JP2007063526A - 高分子分散体およびその製造方法 - Google Patents

高分子分散体およびその製造方法 Download PDF

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真史 須藤
Daisuke Kawakami
大輔 川上
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孝之 今岡
Michinori Higuchi
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Abstract

【課題】
耐熱高分子体成形品を得るのに好適な耐熱高分子体の高分子分散体おとびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】
窒素雰囲気下でのTG−DTAによる3重量減少温度が350℃以上でかつGPC−MALLS測定時の分子の慣性半径R(nm)と分子量M(g/mol)の関係を線形近似式
log10(R)=log10(M)*A+B (A、Bは定数)
にあてはめた場合にA≦0.4を満たす高分子分散体、およびその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は耐熱高分子体の高分子分散体に関するものである。更に詳しくは微細形状を有する耐熱高分子体成形品を得るのに好適な耐熱高分子体の高分子分散体および製造方法に関する。
高分子の成形方法として、溶融成形法、湿式成形法が広く用いられている。溶融成形法は最も製造効率が良く、品質が安定した安価な製品を供給するのに適している。そのため、溶融製糸、溶融製膜、射出成形などあらゆる形状の製品を大量生産する手段として全世界で普及している。
ところが、近年では安価でありふれた性能の製品よりも、高性能の素材が強く求められてきており、特に高耐熱、高熱寸法安定性、高強度などの基本特性で高性能を有する製品の市場ニーズがますます高まってきている。例えば、微細にパターン化された回路基板部材が変形を起こすと電子機器は正常な作動を行うことができなくなるため、熱や水分で変形を起こさないような素材が求められる。また、航空機、自動車をはじめ携帯電話やパソコンなどにもより一層の軽量化が求められ、信頼性が高い力学的特性を備えた材料が求められている。このような時代背景の中、熱溶融素材を原料として使用せざるをえず、かつ一般に高強度材料を得にくい溶融成形法よりも、高性能の素材が得やすい湿式成形法に注目が集まっている。
湿式成形法の代表的なものの一つは溶液成形法である。溶液成形法の前提となるのは、素材を適切な溶媒に溶解することである。しかし、一般に高耐熱の高分子は分子構造が剛直であるため、溶媒に溶解することは容易なことではない。例えばアラミドは高分子の分子量を低下させた上で濃硫酸に溶解させて成形する(非特許文献1)。腐食性の高い濃硫酸の工業的取扱いは高度な生産技術と安全性の確保が必要となり、場合によっては作業者に重大な傷害を与える事故を起こす恐れがある。このようなハンドリング性を改善するために、高分子鎖の中にフレキシブルな成分を導入して取扱いがし易い有機溶媒を採用する方法もある(特許文献1)。しかし、かかるフレキシブル成分の導入を行う場合、ハンドリング性と製品の性能はトレードオフの関係となり、材料の熱・力学的特性が犠牲になる。
発明者は、炭素材料の原料となる耐炎ポリマーの溶液に関する基本概念を、先に提案している(特願2004−044074号、特願2004−265269号)。すなわち、耐炎ポリマーを適切な溶媒に溶解した溶液を湿式プロセスによって成形し、これを焼成することで、高耐熱・高強度の炭素繊維やフィルムを得るというものである。ところが、このような耐炎ポリマーの溶液は一般に不安定であり、安定化させる方法は確立できていないのが実情であった。
湿式成形法のもう一つの代表的方法はコロイド成形法であり、コンクリートやゼオライトの成形を例として挙げることができる。この場合は、比較的大型の三次元耐熱部材の成形加工法として普及しているが、繊維、フィルム、微細三次元加工品に適用された例は限られている(非特許文献2)。これは、一般にコロイドの粒子径が大きかったり、粒径分散が大きいため、細い、薄い、微細な製品への加工に限界があるからである。すなわち、コロイド粒子の半径より細い繊維や薄いフィルムを作成することはできないし、フォトリソグラフィーで作られるような微細凹凸を実現することもできない。最近ではナノサイズの粒子が製造され、それを分散させる技術も報告されているが(非特許文献3)、ナノ粒子を作った後に分散媒に分散してもすでに二次的凝集が起こっており、安定な微細コロイド状態を保つことは容易なことではない。また、高分子ナノ粒子を安定に分散した系を成形加工する方法は、未だ開示されていない。
発明者は、炭素材料の原料として耐炎ポリマーの溶液を用いることを提案した(特願2004−044074号、特願2004−265269号)。しかし、かかる溶液は一般に不安定であり、それを安定化させる方法は確立できていない。発明者らは、このような耐炎ポリマーの溶液を詳細に分析した結果、この課題を克服するための新たな重要概念に到達した。すなわち、耐炎ポリマーのうち安定な液体として存在しうるものは、それが微細な粒子として分散して存在していることを発見し、かかる発見に基づき、さらに鋭意検討を加えた結果、本発明に到達したのである。
特開平09−031218号公報 本宮達也、高寺政行、成瀬信子、原一正、鞠谷雄士、高橋洋、浜田州博、峯村勲弘著「繊維の百科事典」、丸善、2002年3月 川口春馬著、「ナノ粒子・マイクロ粒子の最先端技術」、シーエムシー出版、2004年11月 作花済夫著、「ゾル‐ゲル法の科学―機能性ガラスおよびセラミックスの低温合成」、アグネ承風社、1988年7月 五十野善信著、「高分子の分子量」、共立出版、1992年10月 「ネイチャー(Nature)」、1998年2月19日 柿本雅明、江坂 明監修、「耐熱性高分子電子材料」、技術情報センター、2003年7月 奥田謙介著、「炭素繊維と複合材料 高分子新素材One Point」, 高分子学会、1988年8月
本発明の目的はかかる従来の湿式成形法の困難を克服するための新規な高分子分散体とその製造方法を提供することである。すなわち、一般に安定溶解あるいは安定分散することが困難な耐熱高分子体からなる高分子分散体と、その製造方法を提供することである。さらに、かかる高分子分散体を用いた成形品および焼成・焼結品の製造方法を提供することにある。
本発明の高分子分散体は、前記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、耐熱高分子体が分散媒に分散している高分子分散体であって、前記耐熱高分子体は、窒素雰囲気下での示差熱・熱重量測定による3重量%減少温度が350℃以上であり、高分子分散体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー−多角度光散乱光度計により測定して得られる分子の慣性半径R(nm)と分子量M(g/mol)の関係を、次の線形近似式にあてはめた場合に、A≦0.4となることを特徴とする高分子分散体である。
log10(R)=A・log10(M)+B (A、Bは定数)
