JP2007062214A - 色素、光記録材料及び光記録媒体 - Google Patents

色素、光記録材料及び光記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 十分に高い変調度を有する光記録媒体が得られる色素、光記録材料及び十分に高い変調度を有する光記録媒体を提供する。
【解決手段】 本実施形態の色素は、光記録ディスク1の記録層3に含有されている。この光記録ディスク1では、400〜420nmの波長域における所定の波長λを有する光を照射することにより情報の記録が可能である。この色素の各波長に対する吸収スペクトルは、所定の波長λよりも短波長側の最も近くに位置する第1のピークPと、所定の波長λよりも長波長側の最も近くに位置する第2のピークPとを有する。ピークPの半値幅WのうちピークPが極大となる波長λよりも長波長側の部分Dは、60nm以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、色素、光記録材料及び光記録媒体に関する。
光記録媒体としてはすでに、CD−R(追記型CD)やDVD−R(追記型DVD)等の光記録ディスクが広く普及しているが、記録密度のさらなる高密度化のため、その記録・再生光の短波長化が進められている。近年特に、波長405nmのレーザ光を用いて記録・再生を行う光記録媒体が注目されている。波長405nmの短波長レーザ光を用いて記録・再生を行う光記録媒体では、例えば、ナフタロシアニン誘導体又はフタロシアニン誘導体等の色素を含有する光記録材料を使用することが知られている(特許文献1〜3参照)。
特開2000−228028号公報 国際公開第01/74600号パンフレット 国際公開第02/102598号パンフレット
しかしながら、上述のような色素を用いた光記録媒体では十分に高い変調度が得られず、光記録媒体としての特性が不十分であった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に高い変調度を有する光記録媒体が得られる色素、光記録材料及び十分に高い変調度を有する光記録媒体を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本発明の色素は、400〜420nmの波長域における所定の波長を有する光を照射することにより情報の記録が可能な光記録媒体の記録層に含有されており、当該色素の各波長に対する吸収スペクトルが、前記所定の波長よりも短波長側の最も近くに位置する第1のピークと、前記所定の波長よりも長波長側の最も近くに位置する第2のピークとを有し、前記第1のピークの半値幅のうち前記第1のピークが極大となる波長よりも長波長側の部分が60nm以下である。
ここで、「各波長に対する吸収スペクトル」は、例えば、色素を溶媒(塩化メチレン)に溶解させて得られる溶液の吸光度を、UV−VIS吸収スペクトル測定装置(UV3101PC+MPC3100、株式会社島津製作所製)を用いて測定することによって得られる。測定条件としては、スリット幅を20nm、スキャンスピードを5nm/secとする。
また、「ピーク」とは、半値幅が200nm以下のものをいう。また、ピークの位置は、ピークが極大となる波長により決定される。
本発明の色素では、吸収スペクトルにおいて第1のピークの半値幅のうち第1のピークが極大となる波長よりも長波長側の部分が60nm以下であるため、光記録媒体において十分に高い変調度が得られる。この部分が60nmを超えると、所定の波長における色素の屈折率が小さくなってしまうため、変調度が低下してしまう。
また、前記第1のピークが極大となる波長が、前記所定の波長から30nm以上離れていると好ましい。この波長が所定の波長から30nm未満の位置にあると、光記録媒体において反射率が低下する傾向にある。
また、上記色素は、サブフタロシアニン誘導体であることが好ましい。この場合、光記録媒体においてより十分に高い変調度が得られる。
本発明の光記録材料は、本発明の色素を含有する。この光記録材料では、光記録媒体において十分に高い変調度が得られる。
本発明の光記録媒体は、本発明の色素を含有する記録層を備える。この光記録媒体では、十分に高い変調度が得られる。
本発明によれば、十分に高い変調度を有する光記録媒体が得られる色素、光記録材料及び十分に高い変調度を有する光記録媒体が提供される。
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
(色素)
本実施形態に係る色素は、光記録媒体の記録層に含有されている。この光記録媒体では、400〜420nmの波長域における所定の波長λを有する光を照射することにより情報の記録が可能である。所定の波長λは、例えば405nmである。
