JP2007077255A - 含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体、及びその製造方法 - Google Patents
含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体、及びその製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】 特殊な重合設備を必要とせず、光学的物性、及びに優れ、かつ、短時間に合成できるフッ素樹脂、及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、
エステル交換触媒存在下、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とフッ素原子含有アルコールとを反応させることにより含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る工程、その後、エステル交換触媒残渣を除去する工程、を含む含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法である。なお、前記エステル交換触媒残渣を除去する工程は、濾過によることが好ましい。また、前記濾過において、珪藻土、パーライト、セルロース繊維から選ばれる少なくとも1種類の濾過助剤を使用することが好ましく、効率的にエステル交換触媒残渣を除去することが可能となる。
【選択図】 なし
【解決手段】 本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、
エステル交換触媒存在下、(メタ)アクリル酸エステル系重合体とフッ素原子含有アルコールとを反応させることにより含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る工程、その後、エステル交換触媒残渣を除去する工程、を含む含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法である。なお、前記エステル交換触媒残渣を除去する工程は、濾過によることが好ましい。また、前記濾過において、珪藻土、パーライト、セルロース繊維から選ばれる少なくとも1種類の濾過助剤を使用することが好ましく、効率的にエステル交換触媒残渣を除去することが可能となる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体、及びその製造方法に関する。
近年、有機フッ素化合物が有する低屈折率、撥水性、摺動性といった様々な特徴が明らかとなり、工業材料として各種のフッ素樹脂が使用されている。このようなフッ素樹脂は、一般に、フッ素原子を含むモノマーを重合することによって製造され、その際には特殊な重合設備が必要であったり、又は、重合時間が長時間必要であったりすることが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
一方、上述したような特殊な重合設備を使用せずに機能性樹脂を合成する手法として、例えば、反応押出法がある。反応押出法とは、溶融混練機である例えば、押出機等の中で原料樹脂を改質剤と反応させながら押し出すことにより、改質され新たな特性を有する樹脂を効率的に製造する方法である。
例えば、特許文献2には、押出機中で、原料樹脂である無水マレイン酸基を有する樹脂を、改質剤である1級アミンと反応させながら押し出す反応押出法によるスクシンイミド共重合体の合成方法が記載されている。なお、この特許文献2のスクシンイミド共重合体の反応押出法による重合の場合には、反応速度が速いため反応触媒は不要である。。しかし、反応速度が遅い反応をこのような反応押出法に適用する場合、十分に反応し、かつ、必要な物性の樹脂を短時間に得るためには、原料樹脂、及び改質剤だけでなく触媒を添加する必要があると考えれる。
特公昭58−193501公報
特開2005−8801公報
本発明者らは、上述したように原料樹脂、及び改質剤だけでなく触媒を添加した状態で例えば反応押出法により改質した樹脂が、添加した触媒の残存に起因して、触媒を含まない樹脂そのものに比べて、光学的物性、及び機械物性が劣っていることを見出し本発明を為すに到った。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、特殊な重合設備を必要とせず、光学的物性、及び機械物性に優れ、かつ、短時間に合成できるフッ素樹脂、及びその製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法を発明した。すなわち、本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法は、エステル交換触媒存在下、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と下記(一般式1)で表されるフッ素原子含有アルコールとを反応させることにより含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得る工程、その後、エステル交換触媒残渣を除去する工程、を含む含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法である。
前記エステル交換触媒残渣を除去する工程は、濾過によることが好ましい。
また、前記濾過において、珪藻土、パーライト、セルロース繊維から選ばれる少なくとも1種類の濾過助剤を使用することが好ましく、効率的にエステル交換触媒残渣を除去することが可能となる。
