JP2007062091A - 液体吐出装置及び画像形成装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】吐出効率を向上させると共に、安定吐出を実現させる。
【解決手段】液体が充填される圧力室と、前記圧力室に連通し前記液体が吐出されるノズルと、前記圧力室の一壁面を変位させる変位発生手段と、前記変位発生手段を駆動するための駆動信号を供給する信号供給手段と、を備え、前記圧力室内の前記液体及び前記変位発生手段の共振周期は略同一であり、前記駆動信号は、前記圧力室内の液体を加圧する方向に前記変位発生手段を変位させる押し波形を少なくとも含み、前記押し波形が始まってから終了するまでの第1の時間が前記共振周期の正の整数倍であることを特徴とする液体吐出装置を提供することにより、前記課題を解決する。
【選択図】 図5

Description

本発明は、液体吐出装置及び画像形成装置に係り、特に、アクチュエータの共振駆動により吐出効率を向上させた液体吐出装置及び画像形成装置に関する。
従来より、圧電素子(ピエゾ素子)を備えたアクチュエータを利用して、圧力室内のインクを加圧することにより、圧力室に連通するノズルからインク滴を吐出する、インクジェット方式のヘッド(インクジェットヘッド)が広く用いられている。
この種のヘッドには、アクチュエータの共振周波数(固有振動数)をヘッド(圧力室)内のインクの共振周波数に合わせることで、アクチュエータを共振駆動させて、吐出効率の向上を図ったものがある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
特開2003−291357号公報 特開平7−117225号公報
しかしながら、このような従来のヘッドでは、ヘッド(圧力室)内のインクに対する加振効果は、インク吐出時だけでなく、その後の残留振動にまで影響が及んでしまう。このため、インク滴が余計に吐出されてしまうといった問題や、仮にインク滴が吐出されないような条件で設定されていたとしても安定吐出ができず高周波駆動ができないといった問題がある。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、吐出効率を向上させると共に、安定吐出を実現させた液体吐出装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、液体が充填される圧力室と、前記圧力室に連通し前記液体が吐出されるノズルと、前記圧力室の一壁面を変位させる変位発生手段と、前記変位発生手段を駆動するための駆動信号を供給する信号供給手段と、を備え、前記圧力室内の前記液体及び前記変位発生手段の共振周期は略同一であり、前記駆動信号は、前記圧力室内の液体を加圧する方向に前記変位発生手段を変位させる押し波形を少なくとも含み、前記押し波形が始まってから終了するまでの第1の時間が前記共振周期の正の整数倍であることを特徴とする液体吐出装置を提供する。
本発明によれば、圧力室内の液体と変位発生手段の共振周期(固有周期)を略同一にし、且つ、駆動信号に含まれる押し波形が始まってから終了するまでの時間がその共振周期の正の整数倍にすることで、変位発生手段の共振駆動により圧力室内の液体に対する加振効率が向上するので吐出効率が向上すると共に、液体吐出後の圧力室内の液体の残留振動が低減されるので安定吐出が可能となる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の液体吐出装置であって、前記駆動信号は、前記押し波形の前に、前記圧力室内の液体を減圧する方向に前記変位発生手段を変位させる引き波形を有し、前記引き波形が始まってから前記押し波形が始まるまでの第2の時間が、前記第1の時間の略半分であることを特徴とする。
請求項2の態様は、圧力室内の液体に対する加振効率が向上する。
また、前記目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置を提供する。
本発明によれば、圧力室内の液体と変位発生手段の共振周期(固有周期)を略同一にし、且つ、駆動信号に含まれる押し波形が始まってから終了するまでの時間がその共振周期の正の整数倍にすることで、変位発生手段の共振駆動により圧力室内の液体に対する加振効率が向上するので吐出効率が向上すると共に、液体吐出後の圧力室内の液体の残留振動が低減されるので安定吐出が可能となる。
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。図1に示すように、このインクジェット記録装置10は、インクの色毎に設けられた複数の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印画済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置されている。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコードあるいは無線タグ等の情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻き癖が残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻き癖方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラー31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が平面をなすように構成されている。