図1は、本実施形態に係る色素の各波長に対する吸収スペクトルを模式的に示すグラフである。図1に示されるスペクトルは、所定の波長λよりも短波長側の最も近くに位置する第1のピークPと、所定の波長λよりも長波長側の最も近くに位置する第2のピークPとを有する。また、ピークPの半値幅WのうちピークPが極大となる波長λよりも長波長側の部分Dが60nm以下である。部分Dは、特に下限値はないが、通常20nm以上であることが実用上好ましい。であることが好ましい。
本実施形態に係る色素では、吸収スペクトルにおいて半値幅Wにおける所定の部分Dが60nm以下であるため、光記録媒体において十分に高い変調度が得られる。この部分Dが60nmを超えると、所定の波長λにおける色素の屈折率が小さくなってしまうため、変調度が低下してしまう。
本実施形態に係る色素が、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環を有する化合物、キリノン環、イミダゾール環等の複素環を有する化合物である場合、350nm以下にピークPを有する。この場合、色素を構成する化合物における芳香環及び複素環の種類及び数等を変えることによって、部分Dの長さを制御することができる。例えば、色素を構成する化合物における芳香環及び複素環の種類をなるべく同じにすることにより、部分Dを短くすることができる。
また、このような色素では、従来の色素のように色素を構成する分子の共役長を短くする必要がないので、分子自体が低分子化合物にならない。したがって、結晶性の向上を抑制することができるので、光記録媒体に適したアモルファス状態の色素が容易に得られる。このように、本実施形態に係る色素を用いることにより、材料設計の自由度が向上する。
また、ピークPが極大となる波長λは、所定の波長λから30nm以上100nm以下離れていることが好ましい。波長λが、所定の波長λから30nm未満の位置にあると、光記録媒体において反射率が低下してしまう。波長λが、所定の波長λから100nmを超えた位置にあると、屈折率の低下が大きくなり、光記録媒体を構成した際に必要な変調度を得ることが困難になる傾向がある。
一方、ピークPが極大となる波長λは、450〜750nmの波長域に位置していることが好ましい。
また、上記色素は、サブフタロシアニン誘導体であることが好ましい。この場合、光記録媒体においてより十分に高い変調度が得られる。また、例えば、サブフタロシアニン誘導体における3つの骨格を同一構造にすることにより、部分Dを短くすることができる。ピークP,Pの位置は、例えば、サブフタロシアニン誘導体の置換基の種類、位置等を変えることによってシフトする。置換基の種類は特に制限されないが、例えば、ニトロ基、アミノ基、アルキルアミノ基、フェノール基、フェニル基、イミダゾール基等を好適に用いることができる。
上記色素は、サブナフタロシアニン系色素又はシアニン系色素であってもよい。この場合、例えば、サブナフタロシアニン誘導体における3つの骨格を同一構造にすることにより、部分Dを短くすることができる。ピークP,Pの位置は、例えば、置換基の導入、置換基の導入位置の変更、メチン鎖の共役長の変更等の方法によって制御され得る。
上記色素は、金属錯体であってもよい。この場合、例えば、構造異性体が少なくなるように配位子を設計することにより、部分Dを短くすることができる。ピークP,Pの位置は、例えば、置換基の種類、導入位置等を変更することにより制御することができる。特に、電子吸引基、電子供与基の種類とその導入位置とを調整することにより、効果的に制御することができる。
サブフタロシアニン誘導体としては、下記一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられる。
Figure 2007062214
式(1)において、R、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11及びR12は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基若しくはニトロ基、又は隣接する置換基と結合して置換基を有していてもよい環を形成している基を示す。
式(1)のR〜R12がハロゲン原子である場合、フッ素原子又は塩素原子であることが好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアルキル基である場合、その置換基ひとつあたりの炭素数は1〜15であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜10であること更に好ましい。アルキル基は直鎖状であっても分岐状であってもよいが、分岐状であることが好ましい。分岐アルキル基であるとき、その総炭素数は3〜8であることが好ましい。あるいは、R〜R12はシクロアルキル基であってもよい。アルキル基は置換基を有していてもよく、例えば、ハロゲン原子や、メトキシ基及びエトキシ基のようなアルコキシ基で置換されていてもよい。