JP2007059008A - 熱アシスト磁気記録媒体、及び磁気記録再生装置 - Google Patents

熱アシスト磁気記録媒体、及び磁気記録再生装置 Download PDF

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Abstract

【課題】RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れ、記録温度直下での保磁力の温度に対する変化を急峻にでき、低温形成が可能である熱アシスト磁気記録媒体を提供する。
【解決手段】基板上に、TW<TCの高KFの下層強磁性膜301、TB<TWの低KAFの中間層反強磁性膜401、TW<TCの記録再生層である上層強磁性膜501を順次積層する〔TW:記録温度、TC:キュリー温度、TN:ネール温度、TB:ブロッキング温度、KF:強磁性体の結晶磁気異方性エネルギー定数、KAF:反強磁性体の結晶磁気異方性エネルギー定数〕。
【選択図】図1

Description

本発明は、熱アシスト磁気記録媒体、及びそれを用いた磁気記録再生装置(HDD)に関する。
近年のコンピューターの処理速度向上に伴い、情報・データの記録・再生機能を担う磁気記録再生装置(HDD)には、高速・高密度化が常に要求されている。しかしながら、現行のCoCrPt系の媒体では高密度化に物理的な限界があり問題視されている。
HDD装置の場合、情報が記録される磁気記録媒体は、微細な磁性粒子の集合体を含む磁性層を有する。高密度記録を行うには、磁性層に記録される磁区を小さくする必要がある。小さな記録磁区を分別できるようにするためには磁区の境界が滑らかであることが必要であり、そのためには磁性層に含まれる磁性粒子を微小化する必要がある。また、隣接する磁性粒子まで磁化反転が連鎖すると、磁区の境界の乱れとなるので、磁性粒子間に交換相互作用(粒子間相互作用)が働かないよう磁性粒子間は非磁性体によって磁気的に分断されている必要がある(通称、Grain segregation技術と呼ばれている)。また、ヘッド−媒体間の相互作用の観点から、高密度の記録を行うためには磁性層の膜厚も小さくする必要がある。
以上の要請から、高密度の記録を行うためには、磁性層における磁化反転ユニット(磁性粒子とほぼ等しい)の体積をさらに小さくする必要がある。しかしながら、磁化反転ユニットを微小化すると、そのユニットが持つ磁気異方性エネルギー〔(結晶磁気異方性エネルギー定数KF)×(磁性粒子の体積VF)。(KFVF)積とも呼ばれている。なお、Fは強磁性体Ferromagnetismの略号である。〕が熱揺らぎエネルギー〔(ボルツマン定数kB)×(温度T)〕よりも小さくなり、もはや磁区を保持することができなくなる。これが熱揺らぎ現象であり、記録密度の物理的限界(熱揺らぎ限界とも呼ばれている)の主因となっている。
熱揺らぎによる磁化の反転を防ぐには、KFを大きくすることが考えられる。しかしながら、上記のようなHDD媒体の場合、高速で磁化反転動作を行う(記録する)ときの保磁力HCはKFにほぼ比例するので、記録ヘッドが発生しうる磁界(最大10 kOe)では記録ができなくなってしまう問題に直面する。また、熱揺らぎによる磁化の反転を防ぐためにVFを大きくすることも考えられる。しかしながら、媒体面内での磁性粒子のサイズを大きくすることによりVFを大きくすると、高密度記録を達成できない。また、記録層の膜厚を厚くすることによりVFを大きくすると、ヘッド磁界が記録層の下部まで充分に到達せずに磁化反転が起こらなくなり、やはり高密度記録できないという問題に直面する。
以上の問題を解決するために熱アシスト磁気記録というアイデアが提案されている。記録層にKFの大きな材料を用い、記録時に記録層を加熱してKF(すなわち、HC)を局所的に小さくすることにより磁気記録を行うというものである。この方式では、媒体の使用環境下(通常はRT:室温)においての記録層のKFが大きくても、現状ヘッドで発生可能な記録磁界で磁化反転が可能になる。
しかし、記録時には隣接トラックが多少なりとも加熱されるので、既に記録されている隣接トラックの情報に悪影響を及ぼしたり、熱揺らぎが加速されて記録磁区が消去される現象(クロスイレーズ)が起こり得る。また、記録直後にヘッド磁界がなくなった時点でも媒体がある程度加熱されていることから、やはり熱揺らぎが加速されて、いったん形成された磁区の消失が起こり得る。これらの問題を解決するためには、記録温度近傍においてKF(すなわち、HC)の温度に対する変化ができるだけ急峻な材料を用いる必要がある。しかしながら、現行のCoCrPt系の媒体のKF(すなわち、HC)の温度に対する変化は概ねリニアなので、上記の条件を満たすことができない。
この問題を解決するため、特開2002-358616号公報に、「機能層(下層)/スイッチング層(中間層)/記録層(上層)」で構成される媒体構造が開示されている。同公報によれば、機能層は、例えばTbFeなどのアモルファス希土類(RE.)−遷移金属(TM.)合金のフェリ磁性(F)層で構成され(フェリ磁性体は強磁性体に含まれることから、フェリ磁性体Ferrimagnetismの一般的略号も「F」である)、記録層は、例えば現行のCoCrPt系などの強磁性(F)層で構成される。スイッチング層については、例えばRE.−TM.合金のフェリ磁性(F)層で構成され、記録温度(TW)直下にキュリー温度(TC)を有するF層で構成される旨、示されている。上で述べた「機能層/スイッチング層/記録層」から構成される媒体においては、RTでは「F/F/F」の交換結合を形成している。交換結合が生じているが故に、RTでの記録層のKF(すなわち、HC)値を極めて大きな値にまで高められる旨、示されており、これにより熱揺らぎ耐性を高められることが示されている。また、上で述べたような中間層のTCの温度で、「F/F/F」の交換結合が消失し、「F/Para./F」(Para.: 常磁性Paramagnetismの略号)の磁性状態になることから、記録層のKF(すなわち、HC)値は、中間層のTCの温度で記録層単膜の値にまで急激に低下することが示されており、それ故に、中間層のTCの温度でKF(すなわち、HC)の温度に対する急峻な変化が得られるとしている(KF、或いはHCの温度Tに対する変化dKF/dT、或いはdHC/dTは、「KFの温度勾配」、或いは「HCの温度勾配」と定義され用いられていることから、本明細書でも、適宜「KFの温度勾配」、或いは「HCの温度勾配」なる表現を用いてある)。また、TWの温度では、KF(すなわち、HC)値は記録層単膜の値にまで低下することから、小さな記録磁界で記録層に書き込める旨、示されている。
また、Appl. Phys. Lett., Vol.82, pp.2859-2861 (2003)に、「FeRh(下層)/FePt(上層)」で構成される磁性膜構造が開示されている。FeRh系材料は、100℃近傍で、反強磁性(AF)→強磁性(F)に相転移する唯一の材料である(AF:反強磁性体Antiferromagnetismの略号)。この論文によれば、RTでは「AF/F」の交換結合により、FePtのHCを高められる旨、示されている。また、AF→F相転移に伴って「AF/F」の交換結合が消滅し、代わって「F/F」の交換結合が発生、かつ下層のFeRhのFが軟磁気特性を有するが故に、FeRhのAF→F相転移温度近傍(100℃近傍)で急峻なHCの温度勾配が得られるとしている。
特開2002-358616号公報 Appl. Phys. Lett., Vol.82, pp.2859-2861 (2003)
面記録密度テラビット/in2超のHDDを実現するためには、熱揺らぎ限界を打破した熱アシスト磁気記録媒体を実現させる必要がある。超高密度記録対応の熱アシスト磁気記録媒体を実現させるためには、RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込み易さの相克を図れる媒体であって、かつTW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる媒体を実現させる必要がある。しかも、低温で形成できる媒体でなくてはならない。しかしながら、これらを満足できる媒体は、ない。
上述した特開2002-358616号公報では、「中間層のTCを利用しての」TW直下でのHCの温度勾配を急峻にさせる手段を設けている。しかしながら、RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込み易さの相克は図れるものの、以下の理由により、TW直下でのHCの温度勾配を今ひとつ急峻にできないようである。
中間層のTCの温度では、中間層中のSFは熱的に激しく揺らいでおり<SF>は消失、よってJF<SF><SF>を持ったFスピン配列も消失している(S:スピン、<>:熱平均、J:交換積分)。従って、上述した「機能層/スイッチング層(中間層)/記録層」の「F/F/F」の交換結合膜中の記録層のKF(すなわち、HC)の温度依存性には、中間層のTCよりもかなり低い温度から中間層の<SF>の温度依存性(<SF>が温度上昇とともにブリュアン関数的に低下し、TCで消失するという物理現象。TCに近づくにつれてd<SF>/dTが大という物理現象。)が大きく反映されてしまって、実際にはHCの温度勾配がどうしてもだれてしまうという問題に直面する。よって、上で述べたような、隣接トラックへの悪影響やクロスイレーズ等の問題を解決できないという問題に直面する。
一方、上述したAppl. Phys. Lett., Vol.82, pp.2859-2861 (2003)に記載されている、「FeRh/FePt」で構成される磁性構造膜においては、AF→F相転移温度直上でも、FeRh膜中には大きな<SF>が残存しており、よって大きなJF<SF><SF>を持ったFスピン配列がある。それ故に、HCの温度勾配を急峻にでき、上述の隣接トラックへの悪影響やクロスイレーズ等の問題を回避することが可能である。しかしながら、FeRhは規則合金であり、かつ規則化(不規則/規則相変態)させるために必要な熱処理温度が550℃と極めて高く、実用化には不向きである。
そこで、本発明の目的は、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込み易さの相克を図れる、(2)TW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を実現することにある。
本発明の目的は、TWを記録温度、TCをキュリー温度、TNをネール温度、TBをブロッキング温度、KFを強磁性体の磁気異方性エネルギー定数、KAFを反強磁性体の磁気異方性エネルギー定数としたとき、基板上に、TW<TCの高KFの強磁性体又はTW<TNの高KAFの反強磁性体からなる下層膜と、TB<TWの低KAFの反強磁性体からなる中間層と、TW<TCの記録再生層である強磁性体又はフェリ磁性体からなる上層膜とを積層した積層膜を有し、上記中間層反強磁性膜のTB及びTB<<TNの特質を利用し、記録再生層のHCの温度に対する変化、いわゆるHCの温度勾配を急峻にさせることにより達成される。
本発明による磁気記録媒体を用いることにより、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れる、(2)記録温度直下での保磁力の温度に対する変化、いわゆる保磁力の温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を提供することができる。従って、現行のCoCrPt-SiO2等の垂直磁気記録媒体が直面しようとしている記録密度の限界(熱揺らぎ限界)を打破できる。また、RT〜ブロッキング温度(記録温度直下)の温度範囲で、記録再生層は極めて大きな熱揺らぎ耐性と高保磁力を維持できることから、熱アシスト記録時に隣接トラックが裾野温度上昇に伴って多少なりとも加熱されたとしても、隣接トラックに悪影響を及ぼしたりすることはなく、クロスイレーズの問題も回避可能である。よって、テラビット/in2超級の記録密度に対応でき得る熱アシスト媒体、及びHDD装置を提供できる。
さらに、記録再生層には、Grain segregation技術・磁化反転ユニットの形成が必要であるが、記録再生層としてCoCrPt-SiO2膜やCoCrPt-Cr膜を用いた場合には、現行の(或いは、従来の)技術をそのまま転用できるという効果もある。また、記録再生層として非晶質TbFeCo系膜を用いた場合には、Grain segregation技術は不必要であり、敢えてそのための開発をする必要がないという効果もある。
