JP2007059206A - 負極および電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】 容量および充放電効率を向上させることができる負極およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】 負極10は、負極集電体11と負極活物質層12とを有している。負極活物質層12には、負極活物質と結着剤とカルボキシルメチルセルロースあるいはその塩とが含まれている。負極集電体11には、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜11Bが形成されている。これにより、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性が改善される。
【選択図】 図1
【解決手段】 負極10は、負極集電体11と負極活物質層12とを有している。負極活物質層12には、負極活物質と結着剤とカルボキシルメチルセルロースあるいはその塩とが含まれている。負極集電体11には、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜11Bが形成されている。これにより、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性が改善される。
【選択図】 図1
Description
本発明は、被膜を有する集電体を用いた負極ならびに電池に関する。
近年、カメラ一体型VTR(Videotape recorder:ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはラップトップコンピュータなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型化および軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池について、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、リチウムイオン二次電池は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるので、広く使用されている。
ところで、このリチウムイオン二次電池の負極は、一般的には、負極活物質粒子と導電剤と結着剤とを混合したのち、分散媒に分散してスラリーとし、このスラリーを金属箔からなる負極集電体に塗布し乾燥させることにより製造する。
その際、結着剤にはスチレンブタジエンゴムあるいはフッ化ビニリデン系の樹脂を用いると共に、分散媒には水を用い、更に増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを加えることによりスラリーを作製することが知られている(例えば、特許文献1〜4参照)。このスラリーによれば、負極集電体に塗布したのちに乾燥させる際に、結着剤が負極活物質粒子の表面を覆わないので、負極活物質とリチウムとの反応性の低下が抑制され、高い充放電効率が得られる。
特開平4−342966号公報
特許第3286516号公報
特開2000−294230号公報
特開2004−146253号公報
しかしながら、容量を高くするために負極活物質の充填量を多くすると、結着剤の量が少なくなるので、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体との間の接着性が低下してしまい、充放電効率が低下してしまうという問題があった。
本発明はかかる問題に鑑みてなされたもので、その目的は、容量および充放電効率を向上させることができる負極およびそれを用いた電池を提供することにある。
本発明による負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを有するものであって、負極活物質層は、負極活物質と、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群のうちの少なくとも1種とを含み、負極集電体は、導電性基材と、この導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられた被膜とを有し、被膜は、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有するものである。
本発明による電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを有し、負極活物質層は、負極活物質と、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群のうちの少なくとも1種とを含み、負極集電体は、導電性基材と、この導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられた被膜とを有し、被膜は、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有するものである。
本発明の負極によれば、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜を形成するようにしたので、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体との間の接着性を向上させることができる。よって、この負極を用いた本発明の電池によれば、容量および充放電効率を向上させることができる。
特に、負極集電体における被膜が形成された面の表面抵抗を0.05Ω以上5Ω以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係る負極10の構成を表すものである。負極10は、例えば、負極集電体11と、負極集電体11に設けられた負極活物質層12とを有している。この負極活物質層12は、例えば、負極活物質と、結着剤と、増粘剤とを混合した負極合剤を、分散媒に分散させた負極合剤スラリーを用いて作製したものである。なお、図1には、負極活物質層12が負極集電体11の一面に設けられている場合を示したが、両面に設けるようにしてもよい。
負極集電体11は、例えば、導電性基材11Aに、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜11Bが設けられた構成を有しており、被膜11Bは、例えば、導電性基材11Aと負極活物質層12との間に設けられている。被膜11Bを設けることにより、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性が向上するようになっている。