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、neo−ペンチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1,3−ジメチルブチル基、1−iso−プロピルプロピル基、1,2−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、1,4−ジメチルペンチル基、2−メチル−1−iso−プロピルプロピル基、1−エチル−3−メチルブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、3−メチル−1−iso−プロピルブチル基、2−メチル−1−iso−プロピルブチル基、1−t−ブチル−2−メチルプロピル基、n−ノニル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポシキエチル基、ブトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基s、ジメトキシメチル基、ジエトキシメチル基、ジメトキシエチル基、ジエトキエシエチル基、クロロメチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、トリフルオロメチル基及び1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロピル基が挙げられる。これらの中でも、メチル基が特に好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアルコキシ基である場合、そのアルキル部分の総炭素数は1〜15であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、3〜12であることが更に好ましい。アルキル部分は、総炭素数3〜8の分岐アルキル基、又は、置換基(好ましくは炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基)を有するシクロアルキル基であることがより好ましい。このシクロアルキル基は、特に、オキシ基と結合する炭素原子と隣接する位置に置換基(好ましくは総炭素数3〜6の分岐アルキル基)を有することが好ましい。また、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が好ましい。
アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、1,3−ジメチルブトキシ基、3−メチル−1−iso−プロピルブトキシ基、2−メチル−1−iso−プロピルプロポキシ基、2−エチルブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−t−ブチルシクロヘキシルオキシ基、2−t−ブチル−6−メチルシクロヘキシルオキシ基及び2,6−ジメチルシクロヘキシルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、メトキシ基が特に好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアルキルチオ基である場合、そのアルキル部分としては、上記アルコキシ基のアルキル部分として挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。アルキルチオ基の具体例としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、iso−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基及び2−t−ブチルシクロヘキシルチオ基が挙げられる。これらの中でも、iso−プロピルチオ基、iso−ブチルチオ基、s−ブチルチオ基、t−ブチルチオ基及び2−t−ブチルシクロヘキシルチオ基が好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアリール基である場合、フェニル基が好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアリールオキシ基である場合、そのアリール部分の総炭素数は6〜14であることが好ましい。アリール部分は単環であっても、縮合多環であっても、環縮合であってもよい。アリール部分の具体例としては、フェニル基、ナフチル基及びビフェニル基が挙げられる。アリールオキシ基は、ハロゲン原子及びアルキル基等の置換基を有していてもよい。特に、オキシ基との結合位に対してオルト位に置換基を有するフェニル基が好ましい。アリール部分が有する置換基としては、総炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基が好ましい。