以下、図面を参照して本発明の代表的な実施例について説明する。
図1に、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体を示す。この媒体は、基板100上に、下地膜200、TW<TCの高KFの下層強磁性(F)膜301、TB<TWの低KAFの中間層反強磁性(AF)膜401、TW<TCの記録再生用上層強磁性(F)膜501、保護膜600を順次積層してなる層を有する。ここで、TW:記録温度、TC:キュリー温度、TB:ブロッキング温度、KF:強磁性体の結晶磁気異方性エネルギー定数、KAF:反強磁性体の結晶磁気異方性エネルギー定数である。基板100は、例えばガラス基板で構成され、下地膜200は例えばRu膜、下層F膜301は例えばL10-FePt膜、中間層AF膜401は例えばγ-FeMn膜、上層F膜501は例えばCoCrPt-SiO2膜(或いは、CoCrPt-Cr膜)、保護膜600は例えばC膜で構成される。低温で形成した場合には、各層の稠密面であるRu(001)/L10-FePt(111)/γ-FeMn(111)/CoCrPt-SiO2(001)〔或いは、CoCrPt-Cr(001)〕の結晶配向が得られ、垂直磁化膜となる。代表的な膜厚は、下地膜200が20nm、下層F膜301が10nm、中間層AF膜401が10nm、上層F膜501が10nm、保護膜600が3nmである。ここで、CoCrPt-SiO2膜中のSiO2、及びCoCrPt-Cr膜中の一部のCrは、粒界に析出してGrain segregationの役割・磁化反転ユニットの形成の役割を担っていることから、本明細書では、“CoCrPt-SiO2膜”、及び“CoCrPt-Cr膜”なる表現を用いてある。
図2は、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の上層F膜501の保磁力(HC)の温度(T)依存性を示すものである。下層F膜301が10nmのL10-FePt膜、中間層AF膜401が10nmのγ-FeMn膜、上層F膜501が10nmのCoCrPt-SiO2膜(或いは、CoCrPt-Cr膜)で構成される場合のHC vs Tの関係を示してある。なお、KF∝HCの関係があることから、KFの温度依存性も、図2のHCの温度依存性と類似の特性を有することを付記しておきたい。上層F膜501のRTでのHC値は、「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「F/AF/F」の交換結合により、極めて大きな値を示した。図17に纏められているように、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜で構成される場合にはHC値約46−56 kOe、CoCrPt-Cr膜で構成される場合にはHC値約36−54 kOeという値が得られた。
ここで、HC値の算出(概算)の際には加重平均を用いた。図14記載の上層F膜501のKF値、及びHC値と、図16記載の下層F膜301のKF値を用い、
[(下層F膜301のKFVF積+上層F膜501のKFVF積)/(下層F膜301のVF値+上層F膜501のVF 値)]×[1/(RTでの上層F膜501単層膜のKF値)]×(RTでの上層F膜501単層膜のHC値)
なる関係式を用いて概算した(VF:強磁性体の結晶粒子の体積、VAF:反強磁性体の結晶粒子の体積)。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
なお、図14は本発明に係わる記録再生用上層F膜501、502の種類とその磁気物性値を纏めた図、図15は本発明に係わる中間層AF膜401の種類とその磁気物性値を纏めた図、図16は本発明に係わる下層F膜301、及び下層AF膜302の種類とその磁気物性値を纏めた図、図17は本発明に係わる下層F膜301、或いは下層AF膜302と、上層F膜501、502との(中間層AF膜401を介しての)交換結合の主な材料の組み合わせと、その交換結合により上層F膜501、502に付与される実効的熱揺らぎ耐性(KV)eff/(kBT)値(RT)とHC値(RT)を纏めた図である〔(KV)eff:実効的(KV)積、kB:ボルツマン定数〕。ここでの(KV)eff/(kBT)値は、下層F膜301のKFVF積、或いは下層AF膜302のKAFVAF積が、中間層AF膜401を介し、上層F膜501、502のKFVF積に完全に重畳することを仮定しての概算値、一方のHC値は、下層F膜301のKFVF積、或いは下層AF膜302のKAFVAF積が、中間層AF膜401を介し、上層F膜501、502のKFVF積に完全に重畳することを仮定しての加重平均を用いての概算値である。
CoCrPt-SiO2単層膜のRTでのHC値が約5−6 kOe、CoCrPt-Cr単層膜のRTでのHC値が約2−3 kOeであったことから(図14)、「F/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められ、かつ記録ヘッドの最大磁界10 kOeを大きく上回ることができることが分かった。さらに、上層F膜501のRTでの極めて大きなHC値は、加温とともにブリュアン関数的に徐々に減少し、中間層AF膜401のTB値である約155℃近傍かつTW≒200℃直下で(すなわち、「F/AF/F」の交換結合が消失する温度で)急激に減少、以後、上層F膜501の単層膜のHCの温度依存性に従ったHC値を示した。TW≒200℃近傍でのHC値は、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜の場合には約2−3 kOe、CoCrPt-Cr膜の場合には約1−1.5 kOeであった。図2においては、TB値近傍かつTW直下で、HC値の温度に対する変化(すなわち、HCの温度勾配)が極めて急峻(ステップ状あるいは階段状)になっていることを強調したい。なお、TW≒200℃を選択して説明した理由は以下のとおりである。TWが高すぎると度重なる熱照射により媒体が劣化してしまい、逆に、低すぎると思うようなHCの温度勾配を得ることができない。TW≒200℃が理想的とされているためである。
また、図17には、本実施例に係わる交換結合3層媒体中の上層F膜501のRTでの (KV)eff/(kBT)値が纏められている。ここでの(KV)eff/(kBT) 値は、
[(下層F膜301のKFVF積)+(上層F膜501のKFVF積)]/ (kBT)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜で構成される場合には約1417、CoCrPt-Cr膜で構成される場合には約1378という値が得られた。CoCrPt-SiO2単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約77、CoCrPt-Cr単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約38であったことから(図14)、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、「F/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められることが分かった。また、図2では、TW≒200℃近傍でのHC値について、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜の場合には約2−3 kOe、CoCrPt-Cr膜の場合には約1−1.5 kOeという値を得ている。現行ヘッドの最大記録磁界は約10 kOeもあるため、TW≒200℃近傍でのHC値約2−3 kOe(CoCrPt-SiO2膜)、或いは約1−1.5 kOe(CoCrPt-Cr膜)にまで低下している上層F膜501への書き込み(記録)は容易である。さらに、下地膜200、下層F膜301、中間層AF膜401、上層F膜501、及び保護膜600は、上述のように稠密面で構成されてよいことからRT形成が可能である。唯一、下層F膜301を構成しているL10-FePt膜を得る際、加温プロセスが必要であるが、高くても350℃以下であり、現行媒体の最大加熱温度と同程度であり実用上の問題はない。
以上から、「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「F/AF/F」の交換結合により、RT〜TBの温度範囲で極めて大きな熱揺らぎ耐性、及び高HC値が得られることが分かった。また、高温での書き込みやすさの相克を図れることが分かった。また、TB値近傍かつTW直下で、極めて急峻なHC値の温度に対する変化(すなわち、大きなHCの温度勾配)が得られることが分かった。さらに、低温形成が可能である旨、確認できた。従って、実施例1に示す「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「F/AF/F」の交換結合3層媒体を用いることにより、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れる、(2)TW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を実現することができる。
次に、本発明に係わる「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜501」から構成される交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録過程について説明する。図3に、「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの「F/AF/F」交換結合結晶粒内の熱アシスト磁気記録時のスピン配列の熱履歴の様子を示す。一つの結晶粒内の様子を描写してあるが、一つの磁化反転ユニット内の様子も同じである。ここでは、下層F膜301、及び下層F膜の一つの結晶粒3010がL10-FePt、中間層AF膜401、及び中間層AF膜の一つの結晶粒4010がγ-FeMn、上層F膜501、及び上層F膜の一つの結晶粒5010がCoCrPt-SiO2(或いは、CoCrPt-Cr)で構成される場合について説明する。なお、L10-FePtのTCは約470℃(図16)、γ-FeMnのネール温度(TN)は約217℃(図15)、CoCrPt-SiO2のTCは約600℃、CoCrPt-CrのTCは約427℃である(図14)。また、理想的なTWは約200℃であることから、TW≒200℃として、以下に説明する。
図3(a)に示すように、熱アシスト磁気記録時、T=TWで熱、及び記録磁界10000が媒体上方面から下向きに照射、及び印加されるとする。L10-FePtのTCが約470℃、γ-FeMnのTNが約217℃、CoCrPt-SiO2のTCが約600℃(或いは、CoCrPt-CrのTCが約427℃)と、いずれもTW≒200℃より高いことから、T=TWでの「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「F/AF/F」である。しかしながら、γ-FeMnのTB は約155℃であることから、より詳細に磁性状態を記述すると「F/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」である(Para.:常磁性Paramagnetismの略号)。よって、T=TWでは、上層F膜の一つの結晶粒5010中の磁化ベクトルは、CoCrPt-SiO2の低HC(或いは、CoCrPt-Crの低HC)故に容易に下向きに向けられることになる。しかしながら、交換結合が生じていない状態なので、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン配列の方向は任意である。同様に、下層F膜の一つの結晶粒3010中のFスピン配列の方向も任意である。なぜなら、L10-FePtの単層膜のHC値は極めて高くかつ最下層に配置されているため、記録磁界の影響を受けないからである。但し、図では反磁界の影響を加味し、下層F膜の一つの結晶粒3010中の磁化ベクトルは上向きにして描いてある。
ブロッキング温度TBは、強磁性/反強磁性の交換結合が消失する温度で定義されている。反強磁性材料で決まり、強磁性材料にはあまり依存しない。ほとんどの反強磁性材料で“TB<<TNの特質”を有していることを強調しておきたい。反強磁性/反強磁性の交換結合の場合には、TBはTNの低い方の反強磁性材料で決まり、そのTB値は、上で述べた強磁性/反強磁性の交換結合が消失するTB値と概ね同じようである。よって、本明細書では「反強磁性膜のTBやγ-FeMn等のTB」なる表現を用いてある。)
