しかしながら、従来技術においては、グラビアシリンダの軸心を回転軸として回転させているので、そのグラビアシリンダの径の大きさによってシリンダの周速が異なり、撮像するタイミングとシリンダの周速との同期がとれず、撮像されたシリンダ画像の分解能を低下させる恐れがある。また、グラビアシリンダは、その重量が200kg程度あるため、人力によりグラビアシリンダを持ち上げ、所定の回転軸に設置することは困難である。
また、従来技術において、単色刷りの品質確認は、シリンダによる印刷前に、各シリンダ表面を撮像することにより行われている。これに対し、多色刷りの品質確認は、実際にシリンダ毎に異なる色のインクを載せ、そのインクを一枚の紙に重ねて配色した印刷物を目視することよってのみ確認されている。したがって、多色刷りの印刷物に不具合を発見した場合、印刷機を止め、シリンダを取り外し、シリンダの再製作が必要となり、生産力及びコストに大きな負担を与えることになる。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、シリンダの径の大きさによらず、シリンダの周速を一定に保ち、高分解能でシリンダ表面を撮像可能であり、そのシリンダを容易に回転可能な状態に設置できるシリンダ撮像装置を提供することを第1の目的とする。また、実際にシリンダ毎に異なる色のインクを載せて一枚の紙に重ねて配色された印刷物を目視する以前に、多色の印刷結果を確認可能であるシリンダ撮像装置を提供することを第2の目的とする。
本発明に係るシリンダ撮像装置は、シリンダを回転させて表面を撮像するシリンダ撮像装置であって、前記シリンダをその中心軸を水平にして支持するとともに前記シリンダの両端の外周下方に当接して前記シリンダを回転駆動する支持回転手段と、前記シリンダの表面を撮像する撮像手段と、前記支持回転手段の回転速度に同期して前記撮像手段による撮像を制御する駆動制御部と、を備えることを特徴とする。また、前記シリンダの径に応じて、該シリンダ表面と前記撮像手段との距離を一定に保つ撮像駆動手段を備えることが望ましい。
また、本発明に係るシリンダ撮像装置は、シリンダを回転させて表面を撮像するシリンダ撮像装置であって、前記シリンダをその中心軸を水平にして支持するとともに前記シリンダの両端の外周下方に当接して前記シリンダを回転駆動する支持回転手段と、前記シリンダの表面を撮像する撮像手段と、前記支持回転手段の回転速度に同期して前記撮像手段による撮像を制御する駆動制御部と、前記撮像した複数のシリンダ画像情報毎に単色の指定色を指定し、該指定色を指定された複数のシリンダ画像情報を重ね合わせて多色のシリンダ画像情報を合成する画像合成部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、回転及び前記シリンダの外周下方に当接可能であるとともに前記回転により前記シリンダを回転可能である支持回転手段を備えているので、シリンダの周速が常に一定に保たれ、容易に、撮像するタイミングとシリンダの周速との同期がとれるので、高分解能でシリンダ画像を撮像可能となる。また、シリンダの軸心を所定の回転軸に設置する必要はなく、シリンダを支持回転手段の上に置くのみで回転可能とされるので、従来例と比較し、容易にシリンダを回転可能な状態に設置することができる。
また、本発明によれば、撮像した複数のシリンダ画像情報毎に単色の指定色を指定し、該指定色に指定された複数のシリンダ画像情報を重ね合わせて、多色のシリンダ画像情報を合成可能であるので、実際にシリンダ毎に異なる色のインクを載せ、一枚の紙に重ねて配色された印刷物を目視する以前に、多色の印刷結果を画像情報として確認することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明に係る一実施形態について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るシリンダ撮像装置の概略斜視図であり、図2は、図1の内部を投影した一部拡大斜視図である。
図1に示すように、このシリンダ撮像装置は、シリンダSを設置可能な設置部100と、設置部100に対して上方に開閉可能に移動する撮像部200と、設置部100を傾動可能に支持する装置本体300と、を備える。
