しかしながら、上記特許文献1のような従来の方法では、2つの試薬の蛍光強度から生菌および死菌を検出することはできるが、必ずしも全ての細胞を検出できているとはいえない。これはエステラーゼ分解性の色素に共通の課題であるが、微生物の種類によっては酵素の発現量が異なり、全く染色されないものが存在し、またそれ以外にも微生物の置かれている環境や活性状態によって染色性に大きな差があり、一時的な測定結果だけでは正確な生菌の検出ができているとはいえないためである。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、高い染色性、標識力を持つ核酸結合性の蛍光性化合物を使用することで、微生物のもつ酵素活性などの不安定要因に影響を受けることなく、安定して高感度な微生物の検出方法を提供することを目的としている。
また、一般的なフローサイトメータにおいて、当業者に良く知られている事実であるが、微生物を特定するために蛍光強度および前方散乱光を測定し、粒子の大きさあたりの蛍光強度から微生物に相当するかどうかを判断している。そのため、装置には蛍光を検出するための検出器の他に、散乱光を検出するための別の検出器を設ける必要が生じ、装置構成が複雑化するという課題がある。
また、複数の染色試薬を用いる場合、フローセルを流れる細胞一つ一つに対して、複数の励起光源を使用するには、照射位置の距離をおいて高い精度で粒子を流す機構を設け、時間差で出現する発光シグナルを一致させる手段と、流速を頻繁にキャリブレーションする工程が必要となる。そのため、このようなフローサイトメータは高価であり、管理方法も複雑多岐になる。そのため、頻繁に使用される手法としては同一の励起光源で励起することが可能な染色試薬を使用し、同時に異なる蛍光を測定するというものである。しかし、このような手法では使用できる染色試薬に制限があるばかりか、染色試薬を最適な励起波長で使用できないため、感度が低下するという課題がある。
また、フローサイトメータの別形態として、同一の照射位置に複数の励起光源を同時に照射し、得られた複雑な合成蛍光スペクトル波形と、蛍光色素の標準スペクトル波形を比較して、蛍光色素ごとのスペクトルを分離し、強度を比較することができるというものがあり、当業者に良く知られた事実である。しかし、このような手法では、装置が高価になるうえ、既知の試料のみの評価しか行うことができず、未知試料において自家蛍光の多い場合や、蛍光波長のシフトが見られるような場合には、スペクトル波形の分離が行えず、解析が困難になるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、蛍光強度と粒子の大きさを同時に取得できる受像素子を使用して装置構成を簡略化することができ、微生物を固定して測定を行うことにより、異なる励起光源を切り替えることで簡便かつ容易に異なる染色試薬の画像を取得することができ、また最適波長で使用することができるため、小型でコンパクトかつ高精度である微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、特許文献2のような手法の場合、微生物細胞内に残存する構成物質を計測するものであるが、溶菌させるため、それらの構成成分が細胞外に溶出しやすく、発光強度の定量性が低下する。そのため、発光量が少ない場合に、誤って発光していないものとして認識してしまうため、生菌を死菌として計数してしまうなどの誤認識を起こす可能性が高くなる。また、微生物を含むサンプルの前処理の違いによって、発光点によっては1個ではなく、複数個繋がっている場合もあるため、これらを1個として検出してしまい、例えば生菌と死菌が1個ずつ繋がったものでは、生菌数が1個であるものとして計数されてしまい、死菌数を計数することが難しい。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、微生物を溶菌させることなく染色可能である染色試薬を使用することで、試薬の細胞外流出を防ぎ、発光輝度を安定化させ、定量性を持たせることができるため、試薬ごとの輝度の比較による細胞の特性評価、例えば生死判別や、損傷度の評価などを行う精度を高めた微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、蛍光染色した微生物を画像として取得し、菌数を計数する装置において、混入している自家蛍光物質や蛍光色素を非特異的に吸着して発光する夾雑物などの影響により、菌数を精度よく計数することが困難である場合がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、微生物の発光点の色彩的特性を示す特性値を抽出することで、微生物か、微生物以外の夾雑物質であるかを判別することで、複雑な前処理をすることなく特異的に微生物を検出することができ、高精度な微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、微生物の発光点の色彩情報を得るために、2次元空間での顕微蛍光スペクトルを取得すると装置構成が複雑化するため、より簡便に取得できる情報から色彩情報を得ることが求められている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、各波長で取得した画像から各波長の輝度値を読み取ることで、データを取得する装置構成は適当な受光フィルタと受像素子のみで実施することができるため、シンプルかつ小型な装置で、精度を向上させることができる微生物計数装置を実現することができる。
また、色彩情報を抽出し、微生物か微生物以外の夾雑物であるかを判別するとき、新たにデータを取得することなく、同時に微生物の生菌か死菌であるかを精度良く判断することが必要とされる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、色彩情報から生菌、死菌、微生物以外の夾雑物の判別を行うために、生死判断部と、微生物判断部とを別に設け、続けて処理を行うことで、それぞれの特性値を効率的に適用することができ、判別精度を高めた微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、生菌、死菌の判別を行うとき、微生物の種類や、環境によっては生菌であっても死菌試薬が入り込むなど、中間的な発光をするものも多く、これらが存在していても精度良く図ることが必要とされる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、生死菌染色試薬と死菌染色試薬を両方使用し、二つの発光量を比較することで、生菌か死菌かを判断するための、死菌染色試薬の染色量を客観的に評価することができ、単に死菌試薬が入りやすい菌であったとしても、その菌の生菌と死菌での試薬の入り込み方、すなわち染色量を比較することで見極めることができ、中間的な発光を示すような微生物が存在していても、精度良く生死判別を行うことができる。さらに、フラグを立てることでそれ以降の処理を効率化することができる微生物計数装置を実現することを目的としている。
また、生菌、死菌の判別に加え、微生物以外の夾雑物であることを判別する工程の精度が十分でないと、特に菌数の濃度が低い検体でかつ基準値が低い場合には、誤判定による影響が大きく、検査での実使用に耐えうる性能が得られないという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、生菌、死菌であるかを生死菌染色試薬および死菌染色試薬の発光輝度より判断し、それぞれを生菌群、死菌群としてグループ化したのち、それぞれのグループに対して最適な夾雑物の判別パラメータを与えることで、より高精度に夾雑物を除外することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、染色された微生物を画像として取得する場合、微生物が拡散していると、ピントが合いにくく、精度良く輝度を取得することが難しい。