図3(b)に示すように、T=TBにまで冷却されると、交換結合が発生する。これに伴い、「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「F/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」→「F/AF/F」に遷移する。上層F膜の一つの結晶粒5010中のスピンを下向きに向けるよう、各層、各界面のスピンが揃えられ、フィールドクールされて凍結される。交換結合によって発生する内部磁場は数百kOeにも及ぶとされており、その大きさに負けてしまって中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン、下層F膜の一つの結晶粒3010中のFスピンは、例えば図3(b)のように揃えられることになる。
また、“TB<<TNの特質”があるが故に、T=TBに冷却された時点で、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中には、すでに比較的大きな<SAF>があり、よって比較的大きなJAF<SAF><SAF>を持ったAFスピン配列がある(S:スピン、<>:熱平均、J:交換積分)。比較的大きな<SAF>、及びJAF<SAF><SAF>がある状態でT=TBに冷却された時点で突如「F/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度で突如HCが急激に(ステップ状に)増大することになる。これが、T=TBの温度でHCの温度勾配を急峻にできる理由であり、“TB<<TNの特質”を利用して初めて得られる物理現象であることを強調しておきたい。すなわち、既に述べた特開2002-358616号公報記載の中間層のTC利用では得られない物理現象である。
図3(c)に示すようにRT<T<TBにまで冷却されると、各層の磁化ベクトルは大きくなり、図3(d)に示すようにT=RTではさらに大きくなって固定される。以上が、熱アシスト磁気記録過程である。なお、上向きの記録過程については、上述の磁化ベクトルを反対にして考えれば良い。
なお、本実施例に係わる下層F膜301は、L10-CoPt膜、L10-FePtNi膜で構成されても良い。図17に纏められているように、
(a) 下層F膜301がL10-CoPt膜、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値約613、HC値約20−24 kOe、
(b) 下層F膜301がL10-CoPt膜、上層F膜501がCoCrPt-Cr膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値約574、HC値約15−23 kOe、
(c) 下層F膜301がL10-FePtNi膜、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値約842、HC値約28−33 kOe、
(d) 下層F膜301がL10-FePtNi膜、上層F膜501がCoCrPt-Cr膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値約803、HC値約21−32 kOe、という極めて大きな値が得られるからである。なお、L10-CoPt膜、L10-FePtNi膜を得る際にも、加温プロセスが必要であるが、高くても350℃以下であり実用上の問題はない。
また、本実施例に係わる中間層AF膜401は、図15に纏められているようなγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜、γ-MnNi膜、γ-MnPt膜、γ-MnPd膜、γ-Mn(PtRh)膜、γ-Mn(RuRh)膜で構成されても良い。なお、ここでのIr組成、Rh組成、Ru組成、Ni組成、Pt組成、Pd組成、(PtRh)組成、(RuRh)組成は、TB値を200℃以下にするためいずれも20 at.%以下である。図15に示されているように、これらのAF膜のKAF値はγ-FeMn膜と同程度であり、TB値もγ-FeMn膜と同程度、かつ“TB<<TNの特質”を有しているからである。
さらに、図15を見ると、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の場合、TB値とTN値との差が大きいのが確認できる。従って、これらのAF膜を用いることにより、“TB<<TNの特質”をより有効に発揮させることが可能となる。すなわち、熱アシスト磁気記録過程において、T=TBに冷却された時点で、より大きな<SAF>、及びより大きなJAF<SAF><SAF>がある状態で突如「F/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度でのHCの温度勾配をよりいっそう大きくすることが可能である。
さらに、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さは、下層F膜301を構成するL10-FePt膜、L10-CoPt膜、及びL10-FePtNi膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さと同程度であり、かつ上層F膜501を構成するCoCrPt-SiO2膜の(001)面内〔或いは、CoCrPt-Cr膜の(001)面内〕の稠密六方格子の一辺の長さと同程度である。従って、中間層AF膜401として、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を用いることにより、格子ミスマッチの問題を回避できることから、理論値(例えば、図17に記載の概算値)に近いHC値や(KV)eff/(kBT)値を得ることができるのみならず、上層F膜501の異方性分散を小さく抑えることが可能となる。
さらに、TWを200℃よりも高くしたい場合、中間層AF膜401として、20 at.%以上のIr組成、Rh組成、Ru組成を有するγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜などを使えば良い。これらのAF膜は約240−300℃のTB値を有しており、かつIr組成、Rh組成、Ru組成によりTB値を所望の値、すなわち、TB値がTW直下に来るように調節可能であるからである。
しかしながら、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜等を適用するとコスト高になってしまうことから、これらのAF膜を適用する場合には、磁気物性値とコスト問題とのトレードオフが必要であろう。
さらに、上述の交換結合3層媒体では、垂直磁気記録の場合について述べたが、面内磁気記録に対しても、傾斜磁気異方性磁気記録に対しても展開は可能である。
図4に、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体を示す。この媒体は、基板100上に、下地膜200、TW<TCの高KFの下層強磁性(F)膜301、TB<TWの低KAFの中間層反強磁性(AF)膜401、TW<TCの記録再生用上層フェリ磁性(F)膜502、保護膜600を順次積層してなる層を有する。基板100は、例えばガラス基板で構成され、下地膜200は例えばRu膜、下層F膜301は例えばL10-FePt膜、中間層AF膜401は例えばγ-FeMn膜、上層F膜502は例えば磁化補償温度Tcomp.≦0℃を有するアモルファスTbFeCo膜、保護膜600は例えばC膜で構成される。低温で形成した場合には、各層の稠密面であるRu(001)/L10-FePt(111)/γ-FeMn(111)/アモルファスTbFeCoの結晶配向が得られ、垂直磁化膜となる。代表的な膜厚は、下地膜200が20nm、下層F膜301が10nm、中間層AF膜401が10nm、上層F膜502が10nm、保護膜600が3nmである。
図5は、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の上層F膜502の保磁力(HC)の温度(T)依存性を示すものである。下層F膜301が10nmのL10-FePt膜、中間層AF膜401が10nmのγ-FeMn膜、上層F膜502が10nmのTbFeCo膜で構成される場合のHC vs Tの関係を示してある。上層F膜502のRTでのHC値は、「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「F/AF/F」の交換結合により、極めて大きな値を示した。図17に纏められているように、上層F膜502がTbFeCo膜で構成される場合にはHC値約704−937 kOeという値が得られた。
ここで、HC値の算出(概算)の際には加重平均を用いた。図14記載の上層F膜502のKF値、及びHC値と、図16記載の下層F膜301のKF値を用い、
[(下層F膜301のKFVF積+上層F膜502のKFVF積)/(下層F膜301のVF値+上層F膜502のVF 値)]×[1/(RTでの上層F膜502単層膜のKF値)]×(RTでの上層F膜502単層膜のHC値)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
TbFeCo単層膜のRTでのHC値が約8 kOeであったことから(図14)、「F/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められ、かつ記録ヘッドの最大磁界10 kOeを大きく上回ることができることが分かった。さらに、上層F膜502のRTでの極めて大きなHC値は、加温とともにブリュアン関数的に徐々に減少し、中間層AF膜401のTB値である約155℃近傍かつTW≒200℃直下で(すなわち、「F/AF/F」の交換結合が消失する温度で)急激に減少、以後、上層F膜502の単層膜のHCの温度依存性に従ったHC値を示した。TW≒200℃近傍でのHC値は、上層F膜502がTbFeCo膜の場合には約1 kOeであった。図5においては、TB値近傍かつTW直下で、HC値の温度に対する変化(すなわち、HCの温度勾配)が極めて急峻(ステップ状)になっていることを強調したい。
また、図17には、本実施例に係わる交換結合3層媒体中の上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値が纏められている。ここでの(KV)eff/(kBT) 値は、
[(下層F膜301のKFVF積)+(上層F膜502のKFVF積)]/ (kBT)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、上層F膜502がTbFeCo膜で構成される場合には約1347という値が得られた。TbFeCo単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約5.8−7.7であったことから(図14)、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、「F/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められることが分かった。また、図5では、TW≒200℃近傍でのHC値について、上層F膜502がTbFeCo膜の場合には約1 kOeという値を得ている。現行ヘッドの最大記録磁界は約10 kOeもあるため、TW≒200℃近傍でのHC値約1 kOeにまで低下している上層F膜502への書き込み(記録)は容易である。さらに、下地膜200、下層F膜301、中間層AF膜401、上層F膜502、及び保護膜600は、上述のように稠密面で構成されてよいことからRT形成が可能である。唯一、下層F膜301を構成しているL10-FePt膜を得る際、加温プロセスが必要であるが、高くても350℃以下であり、現行媒体の最大加熱温度と同程度であり実用上の問題はない。
