JP6253535B2 - 磁気記録再生装置および磁気記録再生方法 - Google Patents

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Description

本発明の実施形態は,磁気記録再生装置および磁気記録再生方法に関する。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)の記録密度を向上させる技術として、熱アシスト磁気記録(TAMR)や高周波アシスト磁気記録(MAMR)が検討されている。いずれも、記録密度の向上を図るため、微細な磁性粒子が非磁性母材で分断されたグラニュラー媒体を用い、1ビットを構成する記録ユニット(反転磁区)の面積を小さくしている。しかしながら、この方式による高密度化では、反転磁区を小さくするために磁性粒子を微細化させた場合、磁気特性のばらつきが増大する問題がある。一方、1ビットあたりの磁性粒子の個数を減少させて反転磁区を小さくする場合、信号対ノイズ比(SNR)が低下する問題がある。従って、これらの問題により、これらの方策による飛躍的な密度向上は近年難しくなっている。
この問題を解決する抜本的な方策として、三次元記録あるいは体積記録と呼ばれる技術が検討されている。体積記録では、磁気記録媒体の膜厚方向に記録を行うことで、単位面積あたりの記録密度を増加させる。
しかしながら、体積記録方式には、現行のHDDシステムに適用する場合、3つの欠点がある。
第1の欠点は、記録分解能が低いことである。
グラニュラー媒体に記録する場合、ビットとビットの境界である磁化転移領域を極めて狭くしないと、高密度の記録はできない。そのため、記録磁極が発生する記録磁界は、ヘッドの進行方向に沿って急峻に磁界強度が減少する(磁界傾度を大きくする)必要がある。
磁界傾度は、原理上、記録磁極から媒体膜厚方向に遠くなるに従って、小さくなる。このため、近年のHDD媒体は、記録層をできる限り薄く、かつ浮上量(記録ヘッドと媒体の距離)をできる限り小さくする方向に改良が進んでいる。上述の従来の体積記録では、記録磁極に近い層には高密度な記録ができるが、記録磁極から遠い層は高密度の記録が困難である。従って、磁気記録媒体全体の記憶容量は、体積記録をしない場合よりも大きくできるものの、2倍にはならない。
この問題点は、例えば、ビットパターンド媒体を多層構造にすることである程度は解決できる。ビットパターンド媒体では、記録層を1ビットの大きさの磁性ドットに加工する。各ドットが1ビットに対応するため、磁化転移を記録磁界によって形成する必要がなく、ある程度磁界傾度が低い記録磁界でも高密度で記録できる。
しかしながら、磁界傾度が低い場合、隣接ドットも誤って反転させる確率が増えるため、問題を完全に解決できるわけではない。
第2の欠点は、再生分解能が低いことである。
記録媒体上の各ビットからの漏洩磁界は、記録媒体から遠ざかるほど強度が小さくなり、かつ、磁化転移領域部分における磁界強度の変化も小さくなる。すなわち、空間的にぼやけた再生信号となる。
この現象は、記録磁界の場合と同じく、原理的な性質である。従って、この点からも、近年の媒体は、記録層をできる限り薄く、かつ浮上量をできる限り小さくする方向に改良が進んでいる。従って、第1の欠点と同様、上述のような体積記録の場合、再生ヘッドに近い層は高密度な再生ができるが、再生ヘッドから遠い層は高密度の再生が困難である。
この欠点は、上述のビットパターンド媒体を用いても解決できない。ビットパターンド媒体の下側の層でどんなに明瞭に磁化が空間変化していても、再生ヘッドまでは距離が遠いため、再生ヘッドからはぼやけた磁化の空間分布としてしか認識できないためである。
第3の欠点は、磁化量の重ね合わせによる信号強度の減少である。
二層(第1層、第2層)の体積記録媒体を仮定し、第1層の磁化をM1、厚さをt1、第2層の磁化をM2、厚さをt2とし、M1×t1≠M2×t2とする。第1層、第2層の磁化の向きが(上、上)、(上、下)、(下、上)、(下、下)の場合、再生信号強度は、それぞれ、M1×t1+M2×t2、M1×t1−M2×t2、−M1×t1+M2×t2、−M1×t1−M2×t2に比例し、原理的には再生信号強度によって全ての場合を区別できる。
しかし、各層が異なる方向に磁化される場合(M1×t1−M2×t2や−M1×t1+M2×t2の場合)、出力は体積記録媒体としないときよりも確実に低下する。これはSNRの低下を意味する。そもそも、従来の記録方法ではSNRが足らないために高密度化を行うのに、それよりもさらにSNRが下がるのでは意味をなさない。さらに、上述した記録分解能・再生分解能の不足を補うために各層の厚さを薄くすると、このSNRの低下の問題はより大きくなる。
特開2005−209290号公報 特開2010−108571号公報 特開2001−229501号公報
本発明は,記録分解能、再生分解能、および信号強度の向上を図った磁気記録再生装置および磁気記録再生方法を提供することを目的とする。
実施形態の磁気記録再生装置は,磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備し、
前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
Hcr>Hexr+Har
Hcs>Hexs+Has
前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御する。
(1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程
(2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程
(3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程
(4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程
(5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程
(6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程
実施形態に係るHDD装置の概観斜視図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の積層構造の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の面内構造の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の断面構造の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の断面構造の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の断面構造の模式図である。 磁気記録媒体121の記録再生の手順の一例を表すフロー図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 図7の記録再生の手順でのスピンの状態を模式的に示す図である。 表層記録層27および保管層25の断面の模式図とグラニュラー構造を持つ磁性層との関係を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体のヒステリシスループの一例を示す図である。 表層記録層の磁性粒子と保管層の磁性粒子からの遅漏磁界の一例を示す図である。 表層記録層の磁性粒子と保管層の磁性粒子からの遅漏磁界の一例を示す図である。 表層記録層の磁性粒子と保管層の磁性粒子からの遅漏磁界の一例を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の各層の磁化の温度依存性の一例を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の磁化反転メカニズムを模式的に説明する図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の各層の磁化の温度依存性の一例を示す図である。 記録ヘッドの一例を示す図である。 近接場素子の一例の媒体面から見た模式平面図である。 記録ヘッドの一例を示す図である。 記録ヘッドの一例を示す図である。 高周波発生素子の構造を示す図である。 記録ヘッドの一例を示す図である。 複数の記録ヘッドの一例を示す図である。 複数の記録ヘッドの一例を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の積層構造の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体のヒステリシスループの一例を示す図である。 磁気記録媒体の一例の断面の模式図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いるバッファメモリ部近傍のブロック図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いるバッファメモリ部近傍のブロック図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体のヒステリシスループのシミュレーション結果を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式に用いる磁気記録媒体の磁化構造のシミュレーション結果を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式の転送記録工程のシミュレーション結果を示す図である。 実施形態に係る磁気記録再生方式の転送再生工程のシミュレーション結果を示す図である。
以下,図面を参照して,実施形態を詳細に説明する。
実施形態に係る磁気記録再生装置の概観斜視図を図1に示す。この磁気記録再生装置は、筐体128の内部に、磁気記録媒体121と、磁気ヘッド123と、磁気ヘッド123を搭載するヘッドサスペンションアッセンブリHSA(サスペンション124とアーム125)と、アクチュエータ126、127とを備える。
磁気記録媒体121はスピンドルモータ122に取り付けられて回転され、垂直磁気記録方式により各種のデジタルデータが記録される。磁気ヘッド123は記録ヘッドと再生ヘッドとで構成される。
記録ヘッドとしては、一般に垂直磁気記録で用いられる単磁極構造を有し、場合によって熱アシスト磁気記録あるいは高周波アシスト磁気記録動作を行うための補助エネルギー供給手段を有する。なお、この詳細は後述する。
