JP2007068447A - 幹細胞の培養方法及び幹細胞 - Google Patents

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類 弓削
Hiromi Kawahara
裕美 河原
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輝之 梶梅
Koichi Osuge
康一 大菅
Takashi Ueno
隆司 上野
Masaru Uemura
勝 植村
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Abstract

【課題】ドナーから採取した幹細胞をより高い倍率、且つ安全に培養する幹細胞の具体的な培養方法及びそれによって培養された幹細胞を提供する。
【解決手段】ガス透過性材料によって少なくとも一部が形成されている培養容器1の密閉空間13に、幹細胞を含む液体培地を実質的に満たし、前記培養容器を2軸回転可能な培養装置2に載置して、培養容器1に重力が等方的に印加されるように各回転軸23a、25aの周りの回転を制御しながら幹細胞を培養する。
【選択図】図2

Description

この発明は、幹細胞の培養方法に関し、特に、幹細胞を未分化の状態で大量に増殖することのできる幹細胞の培養方法及びこれにより培養された幹細胞に関する。
近年、様々な細胞に分化できる幹細胞を利用した再生医療が注目されている。例えば、白血病、再生不良性貧血、先天性免疫不全症などの血液疾患の治療においては、骨髄移植は化学療法と並んで重要な位置を占めている。
再生医療は、未分化な幹細胞が持つ分化能力を利用するため、治療に当っては多量の幹細胞を必要とするが、各種組織に含まれる幹細胞はとても少ない。例えば、白血病などの治療で行われる骨髄移植では、造血幹細胞が重要な役割を果たすが、その数は全骨髄細胞の1/25,000である。そのため、骨髄移植に当っては、ドナーから大量の骨髄(例えば、患者の体重が60kgならば600ml〜900ml)を採取せねばならず、これはドナーに多大な負担をかけ、ドナー登録者が増えない原因の一つとなっている。
このような理由から、未分化の幹細胞を体外で大量に増殖して、患者に移植することについて関心が高まっており、例えば、ドナーから取り出した幹細胞を細胞増殖因子が添加された培地により培養し、培養した幹細胞を患者に移植することが研究されている(非特許文献1及び特許文献1を参照。)。ただし、この方法には、増殖を開始して3〜4日で幹細胞が分化して移植に利用できなくなる、長期間培養しても培養開始時の4倍までしか細胞が増殖しないため移植する骨髄の量をあまり減らせない、添加した増殖因子により幹細胞が癌化する可能性がある、などの深刻な問題点があった。
一方、本願の発明者らは、細胞に加わる重力が細胞の分化に与える影響について、具体的には、重力分散型培養装置による微小重力下で幹細胞を培養することが、幹細胞の増殖や分化に与える影響について研究していた(特許文献2を参照。)。しかし、この重力分散型培養装置を利用した培養方法の研究においては、幹細胞を未分化のまま増殖できることを概念的に予測できてはいたものの、幹細胞を未分化状態で増殖できることを実証できておらず、また、培養条件の細部についても検討していなかった。
特開2004−222502号公報 特開2003−9852号公報 T.Ueda et al., "Expansion of human NOD/SCID-repopulating cells by stem cell factor, Flk2/Flt3 ligand, thrombopoietin, IL-6, and soluble IL-6 receptor", The journal of clinical investigation,p.1013-1021,Vol.105(2000)
この発明は、ドナーから採取した幹細胞をより高い倍率、且つ安全に培養するより具体的な培養方法及びそれによって培養された幹細胞を提供することを課題とする。
この発明は、幹細胞を培養する際に重力が与える影響に加えて、培養容器、液体培地の容量が与える影響を考慮して幹細胞を培養することが特徴である。
この発明の培養方法を利用すれば、ドナーから採取する幹細胞の量がより少なくて済むため、ドナーにかかる負担を減らすことができるとともに、レシピエントはより安全な細胞移植による再生医療を受けることができるようになる。
以下、図面に基づいて、この発明の一実施の形態について説明するが、この実施の形態によってこの発明の特許請求の範囲は如何なる意味でも制限されるものではない。