以上から、「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「F/AF/F」の交換結合により、RT〜TBの温度範囲で極めて大きな熱揺らぎ耐性、及び高HC値が得られることが分かった。また、高温での書き込みやすさの相克を図れることが分かった。また、TB値近傍かつTW直下で、極めて急峻なHC値の温度に対する変化(すなわち、大きなHCの温度勾配)が得られることが分かった。さらに、低温形成が可能である旨、確認できた。従って、実施例2に示す「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「F/AF/F」の交換結合3層媒体を用いることにより、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れる、(2)TW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を実現することができる。
次に、本発明に係わる「下層F膜301/中間層AF膜401/上層F膜502」から構成される交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録過程について説明する。図6に、「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの「F/AF/F」交換結合結晶粒内の熱アシスト磁気記録時のスピン配列の熱履歴の様子を示す。一つの結晶粒内の様子を描写してあるが、一つの磁化反転ユニット内の様子も同じである。図中TM.は遷移金属、RE.は希土類の意味である。ここでは、下層F膜301、及び下層F膜の一つの結晶粒3010がL10-FePt、中間層AF膜401、及び中間層AF膜の一つの結晶粒4010がγ-FeMn、上層F膜502、及び上層F膜の一つの結晶粒5020がTbFeCoで構成される場合について説明する。なお、L10-FePtのTCは約470℃(図16)、γ-FeMnのTNは約217℃(図15)、TbFeCoのTCは約270℃である(図14)。また、理想的なTWは約200℃であることから、TW≒200℃として、以下に説明する。
図6(a)に示すように、熱アシスト磁気記録時、T=TWで熱、及び記録磁界10000が媒体上方面から下向きに照射、及び印加されるとする。L10-FePtのTCが約470℃、γ-FeMnのTNが約217℃、TbFeCoのTCが約270℃と、いずれもTW≒200℃よりも高いことから、T=TWでの「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「F/AF/F」である。しかしながら、γ-FeMnのTBが約155℃であることから、より詳細に磁性状態を記述すると「F/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」である。よって、T=TWでは、上層F膜の一つの結晶粒5020中の磁化ベクトル(トータルの磁化ベクトル)は、TbFeCoの低HC故に容易に下向きに向けられることになる。しかしながら、交換結合が生じていない状態なので、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン配列の方向は任意である。同様に、下層F膜の一つの結晶粒3010中のFスピン配列の方向も任意である。なぜなら、L10-FePtの単層膜のHC値が極めて高くかつ最下層に配置されているため、記録磁界の影響を受けないからである。但し、図では反磁界の影響を加味し、下層F膜の一つの結晶粒3010中の磁化ベクトルは上向きにして描いてある。
図6(b)に示すように、T=TBにまで冷却されると、交換結合が発生する。これに伴い、「下層F膜の一つの結晶粒3010/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「F/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」→「F/AF/F」に遷移する。上層F膜の一つの結晶粒5020中のスピン(トータルのスピン)を下向きに向けるよう、各層、各界面のスピンが揃えられ、フィールドクールされて凍結される。交換結合によって発生する内部磁場は数百kOeにも及ぶとされており、その大きさに負けてしまって中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン、下層F膜の一つの結晶粒3010中のFスピンは、例えば図6(b)のように揃えられることになる。
また、“TB<<TNの特質”があるが故に、T=TBに冷却された時点で、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中には、すでに比較的大きな<SAF>があり、よって比較的大きなJAF<SAF><SAF>を持ったAFスピン配列がある。比較的大きな<SAF>、及びJAF<SAF><SAF>がある状態でT=TBに冷却された時点で突如「F/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度で突如HCが急激に増大することになる。これが、T=TBの温度でHCの温度勾配を急峻にできる理由であり、“TB<<TNの特質”を利用して初めて得られる物理現象であることは、すでに述べたとおりである。
図6(c)に示すようにRT<T<TBにまで冷却されると、各層の磁化ベクトルは大きくなり、図6(d)に示すようにT=RTではさらに大きくなって固定される。なお、上層F膜の一つの結晶粒5020中においては、[RE.スピンの温度低下に伴うスピンの大きさの増大]>[TM.スピンの温度低下に伴うスピンの大きさの増大]の関係があることから、本関係に従ってRE.スピン、及びTM.スピンが増大することになる。T=RTでは、RE.スピンの大きさとTM.スピンの大きさとの差分が小さくなって、MS≒50 emu/cm3にまで低下してしまう。低MS故に再生感度が不足する問題が生じた場合には、例えば上層F膜502上に、RTでのMS値約300 emu/cm3を有するアモルファスDyTbFeCo膜のような再生専用の層を設けても構わない。以上が、熱アシスト磁気記録過程である。なお、上向きの記録過程については、上述の磁化ベクトルを反対にして考えれば良い。
なお、本実施例に係わる下層F膜301は、L10-CoPt膜、L10-FePtNi膜で構成されても良い。図17に纏められているように、
(a) 下層F膜301がL10-CoPt膜、上層F膜502がTbFeCo膜という組み合わせでも、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値約543、HC値約284−377 kOe、
(b) 下層F膜301がL10-FePtNi膜、上層F膜502がTbFeCo膜という組み合わせでも、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値約772、HC値約404−537 kOe、という極めて大きな値が得られるからである。なお、L10-CoPt膜、L10-FePtNi膜を得る際にも、加温プロセスが必要であるが、高くても350℃以下であり実用上の問題はない。
また、本実施例に係わる中間層AF膜401は、図15に纏められているようなγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜、γ-MnNi膜、γ-MnPt膜、γ-MnPd膜、γ-Mn(PtRh)膜、γ-Mn(RuRh)膜で構成されても良い。なお、ここでのIr組成、Rh組成、Ru組成、Ni組成、Pt組成、Pd組成、(PtRh)組成、(RuRh)組成は、TB値を200℃以下にするためいずれも20 at.%以下である。図15に示されているように、これらのAF膜のKAF値はγ-FeMn膜と同程度であり、TB値もγ-FeMn膜と同程度、かつ“TB<<TNの特質”を有しているからである。
さらに、図15を見ると、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の場合、TB値とTN値との差が大きいのが確認できる。従って、これらのAF膜を用いることにより、“TB<<TNの特質”をより有効に発揮させることが可能となる。すなわち、熱アシスト磁気記録過程において、T=TBに冷却された時点で、より大きな<SAF>、及びより大きなJAF<SAF><SAF>がある状態で突如「F/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度でのHCの温度勾配をよりいっそう大きくすることが可能である。
さらに、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さは、下層F膜301を構成するL10-FePt膜、L10-CoPt膜、及びL10-FePtNi膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さと同程度である。従って、中間層AF膜401として、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を用いることにより、格子ミスマッチの問題を回避できることから、理論値(例えば、図17に記載の概算値)に近いHC値や(KV)eff/(kBT)値を得ることができるのみならず、上層F膜502の異方性分散を小さく抑えることが可能となる。
さらに、TWを200℃よりも高くしたい場合、中間層AF膜401として、20 at.%以上のIr組成、Rh組成、Ru組成を有するγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜などを使えば良い。これらのAF膜は約240−300℃のTB値を有しており、かつIr組成、Rh組成、Ru組成によりTB値を所望の値(すなわち、TB値がTW直下に来るよう)に調節可能であるからである。
しかしながら、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を適用するとコスト高になってしまうことから、これらのAF膜を適用する場合には、磁気物性値とコスト問題とのトレードオフが必要であろう。
さらに、上述の交換結合3層媒体では、垂直磁気記録の場合について述べたが、面内磁気記録に対しても、傾斜磁気異方性磁気記録に対しても展開は可能である。
図7に、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体を示す。この媒体は、基板100上に、下地膜200、TW<TNの高KAFの下層反強磁性(AF)膜302、TB<TWの低KAFの中間層反強磁性(AF)膜401、TW<TCの記録再生用上層強磁性(F)膜501、保護膜600を順次積層してなる層を有する。基板100は、例えばガラス基板で構成され、下地膜200は例えばRu膜、下層AF膜302は例えばL10-PtMn膜、中間層AF膜401は例えばγ-FeMn膜、上層F膜501は例えばCoCrPt-SiO2膜(或いは、CoCrPt-Cr膜)、保護膜600は例えばC膜で構成される。低温で形成した場合には、各層の稠密面であるRu(001)/L10-PtMn(111)/γ-FeMn(111)/CoCrPt-SiO2(001)〔或いは、CoCrPt-Cr(001)〕の結晶配向が得られ、垂直磁化膜となる。代表的な膜厚は、下地膜200が20nm、下層AF膜302が10nm、中間層AF膜401が10nm、上層F膜501が10nm、保護膜600が3nmである。
図8は、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の上層F膜501の保磁力(HC)の温度(T)依存性を示すものである。下層AF膜302が10nmのL10-PtMn膜、中間層AF膜401が10nmのγ-FeMn膜、上層F膜501が10nmのCoCrPt-SiO2膜(或いは、CoCrPt-Cr膜)で構成される場合のHC vs Tの関係を示してある。上層F膜501のRTでのHC値は、「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「AF/AF/F」の交換結合により大きな値を示した。図17に纏められているように、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜で構成される場合にはHC値最大約11 kOe、CoCrPt-Cr膜で構成される場合にはHC値最大約10 kOeという値が得られた。
ここで、HC値の算出(概算)の際には加重平均を用いた。図14記載の上層F膜501のKF値、及びHC値と、図16記載の下層AF膜302のKAF値を用い、
[(下層AF膜302のKAFVAF積+上層F膜501のKFVF積)/(下層AF膜302のVAF値+上層F膜501のVF 値)]×[1/(RTでの上層F膜501単層膜のKF値)]×(RTでの上層F膜501単層膜のHC値)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