また、異なる波長のデータを取得しようとする際にも、カラーCCDでは、それぞれの波長に色感度をもつ電化結合素子の配列の問題から、微生物の発光点における同じ位置の情報を取得することが難しく、極端には、一方が菌で、一方が菌周辺の位置の輝度値を拾ってしまうなど、正確な色彩情報を取得できないという課題がある。
また、複数の画像を取得して、各波長の輝度値を抽出しようとする場合、微生物が拡散していると、同じ微生物が異なる位置に写ってしまうため、各画像での微生物の一致が難しく、色情報を抽出できなくなるという課題がある。
また、微生物を染色する場合、検体スケールが大きい場合や、検体中の微生物濃度が低い場合には、濃縮するための前処理を行う必要がある。例えば、水道水であれば100mLあたりの菌数検査が必要であり、さらにはボトリングされた飲料であれば、ボトル1本の容量(例えば500mLや1.8mL)での検査が必要になる。さらにはこのような検体に対しても染色試薬は同濃度で染色処理をするために大量の蛍光色素が必要となるため環境負荷影響が大きく、また検体に含まれる成分の影響によって染色力が異なるため、安定して染色できるように検体成分を分離して観察することが要求されている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、検体中の微生物を表面に固定することで、発光点ごとに色彩情報を精度良く求めることが容易になり、簡便かつ精度の高い微生物計数装置を提供することができる。
また、検体をろ過して捕集するする手段を用いた場合、メンブランフィルタなどの表面に微生物を濃縮し、検体中に溶解している染色阻害成分を除去することができ、安定して細胞内での経時的な発光を観察することができる。また最小限の蛍光色素を使うことため環境負荷影響を最小限に低下させた微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、色彩情報を取得する方法において、発光点が非常に小さいものであった場合、RGBなど波長が異なる画像の輝度情報を取得するためにカラーCCDのようなカラー情報が取得できる受像素子を使用すると、受像素子上の色感度をもつ素子が並んで配列されており、同一画素での色情報とはならないため、1画素のズレが影響してしまうような微小な発光体では、正確に色彩的特性を取得することが困難であるという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、色彩的特性を算出するために必要な波長の異なる画像の輝度値を、それぞれの色ごとに取得した画像から抽出することで、1画素のズレもなく、正確に同じ位置の色彩情報を取得することができ、微生物のような微小な発光点であっても、精度良く色彩的特性を取得でき、生菌、死菌、または微生物以外の夾雑物であることを判別することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、微生物の発光点を含む画像から色彩的特性を示すデータを取得し、解析する手法において、全画素の輝度データから、目的の発光物の輝度値を効率的に抽出し、各画像の発光物のデータから色彩的特性を効率良く算出することが求められる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、画像から発光点を抽出する発光点抽出部と、抽出した発光点を位置補正して各画像の発光点を照合する発光点照合部とを設け、これらを連続的に行うことで、画像の全画素データから、必要なデータのみを抜き出し、結合させて目的のデータを効率的に作成することができ、さらに処理データを必要最小限に留めることができるため、処理速度を速め、計測時間を短縮することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
また、発光点を特定して抽出する際、できるだけ漏れがなく、かつある程度発光点を選別して抽出し、次の工程を効率化することが必要とされる。
また、微生物が繋がって存在している場合、画像上の発光点は一つのオブジェクトを形成しており、色彩的特性が混合されてしまうために、発光点の判別および計数精度が悪化してしまうという課題がある。このとき発光点の中で個別の微生物の位置を特定し、細胞一つ一つを別々に検出して計数することが必要とされる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点をあらかじめ設定した範囲にある輝度と面積のものとし、そのときの輝度値は発光点の中の最大輝度値や、輝度の重心の値を使用することで、個々の微生物の中心地を特定し、微生物の特性を最も反映させた値を使用することができるため、精度の高い色彩的特性を取得し、検出漏れも少ない微生物計数装置を実現することができる。
また、発光点を抽出して照合させた際、使用した補正値が適正であり、発光点の照合が正確に行えているかどうかを客観的に判断する指標が必要とされる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点を照合した際に、重なったものの一致率を算出し、表示させることで、補正値が適正であり、結果が妥当であるかどうかを判断することができる。もし不適であった場合に補正値を再設定して計測し直すことができ、計数精度が高い微生物計数装置を実現することができる。
また、複数の染色試薬で蛍光染色し、蛍光発光を示す微生物が、ある染色試薬のみ発光して画像に発光点を形成するが、他の波長で発光せず、画像に発光点が形成されなかった場合、発光しなかった波長では発光点が抽出されないため、輝度値を取得することが困難になる。しかし、画像から発光点に該当する輝度情報を正確に抽出して色彩的特性を算出することが必要である。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、発光点が抽出されない場合に、別の画像にある発光点の座標をもとに、同じ座標の輝度値を抽出することにより、発光点が得られなかった画像からも、発光点の輝度値を精度良く取得することができ、精度の高い発光点の判別、生菌、死菌の計数を行うことができる微生物計数装置を実現することができる。
また、発光点の輝度情報を取得したのち、そのデータに対して使用する評価パラメータを調整する必要があるが、処理端末のメモリキャッシュ上では、1回分の測定データしか保存することができず、それ以前に測定したデータを評価することができない。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、測定し、各画像から発光点の輝度値を取得して収集したデータを一度出力させ、蛍光評価部の前に評価するデータを読み込ませる工程を設けることで、過去に取得したデータを繰返し評価することができるようになり、データの再検証を行って、より精度の高い判別、計数を行うことができる微生物計数装置を提供することができる。
