JP2007073584A - 半導体発光素子および光送信用モジュールおよび光通信システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 窒素(N)とその他のV族元素を含む量子井戸活性層を有する混晶半導体からなる半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層とを歪補償層の構造に含ませる場合に、しきい電流密度の上昇を抑え、良好な特性を得る。
【解決手段】 GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっている。
【選択図】 図2
【解決手段】 GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっている。
【選択図】 図2
Description
本発明は、半導体発光素子および光送信用モジュールおよび光通信システムに関する。
従来、窒素(N)とその他のV族元素を含むIII−V族混晶半導体が半導体発光素子の材料として注目されている。特にGaInNAsは、現在の光通信システムで用いられる光ファイバーに対して低損失の波長域である1.3μm帯でのレーザ発振が可能であるため、盛んに研究開発が行なわれている材料である。GaInNAsは、GaAsNとGaInAsとの混晶であり、伝導帯準位はN組成に対する依存性に大きなボーイングパラメータを有するため、GaAs基板上に1.3μm帯で発振する素子を成長可能である。GaInNAsとGaAsとの組み合わせで構成される量子井戸活性層においては、伝導帯のバンドギャップ不連続量が大きく、キャリアのオーバーフローが起きにくいため、良好な温度特性を有する半導体発光素子を提供することができる。また、GaInNAsは、圧縮歪を加えて用いる事が多く、しきい電流の低減および発振波長の長波長化に対しても有利である。
しかしながら、GaInNAsは、歪を有して用いられることが多いために、格子緩和などで転位などの欠陥が入りやすく、良質な活性層を得ることが困難であった。また、初期には欠陥が少なくても経時的にも歪により欠陥が増殖し、特性の経時的劣化を招くという問題もある。
このような問題を解決するための手法としては、活性層の歪と逆方向の歪を有する結晶層を活性層近傍に導入することで活性層近傍でのトータルの歪を補償する歪補償層(strain−compensatedlayer )を用いる方法が近年行なわれている。
GaInNAsにおいては、活性層と逆の引っ張り歪を有する歪補償層として、GaAsPおよびGaAsNなどが用いられている。しかしながら、歪補償層を活性層に隣接して設ける場合、GaAsP,GaAsNをそれぞれ用いる歪補償層では、以下のような問題点が存在する。
例えば非特許文献1に報告されているように、GaAsPのみの歪補償層を活性層に隣接させた場合、GaAsPの方がGaAsよりも伝導帯バンドが高く、伝導帯バンドのバンドギャップ不連続量が大きくなり、結果として量子準位が高くなり、発光波長の短波長化を招いてしまう。このことにより、GaAsとの組み合わせで作った量子井戸活性層と同じ発光波長を得るためには、GaInNAs活性層の歪を大きくしたり、窒素(N)組成を増加させる必要がある。しかし、活性層の歪を大きくするのは格子緩和などの原因となり好ましくなく、また、N組成を増加させると非混和性が高いことから良質の結晶成長が困難になるので好ましくない。
さらにGaInNAs量子井戸活性層に直接GaAsPを隣接させる場合、活性層の圧縮歪とGaAsPの引っ張り歪との歪差が大きすぎると、良質なGaInNAs量子井戸活性層を成長することが困難になり好ましくないため、これらの間にGaAs層を中間層として設けざるをえない場合がある。
また、GaAsNのみの歪補償層を活性層に隣接させた場合は、逆に、GaAsNの方がGaAsよりも伝導帯バンドが低く、伝導帯バンドのバンドギャップ不連続量が小さくなり、半導体発光素子の温度特性が悪化してしまう。そこで伝導帯バンドの不連続量が小さくなるのを避けるにはNの組成を低くする必要があるが、そうなると引っ張り歪の大きさが小さくなり、歪補償の効果が低下してしまう。
そこで、特許文献1には、複数の歪補償層の組み合わせでこれらの問題点を解決し、歪補償を行う方法が提案されている。特許文献1によれば、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、量子井戸活性層に隣接させて、量子井戸活性層の側から順に、GaAsよりも伝導帯バンドが低く窒素(N)を含む1層以上の層とGaAsよりも伝導帯バンドが高くリン(P)を含み引っ張り歪を有する1層以上の層との多層構造からなる歪補償層にすることで、良好な温度特性と発振波長の短波長化の抑制を両立しつつ、十分な歪補償を行なうことが可能になる。
また、上記特許文献1の構成以外でも、異なる歪やバンドギャップを有する複数種類の歪補償層を組み合わせる構成はいくつも考えられる。
Appl.Phys .Lett .,78 ,91 (2001) 特開2004−128442号公報
Appl.Phys .Lett .,78 ,91 (2001)
しかしながら、これらの複数の歪補償層を用いるときには、以下のような未解決の問題があることが本願の発明者の実験からわかった。なお、次表(表1)は、本願の発明者の実験において、GaInNAs活性層に対してGaNAs層を隣接させ、さらにその外側にGaNPAs層あるいはGaAsP層を設けた歪補償構造を採用した場合のブロードストライプレーザのしきい電流密度を比較したものである。