また、本発明の高分子分散体の製造方法は、前記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー−多角度光散乱光度計により測定して得られる分子の慣性半径R(nm)、分子量M(g/mol)の関係を、次の線形近似式にあてはめた場合に、0.4≦C≦0.7となる前駆体高分子を、その溶液中で化学反応させて請求項1ないし4のいずれかに記載の高分子分散体を得ることを特徴とする高分子分散体の製造方法である。
log10(R)=C・log10(M)+D (C、Dは定数)
また、本発明の耐熱高分子体成形品の製造方法は、前記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、前記高分子分散体を賦型した後、前記高分子分散体から分散媒を除去することを特徴とする耐熱高分子体成形品の製造方法である。
また、本発明の焼成・焼結品の製造方法は、前記課題を解決するために、次の構成を有する。すなわち、前記方法で得た成形品を熱処理することを特徴とする焼成・焼結品の製造方法である。
本発明は、耐熱高分子体を液体に均質に存在せしめる際に、溶媒に「溶解」するのではなく、たとえばナノサイズ粒子のような微小な粒子として分散媒に「分散」するという新規な発想によって始めて到達したものである。
また、耐熱高分子体の分散状態はその分散体そのものを用いる限りは分析することはできず、微粒子となった耐熱高分子体間の距離を引き離すために希釈するという着想によって初めて可能となったものである。
さらに、この概念を応用して先願発明よりも格段に安定な耐炎ポリマーとその製造方法を見出した。すなわち、耐炎ポリマーをさらに安定に均一分散体とすることに成功し、取り扱いを容易にすることによって成形加工性と最終製品の性能を高めた。
また、本発明は、該高分子分散体を賦型した後、分散媒を除去することを特徴とする耐熱高分子体成形品の製造方法により達成される。さらに、該耐熱高分子体成形品を熱処理することで得られる、焼成・焼結品の製造方法により達成される。これらの方法により、従来の方法では到達不可能であった微細形状を有する高耐熱素材を得ることが可能となった。
本発明の高分子分散体の製造方法を用いて高分子体の粒径を特定範囲に制御することによって、安定な高分子分散体を製造することが可能になる。また、該高分子分散体を用いることによって、これまで実現不可能であった微細な形状までコントロールされた、高耐熱の高分子体成形品やその焼成・焼結品を得ることができる。
本発明の耐熱高分子体は、窒素雰囲気下でのTG−DTAによる3重量%減少温度が350℃以上、好ましくは400℃以上である必要がある。それにより、賦型・熱処理後の最終製品が優れた耐熱安定性を有することができる。
耐熱高分子体は上記の耐熱性能を満たせば特に制限はなく、有機材料でも無機材料でもよい。主鎖を構成する元素は炭素、酸素、窒素、硫黄、リン、ケイ素の他、チタン、アルミ、亜鉛、銅などの金属イオンでも構わず、これらに制限されない。また耐熱高分子体はフッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン化合物を構成元素として含んでいてもよい。耐熱高分子体は1種類のモノマーから構成されてもよいし、2つまたはそれ以上のモノマーから構成された共重合体でもよい。また、複数の高分子体の混合体であっても構わない。具体的な耐熱高分子体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリベンズイミダゾール、ポリケトン、ポリオレフィン、ポリビニル、ポリエーテル、ポリチオエーテル、ポリアセン、ポリサルフォン、耐炎ポリマーなどの有機系高分子、シリコーンやガラスなどの珪素系高分子、デオキシリボ核酸(DNA)、などのリン酸エステルまたはリン酸系高分子、それらの共重合体、ブレンドなどが挙げられる。
耐熱高分子体を構成する高分子鎖の形態としては、直鎖状、分岐状、櫛形、樹状、架橋型、ラダー型などが挙げられ、共重合の形態としては、ランダム、交互、ブロックなどが挙げられるが、特に制限はない。また、その共重合比率や共重合モノマー数、分子量についても特に制限はないが、後述する成形品の熱的・力学的特性を考慮する観点からは、重量平均分子量が1000以上、好ましくは3000以上であることが好ましい。重量平均分子量の上限としては、分散体の安定性を考慮すると、10000000以下であることが好ましく、1000000以下であると更に好ましい。
本発明の高分子分散体には、力学特性、電気特性、光学特性、化学的安定性などの目的のために加えられる添加剤を含んでいても構わない。添加剤の例としては、シリカやアルミナ、チタニアに代表される無機化合物、銅、銀に代表される金属、ラウリル硫酸塩などの界面活性剤、フェノール系、リン系、硫黄系などの酸化防止剤、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、シアノアクリレート系などの紫外線吸収剤、その他帯電防止剤、難燃剤、滑剤、結晶核剤、可塑剤、顔料、染料などを挙げることができる。さらに、リン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸などの無機酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸などの有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、アンモニアなどの無機系塩基、モノエチルアミン、ジエチルアミンなどの有機系塩基のようなpH調整のための化合物なども挙げることができる。また、添加剤の形状も粒子、繊維、板状物、液体、ペーストなど特に限定されない。なお、これらの化合物は単独で用いられることもあるが、複数の化合物が組み合わされて用いられても構わない。
上記のように、本発明で用いる耐熱高分子体としては、前記した耐熱性能を満たせば特に制限はないが、中でも耐炎ポリマーであることが好ましい。耐炎ポリマーは有機ポリマーの中でも極めて高い熱分解温度を有するものの一つであり、適切な熱処理によって更に耐熱性の高い炭素材料を作ることができる。ここでいう耐炎ポリマーとは、通常耐炎繊維や安定化繊維と称される繊維に存在する構造と類似するものであり、ポリアクリロニトリル(以下、PAN)系ポリマーを前駆体として空気中で加熱したもの、石油や石炭等由来のピッチ原料を酸化させたもの、フェノール樹脂を前駆体とするもの、ポリオキサジアゾールを前駆体とするものなどが知られているが、成形が容易なことからPANを前駆体とする耐炎ポリマーが望ましい。なお、本発明において耐炎とは、着火した場合、炎を上げて燃焼を継続しにくい性質を示すものであり、難燃も含むものである。
PANを前駆体とする場合、その構造は完全に解明されていないが、ナフチジン環やアクリドン環が主構造であると考えられている。耐炎ポリマーとしては、その溶液を核磁気共鳴装置(NMR)によって13−Cを測定し、150〜200ppmにシグナルを有するものであることが好ましく、また、赤外分光測定(IR)によって1600cm−1付近に最大の吸収ピークを有するものであることが好ましい。両測定法で当該範囲にピークを有する場合、特に高い耐熱性を有する耐炎ポリマーということができる。
本発明において、かかる耐熱高分子体は分散媒に安定かつ均一に分散して、高分子分散体を形成している。分散媒は耐熱高分子体の種類によって適宜選ばれるが、極性有機溶媒であることが好ましい。分散媒が極性有機溶媒であると、後述するように、高分子分散体を賦型した後に水系凝固液によって極性有機溶媒を抽出することができ、取扱いが易しいばかりか、耐熱高分子体との親和性が良好で、耐熱高分子体を安定的に分散することができる。