この発明の培養方法は、ガス透過性材料によって少なくとも一部が形成されている培養容器に、幹細胞を含む液体培地を実質的に満たし、前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)可能な培養装置に載置して、培養容器に重力が等方的に印加されるように各回転軸の回転を制御しながら幹細胞を培養することが特徴である。そこで、以下にこの発明で利用する培養容器、幹細胞、液体培地、及び培養方法について分説する。
図1は、培養容器1の外観斜視図であり、この図に示すように、培養容器1は、扁平な平板状に形成されたフレーム11と、該フレーム11の中央部に形成された窓部11aに貼られたガス透過膜12,12とから構成されている。そして、2枚のガス透過膜12、12は所定の間隔を介して対峙しており、このガス透過膜12、12の外周はフレーム11に固着しているため、ガス透過膜12、12の間には細胞培養エリアとして利用可能な密閉空間13が形成される。
また、フレーム11には、例えば、一側面に外部と密閉空間13とを連通するアクセスポート11b、11bが設けられている。このアクセスポート11bは、弾性を有する合成ゴムによって構成されており、通常は外部と密閉空間13とが連通しないよう自己シール性を有している。
さらに、ガス透過膜12、12は、厚さ100μm程度のポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1、ポリイソプレン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体及びポリスチレン等のフィルムにより構成されており、この膜は液体培地などの液体を通さずに、二酸化炭素(CO2)や酸素(O2)等の気体を自在に通すことができるものである。従って、密閉空間13に培地を注入しても当該培地及び液体培地が漏出することはない。
なお、この発明で使用する培養容器は、前記培養容器1に限定されるものではなく、ガス透過性材料によって少なくとも一部が形成されていれば、特に限定することなく使用することができる。例えば、培養容器のガス透過性材料でない部分の素材としては、ガラス、合成樹脂、金属などが挙げられ、培養容器の全体形状としては、三角柱、立方体、直方体などの多角柱、三角錐、四角錐などの多角錘、ひょうたんのような任意の形状、球形、半球形、円形、楕円形、半円形などが挙げられ、培養容器1のようにガス透過膜が培養容器の側面を被覆するのではなく、ガス透過性樹脂によって形成され、フレームがない袋状のもの(特表平10−507363号公報を参照。)であってもよい。
この発明の培養方法により培養する幹細胞としては、造血幹細胞をはじめ、間葉系幹細胞、血管幹細胞、神経幹細胞など他種の細胞に分化する能力を備えた未分化の細胞であれば特に限定することなく利用できるが、白血病などの治療方法として既に確立している骨髄移植に適用可能であることから、造血幹細胞が好ましい。
ここで、造血幹細胞とは、あらゆる種類の血球細胞に分化する能力及び造血再構築能とを備えた未分化な細胞であって、主に骨髄、臍帯血、脾臓及び肝臓に存在し、微量ながら末梢血中にも存在する細胞である。より具体的には、マウス由来の細胞であれば、例えば、CD34、c-kit、Sca-1などの未分化マーカーをその細胞表面に発現している細胞のことであり、ヒト由来の細胞であれば、例えば、SH-2(CD73)、SH-3(CD105)、STRO-1,CD13、CD45など未分化マーカーをその細胞表面に発現している細胞のことである。
前記幹細胞を培養する液体培地としては、通常、細胞培養に使用されるようなものであれば特に限定することなく使用することができ、例えば、α-MEM培地、RPMI-1640培地、MEM基本培地、などを挙げることができる。
なお、これらの液体培地は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、塩素、アミノ酸、ビタミン、ホルモン、抗生物質、脂肪酸、糖などの化学成分に加えて、細胞増殖効果を高めるため、血清や細胞増殖因子(サイトカイン)のような生体成分を含有することもできる。細胞増殖因子としては、具体的にはFlt-3-ligand (Flt3L)、thrombopoietin (TPO)、幹細胞因子 (SCF)、エリスロポエチン(EPO)、可溶性−インターロイキン−6受容体(sIL-6R)、インターロイキン−6(IL-6)などを挙げることができ、その濃度は通常の細胞培養で使用される濃度である。ただし、血清や細胞増殖因子などの生体成分を加えることにより、BSE等の感染や細胞が癌化する可能性があるため、できればこれら生体成分は添加しないほうがよい。
