JP2007060806A - 電動レーシングカートの駆動制御装置 - Google Patents

電動レーシングカートの駆動制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】初級者から上級者に至るまでそれぞれの運転技術に応じたコーナリングを可能にする電動レーシングカートを提供する。
【解決手段】車速に対する横加速度の大きさに応じてスピンし易さを判定するスピン判定マップ17と、スピンし易い走行状態におけるアクセル踏み込み量・操舵方向・ブレーキの有無・車速に応じた駆動力低減制御指令値を設定したデータマップ18とを設ける。スピン判定マップでは初級者・中級者・上級者に応じた各閾値を設定する。運転技術に応じてスピンし易いと判定する閾値を変えると共に、種々の走行状態に応じて低減制御指令値を変えることにより、1台のカートで、初級者から上級者まで対応したコーナリング制御を行うことができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、後輪の左右で直結された駆動輪を有し、コーナリング時には車両後部を外側に振り出すように後輪をスリップさせて走行する電動レーシングカートの駆動制御装置に関するものである。
一般に、レーシングカートの場合には駆動輪となる後輪の左右が直結されており、高車速でコーナリングするためには、車両後部をカーブの外側に振り出すように後輪をスリップさせている。そのようなレーシングカートおいて、例えば環境を考慮して駆動源に電動モータを用いた電動レーシングカートがある(例えば特許文献1参照)。
特開2004−180800号公報
レーシングカートにおいて高車速でコーナリングする場合には、上記したように車両後部をカーブの外側に振り出すように後輪をスリップさせることにより、車両の姿勢が不安定になるためコーナリング操作が難しい。ある車速で後輪をスリップさせてコーナリングすることができる経験者にとっては、車両姿勢の不安定さを克服してより高車速でコーナリングしてタイムを更新することで達成感を感じることができるが、初級者にとっては、後輪をスリップさせながらコーナリングするという運転技術の敷居が高いため、スリップさせながらコーナリングできるようになる前にカートの運転を断念してしまう場合がある。特に、電動カートにあっては、バッテリなどの重量物を搭載していることから車重が重いため、低速トルクを大きくしており、コーナリング時にスピンし易いため、その傾向が顕著になる虞がある。
例えば、初級者でもある程度の後輪スリップによりコーナリングを可能にするように車体などのを設計することが考えられるが、そのような初級者向けに設計されたカートでは上級者は不満を感じてしまう。そこで、運転技術のつがいに応じて仕様違いのカートを用意することも考えられるが、設備費が高騰化するという問題が生じる。
このような課題を解決して、初級者でも後輪をスリップさせながらのコーナリングを容易に行うことができると共に上級者にとっては高い運転技術をもってコーナリングすることができる電動レーシングカートを実現するために本発明に於いては、電動レーシングカートの駆動輪を駆動するモータを制御する駆動回路と、前記駆動回路に制御指令値を出力する制御手段と、車速を検出する車速センサと、車体の横加速度を検出する横加速度センサとを有し、前記制御手段が、コーナリング時の前記車体のスピンし易さを車速に対する横加速度の大きさから判定するスピン判定手段と、前記車体のスピンし易さに応じて前記モータの駆動力を低減するための低減制御指令値を設定する低減制御指令値設定手段とを有し、前記スピン判定手段により前記車体がスピンし易いと判定された場合には前記駆動回路に前記低減制御指令値を出力するものとした。
特に、前記低減制御指令値が、アクセルセンサにより検出されるアクセル踏み込み量の大きさと、操舵方向センサにより検出される操舵方向と前記横加速度の方向との対比と、ブレーキセンサにより検出されるブレーキ操作の有無と、前記車速の大きさとから選択されたものを考慮して低減量を変えるように設定されていると良い。また、前記スピン判定手段による前記車体のスピンし易さが、車速に対する横加速度の大きさの違いに合わせて複数の閾値として設定され、かつ前記複数の閾値が選択可能にされていると良い。
このように本発明によれば、スピンし易い状態にあると判定された場合にはモータに対して駆動力を低減する低減制御指令値を出力することにより、駆動輪のグリップ力の低下によるスピンを回避することができる。これにより、初級者でも、従来のカートではスピンしてしまう車速及び横加速度の大きさでコーナリングしても、グリップ力が確保されてスピンに至らずにコーナリングを行うことができるようになり、初級者がコーナリングの運転技術の敷居の高さからカート走行を断念してしまうことを思い留まることが期待される。