再生ヘッドとしては、一般に用いられるトンネル磁気抵抗(TMR)型再生素子が用いられる。但し、それ以外の磁気抵抗素子でも構わない。
記録ヘッドと再生ヘッドと、場合により設けられる補助エネルギー供給手段は、HSA先端に設けられる、共通のスライダ機構に搭載される。なお、記録ヘッドと再生ヘッドの詳細は後述する。
HSAは、磁気記録媒体121の記録面に対向するように、磁気ヘッド123を支持する。アクチュエータ126、127は、ボイスコイルモータ(図示せず)により、HSAを介して、磁気記録媒体121の任意の半径位置に磁気ヘッド123を配置する(位置決め)。回路基板(図示せず)は、ヘッドICを備え、記録再生信号を処理すると共に、アクチュエータ126、127の駆動信号および、磁気ヘッド123を読み書き制御するための制御信号などを生成する。
実施形態に係る磁気記録媒体121の模式図を図2に示す。磁気記録媒体121は、基板21、下地層22,24,軟磁性下地層23、保管層25、交換層26、表層記録層27、保護層28を有する。
磁気記録媒体121は、基板21〜保護層28の全てを有する必要は無い。磁気記録媒体121は、順に積層される、基板21、保管層25、交換層26、表層記録層27で構成できる。このうち、保管層25と表層記録層27は垂直磁気異方性を持つ垂直磁化膜である。
基板21は、通常の垂直磁気記録媒体に用いられているもの、例えばガラス基板、Al合金基板、セラミック、カーボンや、酸化表面を有するSi単結晶基板、及びこれらの基板にNiP等のメッキが施されたもの等を用いることができる。
磁気記録媒体121は、軟磁性下地層23を有しても良い。軟磁性下地層23は、単磁極ヘッドからの磁界を水平方向に通して、ヘッドに還流するために設けられる。保管層25と表層記録層27に急峻で充分な垂直磁界を印加させ、記録再生効率を向上できる。
軟磁性下地層23は、通常の磁気記録で用いられるような材料、例えば、Fe、Ni、Coを含む透磁率の大きい材料が用いられる。また、磁区形成によるノイズ防止のために、軟磁性下地層23を複数の磁性層に分け、0.5〜1.5nmのRuを挿入することで反強磁性結合させたり、硬磁性層あるいは反強磁性体からなるピン層と交換結合させても良い。なお、ピン層(磁化固着層)の磁化方向は、外部磁界が印加されても、実質的に変化せず、固着された状態にある。
軟磁性下地層23や保管層25の結晶性の制御、粒径の制御、密着性向上等のために、下地層22、24を有しても良い。下地層22、24は、上記の目的を効率よく達成するために、複数の層から構成されても良く、また、金属、誘電体、またそれらの混合のいずれであっても構わない。下地層22、24を構成する層の表面がイオン照射、ガス暴露等によって、改質されていても良い。また、下地層22,24は磁性層であっても良い。
保護層28は、磁気記録媒体121の腐食を防止すると共に、磁気ヘッド123が磁気記録媒体121に接触したときの、磁気記録媒体121表面の損傷を防ぐためのものである。その材料としては、例えばC、Si−O、Si−Nといった硬質の材料を含むものが挙げられる。保護層28の厚さは、磁気ヘッド123と磁気記録媒体121の距離を小さくするために、0.5ないし5nmと薄いことが好ましい。
保護層28上には潤滑層を設けることができる。潤滑層に使用される潤滑剤としては、従来公知の材料、例えばパーフルオロポリエーテル、フッ化アルコール、フッ素化カルボン酸などを用いることができる。
保管層25と表層記録層27は、通常の磁気記録媒体で用いられるものと同様の、いわゆるグラニュラー膜である。すなわち、垂直磁気異方性を有する磁性粒子とその周囲に存在する非磁性母材とから構成される。
保管層25および表層記録層27の膜構造の模式図を図3、図4に示す。図3は平面構造で、図4は断面構造を表す。柱状の磁性粒子31が、非磁性母材32に囲まれている。磁化反転は、概ね磁性粒子31を単位として起こり、複数の反転した磁性粒子で記録磁区を形成する。
実施形態に係る磁気記録媒体121では、保管層25と表層記録層27がこのグラニュラー構造を有する。これら保管層25と表層記録層27は、通常の垂直磁気記録媒体と同様に、薄い磁性連続膜を積層した、いわゆるCGC媒体構造でも構わない。CGC媒体構造とすることで、記録性能を向上させることが容易となる。このような積層膜の状態においても、記録の実質は磁性粒子の反転であり、磁化反転は概ね磁性粒子を単位として起こるので、実施形態に係る磁気記録媒体121に用いることができる。
保管層25、交換層26、表層記録層27を積層させた磁気記録媒体121断面の模式図を図5に示す。ここでは、交換層26は、連続膜として表している。しかし、交換層26は、後述する交換層26としての機能を有する範囲において、不連続性を有するグラニュラー膜でも構わない。
また、図5では、保管層25と表層記録層27の磁性粒子の位置が概ね同じで、柱状の磁性粒子構造が連続している。しかし、図6に示すように、保管層25と表層記録層27とで柱状構造が連続していなくても構わない。
保管層25と表層記録層27の磁性粒子31の平均粒径は概ね同じであることが好ましい。磁性粒子31の平均粒径が二倍以上異なると、後述する記録情報の転写が正確に行われなくなり、好ましくない。
保管層25および表層記録層27の磁性粒子31(第1、第2の磁性粒子)の粒径は、3nm以上20nm以下であることが好ましい。磁性粒子31の粒径が3nmより小さいと、磁性粒子31間の交換結合を遮断するための非磁性母材32が保管層25や表層記録層27の大部分を占め、十分な再生出力を得るのが困難となる。磁性粒子31の粒径が20nmより大きいと、後述の磁化転移領域71の幅(磁化転移幅)が必然的に広くなり、高密度の記録が困難となる。
磁性粒子31を構成する材料としては、一般的な垂直磁気記録媒体に用いられている物を使うことができる。Coを主成分とする合金、たとえばCoPt合金からなる材料は大きな磁気異方性(Ku)を得ることができて好ましい。また、高Ku材料として注目されているFePtやCoPtなどの規則相金属も好ましい。
磁性粒子31は、B、Ta、Mo、Cu、Nd、W、Nb、Sm、Tb、Ru、Reから選ばれる一種類以上の元素を含むことができる。上記元素を含む事により、磁性粒子31の微細化、結晶性や配向性の向上、磁気特性を向上して、より高密度記録に適した磁気記録媒体121とできる。
非磁性母材32を構成する材料としては、一般的な垂直磁気記録媒体に用いられている物を使うことができる。金属やSiの酸化物を含んだ材料、例えば、酸化コバルト、酸化シリコン、酸化チタン、あるいはこれらの混合物が好ましい。
保管層25と表層記録層27の厚さは、2ないし30nmが好ましい。この範囲であると、前述した記録分解能や再生分解能の低下の問題が起こりにくくなるので、高密度磁気記録再生装置として用いることができる。0.5nm以下になると薄膜を構成するのが困難になるので好ましくない。保管層25と表層記録層27の保磁力は、2kOe以上とすることが好ましい。
交換層26は、保管層25と表層記録層27との間に交換結合相互作用を誘起させ、その強度を制御するために設置する。即ち、交換層26は、保管層25と表層記録層27間の交換相互作用を伝達可能な材料および膜厚から構成される。この結果、後述のように保管層25と表層記録層27間での情報の転写(移動)が可能となる。
交換結合相互作用は、強磁性交換結合(フェッロカップリング:FC)、反強磁性交換結合(アンチフェッロカップリング:AFC)のいずれでも良い。FCでは、保管層25と表層記録層27のスピンの向きが同じ向きの場合に最もエネルギーが低くなる。AFCでは、保管層25と表層記録層27のスピンの向きが反平行の場合に最もエネルギーが低くなる。
FCを誘起させる場合、保管層25と表層記録層27を、スパッタ法等による一般的な媒体製造工程において、真空を破らずに引き続き成膜することで実現できる。
このとき、保管層25と表層記録層27の界面に交換層26を挿入することで、FCの強さを制御できる。交換層26は、表面改質層(あるいは物理/化学吸着層)、非磁性の極薄層、磁性層のいずれでも構わない。
保管層25と表層記録層27との間隙が、数nm程度までは、真空であっても、交換相互作用が及ぶ。このため、交換層26の厚さは数nm以下が好ましい。ただし、交換層26が磁性体である場合には、より長い距離で交換結合が作用するので、より厚くても構わない。交換層26が複数の層から構成されても構わない。
AFCを誘起させるには、典型的には、Ru、Re、Rh、Irで交換層26を構成し、厚さを1.5nm程度以下とする。この場合、交換層26の厚さによって、FCあるいはAFCの強さを調整することもできる。材料や作成プロセスに依存するが、典型的には、0.8nm程度の厚さで最大のAFCが得られる。
上記の磁気記録媒体121を用いる多層の記録再生方法について述べる。
図7は、磁気記録媒体121の記録再生の手順の一例を表すフロー図である。図7に示すように、次のように、磁気記録媒体121に情報が記録再生される。この記録再生は、後述の記録再生制御部142(制御部)によって、制御される。
A.表層記録層27への第1の情報の記録(ステップS1)
B.表層記録層27から保管層25への第1の情報の転写(ステップS2)
C.表層記録層27への第2の情報の記録(ステップS3)
D.表層記録層27からの第2の情報の再生(ステップS4)
E.保管層25から表層記録層27への第1の情報の転写(ステップS5)
F.表層記録層27からの第1の情報の再生(ステップS6)
このように、保管層25への記録、再生は、表層記録層27を介して行われ、その後に、表層記録層27への記録、再生が行われる。
以下、この詳細を説明する。
図8A〜図8Gは、図7の手順に対応する磁気記録媒体121の状態の変化を模式的に示したものである。この磁気記録媒体121は、保管層25、交換層26、表層記録層27が順に積層され、保管層25と表層記録層27は上述のグラニュラー構造を有する。
グラニュラー構造を模式的に示すために、保管層25の磁性粒子73と表層記録層27の磁性粒子72を箱状に記述し、各磁性粒子の磁化の向きをその中の矢印の向きで示している。
このとき、交換層26を介して、FCまたはAFCの交換結合相互作用が表層記録層27と保管層25の両方にはたらく。
