JP2007061824A - 抵抗溶接機 - Google Patents

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Hiroyuki Kawaguchi
博之 川口
Manabu Tsuchiya
土屋 学
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ロイ ワーナー
York Oberdoerfer
オベルドエルファ ヨーク
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ロマスワミィ シバラマニバス
Waseem Faidi
ファイディ ワシーム
Thomas James Batzinger
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Abstract

【課題】 超音波を利用して、現に実施中の抵抗溶接を正しく監視することができる技術を提供する。
【解決手段】 抵抗溶接機は、一対の溶接電極と、ワークを通じて一対の溶接電極間に溶接電流を通電する通電手段と、ワークの溶接箇所に向けて超音波を断続的に送信する送信手段と、ワークの溶接箇所を経由した超音波を受信する受信手段を備えている。通電手段は、断続的にオン/オフすることによって溶接電流を増減調節するスイッチング素子を備えている。送信手段は、スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングに同期して、超音波を送信することを特徴とする。
【選択図】図5

Description

本発明は、超音波を利用して、現に実施中の抵抗溶接現象を監視する技術に関する。
抵抗溶接は、重畳配置した複数のワーク(被溶接材)に溶接電流を通電し、ワーク間に生じる抵抗発熱によってワークを溶融し、ワーク同士を接合するものである。
抵抗溶接を実施する抵抗溶接機は、一対の溶接電極と、ワークを通じて一対の溶接電極間に溶接電流を通電する通電手段を備えている。通電手段は、溶接電流を増減調節可能に構成されている。
超音波を利用して、現に実施中の抵抗溶接現象の進行を監視する技術が開発されている。例えば特許文献1には、溶接中のワークの溶接部に向けて超音波を送信し、溶接部を経由した超音波を受信して、受信波の強度変化に基づいて抵抗溶接現象の進行状態を監視する技術が開示されている。
特開昭52−150760号公報
超音波を利用して現に実施中の抵抗溶接現象の進行を監視する場合、溶接電流の通電に起因するノイズが超音波の受信波形に重畳してしまい、超音波の受信波形を正しく検出できないことがある。
本発明は、上記の課題を解決する。本発明は、溶接電流の通電に起因するノイズの影響を極力避けながら、超音波を利用して現に実施中の抵抗溶接現象の進行を監視できる技術を提供する。
本発明によって具現化される抵抗溶接機は、一対の溶接電極と、ワークを通じて一対の溶接電極間に溶接電流を通電する通電手段と、ワークの溶接箇所に向けて超音波を断続的に送信する送信手段と、ワークの溶接箇所を経由した超音波を受信する受信手段を備えている。通電手段は、断続的にオン/オフすることによって溶接電流を増減調節するスイッチング素子を備えている。そして、送信手段は、スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングに同期して、超音波を送信することを特徴とする。
スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングに同期して超音波を送信するとは、スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングと、超音波を送信するタイミングとが、所定の関係に維持されることをいう。
溶接電流の通電に起因するノイズが発生するタイミングは、通電手段が備えるスイッチング素子がオン/オフするタイミングに一致する。従って、受信手段によって超音波が受信されるタイミングが、スイッチング素子がオン/オフするタイミングに一致することを禁止することによって、超音波の受信波形を正しく検出することが可能となる。