このような本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法により製造することで、本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、粒径1μm以上のエステル交換触媒残渣の量が50個/g以下である含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体となり、エステル交換触媒残渣が少ないので、光学物性、及び機械物性が優れた含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体となる。
また、本発明の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体中の粒径0.2μm以上1μm未満のエステル交換触媒及び/又はエステル交換触媒残渣の量は、1000個/g以下であることがより好ましく、高透明性を有する含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体となる。
本発明によれば、特殊な重合設備を必要とせず、光学的物性、及び機械物性に優れ、かつ、短時間に合成できるフッ素樹脂、及びその製造方法を提供できる。
本発明は、エステル交換触媒存在下、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と下記(一般式1)で表されるフッ素原子含有アルコールを反応させることにより含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得、次いでエステル交換触媒残渣を除去する工程を含む含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法に関するものである。
本発明の原料樹脂として用いる(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、特に限定はないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーからなる重合体、及びこれらの共重合体が挙げられる。これらの中で、反応性の観点ならびにコストから考えると、メタアクリル酸メチルが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸、スチレンやα−メチルスチレン、無水マレイン酸などの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーと共重合可能なモノマーが共重合されていても構わない。
本発明の改質剤として用いることができるフッ素原子含有アルコールは、前記(一般式1)で表すことができる。
前記(一般式1)中のRfは、1個以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基であれば特に制限はない。
ここで言うフルオロアルキル基とは、例えばCF3(CF2)b(bは0〜14の整数)やCF2H(CHF)c(CF2)d(c,dはそれぞれ0以上の整数で、c+d=0〜14)で表される直鎖構造のものであっても、(CF3)3Cのような分岐構造のものであってもよい。
また、ここで言うフルオロアルキルエーテル基とは、例えばCF3O(CF2)eO(CF2)f(e+f=1〜14の整数で、eは1以上の整数)やCF2HO(CHF)gO(CF2)h(g+h=1〜14の整数で、gは1以上の整数)のように表される直鎖構造のものでも、(CF3)3CO(CF2)j(jは0〜10の整数)のように表される分岐構造のものであってもよい。
また、前記(一般式1)で表されるフッ素原子含有アルコールの繰返し単位数を表すnについては0〜10の整数であればよいが、フッ素原子による電子吸引性が非常に高く、反応性が低下する場合、nは2以上であることが好ましい。
このようなフッ素原子含有アルコールとしては例えば、2,2,2−トリフルオロ−1−エタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、7,7,8,8,8−ペンタフルオロ−1−オクタノール、2,2,3,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−1−ブタノール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、4,4,5,5,6,6,7,7,7−ノナフルオロ−1−ヘプタノール、7,7,8,8,9,9,10,10,10−ノナフルオロ−1−デカノール、2−パーフルオロプロポキシ−2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール、2−(パーフルオロヘキシル)エタノール、2−(パーフルオロヘキシル)プロパノール、6−(パーフルオロヘキシル)ヘキサノール、2−(パーフルオロオクチル)エタノール、3−(パーフルオロオクチル)プロパノール、6−(パーフルオロオクチル)ヘキサノール、2−(パーフルオロデシル)エタノール、1H,1H−2,5−ジ(トリフルオロメチル)−3,6−ジオキサウンデカフルオロノナノール、6−(パーフルオロ−1−メチルエチル)−ヘキサノール、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−エタノール、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−エタノール、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロプロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロペンタノール、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブタノール、2,2−ビス(トリフルオロメチル)プロパノール等を例示できる。