アリールオキシ基の具体例としては、フェノキシ基、o−トリルオキシ基、2−エチルフェニルオキシ基、2−n−プロピルフェニルオキシ基、2−iso−プロピルフェニルオキシ基、2−n−ブチルフェニルオキシ基、2−iso−ブチルフェニルオキシ基、2−s−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチルフェニルオキシ基、2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチル−6−メチルフェニルオキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチル−4−クロロ−5−メチルフェニルオキシ基、2,6−ジメチルフェニルオキシ基、3−t−ブチルフェニルオキシ基、3−iso−プロピルフェニルオキシ基、4−t−ブチルフェニルオキシ基、2−ブロモフェニルオキシ基及び2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられる。これらの中でも、2−iso−プロピルフェニルオキシ基、2−iso−ブチルフェニルオキシ基、2−iso−ブチルフェニルオキシ基、2−s−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチルフェニルオキシ基、2,4−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチル−6−メチルフェニルオキシ基、2,6−ジ−t−ブチルフェニルオキシ基、2,4,6−トリ−t−ブチルフェニルオキシ基、2−t−ブチル−4−クロロ−5−メチルフェニルオキシ基、2,6−ジメチルフェニルオキシ基、3−t−ブチルフェニルオキシ基、2,6−ジメチルフェニルオキシ基、3−t−ブチルフェニルオキシ基、3−iso−プロピルフェニルオキシ基及び4−t−ブチルフェニルオキシ基が好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアリールチオ基である場合、そのアリール部分としては、上記アリールオキシ基のアリール部分として挙げたものと同様のものが挙げられ、好ましいものも同様である。アリールチオ基の具体例としては、フェニルチオ基、o−トリルチオ基、2−エチルフェニルチオ基、2−n−プロピルフェニルチオ基、2−iso−プロピルフェニルチオ基、2−n−ブチルフェニルチオ基、2−iso−ブチルフェニルチオ基、2−s−ブチルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基及び2,4−ジ−t−ブチルフェニルチオ基などが挙げられる。これらの中でも、2−iso−プロピルフェニルチオ基、2−iso−ブチルフェニルチオ基、2−s−ブチルフェニルチオ基、2−t−ブチルフェニルチオ基及び2,4−ジ−t−ブチルフェニルチオ基が好ましい。
〜R12が置換基を有していてもよいアミノ基である場合、アミノ基が有する置換基としてはアルキル基が好ましい。この場合のアルキル基の好適な具体例としては、R〜R12が置換基を有していてもよいアルキル基である場合についての上記説明において挙げたものと同様のもの挙げられる。
〜R12が、隣接する置換基と結合して置換基を有していてもよい環を形成している基である場合、すなわち、R及びR、R及びR、R及びR、R及びR、R及びR、R及びR、R及びR10、R10及びR11、並びにR11及びR12から選ばれるいずれかの組み合わせにおける2つの置換基が互いに結合して置換基を有していてもよい環を形成している場合、環としては炭化水素環(好ましくはベンゼン環)又は含窒素複素環(好ましくはイミダゾール環)が好ましい。この環は、サブフタロシアニンの母体骨格中のベンゼン環とともに縮合環を形成していることが好ましい。
〜R12は互いに同一でも異なっていてもよいが、これらのうちの少なくとも1つは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルキルチオ基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアリールオキシ基、置換基を有していてもよいアリールチオ基、置換基を有していてもよいアミノ基若しくはニトロ基、又は隣接する置換基と結合して置換基を有していてもよい環を形成している基である。特に、R〜R12が何れも水素原子である無置換体と比較したときの溶解性の向上効果がより大きくなる傾向があることから、R〜R12のうちの少なくとも1つが、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアミノ基又はニトロ基であることが好ましい。R〜R12の好適な組み合わせの具体例を、表1に示す。
Figure 2007062214
式(1)において、Xはハロゲン原子、ヒドロキシ基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいフェノキシ基、置換基を有していてもよいフェニル基又は置換基を有していてもよいアミノ基を示す。
Xがハロゲン原子である場合、臭素原子が好ましい。Xがアルコキシ基である場合、そのアルキル部分は総炭素数1〜8であることが好ましく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、iso−ブトキシ基、s−ブトキシ基及びt−ブトキシ基が好ましい。Xがフェノキシ基である場合、無置換であることが好ましい。