例えば前記特許文献1の方法において、GaAsよりも伝導帯バンドが低く窒素(N)を含む層としてGaNAsを用い、GaAsよりも伝導帯バンドが高くリン(P)を含み引っ張り歪を有する層としてGaAsPを用いた場合、この2層が隣接していると半導体発光素子のしきい電流が比較的高くなり、それに対して、GaAsPの変わりにGaNPAsを用いた場合はしきい電流の値がGaAsPに比較して低くなる傾向があることが表1からわかる。
この表1に示した、活性層側から順にGaInNAs/GaNAs/GaAsPとなるような歪補償層の構造において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層とが隣接する場合には、しきい電流密度がどうしても高くなりやすいということが分かった。
本発明は、この点を解決することを目的としている。
すなわち、本発明は、窒素(N)とその他のV族元素を含む量子井戸活性層を有する混晶半導体からなる半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層とを歪補償層の構造に含ませる場合に、しきい電流密度の上昇を抑え、良好な特性を得ることの可能な半導体発光素子および光送信用モジュールおよび光通信システムを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられていることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられていることを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有していることを特徴としている。
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項6記載の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュールである。
また、請求項8記載の発明は、請求項7記載の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システムである。
請求項1記載の発明によれば、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっており、低品質の界面ができやすいNとPを同時に切り替える界面が歪補償構造内に含まれないため、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
また、請求項2記載の発明によれば、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっており、より多くの界面が存在する多重量子井戸活性層を含む活性領域に対して適用することで、より有効に半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
また、請求項3記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられているので、低品質の界面ができやすい窒素(N)とリン(P)を同時に切り替える界面を歪補償構造内に含まず、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
また、請求項4記載の発明によれば、請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられているので、低品質の界面ができやすい窒素(N)とリン(P)を同時に切り替える界面を歪補償構造内に含まず、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
また、請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有しているので、より高品質な界面の形成が可能になり、半導体発光素子の特性を向上できる。
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであり、請求項6記載の発明によれば、面発光型半導体レーザにおいて厚い半導体多層膜反射鏡を成長しても、歪によるモホロジの荒れを防止でき、かつ、しきい電流密度の上昇を防止できる。
また、請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュールであり、高性能の通信用長波長帯面発光型半導体レーザ素子を用いることで、高品質,高信頼性の光送信用モジュールを提供することができる。
また、請求項8記載の発明によれば、請求項7記載の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システムであるので、高品質,高信頼性の光通信システムを提供することができる。