また、微生物の生菌および死菌の総数を算出するためには、捕集面の全体面積に対する測定面積を知る必要があるが、測定エリアは、機械的誤差に起因して装置間や測定毎に差が生じる。そのため、総数の算出を精度よく行うためには、測定した有効面積を各種パラメータから算出することが求められている。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、有効エリア算出部を設けることで、測定毎に最適な有効面積を求めて、算出に使用することが可能になり、精度の高い微生物の検出方法を提供することを目的としている。
また、画像から発光点を抽出して生菌、死菌を計数する手法において、検体中の全数を測定するために、微生物が存在する領域を全て測定することが必要であるが、測定面積が極めて広くなり、測定に膨大な時間がかかってしまうという課題がある。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、全ての領域を測定せずに、測定した領域の面積を算出して、測定有効エリア面積とし、微生物が存在する全表面積との値から、検体中の微生物の全数を算出して、迅速に微生物数を算出することができる微生物計数装置を提供することができる。
また、CCDなどの受像素子を使用した場合、受像素子の画素ごとの感度差が大きい場合や、画素が機能せずデータを取得できない場合に、画像上で白い発光点が形成されいわゆるドット欠けと呼ばれる現象がおきる。このとき、画像上の発光点を菌と誤認識することや、ドット欠けの部分と微生物の発光点が重なって輝度が正確に得られない場合など、検出精度が低下する原因となりうる。
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、受像素子のドット欠けを削除するために、あらかじめドット欠けのみが移り込んでいる暗視野画像を取得し、発光点を含むサンプルの画像から減算することで、ドット欠けの部分を削除し、発光点のみの画像を取得することができる微生物計数装置を提供することを目的としている。
本発明の微生物計数装置は上記目的を達成するために、請求項1記載のとおり、微生物を蛍光染色する工程をもち、細胞を発光点として画像に取得可能な受像素子と、色彩的特性を示す値から微生物の生菌、死菌、もしくは微生物以外の夾雑物のいずれかであることを判断する蛍光評価部とを備えることを特徴としたものであり、微生物の発光点の色彩的特性を示す特性値を抽出することで、微生物か、微生物以外の夾雑物質であるかを判別することで、複雑な前処理をすることなく特異的に微生物を検出することができ、高精度な微生物計数装置を実現できる。
また、請求項2記載の微生物計数装置は、請求項1記載の微生物計数装置において、画像から発光点または発光点以外の輝度値を取得し、色彩的特性を算出することを特徴としたものであり、顕微蛍光スペクトル解析機構などの複雑な装置構成を必要とせず、受光フィルタと受像素子で行えるため、よりシンプルかつ小型な微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項3記載の微生物計数装置は、請求項1または2記載の微生物計数装置において、蛍光評価部が、生菌群または死菌群のいずれかであることを判断する生死判断部と、それ以降に微生物か微生物以外の夾雑物であるかを判断する微生物判断部とを設けたことを特徴としたものであり、色彩的特性により生菌、死菌をあらかじめ分類することで、生菌のような発光を示す夾雑物と、死菌のような発光を示す夾雑物を、それぞれ精度良く分離することができるため、微生物の認識力の高い微生物計数装置を実現できる。
また、請求項4記載の微生物計数装置は、請求項3記載の微生物計数装置において、生死判断部において、発光点ごとに生死菌染色試薬と死菌染色試薬の染色量を求め、あらかじめ設定されたしきい値を使用して、発光点ごとに生菌群または死菌群のいずれかを示すパラメータを与えることを特徴としたものであり、生菌または死菌であることを判別するために、生菌および死菌の両方に浸透する生死菌染色試薬と、生菌には浸透しにくく死菌に浸透しやすい死菌染色試薬を使用し、2つの染色試薬の染色バランスから死菌染色試薬の染色量を判断することで、例え微生物の菌種や、環境によって生菌でも死菌染色試薬が浸透しやすい場合であったとしても、生死菌染色試薬の浸透量から、死菌試薬の浸透量が多いかどうか、すなわち死菌であるかどうかを客観性を高めて判断することができ、より生菌、死菌の判別感度が高い微生物計数装置を実現できる。また、生菌群、死菌群を分類し、パラメータを与えることで、以降の処理工程の中で、生菌、死菌の分類を行いやすく、処理速度が速い微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項5記載の微生物計数装置は、請求項3記載の微生物計数装置において、微生物判断部において、生菌群または死菌群を示すパラメータから発光点が生菌群もしくは死菌群のいずれかであることを判断し、発光点ごとに色彩的特性を算出して、生菌群、死菌群それぞれに設定されたしきい値と比較し、発光点が生菌、死菌、もしくは微生物以外の夾雑物のいずれかであることを判断することを特徴としたものであり、生死判断部の後段に微生物判断部を設け、それぞれに色彩的特性を算出して夾雑物を判別して除外することで、生菌だけでなく、死菌の検出精度も高めた微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項6記載の微生物計数装置は、請求項1から5のいずれかに記載の微生物計数装置において、微生物を固定する固定部を設けたことを特徴としたものであり、例えばメンブランフィルタなどのろ過膜や、スライドグラス表面、培養ディッシュ底面などの表面に固定する固定部により、微生物の画像を取得する際の露光時間を上げて感度を向上させ、またピントの調節が容易になるため簡便な操作性を実現でき、さらに色彩的特性を求めるために複数の画像にて複数の発光点をまとめて取得することができるため、精度の良い判別装置でかつまとめて処理するため計測を迅速化することを両立させた微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項7記載の微生物計数装置は、請求項3から5のいずれかに記載の微生物計数装置において、撮像エリアごとに波長が異なる画像を連続的に取得し、微生物判断部において各画像の輝度から色彩的特性を示す値を算出することを特徴としたものであり、色彩的特性を示す画像を各撮像位置で連続して取得することで、サンプルの変化の影響を受けず、精度の高い画像を取得することができる微生物計数装置を実現できる。
また、請求項8記載の微生物計数装置は、請求項1から7のいずれかに記載の微生物計数装置において、取得した各画像に含まれる発光点の座標を抽出する発光点抽出部と、画像ごとに抽出した発光点の座標に補正値を与え、発光点を照合する発光点照合部を備えることを特徴としたものであり、画像の全画素数の膨大なデータから、必要なデータのみ抽出して以降の解析操作を行うことができるため、迅速に計数を行える。また発光点の照合も画像をそのまま行うのではなく、画像から発光点の情報を抜き出した後に行うことで、画像処理時に膨大なデータをメモリに保存して繰返し読みに行く画像処理の負荷が軽減され、迅速な微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項9記載の微生物計数装置は、請求項8記載の微生物計数装置において、発光点抽出部において、あらかじめ設定された面積および輝度の範囲内のものを発光点とし、発光点の輝度値を、抽出した対象物の最大輝度値とし、座標を最大輝度値のピクセルの座標とすることを特徴としたものであり、抽出する発光点を輝度と面積で範囲を限定することにより、画像中のゴミやノイズなどをあらかじめ除去し、それらを解析するのにかかる時間等の負荷を軽減し、迅速な微生物計数装置を実現できる。