導電性基材11Aは、例えば、銅(Cu),ニッケル(Ni)あるいは鉄(Fe)などの金属材料により構成されており、その形態は、例えば、箔状,メッシュ,エキスパンドメタルあるいはパンチングメタルとされている。
被膜11Bを構成するフッ化ビニリデンを成分として含む重合体としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、あるいはフッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとの共重合体が挙げられる。共重合可能なモノマーとしては、例えば、エチレンあるいはプロピレンなどの炭化水素系単量体、フッ化ビニル,3フッ化エチレン(トリフルオロエチレン),3フッ化塩化エチレン(クロロトリフルオロエチレン),4フッ化エチレン(テトラフルオロエチレン),6フッ化プロピレン(ヘキサフルオロプロピレン)あるいはフルオロアルキルビニルエーテルなどの含フッ素単量体、マレイン酸モノメチルあるいはシトラコン酸モノメチルなどのカルボキシル基含有単量体、アリルグリシジルエーテルあるいはクロトン酸グリシジルエステルなどのエポキシ基含有ビニル単量体が挙げられる。中でも、フッ化ビニリデンと、3フッ化塩化エチレンあるいは6フッ化プロピレンとの共重合体が好ましい。電解液に対する耐性が優れており、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性を保持するのに好適だからである。また、負極合剤スラリーを塗布しても、膨潤あるいは溶解することがなく、安定した性能を得ることができるからである。
被膜11Bが形成された面の負極集電体11の表面抵抗は、0.05Ω以上5.0Ω以下とすることが好ましく、0.05Ω以上2.0Ω以下であればより好ましい。表面抵抗が低いと、被膜11Bの量が少ないので、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性改善の効果が十分ではないからである。また、表面抵抗が高いと、負極集電体11と負極活物質層12との間の内部インピーダンスが上昇してしまうからである。なお、被膜11Bが形成された面の負極集電体11の表面抵抗は、負極集電体11における被膜11Bが形成された面において、無作為に選択した10箇所について、表面抵抗計を用いて測定した表面抵抗の平均値をいう。
被膜11Bの厚みは、1μm以下とすることが好ましい。被膜11Bの厚みが厚いと、負極集電体11と負極活物質層12との間の内部インピーダンスが上昇してしまうと共に、例えば、電池内部に充填させることができる活物質量が減少し、容量が低下してしまうからである。被膜11Bは、均一であっても、不均一であってもよく、規則的に形成されていても、不規則に形成されていてもよい。なお、被膜11Bの厚みとは、最も厚い部分の厚みをいうものとする。
この被膜11Bは、例えば、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体をN−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に溶解した溶液を、導電性基材11Aに塗布したのち、乾燥させて溶剤を除去することにより形成することができる。その際、溶液の濃度あるいは塗布量を変化させることにより、負極集電体11の表面抵抗などを制御することができる。また、塗布は、ドクターブレードあるいはナイフコーターにより行なってもよいし、スプレーあるいは刷毛を用いて行ってもよい。更に、塗布せずに、導電性基材11Aをフッ化ビニリデンを成分として含む重合体を溶解した溶液に含浸させるようにしてもよい。
負極活物質層12は、例えば、負極活物質として、リチウムなどの電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な負極材料の1種または2種以上を含んでいる。リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素質材料,金属酸化物あるいは高分子材料などが挙げられる。炭素質材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素,人造黒鉛,天然黒鉛,熱分解炭素類、コークス類,グラファイト類,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,炭素繊維,活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。また、金属酸化物としては酸化スズ(SnO2 )などが挙げられ、高分子材料としてはポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な負極材料としては、また、リチウムを吸蔵および放出することが可能であり、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような負極材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。この負極材料は金属元素あるいは半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、また、これらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
この負極材料を構成する金属元素あるいは半金属元素としては、例えば、リチウムと合金を形成可能なマグネシウム(Mg),ホウ素(B),アルミニウム(Al),ガリウム(Ga),インジウム(In),ケイ素(Si),ゲルマニウム(Ge),スズ(Sn),鉛(Pb),ビスマス(Bi),カドミウム(Cd),銀(Ag),亜鉛(Zn),ハフニウム(Hf),ジルコニウム(Zr),イットリウム(Y),パラジウム(Pd)あるいは白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
中でも、この負極材料としては、短周期型周期表における4B族の金属元素あるいは半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、特に好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン(Mn),亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモン(Sb),およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ,ニッケル,銅,鉄,コバルト,マンガン,亜鉛,インジウム,銀,チタン,ゲルマニウム,ビスマス,アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