本発明で用いる極性有機溶媒は、室温における比誘電率が2以上であることが好ましく、10以上であると更に好ましい。この範囲であると耐熱高分子体をより安定的に分散することが可能で、かつ凝固過程での分散媒抽出が容易で、取扱いが易しい。比誘電率が小さすぎると、凝固過程で水系凝固浴を用いる場合に抽出が難しくなる。比誘電率の上限は特にないが、あまりに大きすぎると、耐熱高分子体を安定的に分散することが難しくなることもあるので、80以下であるものを用いるのが好ましい。
耐熱高分子体が耐炎ポリマーである場合には、極性有機溶媒は、ジメチルスルホキシド(DMSO)、Nメチル2ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジメチルアセトアミド(DMAc)、スルホラン、ジメチルイミダゾリジオン、エチレングリコール、ジエチレングリコールであることが好ましく、DMSO、NMP、DMFまたはDMAcがより好ましく、この中でもDMSO、DMFが更に好ましい。これらの溶媒は耐炎ポリマーの分散を安定化する能力が高く、かつ安価で安全性も高いばかりか、沸点も十分に高く、耐熱ポリマーをその前駆体の溶液中での熱反応により得る場合には安定な反応溶媒として機能する。また、耐熱高分子体の種類によっては、メタノール、エタノール、プロパノール、ジオキサンなどの極性有機溶媒も用いることができる。これらの溶媒は1種だけ用いてもよいし2種以上混合して用いてもよい。
本発明の高分子体は分散媒に分散しているが、安定かつ均一に分散するためには以下の分散状態にある必要がある。すなわち、高分子体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー−多角度光散乱光度計(以下、GPC−MALLSと称す)を測定して得られる分子の慣性半径R(nm)と分子量M(g/mol)の関係を、次の線形近似式にあてはめた場合にA≦0.4を満たすことを必要とする。
log10(R)=A・log10(M)+B (A、Bは定数)
Aが0.4以下であることによって、本発明の耐熱高分子体は安定に分散媒に分散することができる。Aが小さな値をとるということは、耐熱高分子体が分散媒の中で高密度の球状に丸まって分散していることを意味している。このように耐熱高分子体が高密度の球状に圧縮されて相互の距離をとって分散することによって、均一性が高く安定な分散体を達成することができると考えられる。良溶媒中の鎖状高分子では、Aは通常0.5以上の値を示し、膨潤した糸毬状の形態をとっていることが知られている(非特許文献4参照)。溶媒や分散体に溶解度が低い高分子体が分散媒中で膨潤していると、お互いの糸毬同士が接触する機会が増える。すると高分子間の強い分子間相互作用の影響で物理または化学的架橋が形成されて分散体が不安定となり、不均一な分散体となったり、場合によってはゲル化を起こすことがある。従ってAは小さい方が好ましく、0.3以下であることが更に好ましい。
高分子分散体における耐熱高分子体の濃度は、2重量%以上50重量%以下、好ましくは5重量%以上30重量%以下であることが好ましい。濃度がこの範囲であると、高分子分散体の安定性が良好で、分散体の賦型性に優れる。一方、濃度が低すぎると、賦型時の脱分散媒時に製品の変形が起きやすく、また大量の分散媒を用いるために製造コストが高くなる一方、高すぎると、分散体の状態が不安定となり、ゲル化や凝集が起こりやすくなる。
本発明の高分子分散体を得る方法としては、耐熱高分子体を分散媒に直接分散する方法や、溶媒中に溶解している前駆体高分子の化学反応によって得る方法などが例示できる。
耐熱高分子体を分散媒に直接分散する方法としては、例えばポリイミド、耐炎ポリマー、架橋スチレンビーズなどの耐熱高分子体のナノサイズ粒子を分散媒に直接分散する方法が挙げられる。乾燥したナノサイズ粒子の集合体を分散媒に分散する方法をとってもよいが、ナノサイズ粒子を分散する分散媒でスラリー状または液状にしたものを、他の分散媒によって希釈し、必要に応じて濃縮する方法をとることも可能である。この時、予めナノサイズ粒子を分散していた分散媒は除去してもよい。また、分散媒に分散されたナノサイズ粒子の凝集を防ぐため、機械的な攪拌・分粒、分散助剤などの添加剤の添加などを行うことが好ましい。ここで、ナノサイズ粒子とは、平均粒径が100nm未満である粒子をいう。
より安定した高分子分散体を得るためには、溶媒中に安定に溶解している前駆体高分子の化学反応によって、高分子分散体を得る手法が好ましい。すなわち、本発明の耐熱高分子体をGPC−MALLSを測定して得られる分子の慣性半径R(nm)、分子量M(g/mol)の関係を、次のにあてはめた場合に0.4≦C≦0.7を満たす前駆体ポリマーを、その溶液中で化学反応させて耐熱高分子分散体を得ることが好ましい。
線形近似式log10(R)=C・log10(M)+D (C、Dは定数)
かかるパラメーターCが0.4以上であると、前駆体高分子は溶液中で安定した膨潤した糸毬状態にある。化学反応の進行につれて分子糸毬は徐々にサイズを縮小していき、やがて高密度の糸毬となる。この化学反応の過程でお互いの糸毬は溶媒または分散媒のエネルギー的な作用で安定化されており、また糸毬相互の距離が離れているために衝突確率が低く、凝集やゲル化が起こらない均一な高分子分散体を得ることができる。パラメーターCが0.4未満であると、糸毬が堅く凝集しており、前駆体の反応を行うことが難しくなる。パラメーターCが0.7を越える前駆体ポリマーであると、高分子鎖の屈曲性が不十分であり、エントロピーの影響で溶媒への親和性が低下して前駆体溶液が不安定化する。
溶媒中に溶解している前駆体ポリマーを化学反応させて高分子分散体を得る場合、そこで用いる前駆体ポリマーとしては、得ようとする成形品によって適宜選定されるが、例えば、セラミックス成形品を製造する場合には、ポリカルボシランと有機金属化合物を反応させることにより得られるポリメタロカルボシランを前駆体高分子とすることができる(非特許文献5参照)。また、ポリイミド成形品を製造する場合は、ポリアミック酸を前駆体高分子として用いることができる(非特許文献6参照)。また、炭素材料の成形品を製造する場合は、ポリアクリルニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、セルロースやトリアセテートなどのセルロース系高分子、ピッチなどを前駆体高分子として用いることができる(非特許文献7参照)。
炭素材料の成形品を得る場合には、通常耐炎ポリマーを経由するが、その前駆体高分子としては、アクリルニトリル系ポリマーを用いるのが好ましい。アクリロニトリル系ポリマーとしては、ホモポリマーが溶解性や溶液安定性の点から最も好ましいが、アクリル系共重合体であってもよい。ただし、反応の速さや成形品の力学的強度を考慮すると共重合率はできる限り少ない方が好ましく、90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは98モル%以上のアクリロニトリルと共重合成分からなる共重合体からなるものが好ましい。かかる共重合体を得る方法としては、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、乳化重合法等が適用できる。
