JP2007059091A - 燃料電池システム用転がり軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】
水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる燃料電池システム用転がり軸受の提供を目的とする。
【解決手段】
燃料電池システム用転がり軸受であって、該転がり軸受に封入されたグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、該添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であり、上記無機ビスマスは三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスおよびビスマス酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであり、上記有機ビスマスは有機酸ビスマスであり、上記増ちょう剤はウレア系増ちょう剤である。
【選択図】図1
水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる燃料電池システム用転がり軸受の提供を目的とする。
【解決手段】
燃料電池システム用転がり軸受であって、該転がり軸受に封入されたグリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなり、該添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であり、上記無機ビスマスは三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスおよびビスマス酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであり、上記有機ビスマスは有機酸ビスマスであり、上記増ちょう剤はウレア系増ちょう剤である。
【選択図】図1
Description
本発明は燃料電池システム用転がり軸受に関し、特に燃料電池システム内の各種流体を圧送する圧送機に用いられる燃料電池システム用転がり軸受に関する。
近年、自動車の新しい動力源または分散型発電装置として燃料電池システムが注目されている。燃料電池は、出力密度が高く、低温で作動し、電池構成材料の劣化が少なく、起動が容易である固体高分子電解質型燃料電池が、自動車等の輸送体の動力源として有効とされている。
燃料電池システムでは燃料電池セルに、燃料である水素、水素リッチ改質ガス、および酸化剤としての空気を圧送する必要があり、スーパーチャージャ、インペラ型圧送機、スクロール型圧送機、斜板型圧送機、スクリュー型圧送機などの各種圧送機が使用されている。
また、固体高分子電解質型燃料電池では、発電のための化学反応により燃料の水素と、酸化剤である空気とが反応して水が生成することや、高分子膜が固体電解質として機能できるように、加湿器により加湿され、常に水分を含んだ状態に維持されるので、圧送機が圧送する気体には水分が混入している。この水分が軸受内に浸入すると潤滑不良により金属接触が発生し、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴なった早期剥離が発生することがある。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)やビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が知られている。
燃料電池システムでは燃料電池セルに、燃料である水素、水素リッチ改質ガス、および酸化剤としての空気を圧送する必要があり、スーパーチャージャ、インペラ型圧送機、スクロール型圧送機、斜板型圧送機、スクリュー型圧送機などの各種圧送機が使用されている。
また、固体高分子電解質型燃料電池では、発電のための化学反応により燃料の水素と、酸化剤である空気とが反応して水が生成することや、高分子膜が固体電解質として機能できるように、加湿器により加湿され、常に水分を含んだ状態に維持されるので、圧送機が圧送する気体には水分が混入している。この水分が軸受内に浸入すると潤滑不良により金属接触が発生し、転がり軸受の転走面に白色組織変化を伴なった早期剥離が発生することがある。
この特異的な剥離は、通常の金属疲労により生じる転走面内部からの剥離と異なり、転走面表面の比較的浅いところから生じる破壊現象で、水素が原因の水素脆性と考えられている。このような早期に発生する白色組織変化を伴った特異な剥離現象を防ぐ方法として、例えばグリース組成物に不動態化剤を添加する方法(特許文献1参照)やビスマスジチオカーバメートを添加する方法(特許文献2参照)が知られている。
しかしながら、近年の転がり軸受の使用条件の過酷化に伴い、不動態化剤を添加する方法やビスマスジチオカーバメートを添加する方法では充分な対策ができなくなってきている。
また、発電量の増加の要望に対応して、圧送機はより高速化、高性能化が求められており、転がり軸受も高速、高荷重下で回転するため軸受部が 180℃程度の高温になる場合があることから、耐熱性に優れることも要求される。
特開平3−210394号公報
特開2005−42102号公報
また、発電量の増加の要望に対応して、圧送機はより高速化、高性能化が求められており、転がり軸受も高速、高荷重下で回転するため軸受部が 180℃程度の高温になる場合があることから、耐熱性に優れることも要求される。
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる燃料電池システム用転がり軸受の提供を目的とする。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受は、燃料電池システムに用いられる流体を圧送するための圧送機に設けられている回転部位を回転自在に支持する燃料電池システム用転がり軸受であって、該転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、該転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を上記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、上記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であり、上記添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とする。