図9は、表層記録層27および保管層25の断面の模式図とグラニュラー構造を持つ磁性層との関係を示す。保管層25、表層記録層27ともに、グラニュラー膜であるので、図9の(a)(平面図)に模式的に示すように、これらの磁性層の面内の構造は、粒状の磁性粒子72あるいは73とその間を取り囲む非磁性体からなる。表層記録層27または保管層25に情報が記録されると、図9の(a)に示すように、例えば、順に下(S)、上(N)、下(S)の向きに磁化された磁区74が形成される。
磁区74の並びが、例えば、「1」、「0」、「1」の情報を表す。前述のように磁区74の間に、磁化状態が逆向きに転移していく磁化転移領域(transition)71が存在する。図8A〜図8G,図9の(b)(断面図)では、この磁化転移領域71を上下矢印の記号で表す。図9の(b)に示すように、磁化転移領域71では、上向きあるいは下向きに磁化された複数の磁性粒子72,73の群が磁気記録媒体121面内に不規則に配置されている。しかし、個別の磁性粒子72,73に着目すると、磁化は必ず上向きか下向きかの状態になっている。このため、転写工程では、磁化転移領域71においても、磁性粒子72,73は、磁区74にある磁性粒子72,73と同様の動作をすることになる。
A.表層記録層27への第1の情報の記録(ステップS1、図8A,図8B)
図8Aは初期状態である。この初期状態は、どのような状態でも良い。ここでは、説明の簡単のために、保管層25と表層記録層27に同じ磁区74を配置している。上述のように、磁化転移領域(磁化転移の位置)71は上下の矢印で表している。
図8Aの状態に対し、一般的な垂直磁気記録ヘッドである単磁極ヘッド(後述の記録ヘッド)からの局所磁界によって、表層記録層27に情報を記録した状態が図8Bである。磁化反転は表層記録層27のみで起こり、図8Bに示すように、新たな位置に磁化転移が形成される。
この状態は、記録工程において、次の式(1)を満たすことで実現できる。
Hcr<Hexr+Har
Hcs>Hexs+Has … 式(1)
Hcr:表層記録層27の保磁力
Hexr:表層記録層27に作用する交換磁界
Har:表層記録層27に作用する外部磁界(表層記録層27に印加される、単磁極ヘッドから印加される磁界と漏洩磁界等を足し合わせた磁界の総和)
Hcs:保管層25の保磁力
Hexs:保管層25に作用する交換磁界
Has:保管層25に作用する外部磁界(保管層25に印加される、単磁極ヘッドから印加される磁界と漏洩磁界等を足し合わせた磁界の総和)
前述のように、記録磁界は単磁極ヘッドに近いところが大きい(Har>Has)。従って、磁気記録媒体としては、次の式(2)を満たすように表層記録層27、交換層26、保管層25の磁気特性を設計しておけば、表層記録層27のみを反転させる設計ができるようになる。
Hcr+Hexr<Hcs+Hexs … 式(2)
この後さらに単磁極ヘッドからの局所磁界が印加されなくなった、いわゆる保存状態においても、図8Bの状態は保持される必要がある。この状態は、情報を保管しておく室温において、次の式(3)を満たすことで実現できる。
Hcr>Hexr+Har
Hcs>Hexs+Has … 式(3)
この式(3)の条件が満たされていることは、例えば、室温における磁気記録媒体121の表層記録層27と保管層25の部分のヒステリシスループを調べることで確認できる。
ヒステリシスループの一例を図10に示す。図において、実線81がメジャーループ、点線82がマイナーループである。マイナーループ82は次のようにして得られる。まず、強い磁界を上向きに印加し状態(a)にした後、磁界を減じていき、磁界強度ゼロに到達した時点で下向きに強度を増加させていって状態(b)にし、そこで磁界強度の変化を止める。その後、下向きの磁界強度を減じていき、磁界強度ゼロに到達した時点で上向きに強度を増加させていって状態(a)に戻す。
磁化状態83、84はそれぞれ、表層記録層27と保管層25の磁化状態を模式的に示したものである。
状態(a)では、強い上向きの外部磁界が印加されているため、表層記録層27も保管層25も磁化は上を向く。この後、外部磁界を減じてさらに下向きの磁界になりその強度が増えていって状態(b)になったとき、表層記録層27のみが反転する。その後外部磁界を再び上向きに増加させていくと、ヒステリシスループはマイナーループ82の軌跡を通って状態(a)に戻る。このことから、状態(a)と状態(b)は、外部磁界のないゼロ磁界において、共存できることがわかる。即ち、保管層25の磁化状態を変化させずに、表層記録層27のみを任意の磁化の向きに変えることができる。この結果、保管層25および表層記録層27に、同一または異なる情報を記録できる。
このことは、外部磁界の向き、すなわち記録ヘッドからの書き込み磁界で表層記録層27のみの記録が実現できることも意味する。
これは、保管層25の磁化が下向きの場合も同様である。図10に示すように、メジャーループ81とマイナーループ82はM=0、H=0の点に対して点対称性がある。すなわち、図10の状態(c)(表層記録層27、保管層25ともに下向きの磁化になっている)からスタートし、ゼロ磁界になったところで磁界を上向きにすると図10の状態(d)(表層記録層27のみが上向きに磁化反転する)が得られ、そこから磁界を減じて、ゼロ磁界で下向きに磁界強度を増加させていくとマイナーループ82が描かれる。すなわち、状態(a)と状態(b)のときと同様に、外部磁界のないゼロ磁界下において、図10の状態(c)と(d)は共存できる。
図10の状態(a)、(b)、(c)、(d)の4つの状態がゼロ磁界下で保持できるということは、図8Bで模式的に示しているように、記録ヘッドからの磁界によって表層記録層27と保管層25とで別々の情報を保存することができるということを意味し、この結果、通常の磁気記録媒体よりも単位面積あたりの記録密度を高めることができる。
B.表層記録層27から保管層25への第1の情報の転写(ステップS2、図8C,図8D)
次に転送記録工程について説明する。
図8Bの状態において、記録磁極からの記録磁界以外の外場を与えることによって保管層25の保磁力を小さくする(図8C参照)。
図8Cでは保管層25でのスピンの向きを示していない。これは、保管層25の保磁力が小さくなっていて容易に磁化反転できる状態になっていることを模式的に示すためである。
このとき、表層記録層27から、交換層26を介して、保管層25の磁性粒子73にFCの交換結合が作用する。このため、保管層25の磁化は表層記録層27と同じ向きに磁化反転する。その後、保磁力を小さくする記録磁界以外の外場がなくなった後、図8Dに示すような磁化状態になる。すなわち、表層記録層27の磁化状態が保管層25に転写されることになる。
上述のように、この転写工程は、磁性粒子73毎に起こる。従って、磁化転移領域71においても、磁化転移を構成する、面内方向に不均一に配置される任意の方向に磁化された磁性粒子単位で起こる。このため、表層記録層27の磁化転移領域71はそのまま保管層25に転写される。この結果、保管層25の磁化転移領域71の幅(磁化転移幅)は表層記録層27の磁化転移幅と同じにある。前述のように、従来の体積/多層磁気記録では、記録磁極からの磁界だけで各層の磁性層の磁化反転を行っていた。このため、磁極から遠い位置にある磁性層(本実施形態では保管層25)の磁化転移幅は広がってしまう。しかし、実施形態に係る磁気記録方法では、磁性粒子単位の転写によって保管層25の磁化転移が形成されるために、この課題を解決できる。
転送記録工程を行うタイミングは、システムの要請に従って任意に設定できる。たとえば、表層記録層27の記録過程に続けて、ほぼ同時に行っても構わない。あるいは、表層記録層27の記録が終わってからしばらく経って、例えば、磁気記録再生装置へのアクセス頻度が下がったアイドリング時に行っても構わない。あるいは、次回の記録要求が来た際に、新しい情報の表層記録層への記録工程の前に行っても構わない。
C.表層記録層27への第2の情報の記録(ステップS3、図8E)
前述のように、転写工程の後に、保管層25に転写された情報と同一または異なる任意の情報を、保管層25に転写された情報を破壊することなく表層記録層27に記録することができる。その結果、表層記録層27と保管層25とに別々の情報が記録されている図8Eの状態に至ることができる。
D.表層記録層27からの第2の情報の再生(ステップS4、図8E)
次に転送再生工程について説明する。
実施形態に係る磁気記録再生方式では、通常の磁気記録装置と同様に、磁気抵抗センサーを用いて、表層記録層27からの漏洩磁界を再生する。この場合、保管層25の情報は再生できないか、または表層記録層27の情報のノイズとして検知されるように設計する。
一例として、保管層25の磁化量(M×t)自体を小さく設定できる(即ち、保管層25の磁化M、厚さtの積を表層記録層27より小さくする)。あるいは、保管層25を反強磁性結合している磁性層二層の構成として、人工的に磁化量を小さく設計できる。また、保管層25は表層記録層27に比べて再生ヘッドから遠い距離にあるので、本質的に保管層25からの漏洩磁界の影響を小さく設計できる。また、交換層26を軟磁性層とすることにより、保管層25からの漏えい磁界をシールドする作用を持たせても良い。
E.保管層25から表層記録層27への第1の情報の転写(ステップS5、図8F,図8G)
表層記録層27と保管層25とに別々の情報が記録されている図8Eの状態を初期状態とする。この状態で、記録磁極からの記録磁界以外の外場を与えることによって表層記録層27の保磁力を小さくする。その状態を図8Fに示す。
図8Fでは表層記録層27のスピンの向きを示していない。これは、表層記録層27の保磁力が小さくなっていて容易に磁化反転できる状態になっていることを模式的に示すものである。
このとき、保管層25から交換層26を介して表層記録層27の磁性粒子にFCの交換結合が作用する。このため、表層記録層27の磁化は保管層25と同じ向きに磁化反転する。その後、保磁力を小さくする記録磁界以外の外場がなくなったあと、図8Gに示したような磁化状態になる。すなわち、保管層25の磁化状態が表層記録層27に転写されることになる。
上述のように、この転写工程は磁性粒子73毎に起こる。従って、磁化転移領域71においても、磁化転移を構成する、面内方向に不均一に配置される任意の方向に磁化された磁性粒子単位で起こる。このため、保管層25の磁化転移はそのまま表層記録層27に転写される。この結果、表層記録層27の磁化転移幅は、保管層25と同じになる。
F.表層記録層27からの第1の情報の再生(ステップS6)
実施形態に係る磁気記録再生方式では、通常の磁気記録装置と同様に、磁気抵抗センサーを用いて、表層記録層27からの漏洩磁界を再生する。すなわち、保管層25から表層記録層27に転写された情報を再生することができる。