具体的な共重合成分として、アリルスルホン酸金属塩、メタリルスルホン酸金属塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルやアクリルアミドなどを挙げることができるが、耐炎化を促進する成分として、ビニル基を含有する化合物、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、スチレン、ブタジエン、ヘキセン、オクテン、アクリルアミド等も用いることができる。また、酸性の共重合成分については、それらの一部又は全量を、アンモニア等のアルカリ成分で中和してもよい。これら共重合成分の中では、スチレンやブタジエン、ヘキセン、オクテンがより好ましい。これらは分子内結合を作らないために分子糸毬変形が容易なためか、それが共重合されたアクリル系共重合体は分散媒中での安定性が良好である。アクリロニトリル系ポリマーの重量平均分子量は1000〜1000000程度の任意のものを選択できるが、最終製品の機械的特性を保つためには、重量平均分子量が100000以上、好ましくは150000以上であるのがよく、また分散媒中での糸毬の均質性を保つためには、重量平均分子量が500000以下、好ましくは300000以下であるのがよい。
前駆体高分子を極性有機溶媒に溶解する場合には、前駆体高分子の形状・形態は粉末、フレーク、繊維状いずれでもよく、重合中や紡糸時に発生するポリマー屑や糸屑等もリサイクル原料として用いることもできる。好ましくは粉末状、とりわけ100μm以下の微粒子となっていることが、溶媒への溶解性の観点から特に好ましい。また、予めモノマーの段階から溶媒に溶解しておき、適当な重合方法によりポリマー化したポリマー溶液をそのまま用いることもできる。
前駆体高分子としてアクリルニトリル系ポリマーを使用する場合、求核剤と酸化剤を用いて化学反応させて高分子分散体を得ることが好ましい。求核剤はアクリルニトリル系ポリマーのニトリル基に作用し、隣り合うニトリルとの間で閉環して環化ポリマーとなる。酸化剤は更に環化ポリマーを酸化して、耐熱性の高いラダー型ポリマーである耐熱高分子体が生成する。
発明者による先の提案では、アミン系化合物を変性剤として用いたが、本発明では、求核剤または酸化剤を用いることが重要である。アクリルニトリル系ポリマーの環化を進める求核反応はきわめて重要で、既に述べたように環化が起こらないと酸化反応速度は非常に遅い。本発明での発明者らの最も重要な発見の一つは、環化反応を求核反応によって促進することを見いだしたことであり、このことによってアミン系化合物よりも環化反応を効率的に進める化合物を探し出し本発明に至ったのである。
求核剤と酸化剤は同時に加えてもよいし、求核剤を加えた後に酸化剤を加えてもよく、酸化剤を加えた後に求核剤を加えてもよい。求核剤はラダーポリマーの合成を容易にする環化ポリマーの生成に重要である。環化ポリマーを合成した後に酸化剤を作用させた方が酸化反応の効率が良く、該求核剤と酸化剤は同時に加えるか、求核剤を加えた後に酸化剤を加えることが好ましい。
該環化及び酸化反応はロダン塩や塩化亜鉛などの無機水溶液、超臨界炭酸ガスなどの圧縮流体、または有機溶媒など、液相中で行うことが好ましい。中でも有機溶媒、特に極性有機溶媒が好ましい。環化・酸化反応はこれらの溶媒を用いることで著しく促進され、製造効率を向上することが可能である。ここで使用する溶媒は本発明の高分子分散体に使用されるものと必ずしも一致する必要はないが、工程の簡素化を考慮すると同一であることが好ましい。すなわち、反応生成物をそのまま本発明の高分子分散体として用いることが好ましいが、該反応生成物を沈殿して一度耐熱高分子体として取り出し、その後、該耐熱高分子体を分散媒に分散して高分子分散媒としても構わない。更に、該耐熱高分子体を追加で空気酸化または液相酸化することも可能である。
求核剤としては、ニトリル基に求核反応を行う物質であれば特に制限はなく、グアニジン系化合物、アルコール系化合物、カルボン酸系化合物、チオール系化合物、アミジン系化合物などの有機系求核剤、金属アルコキシド化合物、金属アミド化合物、金属イミド化合物、金属水素化物、金属水酸化物、金属炭酸塩、カルボン酸金属塩等が挙げられるが、反応性が高く、制御が容易なことから金属アルコキシド化合物、金属イミド化合物、グアニジン系化合物が好ましい。金属アルコキシド化合物としてはカリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソブトキシド、ナトリウムイソブトキシド、ナトリウムフェノキシド等が挙げられ、より好ましくはカリウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシドである。金属イミド化合物としてはカリウムフタルイミド、ナトリウムフタルイミド等が挙げられ、より好ましくはカリウムフタルイミドである。グアニジン系化合物としては、グアニジン構造を有するものであればいずれでもよいが、グアニジン炭酸塩、グアニジンチオシアネート、グアニジン酢酸塩、グアニジンリン酸塩、グアニジン塩酸塩、グアニジン硝酸塩、グアニジン硫酸塩、メチルグアニジン、エチルグアニジン、ジメチルグアニジン、アミノグアニジン、フェニルグアニジン、ナフチルグアニジン、ニトログアニジン、ニトロソグアニジン、アセチルグアニジン、シアノグアニジン、グアニルウレアなどが挙げられ、より好ましくはグアニジン炭酸塩、グアニジン酢酸塩、グアニジンリン酸塩である。これらは1種だけで用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
さらに、これら求核剤は酸化反応促進剤としての役割だけでなく、分散体の安定性を保つ役割も担っていると都合が良い。発明者らは、アミン系化合物の他にも環化反応を起こす化合物が存在することを見出したばかりか、ある種の求核剤は、反応性のみならず分散体安定性も向上することを見出したのである。すなわち、金属アルコキシド化合物、金属イミド化合物は環化反応速度と分散体安定性を両立できる化合物であり、本発明においては求核剤として最も好ましく使用されるべきものである。
これら求核剤の添加量は特に限定されないが、前駆体ポリマー100重量部に対して0.1〜500重量部が好ましく、1〜200重量部がより好ましく、3〜100重量部が更に好ましい。
また、酸化剤としては、安全性や反応性からニトロ系化合物、あるいはキノン系化合物が好ましい。ニトロ系化合物としては、反応時の熱安定性から芳香族環をもつモノニトロ化合物がより好ましく、ニトロベンゼン、o,m,p−ニトロトルエン、o,m,p−ニトロフェノール、ニトロキシレン、ニトロナフタレンがより好ましく、ニトロベンゼン、o,m,p−ニトロトルエンが特に好ましい。キノン系化合物としては、1,4−ベンゾキノン、クロラニル、ブロマニル、クロロ−1,4−ベンゾキノン、ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、ブロモ−1,4−ベンゾキノン、ジブロモ−1,4−ベンゾキノン、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ―5,6―ジシアノ−1,4−ベンゾキノン、オルトベンゾキノン、オルトクロラニル、オルトブロマニルが好ましく、1,4−ベンゾキノン、クロラニル、ジクロロ−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジクロロ―5,6―ジシアノ−1,4−ベンゾキノンがより好ましい。