上記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスおよびビスマス酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする。
上記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
上記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスおよびビスマス酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする。
上記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする。
上記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする。
本発明の燃料電池システム用転がり軸は、受燃料電池システムに用いられる流体を圧送するための圧送機に設けられる回転部位を回転自在に支持する燃料電池システム用転がり軸受であって、該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにビスマス化合物を含有する膜を形成できる、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有することを特徴とする。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受は、該軸受に封入されたグリース組成物が、基油と増ちょう剤とからなるベースグリースに無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合してなるので、始動−急加速運転−高速運転−急減速運転−急停止の繰り返しが頻繁に行なわれる燃料電池システムにおいて、使用される転がり軸受で見られる水素脆性による特異な剥離の発生を抑制することができ、燃料電池システム用転がり軸受の寿命の延長が図れる。
燃料電池システム用転がり軸受について、水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できる方法を鋭意検討の結果、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合したグリース組成物を封入した燃料電池システム用転がり軸受を用いて、寿命試験を行なったところ軸受寿命を延長できることがわかった。
無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合することにより、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面でビスマス系添加剤が分解・反応し、酸化鉄とともにビスマス化合物被膜が軸受転走面に生成されることがわかった。この軸受転走面に生成したビスマス化合物被膜が、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制するとともに、燃料電池システム内において定常的に補給される水分から電気分解反応により発生する可能性のある水素の侵入を防止して、水素脆性による特異な剥離を防止できるため、転がり軸受の寿命が延長するものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤をベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部配合することにより、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面でビスマス系添加剤が分解・反応し、酸化鉄とともにビスマス化合物被膜が軸受転走面に生成されることがわかった。この軸受転走面に生成したビスマス化合物被膜が、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制するとともに、燃料電池システム内において定常的に補給される水分から電気分解反応により発生する可能性のある水素の侵入を防止して、水素脆性による特異な剥離を防止できるため、転がり軸受の寿命が延長するものと考えられる。本発明はこれらの知見に基づくものである。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受の一例を図1に示す。図1はグリース組成物が封入されている深溝玉軸受の断面図である。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
深溝玉軸受1は、外周面に内輪転走面2aを有する内輪2と内周面に外輪転走面3aを有する外輪3とが同心に配置され、内輪転走面2aと外輪転走面3aとの間に複数個の転動体4が配置される。この複数個の転動体4を保持する保持器5および外輪3等に固定されるシール部材6が内輪2および外輪3の軸方向両端開口部8a、8bにそれぞれ設けられている。少なくとも転動体4の周囲にグリース組成物7が封入される。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受が用いられる圧送機の一例を図2に示す。図2は燃料電池車に使用されるインペラ型圧送機の断面図である。図2において、点線で囲まれた矢印は気体を表わす。図2に示すように、インペラ型圧送機は、インペラ9が固定された回転軸10を、軸方向に間隔をおいて配置した複数個の転がり軸受1によりケーシング11に支承して構成されている。モータなどの動力を受けて回転する回転軸10が高速回転するとインペラ9も高速回転し、気体吸込み口12から吸込まれた気体がインペラ9の遠心力によって加圧され、ケーシング11とバックプレート13とで形成された加圧ボリュート14を経て気体吐出口15から圧送される。
加圧ボリュート14から転がり軸受1へ気体が漏洩しないように、バックプレート13と回転軸10とは、その間に配設されたシールリング17によって、シールされている。しかし、このインペラ型圧送機では、回転軸10の高速回転に伴ってシールリング17のシール性が低下してくると、気体は、インペラ9の背面の背面空間16から回転軸10とシールリング17との間隙18を通って転がり軸受1に達してしまう。これを防ぐために、メカニカルシール19が配設されている。メカニカルシール19のシール性については、メカニカルシール19と回転軸10との摺動面は気体中に含まれる水蒸気による水潤滑状態であるので、このままだと水蒸気等が漏れて軸受1側に浸入してしまい、水蒸気等が軸受1内部に浸入して軸受1が劣化してしまうおそれがある。
このため本発明の燃料電池システム用転がり軸受においては、インペラ9側からの水蒸気の浸入を防止すると共に、軸受1内部に封入したグリース組成物7(図1参照)の漏洩を防止する目的で、軸受1に耐水素脆性を有するシール部材6(図1参照)が設けられている。