前述のように、従来の体積/多層磁気記録では、再生過程において、磁極から遠い位置にある磁性層(本実施形態では保管層25)では空間分解能が劣化する。このために、その層を高密度に再生することができなくなってしまう。しかし、実施形態に係る磁気記録方法では、再生ヘッドから遠い位置にある保管層25の磁化転移が再生ヘッドに近い表層記録層27に転写されてから再生されるので、従来の体積/多層磁気記録に見られる再生ヘッドの空間分解能の劣化はなく、結果として高密度の再生ができる。
転送再生工程を行うタイミングは、システムの要請に従って任意に設定できる。たとえば、保管層25の情報の再生要求が来た時点で行っても構わない。転送再生工程は、保管層25の情報の再生要求が来ることを事前に推定して、例えば、磁気記録再生装置へのアクセス頻度が下がったアイドリング時に行っても構わない。
以上、記録再生制御部142(制御部)による表層記録層27、および保管層25への第1、第2の情報の記録、再生の制御につき説明した。
ここで、記録再生制御部142(制御部)は、表層記録層27のみへの情報の記録、再生を行ってもよい。即ち、表層記録層27への第1の情報の記録後に保管層25にこの情報を転送しない通常の磁気記録(表層記録層27に第2の情報を記録しない)および再生を行っても良い。
この場合、記録再生制御部142(制御部)は次の工程の実行を制御する。
1)表層記録層27に第3の情報を磁気的に記録する工程、
2)表層記録層27から前記第3の情報を磁気的に再生する工程、
以上、説明したように、実施形態に係る磁気記録媒体121と磁気記録方法と磁気記録再生方法を用いることによって、記録分解能等3つの欠点を解決した体積磁気記録を実現できる。すなわち、記録分解能が低い欠点は、従来のHDD装置と同様の高密度記録を表層記録層27に対して行い、それを保管層25に転写することで解決できる。また、再生分解能が低い欠点は、保管層25の磁化転移を表層記録層27に転写し、表層記録層27から従来のHDDと同様の高密度再生を行うことで解決できる。さらに、表層記録層27の上向きあるいは下向きの磁化状態を再生できればいいので、各層の磁化量を重ね合わせて、上/下およびその中間の磁化状態の再生が必要な、従来の体積記録に起こるSNRの低下は起こらない。
なお、上記の動作説明においては、交換層26を介した表層記録層27と保管層25の交換結合作用が、強磁性結合(FC)の場合について説明した。これに対して、交換結合作用が反強磁性結合(AFC)であっても実施形態に係る体積記録が実現できることは自明である。図8A〜図8Gにおいて、保管層25の磁化の向きが逆になるだけである。磁化転移を表層記録層27から保管層25の方向、あるいはその逆方向に、転送できることも変わらない。
また、図8A〜図8Gでは表層記録層27と保管層25の磁性粒子72,73の位置が揃っている模式図で説明した。しかし、位置が揃っていない、図6に模式的に示すような媒体構成でも実施形態に係る体積記録は実現できる。図6の場合には、表層記録層27の磁性粒子72と保管層25の磁性粒子73の位置関係はランダムであるが、その中において、図5に模式的に示すような、一対一(one−on−one)の関係により近い状態にある磁性粒子31の対においては、転送記録工程と転送再生工程ともに、図8A〜図8Gに示したような、磁性粒子31毎の一対一の磁化状態の転写が起こる。
一方、表層記録層27の磁性粒子72の中心位置が保管層25の磁性粒子73間のすきまの位置にある場合、表層記録層27と保管層25とでそれぞれ磁性粒子72と73の重なっている領域が、各々の磁性粒子72と73の断面積の半分以下程度の場合には、転送記録工程と転送再生工程ともに起こらない。
これらの中間の位置関係にある場合には、漏洩磁界等の種々の外部条件に依存して、ある確率分布に従って転送記録工程と転送再生工程が起こる。上述のように、実際の磁化転移部分は上向きあるいは下向きに磁化された複数の磁性粒子群で構成されるので、表層記録層27と保管層25の磁性粒子72,73の平均粒径とその分散が同程度であれば、転送記録工程あるいは転送再生工程における磁化転移部分の転写は平均化されて、磁化転移幅を広げることなく起こる。すなわち、転送記録工程でも転送再生工程でも記録密度の低下は起こらない。
表層記録層27と保管層25の磁性粒子72,73の平均粒径とその分散が同程度でない場合、平均粒径あるいは分散が大きい層の記録密度で体積記録が行われる。すなわち、保管層25の平均粒径あるいは分散が大きい場合、表層記録層27で高密度に記録できたとしても、転送記録工程において、保管層25が本来持つ記録分解能で保管層25に磁化転移が形成される。すなわち、記録分解能が保管層25のレベルに劣化する。このため、転送再生工程で表層記録層27に磁化転移が転写された場合、表層記録層27の記録分解能は保管層25の記録分解能と同一になる。一方、表層記録層27の平均粒径あるいは分散が大きい場合には、ステップS1あるいはS3の記録が低密度でしか記録できないので、高密度記録の能力がある保管層25であっても低密度の情報が転写されるだけである。
いずれにしても、表層記録層27と保管層25の磁性粒子72,73の平均粒径とその分散が極端に違わない限り、表層記録層27のみあるいは保管層25のみの場合よりも、磁気記録媒体121の単位面あたりの記録密度は向上できる。なお、各層の平均粒径と分散をどのように設計するかは、製造コストを含めて磁気記録装置の仕様に基づいて決められる。
上述の表層記録層27の磁性粒子72と保管層25の磁性粒子73との間の転写記録/再生過程は、交換結合を介さずに静磁結合のみを用いても原理的には可能である。しかし、以下に示すように、本実施形態には適用困難である。
図11に表層記録層27の磁性粒子72と保管層25の磁性粒子73を模式的に示す。太い矢印は表層記録層27の磁性粒子72の磁化の向きを表す。磁性粒子は棒磁石と等価であるので、表層記録層27の磁化により、点線に示すような漏洩磁界の磁力線281が発生する。この磁力線281は、図11に示すように、磁性粒子72の端部から端部に向かう。このとき、保管層25の磁性粒子73が反転磁界として感じる漏洩磁界の磁界強度は磁力線281の密度に相当する。
図11からわかるように、一点鎖線で示した保管層25の磁性粒子73の上部Aと下部Bとで、表層記録層27からの漏洩磁界強度が異なる。このため、保管層25の磁性粒子73全体の磁化を反転させようとすると、より大きな漏洩磁界を発生させる必要があり、表層記録層27の磁化を大きくしないといけない。そうすると、表層記録層27の磁性粒子72の反磁界が大きくなるため、垂直方向の磁化が不安定になりやすい。また、表層記録層27内で隣接する磁区にも大きな漏洩磁界が作用するようになるため、記録情報の安定性が劣化する。
図11の状況は真空中に磁性粒子72、73が孤立して存在する場合であるが、実際には横方向に磁性粒子がたくさん存在する。その状況を模して、三個の磁性粒子72の例で示したのが図12である。
図12に示すように、表層記録層27において同じ向きの磁化を持つ磁性粒子72が複数並んでいる。この場合、真ん中の磁性粒子72の位置では磁力線281の密度が低下して漏洩磁界は小さくなる。この現象は同じ磁化の向きの粒子の個数が増えるほど顕著になる。さらに、保管層25の磁性粒子73の上部Aと下部Bにおける漏洩磁界の差も大きくなってしまう。また、図11からわかるように、保管層25の磁性粒子73内における表層記録層27からの漏洩磁界は面内方向にも非対称となる。漏洩磁界の強度が表層記録層27の磁化状態や位置によってこのように分布すると、適切な磁化転移の転写は困難となる。
さらに、磁化転移部分の状況を図13に示す。磁化転移を模式的に示すために、二個の磁性粒子72が逆向きの磁化で隣接している状態を示す。このとき、表層記録層27では上向き磁化の磁性粒子72と下向き磁化の磁性粒子72が隣接するので、磁性粒子72間で磁力線が閉じてしまう。このため、図13に示すように、保管層25の磁性粒子73に十分な磁力線が届かなくなる。これは保管層25の磁性粒子73への漏洩磁界が小さくなることを意味する。また、保管層25の磁性粒子73の上部Aと下部Bにおける磁界の差が大きくなり、かつ、保管層25の磁性粒子73内における非対称性も増す。上述するように、本実施形態における磁気記録は、表層記録層27と保管層25との間で磁化転移を正確に転写することが必須である。このように、漏洩磁界が磁化状態によって大きく変化しかつ不均一になり、さらに磁化転移の位置で転移するための外場である漏洩磁界が小さくなるようでは、磁化転移の正確な転写は困難となる。
以上、説明したように、静磁結合を利用して、磁気記録再生を行おうとしても、磁化転移の転写が十分には行われない。静磁結合を利用した転写工程は、例えば、光磁気記録媒体では有効である。即ち、光磁気記録媒体では、一つの磁区のサイズが直径1μm程度と大きく、磁区と磁区の間隔が数10nm以上と広いので、漏洩磁界の磁化状態依存性や不均一性が小さい。また、光磁気記録では、記録情報が、磁化転移位置(磁区と磁区の境界)ではなく、磁区の位置に配置される(マークポジション記録)。このため、漏洩磁界が小さく不均一な磁区と磁区の境界できちんと転写されなくても、システム上の影響は小さい。
以上のような理由から、静磁結合を利用した転写は、光磁気記録には用いることができるが、本実施形態が対象とするグラニュラー薄膜で構成されるHDD用途の磁気記録には適用が困難である。もちろん、交換結合による転写工程をアシストする目的で静磁結合を利用することは可能である。ただし、磁化転移の転写に悪影響を与えないような設計が必要である。
<転送記録法1:加熱>
転送記録工程において、保管層25の保磁力を小さくする手法として、記録磁極からの記録磁界以外の外場として熱を加える方法をとることができる。表層記録層27のキュリー温度を保管層25のキュリー温度よりも高く設定し、転送記録工程において、磁気記録媒体121を表層記録層27のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、図8Cの状態とするのである。
この加熱時に、次の式(4)の条件が満たされるように、磁気記録媒体121を設計する。
Hcs<Hexs+Has …式(4)
Hexs: 保管層25に印加される交換磁界
Has: 保管層25に印加される、漏洩磁界等の磁界の総和
この状況は、表層記録層27と保管層25の磁気特性を、例えば、図14のようにすることで、実現できる。図14は各層の保磁力(Hc)の温度(T)依存性を示すものである。グラフ91は保管層25の保磁力Hcの温度依存性、グラフ92は表層記録層27の保磁力Hcの温度依存性を示す。保管層25に印加される磁界の総和「Hexs+Has」の温度依存性を点線で示す