設置部100は、上方に開口を有する有底の直方体型に構成された筐体110と、筐体内に支持されるとともに回転可能な4つの回転ローラ120と、1つの回転ローラ120に動力を与える第1駆動部130と、を備える。例えば、第1駆動部130は、パルスモータ等である。この設置部100は、装置本体300に対し支軸aを中心に傾動可能に支持されており、装置本体300に設置されたアーム320(図3参照)により傾動可能に構成されている。すなわち、アーム320の端部に筐体110の底部が接続されており、アーム320の伸縮動作により、設置部100が水平状態から略垂直状態になるまでの範囲で傾動可能に構成されている。また、回転ローラ120は、回動可能に軸支されたローラ形状であって、筐体110の底部に筐体110の長手方向にその軸方向をそろえて配置されている。そして、これら回転ローラ120の上部にシリンダSが当接して載せられ、回転ローラ120の一つは、第1駆動部130により回動し、その他の3つの回転ローラ120は、シリンダSの自重により回転可能とされている。
したがって、上記のような構成から、4つの回転ローラ120、及び第1駆動部130によりシリンダSの両端の外周が支持され回転されるので、シリンダSの径が、大小異なる場合であっても、第1駆動部130の回転数を変えることなく、常に一定の周速でシリンダSを回転させることが可能である。また、シリンダの両端の外周を支持するので、シリンダの絵柄の形成された部分に傷を付けることはない。
撮像部200は、筐体110に開閉可能に設けられた筐体110方向に開口を有する直方体型の蓋部210と、蓋部210の内面に取り付けられたシリンダSを照明する2つの照明部220と、蓋部210の上面内側に配置された上下方向に伸縮可能な第2駆動部230と、第2駆動部230の下方に取り付けられたシリンダSの画像を撮像するCCDカメラ240と、を備える。このCCDカメラ240は、CCDラインセンサーカメラであり、シリンダSの長手方向を一度にスキャンすることが可能である。また、第2駆動部230は、シリンダSに対して、上下方向に移動可能であり、例えば、パルスモータの駆動により移動可能に構成されている。ここで、CCDカメラ240、及び照明部220をシリンダSの下方に設ける構成とすれば、シリンダSの表面に付着した異物が、シリンダSの回転と共に、落下する可能性がある。したがって、図2に示すようにCCDカメラ240、及び照明部220は、シリンダSの上部である蓋部210の内面、すなわち異物が付着する可能性の低い、クリーンな箇所に配置されている。
装置本体300は、設置部100を支持する基台310と、設置部100を傾動させるアーム320(図3参照)と、本装置の駆動及び撮像を制御する制御部330(図4参照)と、撮像部200により得られた画像を合成する画像編集部340(図4参照)と、制御部330に制御命令を入力するキーボード等の入力部350と、制御情報及び画像情報を表示するCRT等の表示部360と、を備える。
次に、図3を参照して、このシリンダ撮像装置によるシリンダSの設置、撮像、及び取り外しの概要を説明する。まず、同図(a)において、基台310に対して略90度に筐体110を傾動させ、この状態において筐体110にシリンダSを設置する。次に、入力部350に入力に基づき、同図(b)及び(c)に示すように、筐体110を基台本体310に対して平行な状態に戻し、撮像部200を側方からスライドさせて、設置部100の上方に撮像部200を位置させて、第1駆動部130により回転ローラ120を介してシリンダSを回転させながら、シリンダSの撮像が行われる。撮像が終了すれば、同図(d),(e)に示されるように、同図(a),(b)と逆の制御が実行され、シリンダSの取り外しを行う。以上で、一本のシリンダSを設置、撮像及び取り外す工程は完了する。印刷画像が、多色刷りである場合は、シリンダSの数に応じて上記設置、撮像、及び取り外しを繰り返す。
次に、図4を参照して、シリンダ撮像装置の制御部330及び画像編集部340の構成について説明する。図4は、本発明の一実施形態に係るシリンダ撮像装置の機能ブロック図である。