スズの化合物あるいはケイ素の化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
なお、これらの負極材料は、上述したリチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料と混合して用いてもよい。炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、これらを共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができ、更に炭素材料は導電剤としても機能するので好ましい。
負極活物質層12は、また、結着剤および増粘剤を含んでいる。結着剤としては、水などの分散媒に分散可能なものが好ましく、例えば、アクリル−スチレン共重合体,アクリル−シリコーン共重合体あるいはスチレン−アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系共重合体、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体が挙げられる。
増粘剤は、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群のうちの少なくとも1種を含んでいる。カルボキシメチルセルロースの塩としては、ナトリウムなどの金属塩あるいはアンモニウム塩が挙げられる。増粘剤としては、また、カルボキシメチルセルロースあるいはその塩に加えて他の増粘剤を混合して用いてもよい。
負極活物質層12は、更に、必要に応じて導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
この負極10は、例えば、次のようにして作製することができる。
まず、例えば、負極活物質と、結着剤と、増粘剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤を水などの分散媒に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体11に塗布し乾燥させ、圧縮成型して負極活物質層12を形成することにより、図1に示した負極10が形成される。負極活物質層12を形成する際には、例えば、120℃以上200℃以下の温度で加熱することが好ましい。被膜11Bにおけるフッ化ビニリデンを成分として含む重合体が軟化することにより、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性をより向上させることができるからである。なお、加熱は、負極活物質層12を形成したのちに行なってもよい。
この負極10は、例えば、次のようにして二次電池に用いられる。
図2は、その二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶21の内部に、帯状の正極31と帯状の負極10とがセパレータ32を介して積層し巻回された巻回電極体30を有している。電池缶21は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶21の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ32に含浸されている。また、巻回電極体30を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板22,23がそれぞれ配置されている。
電池缶21の開放端部には、電池蓋24と、この電池蓋24の内側に設けられた安全弁機構25および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)26とが、ガスケット27を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶21の内部は密閉されている。電池蓋24は、例えば、電池缶21と同様の材料により構成されている。安全弁機構25は、熱感抵抗素子26を介して電池蓋24と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板25Aが反転して電池蓋24と巻回電極体30との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子26は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット27は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
巻回電極体30の中心にはセンターピン33が挿入されている。巻回電極体30の正極31にはアルミニウムなどよりなる正極リード34が接続されており、負極10にはニッケルなどよりなる負極リード35が接続されている。正極リード34は安全弁機構25に溶接されることにより電池蓋24と電気的に接続されており、負極リード35は電池缶21に溶接され電気的に接続されている。
図3は図2に示した巻回電極体30の一部を拡大して表すものである。負極10は上述した構成を有している。これにより、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性が向上するようになっている。なお、図3では、負極活物質層12は、負極集電体11の両面に形成されているように表されている。
正極31は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体31Aの両面あるいは片面に正極活物質層31Bが設けられた構造を有している。正極集電体31Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層31Bは、例えば、正極活物質として、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて人造黒鉛あるいはカーボンブラックなどの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、金属酸化物,金属硫化物あるいは特定の高分子材料などが挙げられる。