室温Taにおいては、保管層25の保磁力Hc(Hcs)は、保管層25に印加される磁界の総和「Hexs+Has」よりも大きい。このため、任意の向きの磁化状態を保てる。すなわち、情報を保存できる。
また、保管層25の保磁力Hcsは表層記録層27の保磁力Hcよりも大きいため、図8Bのように表層記録層27のみを磁化反転できる。すなわち、表層記録層27のみに情報を記録できる。
磁気記録媒体121を温度Tw付近まで加熱すると、条件「Hcs<Hexs+Has」が満たされるようになり、図8C、図8Dで示した転送記録工程を実現できる。
温度Twは、条件「Hcs<Hexs+Has」が満たされる限り、保管層25のキュリー温度より高くても低くても構わない。ただし、温度Twを表層記録層27のキュリー温度よりも高くすると、表層記録層27でも漏洩磁界による磁化反転が起こるため好ましくない。
<転送記録法1のバリエーション>
上記の磁気記録媒体121が加熱される領域は、磁気記録媒体121上の記録トラック幅と同じでも、広くても良い。加熱される領域の幅が記録トラック幅と同じであれば、1トラックずつの転送記録を実施でき、1トラック単位でのランダムアクセスによる情報の記録・再生ができる。一方、複数トラックを同時に加熱できれば、転送記録工程を同時に行うことができ、トータルの情報記録工程時間を短縮できる。また、加熱素子の作成が容易になり、磁気記録再生装置の製造コストを低減できる。
<転送記録法2:高周波アシスト>
転送記録工程において、保管層25の保磁力を小さくする手法として、記録磁極からの記録磁界以外の外場として保管層25の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加する方法をとることができる。これは、いわゆる高周波アシスト磁気記録(Microwave Assisted Magnetic Recording: MAMR)と呼ばれる方法を援用するものである。
磁気記録媒体121にその共鳴周波数よりも少し低い周波数の高周波を印加すると、実効的な磁気記録媒体121の反転磁界、すなわち保磁力を下げることができる。つまり、磁気記録媒体121を加熱してHcを低下させるのと同様の状況を作り出すことができる。従って、保管層25の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、条件「Hcs<Hexs+Has」を満たすようにすることで、実施形態に係る転送記録工程を実現できる。
<転送記録法2のバリエーション>
上記の磁気記録媒体121に高周波を印加する領域は、記録トラック幅と同じでも、広くても良い。高周波を印加する領域の幅が、記録トラック幅と同じであれば、1トラックずつの転送記録を実施でき、1トラック単位でのランダムアクセスによる情報の記録・再生ができる。一方、複数トラックに同時に高周波磁界を印加できれば、転送記録工程を同時に行うことができ、トータルの情報記録工程時間を短縮できる。また、高周波磁界発生素子の作成が容易になり、磁気記録再生装置の製造コストを低減できる。
<転送再生法1:高周波アシスト>
転送再生工程において、表層記録層27の保磁力を小さくする手法として、記録磁極からの記録磁界以外の外場として表層記録層27の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加する方法をとることができる。これは、上記の場合と同様の、いわゆる高周波アシスト磁気記録(Microwave Assisted Magnetic Recording: MAMR)と呼ばれる方法を援用するものである。表層記録層27の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、条件「Hcr<Hexr+Har」を満たすようにすることで、実施形態に係る再生記録工程を実現できる。
<転送再生法1のバリエーション>
上記の磁気記録媒体121に高周波を印加する領域は、記録トラック幅と同じでも、広くても良い。高周波を印加する領域の幅が、記録トラック幅と同じであれば、1トラックずつの転送再生を実施でき、1トラック単位でのランダムアクセスによる情報の記録・再生ができる。一方、複数トラックに同時に高周波磁界を印加できれば、転送再生工程を同時に行うことができ、トータルの情報再生工程の時間を短縮できる。また、高周波磁界発生素子の作成が容易になり、磁気記録再生装置の製造コストを低減できる。
<転送再生法2:面内磁界>
転送再生工程において、表層記録層27の保磁力を小さくするために、記録磁極からの記録磁界以外の外場として、磁気記録媒体121の面内方向に1kOe以上の磁界を印加できる。
垂直磁化膜に面内方向に磁界を印加することによって、実効的に保磁力を小さくすることができる理由を以下に説明する。
図15は、垂直磁化膜における磁化の向き(膜垂直方向からの角度θ)とその角度θにおける垂直磁気異方性エネルギーEの関係(グラフ101)を模式的に示す。外部磁界がない場合には、エネルギーは最も低い状態102にある。この状態で交換結合力(交換磁界)や外部印加磁界によって磁化反転させようとすると、エネルギーE0を与える必要がある。
一方、面内方向に磁界が印加されると、異方性磁界と面内方向の磁界とが釣り合う角度(状態103)に磁化は向く。この状態で交換結合力や外部印加磁界によって磁化反転させるには、エネルギーE1を与えればよい。図15から明らかなように、エネルギーE1はエネルギーE0よりも小さい。すなわち、面内方向に磁界が印加されると、より小さい磁界で磁化反転ができるようになる。
従って、保管層25から表層記録層27に磁化反転させる向きに交換磁界が作用している状態において、外部磁界がない場合には表層記録層27の保磁力が交換磁界よりも大きいために表層記録層27の磁化反転は起こらない。しかし、面内方向に磁界を印加すると、表層記録層27の保磁力が実効的に低下し、保管層25からの交換力に従って磁化反転する。そうすると、図8Gのように、保管層25の磁化状態が表層記録層27に転写される、転写再生工程が実現できる。
どの程度の面内磁界で磁化反転させるかは磁気記録再生装置の仕様に関連する。ただし、1kOe以下の面内磁界で転写再生工程が起こらないような設計にすると、外部からの様々な外乱に対して安定なシステムを作ることができる。
<転送再生法2のバリエーション>
上記の磁気記録媒体121に面内方向に磁界を印加する領域は、記録トラック幅と同じでも、広くても良い。磁界を印加する領域の幅が、記録トラック幅と同じであれば、1トラックずつの転送再生を実施でき、1トラック単位でのランダムアクセスによる情報の記録・再生ができる。一方、複数トラックに同時に面内磁界を印加できれば、転送再生工程を同時に行うことができ、トータルの再生工程の時間を短縮できる。また、後述の面内時間印加素子の作成が容易になり、磁気記録再生装置の製造コストを低減できる。
<転送再生法3:加熱>
転送再生工程において、表層記録層27の保磁力を小さくする手法として、記録磁極からの記録磁界以外の外場として熱を加える方法をとることができる。保管層25のキュリー温度を表層記録層27のキュリー温度よりも高く設定し、転送再生工程において、磁気記録媒体121を保管層25のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、図8Fの状態となる。
このとき、次の式(5)の条件が満たされるようにする。
Hcr<Hexr+Har …式(5)
Hcr:表層記録層27の保磁力
Hexr:表層記録層27に印加される交換磁界
Har:保管層25に印加される漏洩磁界等の磁界の総和
この状況は、表層記録層27と保管層25の磁気特性を、例えば図16に示すようなものにすることで実現できる。
図16は各層のHcの温度(T)依存性を示すものである。グラフ111は表層記録層27のHcの温度依存性、グラフ112は保管層25のHcの温度依存性を示す。表層記録層27に印加される磁界の総和「Hexr+Har」の温度依存性を点線で示す。
室温Taにおいては、表層記録層27のHc(Hcr)は表層記録層27に印加される磁界の総和「Hexr+Har」よりも大きいため、図8Eに示すような任意の磁化状態を保てる。また、Hcrは保管層25のHcよりも小さいため、表層記録層27のみを図8Bのように磁化反転できる。
磁気記録媒体121を温度Tw付近まで加熱すると、「Hcr<Hexr+Har」が満たされるため、図8Fから図8Gへの転送再生工程が起こる。
温度Twは「Hcr<Hexr+Har」が満たされる限り、表層記録層27のキュリー温度より高くても低くても構わない。ただし、温度Twを保管層25のキュリー温度よりも高くすると、保管層25でも漏洩磁界による磁化反転が起こるため好ましくない。
<転送再生法3のバリエーション>
上記の磁気記録媒体121が加熱される領域は、記録トラック幅と同じでも、広くても良い。記録トラック幅と同じであれば、1トラックずつの転送再生を実施でき、1トラック単位でのランダムアクセスによる情報の記録・再生ができる。一方、複数トラックを同時に加熱できれば、転送再生工程を同時に行うことができ、トータルの再生工程の時間を短縮できる。また、加熱素子の作成が容易になり、磁気記録再生装置の製造コストを低減できる。
<別ヘッドで転送記録再生>
以上、説明してきた、転送記録工程あるいは転送再生工程を行うための、記録磁極からの記録磁界以外の外場を加える手段は、記録再生動作を行う素子が設置されていると同じHSA(図1のサスペンション124とアーム125)、異なるHSAのいずれに設置されても良い。同じHSAに設置されている場合、製造コストを低減できる。一方、異なるHSA、すなわち異なるヘッドに設置されている場合、任意のタイミングと場所で転送記録あるいは再生記録を行うことができ、かつ製造が容易になる。さらに、記録トラック幅よりも広い領域に記録磁界以外の外場を加える場合には、より最適な設計で専用ヘッドを作成できるので、異なるヘッドに設置されていることが好ましい。
以上、転送記録工程あるいは転送再生工程を行うための、記録磁極からの記録磁界以外の外場を加える手段として、熱、高周波、面内磁界、について説明した。ここで、実施形態に係る磁気記録再生方法としては、(転送記録工程、転送再生工程)に対して、(熱、高周波)、(高周波、高周波)、(高周波、熱)、(熱、面内磁界)、(高周波、面内磁界)の組み合わせが可能である。
(熱、熱)の組み合わせは、表層記録層27と保管層25のキュリー温度の設計が成り立たないので、本実施形態には用いられない。