受信手段によって超音波が受信されるタイミングは、送信手段から超音波が送信されるタイミングと、超音波が送信手段から受信手段まで伝播するのに要する伝播時間から決まる。従って、超音波の伝播時間を考慮して、送信手段が超音波を送信するタイミングとスイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングを同期させておけば、受信手段によって超音波が受信されるタイミングが、スイッチング素子がオン/オフするタイミングに一致することを禁止することができる。
本発明を具現化した抵抗溶接機では、スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングに同期して、送信手段が超音波を送信する。受信手段によって超音波が受信されるタイミングとスイッチング素子がオン/オフするタイミングとが一致することが禁止される。溶接電流の通電に起因するノイズの影響を極力受けることなく、超音波を利用して現に実施中の抵抗溶接を監視することができる。
送信手段は、スイッチング素子がオン又はオフするタイミングから所定時間だけ前後させたタイミングに同期して、超音波を送信することが好ましい。
超音波が送信手段と受信手段の間を伝播するのに要する伝播時間は、計算や実験によって予め推定しておくことができる。超音波の伝播時間が推定できれば、スイッチング素子がオン又はオフするタイミングと、送信手段が超音波を送信するタイミングとの間に設けるべき時間差を定めることができる。
この抵抗溶接機によると、スイッチング素子がオン/オフするタイミングと、受信手段が超音波を受信するタイミングとを、安定的にずらすことができる。
上記の抵抗溶接機では、溶接電流を通電するに先立って、送信手段が超音波を送信したタイミングから受信手段が超音波を受信したタイミングまでの時間を計時する計時手段が付加されていることが好ましい。この場合、送信手段は、計時手段によって計時された計時時間に基づいて、前記した所定時間を長短調節することが好ましい。
この抵抗溶接機によると、種々の溶接条件において、スイッチング素子がオン/オフするタイミングと、受信手段が超音波を受信するタイミングとを、確実にずらすことができる。
本発明により、現に実施中の抵抗溶接現象をより正確に監視することが可能となり、その後の溶接条件を調整することができる。例えば、ワークの加熱速度が速すぎれば、溶接電流を低下させて、ワークの加熱速度を適正化することができる。ワークの加熱速度が遅すぎれば、溶接電流を増大させて、ワークの加熱速度を適正化することができる。製造品質を向上させることができ、不良品の発生を減少できることから、製造コストの削減を図ることができる。
最初に、以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。
(形態1) 抵抗溶接機は、第1溶接電極に設けられている第1超音波振動子と、第2溶接電極に設けられて第2超音波振動子を備えている。第1超音波振動子は、ワークの溶接箇所に向けて超音波を送信する。第2超音波振動子は、ワークの溶接箇所を経由した超音波を受信する。
(形態2) 抵抗溶接機は、第2超音波振動子の出力信号から、超音波の受信波形を検出する回路を備えている。
(形態3) 抵抗溶接機は、超音波が第1超音波振動子からワークを透過して第2超音波振動子まで伝播するのに要する時間を計時する回路を備えている。
(形態4) 抵抗溶接機は、超音波が第1超音波振動子からワークを透過して第2超音波振動子まで伝播するのに要する時間に基づいて、ワークの温度を推定する。
(実施例1)
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の技術を実施した実施例1の抵抗溶接機2の構成を模式的に示している。図1に示すように、抵抗溶接機2は、第1溶接電極10と第2溶接電極20を備えている。第1溶接電極10と第2溶接電極20は、互いに対向している。図示省略するが、溶接電極10、20は、例えばロボットアーム等のような移動装置に設けられている。第1溶接電極10と第2溶接電極20は、移動装置によって溶接箇所へと移動し、重畳して配置されているワークW1、W2を加圧挟持する。
抵抗溶接機2は、第1溶接電極10と第2溶接電極20に接続されている電源回路50と、電源回路50の動作を制御するコントローラ30を備えている。電源回路50は、ワークW1、W2を通じて、第1溶接電極10と第2溶接電極20の間に溶接電流を通電する。