金属酸化物としては、Lix MIO2 を主体とするリチウム複合酸化物あるいはV2 O5 が挙げられる。特にリチウム複合酸化物は高電圧を発生可能であり、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。なお、上記組成式において、MIは1種類以上の遷移金属、特にコバルト(Co),ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10である。このようなリチウム複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 ,LiNiO2 ,Liy Niz Co1-z O2 (yおよびzは電池の充放電状態によって異なり、通常、0<y<1、0.7<z<1.0である)あるいはスピネル型構造を有するLiMn2 O4 などが挙げられる。また、LiFePO4 ,LiFe0.5 Mn0.5 PO4 などのリチウムリン酸化物も、エネルギー密度を高くすることができるので好ましい。
金属硫化物としては、TiS2 あるいはMoS2 などが挙げられ、高分子材料としては、ポリアセチレンあるいはポリピロールなどが挙げられる。また、これらの正極活物質の他にもNbSe2 などを用いることができる。
セパレータ32は、例えば、ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどのポリオレフィン系の材料よりなる多孔質膜、またはセラミック製の不織布などの無機材料よりなる多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
セパレータ32には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、電解質塩とを含んで構成されている。溶媒は、電解質塩を溶解し解離させるものである。溶媒としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、1, 2−ジメトキシエタン、1, 2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1, 3−ジオキソラン、4−メチル−1, 3ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルなどが挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
電解質塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrなどのリチウム塩が挙げられ、これらのいずれか1種または2種以上を混合して用いてもよい。
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、例えば、上述したようにして負極10を作製する。また、例えば、正極活物質と、必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドンなどの分散媒に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体31Aに塗布し乾燥させ、圧縮成型することにより正極活物質層31Bを形成し、正極31を作製する。
続いて、正極集電体31Aに正極リード34を溶接などにより取り付けると共に、負極集電体11に負極リード35を溶接などにより取り付ける。そののち、正極31と負極10とをセパレータ32を介して積層して巻回し、正極リード34の先端部を安全弁機構25に溶接すると共に、負極リード35の先端部を電池缶21に溶接して、巻回した正極31および負極10を一対の絶縁板22,23で挟み電池缶21の内部に収納する。次いで、例えば、電解液を電池缶21の内部に注入し、セパレータ32に含浸させる。そののち、電池缶21の開口端部に電池蓋24,安全弁機構25および熱感抵抗素子26をガスケット27を介してかしめることにより固定する。これにより、図2および図3に示した二次電池が形成される。
この二次電池では、充電を行うと、正極31からリチウムイオンが放出され、セパレータ32に含浸された電解液を介して、負極10に吸蔵される。次いで、放電を行うと、負極10からリチウムイオンが放出され、セパレータ32に含浸された電解液を介して、正極31に吸蔵される。ここでは、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜11Bが形成されているので、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性が向上している。これにより、容量および充放電効率が改善される。
このように本実施の形態に係る負極10によれば、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する被膜11Bを形成するようにしたので、負極活物質の充填量を多くしても、負極活物質などの粒子と粒子の間、あるいは粒子と負極集電体11との間の接着性を向上させることができる。よって、この負極11を用いた本実施の形態に係る二次電池によれば、容量および充放電効率を向上させることができる。
特に、負極集電体11における被膜11Bが形成された面の表面抵抗を0.05Ω以上5Ω以下とするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
(実施例1−1〜1−5)
まず、厚み15μmの銅箔よりなる導電性基材11Aの両面に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて塗布し、乾燥させることによりポリフッ化ビニリデンの被膜11Bを形成し、負極集電体11を作製した。その際、実施例1−1〜1−5でポリフッ化ビニリデンの塗布量を変え、負極集電体11の表面抵抗の平均値が5Ω、2Ω、0.5Ω、0.1Ω、または0.05Ωとなるように調節した。負極集電体11の表面抵抗は、表面抵抗計により無作為に選んだ10箇所について測定し、その平均値を算出した。
まず、厚み15μmの銅箔よりなる導電性基材11Aの両面に、ポリフッ化ビニリデンをN−メチル−2−ピロリドンに溶解させて塗布し、乾燥させることによりポリフッ化ビニリデンの被膜11Bを形成し、負極集電体11を作製した。その際、実施例1−1〜1−5でポリフッ化ビニリデンの塗布量を変え、負極集電体11の表面抵抗の平均値が5Ω、2Ω、0.5Ω、0.1Ω、または0.05Ωとなるように調節した。負極集電体11の表面抵抗は、表面抵抗計により無作為に選んだ10箇所について測定し、その平均値を算出した。
次いで、コバルト・スズ合金粉末と炭素粉末とを遊星ボールミルを用い、メカノケミカル反応を利用して合成することにより、CoSnC含有材料を作製した。作製したCoSnC含有材料について組成の分析を行ったところ、コバルトの含有量は29.3質量%、スズの含有量は49.9質量%、炭素の含有量は19.8質量%であった。なお、炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、コバルトおよびスズの含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。また、得られたCoSnC含有材料についてX線回折を行ったところ、回折角2θ=20°〜50°の間に、回折角2θが1.0°以上の広い半値幅を有する回折ピークが観察された。