特に、スピンし易さを、アクセル踏み込み量の大きさと、横加速度の方向と操舵方向との対比と、ブレーキ操作の有無と、車速の大きさとから任意のものを選択し、その組み合わせに応じて低減制御指令値の低減量を変えることにより、種々の状況に対応した制御を行うことができ、高精度なコーナリング制御を行うことができる。また、スピンし易さを、車速に対する横加速度の大きさの違いに合わせて複数の閾値として設定し、かつ選択可能にすることにより、運転技術の違いに応じた閾値の設定が可能になり、1台のカートで、初級者から上級者まで対応したコーナリング制御を行うことができ、上級者も満足させられる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明が適用された電動カート1を示す平面図である。この電動カート1の機械的構造は従来の一般的な電動カートと同様であって良いため、その詳しい説明を省略する。
フレーム構造の車体2の前後部にはそれぞれ左右の前輪3及び後輪4が設けられており、車体2には、その中央部にはシート5が設けられ、左右両側部であって前後方向について中間部にはそれぞれバッテリ6設けられ、図示例では右後輪4の近傍には後輪4の車軸4aを駆動するモータ7が設けられ、シート5の後方にはモータ7を制御するコントローラユニット8が設けられている。なお、前輪3はステアリングホイール9により転舵される。
また、車体2には制御に必要な各種センサが適所に配設されており、本発明に基づく制御ブロック図を示す図2を併せて参照して、制御系について次に示す。コントローラユニット8内には、制御手段としてCPUを有するコントローラ8aと、コントローラ8aからのPWM制御信号に応じてモータ7に駆動電流を流すための駆動回路としてのインバータ8bと、モータ7に流れる電流を検出するための電流センサ8cとが設けられている。
コントローラ8aには、アクセルペダル(図1では図示せず)の踏み込み量を検出する変位センサからなるアクセルセンサ11と、ステアリングホイール9の操舵方向を検出する操舵方向センサ12と、ブレーキペダル(図1では図示せず)の踏み込みの有無を検出するブレーキセンサ13と、横Gを検出するべく車軸4aの近傍に配設された横加速度センサ14とが接続されている。横加速度センサ14は、ヨーレイトセンサを用いることが考えられるが、車体の左右方向に対する加速度の方向及び大きさを検出し得るものであれば良く、重り・スプリング・ダンパ・変位センサを用いた簡単な構造のものであって良い。
また、コントローラ8には、運転者の運転技術に応じて例えば上級・中級・初級の3段階の制御レベルに切り替えるためのユーザレベル設定スイッチ15が設けられている。なお、モータ7にはその回転を検出するための回転センサ16が設けられており、その回転検出信号がコントローラ8aに入力する。また、上記電流センサ8cによる電流検出信号もコントローラ8aに入力するようになっている。
このようにして構成された電動カート1の制御要領について以下に示す。上記したユーザレベル設定スイッチ15は、運転者の技術に応じて、コーナリング時に後輪4をスリップさせる(車両後部を外方に振り出す)時の後輪4の駆動力を状況に応じて制御する設定を行うものである。
まずスピン判定手段として、例えば図3に示されるように横軸をモータ7の回転速度(車速に対応)とし、縦軸を横加速度として、運転技術のレベルに対応する初級・中級・上級の3パターンに分けたスピン判定マップ17を用意する。各パターンの設定は、乗車時にユーザレベル設定スイッチ15によりいずれかを選択することにより行う。図3では、車速(モータ回転速度)が高くなるほどグリップ力が低下してコーナリング時にスリップし易くなるため、車速が高くなるにつれて横加速度が低減する各閾値(図の初級・中級・上級に対応する右下がりの各線)を設定し、各レベルに応じてそれぞれの閾値を越えるまでは通常の制御を行う通常域とし、閾値を越えたら本発明に基づく低減制御指令値に基づく駆動力低減制御域とする。
次に、低減制御指令値設定手段として、例えば図4に示されるデータマップ18を用意する。このデータマップ18は、図3において横加速度が各閾値を越えた場合のモータ7に対する低減制御指令値としてのPWM制御のデューティを設定するものであり、コントローラ8a内のメモリに予め記録されている。データマップ18に示されるように、条件としては、アクセル踏み込み量・操舵方向・ブレーキ踏み込みの有無・車速の大きさである。それぞれをより細かくまたはアナログ的に設定することもできるが、レーシングカートのコーナリング制御としては、それ程細かく細分化しなくても充分であり、制御を簡単にするために図の程度の場合分けで良い。