図1はGaInNAs量子井戸活性層とGaNAsとGaAsPの2種類の歪補償層からなるSQW(単一量子井戸)構造の活性領域を模式的に示した図である。この構造では量子井戸活性層に隣接してGaNAs層、GaAsP層の順番で歪補償層を構成してある。このような構成は前記従来例のように半導体発光素子の短波長化を防ぎつつ、良好な歪補償を行うための構造として用いられる。またGaNAsのようなNを含んだ層をGaInNAs活性層に隣接させると、文献(S.Illek, B.Borchert, G.Ebbinghaus, A.Yu.Egorov, and H.Riechert, Proceedings of 2000 International conference on Indium Phosphide and Related Materials, pp.537 (2000))に記載のように、良好なしきい電流密度を有する素子が得られることが知られている。GaAsP層のようなPを含んだ層はGaNAsに比べて大きな引っ張り歪を有した層を成長しやすく、より歪補償の効果を大きくするために、GaNAsと組み合わせて用いるのは歪補償の観点では非常に有効であると考えられる。
しかし、表1に示したように、このようなGaNAs層の外側に直接GaAsP層を接した構造をとった場合、しきい電流密度が高くなってしまうという問題が生じることが本願発明者の実験によりわかった。GaAsPはGaNAsに比べて結晶品質を保ったまま、ある程度引っ張り歪の大きな層を成長することが可能であり、歪補償としては好ましい性質を持っているが、表1によれば、GaNAsと直接界面を接する構造をとった場合、しきい電流密度の上昇という好ましくない結果をもたらすことになってしまう。
GaNAsとGaAsPでは、NとPという2種類のV族元素をその成長界面で切り替えねばならず、エピタキシャル成長時に良質な界面を得るためのパラメータを求めることが非常に難しい。V族元素の切り替えの界面においては、相互拡散等により非発光再結合中心が生成しやすく、良質な界面で無い場合、レーザのしきい電流密度が上昇する事がよく知られている。特にこのようにNとPの2種類の切り替えでは、良質な界面が得にくいのではないかと本願発明者は考察した。
そこで、本願の発明者は、第1の仕方として以下のような構成を案出した。すなわち、たとえばGaNAsとGaAsPの層の間に、NもPも含まない例えば薄いGaAs層を中間層として入れることで、界面でのV族元素の切り替えがGaNAs/GaAs界面ではNのみ、GaAsP/GaAs界面ではPのみと1種類に限定されるため、比較的良好な界面を得やすくなり、この構成により、Nを含んでPを含まない層とPを含んでNを含まない層を用いた歪補償構造でも、しきい電流密度の上昇を抑え、良好な特性の半導体発光素子を得ることが可能になることを案出した。
ここで、量子井戸活性層は何もGaInNAsには限らず、GaInNAsSbなどの他の組成のNとその他のV族を含むIII−V族化合物でも当然かまわない。さらにNを含んでPを含まない層はGaNAsに限定されるわけではなく、例えばGaInNAs(量子井戸活性層とは別組成)などの他の材料でもかまわない。またPを含んでNを含まない層もGaAsPに必ずしも限定されず、GaAsPSb、GaInAsP、GaInAsPSbなど他の元素を含んだ形の混晶でも当然かまわない。また、NもPも含まない中間層もGaAsに限定されず、GaAsSb、GaInAs、GaInAsSbなど他の化合物でも当然かまわない。さらにこれらの層はそれぞれ複数の層から構成されていても当然かまわない。
また、本願の発明者は、第2の仕方として以下のような構成を案出した。すなわち、例えばGaNAsとGaAsPの層の間に、NとPとを共に含む例えば薄いGaNPAs層を中間層として入れることで、界面でのV族元素の切り替えがGaNAs/GaNPAs界面ではPのみ、GaAsP/GaNPAs界面ではNのみと1種類に限定されるため、2種類のV族原料を切り替えるのに対して、比較的良好な界面を得やすくなり、この構成により、Nを含んでPを含まない層とPを含んでNを含まない層を用いた歪補償構造でも、しきい電流密度の上昇を抑え良好な特性の半導体発光素子を得ることが可能になることを案出した。
ここで、NとPを共に含む層は何もGaNPAsに限らない、GaNPAsSb、GaInNAsPなど他の化合物でも当然かまわない。さらに各層がそれぞれ複数の層から構成されていても当然かまわない。
また、上記で説明している歪補償構造を構成している各層は、それぞれすべてが活性層と逆の引っ張り歪を有する必要はない。例えばGaAsのような歪の無い層やGaInAsのような圧縮歪を有する層を一部に含んでいても、全体として活性層の歪を補償する構成であればかまわない。
以上のように、Nを含んでPを含まない層とPを含んでNを含まない層とを歪補償構造を有する活性領域内で直接界面を接しないようにすることで、レーザのしきい電流密度の上昇を抑えることが可能になる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の形態)
本発明の第1の形態は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
本発明の第1の形態は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
本発明の第1の形態によれば、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっており、低品質の界面ができやすいNとPを同時に切り替える界面が歪補償構造内に含まれないため、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