続いて、負極活物質として作製したCoSnC含有材料粉末70質量部と、導電剤および負極活物質として人造黒鉛25質量部と、導電剤としてアセチレンブラック1質量部と、結着剤としてスチレンブタジエンゴム3質量部と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロースのナトリウム塩1質量部とを混合し、水に分散させてスラリーとした。次に、このスラリーを負極集電体11の両面に塗布し、乾燥させたのち、ロール表面温度が130℃のロールプレス機で圧縮成形することにより負極活物質層12を形成し、負極10を作製した。そののち、これを裁断し、負極リード35を取り付けた。
また、正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2 )粉末94質量部と、導電剤として人造黒鉛2質量部およびケッチェンブラック1質量部と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3質量部とを混合し、N−メチル−2−ピロリドンに分散させてスラリーとした。次いで、このスラリーを厚み15μmのアルミニウム箔よりなる正極集電体31Aの両面に塗布し、乾燥させたのち、ロールプレス機で圧縮成形することにより正極活物質層31Bを形成し、正極31を作製した。続いて、これを裁断し、正極リード34を取り付けた。
負極10および正極31を作製したのち、負極10と正極31との間に微多孔性ポリプロピレンフィルムよりなるセパレータ32を挟んで巻回し、これを一対の絶縁板22,23で挟み、負極リード35を電池缶21に溶接すると共に、正極リード34を安全弁機構25に溶接して、電池缶21の内部に収納した。次いで、電池缶21の内部に電解液を注入した。電解液には、炭酸エチレン50質量%と、炭酸ジメチル50質量%とを混合した溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を1mol/lの割合で溶解させたものを用いた。そののち、ガスケット27を介して電池蓋24を電池缶21にかしめることにより図2,3に示した円筒型の二次電池を得た。
実施例1−1〜1−5に対する比較例1−1として、負極集電体に被膜を設けずに、銅箔をそのまま用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。比較例1−1についても、実施例1−1〜1−5と同様にして負極集電体の表面抵抗の平均値を測定したところ、測定限界以下の0.02Ω未満であった。
作製した実施例および比較例の二次電池について室温で充放電を行い、サイクル特性を調べた。その際、充電は、1mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が4.2Vになるまで行なったのち、4.2Vの定電圧で電流密度が0.01mA/cm2 に達するまで行い、放電は、0.5mA/cm2 の定電流密度で電池電圧が2.0Vになるまで行った。サイクル特性は、この充放電を繰り返し、初回放電容量(1サイクル目の放電容量)に対する50サイクル目の放電容量維持率、すなわち、(50サイクル目の放電容量/初回放電容量)×100%から求めた。結果を表1に示す。
また、作製した実施例および比較例の二次電池について直流抵抗Rを調べた。直流抵抗Rは、各電池を上記充電条件により満充電状態とし、12時間放置したのち、1Aの電流で放電して、放電開始2秒後の閉回路電圧E2と、放電開始直前の開回路電圧E1と、放電電流Iとから、式1により求めた。結果を表1に示す。
(式1)
R=(E1−E2)/I
(式1)
R=(E1−E2)/I
表1に示したように、導電性基材11Aに被膜11Bを形成した実施例1−1〜1−5によれば、被膜を形成していない比較例1−1よりも放電容量維持率を大幅に向上させることができた。すなわち、導電性基材11Aに被膜11Bを設けるようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
また、負極集電体11の表面抵抗を大きくするに従い、放電容量維持率は向上するが、直流抵抗は低下する傾向がみられた。すなわち、負極集電体11の表面抵抗は0.05Ω以上5Ω以下とすることが好ましく、2Ω以下とすればより好ましいことが分かった。
(実施例2−1〜2−5)
負極活物質層12を作製する際に、結着剤としてスチレンブタジエンゴムに代えて、ポリフッ化ビニリデンを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。なお、CoSnC含有材料粉末と、人造黒鉛と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンと、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩との割合は、順に70:24:1:4:1の質量比とした。また、負極活物質層12を形成する際には、負極集電体11にスラリーを塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成形したのち、200℃で2時間の加熱処理を行った。
負極活物質層12を作製する際に、結着剤としてスチレンブタジエンゴムに代えて、ポリフッ化ビニリデンを用いたことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。なお、CoSnC含有材料粉末と、人造黒鉛と、アセチレンブラックと、ポリフッ化ビニリデンと、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩との割合は、順に70:24:1:4:1の質量比とした。また、負極活物質層12を形成する際には、負極集電体11にスラリーを塗布して乾燥させ、ロールプレス機で圧縮成形したのち、200℃で2時間の加熱処理を行った。
実施例2−1〜2−5に対する比較例2−1として、負極集電体に被膜を設けずに、銅箔をそのまま用いたことを除き、他は実施例2−1〜2−5と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例および比較例の二次電池について、実施例1−1〜1−5と同様にしてサイクル特性および直流抵抗Rを調べた。結果を表2に示す。
表2に示したように、実施例1−1〜1−5と同様に、実施例2−1〜2−5によれば、比較例2−1よりも放電容量維持率を大幅に向上させることができた。また、負極集電体11の表面抵抗を大きくするに従い、放電容量維持率は向上するが、直流抵抗は低下する傾向がみられた。すなわち、他の結着剤を用いても、同様の効果を得られることが分かった。