式(1)の色素は、例えば、所定の置換基を有するフタロシアニンを塩化ホウ素と反応させる方法等の従来公知の方法に従って、当業者であれば容易に合成することが可能である。
サブナフタロシアニン系色素としては、サブナフタロシアニン、ニトロサブナフタロシアニン、アミノサブナフタロシアニン、ジエチルアミノサブナフタロシアニン等が挙げられる。
シアニン系色素としては、例えば下記一般式(2)で表される色素が挙げられる。
Figure 2007062214

[式(2)中、Q及びQ’は置換基を有していてもよいインドレニン環、チアゾール環、オキサゾール環、キノリン環、イミダゾール環を示し、Q及びQ’は同一であっても異なっていてもよい。Yは炭素数1又は3のメチン鎖を示す。Zは対イオンを示し、金属錯体を形成していてもよい。アニオンとカチオンは塩形成体であってもよい。]
炭素数1又は3のメチン鎖としては、例えば、−CH=、−CH=CH−CH=等が挙げられる。
金属錯体としては、例えば、少なくとも1つ以上の活性水素をもつアゾ化合物のキレート等が挙げられる。
(光記録材料)
本実施形態に係る光記録材料は、上述した本実施形態の色素を含有する。この光記録材料では、光記録媒体において十分に高い変調度が得られる。上述の色素は単独で、又はその他の成分と適宜組み合わせて、400〜420nmの光の照射により情報を記録するための光記録材料として好適に用いられる。
(光記録媒体)
図2は本発明の光記録媒体に係る光記録ディスクの好適な一実施形態を示す断面図である。図2に示す光記録ディスク1は、基板2の一面上(図中下側)に、反射層6、記録層3、誘電体層4及び光透過層5(光透過部材)がこの順で積層された積層構造を有する。光記録ディスク1は、追記型光記録ディスクであり、400〜420nmの短波長の光によって情報を記録及び再生するためのものである。光記録ディスク1は、特には、405nmの青色レーザ光により記録及び再生が行われる、所謂ブルーレイディスクとして知られる光記録媒体として好適に用いられる。
基板2は、直径が64〜200mm程度、厚さが0.3〜1.6mm、好ましくは0.5〜1.3mm程度のディスク状の形状を有する。記録層3の基板2と反対側、すなわち光透過層5側からの光照射により情報の記録及びその再生が行われる。そのため、基板2は必ずしも光学的に透明である必要はない。具体的には、基板2を形成する材料としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリオレフィン樹脂等の各種プラスチック材料等が好適に用いられる。あるいは、ガラス、セラミックス、金属等を用いてもよい。
基板2の記録層3側の面には、溝状のグルーブGと、隣り合うグルーブG同士の間で相対的に高くなっている(光透過層5側の光記録媒体表面に近くなっている)部分であるランドLとを含む微細な凹凸パターンが形成されている。グルーブGは、通常、スパイラル状に延びた溝として形成されている。グルーブGの深さGd(ランドLの光透過層5側に最も突き出た部分からの深さ)は、好ましくは40〜150nmであり、より好ましくは60〜120nmである。グルーブGの深さGdをこのような範囲とすることによって、十分なトラッキング制御が可能となり、クロストークを抑制できる。グルーブGの深さGdが40nm未満であると、トラック追従のために必要なトラッキングエラー信号が小さくなる他、クロストークの大きくなったり、ウォブル信号のようなプリフォーマット信号が小さくなったりする傾向がある。一方、深さGdが150nmを超えると、ランドL及びグルーブGを高精度で形成することが難しくなるために、反射信号の低下や感度の低下を招き得る。
グルーブ幅Gw(グルーブGの底から深さGdの1/2の高さにおけるグルーブGの幅)は、好ましくは110〜210nmであり、より好ましくは130〜190nmである。グルーブピッチGp(隣り合うグルーブG同士の間隔、例えば、隣り合うグルーブGの幅Gw方向における中心同士の間隔)は、例えば290〜350nmであり、好ましくは310〜330nmである。このような構成とすることによって、クロストークが十分に抑制される。
上記のような凹凸パターンが形成された基板2は、プラスチック材料を用いる場合には、射出成形することにより作製できる。プラスチック材料以外の材料を用いる場合には、例えば、フォトポリマー法(2P法)によって基板2が成形される。