幹細胞の培養は、前記幹細胞を含む液体培地を培養容器に実質的に満たして行う。ここで、培養容器に実質的に満たすとは、例えば、培養容器1の密閉空間13に空気層を含まないように液体培地を充填する、という意味である。そして、このように密閉空間13から空気層をなくすことにより、培養容器1が回転しても幹細胞と空気とは直接接触せず、幹細胞に空気接触による剪断ストレスが生じないため、幹細胞は増殖しやすくなる。
液体培地により培養容器を実質的に満たす方法としては、例えば、次のような方法があげられる。まず、幹細胞を含む液体培地を針付シリンジに入れ、針付シリンジの針をアクセスポート11bに刺し、シリンジの内容物を密閉空間13に注入する。次に、アクセスポート11bに針を突き刺したまま、培養容器1を180°回転させ、シリンジで培養容器中の空気を吸引して針を抜き取る。そしてこれらの動作を複数回繰り返して空気層の大部分を除去する。そのままアクセスポートを上に向け、培養容器の底面を軽く叩くなどの振動を与え、浮き上がってきた気泡をアクセスポートよりシリンジを使って取り除く。培養容器周辺部に細かい気泡が残り易いが、何度が繰り返すことにより完全に気泡を除去する。このとき気泡とともに吸い上げた内容物は、培養容器内に再び気泡が入らないように注意しながら、シリンジから培養容器へ注入しなおす。なお、培養液を培養容器容量の5〜10%増で注入し、ガス透過膜を圧迫して気泡をアクセスポートに集め、電動アスピレーターにて気泡を吸引することによっても気泡を除去することもできる。
このように幹細胞を含む培養液を満たした培養容器1は、図2に示す重力分散型培養装置2により、2軸回転しながら培養する。ここで、重力分散型培養装置2は、培養容器1を収容する容器収納部21、台座22、外側モーター23、外側フレーム24、内側モーター25、及び内側フレーム26から構成されている。
台座22の基部22aは脚22b、22cを備えており、脚22b、22cの先端に取り付けられた外側モーター23によって、外側フレーム24は回転軸23aの回りに回転することができる。また、外側フレーム24の中央部には内側モーター25が設けられており、この内側モーター25には内側フレーム26が接続され、回転軸25aの回りを回転する。なお、回転軸23aは、回転軸25aと大体直交している。
容器収納部21は、内側フレーム26に接続されており、回転軸23aと回転軸25aとの直交点の近傍にある。そのため、容器収納部21は内側フレーム26と一緒に回転し、外側フレーム24及び内側フレーム26の両方が回転すれば、容器収納部21は2軸回転する。
ここで、外側モーター23及び内側モーター25の回転方向・速度は、培養容器1が充分に長時間(例えば、1日間から2週間程度)回転したときに全方向から均等に重力が印加されるように制御することにより、培養容器1中の幹細胞にかかる重力は3次元的に分散し、幹細胞を擬似無重力下(10-3G)で培養できる。
具体的には、軸23aに垂直な任意の一の方向と外側フレーム24がなす角をφとし、軸25aに垂直な任意の一の方向と内側フレーム26がなす角をθとしたとき、φとθとが下記の微分方程式(1)を満足するように外側フレーム24及び内側フレーム26の回転方向・速度などを制御すれば、培養容器1に重力が等方的に印加される。ここで、φとθの初期値は任意であり、前記数式1のAとBとは、A:B=n:mとなる最小のn、mに対して2m/nが整数にならないように選択しなければならない。
Figure 2007068447
なお、この理由については、本件出願人による特許出願の特開2003−70464号公報、及び特公平7−89798号公報に記載されている。
培養容器1を収容した重力分散型培養装置2を設置する、温度、湿度、光などの物理的環境条件、酸素濃度、炭酸ガス濃度、pH、酸化還元電位などの化学的環境条件としては幹細胞の増殖を阻害するものでなければよい。具体的には、重力分散型培養装置2をCO2インキュベーターの内部に設置し、以下の環境条件で培養する。
まず、温度については30℃〜40℃であり、好ましくは37℃である。また、湿度については飽和湿度の65〜98%である。光としては暗室ほどの暗い条件であってもよいし、晴天時の外の明るさほどに明るくてもよい。酸素濃度としては、培養系が気相中の酸素濃度が10%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度から気相中の酸素濃度が30%の気相と接触している状態での酸素濃度であればよく、好ましくは気相中の酸素濃度が20%の気相と接触している状態での溶存酸素濃度の気相と接触している状態での酸素濃度である。培養系のpHとしてはpH6.0〜pH8.0であり、好ましくは生理条件と同等のpHである。また、pHをコントロールする為には二酸化炭素を用いてもよいし、緩衝液を使用してもよい。炭酸ガスの濃度としては具体的には培養系が5%の気相と接触している状態での溶存炭酸ガス濃度が好ましい。