まず、制御部330において、管理部331は、入力部350から検査の初期条件の情報が入力される。ここで初期条件としては、シリンダの長さ、シリンダの径、などである。駆動制御部332は、管理部331から出力された初期条件に基づき、第1駆動部130の駆動速度を決定したり、或いは、CCDカメラ240の撮像するタイミングを決定するタイミング信号を発信するタイミング信号発生部333と、を関連づけて駆動を制御したりする。すなわち、タイミング信号発生部333は、駆動制御部332への発信と同期して、駆動制御部332の他に、撮像制御部334にも信号を発信し、CCDカメラ240のキャプチャタイミングをシリンダSの回転と同期させる。また、駆動制御部332は、管理部331からの制御信号に基づき駆動可能であり、入力部350より入力されたシリンダSの径に合わせて第2駆動部230を駆動させ、シリンダSとCCDカメラ240との距離を一定に保つ。また、同様に、駆動制御部332は、管理部331からの制御信号に基づき、アーム320を駆動させ、筐体110を傾斜させる。
次に、画像編集部340において、二値化処理部341は、CCDカメラ240より撮像されたシリンダSの平面画像を二値化し、画像メモリ342に格納する。画像合成部343は、画像メモリ342に格納された各平面画像を読み出し、撮像されたシリンダSに載せるインクの色に対応する単色に画像のドットを配色し、配色した複数枚の単色シリンダ画像を重ね合わせる処理を実行する。なお、上記、二値化レベル、シリンダ画像に施す配色は、入力部350の入力に基づき実行される。
次に、図5及び図6を参照して、本発明の一実施形態に係るシリンダ撮像装置の撮像及び撮像された画像の編集について説明する。図5は、本発明の一実施形態に係るシリンダ撮像装置の撮像及び画像編集を示すフローチャートであり、図6は、その撮像及び画像編集を示す概要図である。
まず、上記図3(a)〜図3(c)に示すように、シリンダSを設置部100に設置し、その上から撮像部200を被せ、撮像可能な状態とする(S1)。上記S1の工程が完了すれば、図6(a)に示されるように第2駆動部230を駆動し、CCDカメラ240及び照明部220をシリンダSに対して上下方向(図6(a)の符号A1)の、例えば、CCDカメラ240の解像度が最も高くなる距離に移動させる(S2)。高さ調整の後、第1駆動部130により回転ローラ120を回転させると共に、シリンダSを回転させ(図6(a)の符号A2)、タイミング信号発生部333により、第1駆動部110の回転速度に関連付けて、撮像するタイミングを調整しつつ、CCDカメラ240によりシリンダSの表面を撮像する(S3)。撮像したシリンダSの表面画像は、二値化処理部341において、二値化され(S4)、二値化された画像はシリンダSに対応した単色を配色され、画像メモリ342に保存される(S5)。S1からS5までの工程が完了すれば、例えば、表示部360に表示される「次のシリンダを撮像するか否か?」の質問に対する選択枝「Yes」、「No」を入力部350により選択する(S6)。選択枝「Yes」を選択すれば(S6、Yes)、上記図3(d)及び図3(e)に示したように、シリンダSを取り出し、S1からS6の工程を繰り返し行う。
撮像された全ての画像に対してS4及びS5の画像処理が実行され、複数のシリンダSの単色画像データが画像メモリ342に格納される。そして、S6の工程において、選択枝「No」を選択すれば(S6、No)、図6(b)に示されるように、複数のシリンダSの単色画像データ410a乃至410dは、画像合成部343により重ねあわされ、例えば、CMYK TIFFの合成カラー画像データ420として、画像メモリ342に保存される(S7)。この合成カラー画像データ420は、表示部360に表示される。また、図6(c)に示されるように、画像合成部343から合成カラー画像データ420をプリンタ370へ出力し、紙媒体等として出力することも可能である。
以上、発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更、追加、置換等が可能である。例えば、第1駆動部130により駆動させる回転ローラ120は1つに限られず、2以上駆動させる構成であっても良い。また、回転ローラ120も4つに限られず、4つ以上であっても良い。
100…設置部、110…筐体、120…回転ローラ、130…第1駆動部、200…撮像部、210…蓋部、220…照明部、230…第2駆動部、240…CCDカメラ、300…装置本体、310…基台、320…アーム、330…制御部、331…管理部、332…駆動制御部、333…タイミング信号発生部、334…撮像制御部、340…画像編集部、341…二値化処理部、342…画像メモリ、343…画像合成部、350…入力部、360…表示部、370…プリンタ