また、記録磁極からの記録磁界以外の外場を加える手段が転送記録工程と転送再生工程とで異なる場合には、記録再生を行うヘッドに加えて、それぞれ転送記録工程と転送再生工程とに異なるヘッドを二つ用意しても構わない。また、記録再生を行うヘッドと異なる一つのヘッドに両方の機能を持たせても構わない。さらに、すべてを一つの記録再生ヘッドに設置しても構わない。
記録再生、転送記録工程、転送再生工程用の三つのヘッドで構成すると作成が容易になり、動作マージンも増えるがコストがかかる。これらをまとめた一つのヘッドで構成するとコストが下がるが作成が困難になる。二つのヘッドの場合はこれらの中間の得失を持つ。どのようなヘッド構成にするかは、作成しようとする磁気記録再生装置の仕様に基づいて設計される。
<記録ヘッド>
実施形態に係る、記録磁界以外の外場を与える機構を有した記録ヘッドの例を示す。図17は外場として近接場光による加熱を用いる場合の記録ヘッドの一例を示す。記録ヘッドは、半導体レーザLD、導波路201、近接場素子202、励磁コイル203、記録磁極204、リターンコイル205を有し、記録層206に対向して設置される。
励磁コイル203、記録磁極204、リターンコイル205は通常の磁気記録ヘッドと同様の構成である。すなわち、励磁コイル203にパルス電流を流すことで、記録磁極204から強度が大きく、磁界傾度の大きいパルス磁界が発生する。
半導体レーザLD、導波路201、近接場素子202が磁気記録媒体を加熱する加熱機構である。
半導体レーザLDから、導波路201を通して、磁気記録媒体121の面(媒体面)に光が導入される。導入されるレーザ光は近接場素子202に照射されて、近接場素子202に近接場光が発生し、近接場光により磁気記録媒体121が局所的に加熱される。
図18に近接場素子202の一例の、媒体面から見た模式図(平面図)を示す。近接場素子202は、図18に示すように、三角形のような、微細あるいは尖った部分(先端部TP)を有する。近接場素子202は、先端部TPを有すれば良く、例えば、文字「E」に対応する形状や棒状の形状とすることができる。
近接場素子202、特に先端部TPは、貴金属(例えば、金(Au)や銀(Ag))又は貴金属を含む合金などの微粒子又は薄膜で構成できる。
次のように、近接場素子202へのレーザの照射により、先端部TPが加熱される。即ち、近接場素子202にレーザが照射されると、近接場素子202内で電子の振動が発生し、先端部TPに電界が集中し、そこに局所的な電界強度の大きな領域が発生する。これが近接場光211と呼ばれるものである。
近接場素子202は、その端部程度の大きさで磁気記録媒体を加熱できるため、熱アシスト磁気記録で使用できる。図17の記録ヘッドを用いれば、表層記録層27の記録後に外場としてトラックの幅程度の大きさの熱を与えることができる。
記録磁界以外の外場を与える機構を有した記録ヘッドの別の例を図19に示す。これも外場として加熱を用いる場合の記録ヘッドの一例である。
但し、図19では図17のヘッドから近接場素子202を除かれている。即ち、ここでは、半導体レーザLD、導波路201の組み合わせが磁気記録媒体を加熱する加熱機構となる。
この加熱機構は、近接場素子を有しないので、導波路201から出た光はそのまま記録層206の加熱に使われる。加熱スポットの大きさは、導波路201の幅程度なので、図17の場合に比べて加熱領域は広くなる。従って、図19の記録ヘッドを用いれば、表層記録層27の記録後に外場として複数トラックを同時に加熱することができる。
記録磁界以外の外場を与える機構を有した記録ヘッドのさらに別の例を示す。図20は外場として高周波磁界を用いる場合の記録ヘッドの一例である。従来の記録ヘッドと同様の構造に加えて、記録磁極204の横に高周波発生素子(高周波印加素子ともいう)231が設置されている。
高周波発生素子231の構造を図21に示す。フリー層241、非磁性層242、固着層243、固着バイアス層244がこの順に積層されている。
フリー層241と固着層243は軟磁気特性を持つ磁性薄膜であり、Fe、Co、Niを含む合金が一般に用いられる。
固着バイアス層244は反強磁性体か硬磁性体が用いられ、常に一方向に磁化されている。固着バイアス層244からの交換磁界により固着層は常に一方向に磁化されている。
この高周波発生素子231に電流源245から電流を供給すると、固着層243からのスピン偏極電流によるトルクによってフリー層241の磁化が回転を始める。この磁化の回転によって、記録層206に高周波磁界が印加される。
この高周波発生素子231の構造は、再生ヘッドに用いられるスピンバルブと概ね同じ構成である。高周波発生素子231を記録磁極とリターン磁極の間に設置することで、いわゆる高周波アシスト記録用のヘッドとできる。
高周波発生素子231の幅をトラック幅程度とすることで、トラック幅程度の領域に高周波磁界を印加することができる。また、高周波発生素子231の幅を複数トラック幅程度とすることで、複数トラックの領域に高周波磁界を印加することができる。
記録磁界以外の外場を与える機構を有した記録ヘッドのさらに別の例を示す。図22は外場として面内方向の磁界を印加する記録ヘッド(面内磁界印加素子)の一例である。磁極251は左右対称な構造をしている。励磁コイル203に電流を流すことで、図中に矢印で示したように、記録層206に対して、磁極251の端部から磁気記録媒体の面内方向に磁界を印加できる。
この磁極251の幅をトラック幅程度にすると、トラック幅程度の面内磁界を印加でき、トラック幅よりも大きくすると、複数トラックに同時に面内磁界を印加できる。
図23に、複数の記録ヘッド(素子262、263)を用いる例を示す。素子262、263として、例えば、通常の磁気記録ヘッド素子、加熱機構がついた記録ヘッド素子(図17、図19参照)、加熱ヘッド素子、高周波印加機構がついた記録ヘッド素子(図20参照)、高周波印加素子(図21参照)、面内磁界印加素子(図22参照)の中の二つを選択できる。
図1における磁気ヘッド123を構成するスライダ261にこれらの2つの素子262、263を設置することができる。
図23では、スライダ261の下側が媒体面である。スライダ261は概ね矩形をしており、媒体面が特殊な形状に加工されている。この形状によって、空気流によりある浮上量で媒体面状を浮上するように設計してある。
スライダ261の端面に素子262、263が設置されている。スライダ261の中央部の素子262に表層記録層27の記録を担う素子(通常の磁気記録ヘッド素子、加熱機構がついた記録ヘッド素子、高周波印加機構がついた記録ヘッド素子)を設置する方が、低浮上で安定した記録動作が可能となる。
図24には、複数の記録ヘッドを設置する別の場合の例を示す。磁気記録媒体272に対応して、ヘッドサスペンションアッセンブリ(HSA)271およびアーム273が設けられる。磁気記録媒体272上の二つのHSA271、273に、通常の磁気記録ヘッド素子、加熱機構がついた記録ヘッド素子、加熱ヘッド素子、高周波印加機構がついた記録ヘッド素子、高周波印加素子、面内磁界印加素子、の中の二つ組み合わせを割り当てる。このようにすることで、記録ヘッドの作成が簡単になる。また、磁気記録再生、記録転写工程、再生転写工程を三つの素子で行う場合などには、図23および図24に示すヘッドを組み合わせてもよい。
<媒体構成−交換層1、交換層1オプション>
実施形態に係る磁気記録再生装置を構成する磁気記録媒体121において、交換層26はFe、Co、Niのうちの少なくとも一つの元素を含む磁性体とすることができる。この場合、強磁性交換結合(FC)を効果的に誘起することができる。
交換層26は磁性体であるので、10nmくらいの厚さまでは表層記録層27と保管層25とのFC交換結合を誘起することができる。
また、表層記録層27や保管層25に比べて交換層26内では比較的磁化が回転し易いので、表層記録層27と保管層25の磁化が逆向きである場合の界面交換結合エネルギーを交換層26内に凝縮できる。このようにすることで、表層記録層27と保管層25の磁化が平行と反平行の場合のエネルギー差を小さくでき、図8Bのような記録状態を保つための磁気特性のマージンを増やすことができる。
また、この交換層26の飽和磁束密度を1000emu/cc以上にすることができる。この場合、交換層26が磁気シールドの役割を果たし、保管層25の記録磁区から再生ヘッドへの漏洩磁界を低減することができ、表層記録層27の再生時のノイズを小さくすることができる。
また、表層記録層27のみに情報を記録する場合には、同様な磁気シールドの効果で、保管層25へ印加される記録磁界が低減される。このため、保管層25をはじめとする媒体設計のマージン、および記録動作のマージンの増加を図れる。
<媒体構成−交換層2>
実施形態に係る磁気記録再生装置を構成する磁気記録媒体121において、交換層26は1.5nm以下の厚さであり、かつRu、Ir、Re、Rhのうちの少なくとも一つの元素を含む非磁性体とすることができる。この場合には、交換層26の厚さによって強磁性交換結合(FC)あるいは反強磁性結合(AFC)を誘起することができる。材料や作成プロセスに依存するが、典型的には、0.8nm程度の厚さで最大のAFCが得られ、それよりも厚いあるいは薄い領域ではFCが得られる、膜厚に対して交換結合強度が振動的に変化する性質があることが知られている。
<媒体構成−保管層25>
実施形態に係る磁気記録再生装置を構成する磁気記録媒体121において、保管層25を複数の積層構造としても良い。この媒体構成の模式図を図25に示す。
保管層25aは、順に積層される、第2保管層1223、保管交換層1223、第1保管層1221から構成される。第1保管層1221と第2保管層1222は、垂直磁気異方性を有する磁性粒子と前記磁性粒子の周囲に存在する非磁性母材からなる。第1保管層1221と第2保管層1222とは保管交換層1223を介して反強磁性結合している。
反強磁性結合を誘起するには、保管交換層1223が1.5nm以下の厚さであり、かつ、Ru、Ir、Re、Rhのうちの少なくとも一つの元素を含む非磁性体であることが好ましい。
第1保管層1221と第2保管層1222は反強磁性結合しているので、二層を合わせた実効的な磁化量は減少し、磁化が小さく保磁力が大きな保管層25を構成することができる。こうすることで、表層記録層27のみを記録する場合に保管層25が反転しにくくなる。さらに、保管層25に記録されている磁区74からの漏洩磁界が減少するので、表層記録層27を再生するときのノイズを小さくすることができる。