図2は、電源回路50の構成を模式的に示している。図2に示すように、電源回路50は、電源電力入力部52と、整流平滑回路54と、インバータ回路56と、トランス回路58等を備えている。電源回路50は、外部の三相交流電源に電源電力入力部52を接続し、電源電力入力部52から三相交流電力を入力する。電源電力入力部52から入力された三相交流電力は、整流平滑回路54によって直流化され、インバータ回路56へと入力される。
インバータ回路56は、第1スイッチング素子56aと、第2スイッチング素子56bと、第3スイッチング素子56cと、第4スイッチング素子56dを備えている。インバータ回路56では、各スイッチング素子56a、56b、56c、56dがオン/オフすることによって、整流平滑回路54側とトランス回路58側が電気的に接続されたり遮断されたりする。例えば、第1スイッチング素子56aと第4スイッチング素子56dがオンするとともに、第2スイッチング素子56bと第3スイッチング素子56cがオフすることによって、整流平滑回路54側とトランス回路58側が電気的に接続される状態となる。この状態を第1オン状態という。また、第1スイッチング素子56aと第4スイッチング素子56dがオフするとともに、第2スイッチング素子56bと第3スイッチング素子56cがオンすることによって、整流平滑回路54側とトランス回路58側が電気的に接続される状態となる。この状態を第2オン状態という。第1オン状態と第2オン状態では、トランス回路58側へ通電される電力の極性が反対向きとなっている。また、すべてのスイッチング素子56a、56b、56c、56dがオフすることによって、整流平滑回路54側とトランス回路58側が電気的に遮断される状態となる。この状態をオフ状態という。
コントローラ30は、インバータ回路56の各スイッチング素子56a、56b、56c、56dのスイッチング動作を制御することによって、インバータ回路56を断続的にオン状態(第1オン状態と第2オン状態の一方)にする。
図3は、インバータ回路56のオン/オフ状態の経時的変化を示している。図3に示すように、コントローラ30は、周期T毎に、インバータ回路56をオン状態(第1オン状態と第2オン状態の一方)に切り換え、所定の期間Tpに亘ってオン状態を維持し、インバータ回路56をオフ状態に切り換える。それにより、整流平滑回路54側からトランス回路58側へ、電源電力が断続的に通電される。コントローラ30は、インバータ回路56をオン状態とする期間Tpの比率Tp/T(いわゆるデューティ比)を調節することによって、トランス回路58へ通電する電力を調節する。コントローラ30は、インバータ回路56の動作周期Tを、例えば1ミリ秒(1000ヘルツ)に設定することができる。
図2に示すように、トランス回路58の二次側には第1溶接電極10と第2溶接電極20が接続されている。トランス回路58に電力が通電されると、第1溶接電極10と第2溶接電極10を介してワークW1、W2に溶接電流が流れる。ワークW1、W2に流れる溶接電流の大きさは、インバータ回路56が通電する電力に応じて変化する。
溶接電流の大きさは、抵抗溶接における施工条件の1つであり、ワークW1、W2の寸法(板厚)や、ワークW1、W2の材質や、必要とする接合強度等に基づいて予め設定されている。コントローラ30は、溶接電流の設定値に基づいて、インバータ回路56のデューティ比を調節する。
ワークW1、W2に溶接電流が通電されると、ワークW1、W2(特にワークW1、W2の接触面)において電気抵抗に起因する発熱が生じる。その結果、ワークW1、W2に亘って溶融部(いわゆるナゲット)Nが形成され(図1参照)、ワークW1、W2が溶接される。ワークW1、W2を溶接したときの接合強度は、形成されたナゲットNの大きさによって変化する。
図1に示すように、抵抗溶接機2は、第1溶接電極10側に設けられている第1超音波振動子12と、第2溶接電極20側に設けられている第2超音波振動子22を備えている。第1超音波振動子12と第2超音波振動子22は、ワークW1、W2の溶融部(ナゲットNの形成部)を挟んで対向している。