(実施例3−1〜3−5)
負極活物質として人造黒鉛を用い、人造黒鉛粉末95質量部と、アセチレンブラック1質量部と、スチレンブタジエンゴム3質量部と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩1質量部とを混合して負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。なお、負極活物質層12を圧縮成形する際のロール表面温度は120℃とした。
負極活物質として人造黒鉛を用い、人造黒鉛粉末95質量部と、アセチレンブラック1質量部と、スチレンブタジエンゴム3質量部と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩1質量部とを混合して負極活物質層12を形成したことを除き、他は実施例1−1〜1−5と同様にして二次電池を作製した。なお、負極活物質層12を圧縮成形する際のロール表面温度は120℃とした。
実施例3−1〜3−5に対する比較例3−1として、負極集電体に被膜を設けずに、銅箔をそのまま用いたことを除き、他は実施例3−1〜3−5と同様にして二次電池を作製した。
作製した実施例および比較例の二次電池について、実施例1−1〜1−5と同様にしてサイクル特性および直流抵抗Rを調べた。結果を表3に示す。
表3に示したように、実施例1−1〜1−5と同様に、実施例3−1〜3−5によれば、比較例3−1よりも放電容量維持率を大幅に向上させることができた。また、負極集電体11の表面抵抗を大きくするに従い、放電容量維持率は向上するが、直流抵抗は低下する傾向がみられた。すなわち、他の負極活物質を用いても、同様の効果を得られることが分かった。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、円筒型の二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、コイン型,角型,ボタン型あるいはラミネートフィルムなどの外装部材を用いた他の形状を有する二次電池、または積層構造などの他の構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。また、本発明は、二次電池に限らず、一次電池などの他の電池についても同様に適用することができる。
更に、上記実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる電池について説明したが、ナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの他のアルカリ金属、またはマグネシウムあるいはカルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属、またはアルミニウムなどの他の軽金属を用いる場合についても、本発明を適用することができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
更にまた、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液を用いる場合について説明したが、電解液を高分子化合物などの保持体に保持させたいわゆるゲル状の電解質、またはイオン伝導性を有する固体電解質を用いてもよい。ゲル状の電解質に用いる高分子化合物としては、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリレートあるいはポリアクリレートを繰返し単位として含むものなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。高分子化合物には、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。このとき、高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートあるいはポリアクリレートなどのエステル系高分子化合物を単独あるいは混合して、または分子中に共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはヨウ化リチウムなどを用いることができる。
10…負極、11…負極集電体、11A…導電性基材、11B…被膜、12…負極活物質層、21…電池缶、22,23…絶縁板、24…電池蓋、25…安全弁機構、25A…ディスク板、26…熱感抵抗素子、27…ガスケット、30…巻回電極体、31…正極、31A…正極集電体、31B…正極活物質層、32…セパレータ、33…センターピン、34…正極リード、35…負極リード。
Claims (4)
- 負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを有する負極であって、
前記負極活物質層は、負極活物質と、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群のうちの少なくとも1種とを含み、
前記負極集電体は、導電性基材と、この導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられた被膜とを有し、
前記被膜は、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する
ことを特徴とする負極。 - 前記負極集電体における前記被膜が形成された面の表面抵抗は、0.05Ω以上5Ω以下であることを特徴とする請求項1記載の負極。
- 正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、負極集電体と、この負極集電体に設けられた負極活物質層とを有し、
前記負極活物質層は、負極活物質と、カルボキシメチルセルロースおよびその塩からなる群のうちの少なくとも1種とを含み、
前記負極集電体は、導電性基材と、この導電性基材の表面の少なくとも一部に設けられた被膜とを有し、
前記被膜は、フッ化ビニリデンを成分として含む重合体を含有する
ことを特徴とする電池。 - 前記負極集電体における前記被膜が形成された面の表面抵抗は、0.05Ω以上5Ω以下であることを特徴とする請求項3記載の電池。
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-
2005
- 2005-08-24 JP JP2005243059A patent/JP2007059206A/ja active Pending
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