また、請求項10記載の微生物計数装置は、請求項8記載の微生物計数装置において、発光点の照合後に一致率を算出し、出力することを特徴としたものであり、発光点の照合に使用する位置補正値が適当であったかを評価する指標とすることができ、もし、一致率が悪かった場合に、補正値を修正して繰返し評価することも可能となり、計数精度を保つことができる微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項11記載の微生物計数装置は、請求項8記載の微生物計数装置において、照合する画像に対応する発光点が抽出されない場合に、対応する各画像の座標の輝度値を使用することを特徴としたものであり、発光点を抽出して処理する際に、発光点が一方の画像で検出されなかった場合に、他の発光点を認識してしまう場合や、また対応する発光点が見つからずにエラーを起こしてしまうことを防止することができる。さらに個別の発光点として抽出されないような塊の発光点から、他の画像にある発光点の情報を元に、分離して個別に色彩的特性を求めることができるため、塊に繋がったような微生物であってもそれぞれ生菌、死菌の判別を行うことができ、計数精度が高く、確実な微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項12記載の微生物計数装置は、請求項8記載の微生物計数装置において、発光点ごとに座標値および取得した各輝度値を持たせたデータを作成し、出力する出力部を備えることを特徴としたものであり、一度測定したデータに対し変数を調整し、再度解析することが可能となり、データの見直しが行えるため、安全性の高いシステムに適用できる微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項13記載の微生物計数装置は、請求項1から12のいずれかに記載の微生物計数装置において、測定した有効エリアの面積を求める有効エリア算出部を設け、有効エリア面積をもとに生菌または死菌の総数を算出することを特徴としたものであり、微生物の固定部の全表面をスキャンすることによる膨大な検査時間を短縮するために、固定部の一部を測定し、測定した有効エリア面積を算出して全面積から割り返して微生物の全数を求めることにより、大幅に検査時間を短縮することができ、迅速な微生物計数装置を実現することができる。
また、請求項14記載の微生物計数装置は、請求項1から13のいずれかに記載の微生物計数装置において、受像素子のドット欠けを含む暗視野画像を取得し、微生物の発光点の画像から減算して除去する輝点除去部を備えることを特徴としたものであり、ドット欠けを誤認識し、発光点を隠してしまうなどに起因するポジティブまたはネガティブエラーを防止し、精度の高い微生物計数装置を実現することができる。
本発明の微生物計数装置によれば、微生物以外の夾雑物を除外することができ、微生物の発光点を認識する認識力を高め、検出精度を高めることができる。
また、色彩的特性によって微生物を精度良く判別することができる装置を小型かつコンパクトで実現することができる。
また、微生物を高精度に判別しつつ、迅速に計数を行うことができる。
また、生菌群、死菌群をあらかじめ分類することで、色彩的特性による夾雑物の判別精度を高めることができる。
また、生死菌染色試薬と死菌染色試薬を使用し、二つの染色試薬の染色量の割合によって死菌染色試薬の染色量を評価することで、一見死菌染色試薬が浸透しているものでも、客観的に染色の妥当性を評価することができ、擬陰性を防止することができる。
また、生菌群、死菌群に分類したときに、パラメータを与えて判別しやすくすることで、夾雑物の判別工程を簡便に行うことができる。
また、微生物を固定することで、画像のピントあわせが容易に行うことができるようになる。
また、複数の波長の画像を切り替えて取得することが可能になり、簡便な装置構成で位置精度の高い色彩特性を取得することができる。
また、微生物を固定することで、2重に数えることなく、正確に計数を行うことができる。
また、微生物を固定することで、複数の微生物を含む発光点を一つの画像に同時に取得することができ、計数を迅速化することができる。
また、微生物を固定することで、複数の画像との比較をした際、照合が容易になり、間違えて他の発光点と照合してしまうことを防止することができる。
また、微生物を固定することで、発光が微弱な染色試薬を使用した場合でも、露光時間をあげて感度を向上させて使用することができ、様々な染色試薬を使用することが可能になり、計数装置のバリエーションを広げることができる。
また、画像から発光点を抽出することで、膨大な画像データから必要なデータのみを抽出して解析に使用することができ、使用メモリの削減、処理時間および検査時間の削減を図ることができる。
また、発光点を抽出したのちに発光点のデータを照合することで、画像をあわせることによるデータ処理時間に比べ、データ量が少ないため処理時間を削減することができ、検査を迅速化することができる。
また、発光点を抽出する際に、適切な輝度値と面積の範囲のものを抽出することにより、発光点のなかからゴミなどをある程度削除し、処理を迅速化することができる。
また、同一撮像エリアにおいて、連続的に波長を切り替えて画像を取得することにより、測定のタイムラグを与えることなく、退色などの経時変化の影響を受けないで精度の高い色彩情報を得ることができる。
また、一致率により、発光点の照合精度を常に確認することができ、間違いの少ないデータを得ることができる。
また、発光点以外の輝度も使用することで、発光点として抽出されなくても、本来の輝度値を取得できることになり、精度を高めることができる。
また、出力部を設けることで、過去に取得したデータもあらたな条件で確認する事ができ、データを取り直す必要がなくなる。
また、有効エリア面積を算出させることで全エリアを計測しなくても、微生物の全数を算出させることができ、測定を省力化することができる。
また、ドット欠けを除去させることで、擬陰性、擬陽性を防止し、認識精度を高め、安全管理に使用することができる。
また、位置ズレ誤差を削除し、各画像の発光点について座標をもとに比較することができるようになり、微生物の判定処理を効率化することができる。
また、発光点が一方の画像で検出されない場合があっても、発光点のない部分の輝度値を利用することで、より正確性を高めることができる。
また、補正値を用いることで、発光点が多い場合に、画像あわせ処理を簡略化し、時間を短縮することができる。
また、補正値を使用することで、発光点が非常に少ない場合にも、発光点が一致しているかどうかを判断する事ができる。
また、補正値により画像を補正することで、画像処理工程を簡略化し、迅速かつ低コストな画像処理方法とすることができる。
また、蛍光染色試薬の蛍光発光を精度良く評価することにより、より確実に微生物だけを検出することができる。
また、微生物だけを検出することにより、検査結果の確実性が向上し、安全性の高い食品や化成品、水などの製品を提供することができる。
また、微生物だけを検出することにより、より確実に微生物の発酵工程を管理することができ、品質の安定した製品を提供することができる。
また、微生物だけを検出することにより、廃水や土壌などの汚染処理の工程管理が迅速に行えるようになり、効率化された処理技術が実現できる。
また、色度、色相角、彩度、明度などの色彩的特性を使用することで、複数の画像の輝度から判別精度の高い蛍光発光の特徴量を示す値を簡便に求めることができる。