加圧ボリュート14から転がり軸受1へ気体が漏洩しないように、バックプレート13と回転軸10とは、その間に配設されたシールリング17によって、シールされている。しかし、このインペラ型圧送機では、回転軸10の高速回転に伴ってシールリング17のシール性が低下してくると、気体は、インペラ9の背面の背面空間16から回転軸10とシールリング17との間隙18を通って転がり軸受1に達してしまう。これを防ぐために、メカニカルシール19が配設されている。メカニカルシール19のシール性については、メカニカルシール19と回転軸10との摺動面は気体中に含まれる水蒸気による水潤滑状態であるので、このままだと水蒸気等が漏れて軸受1側に浸入してしまい、水蒸気等が軸受1内部に浸入して軸受1が劣化してしまうおそれがある。
このため本発明の燃料電池システム用転がり軸受においては、インペラ9側からの水蒸気の浸入を防止すると共に、軸受1内部に封入したグリース組成物7(図1参照)の漏洩を防止する目的で、軸受1に耐水素脆性を有するシール部材6(図1参照)が設けられている。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受において、軸受転走面に生成するビスマス化合物被膜は、軸受に封入されたグリース組成物に含まれる無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤が、摩擦摩耗面または摩耗により露出した金属新生面で分解・反応し、酸化鉄とともにビスマス化合物被膜として形成される。
軸受転走面に生成したビスマス化合物被膜は、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制するとともに、燃料電池システム内において定常的に補給される水分から電気分解反応により発生する可能性のある水素の侵入を防止して、水素脆性による特異な剥離を防止できる。
軸受転走面に生成したビスマス化合物被膜は、グリース組成物の分解による水素の発生を抑制するとともに、燃料電池システム内において定常的に補給される水分から電気分解反応により発生する可能性のある水素の侵入を防止して、水素脆性による特異な剥離を防止できる。
本発明に使用できる無機ビスマスとしては、ビスマス粉末、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、硝酸ビスマスおよびその水和物、硫酸ビスマス、フッ化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、オキシフッ化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、オキシ臭化ビスマス、オキシヨウ化ビスマス、酸化ビスマスおよびその水和物、水酸化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、リン酸ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシ硫酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、チタン酸ビスマス、ジルコン酸ビスマス、モリブデン酸ビスマス等が挙げられるが、本発明において、特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高い三酸化ビスマス、ビスマス粉末および炭酸ビスマスである。
これら無機ビスマスは、1 種類、または 2 種類を混合してグリースに添加してもよい。
これら無機ビスマスは、1 種類、または 2 種類を混合してグリースに添加してもよい。
本発明に使用できる有機ビスマスは、有機酸ビスマス、フェニルビスマス等が挙げられ、硫黄成分を含まない有機ビスマスであることが好ましい。硫黄成分を含むと腐食が進行し水素の鋼への侵入が加速され好ましくない。上記有機ビスマスの中で、潤滑性、耐熱性に優れることから、有機酸ビスマスが好ましい。
有機酸ビスマス塩を構成する有機酸としては芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸等の塩であればいずれも使用できる。
有機酸ビスマス塩を構成する有機酸としては芳香族系有機酸、脂肪族系有機酸、または脂環族系有機酸等の塩であればいずれも使用できる。
有機酸の具体例を例示すれば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、2-エチルヘキシル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸等の1価飽和脂肪酸、アクリル酸、クロトン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、ガドレイン酸等の1価不飽和脂肪酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、ジメチルマロン酸、エチルマロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ジメチルコハク酸、ピメリン酸、テトラメチルコハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の2価飽和脂肪酸、フマル酸、マレイン酸、オレイン酸等の2価不飽和脂肪酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪酸誘導体、安息香酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族有機酸、ナフテン酸等の脂環族有機酸が挙げられる。
これらの中でも潤滑性に優れた2-エチルヘキシル酸、ナフテン酸等を用いることが好ましい。これらは単独でも混合物としても使用できる。
これらの中でも潤滑性に優れた2-エチルヘキシル酸、ナフテン酸等を用いることが好ましい。これらは単独でも混合物としても使用できる。
本発明に使用できる基油は、スピンドル油、冷凍機油、タービン油、マシン油、ダイナモ油等の鉱油、高精製度鉱油、流動パラフィン、フィッシャー・トロプシュ法により合成されたGTL油、ポリブテン、ポリ−α−オレフィン、アルキルナフタレン、脂環式化合物等の炭化水素系合成油、または、天然油脂、ポリオールエステル油、リン酸エステル油、ポリマーエステル油、芳香族エステル油、炭酸エステル油、ジエステル油、ポリグリコール油、シリコーン油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油、アルキルベンゼン油、フッ素化油等の非炭化水素系合成油等を使用できる。