本発明におけるフッ素原子含有アルコールの使用量は、反応が進行する限りどのような範囲でも可能であるが、原料樹脂である(メタ)アクリル酸エステル系重合体中におけるエステル基のモル数(A)に対する改質剤であるフッ素原子含有アルコールのモル数(B)の比{(B)/(A)}とした場合、通常0.01〜2.0の範囲が好ましく、0.02〜1.5の範囲がより好ましい。この範囲より少ない場合は反応の進行が困難になり、また多い場合はコスト上昇に繋がる。
本発明におけるエステル交換触媒とは、エステル基の置換基を変換させるエステル交換反応の反応速度を促進するものである。本発明では、一般的に使用されているエステル交換触媒がいずれも使用可能であり、例えばアルカリ金属炭酸塩やアルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、ルイス酸、プロトン酸などが例示される。
ここで、アルカリ金属炭酸塩としては炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸フランシウム等が挙げられるが、特に炭酸カリウムと炭酸セシウムが好ましい。
また、アルカリ金属重炭酸塩としては重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸ルビジウム、重炭酸セシウム、重炭酸フランシウム等が挙げられるが、特に重炭酸カリウムが好ましい。
また、ルイス酸とは電子対を受容できる化合物であり、具体的にはスズ系化合物、亜鉛系化合物、イッテルビウム系化合物、チタン系化合物、バナジウム系化合物、ジルコニウム系化合物、ハフニウム系化合物、スカンジウム系化合物、マンガン系化合物、ニッケル系化合物、サマリウム系化合物、カドミウム系化合物、コバルト系化合物、アルミニウム系化合物、インジウム系化合物、ランタン系化合物等の電子対受容可能な金属化合物が挙げられ、特にチタン系化合物、バナジウム系化合物、ジルコニウム系化合物、ハフニウム系化合物、スカンジウム系化合物が好ましい。
尚、前記金属化合物の中でも、反応率向上の点から考えると、塩化バナジウム系化合物、塩化チタン系化合物、塩化ジルコニウム系化合物、塩化ハフニウム系化合物が好ましい。例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、チタンジクロロジイソプロポキシド、バナジルクロライド(VOCl2)、塩化ジルコニウム、塩化ハフニウム等を例示できる。その中でも、反応速度が高いという点から四塩化チタンがより好ましい。
また、空気中での取り扱いのし易さというという点から考えると、前記塩化バナジウム系化合物、塩化チタン系化合物、塩化ジルコニウム系化合物、塩化ハフニウムはテトラヒドロフラン錯体であるものが好ましい。例えば、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)チタン、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ハフニウム等を例示できる。
また、同様の理由からアセチルアセトナート錯体を用いることも考えられる。例えば、バナジルアセチルアセトナート(VO(acac)2)、チタンアセチルアセトナートジイソプロポキシド、アセチルアセトナートハフニウム、アセチルアセトナートジルコニウム等を例示できる。
また、チタン系化合物、バナジウム系化合物、ジルコニウム系化合物、ハフニウム系化合物はアルコキシドであれば、反応中において有害な塩化水素の発生がない点で好ましい。例えば、チタンテトラメトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンn−テトラブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムイソプロポキシド、ジルコニウムエトキシド、ハフニウムテトラt−ブトキシド等を例示できる。また、前記化合物は反応率の向上の点からフッ素含有アルコキシドであるものがより好ましい。例えばTi(ORfc)4(Rfcは少なくとも1個以上のフッ素原子を含有する炭素数1〜15のフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基)で表されるような化合物やバナジルトリフレート(VO(SO3CF3)2)等を例示できる。
また、プロトン酸としては、H+を放出可能な各種物質が使用可能であるが、具体的には塩化水素、硫化水素、硫酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸などが例示される。
また、本発明においては用いるエステル交換触媒は単独で使用しても、複数種を混合して使用しても、エステル交換反応が進行する限り、どちらでも構わない。
本発明におけるエステル交換触媒の添加量は反応が進行する限りどのような範囲でも可能であるが、(メタ)アクリル酸エステル系重合体中におけるエステル基のモル数(A)に対するエステル交換触媒のモル数(C)の比{(C)/(A)}とした場合、通常0.0001〜1.0の範囲が好ましく、0.001〜0.5の範囲がより好ましい。この範囲より少ない場合は反応の進行が困難になり、また多い場合は副反応が起きる可能性がある。
本発明においては、触媒残渣を除去する工程が必要である。触媒残渣を除去する工程としては、いくつかの方法が考えられる。
例えば、エステル交換触媒残渣が揮発性を有している場合は、真空乾燥や、剪断混練装置を用いて製造する場合はベントから脱気して除去することも可能である。
また、エステル交換触媒残渣が水溶性である場合は、有機溶剤に溶解させた(メタ)アクリル酸エステル系重合体に対して水を添加し、分液操作を繰り返すことによりエステル交換触媒残渣を除去することも可能である。