超音波振動子12、22は、圧電素子を用いて構成されている。超音波振動子12、22は、超音波の送信波形電圧を入力することによって超音波を送信する。また、超音波振動子12、22は、超音波を受信することによって受信波形電圧を出力する。
図1に示す第1超音波振動子12や第2超音波振動子22の取付位置は、その一例を示すものであって、これに限定されない。第1超音波振動子12や第2超音波振動子22は、各溶接電極10、20が備える電極チップや、電極チップを固定するシャンク等に取付けてもよいし、ブラケット等を用いて各溶接電極10、20の近傍に配置してもよい。
抵抗溶接機2は、送信回路14と、受信回路16と、透過時間計時回路18と、判定回路26を備えている。
送信回路14は、第1超音波振動子12に接続されている。送信回路14は、コントローラ30の指令を受けて、第1超音波振動子12に超音波の送信波形電圧を出力する。送信回路14が超音波の送信波形電圧を出力すると、第1超音波振動子12から溶融部(ナゲットNの形成位置)に向けて超音波が送信される。第1超音波振動子12から送信された超音波の一部は、第1溶接電極10とワークW1、W2と第2溶接電極20を順に伝播し、第2超音波振動子22によって受信される。第2超音波振動子22は、超音波を受信したときに、超音波の受信波形電圧を出力する。
受信回路16は、第2超音波振動子22に接続されている。受信回路16は、第2超音波振動子22の出力電圧から、超音波の受信波形電圧を検出する。
図4は、送信回路14が第1超音波振動子12へ出力する電圧(以下、送信電圧ということがある)と、第2超音波振動子22が受信回路16へ出力する電圧(以下、受信電圧ということがある)の一例を示している。図4に示すように、送信回路14は、コントローラ30の指令を受けて、超音波の送信波形電圧Vtをパルス状に出力する。その結果、第2超音波振動子22が出力する受信電圧には、送信波形電圧Vtの出力時点から時間Pだけ遅れて、超音波の受信波形電圧Vmが現れる。この遅れ時間Pは、第1超音波振動子12から送信された超音波が、ワークW1、W2を透過して、第2超音波振動子22まで到るのに要した透過時間を示している。
送信回路14が送信波形電圧Vtを出力するタイミングは、コントローラ30によって制御される。送信回路14は、コントローラ30の指令を受けて、パルス状の送信波形電圧Vtを様々な時間間隔で出力することができる。例えば図4に示すように、送信回路14は、インバータ回路56の動作周期Tと等しい周期で、送信波形電圧Vtを出力することもできる。
上記したように、コントローラ30は、インバータ回路56と送信回路14の両者の動作を制御する。このときコントローラ30は、送信回路14に送信波形電圧Vtを出力させるタイミングを、インバータ回路56をオン状態からオフ状態に切換えるタイミングや、インバータ回路56をオフ状態からオン状態に切り換えるタイミングに同期させることができる。本実施例では、送信回路14に送信波形電圧Vtを出力させるタイミングと、インバータ回路56をオン状態からオフ状態に切換えるタイミングが同期するように設定されている。
図5は、インバータ回路56の通電状態(オン状態/オフ状態)と、送信回路14が第1超音波素子12へ出力する送信電圧と、第22超音波素子12が受信回路16へ出力する受信電圧を合せて示している。図5に示すように、コントローラ30は、インバータ回路56の通電状態をオフ状態からオン状態に切り換えるタイミング(時刻t1)を基準とし、そこから所定の送信遅延時間Dだけ遅れて、送信回路14に送信波形信号Vtを出力させる(時刻t2)。第2超音波振動子22が出力する受信電圧には、時刻t2から超音波の透過時間Pだけ遅れて、受信波形電圧Vmが現れる(時刻t3)。一方において、第2超音波振動子22が出力する受信電圧には、インバータ回路56の通電状態が切り換わるタイミング(時刻t1、t4)において、ノイズ波形電圧Vnが現れる。ノイズ波形電圧Vnが現れる期間Nに受信波形電圧Vmが出力されてしまうと、受信回路16は受信波形電圧Vmを正しく検出することができない。受信波形電圧Vmは、ノイズ波形電圧Vnが現れない期間Sに出力されることが好ましい。コントローラ30では、受信波形電圧Vmが期間S中に出力されるように、予定される透過時間Pが加味されて、前記した送信遅延時間Dが設定されている。後述するように透過時間Pは溶接期間中に変動し、インバータ回路56がオン状態となる期間Tpも溶接期間中に変動するが、それらの変動幅は期間Sに比較して十分に小さい。