外部磁界がない状態で第1保管層1221と第2保管層1222の磁化の向きが平行の場合と反平行の場合の二通りが存在すると、保管層25への転写記録工程が不安定になるので好ましくない。
実施形態に係る保管層25a(第1保管層1221と第2保管層1222)のヒステリシスループの模式図を図26に示す。メジャーループ131、マイナーループ132が示される。
マイナーループ132は、次のようにして得られる。即ち、強い強度の磁界を上向きに印加して状態(a)にした後、磁界を減じていき、ゼロに達したところでさらに下向きに磁界を印加していって状態(b)にし、ここで磁界の変化を止める。その後、下向きの磁界を減じていき、ゼロに達したところでまた上向きの磁界を印加していって状態(a)に戻す。このようにして、状態(b)から状態(a)に移行するマイナーループ132が得られる。
磁化状態133、134はそれぞれ、第1保管層1221と第2保管層1222の磁化状態を模式的に示したものである。状態(a)では、強い上向きの外部磁界が印加されているため、第1保管層1221も第2保管層1222も磁化は上を向く。この後外部磁界を減じていくと、磁界が下向きになる前に交換磁界によって第1保管層1221が反転し、状態(b)になる。従って、外部磁界がない状態では状態(b)のみが安定して存在し得る。
この関係は図26に示すように、磁界H=0、磁化M=0の点に対して点対称性がある。すなわち、下向きの強い磁界により両方とも下向きの状態(c)から始めても、下向きの磁界強度を減じていってゼロ磁界になる前に表層記録層27が反転してしまい、(d)のようになってしまう。従って、ゼロ磁界下では状態(b)と(d)の二つの磁化状態しか存在し得ない。
このようなヒステリシスは、第1保管層1221と第2保管層1222の残留磁化と膜厚の積を小さくしたり、第1保管層1221と第2保管層1222との間に作用する反強磁性結合を強くしたりすることで、実現できる。
<媒体構成−表層記録層>
表層記録層27が、さらに、グラニュラー層とそれと交換結合している連続磁性層とから構成されても良い。グラニュラー層は、垂直磁気異方性を有する磁性粒子と磁性粒子の周囲に存在する非磁性母材を有する。
即ち、表層記録層27は、現行のHDD媒体で採用されているような、グラニュラー層とその上に積層されている連続磁性膜とが交換結合している、いわゆるCGC(Continuous Granular Composite)構造であっても構わない。
この磁気記録媒体の断面の模式図を図27に示す。表層記録層27が磁性粒子31と非磁性母材32からなるグラニュラー層とその上の連続磁性層271からなる。磁性粒子と連続磁性層は交換結合している。交換結合はFCでもAFCでも構わない。連続磁性層271は磁気記録媒体121の全面にわたって連続していなくても良い。現行のHDD媒体と同様に、部分的に不連続であっても、磁性粒子間の交換結合力を制御できれば良い。
この場合においても、表層記録層27の磁性粒子と保管層25の磁性粒子の関係は同じなので、図8A〜図8Gで模式的に示したものと実質的に同じである。即ち、図8A〜図8Gで示したものと同様の転送記録工程・転送再生工程が起こる。従って、従来の体積記録の欠点であった、記録分解能・再生分解能の課題を解決できる。
加えて、表層記録層27がいわゆるCGC構造になっているので、磁性粒子間の交換結合が適切な値に制御されることにより、再生SNRが向上する。このように、実施形態に係る磁気記録媒体121を用いると、体積記録の再生SNRを向上させることができる。
<システム−バッファ保管>
転写再生工程の前に表層記録層27の情報をバッファメモリに記録し、転写再生工程の後に、バッファメモリのデータを表層記録層27に記録しても良い。
図28に実施形態に係る磁気記録再生装置のバッファメモリ周辺のブロック図を示す。この磁気記録再生装置は、記録再生ヘッド/媒体部141、記録再生制御部142、PCなどのホスト部143、バッファメモリ部144を有する。
ホスト部143側で、ある情報を記録あるいは再生する場合、ホスト部143から記録/再生動作の指示が記録再生制御部142に送られる。そして、この指示に従って、記録再生ヘッド/媒体部141において、記録あるいは再生動作が行われる。記録あるいは再生動作の結果は、記録再生制御部142を介してホスト部143に戻される。
実施形態に係る磁気記録再生方式では、保管層25の情報を読みだす転写再生工程を行う前にまず表層記録層27の情報を再生し、その結果をバッファメモリ部に格納(退避)する。転写再生工程は表層記録層27の情報を消してしまうので、この動作を行うことで情報の消失を防ぐことができる。
転写再生工程を行った後、バッファメモリ部144の情報を再度表層記録層27に書き戻す。この工程により転写再生工程を行う前の状態に戻すことができる。
なお、上記の書き戻しの工程を行う前に表層記録層27の情報の再生要求があった場合には、バッファメモリ部144から直接情報を読み出せばよい。
バッファメモリ部144に格納する情報は、基本的には表層記録層27に記録されたものすべてであるが、表層記録層27の一部にしか記録されていないことが明確な場合には、その一部の情報だけバッファメモリ部に格納すればよい。このようにすることで、転写再生工程の時間を短くできる。
バッファメモリ部144のメモリ容量としては、表層記録層27すべての記憶容量、すなわち、磁気記録媒体121の少なくとも1面分のデータを格納できる容量が必要である。
図29に示すように、バッファメモリ部144はホスト部143に従属していてもよい。この場合には、表層記録層27の情報のバッファメモリ部144への一時退避をホスト内で処理できるので、HDD装置部を簡略化できる。ただし、ホスト側での処理量が増え、他の機器の動作を含めたホストの処理能力が低下する可能性がある。
バッファ部のデータを表層記録層27へ書き戻す工程を行うタイミングとしては、転写再生工程を行ったホストからの再生動作指示が出た直後で良い。これに対して、バッファメモリに退避した表層記録層27の情報の次の再生要求が来る頻度を推定し、その推定値に従って、ホストからの再生要求が来る前の任意のタイミングで表層記録層27への書き戻し工程を行っても良い。このような書き戻し工程のタイミングを制御することで、磁気記録媒体装置あるいはホスト部を含めたトータルのデータ処理速度の向上が可能となる。
また、書き戻す工程を行うタイミングをホスト側のデータ使用パターンから推定しても良い。例えば、動画ファイルの再生などのように、連続した大量のデータアクセスが来ることが推定される場合には、転送再生工程を行った直後に、書き戻しを行えば良い。
あるいは、webへのアクセス、文書ファイルの作成時のように、比較的小さなデータの離散的記録・再生アクセスが推定される場合には、そのようなアクセスをバッファ上で行うようにして、一連の作業が終わった後に書き戻し工程を行っても良い。こうすることで、再生の待ち時間を短縮できる。
実施形態に係る磁気記録再生方法において、バッファメモリとして同じ磁気記録再生装置(ドライブ)の別の媒体面を使っても良い。例えば、同一の磁気記録媒体の一面、他面をそれぞれ、記録用、バッファ用とすることができる。また、異なる磁気記録媒体上それぞれの媒体面を記録用、バッファ用とすることができる。このとき、その媒体面の表層記録層27、保管層25のいずれか一方および双方をバッファ用として利用することができる。
以上のように、記録用とした磁気記録媒体と同一または異なる磁気記録媒体の表層記録層27または保管層25をバッファメモリとして機能させることができる。
同じドライブの別の媒体面であれば、磁気記録媒体121の少なくとも1面分のデータを格納することが容易となる。バッファメモリとしてフラッシュメモリを使う場合に比べて、記録再生動作は遅くなるが、コストが低くなる。
以上、説明してきたように、実施形態に係る磁気記録再生方法を用いれば、記録分解能等3つの欠点を解決した体積磁気記録が実現できる。どのような媒体設計、ヘッド設計を行うかは、上記の条件を満たす範囲で、現在用いられている媒体・ヘッドを設計すればよい。すでに説明してきたように、上述の記録再生方法を行う限り、どのような設計であっても、記録分解能等3つの欠点を解決できる。
ここで、実施形態に係る磁気記録媒体121の設計の一例を以下に示す。以下の例は、図5に示したグラニュラー膜中において、その中の一個の磁性粒子に着目してその磁化反転過程をLLGマイクロマグネティクスシミュレーションにより調べた結果である。このシミュレーション結果が、図8A〜図8Gに模式的に示したものと同様の動作であれば、磁化転移が表層記録層27と保管層25との間で転写されることを示したことになる。即ち、記録分解能等3つの欠点を解決した体積磁気記録が実現できることを示すことになる。
表層記録層27として、磁気異方性Kuを1.5Merg/cc、飽和磁化Msを600emu/cc、厚さを15nmとし、保管層25として磁気異方性Kuを4Merg/cc、Msを300emu/cc、厚さを10nmとした。
この二層が積層されている一辺が7nmの粒子を計算モデルとした。この粒子は一辺が1nmの直方体で分割されており、その中のスピンの向きをLLG方程式に従って計算することで、磁化反転状態を調べる。
各層内でのスピン間の交換スティフネス定数Aは0.2μerg/cm(強磁性結合)とし、表層記録層27と保管層25との界面における交換スティフネス定数Aは0.015μerg/cmとした。交換層26は磁化がないものと仮定し、このシミュレーションでは厚さゼロとした。ダンピング定数αは1.0とした。
このモデルの磁化反転の計算結果(ヒステリシスループ)を図30に示す。図10に示したものと同様のヒステリシスループが得られていることがわかる。
状態(a)は表層記録層83と保管層84がともに上向きに磁化された状態である。状態(b)は表層記録層27のみが反転した状態である。状態(c)は表層記録層27も保管層25も共に反転して下向きに磁化された状態である。
この図において、ゼロ磁界の状態(d)から上向きに磁界を印加していき、約30kOeの状態(e)の点で両方とも上向きに磁化したところで磁界を減少させ、下向きに約20kOeの状態(b)に達したところでゼロ磁界に戻して状態(f)とした。
この一連の磁化状態の遷移の順番を点線で示す。
状態(f)では表層記録層27のみが磁化反転し、保管層25は磁化反転していない。すなわち、±20kOeの記録磁界を印加することで、保管層25の磁化状態は変えずに表層記録層27のみに記録ができることを示している。
状態(f)におけるミクロな磁化状態を図31に示す。矢印は、1nm立方の計算メッシュにおけるミクロな磁化の向きを表す。保管層25と表層記録層27との界面でスピンがねじれているのがわかる。これは図8Bの左から4番目の磁性粒子の状態に相当する。