また、画像あわせにより位置ズレを補正することで、微生物のような非常に小さい発光点であっても、正確に一致させることができる。
また、各画像から輝度を抽出し、色彩的特性を判別する工程を実行することができる。
また、同一の発光点の範囲を細胞の大きさ程度とすることで、走査時間を最小限に抑えることができる。
また、同一の発光点の範囲を細胞の大きさ程度とすることで、つながった細胞でも、それぞれで輝度値を求め、生菌、死菌の判断をすることができる。
本発明の請求項1記載の発明は、微生物を蛍光染色する工程をもち、細胞を発光点として画像に取得可能な受像素子と、色彩的特性を示す値から微生物の生菌、死菌、もしくは微生物以外の夾雑物のいずれかであることを判断する蛍光評価部とを備えることを特徴としたものであり、微生物の発光点の色彩的特性を示す特性値を抽出することで、微生物か、微生物以外の夾雑物質であるかを判別でき、複雑な前処理をすることなく特異的に微生物を検出することができる作用を有する。
また、請求項2記載の発明は、画像から発光点または発光点以外の輝度値を取得し、色彩的特性を算出することを特徴としたものであり、顕微蛍光スペクトル解析機構などの複雑な装置構成を必要とせず、受光フィルタと受像素子で行えるため、よりシンプルかつ小型化が可能になるという作用を有する。
また、請求項3記載の発明は、蛍光評価部が、生菌群または死菌群のいずれかであることを判断する生死判断部と、それ以降に微生物か微生物以外の夾雑物であるかを判断する微生物判断部とを設けたことを特徴としたものであり、色彩的特性により生菌、死菌をあらかじめ分類することで、生菌のような発光を示す夾雑物と、死菌のような発光を示す夾雑物を、それぞれ分離することができるため、微生物の認識力が高まるという作用を有する。
また、請求項4記載の発明は、生死判断部において、発光点ごとに生死菌染色試薬と死菌染色試薬の染色量を求め、あらかじめ設定されたしきい値を使用して、発光点ごとに生菌群または死菌群のいずれかを示すパラメータを与えることを特徴としたものであり、死菌であるかどうかを客観性を高めて判断することができ、生菌、死菌の判別感度を高めると同時に、パラメータによって処理を効率化することができるという作用を有する。
また、請求項5記載の発明は、微生物判断部において、生菌群または死菌群を示すパラメータから発光点が生菌群もしくは死菌群のいずれかであることを判断し、発光点ごとに色彩的特性を算出して、生菌群、死菌群それぞれに設定されたしきい値と比較し、発光点が生菌、死菌、もしくは微生物以外の夾雑物のいずれかであることを判断することを特徴としたものであり、生死判断部の後段に微生物判断部を設け、それぞれに色彩的特性を算出して夾雑物を判別して除外することで、生菌だけでなく、死菌の検出精度も高めることができるという作用を有する。
また、請求項6記載の発明は、微生物を固定する固定部を設けたことを特徴としたものであり、例えばメンブランフィルタなどのろ過膜や、スライドグラス表面、培養ディッシュ底面などの表面に固定することにより、微生物の画像を取得する際の露光時間を上げて感度を向上させるという作用を有する。またピントの調節が容易になるため簡便な操作性を実現できるという作用を有する。さらに複数の画像にて複数の発光点をまとめて取得することができるため、精度良く迅速に行うことができるという作用を有する。
また、請求項7記載の発明は、撮像エリアごとに波長が異なる画像を連続的に取得し、微生物判断部において各画像の輝度から色彩的特性を示す値を算出することを特徴としたものであり、色彩的特性を示す画像を各撮像位置で連続して取得することで、サンプルの退色などの経時変化による影響を受けず、画像の輝度情報の精度を高めることができるという作用を有する。
また、請求項8記載の発明は、取得した各画像に含まれる発光点の座標を抽出する発光点抽出部と、画像ごとに抽出した発光点の座標に補正値を与え、発光点を照合する発光点照合部を備えることを特徴としたものであり、画像の全画素数の膨大なデータから、必要なデータのみ抽出して以降の解析操作を行うことができるため、迅速に計数を行うことができという作用を有する。また発光点の照合を、画像をそのまま行うのではなく、画像から発光点の情報を抜き出した後に行うことで、画像処理時に膨大なデータをメモリに保存して繰返し読みに行く画像処理の負荷を軽減することができるという作用を有する。
また、請求項9記載の発明は、発光点抽出部において、あらかじめ設定された面積および輝度の範囲内のものを発光点とし、発光点の輝度値を、抽出した対象物の最大輝度値とし、座標を最大輝度値のピクセルの座標とすることを特徴としたものであり、抽出する発光点を輝度と面積で範囲を限定することにより、画像中のゴミやノイズなどをあらかじめ除去し、それらを解析するのにかかる時間等の負荷を軽減することができ、迅速化するという作用を有する。
また、請求項10記載の発明は、発光点の照合後に一致率を算出し、出力することを特徴としたものであり、発光点の照合に使用する位置補正値が適当であったかを再度評価する指標とすることができるため、データの精度を向上させることができるという作用を有する。
また、請求項11記載の発明は、照合する画像に対応する発光点が抽出されない場合に、対応する各画像の座標の輝度値を使用することを特徴としたものであり、発光点を抽出して処理する際に、発光点が一方の画像で検出されなかった場合に、他の発光点を認識してしまう場合や、また対応する発光点が見つからずにエラーを起こしてしまうことを防止し、安定して計測を行うことができるという作用を有する。また、個別の発光点として抽出されないような塊の中の発光点から、個別に色彩的特性を求めることができるため、複数個繋がったような微生物であっても別々に生菌、死菌の判別を行うことができ、計数精度を高めることができるという作用を有する。
また、請求項12記載の発明は、発光点ごとに座標値および取得した各輝度値を持たせたデータを作成し、出力する出力部を備えることを特徴としたものであり、一度測定したデータに対し変数を調整し、再度解析することが可能となり、データの見直しが行えるため、測定結果の精度を高めることができるという作用を有する。
また、請求項13記載の発明は、測定した有効エリアの面積を求める有効エリア算出部を設け、有効エリア面積をもとに生菌または死菌の総数を算出することを特徴としたものであり、微生物の固定部の全表面をスキャンすることによる膨大な検査時間を短縮するために、固定部の一部を測定し、測定した有効エリア面積を算出して全面積から割り返して微生物の全数を求めることにより、大幅に検査時間を短縮することができるという作用を有する。
また、請求項14記載の発明は、受像素子のドット欠けを含む暗視野画像を取得し、微生物の発光点の画像から減算して除去する輝点除去部を備えることを特徴としたものであり、ドット欠けを誤認識し、発光点を隠してしまうなどに起因する擬陽性または擬陰性を防止することができるという作用を有する。
(実施の形態1)
まず、微生物を含む試料を測定するために、固定部となるスライドグラスや、培養ディッシュ、マルチウェルプレート、またはろ過膜や、測定に適した形状を持つセルの観察面表面の表側、もしくは裏側の一方に微生物を固定する。固定は、ポリ‐L‐リジンのような試薬や、ゼラチンなどの粘着性、付着性をもった高分子材料を表面に薄く塗布し、微生物を含んだ試料を滴下し、表面に吸着させる。またメンブランフィルタのようなろ過膜の場合、上方から液体試料を吸引してろ過し、メンブランフィルタ表面に微生物を平面状に捕捉し、固定する。本発明において、最も好適に実施するものとしては、このようなろ過膜を使用することで、以下の染色や洗浄などの操作が簡便かつ微生物を流失することなく扱うことができるのでよい。また、メンブランフィルタは、薄く、小さいため、そのままでは取り扱いが容易でない。そのため、専用の支持台、吸引口付きのホルダーを使用したり、もしくは膜に保持部を結合するか、一体化させたデバイスとすることで容易に膜を取り扱うことができる。