図5は、送信回路14が超音波を送信するタイミングの一例を示すものである。送信回路14が超音波を送信するタイミングは、インバータ回路56の通電状態がオン状態からオフ状態に切り換わるタイミング(時刻t4)を基準にして定めることもできる。
コントローラ30は、インバータ回路56の通電状態を切り換えるタイミングを、受信回路16にも教示する。受信回路16は、教示されたタイミングに基づいて、図5に示す期間Nや期間Sを特定することができる。受信回路16は、期間Sに対応する期間を解析期間とし、解析期間の間だけ受信波形電圧Vmの検出を行う。それにより、ノイズ波形電圧Vnによる誤検出が防止される。
図1に示すように、送信回路14と受信回路16は、透過時間計時回路18に接続されている。送信回路14は、第1超音波振動子12に送信信号を出力すると同時に、送信タイミング信号を透過時間計時回路18へと出力する。一方、受信回路16は、第1超音波振動子12の受信信号から超音波の受信波形を検出すると同時に、受信タイミング信号を透過時間計時回路18へと出力する。
透過時間計時回路18は、送信回路14から送信タイミング信号を入力した時点から、受信回路16から受信タイミング信号を入力した時点までを計時する回路である。透過時間計時回路18は、それらの両タイミング信号の時間差を計時することで、第1超音波振動子12から送信された超音波が、ワークW1、W2を透過して、第2超音波振動子22に到るのに要した透過時間P(図4参照)を計時する。
判定回路26は、透過時間計時回路18に接続されており、透過時間計時回路18によって計時された透過時間Pを入力する。判定回路26は、透過時間計時回路18によって計時された透過時間Pに基づいて、ワークW1、W2に実施されている抵抗溶接現象の進行状態を判定する。
ここで、図10、図11を参照しながら、超音波の透過時間に基づいて、ワークW1、W2に施工されている溶接の状態を判定する原理について説明する。図10は、ワークW1、W2の温度と、ワークW1、W2における超音波の伝播速度の関係を示すグラフである。図11は、溶接時におけるワークW1、W2の温度と、形成されるナゲットの大きさ(いわゆるナゲット径)の関係を示している。ここで、ワークW1、W2のそれぞれは、冷間圧延鋼板(SPC材)であって、それらの板厚は1.2mmである。
図10に示すように、ワークW1、W2における超音波の伝播速度は、ワークW1、W2の温度によって変化する。詳しくは、ワークW1、W2の温度が高いときほど、ワークW1、W2における超音波の伝播速度は遅くなる。そのことから、ワークW1、W2の板厚が同じであれば、超音波の透過時間は、ワークW1、W2の温度によって変化する。超音波がワークW1、W2を透過するのに要した透過時間に基づいて、ワークW1、W2の温度を推定することができる。
図11に示すように、溶接時に形成されるナゲット径は、ワークW1、W2の温度によって変化する。詳しくは、ワークW1、W2の温度が融点を越えた時にナゲットの形成が始まり、ワークW1、W2の到達温度が高くなるにつれて、ナゲット径は大きくなる。先に説明したように、ワークW1、W2の温度に応じて、超音波の透過時間は変化する。従って、超音波の透過時間に基づいて、形成されているナゲット径を推定することができる。例えば、所望するナゲット径に対応する透過時間の基準値を定めておき、計時した超音波の透過時間をその基準値と比較することによって、溶接が完了したのか否かを判定することができる。この基準値を完了判定値という。完了判定値は、判定回路26に記憶されている。
判定回路26は、透過時間計時回路18によって計時された透過時間Pに基づいてワークW1、W2の温度を推定する。このとき、透過時間Pが完了判定値を超えていれば、ワークW1、W2の温度が十分に上昇しており、予定された抵抗溶接が完了したと判定する。
図6は、抵抗溶接機2の動作の流れを示すフローチャートである。図6に示す動作フローに沿って、抵抗溶接機2がワークW1、W2に抵抗溶接を施工する際の動作の流れについて説明する。