前記のようにして得られた幹細胞は、骨髄移植などの血液疾患や臓器の再生などに、例えば点滴により、患者に移植される。なお、移植に先立って、組織適合性を検査せねばならないことは、従来からある幹細胞と同様である。
以下、実施例を挙げてこの発明について具体的に説明する。ただし、これらの実施例はこの発明を具体的に説明するためのものであり、この発明の技術的範囲を制限するものではない。
(重力が細胞分化に与える影響)
重力が細胞の分化に与える影響を調べるため、マウスの骨髄細胞を模擬微小重力下及び通常の重力下で培養し、骨髄細胞及び未分化幹細胞である造血幹細胞の細胞数の変化を調べた。
(1)骨髄細胞の採取
マウス(日本クレア,BALB/cBy,6週令以上)を頚椎脱臼させ70%アルコール液中に全身を浸して消毒したのち、大腿骨と脛骨を無菌的に取り出し、骨周囲の筋組織をできるだけ除去して両側骨端部を切除し、リン酸緩衝液を満たしたシャーレに入れた。リン酸緩衝液を吸引しておいた針付きのシリンジで骨髄組織を押し流して骨髄細胞浮遊液を回収した。回収した骨髄細胞浮遊液を軽く遠心(400rpm,4min)して余分な組織を沈澱させ、上清を再び遠心(1,50Orpm,5min)して骨髄細胞を採取した。この骨髄細胞を20 ng/ml human Flt-3-ligand (hFlt3L;Peprotech,USA)及び50 ng/ml human thrombopoietin (hTPO ; STEMCELL TECHNOLOGIS社,CANADA)の2種類のサイトカインを添加したSTEMSPANTMH3000(STEMCELL TECHNOLOGIS社,CANADA)に5×105cells/mlの濃度で懸濁した。
(2)骨髄細胞の培養
(1)で得た細胞懸濁液を、ガス透過膜を有する培養容器OptiCell(登録商標,
Biocrystal社製, USA)にその容量(10ml)の目一杯入れて、これを実質的に満たした。そして、同様の方法により、細胞懸濁液が入った培養容器を合計20個作製し、そのうちの10個を試験群、残りの10個を対照群とした。
試験群の培養容器は、三次元クリノスタット(三菱重工製)の容器収納部に収納し、この三次元クリノスタットを37℃、炭酸ガス濃度5%のCO2インキュベーターに収容して、模擬微小重力下で培養した。また、対照群の培養容器は、同じ環境条件のCO2インキュベーター内に静置して培養した。
(3)抗体による染色とFACSによる細胞数の計測
まず、リン酸緩衝液にallophycocyanin(APC)で標識した抗c-kit抗体(Pharmigen社,USA) 及びphycoerythrin(PE)で標識した抗Sca-1抗体(Pharmigen社,USA)を添加して抗体染色液を作製した。
次に、試験群及び対照群のそれぞれ10個の培養容器から、培養液を回収して、遠心分離機により細胞を分離し、リン酸緩衝液に再懸濁したのち、前記抗体染色液を加え、氷上で20分間インキュベートした。20分後、リン酸緩衝液で細胞を1回洗浄したのち、リン酸緩衝液に細胞を再懸濁し、氷上で20分間インキュベートした。最後にリン酸緩衝液で洗浄し、細胞106個につき1mlのリン酸緩衝液に溶解し細胞数の計測に使用した。
このようにして抗体染色した細胞の数をFACS(FACSCalibur, Becton Dickinson, USA)を使用して計測した。なお、FACSの使用方法は添付のマニュアルにしたがって行った。その結果を、c-kitとSca-1の発現パターンである図3と、それをグラフ化した図4により示す。なお、細胞数の計測は、培養開始直後、3日後、7日後の計3回行った。
図4(a)に示すように骨髄細胞全体では対照群(●で示す。)の方がより増殖しているものの、図4(b)に示すように造血幹細胞については試験群(○で示す。)の方が圧倒的に増えている。なお、7日間の培養により、対照群(●で示す。)と試験群(○で示す。)の増殖率を比較すると、骨髄細胞全体は約5倍増殖し、その間に造血幹細胞は約50倍増殖した。そして、これらの結果から、三次元クリノスタットによる培養により、造血幹細胞を選択的に増殖できることを確認した。
(コロニー形成能の検証)
通常のコロニーアッセイでコロニーを形成した細胞が、もう一度コロニーを形成するか否かを、セカンダリーコロニーアッセイにより培養細胞中に含まれる未分化幹細胞の数について計測することよって検証した。セカンダリーコロニーアッセイは具体的には以下のようにして行った。