また本発明において微生物を含有するか含有する可能性のある検体は液状検体であるが、検査対象が飲料水などの液状サンプルの場合は、それ自体が液状検体となる。検査対象が野菜や肉をはじめとする食材などの固体サンプルの場合は、それをホモジナイズして液状検体としたり、その表面から綿棒などを用いて細胞および微生物を採取し、これを生理食塩水や燐酸緩衝液などに遊離させて液状検体としたりする。また、まな板などの調理器具などが検査対象となる場合、その表面から綿棒などを用いて微生物を採取し、これを生理食塩水などに遊離させて液状検体とする。こうした液状検体をメンブランフィルタで吸引および加圧濾過、また場合によっては超音波を利用して加振ろ過することでメンブランフィルタ上に細胞および微生物を捕捉することができる。
また、固定部としては、メンブランフィルタ以外にも、プレパラート表面や、可視光の透過性が高く、平面性の高いプレートの表面や、プレート間の間隙に固定し、もしくは粘着性を持ったシート状、ディスク状のチップデバイス表面、平板培地表面、もしくはシャーレやディッシュ、マルチウェルプレートなどの表面、電極材料や吸着材料の表面などに行う。このとき、固定は、遠心力や、静電気力、誘電泳動力、疎水力などの物理吸着力以外にも、ゼラチンなどの接着成分によるものや、抗原・抗体反応、リガンド・レセプターの反応などの生物的な結合力を用いることができる。
また、蛍光染色試薬の浸透を調整するために、必要に応じて、適当な濃度の2価金属錯体や、カチオン性界面活性剤を混合した水溶液などを液体試料に混合させるか、もしくは細胞および微生物が固定部の上方から接触、またはろ過するか、または下方から接触させるなどの手法により、細胞および微生物の細胞膜透過性を一定に保たせることができる。
なお、2価金属錯体としては、エチレンジアミン四酢酸などを0.5から100mM程度の濃度範囲にて使用する。
なお、カチオン性界面活性剤としては、Tween20やTween60、Tween80、TritonX−100などの細胞に対して侵襲性が低いものが使用でき、これらを0.01から1%程度の濃度範囲にて使用する。
次に蛍光染色手段として、乾燥防止成分を混合し、生死菌染色試薬または死菌染色試薬のいずれか、または両方を一定濃度含む染色試薬を固定表面に一定量滴下する。
蛍光色素は、核酸結合性の構造をもつが好ましく、生死菌染色試薬として使用するものは、紫外励起で青色蛍光を発するものであれば、1,4−ジアミジノ―2−フェニルインドール、青色励起で緑色蛍光または黄緑色、黄色蛍光を発するもので、例えばアクリジンオレンジ、オキサゾールイエロー、チアゾールオレンジや、SYTO9、SYTO13、SYTO16、SYTO21、SYTO24、SYBR Green I、SYBR Green II、SYBR Goldなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素系化合物が使用できる。また、用途によってはグラム陽性菌を染色し、グラム陰性菌は染色されないヨウ化ヘキシジウムなどの生死菌染色試薬を使用することも有効である。
また、死菌染色試薬としては、緑色蛍光を発するもので、例えばアクリジン2量体、チアゾールオレンジ2量体、オキサゾールイエロー2量体などのモノメチン架橋非対称シアニン色素2量体や、SYTOX Green、TO−PRO−1などのモノメチン架橋非対称シアニン色素系化合物、赤色蛍光を発するものであれば、ヨウ化プロピジウム、臭化ヘキシジウム、臭化エチジウム、LDS−751、SYTOX Orangeなどのポリメチン架橋非対称シアニン色素などが使用できる。
なお、これらの蛍光色素は、細胞および微生物を含む試料に対して、あらかじめ0.1から100μMとなるようを混合しておき、同時に作用させるか、もしくは別々に、時間を置かず、もしくは適当な時間間隔を開けて所定の濃度で作用させることとする。
なお、メンブランフィルタ上に捕捉した細胞および微生物を含む物質表面が、測定中に乾燥し、発光強度が変化することを防ぐための手段として、染色試薬には10から60%w/vのグリセロールや、10から90%v/vのD(−)−マンニトールやD(−)−ソルビトールなどの糖アルコール類のいずれかを1種類以上混合させておく。
なお、乾燥固化して保存する目的として、ポリビニルアルコールを10から80%程度の適当な濃度にて混合、もしくは後から表面を覆うことで、蛍光発光を比較的安定に保存することができる。
なお、固定部として適しているメンブランフィルタとしては、例えば、孔径が0.2μm〜1μmのポリカーボネート製など公知のものを用いることができる。
また、画像検出には、蛍光色素に対して特定の波長を照射するための励起光源、分光フィルタ、励起光を直径3mm程度に集光する為の集光レンズ、励起光の成分を除去する為のハイパスフィルタ、試料から発せられる蛍光から特定の波長成分を取り出すための受光フィルタ、拡大する為のレンズユニット、蛍光像を画像の電気信号に変換するためのCCDやCMOSなどの受像素子により構成される。
蛍光染色試薬として使用する蛍光色素の主な発光波長であるが、例えば、青色励起の場合には波長が470nmから510nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が510nmから540nm付近の蛍光を発する。緑色励起の場合には、510nmから550nm付近の波長成分を含む励起光を照射し、波長が560から620nm付近の蛍光を発する。オレンジ色励起の場合には、波長が540nmから610nm付近の波長成分を含む励起光を照射した場合、波長が560nmから630nm付近の蛍光を発する。
そのため、検出手段である励起光源として、発光ダイオードを使用する場合、青色のものでは、好ましくは480nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるもの、黄色からオレンジ色のものでは、好ましくは560nm付近の波長を発することができるものを使用する。
なお、発光ダイオードを使用する場合、励起光の成分が広帯域に渡る場合が多く、蛍光画像のバックグラウンドの増加の要因となりうるため、適切な干渉フィルタを使用して、特定の波長成分を切り出して使用する。
また、励起光源としてレーザーを用いる場合には、青色のものでは、好ましくは475nm付近の波長を発することができるもの、緑色のものでは、好ましくは535nm付近の波長を発することができるものを使用する。
また、励起光源としてハロゲンランプや水銀ランプを使用する場合には、適当な分光フィルタとして、染色試薬の励起波長に合わせて最適な干渉フィルタを使用することができる。また、0.1から10nmの波長分解能を有する反射型や透過型の回折格子により、最適な角度を与え、任意の波長を含む励起光を取り出すことができる。
集光レンズは、蛍光染色された細胞および微生物が展開されているメンブレンフィルタに対し、照射範囲が、例えば直径が3mm程度の一定面積となるよう励起光を照射することができる。さらに光を散乱させるための拡散板などを上流側に組み合わせることでより均一な励起光を照射することもできる。