(第2の形態)
本発明の第2の形態は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
本発明の第2の形態は、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴としている。
本発明の第2の形態によれば、GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっており、より多くの界面が存在する多重量子井戸活性層を含む活性領域に対して適用することで、より有効に半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
(第3の形態)
本発明の第3の形態は、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられていることを特徴としている。
本発明の第3の形態は、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられていることを特徴としている。
本発明の第3の形態によれば、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられているので、低品質の界面ができやすい窒素(N)とリン(P)を同時に切り替える界面を歪補償構造内に含まず、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
(第4の形態)
本発明の第4の形態は、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられていることを特徴としている。
本発明の第4の形態は、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられていることを特徴としている。
本発明の第4の形態によれば、第1または第2の形態の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられているので、低品質の界面ができやすい窒素(N)とリン(P)を同時に切り替える界面を歪補償構造内に含まず、半導体発光素子のしきい電流密度の増加を防止することができる。
(第5の形態)
本発明の第5の形態は、第4の形態の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有していることを特徴としている。
本発明の第5の形態は、第4の形態の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有していることを特徴としている。
本発明の第5の形態によれば、第4の形態の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有しているので、より高品質な界面の形成が可能になり、半導体発光素子の特性を向上できる。
(第6の形態)
本発明の第6の形態は、第1乃至第5のいずれかの形態の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴としている。
本発明の第6の形態は、第1乃至第5のいずれかの形態の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴としている。
本発明の第6の形態によれば、第1乃至第5のいずれかの形態の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであり、本発明の第6の形態によれば、面発光型半導体レーザにおいて厚い半導体多層膜反射鏡を成長しても、歪によるモホロジの荒れを防止でき、かつ、しきい電流密度の上昇を防止できる。
(第7の形態)
本発明の第7の形態は、第6の形態の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュールである。
本発明の第7の形態は、第6の形態の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュールである。
本発明の第7の形態によれば、第6の形態の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュールであり、高性能の通信用長波長帯面発光型半導体レーザ素子を用いることで、高品質,高信頼性の光送信用モジュールを提供することができる。
(第8の形態)
本発明の第8の形態は、第7の形態の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システムである。
本発明の第8の形態は、第7の形態の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システムである。
本発明の第8の形態によれば、第7の形態の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システムであるので、高品質,高信頼性の光通信システムを提供することができる。
次に、実施例を説明する。