本発明に使用できる増ちょう剤としては、ベントン、シリカゲル、フッ素化合物、リチウム石けん、リチウムコンプレックス石けん、力ルシウム石けん、カルシウムコンプレックス石けん、アルミニウム石けん、アルミニウムコンプレックス石けん等の石けん類、ジウレア化合物、ポリウレア化合物等のウレア系化合物が挙げられる。耐熱性、コスト等を考慮するとウレア系化合物が望ましい。
ウレア系化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物を反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
基油にウレア系化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
基油にウレア系化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミン、ジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネート、モノアミンとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等が挙げられる。
ベースグリースにおける増ちょう剤の配合割合は、ベースグリース全体 100 重量部の中で、増ちょう剤が 1〜40 重量部、好ましくは 3〜25 重量部配合される。増ちょう剤の含有量が 1 重量部未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化が困難となり、40 重量部をこえると得られたベースグリースが硬くなりすぎ、所期の効果が得られ難くなる。
無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤の配合割合は、上記ベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部である。すなわち、(1)ビスマス系添加剤が無機ビスマスのみである場合、ベースグリース 100 重量部に対して無機ビスマスを 0.05〜10 重量部、(2)ビスマス系添加剤が有機ビスマスのみである場合、ベースグリース 100 重量部に対して有機ビスマスを 0.05〜10 重量部、(3)ビスマス系添加剤が無機ビスマスと有機ビスマスとである場合、ベースグリース 100 重量部に対して、無機ビスマスと有機ビスマスとを合せて 0.05〜10 重量部配合する。
ビスマス系添加剤の配合割合が上記配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえると異常摩耗を生じる。
ビスマス系添加剤の配合割合が上記配合範囲未満であると水素脆性による転走面での剥離を効果的に防止できない。また上記範囲をこえると異常摩耗を生じる。
また、ビスマス系添加剤とともに、必要に応じて公知のグリース用添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系化合物等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾールなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、リン系化合物などの摩耗防止剤等が挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。
実施例1〜実施例12、実施例15
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1および表2のとおりである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120 ℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120 ℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1に示した基油の半量に、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を表1に示す割合で溶解し、残りの半量の基油に4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートの2倍当量となるモノアミンを溶解した。それぞれの配合割合および種類は表1および表2のとおりである。
4,4−ジフェニルメタンジイソシアネートを溶解した溶液を撹拌しながらモノアミンを溶解した溶液を加えた後、100〜120 ℃で 30 分間撹拌を続けて反応させて、ジウレア化合物を基油中に生成させた。
これに無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えてさらに 100〜120 ℃で 10 分間撹拌した。その後冷却し、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。
表1において、基油として用いたアルキルジフェニルエーテル油は松村石油社製LB100を、合成炭化水素油は新日鉄化学社製シンフルード801を、ポリオールエステルは花王社製カオルーブ268をそれぞれ用いた。また鉱油は動粘度 30.7 mm2/s( 40 ℃)のパラフィン系鉱油を用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンを用いた。
酸化防止剤はアルキル化ジフェニルアミンを用いた。
得られたグリース組成物の高温高速試験、急加減速試験、日本工業規格による混和ちょう度測定を行なった。試験方法および試験条件を以下に示す。また、結果を表1に示す。
高温高速試験:
転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180 ℃(実施例13および14は 150℃)、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきにいたるまでの時間を測定した。
転がり軸受(6204)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 1.8 g 封入し、軸受外輪外径部温度 180 ℃(実施例13および14は 150℃)、ラジアル荷重 67 N 、アキシャル荷重 67 N の下で、10000 rpm の回転数で回転させ、焼きつきにいたるまでの時間を測定した。
急加減速試験:
転がり軸受(6303)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 2.3 g 封入し、内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって試験機が停止する時間(剥離発生寿命)を計測した。なお試験には、剥離の発生を加速するため、あらかじめ 1 重量%の純水を混入させたグリース組成物を用いた。試験は 100 時間で打ち切り、100 時間以上持続するものを剥離防止性能が優れていると評価した。