これら酸化剤の添加量は特に限定されないが、前駆体ポリマー100重量部に対して0.1〜200重量部が好ましく、1〜100重量部が更に好ましい。これらは1種だけで用いてもよいし、2種以上混合してもよい。
なお、求核剤として、金属フタルイミドまたは金属アルコキシド化合物を用いる場合には、酸化剤の添加量X2(モル)と、求核剤の添加量X1(モル)とのモル比X2/X1を1より大きくすると、前駆体ポリマーに求核付加した環化剤が酸化剤によって該ポリマーから脱離されることで、もとの求核剤として再生再利用されるためか、少ない求核剤量で耐熱ポリマー分散体を得ることができ、原料および回収コストの観点から好ましい。この効果はX2/X1の値が大きくなるにつれて顕著にあらわれるが、一方でX2/X1の値が大きくなると、耐熱化の反応にはなんらの不利な影響は与えないものの、耐熱化において消費されない酸化剤が過剰に存在することになるため、原料および回収のコストの観点からは、2≦X2/X1≦800であるのがより好ましく、4≦X2/X1≦500であるのがさらに好ましい。
これら前駆体ポリマーと求核剤、酸化剤および極性有機溶媒等の混合液の反応温度は用いる溶媒や求核剤、酸化剤によって異なるが80〜350℃が好ましく、100〜250℃がより好ましく、120〜200℃が更に好ましい。
本発明の高分子分散体は、それを賦型した後に、その高分子分散体から分散媒を除去して耐熱高分子体成形品とすることができる。本発明において、高分子分散体中の耐熱高分子体は極めて微細なサイズで分散媒に分散しているため、細かい形状を有する成形品の製造に好適に使用することができる。特に好ましいのは、繊維状またはフィルム状に賦型することである。本発明によれば、従来では到達不能であった微細径の繊維を製造することや、薄くて表面凹凸が良好に制御されたフィルムを製造することが可能になる。もちろん、本発明の高分子分散体は繊維やフィルムのみに適用されるものではなく、微細な三次元形状物、フィルム・繊維などの三次元成形品の表面コート、また粒子の作成にも適用することができる。
本発明において、賦型された高分子分散体から分散媒を除去する方法に特に制限はなく、賦型した分散体から加熱や減圧によって分散媒を蒸発させる方法や、凝固液中に賦型した分散体を浸し、分散媒を凝固液中に抽出する方法が挙げられるが、賦型した後に速やかに分散媒を取り除いて製品の形状を保つためには、賦型した分散体に凝固液を噴霧・掛流するか、凝固液中に賦型した分散体を浸して、分散媒を凝固液中に抽出する方法が好ましい。凝固液としては、耐熱高分子体の貧溶媒であって、分散媒と相溶する液体を用いるが、水系凝固液を用いることが好ましく、抽出される分散媒の回収を容易にするためには、水と、分散体で用いる分散媒と同種の溶媒との混合系を用いることが特に好ましい。これら凝固液には、分散体で用いる分散媒以外の溶媒が混合されていてもよいが、溶媒回収の観点からは、水と、分散体で用いる分散媒と同種の溶媒とのみで構成するのが好ましい。また、凝固液における水と溶媒の混合比は、1:9〜9:1、好ましくは2:8〜8:2、更に好ましくは3:7〜7:3とするのがよい。こうすることによって凝固速度を制御することも可能となり、用途に応じた特性を凝固液によってコントロールすることができるようにもなり、好ましい。また、凝固液には、分散媒の抽出を容易にする化合物としての無機塩、pH調整剤、工程処理剤、分散体の反応促進剤などが含まれていてもよい。
また、賦型した分散体から加熱によって分散媒を蒸発させる方法をとる場合、加熱する手段としては、気相加熱、熱媒による液相加熱が挙げられる。加熱に際して、伝熱媒体として、気体または液体を使用する場合は、賦型された材料の周囲で循環するなどして熱伝達効率を高める工夫を行うことが好ましい。また、加熱手段としては伝熱に限定されず、赤外線、可視光、紫外線などによる輻射加熱を使用することも可能である。なお、賦型した分散体から分散媒を蒸発させるためには、減圧または真空中で処理する方法も採用することができ、これを前記した加熱と併用することもできる。
高分子分散体から分散媒を除去する方法を上記の通り列挙したが、これらに限定されるものではなく、また、任意に組み合わせて実施することができる。
高分子分散体を繊維に賦型する場合は、例えば、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、フラッシュ紡糸法、エレクトロスピニング紡糸法、スパンボンド法、メルトブロー法、遠心力紡糸法などを採用することができる。中でも湿式紡糸法または乾湿式紡糸法は生産性が高く、本発明において好ましく適用される。特に湿式紡糸法は賦型した直後に分散媒が除去され始めるので、生産性が高く、また、賦型直後の繊維強度が低くても低速度で繊維を走行させることができ、取扱いが易しいため更に好ましい。ここでいう湿式紡糸法とは、複数孔が空いた口金まで高分子分散体を計量・フィルトレーションなどの後に導入した後、分散体にかかる圧力によって口金孔から吐出して賦型し、ただちに凝固液によって凝固する方法である。また、乾湿式紡糸とは、口金孔から高分子分散体を吐出して賦型し、気相中を走行させて後、凝固液によって凝固する方法である。乾式紡糸とは、口金孔から高分子分散体を吐出して賦型し、気相中を走行させる間に分散媒を飛散・蒸発させ、凝固液を実質的に使用しない方法である。
高分子分散体をフィルムに賦型する場合は、いわゆる湿式製膜法、乾湿式製膜法、乾式製膜法を用いることができる。この中でもフィルム膜厚の均一性の観点から、乾湿式製膜法が好ましい。ここでいう湿式製膜法とは、スリットが空いた口金まで高分子分散体を計量・フィルトレーションなどの後に導入した後、分散体にかかる圧力によって口金スリットから吐出して賦型し、ただちに凝固液によって凝固する方法である。また、乾湿式製膜法とは、口金スリットから高分子分散体を吐出して賦型し、気相中を走行させて後、凝固液によって凝固する方法である。乾式紡糸とは、口金スリットから高分子分散体を吐出して賦型し、気相中を走行させる間に分散媒を飛散・蒸発させ、凝固液を実質的に使用しない方法である。
賦型された高分子分散体から凝固液を用いて分散媒を除去して、高分子分散体を凝固させる場合、その工程は1つであってもよいが、複数の工程を組み合わせて実施することが好ましい。第一の工程では分散体から大部分の分散媒を抽出・除去することに主眼が置かれ、その工程を通過できる程度の力学的強度を与える。それに続く第二の工程で、残存した分散媒を抽出し、延伸や圧縮などの更に必要な変形を行うことが好ましい。これら工程として、賦型された分散体や成形体を凝固液の浴の中に通過させる場合もあるが、それらに凝固液を噴霧・掛流するなどしても良い。繊維状に賦型した場合には凝固液の浴の中を通過する方法を使用することが好ましく、フィルム状に賦型した場合には凝固液を噴霧・掛液する方法を採ることが好ましい。なお、これら凝固のための工程では分散媒の抽出を促進したり、賦型品の変形を容易にする目的などのために、適宜熱を加えることが好ましい。凝固液の温度としては、凝固の第一の工程では、凝固液の凝固点以上、沸点以下の任意の温度が可能であり、耐熱高分子体の凝固性や工程通過性に合わせて適宜調整すればよい。また、凝固の第二の工程以降も凝固液の凝固点以上、沸点以下の任意の温度が可能であるが、凝固液に水を用いる場合には60℃以上85℃以下が好ましい。こうすることによって、第一工程で残存した分散媒が効率よく抽出される。また、凝固液中の貧溶媒の濃度は、凝固工程を経るに従って増加することが好ましい。