実施例1は、第1,第3の形態に対応している。図2は実施例1の半導体発光素子を示す図であり、図2の例では、半導体発光素子は単一量子井戸構造での端面発光型半導体レーザとなっている。すなわち、図2を参照すると、この端面発光型半導体レーザは、基板側から、n−GaAs基板、n−GaInPクラッド層(厚さ2μm)、GaAsガイド層(厚さ0.1μm)、歪補償構造を有するGaInNAs量子井戸活性層、GaAsガイド層(厚さ0.1μm)、p−GaInPクラッド層(厚さ2μm)、p−コンタクト層(厚さ0.1μm)からなっている。そして、基板裏面と上部コンタクト層上には、それぞれ対応する電極(n−電極,p−電極)が設けられている。
この実施例1では、歪補償構造を有するGaInNAs量子井戸活性層は、下側から、GaAs0.8P0.15層(厚さ10nm)、GaAs層(厚さ1nm)、GaAs0.987N0.013層(厚さ2nm)、Ga0.7In0.3N0.01As0.99量子井戸(厚さ8nm)、GaAs0.987N0.013層(厚さ2nm)、GaAs層(厚さ1nm)、GaAs0.8P0.15層(厚さ10nm)で構成されている。この組成においては、各層のGaAsに対する歪はGaAsPが−0.53%、GaAsNが−0.26%、GaInNAsが+1.9%である。
上記のレーザ構造は、例えば有機金属化学気相成長法(MOCVD法)によるエピタキシャル成長で作ることができる。その際、III族原料の有機金属化合物として例えばトリメチルガリウム(TMG),トリメチルインジウム(TMI)を用いることができ、V族原料としては例えばAsH3,PH3,ジメチルヒドラジン(DMHy)を用いることができる。また、n型のドーパントとしては例えばH2Seを用い、p型のドーパントとしては例えばジメチル亜鉛(DMZn)を用いることができる。これらの原料を所定の圧力(例えば100torr)に保った反応管内にH2キャリアガスによって導入し、基板上で例えば熱によって分解することで、基板上に所定の半導体結晶をエピタキシャル成長することが可能である。この実施例1では、MOCVD法により上記のような構造の端面発光型半導体レーザを結晶成長したが、本発明はMOCVD法以外の方法、例えばMBE法などによってもその構造を作製することが可能である。
上記のような活性層の構成では、図3に示したような伝導帯バンド構造を取ることになる。文献(H.Shimizu, K.Kumada, S.Uchiyama, and A.Kasukawa, Proceedings of 2001 International conference on Indium Phosphide and Related Materials, pp.595−598 (2000))などにより、GaInNAsのようなNとその他のV族を含むIII−V族化合物を活性層とした場合、直接接する障壁層としてGaAsNを用いると、レーザのしきい電流密度を低くすることができるということが知られている。また、GaAsN単体ではNの組成を大きくした場合、良質の結晶を得にくいため、歪量の大きな結晶は成長が困難である。そのため本発明のように、GaAsNを障壁層の量子井戸活性層に直接接する部分に用い、その外側により歪量の高い結晶を成長しやすいGaAsP歪補償層と組み合わせて用いることは、歪補償の観点から見て非常にメリットが大きい。
ここで、GaAsN層とGaAsP層との中間にGaAs層を厚さ1nmほど成長してあることにより、GaAs/GaAsN界面とGaAs/GaAsP界面とのそれぞれの成長界面でV族原料の切り替えが1種類で済む。1種類の切り替えならば比較的良好な成長界面を得られる条件を求めることは難しくないため、結果として歪補償構造において各層の界面が良好に保たれ、レーザのしきい電流密度の上昇を防ぐことができる。これに対し、GaAsPとGaAsNがGaAs層を介さず直接界面を接した場合は、V族の切り替えが2種類になる(NのオンオフとPのオンオフ)ため、界面における各元素の相互拡散の無い良好な界面を得るための成長条件を求めることが非常に困難である。界面において相互拡散などで非発光再結合中心が生成すると、結果としてレーザのしきい電流密度が上昇してしまうことになる。
よって、この実施例1のように、Nを含んでPを含まない層とPを含んでNを含まない層との間に、NとPをともに含まない層を設けてやることで、レーザのしきい電流密度の上昇を防止できる。
また、この実施例1での歪補償の効果は以下の様になる。歪補償のない状態では1.9%の圧縮歪を有する活性層が8nmあることになるが、この実施例1ではGaAsPとGaAsNの歪補償効果を合わせると、活性層全体の歪の平均は0.1%以下になっており、十分な歪低減効果が得られることが分かる。
実施例2は、第2,第3の形態に対応している。図4は、実施例2の半導体発光素子を示す図であり、図4の半導体発光素子の基本構成は実施例1と全く同一で、活性層を多重量子井戸構造(この実施例2ではDQW構造)としたものである。また、量子井戸とそれを挟む形の歪補償構造の厚さと組成は実施例1と同一で、GaAsP間のバリア層としてGaAsを3nmの厚さで成長してある。この場合の伝導帯バンド図は図5のようなものになる。
多重量子井戸構造では、層間の界面の数も増えるため、良質な界面を得ることの重要性は一層高くなる。そのため、本発明において、活性層を多重量子井戸構造とすることで、より良好な効果を期待できる。
ここで、本発明のようにNを含んでPを含まない層とPを含んでNを含まない層が直接接しない歪補償構造を設けることで、しきい電流密度の上昇を抑えて半導体発光素子を多重量子井戸構造で作製することが可能になる。