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラー31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバー34が設けられており、この吸着チャンバー34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラー31、32の少なくとも一方にモータ(不図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1において、時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は、図1の左から右へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、あるいはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラー線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラー・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラー・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面にローラーが接触するので、画像が滲み易いという問題がある。従って、本例のように、印字領域では画像面と接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される用紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹きつけ、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを紙搬送方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている。印字部12を構成する各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yは、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
記録紙16の搬送方向(紙搬送方向)に沿って上流側(図1の左側)から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K、12C、12M、12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色毎に設けられてなる印字部12によれば、紙搬送方向(副走査方向)について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち、一回の副走査で)記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが紙搬送方向と直交する方向(主走査方向)に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態には限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタ等のライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは図示を省略した管路を介して各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段等)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ等)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列とからなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K、12C、12M、12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定等で構成される。
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹きつける方式が好ましい。
多孔質のペーパに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラー45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
このようにして生成されたプリント物は、排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える選別手段(不図示)が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に、本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成されている。
また、図示を省略したが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられている。
尚、インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K、12C、12M、12Yの構造は共通しているので、以下では、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
〔印字ヘッドの構造〕
図2は、印字ヘッド50のインク吐出面を表した平面図である。図3は、図2中3−3線に沿う断面図である。
図2に示すように、本例の印字ヘッド50は、ノズル51、圧力室52及び供給口54を含む圧力室ユニット53が主走査方向及び主走査方向に直交しない斜めの方向に2次元状(マトリクス状)に配列されている。主走査方向に沿って並ぶように投影される投影ノズル列は一定のノズルピッチPで等間隔に並ぶように配置されており、これにより、記録紙面上に印字されるドットピッチの高密度化が達成されている。
図3に示すように、インクが充填される圧力室52の一端部はノズル51に連通している。圧力室52の他端部には供給口54が形成されており、圧力室52は供給口54を介して共通流路55に連通している。特に図示はしないが、共通流路55は複数の圧力室52と連通しており、各圧力室52に分配供給されるインクが貯留されている。尚、共通流路55には、図1に示したインク貯蔵/装填部14からインクが供給される。
アクチュエータ60は、本発明における変位発生手段に相当し、圧力室52の上壁面を構成している振動板56と、振動板56上に接合された圧電素子58とから構成されている。圧電素子58は圧力室52に対応して設けられており、圧電素子58の上面には個別電極57が形成されている。振動板56はSUS等の導電部材で構成されており、複数の圧電素子58に対する共通電極を兼ねている。振動板56を非導電部材で構成し、その表面に導電層を形成するようにしてもよい。