本発明においては、上記したようにして耐熱高分子体成形品が得られ、かかる成形品はそのまま各種用途に用いることもできるが、それを更に熱処理することによって、焼成・焼結品となすことが好ましい。凝固のための工程では、耐熱高分子体は実質的にその微粒子の集合体となっているため、凝固後の成形体には多くの空隙が内包されている。従って多くの場合、成形体の力学的な強度は更に増加させることが望ましい。この力学的強度を向上する手段として、上記のようにして得られた成形品を熱処理によって焼成・焼結し、空隙を塞ぐのである。
焼成・焼結における温度プロファイルや工程通過速度などの条件は素材に依存するが、成形品の軟化点温度よりも50℃低い温度以上の温度で熱処理され、好ましくは軟化点以上で処理することが好ましい。軟化点温度−50℃未満の処理温度では成形品が内包する空隙を塞ぐことは困難である。また、焼成・焼結の温度には特に上限はないが、成形品が軟化して形状を保ちにくい場合は、処理温度を数段階に分けて上昇させるか、連続的に上昇させることが好ましい。
また、該軟化点を可塑剤によって低下させると、熱分解反応を抑制しながら焼結・焼成できるので好ましい。可塑剤の成分はあらかじめ分散体の中に含まれていても良いが、分散媒の回収などの観点から、凝固工程から焼結・焼成工程の間で付与されることが好ましい。可塑剤は軟化点を低下させるものであれば特に制限はないが、成型品への均一付与や分散体への分散などの観点から、液体であることが好ましい。中でも環境に優しく安全性が高い水を用いるのが最も好ましく、糸への付着性を向上するために界面活性剤を含む水を使用すると更に好ましい。
本発明において、成形体を焼成・焼結体になすに際しての熱処理では、成形品の化学構造が変化していても構わない。例えば、耐熱高分子体が縮合系高分子である場合、真空雰囲気下での固相重合によりその分子量が増大したり、アクリドン骨格やピリミジン骨格を持つような耐炎ポリマーの場合には、それが黒鉛構造へ変化したりすることもある。これら変化は、一旦熱処理によって成形品が含む空隙が減少した後、生じるようにするのがよい。こうすることによって、空隙の少ない、力学特性が優れた焼成・焼結体を得ることができる。
また、本発明において、成形品を焼成・焼結品になすに際しての熱処理では、成形品の化学構造変化を伴わなくても構わない。例えば、ゾルーゲル転移法によって得られたシリカやチタニアのような場合には、適切な温度にて熱処理することにより、実質的に粒子間空隙が塞がれるだけで、適切な焼成・焼結品となる。
また、焼成・焼結に際しての熱処理工程では成形品に延伸や圧縮などの変形を与えてもよい。これらの変形によって、得られる焼成・焼結品の形態がより好ましいものとなり、またその力学的特性やその他特性を向上することができる。
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお実施例では、各物性値または特性は以下の方法により測定した。
<耐熱高分子体のTG−DTAの測定>
耐熱高分子体15mgを精秤し、セーコー(株)製 TG−DTA2000SAを用いて、25℃より10℃/分で500℃まで昇温して重量減少を測定した。
<GPC−MALLSの測定>
測定しようとする高分子分散体を、GPC−MALLSで検出することが可能な程度に分散媒で希釈して測定用の分散液とする。それにより分散液における高分子分散体の濃度は、通常0.1〜0.5重量%になる。この分散液のうち、100μLをサンプルとして使用し、GPC−MALLS(Wyatt Technology Corporation製、DAWN DSP)を測定することによって、分子の慣性半径R(nm)と分子量M(g/mol)の関係図を得、それを前記した線形近似式でAやCの値を求めた。
カラム:東ソーTSKgel α−M+α−3000
カラム温度:23℃
溶媒:高分子分散体の分散媒と同じものを用いた。ただし、0.1M−LiBr、0.01M−ジエチルアミンとなるよう調整した。
流速:0.8mL/min
<耐熱高分子体の単離、濃度測定>
高分子分散媒を秤量し、約4gを500mlの水中に入れ、これを沸騰させた。一旦固形物を取り出し、再度500mlの水中に入れて、これを沸騰させた。残った固形分をアルミパンに乗せ、120℃のオーブンにて1時間乾燥し高分子体を単離した。単離した固形分を秤量し、元の高分子分散媒の重量との比を計算して濃度を求めた。
(実施例1)
アクリロニトリルホモポリマー10重量部を溶媒であるDMF84.4重量部に溶解した溶液をフラスコ中160℃に加熱し、フタルイミドカリウム8.0重量部を添加し120分攪拌した。その後オルトニトロトルエン3.0重量部を添加し240分攪拌を続け、反応を終了させた後に冷却して耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は12.1重量%であった。この分散体をDMFにて耐炎ポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈して、GPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.35であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は160000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は371℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
なお、アクリロニトリルホモポリマーを、その濃度が0.3重量%になるようDMFに溶解した溶液をGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のCの値を算出したところ0.52であった。重量平均分子量は125000であった。
(実施例2)
フタルイミドカリウム8.0重量部の代わりにカリウムtert−ブトキシド6.0重量部を用いた以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.26であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は12.3重量%であった。この分散体をDMFにて耐炎ポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.31であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は166000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は368℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例3)
溶媒としてDMFに代えてDMSOを用いる以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、耐炎ポリマーの濃度は12.5重量%であった。この分散体をDMSOにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.28であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は173000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は383℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例4)