また、エステル交換触媒残渣が固体状である場合は、有機溶剤に溶解させた(メタ)アクリル酸エステル系重合体中の触媒残渣を除去する方法として濾過もしくは遠心分離を用いることができる。触媒残渣の粒径は非常に小さい場合が多いので、濾過による除去が好ましい。濾過を行う濾材としては、エステル交換触媒残渣を捕捉し、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の溶液を通すものであればどのようなものでもよく、例えばパルプ、ニトロセルロース、合成樹脂等からなる濾紙や、ガラス繊維、金網などの各種織物;有孔金属板;砂、アスベストなどの充填層;素焼板などの多孔体、などを用いることができる。
また、濾過を行う場合、必要に応じて濾過助剤を使用することが可能である。濾過助剤としては、珪藻土、パーライト、セルロース繊維等の使用が好ましい。濾過助剤は1種類のみを使用してもよいし、何種類かを混合して使用してもよい。
また、場合によっては一般的に使用されている吸着剤を使用しても構わない。吸着剤は(メタ)アクリル酸エステル系重合体を非反応性溶媒中に溶解させて後、エステル交換反応を行う場合においては、溶解した溶液を加熱、攪拌でき、フッ素原子含有アルコールを添加できる構造であれば特に制限はなく、圧力容器内で行っても、常圧下でガラス容器等を用いて反応を行ってもよい。また、反応副生成物のアルコールを取り除くことにより反応の進行が促進される場合が多く、場合によっては反応副生成物を系外に除外する器具や装置を用いても構わないし、副生成物のみ吸収するようなモレキュラーシーブ等の吸収剤や副生成物のみと反応するような反応剤を使用して反応系から除外しても構わない。
本発明における反応は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体をエステル交換反応に対して不活性な非反応性溶媒中に溶解させた後、フッ素原子含有アルコールと反応させることや、剪断混練装置を用いて(メタ)アクリル酸エステル系重合体とフッ素原子含有アルコールをエステル交換触媒存在下にて反応させて含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造することも可能である。ここで、用いる非反応性溶媒又はフッ素原子含有アルコールの沸点が非常に低い場合、エステル交換反応は高温での反応が必要な場合が多いため、圧力容器内で行うことが好ましい。
このような本発明で用いられる剪断混練装置としては、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、フッ素原子含有アルコール、及び必要により触媒や添加剤を加えて混練できるものであれば特に制限はなく、押出機、バンバリーミキサー、ローラー、ニーダー等を挙げることができる。
例えば押出機では、単軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ハイドロダイナミック押出機、ラム式連続押出機、ロール式押出機、ギア式押出機等を挙げることができるが、これらの中でスクリュー押出機、特に二軸押出機が好ましい。二軸押出機には非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式があるが、噛合い型同方向回転式が高速回転が可能であり、(メタ)アクリル酸エステル系重合体に対するフッ素原子含有アルコールの混合を促進できることから好ましい。より好ましくは、脱気効率の良い脱気口を1つ以上備える二軸押出機である。これらの押出機は単独で用いても、直列につないでも構わない。成分の混合順は特に限定されない。また、押出機以外では、例えば住友重機械工業(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に使用できる。
例えば押出機では、単軸押出機、二軸押出機等のスクリュー押出機、ハイドロダイナミック押出機、ラム式連続押出機、ロール式押出機、ギア式押出機等を挙げることができるが、これらの中でスクリュー押出機、特に二軸押出機が好ましい。二軸押出機には非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、噛合い型異方向回転式があるが、噛合い型同方向回転式が高速回転が可能であり、(メタ)アクリル酸エステル系重合体に対するフッ素原子含有アルコールの混合を促進できることから好ましい。より好ましくは、脱気効率の良い脱気口を1つ以上備える二軸押出機である。これらの押出機は単独で用いても、直列につないでも構わない。成分の混合順は特に限定されない。また、押出機以外では、例えば住友重機械工業(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に使用できる。
上述したように、本発明では(メタ)アクリル酸エステル系重合体に、フッ素原子含有アルコールを反応させる際に、この反応に対し不活性な溶媒を使用して、製造することも可能である。
このような、非反応性溶媒としては(メタ)アクリル酸エステル系重合体を溶解させるものであれば特に限定はされないが、反応生成物である含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体も溶解できる溶媒が好ましく、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ベンゾトリフルオライド、2−クロロ−ベンゾトリフルオライド等がコスト面からより好ましい。
また、溶媒はフッ素含有アルコールに添加しても、溶融状態にある(メタ)アクリル酸エステル系重合体に添加しても、エステル交換触媒に添加してもよく、添加する方法に特に定めはない。本発明の製造方法において空気に不安定なエステル交換触媒を使用する場合は、触媒の溶媒として好適に使用することが可能である。また、粘稠なフッ素含有アルコールを添加する場合の希釈剤としても好適に使用することが可能である。
エステル交換反応に対して不活性である溶媒としてはペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、クロロトルエン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のケトン、エーテル系化合物、ベンゾトリフルオライド、2−クロロ−ベンゾトリフルオライド等のフッ素化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、また少なくとも2種を混合したものであってもよい。