転がり軸受(6303)に各実施例で得られたグリース組成物をそれぞれ 2.3 g 封入し、内輸回転の転がり軸受に組み込み、急加減速試験を行なった。急加減速試験条件は、回転軸先端に取り付けたプーリに対する負荷荷重を 3234 N 、回転速度は 0〜18000 rpm で運転条件を設定した。そして、軸受内に異常剥離が発生し、振動検出器の振動が設定値以上になって試験機が停止する時間(剥離発生寿命)を計測した。なお試験には、剥離の発生を加速するため、あらかじめ 1 重量%の純水を混入させたグリース組成物を用いた。試験は 100 時間で打ち切り、100 時間以上持続するものを剥離防止性能が優れていると評価した。
実施例13および実施例14
表1に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表1の通りである。その後冷却し、これに、無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
表1に示した基油にLi−12−ヒドロキシステアレートを投入し、撹拌しながら 200℃にて加熱溶解した。なお、それぞれの配合割合は表1の通りである。その後冷却し、これに、無機ビスマスまたは硫黄成分を含まない有機ビスマスと、酸化防止剤とを表1に示す配合割合で加えて、三本ロールで均質化し、グリース組成物を得た。このグリース組成物について、実施例1と同様に高温高速試験および急加減速試験を行なった。ただし、Li石けんグリースの耐熱性を考え、高温高速試験は 150℃にて行なった。
比較例1〜比較例5
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリ一スを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
実施例1に準じる方法で、表2に示す配合割合で、増ちょう剤、基油を選択してベースグリ一スを調整し、さらに添加剤を配合してグリース組成物を得た。得られたグリース組成物を実施例1と同様の試験を行なって評価した。結果を表2に示す。
表1および表2に示すように、各実施例は転がり軸受の転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止できるので、高温高速試験および急加減速試験に優れている。各実施例の急加減速試験では全て 100 時間以上を示した。
本発明の燃料電池システム用転がり軸受は、転がり軸受に封入されたグリース組成物が、軸受転走面で生じる白色組織変化を伴った特異的な剥離を効果的に防止でき軸受寿命に優れるので、燃料電池システムの他に、石油、石油化学、ガス、鉄鋼等の工場において、各種の流体を高圧で圧送するための圧送機に用いられる転がり軸受としても利用できる。
1 深溝玉軸受
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8 開口部
9 インペラ
10 回転軸
11 ケーシング
12 気体吸込み口
13 バックプレート
14 加圧ボリュート
15 気体吐出口
16 背面空間
17 シールリング
18 間隙
19 メカニカルシール
2 内輪
3 外輪
4 転動体
5 保持器
6 シール部材
7 グリース組成物
8 開口部
9 インペラ
10 回転軸
11 ケーシング
12 気体吸込み口
13 バックプレート
14 加圧ボリュート
15 気体吐出口
16 背面空間
17 シールリング
18 間隙
19 メカニカルシール
Claims (5)
- 燃料電池システムに用いられる流体を圧送するための圧送機に設けられている回転部位を回転自在に支持する燃料電池システム用転がり軸受であって、
該転がり軸受は、内輪および外輪と、この内輪および外輪間に介在する複数の転動体とを備え、該転動体の周囲にグリース組成物を封止するためのシール部材を前記内輪および外輪の軸方向両端開口部に設けてなり、前記グリース組成物は、基油と、増ちょう剤とからなるベースグリースに添加剤を配合してなるグリース組成物であり、
前記添加剤は無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有し、該ビスマス系添加剤の配合割合はベースグリース 100 重量部に対して 0.05〜10 重量部であることを特徴とする燃料電池システム用転がり軸受。 - 前記無機ビスマスは、三酸化ビスマス、ビスマス粉末、炭酸ビスマスおよびビスマス酸ナトリウムから選ばれた少なくとも1つの無機ビスマスであることを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム用転がり軸受。
- 前記有機ビスマスは、有機酸ビスマスであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料電池システム用転がり軸受。
- 前記増ちょう剤は、ウレア系増ちょう剤であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の燃料電池システム用転がり軸受。
- 燃料電池システムに用いられる流体を圧送するための圧送機に設けられる回転部位を回転自在に支持する燃料電池システム用転がり軸受であって、
該軸受に封入されたグリース組成物が、軸受部における摩擦摩耗面または摩耗により露出した鉄系金属新生面において酸化鉄とともにビスマス化合物を含有する膜を形成できる、無機ビスマス、および、硫黄成分を含まない有機ビスマスから選ばれた少なくとも一つのビスマス系添加剤を含有することを特徴とする燃料電池システム用転がり軸受。
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Cited By (1)
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JP2007262300A (ja) * | 2006-03-29 | 2007-10-11 | Kyodo Yushi Co Ltd | 潤滑剤組成物 |
-
2005
- 2005-08-22 JP JP2005240104A patent/JP2007059091A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US9376644B2 (en) | 2006-03-29 | 2016-06-28 | Kyodo Yushi Co., Ltd. | Lubricant composition |
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