基板2と記録層3との間に設けられている反射層6は、高反射率の金属又は合金から形成されることが好ましい。反射層6は、具体的には、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、インジウム(In)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)及びこれらの少なくとも1種を含む合金から形成されることが好ましい。特に、Ag又はAgを含む合金、例えば、AIS(Ag−In−Sn)を用いることが、適切な反射率が得られるため好ましい。反射率を適切な数値とするために、反射層6の厚さは0〜200nmであることが好ましい。すなわち、基板2と記録層3との組み合わせのみで充分な反射率が得られるならば、反射層を設ける必要はない。反射層6は、例えば、蒸着、スパッタ等の気相成長法を用いて形成することができる。
記録層3は、上述の色素を含有する光記録材料で形成されている。記録層3は、例えば、光記録材料を溶媒に溶解した光記録材料溶液を用いて形成される。光記録材料溶液の溶媒としては、アルコール、脂肪族炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン化アルキル系溶媒等が挙げられる。これらの中でも、アルコール又は脂肪族炭化水素系溶媒を含む溶媒が好ましい。
アルコールとしては、フッ素化アルコール、アルコキシアルコール又はケトアルコールが好ましい。特に、ポリカーボネート基板上に記録層を形成する場合、フッ素化アルコールが好適である。
フッ素化アルコールとしては、1又は2以上のフッ素で置換されたアルキルアルコールが好ましく、特に、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノール(TFP)、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロ−1−ペンタノール(OFP)が好ましい。これらフッ素化アルコールは単独で又は複数種組み合わせて用いられる。また、他のアルコールと併用してもよい。
アルコキシアルコールは、アルコキシ部分の炭素数が1〜4であることが好ましく、かつ、アルコール部分の炭素数が1〜5、さらには2〜5であることが好ましい。また、アルコキシアルコールの総炭素数は3〜7であることが好ましい。アルコキシアルコールの具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)やエチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ、エトキシエタノールともいう)やブチルセロソルブ、2−イソプロポキシ−1−エタノール等のエチレングリコールモノアルキルエーテル(セロソルブ)や1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノール、4−メトキシ−1−ブタノール、1−エトキシ−2−プロパノール等が挙げられる。ケトアルコールとしてはジアセトンアルコール等が挙げられる。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、シクロオクタン、ジメチルシクロヘキサン、n−オクタン、iso−プロピルシクロヘキサン、t−ブチルシクロヘキサンが好ましく、なかでもエチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサンが好ましい。また、ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが挙げられる。
光記録材料溶液は、溶媒中に光記録材料を投入し、必要に応じて加熱しながら、超音波処理等してこれを溶解することにより、調製できる。光記録材料溶液における光記録材料の濃度は、光記録材料溶液全体を基準として0.1〜10質量%であることが好ましい。光記録材料溶液は、光記録材料及び溶媒の他、必要に応じて、バインダー、分散剤、安定剤などを含有していてもよい。
光記録材料溶液を用いて記録層3を形成させる場合、光記録材料溶液からなる溶液層を基板2上に形成する工程の後、溶液層中の溶媒を除去して、光記録材料を含有する記録層3を形成させる。すなわち、光記録ディスク1は、色素を含有する光記録材料を溶媒に溶解した光記録材料溶液からなる溶液層を基板2上に形成させる工程と、溶液層中の溶媒を除去して記録層3を形成させる工程とを備える製造方法によって製造することができる。この製造方法によれば、色素が溶解性に優れるために高い生産効率で光記録媒体を製造できる。溶液層は、スピンコーティング法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などの方法で基板2上に塗布することにより形成される。これらの中でも、スピンコート法が好ましい。
そして、溶液層を室温で放置するか又は必要に応じて加熱して乾燥することにより、溶媒の一部が除去される。このとき、記録層3中には、記録層3全体の3質量%以下程度(好ましくは0.05〜2質量%)のフッ素化アルコール等の溶媒を残存させるように加熱することが好ましい。上記の範囲で、記録層3中にフッ素化アルコール等の溶媒を残存させることにより、記録層3が適度な粘性(流動性)を有するものとなる。これにより、光記録媒体を取り扱う際に生じる微小な曲がりとともに記録層3が変形しても、記録層3は光記録媒体の曲がりが回復した際に粘性によって自己回復し、記録機能が維持される。記録層3全体の3質量%以上の溶媒が残留していた場合、色素の分子が移動しやすくなり、部分的な結晶化が生じやすくなる傾向にある。また、記録層3中からフッ素化アルコール等の溶媒が完全に除去された場合、記録層3の粘性が著しく低くなり、上記の自己回復機能が損なわれる傾向にある。