本発明の製造方法における反応温度は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を溶融することができ、エステル交換反応が進行するのであれば特に限定はないが、通常は100〜320℃の範囲が好ましい。100℃以下では(メタ)アクリル酸エステル系重合体の溶融が不十分であり、またエステル交換反応の進行が困難になる。320℃を越えると(メタ)アクリル酸エステル系重合体の熱分解が顕著になるという課題がある。
以上のように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体をエステル交換触媒存在下に含フッ素アルコールと反応させることにより、その耐溶剤性、撥水性、撥油性、耐熱性、摺動性などを改善することが期待される。
本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例で測定した物性の各測定方法は次の通りである。
(1)導入率の測定
作製した反応生成物10mgを重クロロホルム1gに溶解し、Varian Gemini−300(300MHz)を使用し、室温にて、1H−NMRを測定した。得られたスペクトルより、メチルエステル基に帰属される3.5〜3.7ppmの積分強度と、原料のメチルエステル基と含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエステル基のC(=O)OCH2−のメチレン基に帰属される4.2〜4.4ppmの積分強度から、導入率を決定した。
作製した反応生成物10mgを重クロロホルム1gに溶解し、Varian Gemini−300(300MHz)を使用し、室温にて、1H−NMRを測定した。得られたスペクトルより、メチルエステル基に帰属される3.5〜3.7ppmの積分強度と、原料のメチルエステル基と含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエステル基のC(=O)OCH2−のメチレン基に帰属される4.2〜4.4ppmの積分強度から、導入率を決定した。
(2)ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製DSC−50型)を使用し、生成物10mgを、窒素雰囲気下、20℃/minで昇温し、得られた結果から、中点法を用いてガラス転移温度(Tg)を決定した。
示差走査熱量計(DSC、(株)島津製作所製DSC−50型)を使用し、生成物10mgを、窒素雰囲気下、20℃/minで昇温し、得られた結果から、中点法を用いてガラス転移温度(Tg)を決定した。
(3)触媒残渣の量
作製した反応生成物100mgをトルエン10gに溶解し、マイクロトラック粒度分布計にて測定し、粒径1μm以上の触媒残渣の量(個/g)及び粒径0.2μm以上1μm未満の触媒残渣の量(個/g)を決定した。
作製した反応生成物100mgをトルエン10gに溶解し、マイクロトラック粒度分布計にて測定し、粒径1μm以上の触媒残渣の量(個/g)及び粒径0.2μm以上1μm未満の触媒残渣の量(個/g)を決定した。
(4)フィルムの作成方法、及び全光線透過率の測定方法
生成物を塩化メチレンに溶解させ、溶液流延法により厚さ50μmのキャストフィルムを得た。この生成物のフィルムを用いて、JIS K7105−1981の5.5記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
生成物を塩化メチレンに溶解させ、溶液流延法により厚さ50μmのキャストフィルムを得た。この生成物のフィルムを用いて、JIS K7105−1981の5.5記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
(5)ヘーズ
厚み50μmの生成物のフィルムを用いて、JIS K7105−1981の6.4記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
厚み50μmの生成物のフィルムを用いて、JIS K7105−1981の6.4記載の方法により、日本電色工業(株)製濁度計NDH−300Aを用いて測定した。
(6)引張強度、引張伸び
厚み50μmの生成物のフィルムを用いて、ASTM D−638に従い引張試験を行い、引張強度及び引張伸びを求めた。
厚み50μmの生成物のフィルムを用いて、ASTM D−638に従い引張試験を行い、引張強度及び引張伸びを求めた。
(実施例1)
押出機を用いて、溶融状態の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(住友化学(株)製スミペックスMM)に、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、及びエステル交換触媒としてTiCl4を添加して、フッ素原子含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造した。
押出機を用いて、溶融状態の(メタ)アクリル酸エステル系重合体(住友化学(株)製スミペックスMM)に、フッ素原子含有アルコールである3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロ−1−ヘキサノール、及びエステル交換触媒としてTiCl4を添加して、フッ素原子含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造した。