CoCrPt-SiO2単層膜のRTでのHC値が約5−6 kOe、CoCrPt-Cr単層膜のRTでのHC値が約2−3 kOeであったことから(図14)、「AF/AF/F」の交換結合により大きな値に高められることが分かった。さらに、上層F膜501のRTでの大きなHC値は、加温とともにブリュアン関数的に徐々に減少し、中間層AF膜401のTB値である約155℃近傍かつTW≒200℃直下で(すなわち、「AF/AF/F」の交換結合が消失する温度で)急激に減少、以後、上層F膜501の単層膜のHCの温度依存性に従ったHC値を示した。TW≒200℃近傍でのHC値は、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜の場合には約2−3 kOe、CoCrPt-Cr膜の場合には約1−1.5 kOeであった。図8においては、TB値近傍かつTW直下で、HC値の温度に対する変化(すなわち、HCの温度勾配)が極めて急峻(ステップ状)になっていることを強調したい。
また、図17には、本実施例に係わる交換結合3層媒体中の上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値が纏められている。ここでの(KV)eff/(kBT) 値は、
[(下層AF膜302のKAFVAF積)+(上層F膜501のKFVF積)]/ (kBT)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜で構成される場合には最大約268、CoCrPt-Cr膜で構成される場合には最大約229という値が得られた。CoCrPt-SiO2単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約77、CoCrPt-Cr単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約38であったことから(図14)、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、「AF/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められることが分かった。また、図8では、TW≒200℃近傍でのHC値について、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜の場合には約2−3 kOe、CoCrPt-Cr膜の場合には約1−1.5 kOeという値を得ている。現行ヘッドの最大記録磁界は約10 kOeもあるため、TW≒200℃近傍でのHC値約2−3 kOe(CoCrPt-SiO2膜)、或いは約1−1.5 kOe(CoCrPt-Cr膜)にまで低下している上層F膜501への書き込み(記録)は容易である。さらに、下地膜200、下層AF膜302、中間層AF膜401、上層F膜501、及び保護膜600は、上述のように稠密面で構成されてよいことからRT形成が可能である。唯一、下層AF膜302を構成しているL10-PtMn膜を得る際、加温プロセスが必要であるが、250℃程度であり実用上の問題はない。
以上から、「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「AF/AF/F」の交換結合により、RT〜TBの温度範囲で極めて大きな熱揺らぎ耐性、及び高HC値が得られることが分かった。また、高温での書き込みやすさの相克を図れることが分かった。また、TB値近傍かつTW直下で、極めて急峻なHC値の温度に対する変化(すなわち、大きなHCの温度勾配)が得られることが分かった。さらに、低温形成が可能である旨、確認できた。従って、実施例3に示す「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜501」の3層の「AF/AF/F」の交換結合3層媒体を用いることにより、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れる、(2)TW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を実現することができる。
次に、本発明に係わる「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜501」から構成される交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録過程について説明する。図9に、「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの「AF/AF/F」交換結合結晶粒内の熱アシスト磁気記録時のスピン配列の熱履歴の様子を示す。一つの結晶粒内の様子を描写してあるが、一つの磁化反転ユニット内の様子も同じである。ここでは、下層AF膜302、及び下層AF膜の一つの結晶粒3020がL10-PtMn、中間層AF膜401、及び中間層AF膜の一つの結晶粒4010がγ-FeMn、上層F膜501、及び上層F膜の一つの結晶粒5010がCoCrPt-SiO2(或いは、CoCrPt-Cr)で構成される場合について説明する。なお、L10-PtMnのTNは約700℃(図16)、γ-FeMnのTNは約217℃(図15)、CoCrPt-SiO2のTCは約600℃、CoCrPt-CrのTCは約427℃である(図14)。また、理想的なTWは約200℃であることから、TW≒200℃として、以下に説明する。
図9(a)に示すように、熱アシスト磁気記録時、T=TWで熱、及び記録磁界10000が媒体上方面から下向きに照射、及び印加されるとする。L10-PtMnのTNが約700℃、γ-FeMnのTNが約217℃、CoCrPt-SiO2のTCが約600℃(或いは、CoCrPt-CrのTCが約427℃)と、いずれもTW≒200℃より高いことから、T=TWでの「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「AF/AF/F」である。しかしながら、γ-FeMnのTBは約155℃であることから、より詳細に磁性状態を記述すると「AF/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」である。よって、T=TWでは、上層F膜の一つの結晶粒5010中の磁化ベクトルは、CoCrPt-SiO2の低HC(或いは、CoCrPt-Crの低HC)故に容易に下向きに向けられることになる。しかしながら、交換結合が生じていない状態なので、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン配列の方向は任意である。同様に、下層AF膜の一つの結晶粒3020中のAFスピン配列の方向も任意である。
図9(b)に示すように、T=TBにまで冷却されると、交換結合が発生する。これに伴い、「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5010」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「AF/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」→「AF/AF/F」に遷移する。上層F膜の一つの結晶粒5010中のスピンを下向きに向けるよう、各層、各界面のスピンが揃えられ、フィールドクールされて凍結される。交換結合によって発生する内部磁場は数百kOeにも及ぶとされており、その大きさに負けてしまって中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン、下層AF膜の一つの結晶粒3020中のAFスピンは、例えば図9(b)のように揃えられることになる。
また、“TB<<TNの特質”があるが故に、T=TBに冷却された時点で、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中には、すでに比較的大きな<SAF>があり、よって比較的大きなJAF<SAF><SAF>を持ったAFスピン配列がある。比較的大きな<SAF>、及びJAF<SAF><SAF>がある状態でT=TBに冷却された時点で突如「AF/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度で突如HCが急激に増大することになる。これが、T=TBの温度でHCの温度勾配を急峻にできる理由であり、“TB<<TNの特質”を利用して初めて得られる物理現象であることは、すでに述べたとおりである。
図9(c)に示すようにRT<T<TBにまで冷却されると、各層の磁化ベクトルは大きくなり、図9(d)に示すようにT=RTではさらに大きくなって固定される。以上が、熱アシスト磁気記録過程である。なお、上向きの記録過程については、上述の磁化ベクトルを反対にして考えれば良い。
なお、本実施例に係わる下層AF膜302は、L10-(PtPd)Mn膜で構成されても良い。図17に纏められているように、
(a) 下層AF膜302がL10-(PtPd)Mn膜、上層F膜501がCoCrPt-SiO2膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値最大約268、HC値最大約11 kOe、
(b) 下層AF膜302がL10-(PtPd)Mn膜、上層F膜501がCoCrPt-Cr膜という組み合わせでも、上層F膜501のRTでの(KV)eff/(kBT)値最大約229、HC値最大約10 kOe、という大きな値が得られるからである。なお、L10-(PtPd)Mn膜を得る際にも、加温プロセスが必要であるが、250℃程度であり実用上の問題はない。
また、本実施例に係わる中間層AF膜401は、図15に纏められているようなγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜、γ-MnNi膜、γ-MnPt膜、γ-MnPd膜、γ-Mn(PtRh)膜、γ-Mn(RuRh)膜で構成されても良い。なお、ここでのIr組成、Rh組成、Ru組成、Ni組成、Pt組成、Pd組成、(PtRh)組成、(RuRh)組成は、TB値を200℃以下にするためいずれも20 at.%以下である。図15に示されているように、これらのAF膜のKAF値はγ-FeMn膜と同程度であり、TB値もγ-FeMn膜と同程度、かつ“TB<<TNの特質”を有しているからである。
さらに、図15を見ると、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の場合、TB値とTN値との差が大きいのが確認できる。従って、これらのAF膜を用いることにより、“TB<<TNの特質”をより有効に発揮させることが可能となる。すなわち、熱アシスト磁気記録過程において、T=TBに冷却された時点で、より大きな<SAF>、及びより大きなJAF<SAF><SAF>がある状態で突如「AF/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度でのHCの温度勾配をよりいっそう大きくすることが可能である。
さらに、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さは、下層AF膜302を構成するL10-PtMn膜、及びL10-(PtPd)Mn膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さと同程度であり、かつ上層F膜501を構成するCoCrPt-SiO2膜の(001)面内〔或いは、CoCrPt-Cr膜の(001)面内〕の稠密六方格子の一辺の長さと同程度である。従って、中間層AF膜401として、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を用いることにより、格子ミスマッチの問題を回避できることから、理論値(例えば、図17に記載の概算値)に近いHC値や(KV)eff/(kBT)値を得ることができるのみならず、上層F膜501の異方性分散を小さく抑えることが可能となる。
さらに、TWを200℃よりも高くしたい場合、中間層AF膜401として、20 at.%以上のIr組成、Rh組成、Ru組成を有するγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜などを使えば良い。これらのAF膜は約240−300℃のTB値を有しており、かつIr組成、Rh組成、Ru組成によりTB値を所望の値(すなわち、TB値がTW直下に来るよう)に調節可能であるからである。