(1)ファーストコロニーアッセイ
まず、リン酸緩衝液に懸濁した骨髄細胞(マウスより採取したもの及び培養したもの)の細胞数をカウントし、105〜106 cells / mlになるようにいくつか濃度をふって、リン酸緩衝液で希釈した。そして、この細胞懸濁液をコロニーアッセイ用のメチルセルロース培地(METHOCULTTMGFM3434,STEMCELL TECHNOLOGIS社,CANADA)に1/10量加え、よく振って混和したのち(104〜105 cells / ml)、96穴培養皿に100μlずつ分注した(103〜104 cells / well)。分注した骨髄細胞を1週間培養し、各wellにできたコロニーの数を数えた。その結果を図5(a)に示す。なお、試験群及び対照群の培養は実施例1と同様にして行った。
(2)セカンダリーコロニーアッセイ
コロニーができたwellにリン酸緩衝液を加えて混和し、培地ごとコロニーを回収した。遠心して上清を除いて、得られた細胞をリン酸緩衝液に懸濁したのち、細胞数を数えた。この細胞をファーストコロニーアッセイと同様に96穴培養皿にて1週間培養し、再度コロニーを形成するかを調べた(セカンダリーコロニーアッセイ)。その結果を図5(b)に示す。
その結果、図5に示すように、ファーストコロニーアッセイ(図5(a))では、対照群(●で示す。)の方が試験群(○で示す。)よりも良かったものの、セカンダリーコロニーアッセイ(図5(b))では、対照群(●で示す。)では培養時間が経過するほどコロニー形成能力が低下したが、試験群(○で示す。)ではコロニー形成能力が経時的に向上し、対照群(●で示す。)よりも明らかに優れていた。そして、これらの結果から、三次元クリノスタットによる培養によって、セカンダリーコロニーの形成能力は低下せず、むしろ向上することを確認した。
(気泡の影響)
培養容器を液体培地で満たした場合と空気層が存在する場合とを比較することにより、培養容器中の気泡の有無が骨髄細胞及び造血幹細胞の増殖に与える影響を調べた。具体的には、まず、実施例1と同様の方法により得られた細胞懸濁液で培養容器を満たした試験群(○で示す。)と、同じ細胞懸濁液を少量の空気層が存在するように培養容器に入れた対照群(●で示す。)とを作成した。つぎに、実施例1と同様の方法により、これら試験群(○で示す。)と対照群(●で示す。)とを三次元クリノスタットを使用する模擬微小重力環境下で培養し、それぞれの細胞数を計測した。その結果を図6に示す。
この図からも明らかなように、培養骨髄細胞及び造血幹細胞ともに気泡無しの試験群(○で示す。)が気泡有りの対照群(●で示す。)に比べて、培養3日、7日共に細胞数が多く、細胞増殖がより活発であった。
実施例の結果から、この発明にかかる培養方法によって、少ない骨髄細胞から大量に造血幹細胞を選択的に増殖させることができることを確認した。そのため、骨髄移植に必要なドナーにかかる負担を減らすことが期待できる。また、前記実施例においては細胞増殖因子を培地に加えたが、細胞の増殖率を考慮すれば、培地に細胞増殖因子を入れなくても幹細胞が増殖する可能性があり、その場合、再生医療をより安全に行うことが期待できる。
培養容器の外観斜視図である。 重力分散型培養装置の外観斜視図である。 FACSにより計測したc-kitとSca-1の発現パターンを示す図である。 図3の結果を計測日と細胞数の関係を示すグラフである。 コロニーアッセイの結果を示すグラフである。 気泡の有無が骨髄細胞及び造血幹細胞の増殖に与える影響を示す図である。
符号の説明
1 培養容器
11 フレーム
12 ガス透過膜
2 重力分散型培養装置
21 容器収納部
22 台座
23 外側モーター
24 外側フレーム
25 内側モーター
26 内側フレーム

Claims (4)

  1. ガス透過性材料によって少なくとも一部が形成されている培養容器に、幹細胞を含む液体培地を実質的に満たし、前記培養容器をn軸回転(nは2以上の整数)可能な培養装置に載置して、培養容器に重力が等方的に印加されるように各回転軸の回転を制御しながら幹細胞を培養する幹細胞の培養方法。
  2. 幹細胞が、造血幹細胞である請求項1に記載の幹細胞の培養方法。
  3. ガス透過性材料によって少なくとも一部が形成されている培養容器が、平板形状である請求項1又は請求項2に記載の幹細胞の培養方法。
  4. 請求項1から請求項3の何れかに記載の幹細胞の培養方法によって培養された幹細胞。
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