ステップS2では、第1溶接電極10と第2溶接電極20によって、重畳配置されているワークW1とワークW2を加圧挟持する。先に説明したように、第1溶接電極10と第2溶接電極20の位置は、ロボットアーム等の移動装置によって調節される。
ステップS4では、溶接電流を通電するに先立って、通電前における超音波の透過時間Pを計時する。計時された透過時間Pは、判定回路26を介してコントローラ30に入力される。
通電前における超音波の透過時間は、ワークW1、W2が加熱される前であることから、主に超音波振動子12、22間の距離によって変動する。従って、ワークW1、W2の板厚に製造誤差が生じていたり、溶接電極10、20に摩耗が生じていたりすると、通電前における超音波の透過時間は変動することとなる。また、溶接電流の通電前であることから、インバータ回路56のスイッチング素子56a〜56d等が発生するノイズの影響を受けることもない。
ステップS6では、コントローラ30が、ステップS4で計時された通電前における透過時間Pに基づいて、送信遅延時間D(図5参照)を修正する。
図7を参照して、コントローラ30が送信遅延時間Dを修正する処理について説明する。コントローラ30は、通電前における透過時間Pに関する基準値を記憶している。この基準値をPxとする。コントローラ30は、ステップS4で計時された透過時間Pと基準値Pxとの差分αを計算し、その差分αだけ送信遅延時間Dを長短調整する。例えば図7(A)に示すように、ステップS4で計時された透過時間Pが基準値Pxよりも短い場合は、その差分αだけ送信遅延時間Dを延長する。あるいは図7(B)に示すように、ステップS4で計時された透過時間Pが基準値Pxよりも長い場合は、その差分αだけ送信遅延時間Dを短縮する。修正後の送信遅延時間D−αが負の値となる場合は、インバータの通電状態が切換えられるタイミング(時刻t1)に先立って、送信波形電圧Vtが出力される。ステップS6における修正により、ワークW1、W2の板厚や、溶接電極10、20に生じている摩耗等による影響を受けることなく、受信波形電圧Vmが現れるタイミングが、予定されていたタイミング(時刻t3)に維持される。
図6のステップS8では、溶接電流の通電が開始される。コントローラ30は、インバータ回路56のオン/オフ制御を開始し、一対の溶接電極10、20間に溶接電流を通電する。ワークW1、W2は、溶接電流が通電されることによって、急速に加熱されていく。
ステップS10では、溶接電流の通電中における超音波の透過時間Pを計時する。このときコントローラ30は、ステップS4で修正した送信遅延時間D±αを用いて、送信回路14に送信波形電圧Vtを出力させるタイミングを、インバータ回路56をオフ状態からオン状態に切り換えるタイミングに同期させる。
ステップS12では、判定回路26が、ステップS10で計時された透過時間Pを、予め記憶している完了判定値と比較する。ステップS10で計時された透過時間Pが完了判定値を超えていれば、ワークW1、W2の温度が十分に上昇しており、必要な接合強度が得られるナゲットNが形成されたと判断できる。この場合、ステップS14へ進み、溶接電流の通電を終了する。一方、ステップS10で計時された透過時間Pが完了判定値を超えていなければ、ステップS10へと戻り、溶接電流の通電を継続する。このとき、超音波の透過時間Pから推定されるワークW1、W2の温度に応じて、溶接電流を増減調節するのも有効である。それにより、ワークW1、W2の加熱速度を適正化することができる。以上の動作フローによって、必要な接合強度を発揮する抵抗溶接が確実に施工される。
抵抗溶接機2は、溶接電流の通電に起因するノイズの影響を受けることなく、現に実施中の抵抗溶接の進行状態を正しく把握することができる。それにより、抵抗溶接現象の進行状態に応じて、例えば溶接電流を増減調節することや溶接電流の通電時間を長短調節すること等が可能となる。抵抗溶接機2は、予定された抵抗溶接を確実に実施することができることから、不良品の発生を減少させて、製品の製造コストを削減することにも寄与することができる。