しかしながら、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を適用するとコスト高になってしまうことから、これらのAF膜を適用する場合には、磁気物性値とコスト問題とのトレードオフが必要であろう。
さらに、上述の交換結合3層媒体では、垂直磁気記録の場合について述べたが、面内磁気記録に対しても、傾斜磁気異方性磁気記録に対しても展開は可能である。
図10に、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体を示す。この媒体は、基板100上に、下地膜200、TW<TNの高KAFの下層反強磁性(AF)膜302、TB<TWの低KAFの中間層反強磁性(AF)膜401、TW<TCの記録再生用上層フェリ磁性(F)膜502、保護膜600を順次積層してなる層を有する。基板100は、例えばガラス基板で構成され、下地膜200は例えばRu膜、下層AF膜302は例えばL10-PtMn膜、中間層AF膜401は例えばγ-FeMn膜、上層F膜502は例えば磁化補償温度Tcomp.≦0℃を有するアモルファスTbFeCo膜、保護膜600は例えばC膜で構成される。低温で形成した場合には、各層の稠密面であるRu(001)/L10-PtMn(111)/γ-FeMn(111)/アモルファスTbFeCoの結晶配向が得られ、垂直磁化膜となる。代表的な膜厚は、下地膜200が20nm、下層AF膜302が10nm、中間層AF膜401が10nm、上層F膜502が10nm、保護膜600が3nmである。
図11は、本発明に係わる熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の上層F膜502の保磁力(HC)の温度(T)依存性を示すものである。下層AF膜302が10nmのL10-PtMn膜、中間層AF膜401が10nmのγ-FeMn膜、上層F膜502が10nmのTbFeCo膜で構成される場合のHCvs Tの関係を示してある。上層F膜502のRTでのHC値は、「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「AF/AF/F」の交換結合により、極めて大きな値を示した。図17に纏められているように、上層F膜502がTbFeCo膜で構成される場合にはHC値最大約137 kOeという値が得られた。
ここで、HC値の算出(概算)の際には加重平均を用いた。図14記載の上層F膜502のKF値、及びHC値と、図16記載の下層AF膜302のKAF値を用い、
[(下層AF膜302のKAFVAF積+上層F膜502のKFVF積)/(下層AF膜302のVAF値+上層F膜502のVF 値)]×[1/(RTでの上層F膜502単層膜のKF値)]×(RTでの上層F膜502単層膜のHC値)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
TbFeCo単層膜のRTでのHC値が約8 kOeであったことから(図14)、「AF/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められ、かつ記録ヘッドの最大磁界10 kOeを大きく上回ることができることが分かった。さらに、上層F膜502のRTでの極めて大きなHC値は、加温とともにブリュアン関数的に徐々に減少し、中間層AF膜401のTB値である約155℃近傍かつTW≒200℃直下で(すなわち、「AF/AF/F」の交換結合が消失する温度で)急激に減少、以後、上層F膜502の単層膜のHCの温度依存性に従ったHC値を示した。TW≒200℃近傍でのHC値は、上層F膜502がTbFeCo膜の場合には約1 kOeであった。図11においては、TB値近傍かつTW直下で、HC値の温度に対する変化(すなわち、HCの温度勾配)が極めて急峻になっていることを強調したい。
また、図17には、本実施例に係わる交換結合3層媒体中の上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値が纏められている。ここでの(KV)eff/(kBT) 値は、
[(下層AF膜302のKAFVAF積)+(上層F膜502のKFVF積)]/ (kBT)
なる関係式を用いて概算した。図15に纏めてあるように、中間層AF膜401のKAFが小さかったことから、中間層AF膜401のKAFVAF積は無視して算出した。
上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、上層F膜502がTbFeCo膜で構成される場合には最大約198という値が得られた。TbFeCo単層膜のRTでの(KFVF)/(kBT)値が約5.8−7.7であったことから(図14)、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値は、「AF/AF/F」の交換結合により極めて大きな値にまで高められることが分かった。また、図11では、TW≒200℃近傍でのHC値について、上層F膜502がTbFeCo膜の場合には約1 kOeという値を得ている。現行ヘッドの最大記録磁界は約10 kOeもあるため、TW≒200℃近傍でのHC値約1 kOeにまで低下している上層F膜502への書き込み(記録)は容易である。さらに、下地膜200、下層AF膜302、中間層AF膜401、上層F膜502、及び保護膜600は、上述のように稠密面で構成されてよいことからRT形成が可能である。唯一、下層AF膜302を構成しているL10-PtMn膜を得る際、加温プロセスが必要であるが、250℃程度であり実用上の問題はない。
以上から、「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「AF/AF/F」の交換結合により、RT〜TBの温度範囲で極めて大きな熱揺らぎ耐性、及び高HC値が得られることが分かった。また、高温での書き込みやすさの相克を図れることが分かった。また、TB値近傍かつTW直下で、極めて急峻なHC値の温度に対する変化(すなわち、大きなHCの温度勾配)が得られることが分かった。さらに、低温形成が可能である旨、確認できた。従って、実施例4に示す「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜502」の3層の「AF/AF/F」の交換結合3層媒体を用いることにより、(1)RTでの熱揺らぎ耐性と高温での書き込みやすさの相克を図れる、(2)TW直下でのHCの温度勾配を急峻にできる、(3)低温形成が可能である、の3つを同時に満足できる熱アシスト磁気記録媒体を実現することができる。
次に、本発明に係わる「下層AF膜302/中間層AF膜401/上層F膜502」から構成される交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録過程について説明する。図12に、「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの「AF/AF/F」交換結合結晶粒内の熱アシスト磁気記録時のスピン配列の熱履歴の様子を示す。一つの結晶粒内の様子を描写してあるが、一つの磁化反転ユニット内の様子も同じである。図中TM.は遷移金属、RE.は希土類の意味である。ここでは、下層AF膜302、及び下層AF膜の一つの結晶粒3020がL10-PtMn、中間層AF膜401、及び中間層AF膜の一つの結晶粒4010がγ-FeMn、上層F膜502、及び上層F膜の一つの結晶粒5020がTbFeCoで構成される場合について説明する。なお、L10-PtMnのTNは約700℃(図16)、γ-FeMnのTNは約217℃(図15)、TbFeCoのTCは約270℃である(図14)。また、理想的なTWは約200℃であることから、TW≒200℃として、以下に説明する。
図12(a)に示すように、熱アシスト磁気記録時、T=TWで熱、及び記録磁界10000が媒体上方面から下向きに照射、及び印加されるとする。L10-PtMnのTNが約700℃、γ-FeMnのTNが約217℃、TbFeCoのTCが約270℃と、いずれもTW≒200℃よりも高いことから、T=TWでの「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「AF/AF/F」である。しかしながら、γ-FeMnのTBが約155℃であることから、より詳細に磁性状態を記述すると「AF/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」である。よって、T=TWでは、上層F膜の一つの結晶粒5020中の磁化ベクトル(トータルの磁化ベクトル)は、TbFeCoの低HC故に容易に下向きに向けられることになる。しかしながら、交換結合が生じていない状態なので、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン配列の方向は任意である。同様に、下層AF膜の一つの結晶粒3020中のAFスピン配列の方向も任意である。
図12(b)に示すように、T=TBにまで冷却されると、交換結合が発生する。これに伴い、「下層AF膜の一つの結晶粒3020/中間層AF膜の一つの結晶粒4010/上層F膜の一つの結晶粒5020」より構成される一つの結晶粒内の磁性状態は「AF/Para.(界面)/AF/ Para.(界面)/F」→「AF/AF/F」に遷移する。上層F膜の一つの結晶粒5020中のスピン(トータルのスピン)を下向きに向けるよう、各層、各界面のスピンが揃えられ、フィールドクールされて凍結される。交換結合によって発生する内部磁場は数百kOeにも及ぶとされており、その大きさに負けてしまって中間層AF膜の一つの結晶粒4010中のAFスピン、下層AF膜の一つの結晶粒3020中のAFスピンは、例えば図12(b)のように揃えられることになる。
また、“TB<<TNの特質”があるが故に、T=TBに冷却された時点で、中間層AF膜の一つの結晶粒4010中には、すでに比較的大きな<SAF>があり、よって比較的大きなJAF<SAF><SAF>を持ったAFスピン配列がある。比較的大きな<SAF>、及びJAF<SAF><SAF>がある状態でT=TBに冷却された時点で突如「AF/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度で突如HCが急激に増大することになる。これが、T=TBの温度でHCの温度勾配を急峻にできる理由であり、“TB<<TNの特質”を利用して初めて得られる物理現象であることは、すでに述べたとおりである。
図12(c)に示すようにRT<T<TBにまで冷却されると、各層の磁化ベクトルは大きくなり、図12(d)に示すようにT=RTではさらに大きくなって固定される。なお、上層F膜の一つの結晶粒5020中においては、[RE.スピンの温度低下に伴うスピンの大きさの増大]>[TM.スピンの温度低下に伴うスピンの大きさの増大]の関係があることから、本関係に従ってRE.スピン、及びTM.スピンが増大することになる。T=RTでは、RE.スピンの大きさとTM.スピンの大きさとの差分が小さくなって、MS≒50 emu/cm3にまで低下してしまう。低MS故に再生感度が不足する問題が生じた場合には、例えば上層F膜502上に、RTでのMS値約300 emu/cm3を有するアモルファスDyTbFeCo膜のような再生専用の層を設けても構わない。以上が、熱アシスト磁気記録過程である。なお、上向きの記録過程については、上述の磁化ベクトルを反対にして考えれば良い。
なお、本実施例に係わる下層AF膜302は、L10-(PtPd)Mn膜、L10-NiMn膜、或いは規則相Mn3Ir膜で構成されても良い。図17に纏められているように、
(a) 下層AF膜302がL10-(PtPd)Mn膜、上層F膜502がTbFeCo膜という組み合わせでも、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値最大約198、HC値最大約137 kOe、
(b) 下層AF膜302がL10-NiMn膜、上層F膜502がTbFeCo膜という組み合わせでも、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値最大約27、HC値最大約17 kOe、