溶媒としてDMFに代えてスルホランを用いる以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は11.4重量%であった。この分散体をスルホランにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.38であった。また、重量平均分子量は157000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は360℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例5)
ポリアクリロニトリルホモポリマーの使用量を10重量部から25重量部に変更した以外は、実施例1と同様して耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は32.3重量%であった。この分散体をDMFにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるように希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.26であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は210000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は365℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例6)
アクリロニトリルホモポリマーを、アクリロニトリル99.7モル%と共重合成分としてイタコン酸0.3モル%からなるポリアクリロニトリル系共重合体に変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は6.1重量%であった。この分散体をDMFにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.37であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は121000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAを測定したところ、3重量%減少温度は413℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例7)
共重合成分としてイタコン酸に代えてジビニルベンゼンに変更した以外は、実施例6と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.40であり、耐炎ポリマーの濃度は12.7重量%であった。用いたポリアクリロニトリル系共重合体をDMFにてその濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のCの値を算出したところ0.41であった。また、ポリアクリロニトリル系共重合体の重量平均分子量は120000であった。また、得られた耐炎ポリマーが分散した分散体をDMFにて0.3重量%に希釈し、GPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.30であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は161000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は378℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例8)
アクリロニトリルホモポリマーに代えて、アクリロニトリル99.7モル%と共重合成分としてイタコン酸0.3モル%からなるポリアクリロニトリル系共重合体に変更し、オルトニトロトルエン3.0重量部に代えてクロラニル8.0重量部に変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は0.58であり、分散体における耐炎ポリマーの濃度は12.7重量%であった。用いたポリアクリロニトリル系共重合体をDMFにてその濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のCの値を算出したところ0.56であった。用いたポリアクリロニトリル系共重合体の重量平均分子量は120000であった。得られた耐炎ポリマーが分散した分散体をDMFにて0.3重量%に希釈し、GPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.33であった。また、得られた耐炎ポリマーの重量平均分子量は182000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は378℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例9)
フタルイミドカリウムの添加量を8重量部から0.03重量部に変更した以外は、実施例3と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は135であり、耐炎ポリマー濃度は10.8重量%であった。この分散体をDMSOにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.32であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は178000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は378℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例10)
フタルイミドカリウムおよびオルトニトロトルエンの試薬量をそれぞれ0.5重量部、2重量部用いた以外は、実施例1と同様に耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は5.4であり、耐炎ポリマー濃度は11.2重量%であった。この分散体をDMSOにて耐炎ポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.36であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は172000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は368℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例11)
フタルイミドカリウム8重量部のかわりにカリウムtert−ブトキシド0.03重量部用いる以外は、実施例3と同様にして耐炎ポリマーが分散した分散体を得た。求核剤と酸化剤の添加量のモル比X2/X1は78であり、耐炎ポリマー濃度は10.9重量%であった。この分散体をDMSOにて耐炎ポリマーの濃度が0.3重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.32であった。また、耐炎ポリマーの重量平均分子量は164000であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は360℃であった。