記録層3の厚さは、5〜100nmであることが好ましい。特に30〜70nmとすると、変調度と反射率とのバランスが良くなるため、より好ましい。この範囲外では、反射率が低下して、再生を行うことが困難となる傾向にある。また、グルーブ23に隣接する部分における記録層3の膜厚が100nmを超えると、変調度と反射率とのバランスが悪化する傾向にある。
記録層3の記録光及び再生光に対する消衰係数(複素屈折率の虚部k)は、0〜0.20であることが好ましい。消衰係数が0.20を超えると十分な反射率が得られない傾向にある。また、記録層3の屈折率(複素屈折率の実部n)は1.8以上であることが好ましい。屈折率が1.8未満の場合、信号の変調度が小さくなる傾向にある。
記録層3上には、誘電体層4が記録層3に密着して設けられている。誘電体層4は、記録層3を機械的、化学的に保護する保護層としての機能とともに、光学特性を調整する干渉層としての機能を有する。誘電体層4は記録層3の記録光及び再生光が入射する側に位置するため、400〜420nmの波長の記録再生レーザ光を透過させることが必要である。
誘電体層4に用いられる材料としては、例えば、Si、Zn、Al、Ta、Ti、Co、Zr、Pb、Ag、Zn、Sn、Ca、Ce、V、Cu、Fe及びMgからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物又はこれらの複合物が好適に用いられる。特に、光透過能の観点から、ZnS−SiO、AlN、Ta等が好ましい。これら誘電体層4は単層であってもよいし、複数の層を有していてもよい。誘電体層4は、例えば、イオンビームスパッタリング法、リアクティブスパッタリング法、RFスパッタリング法等の気相成長法によって形成することができる。
誘電体層4の厚さは、1〜100nm程度が好ましく、2〜10nmがより好ましい。誘電体層4の厚さが1nm未満であると、光透過層5中の成分が誘電体層4を透過して記録層3を侵す傾向があり、一方、100nmを超えると記録感度が低下する傾向がある。
誘電体層4上には、光透過層5が誘電体層4に密着して設けられている。光透過層5は単層であってもよいし、多層構造を有していてもよい。光透過層5は、記録光及び再生光に対して、光学的に透明で、反射が少なく、複屈折が小さい材料から形成されることが好ましい。具体的には、紫外線硬化樹脂、電子線硬化樹脂、熱硬化型樹脂などが好適に用いられる。光透過層5は、例えば、紫外線硬化樹脂などの材料を含む塗布液を反射層4上に塗布してから塗膜を乾燥し、更に必要に応じて樹脂を硬化させることにより形成可能である。塗布の際には、スピンコート法、グラビア塗布法、スプレーコート法、ディップコート法などが適用可能である。このようにして形成される光透過層5の厚さはその材質に応じて適宜選択されるが、光透過能の観点からは、一般に1〜150μmであることが好ましい。
光記録ディスク1の記録層3に対して、400〜420nmの記録光を基板2の光透過層5が形成された面からパルス状に照射することにより、情報を高密度に記録することが可能である。特に、記録層3のグルーブGに沿った部分に集光して情報の記録及び再生を行う、いわゆるin−groove方式で情報の記録及び再生を行うことが好ましい。
本発明の光記録媒体は、上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の光記録媒体は、所謂HD−DVDとして知られる光記録媒体においても同様に用いることができる。この場合、光記録媒体は従来公知のDVDに相当する構成を適用すればよい。例えば、図2の光透過層5に相当する基板(光透過部材)を用意し、これの一面上に直接記録層3を形成し、更にその上に反射層6及び基板2をこの順で積層した構成とすることができる。このような構成の光記録媒体において、記録及び再生を光透過層5に相当する基板の側から行う場合には、図2の実施形態におけるランドLがグルーブとして機能し、グルーブGがランドとして機能することになる。
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表面にプリグルーブ(深さ100nm、幅0.16μm、グルーブピッチ0.32μm)を有するポリカーボネート樹脂基板(直径120mm、厚さ1.1mmの円盤状)を準備した。
一方、色素を、その含有率が光記録材料溶液全体を基準として0.9質量%となるように、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールに加えて、記録層を形成するための光記録材料溶液を調製した。色素としては、t−ブチルサブフタロシアニンを用いた。