このように構成されるアクチュエータ60に所定の駆動信号(駆動電圧)が供給(印加)されると、圧電素子58の変位によって振動板56が変形し、これにより、圧力室52内のインクが加圧されてノズル51からインク滴が吐出される。尚、本発明の特徴である駆動信号については後で詳説する。
〔制御系の構成〕
次に、インクジェット記録装置10の制御系について説明する。
図4は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはシリアルインターフェースやパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ74に記憶される。画像メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、画像メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、画像メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示に従ってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示に従って後乾燥部42その他各部のヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、画像メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図4において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、画像メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84は、本発明における信号供給手段に相当し、プリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド50のアクチュエータ60(図3参照)を駆動するための駆動信号を生成し、アクチュエータ60に生成した駆動信号を供給する。ヘッドドライバ84には印字ヘッド50の駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
〔駆動信号〕
次に、本発明の特徴であるアクチュエータ60に供給される駆動信号について説明する。
本実施形態では、アクチュエータ60の共振周期T0と印字ヘッド50内のインクの共振周期T1が同一となるように設計されている。印字ヘッド50内のインクの共振周期T1は、特に、圧力室52内のインクから主に構成される振動系の共振周期をいい、インクの粘度や圧力室52の形状、その他流路の形状等に基づいてその共振周波数T1は定められる。以下では、印字ヘッド50内のインクの共振周期T1を、略して、印字ヘッド50の共振周期T1ともいうことがある。
印字ヘッド50の共振周期T1の測定方法としては、印字ヘッド50内(圧力室52、供給流路55など)にインクが充填された状態において、圧力室52内のインクをいったん引いてから押す、いわゆる引き押し波形の駆動信号をアクチュエータ60に供給することでインク吐出を行い、引き押しの間隔を変化させてその吐出速度を測定する。測定した吐出速度が最も速くなる時間が印字ヘッド50の共振周期の半分であるため、この値を2倍にすることで、印字ヘッド50の共振周期T1を求めることができる。
一方、アクチュエータ60の共振周期T0の測定方法としては、図3において、アクチュエータ60を構成する振動板56の圧力室52側の面、つまり、圧力室52内のインクを直接押す面の変位を測定する。アクチュエータ60に供給する駆動信号を正弦波とし、その正弦波の振動数を変化させながら、その面の変位量が最も大きくなるような振動数(共振周波数)の逆数がアクチュエータ60の共振周期T0となる。変位の測定は、例えば、レーザードプラー変位計を用いることにより測定可能である。
図5は、本実施形態に係る駆動信号の一例を示した波形図である。同図に示すように、本例の駆動信号は、1吐出周期内に1つの吐出用パルス波形100を含んでいる。この吐出用パルス波形100は、最大電位から最小電位に下降する立ち下がり波形100Aと、最小電位を維持する維持波形100Bと、最小電位から最大電位に上昇する立ち上がり波形100Cとから構成される。このような吐出用パルス波形100は、圧力室52内のインクをいったん引いてから押す、いわゆる引き押し波形である。つまり、圧力室52の容積をいったん拡大してから減少するような波形であり、これにより、圧力室52内のインクはいったん減圧されてから加圧され、ノズル51からインク滴が吐出される。より詳しく説明すると、吐出用パルス波形100がアクチュエータ60に印加されると、立ち下がり波形(引き波形)100Aにより圧力室52の容積はいったん拡大して圧力室52内は減圧され、これにより、ノズル51のインクメニスカスは圧力室52側に引き込まれる。維持波形100Bによりインクメニスカスが引き込まれた状態が維持された後、立ち上がり波形(押し波形)100Cにより圧力室52の容積は減少して圧力室52内のインクは加圧されノズル51からインク滴が吐出される。
このような吐出用パルス波形100において、立ち上がり波形100Cの印加が開始されてから終了するまでの時間(印加時間)Tcは、印字ヘッド50の共振周期T1(アクチュエータ60の共振周期T0)の正の整数倍となるように設定されている。つまり、nを正の整数とするとき、次式(1)を満足するように立ち上がり波形100Cが設定されている。
Tc=n×T1 ・・・(1)
これにより、アクチュエータ60の共振駆動により圧力室52内のインクは加振されるのでノズル51からインク滴が効率良く吐出される。一方で、インク吐出後における圧力室52内のインクに対する残留振動は加振効果を受けず、インク吐出が不安定となるといった不具合が生じない。
立ち上がり波形(押し波形)100Cの印加時間Tc、つまり、圧力室52内のインクを押し始めてから押し終わるまでの時間Tcを短くすることにより、インクの吐出速度を早くすることができる。従って、前記式(1)におけるnは小さい方が望ましく、nが1であるときが最も望ましい。