単離した耐炎ポリマーについて13C−NMRで解析したところ、160〜180ppmには明確に前駆体ポリマーであるポリアクリロニトリルや溶媒、変性剤では確認されない耐炎ポリマーに由来するピークが存在した。またIRで解析したところ、1600cm−1に明確なピークが存在した。
(実施例12)
実施例1で得た耐炎ポリマーの分散体を用いて湿式紡糸装置で繊維化した。具体的には、20℃に保った耐炎ポリマーの分散体を0.06mmの孔を400ホール有する口金から20℃の第一水浴中に吐出し、5m/分のローラー速度で引き取り、一旦巻き取ることなく続いて70℃に加熱した第二浴、75℃に加熱した第三水浴中にて更に洗浄した後、120℃、8m/分のホットロールを用い加熱乾燥し、更に200℃で乾熱乾燥して繊維状の耐炎成形品を得た。
さらにこの繊維状の耐炎成形品を、窒素雰囲気中650℃の加熱炉を通過させ、引き続き窒素雰囲気中1450℃の加熱炉を通過させることによって焼成品を得た。
(実施例13)
実施例1で得た耐炎ポリマーの分散体を用いて乾湿式紡糸装置で繊維化した。具体的には、0.1mmの孔径を100ホール有する口金を下向きに設置し、耐炎ポリマーの分散体を口金からエアーギャップを5mmとした空気中に一旦押し出した後、20℃の水浴中に浸漬して繊維化し、40m/分の速度で水浴中から引き出した。一旦巻き取ることなく続いて75℃に加熱した第二浴、80℃に加熱した第三水浴中にて更に洗浄した後、120℃、60m/分のホットロールを用い加熱乾燥し、更に200℃で乾熱乾燥して繊維状の耐炎成形品を得た。
(実施例14)
実施例1で得た耐炎ポリマーの分散体を用いてキャスト製膜法によってフィルム化した。具体的には、耐炎ポリマーの分散体をガラス板上に均一な厚みとなるようキャストした後、120℃の乾燥機中で自己支持性を持つまで5分乾燥し、溶媒含有フィルムをガラス板から剥離して金型に固定した。その後300℃の乾燥機中で5分処理して、余分な溶媒、揮発成分を除去し、厚み35μmの耐炎フィルムを得た。
(実施例15)
実施例9で得た耐炎ポリマーの分散体を用いて湿式紡糸装置で繊維化した。具体的には、25℃に保った耐炎ポリマーの分散体を0.06mmの孔を400ホール有する口金から25℃の第一水浴中に吐出し、5m/分のローラー速度で引き取り、一旦巻き取ることなく続いて70℃に加熱した第二浴、70℃に加熱した第三水浴中にて更に洗浄した後、120℃、8m/分のホットロールを用い加熱乾燥し、更に200℃で乾熱乾燥して繊維状の耐炎成形品を得た。
(比較例1)
フタルイミドカリウムに代えてアミン系の化合物であるN−アミノエチルピペラジンに変更した以外は、実施例1と同様にして耐炎ポリマーの分散体を得た。分散体における耐炎ポリマーの濃度は9.9重量%であった。この分散体をDMFにて耐炎ポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.54であった。また、耐炎ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は287℃であった。この分散体は安定性が悪く、室温にて3日間放置した結果ゲル状となり、流動性を失った。
(比較例2)
オルトニトロトルエンを添加しない以外は、実施例1と同様にしてポリマーの分散体を得た。分散体におけるポリマーの濃度は9.4重量%であった。この分散体をDMFにてポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.51であった。また、ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は293℃であった。単離したポリマーについて13C−NMRで解析したが、160〜180ppmに耐炎ポリマーに由来するピークは確認できなかった。
(比較例3)
オルトニトロトルエンを添加しない以外は、実施例2と同様にしてポリマーの分散体を得た。分散体におけるポリマーの濃度は12.3重量%であった。この分散体をDMFにてポリマーの濃度が0.2重量%になるよう希釈してGPC−MALLS測定し、分子の慣性半径と分子量の値から上記線形近似式のAの値を算出したところ0.41であった。また、ポリマーをTG−DTAで測定したところ、3重量%減少温度は283℃であった。単離したポリマーについて13C−NMRで解析したが、160〜180ppmに耐炎ポリマーに由来するピークは確認できなかった。
(比較例4)
溶媒としてDMFをデカンに変更した以外は、実施例1と同様して耐炎ポリマーの分散体を得ようとしたが、ポリマーを充分に溶解することができず、耐炎ポリマーの分散体を得ることはできなかった。

Claims (12)

  1. 耐熱高分子体が分散媒に分散している高分子分散体であって、前記耐熱高分子体は、窒素雰囲気下での示差熱・熱重量測定による3重量%減少温度が350℃以上であり、高分子分散体をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー−多角度光散乱光度計により測定して得られる分子の慣性半径R(nm)と分子量M(g/mol)の関係を、次の線形近似式にあてはめた場合に、A≦0.4となることを特徴とする高分子分散体。
    log10(R)=A・log10(M)+B (A、Bは定数)
  2. 前記分散媒が極性有機溶媒である請求項1に記載の高分子分散体。
  3. 前記耐熱高分子体が耐炎ポリマーである請求項1または2に記載の高分子分散体。
  4. 耐熱高分子体の濃度が2重量%以上、50重量%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載の高分子分散体。
  5. ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー−多角度光散乱光度計により測定して得られる分子の慣性半径R(nm)、分子量M(g/mol)の関係を、次の線形近似式にあてはめた場合に、0.4≦C≦0.7となる前駆体高分子を、その溶液中で化学反応させて請求項1ないし4のいずれかに記載の高分子分散体を得ることを特徴とする高分子分散体の製造方法。
    log10(R)=C・log10(M)+D (C、Dは定数)
  6. 前記前駆体高分子がアクリロニトリル系ポリマーであり、前記化学反応が求核剤と酸化剤による化学反応である請求項5に記載の高分子分散体の製造方法。
  7. 求核剤が金属イミド化合物または金属アルコキシド化合物である請求項6に記載の高分子分散体の製造方法。
  8. 酸化剤の添加量(mol)と求核剤の添加量(mol)とのモル比が1より大きい請求項7に記載の高分子分散体の製造方法。
  9. 酸化剤がニトロ化合物またはキノン化合物である請求項6〜8のいずれかに記載の高分子分散体の製造方法。
  10. 請求項1ないし4のいずれかに記載の高分子分散体を賦型した後、前記高分子分散体から分散媒を除去することを特徴とする耐熱高分子体成形品の製造方法。
  11. 賦型形状が繊維状またはフィルム状である請求項10に記載の耐熱高分子体成形品の製造方法。
  12. 請求項10または11に記載の方法で得た成形品を熱処理することを特徴とする焼成・焼結品の製造方法。
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