本実施例の抵抗溶接機2は、図2に示した電源回路50に代えて、図8に示す電源回路150を用いることもできる。図8に示すように、電源回路150は、単相交流用の電源回路である。電源電力入力部152と、サイリスタ回路156と、トランス回路158等を備えている。電源回路150は、外部の単相交流電源から単相交流電力を入力する。電源電力入力部152から入力された単相交流電力は、サイリスタ回路156を介して、トランス回路158に入力される。サイリスタ回路156は、第1サイリスタ156aと、第2サイリスタ156bを備えている。各サイリスタ156a、156bの点弧タイミングは、コントローラ30によって調節される。コントローラ30は、各サイリスタ156a、156bの点弧タイミングを調節することによって、トランス回路158の二次側に流れる溶接電流を調節する。
図9に示すように、電源回路150を用いる場合では、サイリスタ回路156の通電状態が切換わるタイミングにおいて、第2超音波振動子22が出力する受信電圧にノイズ波形電圧Vnが現れる。そのことから、超音波の受信波形電圧Vmは、ノイズ波形電圧Vnが現れる期間Nを避け、ノイズ波形電圧Vnが現れない期間Sに出力されることが好ましい。そのためには、例えばサイリスタ回路156に点弧信号を出力するタイミングと、送信回路14に送信波形電圧Vtを出力させるタイミングを、同期させればよい。例えばサイリスタ回路156に点弧信号を出力するタイミングを基準とし、送信回路14に送信波形電圧Vtを出力させるタイミングを、超音波の透過時間Pを加味して設定した所定の送信遅延時間Dだけ遅らせればよい。
図8に示す電源回路150を利用する場合でも、サイリスタ156a、156bのオン/オフに伴うノイズの影響を受けることなく、超音波の受信波形電圧Vnを正確に検出することができる。超音波を利用して、現に実施中の溶接の進行状態等を正しく監視することができる。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
抵抗溶接機の構成を模式的に示す図。 電源回路の構成を模式的に示す図。 インバータ回路のオン/オフ状態を経時的に示す図。 超音波の送信波形電圧と受信波形電圧を示す図。 インバータ回路の通電状態と超音波の送受信タイミングを示す図。 抵抗溶接機の動作の流れを示すフローチャート。 送信遅延時間の修正処理を説明する図。 電源回路の変形例を示す図。 変形例の電源回路を用いる場合の超音波の送受信タイミングを示す図。 ワークの温度とワーク内における超音波の伝播速度の関係を示す図。 ワークの温度と形成されるナゲットの大きさの関係を示す図。
符号の説明
2・・抵抗溶接機
10・・第1溶接電極
12・・第1超音波振動子
14・・送信回路
16・・受信回路
18・・透過時間計時回路第2超音波振動子
20・・第2溶接電極
22・・第1超音波振動子
26・・判定回路
30・・コントローラ
50・・電源回路
56・・インバータ回路
150・・電源回路の変形例
156・・サイリスタ回路

Claims (3)

  1. 一対の溶接電極と、
    ワークを通じて一対の溶接電極間に溶接電流を通電する通電手段と、
    ワークの溶接箇所に向けて超音波を断続的に送信する送信手段と、
    ワークの溶接箇所を経由した超音波を受信する受信手段を備え、
    前記通電手段は、断続的にオン/オフすることによって溶接電流を増減調節するスイッチング素子を備えており、
    前記送信手段は、前記スイッチング素子がオンおよび/又はオフするタイミングに同期して、超音波を送信することを特徴とする抵抗溶接機。
  2. 前記送信手段は、前記スイッチング素子がオン又はオフするタイミングから所定時間だけ前後させたタイミングに同期して、超音波を送信することを特徴とする請求項1の抵抗溶接機。
  3. 溶接電流を通電するに先立って、前記送信手段が超音波を送信したタイミングから前記受信手段が超音波を受信したタイミングまでを計時する計時手段が付加されており、
    前記送信手段は、計時手段によって計時された計時時間に基づいて、前記所定時間を長短調節することを特徴とする請求項2の抵抗溶接機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010190660A (ja) * 2009-02-17 2010-09-02 Toyota Motor Corp 接合部検査方法及び接合部検査装置

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