また、図5に示すように、立ち下がり波形(引き波形)100Aの印加が開始されてから立ち上がり波形(押し波形)100Cの印加が開始されるまでの時間は、立ち上がり波形100Cの印加時間Tcの略半分であることが望ましい。即ち、圧力室52内のインクを引き始めてから押し始めるまでの時間が、圧力室52内のインクを押し始めてから押し終わるまでの略半分となるように吐出用パルス波形100が構成されていることが望ましい。このような波形にすることにより、圧力室52のインクに対する加振効率を更に向上させることができる。
アクチュエータ60の駆動信号は、図5に示した例に限定されない。図6は、本実施形態に係る駆動信号の変形例を示した波形図である。例えば、図6の(a)に示した吐出用パルス波形200のように、立ち下がり波形200Aの傾きを図5に比べて緩やかにした波形でもよい。また、図6の(b)に示した吐出用パルス波形300のように、立ち下がり波形300Aの傾きを同図の(a)より更に緩めて、最小電位を維持することなく、立ち下がり波形300Aが終了すると同時に立ち上がり波形300Cが開始されるような波形でもよい。いずれの吐出用パルス波形200、300においても、立ち下がり波形200A、300Aの印加が開始されてから立ち上がり波形200C、300Cの印加が開始されるまでの時間は、立ち上がり波形200C、300Cの印加時間の略半分となるように構成されている。
尚、図5に示したような引き押し波形によってインク吐出する場合、立ち下がり波形100A(200A、300A)の印加時間は特に限定されるものではないが、圧力室52内のインクを引く速度が速いと圧力室52内のインクに対する加振効果が大きくなる。従って、立ち下がり波形100Aの印加時間、即ち、圧力室52内のインクを引きはじめてから引き終わるまでの時間は短い方が望ましく、図5に示した立ち下がり波形100Aのように時間軸に対して略垂直に立ち下がる波形が最も望ましい。
次に、本発明の効果に対する理解を深めるため、図7で示したような印字ヘッド50の等価回路図を用いて分析を行った結果を図8〜図11に示す。図7中、図3と共通する部分には同一符号を付している。図7において、ノズル51、圧力室52及び共通流路55から成る部分64の共振周期は、印字ヘッド50の共振周期T1と等価である。
図8は、本発明が適用された場合を示している。同図の(a)は駆動信号に含まれる吐出用パルス波形500を表している。また、同図の(b)は吐出用パルス波形500が印加されたときのインクメニスカスの速度の変位を表しており、(c)はこのときのインクメニスカスの体積の変位を表している。本例では、アクチュエータ60の共振周期、印字ヘッド50の共振周期、及び、立ち上がり波形(押し波形)500Cの印加時間がいずれも4[μs]となっている。立ち下がり波形(引き波形)500Aの印加時間は1[μs]である。
本例の印字ヘッド50では、メニスカス速度が15[m/s]以上である場合にインク吐出が行われる。吐出用パルス波形500が印加された場合、図8の(b)に示すように、初回の振幅における最大速度部510ではメニスカス速度が15[m/s]を超えるため、ノズル51からインク滴が吐出される。このとき、図8の(c)に示すように、吐出されるインク滴の体積は約2[pl]である。これに対して、次の振幅における最大速度部520ではメニスカス速度が約5[m/s]であるためインク吐出は行われなない。その後、メニスカス速度は徐々に減衰して0に静定する。
図9〜図11は、本発明が適用されなかった場合の例を示している。各図の(a)〜(c)は、それぞれ図7の(a)〜(c)に対応している。
図9は、アクチュエータ60の共振周期、及び、印字ヘッド50の共振周期は4[μs]であり、立ち上がり波形(押し波形)600Cの印加時間、及び、立ち下がり波形(引き波形)500Aの印加時間が1[μs]となっている。つまり、立ち上がり波形(押し波形)600Cの印加時間が印字ヘッド50(アクチュエータ60)の共振周期の正の整数倍ではない構成となっている。
このような吐出用パルス波形600が印加されると、図9の(b)に示すように、初回の振幅における最大速度部610ではメニスカス速度が約28[m/s]となりインク吐出が行われる。これは、図8の場合よりもインクの吐出速度が速いことを示している。しかしながら、次の振幅における最大速度部620のメニスカス速度は約14[m/s]である。これは、少しでもばらつきが生じるとインク吐出が行われてしまうことを示しており、不安定吐出の要因となる。つまり、立ち上がり波形(押し波形)600Cの印加時間が印字ヘッド50(アクチュエータ60)の共振周期の正の整数倍でない場合には、インク吐出後の残留振動にまで加振効果が及んでしまい、安定吐出ができない。これに対して、図8の(b)に示したように、本発明が適用された場合には、インク吐出後の残留振動には影響なく、安定吐出が可能となる。
図10は、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周期が異なる場合の例であり、アクチュエータ60の共振周期が1[μs]、印字ヘッド50の共振周期が4[μs]となっている。吐出用パルス波形700は、図8と同じ条件となっており、立ち上がり波形700Cの印加時間が4[μs]、立ち下がり波形700Cの印加時間が1[μs]である。
このような吐出用パルス波形700が印加されると、図10の(b)に示すように、初回の振幅における最大速度部710ではメニスカス速度15[m/s]に到達せず、インク吐出が行われない。これは、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周波数が異なっていると、圧力室52内のインクは加振されないことを示しており、この結果、アクチュエータ60の低電圧駆動ができず吐出効率が低下する要因となる。これに対して、図8の(b)に示したように、本発明が適用された場合には、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周波数を同一にしておくことにより、圧力室52内のインクは加振されるので、アクチュエータ60の低電圧駆動が可能となり吐出効率が向上している。
