔軟性についても比較品と同等である。なお、可撓度は、ワイヤロープと等径の丸鋼棒の曲げ剛性と、ワイヤロープの曲げ剛性との比であって、可撓度の数値が大きいほど曲げやすいロープである。
本発明のロープ実施例3は、図5に示すような側ストランド2の素線の内、接触する素線(δ5、δ6)に生じる圧痕に対する感受性が低く、よりべり値が低く、高い破断強度を有して優れた可撓度を有する高強度のワイヤロープである。
このロープ実施例3のワイヤロープの破断強度は、表4に示すように、公称径26mmより3サイズ太い公称径32mmの破断荷重を有している。単位重量は、公称径26mmの規定を有しているので、公称径32mmのものより34%軽量のものといえる。
なお、本発明の高強度ワイヤロープは前記実施形態に限定されるものではなく、ロープ構成およびロープサイズ構成を変更して、ロープ心の有無をはじめシール形、ウォーリントン形等で区分されているJIS規格に定められている全てのロープ構成およびロープサイズ(JISG3525(1998)表1および付表1〜10)あるいはより細いサイズやより太いサイズに適用することもできる。
本発明の高強度ワイヤロープIWRC6XWS(36)の断面図である。 高強度ワイヤロープの引張疲労試験結果である。 本発明の高強度ワイヤロープIWRC6XFi(29)の断面図である。 高強度ワイヤロープの曲げ疲労試験結果である。 本発明の高強度ワイヤロープ6X37の断面図である。
符号の説明
1 ロープ心
2 側ストランド
δ1 ロープ心の素線
δ2〜δ6 側ストランド外層の素線

Claims (3)

  1. 炭素含有量が1.01〜1.20重量%である過共析鋼にクロムを0.1〜0.3重量%添加した高炭素鋼線材を鉛パテンチングで引張強度1450〜1600N/mm2、絞り値20〜40%とし、ダイスボックス出口の線温を150℃以下のダイス伸線加工によりその直径を細径とされるとともに、矯正ローラに巻き付け、引張強度2350〜3000N/mm2でかつ捻回値20〜50回を有する素線をストランドに使用したことを特徴とする高強度ワイヤロープ。
  2. 前記素線の矯正ローラへの合計巻き付け角度が800〜1500°であることを特徴とする請求項1記載の高強度ワイヤロープ。
  3. よりべり値が20%以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の高強度ワイヤロープ。
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