また、この実施例2では、図5のように多重量子井戸活性層間のGaAsPの中間にもGaAs層を設けているが、臨界膜厚を超えない範囲であれば図11のように多重量子井戸活性層間のGaAsPの中間にGaAs層がない構造でも当然かまわない。この場合には、結晶成長工程が簡単になり、成長が容易になる。
実施例3は、第1,第4の形態に対応している。図6は、実施例3の半導体発光素子を説明するためのバンド図であり、半導体発光素子の基本構成は実施例1と全く同一で、GaAsN層とGaAsP層との中間のGaAs層をGaAsNP層に変えてある点だけが異なっている。実施例3の半導体発光素子では、GaAsN層とGaAsP層との中間にGaAsNP層を1nmほど成長してあることにより、GaAsNP/GaAsN界面とGaAsNP/GaAsP界面のそれぞれの成長界面でV族原料の切り替えが1種類で済む。1種類の切り替えならば比較的良好な成長界面を得やすく、結果として歪補償構造において各層の界面が良好に保たれ、レーザのしきい電流密度の上昇を防ぐことができる。
実施例4は、第5の形態に対応している。図9は、実施例4の半導体発光素子を説明するためのバンド図であり、実施例4の半導体発光素子の基本構成は実施例3と同様であるが、中間層においてN組成を傾斜させている点のみが異なる。この図9のバンド図では、GaAsNPのP組成は15%で一定にしたまま、N組成を1.5%から0%まで変化させている。このようにすることで、GaAsNP/GaAsP界面でのN組成を連続的に0にできるため、成長界面でのNの切り替えの際のN組成変化を最小にでき、相互拡散などの悪影響を少なくできる。すなわち、V族原料切り替えによる影響を少なくして、良質な界面を形成できるようになる。なお、P組成の傾斜やNとPの双方を傾斜させることで、GaAsN/GaAsNP界面やその両方を連続的な組成の界面で形成できるようになるため、より良好な界面を得ることも可能である。
実施例5は、第1の形態に対応している。図10は、実施例5の半導体発光素子を説明するためのバンド図であり、基本構成は実施例1と同様であるが、中間層が2層からなっていることが実施例1と異なっている。この実施例5では、活性層がGaInNAsSb/GaAsNSb/GaAsSb/GaAs/GaAsPの構成になっている。GaAsSbとGaAsはそれぞれ1nmの厚さとなっている。このように界面ごとの元素切り替えを1種類に限定することにより、良好な界面を得ることが可能になる。
実施例6は、第6の形態に対応している。図7は、実施例6の半導体発光素子を示す図であり、実施例6の半導体発光素子は面発光型半導体レーザとなっている。この実施例6において、多重量子井戸活性層の構成は実施例2と同じで、DQW構造としたものである。
この実施例6においては、MOCVD法を用いて、n型GaAs基板上に、n型半導体多層膜反射鏡、GaAs下部スペーサ層、GaInNAs/GaAsN/GaAs/GaAsP多重量子井戸活性層、GaAs上部スペーサ層、AlAs層、p型半導体多層膜反射鏡が順次に積層され、積層構造として形成されている。
ここで、n型半導体多層膜反射鏡は、n型GaAs高屈折率層とn型Al0.8Ga0.2As低屈折率層とを交互に積層した分布ブラッグ反射鏡で構成されている。同様に、p型半導体多層膜反射鏡も、p型GaAs高屈折率層とp型Al0.8Ga0.2As低屈折率層とを交互に積層した分布ブラッグ反射鏡で構成されている。
また、多重量子井戸活性層を含む、GaAs下部スペーサ層からGaAs上部スペーサ層までの領域は、λ共振器を構成している。
そして、上記積層構造を、n型半導体多層膜反射鏡に達するまで円筒状にエッチングして、メサ構造が形成されている。メササイズは例えば約30μmφとなっている。そして、エッチングして表面が露出した側面からAlAs層を選択的に酸化させ、AlOx絶縁領域を形成することにより、電流狭窄構造が形成されている。電流は、AlOx絶縁領域によって例えばおよそ5μmφの酸化開口領域に集中して活性層に注入される。
また、p型半導体多層膜反射鏡の表面にはリング状のp側電極が形成され、n型GaAs基板裏面にはn側電極が形成されている。
図7の構成の半導体発光素子(面発光型半導体レーザ)では、多重量子井戸活性層で発光した光(レーザ光)は、上下の半導体多層膜反射鏡で反射して増幅され、基板と垂直方向に放射される。
GaAs基板上での半導体多層膜反射鏡としてはAlGaAs/GaAs積層型がもっとも容易に高性能の反射鏡を作製でき、かつ電気特性も良好なため利用しやすい。
しかし、例えばGaInNAsを用いた1.3μm帯での面発光型半導体レーザにおいては、有効な反射率を得られる半導体多層膜反射鏡は基板側のn型側が35ペア程度でおよそ7μmもの厚さになり、また、レーザーの出射口側であるp型側が26ペア程度でおよそ5.2μmもの厚さになる。このように厚い半導体多層膜反射鏡を成長した場合、その表面の平坦性はGaAs基板の初期状態に比較して悪化しやすく、この平坦性の悪化した状態の上に歪の大きなGaInNAsなどの量子井戸を成長した場合、膜が3次元成長しやすく、良質の活性層を得ることが難しくなることが知られている。また、3次元成長をした表面性の悪い活性層の上に半導体多層膜反射鏡を成長した場合、その厚さが厚くなるにつれてモホロジの悪化が顕著になりやすい。端面発光型半導体レーザにおいてはほとんど表面モホロジの悪化が見られないような程度の結晶品質を有する活性層でも、面発光型半導体レーザとして成長した場合には顕著に表面モホロジの悪化が見られることがある。このようなモホロジの悪化は半導体多層膜反射鏡の反射率などの悪化を招く。そのため、面発光型半導体レーザにおいては、端面発光型半導体レーザに比較して、活性層の歪を補償してやる必要性が高く、またその有効性も高いといえる。