サンプルに照射された励起光により発生した蛍光は、ハイパスフィルタを通過することで、色彩的特性は損なわれず、効果的に励起光由来の光成分がカットされる。
当該蛍光はレンズユニットを通し、受光部として単板カラーCCDや、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3原色を取得できるRGB3種類の蛍光フィルタを含む3CCDなどの電荷結合素子ユニットを用いて露光時間0.1秒から10秒程度の露光時間でRGB3色からなる画像撮影することにより取得される。
取得する色の輝度情報は、蛍光染色試薬である蛍光色素の蛍光波長範囲であれば、使用可能である。例えばシアニン色素であるSYBR Greenの場合、極大蛍光波長は521nmであるが、蛍光スペクトルは620nm付近まで広がっており、生死菌染色試薬として使用した場合、530nm付近の緑色(G)を画像(a)、610nm付近の赤色(R)を画像(b)として取得することができ、(a)、(b)を使用して微生物と夾雑物との判別が行える。
また、単板モノクロCCDやCMOSを使用した場合、適切な受光フィルタを切り替えて使用することで、必要な波長の輝度情報を含む画像を取得することができる。このとき、別の利点として、同一のCCDを使用することで、異なるCCDによる感度特性の差の影響は全く受けずに測定を行うことが可能となり、感度補正を行う工程を省略することができる。
これらの操作により取得された複数の蛍光画像は、演算部であるマイコンや外部端末上のプログラムによって処理される。
演算部には、画像からドット欠けなどの輝点を除去するための輝点除去部と、画像から発光点を抽出するための発光点抽出部、複数の画像の発光点を照合し、一致させる発光点照合部、照合されて数値が結合されたデータを出力する出力部、蛍光発光を評価する蛍光評価部、染色試薬の輝度より微生物の生死を判別する生死判断部、そして色彩的特性を表す変数によって発光点が微生物もしくは夾雑物であることを判別する微生物判断部、そして測定した画像の有効面積を算出する有効エリア算出部により構成される。
まず、輝点除去部であるが、これはCCDなどの受像素子に見られる画素ピクセルの感度ムラや、感度消失した部分によるドット欠けと呼ばれる現象があるが、このドット欠けの輝点が画像上に現れると、微生物の発光点と間違える恐れがあるか、または微生物の発光点を取得できない原因となり、誤差の要因となりうる。そのためこのような輝点は除去する必要があるが、輝点除去用の画像として、光源を照射しない暗視野画像を、露光時間をサンプル測定と同程度かもしくは長めに設定して取得し、輝点のみが写っている画像を得る。そして発光点を写した各画像から輝点画像を減算することにより、輝点のみを削除することが可能となる。そのようにして輝点を除去した画像を以下において使用する。
発光点抽出部について、画像中に含まれる発光点のうち、設定された面積、輝度の範囲に該当するものを抽出する。例えば、面積を2から15、輝度を15から255とすると、面積が16以上であるような大きい夾雑物はあらかじめカウントから除外することができ、また輝度が14以下のバックグラウンドノイズ(暗ノイズ)を除去することができる。このしきい値は、レンズの倍率や、励起光源の強度、露光時間などにより最適な値が変化するため、微生物を最適に抽出できる値は、あらかじめ検証して確認することが必用である。
なお、最大輝度を示した座標の(x、y)の値、RGBの値を含む場合、それぞれの輝度も数値として同時に抽出される。この処理は、汎用的な画像処理ソフトウェアであるImage Pro Plusなどを使用して実行できる。また、同様の処理を組み込んだプログラムとすることもできる。
次に発光点照合部によって、抽出された発光点の数値データと、異なる輝度情報を含む同位置の発光点の数値データとを、座標をもとに比較、照合され、結合される。
このとき、異なる輝度情報を含む画像とは、異なる受光フィルタで取得された画像のことを指すが、画像間では受光フィルタの特性や、機械的誤差に起因する座標ズレがわずかに生じる為、そのまま画像のピクセル座標を照合した場合、一致しないことがある。そこで、一方の座標に画像ズレを補正する座標補正値を補って照合させるのだが、特に機械的誤差については温湿度などの使用環境の影響により、使用するごとに座標ズレの値が変化してしまう場合がある。そのため、座標補正値を測定毎に更新して使用することで、測定ごとに最適な値を使用することが有効である。
画像中に見られる微生物の発光点を示すオブジェクトは、拡大レンズ系の合計が200から300倍程度のときは、オブジェクトの面積は受像素子上で1から20ピクセル程度になる。これは微生物の細胞1個の直径が0.6から5μm程度であるときに撮像された値である。一方、微生物細胞が2から複数個繋がっていた場合、発光点のオブジェクトの面積は大きくなり、20ピクセルを越えるものも見られる。このような大きな発光点のオブジェクトは、共焦点光学系などの特殊な光学系を使用しない限りは、殆どの場合一つのオブジェクトとして検出され、二つのオブジェクトを分離して検出することが難しい。このとき問題となるのは、二つのオブジェクトが異なる発光特性をもつ場合に、各画像を比較して発光点を照合して輝度を結合したときに、同一のオブジェクトとして検出される、隣り合った微生物の発光輝度を誤って結合してしまうと、本来の微生物の発光特性とは全く異なる不正確なデータが形成されてしまうという恐れがある。そのような事例を防止するためには、発光点の座標をオブジェクトの最大輝度値を示す座標とし、画像間の発光点を照合するときは、その座標から非常に近傍に限定された誤差範囲エリア内にあるもう一方の画像の座標をもつ発光点とのみ結合されるようにすることが必要である。
そのため、同一の発光点のオブジェクトとして抽出されているものであっても、照合した場合に一致しないことがありうる。そのとき結合する輝度データが存在しなくなってしまうことを防止するために、照合するもう一方の画像に一致する発光点が検出されなかった場合に、もう一方の画像中の同じ座標のピクセルの輝度値を抽出し、この値を結合させることが有効である。これにより、発光点が一方の画像でしか抽出されなかった場合でも、輝度情報を欠如させることなく、精度よく照合データを作成することができることになる。
また、最終菌数の検出精度にも関連するが、生菌と死菌が繋がって存在している場合、上記のような工程を持たせなければ、オブジェクトを死菌として検出してしまう可能性があるが、これにより生菌と死菌が繋がったものとして検出することができるようになり、培養法などとの相関性が向上することに繋がる。
照合されて結合されたデータは、出力部によりデータファイルとして出力される。この時点でデータファイルとして保存することで、この後の工程を一度にまとめて処理することも可能となるため、作業が効率化される。
発光点の輝度情報をもつデータファイルに対して、生死判断部によって発光点が生菌群であるか、もしくは死菌群であるかいずれかに分類される。このとき、生菌群、もしくは死菌群であることを示すパラメータを与えることで、以降の処理が行いやすくなり、処理を効率化することができる。尚、パラメータとは生菌群であれば1、死菌群であれば2であるというように、発光点のデータの変数を与えることにより行うこととする。
生菌群または死菌群であるかを判断する為には、以下のようにグラフを使用することが望ましい。まず、発光点のデータのうち、生死菌染色試薬の輝度と、死菌染色試薬の輝度を用いて、この二つの値よりドットプロットを作成し、表示させる。これは、横軸に生死菌染色試薬の輝度値、縦軸に死菌染色試薬の輝度値をとり、検出された発光点毎にプロットしていく。尚、ドットプロットの表示は、画像処理を行うプログラムのインターフェース上に行うことが良く、発光点のデータファイルを読み出した場合に表示させるようにするとよい。