図11は、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周期が異なり、更に、立ち上がり波形(押し波形)800Cの印加時間が印字ヘッド50の共振周期の正の整数倍ではない場合を示している。具体的には、印字ヘッド50の共振周期が4[μs]であり、アクチュエータ60の共振周期、立ち上がり波形800Cの印加時間、及び、立ち下がり波形800Aの印加時間が1[μs]となっている。
このような吐出用パルス波形800が印加されると、図11の(b)に示すように、初回の振幅における最大速度部810ではメニスカス速度は約25[m/s]となり、インク吐出が行われる。しかしながら、インクの吐出速度が25[m/s]と速いにもかかわらず、この吐出速度が正となっている時間が吐出速度に対して短いことから液柱が細くなる。この細い液柱をそのあとに発生させる負の速度ですばやく引きちぎる必要があるが、当条件ではその速度が−13[m/s]と最初の速度と比較して小さいため、うまく引きちぎることができなくなっている。このため、細い液柱が細かい複数の液滴に分裂し、多くのサテライトが生じることが懸念される。これに対して、本発明では吐出速度が16[m/s]と普通の速さであり、吐出速度が正となっている時間も吐出速度に対して短くはないため、この条件では液柱は太くなる。この太い液柱を負の速度で引きちぎる際の吐出速度が−7[m/s]で、この速度は液柱を液滴状態とするように引きちぎるには十分な速度である。このように本発明ではサテライトの発生を抑えることができ、画質の観点からも好ましいことが分かる。
以上説明したように、本実施形態によれば、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周期を同一とし、インク吐出用パルス波形の立ち上がり波形(押し波形)の印加が開始されてから解除されるまでの時間を前記共振周期の正の整数倍とすることで、アクチュエータ60の駆動により圧力室52内のインクは加振されるのでノズル51からインク滴が効率良く吐出される。従って、アクチュエータ60の低電圧駆動が可能となり、吐出効率が向上する。また、インク吐出後における圧力室52内のインクの残留振動は加振効果を受けないので安定したインク吐出が可能となる。
また、立ち下がり波形(引き波形)の印加が開始されてから立ち上がり波形(押し波形)の印加が開始されるまでの時間を、立ち上がり波形(押し波形)の印加が開始されてから解除されるまでの時間の半分とすることにより、圧力室52内のインクに対する加振効果を更に向上させることができる。
尚、本実施形態では、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振周期を同一としたが、上記分析によれば、アクチュエータ60の共振周期が印字ヘッド50の共振周期に対して±2%の誤差の範囲内とすることにより、上述したような本発明の効果を十分得ることが可能である。また、立ち下がり波形(引き波形)の印加が開始されてから立ち上がり波形(押し波形)の印加が開始されるまでの時間についても同様であり、立ち上がり波形(押し波形)の印加が開始されてから解除されるまでの時間の半分に対して±2%の誤差の範囲内であれば本発明の効果を十分得ることができる。また、アクチュエータ60と印字ヘッド50の共振モードは1次モードに限定されず、更に、共振モードが異なるような組み合わせでもよい。例えば、アクチュエータ60の1次振動モードにおける共振周期が印字ヘッド50の2次振動モードにおける共振周期と略同一に構成されていてもよい。
以上、本発明の液体吐出装置及び画像形成装置について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
インクジェット記録装置の概略を示す全体構成図である。 印字ヘッドのインク吐出面を表した平面図である。 図2中3−3線に沿う断面図である。 インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図である。 本実施形態に係る駆動信号の一例を示した波形図である。 本実施形態に係る駆動信号の変形例を示した波形図である。 印字ヘッドの等価回路図である。 本発明が適用された場合の効果を示した説明図である。 本発明が適用されなかった場合の説明図である。 本発明が適用されなかった場合の説明図である。 本発明が適用されなかった場合の説明図である。
符号の説明
10…インクジェット記録装置、50…印字ヘッド、51…ノズル、52…圧力室、54…供給口、56…振動板、58…圧電素子、55…共通液室、60…アクチュエータ、80…プリント制御部、84…ヘッドドライバ、100…吐出用パルス波形、100A…立ち下がり波形(引き波形)、100B…維持波形、100C…立ち上がり波形(押し波形)

Claims (3)

  1. 液体が充填される圧力室と、
    前記圧力室に連通し前記液体が吐出されるノズルと、
    前記圧力室の一壁面を変位させる変位発生手段と、
    前記変位発生手段を駆動するための駆動信号を供給する信号供給手段と、を備え、
    前記圧力室内の前記液体及び前記変位発生手段の共振周期は略同一であり、
    前記駆動信号は、前記圧力室内の液体を加圧する方向に前記変位発生手段を変位させる押し波形を少なくとも含み、
    前記押し波形が始まってから終了するまでの第1の時間が前記共振周期の正の整数倍であることを特徴とする液体吐出装置。
  2. 前記駆動信号は、前記押し波形の前に、前記圧力室内の液体を減圧する方向に前記変位発生手段を変位させる引き波形を有し、
    前記引き波形が始まってから前記押し波形が始まるまでの第2の時間が、前記第1の時間の略半分であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の液体吐出装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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