アクセル踏み込み量としては、アクセルセンサ11による踏み込み量を大・中・小の3段階に分ける程度であって良い。操舵方向にあっては、例えば図1に示されるように横加速度が図の矢印Gに示される向きに発生していることを横加速度センサ14により検出され、かつ前輪3がその横加速度により車体2が向くことになる方向(図では左)に転舵するようにステアリングホイール9を操舵した場合を順方向とし、逆方向に操舵する場合を逆方向とする。したがって、操舵方向センサ12としては、ステアリングホイール9を左右にそれぞれ所定角度以上切ったことを検出するリミットスイッチであって良い。
ブレーキ踏み込みにあっては、ブレーキペダルを踏んだ場合をONとし、踏まない場合をOFFとしている。なお、踏んだ場合としては、ブレーキペダルの全ストロークでなくても良く、車両の設計に応じてある程度以上の減速度が生じるレベル(例えば全ストロークの半分程度)としても良い。いずれにしても、リミットスイッチにより簡単に調整可能である。
車速にあっては、中級者の場合には例えば50km/h以上の高速であるかそれ未満の低速であるかの判別であって良い。初級者の場合には車速を下げ、上級者の場合には車速を上げるようにして良く、それぞれにおいて設定車速以上であればデータマップ18の「高」の欄を選択し、設定車速未満であれば「低」の欄を選択する。車速を算出するための回転センサ16としては、モータ7の回転速度を検出するためのものであれば良く、種々のモータに用いられている汎用のものであって良い。上記したように50km/hを判別するのであれば、それ程分解能を必要としないため、車軸4aに磁性体を固着して1回転に1パルスを検出する磁気センサを設けるような簡単なものとすることができる。
次に、上記したように設定されたデータマップを用いたコーナリング時の制御要領について図5のフロー図を参照して以下に示す。まず、ステップST1でユーザレベル設定スイッチ15により運転者が自分の技術に合わせたもの(初級・中級・上級)に設定し、次のステップST2でイグニッションスイッチ(図示せず)のオンを確認してステップST3に進む。なお、イグニッションスイッチのオンで、ステップST1で設定したもの(級)に対応するデータマップを設定する。
ステップST3ではアクセル踏み込みの有無を確認する。この時点でアクセル踏み込みが生じていた場合には急発進する虞があるため、一旦アクセル踏み込みが無い状態を確認できてから次のステップST4に進む。
ステップST4では始動準備完了として、アクセル踏み込み量に応じた制御を可能な状態にしてステップST5に進む。ステップST5では、アクセル踏み込み量をアクセルセンサ11により検出する。次のステップST6ではアクセル踏み込み量に応じたPWM指令値をコントローラ8aから出力し、次のステップST7では、電流センサ8cにより検出された電流値を読み込み、アクセル踏み込み量と電流値とが対応する(一致)か否かを判別し、一致しない場合にはステップST6に戻ってPWM指令値を修正する。ステップST7で一致すると判断された場合にはステップST8に進む。
ステップST8では、回転センサ16による回転速度の検出を行い車速を算出する。次のステップST9では、横加速度センサ14による横加速度を検出する。次のステップST10では、横加速度がステップST1で設定された級に応じてスピン判定マップ17の対応する閾値をこえた駆動力低減制御域に入っているか否かを判別する。
ステップST10で駆動力低減制御域に入っていないと判断された場合にはステップST11に進んでイグニッションスイッチがオフか否かを判別し、オフにされていなければ運転を続行するべくステップST12に進み、そのステップST12では通常走行の制御状態としてステップST5に戻り、制御を続行する。ここで、通常走行の制御とは、後記するPWM制御のデューティを何ら変えない通常の制御のことである。
それに対して、上記ステップST10で閾値を越えた制御域に入っていると判断された場合には、ステップST13に進む。ステップST13ではステップST5で検出されたアクセル踏み込み量に応じて大中小のいずれかの領域になるかを判定する。次のステップST14ではステアリングホイール9の操舵した方向を操舵方向センサ12により検出する。この時点では右に操舵したか左に操舵したかの区別であって良い。
次のステップST15では、このステップに来る場合はステップST9で横加速度が検出された場合であり、その横加速度の発生方向とステップST14における操舵方向とを比較して、上記したように操舵方向が順方向であるか逆方向であるかを判別する。次のステップST16では、ブレーキ踏み込みの有無をブレーキセンサ13により検出し、ステップST17では車速の高低を判別して、ステップST18に進む。