この実施例6においては、活性層に接する側から順にGaAsN/GaAs/GaAsPの構成からなる歪補償構造をGaInNAs量子井戸活性層に隣接させたことで、十分な歪補償の効果を有し、かつしきい電流密度の上昇を防止し、かつ厚い半導体多層膜反射鏡上に成長するために生じやすい結晶品質の低下と、活性層の上部に厚い半導体多層膜反射鏡を成長することによって生じやすい表面モホロジの低下を防止でき、高品質,高信頼性の面発光型半導体レーザ素子を提供できる。
実施例7は、第7,第8の形態に対応している。図8は実施例7の光送受信モジュールを示す図である。図8を参照すると、実施例7の光送受信モジュールは、実施例6の面発光型半導体レーザ素子と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせたものとなっている。
本発明による面発光型半導体レーザ素子を光通信システムに用いる場合、面発光型半導体レーザ素子は低コストであるので、図8に示すような送信用の面発光型半導体レーザ素子(例えば1.3μm帯GaInNAs面発光型半導体レーザ素子)と、受信用フォトダイオードと、光ファイバーとを組み合わせた光送受信モジュールが安価に得られる。
特に、GaInNAsを用いた面発光型半導体レーザは、1.3−1.5μm帯での発振を得られる素子であり、これらの波長では石英系の光ファイバに対しての損失が少ないなどの理由により、通信用の光源として好適であるとされている。さらには、特に1.3μm等の長波長帯で低損失となるフッ素添加POF(プラスチックファイバ)とGaInNAsを活性層に用いた面発光型レーザとを組み合わせると、ファイバが低コストであること、ファイバの径が大きくてファイバとのカップリングが容易で実装コストを低減できることから、極めて低コストのモジュールを実現できる。また、GaInNAsはその優れた温度特性から、強力な冷却用の構成を必要としない。そのため、冷却用のコストが削減でき、安価な光通信モジュールを得られる。
また、光通信用光源として考えた場合、面発光型半導体レーザの信頼性は非常に重要である。この実施例7では、活性層に接する側から順にGaAsN/GaAs/GaAsPの構成からなる歪補償構造を有することで、GaAsPとGaAsNとを直接界面で接するようにした場合に生じる界面の品質劣化を抑えることができ、高品質な面発光型半導体レーザ素子を製造することがより容易に行なえるようになり、高性能の通信用長波長帯面発光型半導体レーザ素子を実現でき、さらにこれらの素子を用いることで、低コストの光ファイバー通信システム、光インターコネクションシステムなどの光通信システムを実現することができる。
Claims (8)
- GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴とする半導体発光素子。
- GaAs基板上に形成されている半導体発光素子において、窒素(N)とその他のV族元素を含む圧縮歪を持つ混晶半導体からなる多重量子井戸活性層を含んでいる活性領域を有し、活性領域には、さらに、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とを少なくとも含んだ多層構造からなる引っ張り歪を有する歪補償層が設けられており、窒素(N)を含みリン(P)を含まない1層以上の層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない1層以上の層とは、直接界面を接しない層構成となっていることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含まない層が中間層として設けられていることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1または請求項2記載の半導体発光素子において、窒素(N)を含みリン(P)を含まない層とリン(P)を含み窒素(N)を含まない層との間に、窒素(N)とリン(P)を共に含む層が中間層として設けられていることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項4記載の半導体発光素子において、窒素(N)とリン(P)を共に含む中間層は、窒素(N)またはリン(P)またはその両方の組成が連続的に変化している部分を有していることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の半導体発光素子において、該半導体発光素子は、面発光型半導体レーザであることを特徴とする半導体発光素子。
- 請求項6記載の半導体発光素子を光送信用光源として用いたことを特徴とする光送信用モジュール。
- 請求項7記載の光送信用モジュールを用いたことを特徴とする光通信システム。
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