(c) 下層AF膜302が規則相Mn3Ir膜、上層F膜502がTbFeCo膜という組み合わせでも、上層F膜502のRTでの(KV)eff/(kBT)値最大約46、HC値最大約31 kOe、という大きな値が得られるからである。なお、L10-(PtPd)Mn膜、L10-NiMn膜、或いは規則相Mn3Ir膜を得る際にも、加温プロセスが必要であるが、250℃程度であり実用上の問題はない。
また、本実施例に係わる中間層AF膜401は、図15に纏められているようなγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜、γ-MnNi膜、γ-MnPt膜、γ-MnPd膜、γ-Mn(PtRh)膜、γ-Mn(RuRh)膜で構成されても良い。なお、ここでのIr組成、Rh組成、Ru組成、Ni組成、Pt組成、Pd組成、(PtRh)組成、(RuRh)組成は、TB値を200℃以下にするためいずれも20 at.%以下である。図15に示されているように、これらのAF膜のKAF値はγ-FeMn膜と同程度であり、TB値もγ-FeMn膜と同程度、かつ“TB<<TNの特質”を有しているからである。
さらに、図15を見ると、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の場合、TB値とTN値との差が大きいのが確認できる。従って、これらのAF膜を用いることにより、“TB<<TNの特質”をより有効に発揮させることが可能となる。すなわち、熱アシスト磁気記録過程において、T=TBに冷却された時点で、より大きな<SAF>、及びより大きなJAF<SAF><SAF>がある状態で突如「AF/AF/F」の交換結合が形成されることになるため、T=TBの温度でのHCの温度勾配をよりいっそう大きくすることが可能である。
さらに、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さは、下層AF膜302を構成するL10-PtMn膜、L10-(PtPd)Mn膜、L10-NiMn膜、及び規則相Mn3Ir膜の(111)面内の稠密六方格子の一辺の長さと同程度である。従って、中間層AF膜401として、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を用いることにより、格子ミスマッチの問題を回避できることから、理論値(例えば、図17に記載の概算値)に近いHC値や(KV)eff/(kBT)値を得ることができるのみならず、上層F膜502の異方性分散を小さく抑えることが可能となる。
さらに、TWを200℃よりも高くしたい場合、中間層AF膜401として、20 at.%以上のIr組成、Rh組成、Ru組成を有するγ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜などを使えば良い。これらのAF膜は約240−300℃のTB値を有しており、かつIr組成、Rh組成、Ru組成によりTB値を所望の値(すなわち、TB値がTW直下に来るよう)に調節可能であるからである。
しかしながら、γ-MnIr膜、γ-MnRh膜、γ-MnRu膜を適用するとコスト高になってしまうことから、これらのAF膜を適用する場合には、磁気物性値とコスト問題とのトレードオフが必要であろう。
さらに、上述の交換結合3層媒体では、垂直磁気記録の場合について述べたが、面内磁気記録に対しても、傾斜磁気異方性磁気記録に対しても展開は可能である。
図13に、上層F膜501、及び502のTW とTC との温度関係、中間層AF膜401のTBとTW との温度関係、及び下層F膜301のTW とTC との温度関係、下層AF膜302のTW とTN との温度関係が逆転した場合について纏めた。図13に示してあるように、どれか一つでも温度関係が逆転してしまうと、HCの温度勾配を急峻にできる実施例1〜4記載の熱アシスト磁気記録媒体を実現できなくなってしまうことを述べておきたい。
また、交換結合理論が確立されていないため、図17のHC値算出(概算)の際には、上で述べたような加重平均を用いた。このHC値は、極めて理想的な「F/AF/F」の交換結合、或いは「AF/AF/F」の交換結合を仮定しての概算値であることは言うまでもない。詳述すると、下層F膜301のKFVF積、或いは下層AF膜302のKAFVAF積が、中間層AF膜401を介し、上層F膜501、或いは502のKFVF積に完全に重畳することを仮定しての加重平均を用いての概算値である。よって、実際には、格子ミスマッチの問題や界面での不純物の巻き込み等により、図17に記載のHC値よりは下がってしまう。しかしながら、著者らの以前の別分野での実験で、硬磁性F膜とAF膜とを交換結合させることにより、硬磁性F膜のHC値を単膜と比べて数倍〜数十倍に高めることができたという知見を得ている。また、Appl. Phys. Lett., Vol.82, pp.2859-2861 (2003)記載の「FeRh(下層)/FePt(上層)」で構成される磁性膜構造においても、格子ミスマッチが大きいにもかかわらず、“上層F単膜のHC値約1 kOe→「AF/F」の交換結合により上層F膜のHC値約8 kOe”にまで高められる旨、示されている。従って、実験的な見地からも、交換結合により上層F膜501、502のHC値を単膜と比べて数倍〜数十倍に高められ、図17の「×」印の記されていないほとんどの組み合わせにおいて最低でもHC>10 kOe(記録ヘッドの最大磁界)が得られるであろうことは十分に予測のつくことである。
さらに、下層F膜301として高KFを有するF膜、下層AF膜302として高KAFを有するAF膜でないと、記録再生用上層F膜501、502に大きな(KV)eff/(kBT)値、大きなHC値を付与できない。すなわち、低KFのF膜や低KAFのAF膜では効果がない。図17の「×」印が記されている下層AF膜302と上層F膜501との組み合わせは、AF膜の低KAFゆえに効果の認められない代表的な例である。
さらに、中間層AF膜401の介在のない下層AF膜302と記録再生用上層F膜501、502の2層の「AF/F」の交換結合では、急峻なHCの温度勾配を有する実施例1〜4記載のような熱アシスト磁気記録媒体を実現できない。なぜなら、TB値が約150−200℃であってかつ高KAFを有するAF膜は皆無に等しいからである。すなわち、高KAFを有するAF膜のTNは皆高く(図16)、よって、TB値がTW≒200℃を大幅に上回ってしまうものしかないためである。但し、TB値が約150−200℃であってかつ高KAFを有するAF膜があれば、原理的に可能である。
さらに、下層F膜301を構成するL10-FePt、L10-CoPt、或いはL10-FePtNiの磁化によりバイアス磁界が生じ、このバイアス磁界が記録再生用上層F膜501、502に印加されて記録時に悪影響を及ぼす問題が生じることが考えられる。しかしながら、この問題は中間層AF膜401の膜厚を厚くすることで解決は可能である。また、下地膜200の下側に(Fe/Cr)多層膜を配置し、バイアス磁界からの漏れ磁束を(Fe/Cr)多層膜に吸わせる手段を設けても良い。下層膜がAF膜の場合には、バイアス磁界がゼロであるので、上記のような問題は生じない。
図18は、本発明による熱アシスト磁気記録媒体を用いた一実施例の磁気ディスク装置を示す図である。磁気記録装置としての磁気ディスク装置に本発明による熱アシスト磁気記録媒体を適用した概要を示すものである。しかしながら、本発明の熱アシスト磁気記録媒体は、例えば、磁気テープ装置などのような磁気記録装置、光磁気ディスク装置にも適用することが可能である。
図示した磁気ディスク装置は、同心円状のトラックと呼ばれる記録領域にデータを記録するための、ディスク状に形成された本発明による熱アシスト磁気記録媒体としての磁気ディスク10と、上記データを書き込み、読み取りする、該熱アシスト磁気記録媒体を暖めるための近接場光、レーザー光照射手段が設けられている磁気ヘッド18と、該磁気ヘッド18を支え磁気ディスク10上の所定位置へ移動させるアクチュエータ手段と、磁気ヘッド18が読み取り、書き込みするデータの送受信及びアクチュエータ手段の移動などを制御する制御手段26とを含み構成される。
さらに、構成と動作について以下に説明する。少なくとも一枚の回転可能な磁気ディスク10が回転軸12によって支持され、駆動用モーター14によって回転させられる。少なくとも一個のスライダ16が、磁気ディスク10上に設置され、該スライダ16は、一個以上設けられており、読み取り、書き込みするための磁気ヘッド18を支持している。
磁気ディスク10が回転すると同時に、スライダ16がディスク表面を移動することによって、目的とするデータが記録されている所定位置へアクセスされる。スライダ16は、ジンバル20によってアーム22に取り付けられる。ジンバル20はわずかな弾力性を有し、スライダ16を磁気ディスク10に密着させる。アーム22はアクチュエータ24に取り付けられる。なお、図18には、ジンバルに保持されたスライダ16の拡大摸式図を同時に図示してある。
アクチュエータ24としてはボイスコイルモーターがある。ボイスコイルモーターは固定された磁界中に置かれた移動可能なコイルからなり、コイルの移動方向及び移動速度等は、制御手段26からライン30を介して与えられる電気信号によって制御される。従って、本実施例によるアクチュエータ手段は、例えば、スライダ16とジンバル20とアーム22とアクチュエータ24とライン30を含み構成されるものである。
磁気ディスクの動作中、磁気ディスク10の回転によってスライダ16とディスク表面の間に空気流によるエアベアリングが生じ、それがスライダ16を磁気ディスク10の表面から浮上させる。従って、磁気ディスク装置の動作中、本エアベアリングはジンバル20のわずかな弾性力とバランスをとり、スライダ16は磁気ディスク表面にふれずに、かつ磁気ディスク10と一定間隔を保って浮上するように維持される。
通常、制御手段26はロジック回路、メモリ、及びマイクロプロセッサなどから構成される。そして、制御手段26は、各ラインを介して制御信号を送受信し、かつ磁気ディスク装置の種々の構成手段を制御する。例えば、モーター14はライン28を介し伝達されるモーター駆動信号によって制御される。アクチュエータ24はライン30を介したヘッド位置制御信号及びシーク制御信号等によって、その関連する磁気ディスク10上の目的とするデータートラックへ選択されたスライダ16を最適に移動、位置決めするように制御される。
そして、制御信号26は、磁気ヘッド18が磁気ディスク10のデータを読み取り変換した電気信号を、ライン32を介して受信し解読する。また、磁気ディスク10にデータとして書き込むための電気信号(含、近接場光、レーザー光照射信号)を、ライン32を介して磁気ヘッド18に送信する。すなわち、制御手段26は、磁気ヘッド18が読み取り又は書き込みする情報の送受信を制御している。
なお、上記の読み取り、書き込み信号は、磁気ヘッド18から直接伝達される手段も可能である。また、制御信号として例えばアクセス制御信号及びクロック信号などがある。さらに、磁気ディスク装置は複数の磁気ディスクやアクチュエータ等を有し、該アクチュエータが複数の磁気ヘッドを有してもよい。
次に、図19を参照して、磁気ヘッド18の例について説明する。磁気ヘッド18は、熱アシスト磁気記録ヘッド181と再生ヘッド182とを含み、構成される。
熱アシスト磁気記録ヘッド181は、少なくとも下部磁気コア1810と、コイル1811と、コイル1811と上部磁気コア1813との中間に設けられているレーザー光1814を通すための導波路1812と、上部磁気コア1813とを含み構成される。浮上面1830にはAu薄帯などで構成されるナノ光源1815が具備されており、レーザー光1814がナノ光源1815の胴体部に照射されるよう配置されている。該ナノ光源1815は薄帯で構成され、かつレーザー光1814により高温に加熱されるが故に光源内では電子の非弾性散乱が活発化し、プラズモンが励起されることになる。該ナノ光源1815の先端部は、例えば幅数十nm以下のBeaked Apex形状を有するように形成して本先端部に熱(プラズモン)エネルギーが集約するようにさせ、ナノ光源1815先端部からいわゆる近接場光1816(光スポット径数十nm以下)を発生させるようにする。該近接場光1816により、熱アシスト磁気記録媒体10を局所的に所望の温度に加熱させるようにさせ、ほぼ同時に熱アシスト磁気記録ヘッド181からの記録磁界を熱アシスト磁気記録媒体10に印加することで熱アシスト磁気記録を行うようにする。一方の再生ヘッド182は、少なくとも下部シールド1821と、GMRヘッド、或いはTMRヘッドなどの高感度再生センサ1822と、上部シールド1823とを含み構成される。