ステップST18では、上記ステップST13〜17で判断された各条件に応じて、データマップ18に応じてPWM制御のデューティを決定し、そのデューティによりモータ7をPWM制御する。例えばアクセル踏み込み量が大で、操舵方向が順方向であり、ブレーキ踏み込みが有り(ON)、車速が高車速の場合にはデータマップの1番上の欄になり、その時のPWM制御のデューティを50%低減する。それにより、モータ7への印加電圧がデューティ低減量に応じて低減するため、駆動力が低減して、後輪4のグリップ力を回復して車体2のスピンを回避することができる。
他の条件違いに対してはデータマップの通りであり、それぞれの状況に合わせた適切な制御を行うことができる。いわゆるカウンターステアとなる操舵方向が逆方向である登坂部連れた場合には、データマップに示されるように他の条件が同じ場合の順方向におけるデューティよりも大きく低減するようにしている。これは、カウンターステアの場合にはスピンし易いためによる。
なお、PWM制御の0%はデューティ低減を行わないことである。また、図4においてアクセル踏み込み量・操舵方向・ブレーキ踏み込みの条件は同じであっても、初級・中級・上級の違いに応じて例えば車速設定を変えるようにしても良い。その場合には高車速の判定速度を、初級では低速とし、中級では中速とし、上級では高速として設定する。そして、ステップST18の後にはステップST8に戻り、以後の処理を上記したようにして行う。
車両挙動の不安定さに起因するスピンの回避に対しては、初級者から中級者、さらに上級者になるほど自分の運転技術で回避でき、逆に運転技術が上がるほどスピンし易い状況での回避に挑戦して達成感を味わいため、図3に示されるように中級者・上級者のレベル設定に対して本制御を適用する閾値を高くしている。これにより、同じカート1を使用して運転技術に応じた運転が可能となり、運転技術別にカートを用意するなどの設備費高騰を回避することができる。また、初級者の場合には、自分の運転技術の未熟により従来のカートではスピンに至っていた状況でもスピンすることなくコーナリングすることができるようになり、運転技術が上がれば中級者の設定に変えて、より一層の技術向上に挑戦することができる。それにより、従来のカートにおいてコーナリング技術の敷居の高さにより断念していた状態を回避することができる。
上記したように駆動力の低減制御を行うことによりスピンを回避するためには、アクセルペダルの踏み込み量に応じて駆動源としてのモータ7の応答性が良いことが大きな要素となるため、電動カートにおいて好適である。
本発明にかかる電動レーシングカートの駆動制御装置は、運転技術の未熟な者によるコーナリングにおいてスピンを容易に防止することができるものであり、電動レーシングカートに限られず種々の電動カートにも適用できる。
本発明が適用された電動カートを示す平面図である。 電動カートの駆動制御ブロック図である。 スピン判定マップを示す図である。 データマップを示す図である。 制御フローを示す図である。
符号の説明
1 電動カート
2 車体
4 後輪
7 モータ
8 コントローラユニット、8a コントローラ、8b インバータ、8c 電流センサ
9 ステアリングホイール
11 アクセルセンサ
12 操舵方向センサ
13 ブレーキセンサ
14 横加速度センサ
15 ユーザレベル設定スイッチ
16 回転センサ
17 スピン判定マップ
18 データマップ

Claims (3)

  1. 電動レーシングカートの駆動輪を駆動するモータを制御する駆動回路と、前記駆動回路に制御指令値を出力する制御手段と、車速を検出する車速センサと、車体の横加速度を検出する横加速度センサとを有し、
    前記制御手段が、コーナリング時の前記車体のスピンし易さを車速に対する横加速度の大きさから判定するスピン判定手段と、前記車体のスピンし易さに応じて前記モータの駆動力を低減するための低減制御指令値を設定する低減制御指令値設定手段とを有し、前記スピン判定手段により前記車体がスピンし易いと判定された場合には前記駆動回路に前記低減制御指令値を出力することを特徴とする電動レーシングカートの駆動制御装置。
  2. 前記低減制御指令値が、アクセルセンサにより検出されるアクセル踏み込み量の大きさと、操舵方向センサにより検出される操舵方向と前記横加速度の方向との対比と、ブレーキセンサにより検出されるブレーキ操作の有無と、前記車速の大きさとから選択されたものを考慮して低減量を変えるように設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動レーシングカートの駆動制御装置。
  3. 前記スピン判定手段による前記車体のスピンし易さが、車速に対する横加速度の大きさの違いに合わせて複数の閾値として設定され、かつ前記複数の閾値が選択可能にされていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電動レーシングカートの駆動制御装置。
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