次に、表示されたドットプロットに対して、カーソルを使用して境界線を作成する。境界線は、1本ないし複数本の直線や曲線、多角線などで自由に作成することができるものとし、プロットを見ながら、プロットの集団を分類しやすいように、作成する。なお、境界線の作成工程は、簡単に行えるようにグリッドなどを使用したり、輪郭やプロットにトラップさせるような機能を持たせると、作成が容易であり、かつ正確に行うことができる。
また、多角線の場合には、線が交差しないように、一方の方向のみに作成可能とすると確実である。
作成した境界線は、取り消すことや、保存することができるようにし、繰り返し使用することができるようにする。
次に、作成した境界線をもとに、境界線に相当するしきい値を算出する。算出されたしきい値に対して、グラフの上・左側にあるものが死菌群、反対が生菌群として分類し、パラメータを与えて処理する。
生菌群、死菌群が判断された後、微生物判断部によって夾雑物を分離除外する場合は、以下の処理を行う。微生物と夾雑物の判別は、色彩的特性の値を算出することによってなされる。
色彩的特性とは、RGBの輝度値より演算されて与えられた色度、色相角などの色彩的特長を示す値のことである。色彩的特長を示す表色系は、Lab表色系や、LCh表色系、XYZ表色系などの表色系が使用される。ここではXYZ表色系に基づいた色度を用いる。取得される輝度はRGBの色空間のものであるため、このRGBそれぞれの輝度値から、XYZ表色系への変換が行われる。
(数式1)
X=0.3933×R/255+0.3651×G/255+0.1903×B/255
Y=0.2123×R/255+0.7010×G/255+0.0858×B/255
Z=0.0182×R/255+0.1117×G/255+0.9570×B/255
さらに、
x=X/(X+Y+Z)
y=Y/(X+Y+Z)
式中のR、G、BはそれぞれR輝度値、G輝度値、B輝度値であることを示す。これにより細胞および微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が算出される。
発光点毎に算出された色度の値であるが、発光点はそれぞれ生菌群、死菌群であるかを判別するためのパラメータが与えられており、生菌群であった場合には、生菌群に対して設定された色度しきい値と比較し、死菌群であった場合には、死菌群に対して設定された色度しきい値と比較して、それぞれに夾雑物が除外される。夾雑物が除外され、生菌、死菌として判断されたものは、積算され、カウントされる。
次に、このカウント値に対して、実際に使用した検体に含まれる単位量あたり(たとえば1mLや1グラムなど)の菌数の総数を算出する。そのためには、測定した画像のうち、画像処理して使用した有効エリア面積を有効エリア算出部にて求める。測定に使用した有効エリアは、画像の補正値を変数とした関数で求められる。
画像の縦の長さをP、横の長さをQ、縦方向の座標補正値をα、横方向の座標補正値をβとすると、1画面あたりの有効エリア画素数Mは数式2のように表される。
(数式2)
M =(P−α)×(Q−β)
また、有効エリア面積は、レンズ系の倍率などから、画素あたりの面積を求め、画素あたりの面積をsとするとし、測定視野数をNとして、1画面あたりの有効エリア面積Sと全有効面積は、
(数式3)
S = Ms
全有効面積:S×N
となる。
得られた面積に対して、微生物の固定部の固定部分の表面積(例えば、メンブランフィルタの全面積)の値を割り返す。これにより得られた数値を、カウント菌数に掛け合わせることで、最終的な、微生物の生菌または死菌の総数を算出し、菌数を求めることができるのである。
以上の手法を用いて、試料中や細胞培養液に含まれていた微生物の生死を判別し夾雑物と分離して、数を計量することができるのである。
図1は、本発明を好適に実施するための微生物計数装置の一態様を示す概念図である。この微生物計数装置1は、検出手段として励起光源2、干渉フィルタ3、集光レンズ4、ハイパスフィルタ5、受光フィルタ6、レンズユニット7、受光素子8を含む。励起光源2から発せられた励起光から目的の波長を取り出すために干渉フィルタ3で分光する。分光された励起光は集光レンズ4を経て検査台9にセットされたメンブランフィルタ10(別途の操作によりメンブランフィルタ上に発光手段である核酸結合性の蛍光色素で染色された微生物を捕捉してあるもの)上に集光される。励起光源2から発せられた励起光は、集光レンズ4によって集光されるが、その際、集光レンズ4によって励起光を照射する範囲は直径3mm程度の微小な一定面積に集光される。励起光により発する蛍光は、励起光成分を除去するためにハイパスフィルタ5を経て、受光フィルタ6、レンズユニット7により拡大され、受光素子であるCCDユニット11に到達し、電気信号化される。これにより得られた信号は画像化され、演算部12によって画像処理される。
図2は、演算部12における演算工程フローを示した図である。輝点除去部13、発光点抽出部14、発光点照合部15、出力部16、蛍光評価部17、そして有効エリア算出部18から構成されている。
まず座標補正用画像を読み込んで座標補正値を算出する。次にしきい値などの変数を入力し、輝点除去部13によって輝点を除去した画像を作成する。続いて、発光点抽出部14により画像中の発光点を特定し、数値データを抽出する。画像によっては座標補正値により座標を補正する。異なる輝度情報を含む発光点のデータは、発光点照合部15によって照合し、結合される。これにより集合された数値データは、出力部16によってデータファイルに出力され、保存される。発光点の数値データは蛍光評価部17によって蛍光の色情報の解析が行われる。蛍光評価部17は生死判断部19と微生物判断部20から構成される。生死判断部19はデータファイルに対して生菌群または死菌群であるかを判別し、発光点毎に生菌もしくは死菌のフラグを立てる。微生物判断部20により、フラグを検出して生菌群か死菌群かを判断した後、各群ごとに設定した微生物もしくは夾雑物であるかをしきい値と照合して判別する。また有効エリア算出部18では、所得した画像から有効エリアを求め、全面積に対して割り返すことで最終の菌数を算出、出力する。これらは画像処理をプログラミングされたマイコン等であり、外部接続した端末などによって操作されるソフトウェアと通信して使用されるものも該当する。
図3(a)は、微生物判断部の詳細を示す。E.coliを含む水検体をメンブレンフィルタにろ過し、生死細胞用蛍光色素であるSYTO9と、死細胞用蛍光色素であるヨウ化プロピジウムを用いて染色したものを、単板モノクロCCDと、青色励起光照射におけるG輝度画像とR輝度画像を取得したデータの一例を示す表である。このとき、B輝度画像は、励起光の波長と重なるために取得できず、数値を代入して使用している。この変数は、最適な値に調整することができる。
図3(b)に示される工程は、RGBの輝度から、XYZ表色系の(x、y)の値への変換を示す。この工程はまず、RGBの輝度を測定する手段によって取得されたRGBそれぞれの輝度値から、リニアRGBへの変換、ガンマ補正がなされる。これにさらに視覚的特性を重み付けし、微生物または夾雑物かの判断に必要な値として、最終的にx、yの値が求められる。そして、しきい値と比較することで、微生物か夾雑物であるかを判別する。このときのしきい値は実験により決定する。