以上、本発明による熱アシスト磁気記録媒体及び磁気ディスク装置について説明してきたが、本発明に係わる熱アシスト磁気記録媒体の下地膜200は、Cu膜、Cr膜、CrRu膜、NiFeCr膜、Rh膜、Pd膜、Ag膜、Pt膜、MgO膜、或いはAu膜で構成されても良い。L10-FePt膜、L10-CoPt膜、L10-FePtNi膜、L10-PtMn膜、L10-(PtPd)Mn膜、 L10-NiMn膜、或いは規則相Mn3Ir膜の下地になる膜なら何でも良い。
下層F膜301は、L10-FePtにCoを添加したL10-FePtCo膜、或いはL10-CoPtにNiを添加したL10-CoPtNi膜で構成されても良い。また、L10-FePd膜、規則相Co3Pt膜、不規則相CoPt膜、SmCo膜、或いはNdFeB膜など、高KFを有する膜で構成されても良い。下層AF膜302は、規則相AuMn膜で構成されても良い。また、不規則相CrMnM膜で構成されても良い。第3元素Mとしては、Pt、Rh、Pd、及びCuが良く、これらの元素のうち2種類以上を組み合わせて添加しても良い。
中間層AF膜401は、高KAFを有するAF膜で構成されても良い。但し、高KAFであってかつTB<TW(TW≒200℃)を満足するAF膜は皆無に等しい。さらに、中間層AF膜401は、スピングラス、ミクト磁性を有する磁性膜で構成されても同様の効果が期待できる。さらに、中間層AF膜401は、今後、規則化温度を350℃以下に低減できる技術が確立されれば、100℃近傍でAF→F相転移するFeRh系の材料で構成されても良い。
上層F膜501は、CoCr合金膜、CoPt合金膜、CoCrTa合金膜、或いはCoCrPtTa合金膜で構成されても良い。また、(Co/Pt)多層膜や(Co/Pd)多層膜で構成されても良い。さらに、RTでのHC値がHC<<10 kOeとなるよう第3元素Mを添加したL10-FePtM合金膜、L10-CoPtM合金膜、L10-FePtNiM合金膜、L10-FePtCoM合金膜、或いはL10-CoPtNiM合金膜で構成されても良い。第3元素Mとしては、Cu、Ru、Rh、Pd、Ag、Au、Sn、Sb、Ir、Pb、及びBが良く、これらの元素のうち2種類以上を組み合わせて添加しても良い。また、これらの元素のうちAg、Sn、Sb、Ir、Pb、及びBでは、過剰添加により、Grain segregationの効果が期待できる。なぜなら、これらの元素は不規則相では強制固溶しているが、不規則/規則相変態により規則相になった時点で非固溶となり、粒界に排出されてしまうからである。
さらに、上層F膜502は、非晶質TbFe膜、非晶質GdFe膜、非晶質TbCo膜、非晶質GdTbFeCo膜、非晶質GdDyFeCo膜、非晶質NdFeCo膜、或いは非晶質NdTbFeCo膜のようなRE.−TM.合金膜であっても良い。
保護膜600は、Cu膜、Cr膜、Ta膜、Ru膜、Pd膜、Ag膜、Pt膜、或いはAu膜で構成されても良い。上層F膜501、502含め、保護膜の下側に配置されている膜の耐食性を確保できる膜なら何でも構わない。
さらに、下層AF膜302と中間層AF膜401との中間にCo膜のようなF膜を1層以上介在させても良い。(Co/Pt)多層膜や(Co/Pd)多層膜を介在させても良い。下地膜200の下側に高い熱伝導率を有するAu膜、Cu膜等のヒートシンク対応層を設けても構わない。下地膜200の下側にSUL層(Soft underlayer層)を設けても構わない。
本発明に係わる「中間層AF膜401のTBを利用し、然るべき温度のところに磁界勾配を設ける」ことの基本コンセプトは、MRAM(Magnetic random access memory)にも展開が可能である。
本発明に係わる下層強磁性膜/中間層反強磁性膜/記録再生用上層強磁性膜より構成される熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体の拡大断面図。 図1の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の記録再生用上層強磁性膜の保磁力の温度依存性を示す図。 図1の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録中のスピン配列の履歴の様子を描写した図。 本発明に係わる下層強磁性膜/中間層反強磁性膜/記録再生用上層フェリ磁性膜より構成される熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体の拡大断面図。 図4の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の記録再生用上層フェリ磁性膜の保磁力の温度依存性を示す図。 図4の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録中のスピン配列の履歴の様子を描写した図。 本発明に係わる下層反強磁性膜/中間層反強磁性膜/記録再生用上層強磁性膜より構成される熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体の拡大断面図。 図7の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の記録再生用上層強磁性膜の保磁力の温度依存性を示す図。 図7の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録中のスピン配列の履歴の様子を描写した図。 本発明に係わる下層反強磁性膜/中間層反強磁性膜/記録再生用上層フェリ磁性膜より構成される熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体の拡大断面図。 図10の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体中の記録再生用上層フェリ磁性膜の保磁力の温度依存性を示す図。 図11の熱アシスト磁気記録用交換結合3層媒体への熱アシスト磁気記録中のスピン配列の履歴の様子を描写した図。 記録温度、キュリー温度、ネール温度、及びブロッキング温度の温度関係が逆転した場合に生じる問題点を纏めた図。 本発明に係わる記録再生用強磁性膜の種類とその磁気物性値を纏めた図。 本発明に係わる中間層反強磁性膜の種類とその磁気物性値を纏めた図。 本発明に係わる下層強磁性膜、及び下層反強磁性膜の種類とその磁気物性値を纏めた図。 本発明に係わる下層強磁性膜、或いは下層反強磁性膜と、上層強磁性膜、或いは上層フェリ磁性膜との中間層反強磁性膜を介しての交換結合の主な材料の組み合わせと、その交換結合により上層強磁性膜、或いは上層フェリ磁性膜に付与されるRTでの熱揺らぎ耐性値、及び保磁力を纏めた図。 本発明による熱アシスト磁気記録媒体を用いた磁気ディスク装置を示す模式図。 磁気ヘッドの例を示す図。
符号の説明
10 磁気ディスク、12 回転軸、14 モーター、16 スライダ、18 磁気ヘッド、20 ジンバル、22 アーム、24 アクチュエータ、26 制御手段、28,30,32 ライン、100 基板、181 熱アシスト磁気記録ヘッド、182 再生ヘッド、200 下地膜、301 下層強磁性膜、302 下層反強磁性膜、401 中間層反強磁性膜、501 記録再生用上層強磁性膜、502 記録再生用上層フェリ磁性膜、600 保護膜、1810 下部磁気コア、1811 コイル、1812 導波路、1813 上部磁気コア、1814 レーザー光、1815 ナノ光源、1816 近接場光、1821 下部シールド、1822 高感度再生センサ、1823 上部シールド、3010 下層強磁性膜の結晶粒、3020 下層反強磁性膜の結晶粒、4010 中間層反強磁性膜の結晶粒、5010 上層強磁性膜の結晶粒、5020 上層フェリ磁性膜の結晶粒、10000 熱、及び記録磁界

Claims (10)

  1. TWを記録温度、TCをキュリー温度、TNをネール温度、TBをブロッキング温度、KFを強磁性体の磁気異方性エネルギー定数、KAFを反強磁性体の磁気異方性エネルギー定数としたとき、
    基板上に、TW<TCの高KFの強磁性体又はTW<TNの高KAFの反強磁性体からなる下層膜と、TB<TWの低KAFの反強磁性体からなる中間層と、TW<TCの記録再生層である強磁性体又はフェリ磁性体からなる上層膜とを積層した積層膜を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  2. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記強磁性体からなる下層膜がL10-FePt系膜であり、前記中間層がγ-FeMn系膜であり、前記強磁性体からなる上層膜がCoCrPt-SiO2系膜或いはCoCrPt-Cr系膜であることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  3. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記強磁性体からなる下層膜がL10-FePt系膜であり、前記中間層がγ-FeMn系膜であり、前記フェリ磁性体からなる上層膜が非晶質TbFeCo系膜であることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  4. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記反強磁性体からなる下層膜がL10-PtMn系膜であり、前記中間層がγ-FeMn系膜であり、前記強磁性体からなる上層膜がCoCrPt-SiO2系膜或いはCoCrPt-Cr系膜であることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  5. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記反強磁性体からなる下層膜がL10-PtMn系膜であり、前記中間層がγ-FeMn系膜であり、前記フェリ磁性体からなる上層膜が非晶質TbFeCo系膜であることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  6. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記強磁性体からなる下層膜が、L10-CoPt、或いはL10-FePtNiであることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  7. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記反強磁性体からなる下層膜が、L10-(PtPd)Mnであることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  8. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記反強磁性体からなる下層膜が、L10-(PtPd)Mn、L10-NiMn、或いは規則相Mn3Irであることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  9. 請求項1記載の熱アシスト磁気記録媒体において、前記中間層がγ-MnIr、γ-MnRh、γ-MnRu、γ-MnNi、γ-MnPt、γ-MnPd、γ-Mn(PtRh)、或いはγ-Mn(RuRh)であることを特徴とする熱アシスト磁気記録媒体。
  10. 熱アシスト磁気記録媒体と、
    前記熱アシスト磁気記録媒体を駆動する媒体駆動部と、
    媒体加熱手段と記録磁界印加手段を有する記録ヘッドと再生ヘッドとを搭載した磁気ヘッドと、
    前記磁気ヘッドを前記熱アシスト磁気記録媒体上の所望の位置に位置決めするための磁気ヘッド駆動部とを備え、
    前記熱アシスト磁気記録媒体は、TWを記録温度、TCをキュリー温度、TNをネール温度、TBをブロッキング温度、KFを強磁性体の磁気異方性エネルギー定数、KAFを反強磁性体の磁気異方性エネルギー定数としたとき、基板上に、TW<TCの高KFの強磁性体又はTW<TNの高KAFの反強磁性体からなる下層膜と、TB<TWの低KAFの反強磁性体からなる中間層と、TW<TCの記録再生層である強磁性体又はフェリ磁性体からなる上層膜とを積層した積層膜を有することを特徴とする磁気記録再生装置。
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