続いて、上記ポリカーボネート樹脂基板のプリグルーブが形成された表面上にAgからなる反射層(厚さ20nm)を形成した。その反射層上に、上記光記録材料溶液を塗布し、乾燥させて記録層(厚さ100nm)を形成した。その後、この記録層上に、スパッタ法を用いてSiNからなる誘電体層(厚さ20nm)を形成し、さらに、誘電体層上に紫外線硬化型のアクリル樹脂からなる透明な光透過層(厚さ0.1mm)を形成した。このようにして、光記録ディスクのモデルとなる積層構造体を得た。
(実施例2)
色素として、ニトロサブフタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層構造体を得た。
(実施例3)
色素として、サブナフタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層構造体を得た。
(実施例4)
色素として、下記式(3)で表されるシアニン系色素を用いたこと以外は実施例1と同様にして積層構造体を得た。
Figure 2007062214
(比較例1)
色素として、メチルナフタロシアニンを用いたこと以外は実施例1と同様にして積層構造体を得た。
[吸収スペクトルの測定]
実施例1〜4及び比較例1において用いた各色素を塩化メチレンに溶解させて、得られた溶液の吸収スペクトルを測定した。測定は、UV−VIS吸収スペクトル測定装置(UV3101PC+MPC3100、株式会社島津製作所製)を用いて行った。測定条件としては、スリット幅を20nm、スキャンスピードを5nm/secとした。図3〜図7は、得られた吸収スペクトルを示すグラフである。
得られた各吸収スペクトルにおいて、ピークPの位置(ピークPが極大となる波長λ)、及びピークPの半値幅WのうちピークPが極大となる波長λよりも長波長側の部分Dを算出した。結果を表2に示す。
Figure 2007062214
[記録・再生特性の評価]
実施例1〜4及び比較例1において得られた各積層構造体に対して、波長405nmのレーザ光を用いて線速9.83m/秒で信号を記録した。その後、波長405nmのレーザ光を用いて線速9.83m/秒で再生したときの信号の反射率(Rtop)及び変調度(Mod.)を測定し、その測定値を初期値とした。なお、レンズ孔径NAは0.85であった。また、この初期値は、後述の保存テスト前における値に相当する。結果を表3に示す。
[信頼性の評価]
実施例1〜4及び比較例1において得られた各積層構造体を、80℃、90%RHの環境下、100時間放置する条件で保存テストを行った。保存テスト後の積層構造体について、上記と同様にして反射率(Rtop)及び変調度(Mod.)を測定した。結果を表3に示す。
Figure 2007062214
表3の結果から、実施例1〜4では、保存テスト前及び保存テスト後のいずれにおいても、比較例1に比べて十分に高い変調度が得られることが分かった。
本実施形態に係る色素の各波長に対する吸収スペクトルを模式的に示すグラフである。 光記録媒体の好適な一実施形態を模式的に示す断面図である。 実施例1の色素の吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例2の色素の吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例3の色素の吸収スペクトルを示すグラフである。 実施例4の色素の吸収スペクトルを示すグラフである。 比較例1の色素の吸収スペクトルを示すグラフである。
符号の説明
1…光記録ディスク(光記録媒体)、2…基板、3…記録層、4…誘電体層、5…光透過層、6…反射層、G…グルーブ、L…ランド、P…第1のピーク、P…第2のピーク、λ…第1のピークが極大となる波長、λ…所定の波長、W…第1のピークの半値幅、D…部分。

Claims (5)

  1. 400〜420nmの波長域における所定の波長を有する光を照射することにより情報の記録が可能な光記録媒体の記録層に含有されており、
    当該色素の各波長に対する吸収スペクトルが、前記所定の波長よりも短波長側の最も近くに位置する第1のピークと、前記所定の波長よりも長波長側の最も近くに位置する第2のピークと、を有し、
    前記第1のピークの半値幅のうち前記第1のピークが極大となる波長よりも長波長側の部分が60nm以下である、色素。
  2. 前記第1のピークが極大となる波長が、前記所定の波長から30nm以上離れている、請求項1に記載の色素。
  3. サブフタロシアニン誘導体である、請求項1又は2に記載の色素。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素を含有する、光記録材料。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の色素を含有する記録層を備える、光記録媒体。
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