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を250℃、スクリュー回転数300rpmで、原材料供給口から(メタ)アクリル酸エステル系重合体を0.5kg/hrで投入した。(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対して10重量部の触媒であるTiCl4を、同量のヘキサンに溶解させ混合物の状態で圧入ポンプにより押出機へ供給し、さらに下流側にて、フッ素原子含有アルコールを圧入ポンプにより押出機へ供給した。フッ素原子含有アルコールの供給量は(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量部に対して、65重量部とした。
樹脂はニーディングブロックによって溶融、充満された後、触媒と混合され、さらにフッ素原子含有アルコールと反応させられた。反応ゾーンの末端にはシールリングを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のフッ素原子含有アルコールを、ベント口の圧力を−0.02MPaに減圧して脱揮した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂は、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化した。
得られたフッ素原子含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体の導入率は9%、ガラス転位温度は92℃であった。
ペレット化された生成物は白濁しており、精製を行うために珪藻土を濾過助剤とした濾過を行った。まず、生成物100gをトルエン1Lに溶解させてトルエン溶液とし、更に50gの珪藻土(ラヂオライト#300、昭和化学工業製)をトルエン溶液に加えて攪拌して均一分散液とした。ロートとして桐山式ロート、濾紙として桐山ロート用濾紙(桐山製作所製、No.5B)を用いて、濾紙上に2mm程の珪藻土(ラヂオライト#300、昭和化学工業製)を敷き詰め、減圧濾過により均一分散液を濾過した。濾液をエバポレーターにより300mlまで濃縮したのち、ヘキサン1Lに再沈澱させ、沈殿物を濾過し、濾過物を90℃に設定したオーブンにて乾燥させ、目的の生成物を得た。
この精製後のフッ素原子含有(メタ)アクリル酸エステル系重合体のエステル交換触媒残渣量を測定したところ、粒径1μm以上のエステル交換触媒残渣の量は15個/g、粒径0.2μm以上1μm未満のエステル交換触媒残渣の量は200個/gであった。
また、上述した方法で、この生成物のフィルムを作成し、そのフィルムの物性を評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
珪藻土を濾過助剤として用いる代わりに、セルロース繊維(ダイセル化学工業製、セリッシュPC110S)を用いたこと以外は全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
珪藻土を濾過助剤として用いる代わりに、セルロース繊維(ダイセル化学工業製、セリッシュPC110S)を用いたこと以外は全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例3)
珪藻土を濾過助剤として用いる代わりに、パーライト(三井金属鉱業製、ロカヘルプ)を用いたこと以外は全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
珪藻土を濾過助剤として用いる代わりに、パーライト(三井金属鉱業製、ロカヘルプ)を用いたこと以外は全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
(実施例4)
実施例1と同様の操作にてペレット化された生成物を得て、精製を行うために遠心分離機を用いて触媒残渣の除去を行った。
実施例1と同様の操作にてペレット化された生成物を得て、精製を行うために遠心分離機を用いて触媒残渣の除去を行った。
まず、生成物100gをトルエン1Lに溶解させてトルエン溶液とし、6000rpmにて10分間、遠心分離を行った。遠心分離後の上澄み液を取り出し、エバポレーターにより300mlまで濃縮したのち、ヘキサン1Lに再沈澱させ、沈殿物を濾過し、濾過物を90℃に設定したオーブンにて乾燥させ、目的の生成物を得た。実施例1と同様に、この生成物のフィルムを作成し、そのフィルムの物性を評価した、結果を表1に示す。
(比較例1)
珪藻土を濾過助剤とした濾過を行わないこと以外は、全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
珪藻土を濾過助剤とした濾過を行わないこと以外は、全て実施例1と同様の操作を行った。得られたフィルムの物性を表1に示す。
Claims (5)
- 前記エステル交換触媒残渣を除去する工程が濾過によることを特徴とする請求項1に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 前記濾過において、珪藻土、パーライト、セルロース繊維から選ばれる少なくとも1種類の濾過助剤を使用することを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法。
- 粒径1μm以上のエステル交換触媒残渣の量が50個/g以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体の製造方法より得られる含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
- 粒径0.2μm以上1μm未満のエステル交換触媒及び/又はエステル交換触媒残渣の量が1000個/g以下であることを特徴とする請求項4に記載の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル系重合体。
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