次に、転送記録工程の動作を確認した。図8Cに模式的に示した、表層記録層27に保管層25と異なる情報を記録した後で保管層25の保磁力を低下させて、表層記録層27の磁化状態を保管層25に転写する工程をLLGシミュレーションで確認した。
上記と同様の表層記録層27と保管層25の磁気パラメータを設定し、図30の状態(f)を初期状態とし、保管層25の磁気異方性Kuのみを減少させた。この状況は、保管層25のキュリー温度を表層記録層27のキュリー温度よりも低く設計し、記録磁極からの記録磁界以外の外場として熱を加える場合に相当する。この場合、一般的なHDD装置で発生していると想定される、漏洩磁界を含む外乱として面内方向に100Oeの磁界を印加した。
図32に計算結果を示す。横軸は保管層25の磁気異方性Kuを、縦軸には規格化した磁化量を示す。磁気異方性Kuが0.1Merg/ccよりも大きい場合には、全体の磁化量は−0.5、すなわち、表層記録層27が下向き、保管層25が上向きの初期状態が保たれている。しかし、磁気異方性Kuが0.08Merg/ccよりも小さくなると保管層25の磁化が反転し、磁化が−1となった。
これは、図8B〜図8Dにおいて、左から4番目の磁性粒子72,73の状態に対応する過程が起こっていることを示す。従って、加熱により保管層25の磁気異方性Kuを4Merg/ccから0.08Merg/ccまで下げることができれば、図8A〜図8Gで示したような転写記録工程ができることが示された。
実際の転写記録工程時には、周りからの漏洩磁界や記録ヘッドからの時間的に変動する磁界などの影響で外乱は大きくなるので、ここまで磁気異方性Kuを小さくしなくとも保管層25の磁化反転は起こると思われる。
次に同様な転送記録工程を高周波アシストで起こす場合について、LLGシミュレーションによって調べた。上記と同様の表層記録層27と保管層25の磁気パラメータを設定し、図30の状態(f)を初期状態とし、保管層25の磁気異方性Kuを1/4(=1Merg/cc)にし、かつ、交換スティフネス定数Aを減らし、面内方向に±1kOeの交播磁界を立ち上がり時間ゼロで一周期だけ印加した。
磁気異方性Kuを下げることはスピンが外部磁界の向きにより向きやすくなることを意味し、保管層25が共鳴状態に近い、あるいは、大きな高周波磁界が印加されている状態を模している。
また、交換スティフネス定数Aが小さいということは、スピンがより回転しやすくなることであり、共鳴周波数に近い高周波磁界に追随してスピンが回転している、すなわち、保管層25のスピンが高周波磁界によって揺すられている状態を模している。
計算の結果、交換スティフネス定数Aを0.2、0.1、0.05μerg/cmと小さくしていった、すなわち、スピンのゆすられ度合を大きくしていったところ、交換スティフネス定数Aを0.05μerg/cmに下げた時点で保管層25の磁化が反転することを確認した。
次に転写再生工程のシミュレーションを行った。
加熱あるいは高周波磁界によって表層記録層27の保磁力を低下させる場合は、上述の転写記録工程と層が異なるだけで実質的に同じであり、実現可能であることは自明である。
そこで、面内磁界を印加して転写再生工程を実現する状態をシミュレーションによって調べた。上記と同様の表層記録層27と保管層25の磁気パラメータを設定し、図30の状態(f)を初期状態とし、面内方向に磁界を印加し、安定状態になった後で磁界を除去し、その後のスピンの状態を調べた。
その結果を図33に示す。横軸は印加した面内磁界の強度で、縦軸は規格化した磁化量を表す。初期状態では−0.5の磁化で、表層記録層27が下向き、保管層25が上向きの状態であるが、5kOe以上の面内磁界の印加で磁化が+1となり表層記録層27が反転していることがわかる。すなわち、図8E〜図8Gの左から4番目の磁性粒子31の状態が変化する過程が確認されたことになる。
以上、LLGシミュレーションを用いて、実施形態に係る磁気記録再生方式の確認を行ったが、これは、前述の、記録分解能等の3つの欠点を解決した体積磁気記録が実現できることを示した一例となる。すなわち、表層記録層27および保管層25を構成する一個の磁性粒子に着目し、表層記録層27の磁化状態が保管層25の磁化状態に転写される転写記録工程および、保管層25の磁化状態が表層記録層27に転写される転写再生工程が、転写される側の層の保磁力を低下させる、あるいは面内磁界を印加することによって起こることが示された。
このように磁性粒子単位での磁化状態の転写が可能であるため、磁化転移領域71はその幅を変えずに表層記録層27と保管層25との間で転写される。このため、体積記録における記録および再生分解能が低い欠点が解消された体積記録が実現できることが示された。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが,これらの実施形態は,例として提示したものであり,発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は,その他の様々な形態で実施されることが可能であり,発明の要旨を逸脱しない範囲で,種々の省略,置き換え,変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は,発明の範囲や要旨に含まれるとともに,特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
21 基板
22,24 下地層
23 軟磁性下地層
25 保管層
26 交換層
27 表層記録層
28 保護層
31 磁性粒子
32 非磁性母材
71 磁化転移領域
72,73 磁性粒子
74 磁区
83 磁化状態
83 表層記録層
84 保管層
121 磁気記録媒体
122 スピンドルモータ
123 磁気ヘッド
124 サスペンション
125 アーム
126 アクチュエータ
128 筐体
133、134 磁化状態
141 媒体部
142 記録再生制御部
143 ホスト部
144 バッファメモリ部
201 導波路
202 近接場素子
203 励磁コイル
204 記録磁極
205 リターンコイル
206 記録層
211 近接場光
231 高周波発生素子
241 フリー層
242 非磁性層
243 固着層
244 固着バイアス層
245 電流源
261 スライダ
262、263 素子
271 連続磁性層
272 磁気記録媒体
1221 保管層
1222 保管層
1223 保管交換層

Claims (22)

  1. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記表層記録層を前記第1のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 加熱されている状態での前記保管層の保磁力
    Hexs: 前記保管層に印加される交換磁界
    Has: 漏洩磁界等を含めて外部から印加される磁界の総和
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体に対して、前記表層記録層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 高周波磁界を印加されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置。
  2. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記表層記録層を前記第1のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 加熱されている状態での前記保管層の保磁力
    Hexs: 前記保管層に印加される交換磁界
    Has: 漏洩磁界等を含めて外部から印加される磁界の総和
    前記工程(5)において、媒体面内方向に1kOe以上の外部磁界を印加する
    磁気記録再生装置。
  3. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体に対して、前記表層記録層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 高周波磁界を印加されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置
  4. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記工程(5)において、媒体面内方向に1kOe以上の外部磁界を印加する
    磁気記録再生装置。
  5. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記第1、第2の磁性粒子の粒径が、3nm以上20nm以下であり、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記磁気記録媒体は、前記表層記録層のキュリー温度が前記保管層のキュリー温度よりも低く、
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体を前記保管層のキュリー温度よりも低い温度に加熱し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 加熱されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置。
  6. 前記磁気記録媒体が加熱される領域が記録トラック幅よりも広い
    請求項1、2、および5のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  7. 前記磁気記録媒体に高周波が印加される領域が記録トラック幅よりも広い
    請求項1、3、4、および5のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  8. 前記磁気記録媒体に外部磁界が印加される領域が記録トラック幅よりも広い
    請求項2または4に記載の磁気記録再生装置。
  9. 前記制御部に制御され、前記工程(1)、(3)、(4)、および(6)での記録または再生を行う第1の磁気ヘッドと、
    前記制御部に制御され、前記工程(2)、および(5)での転送を行う第2の磁気ヘッドと、
    を具備する請求項1乃至のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  10. 前記磁気記録媒体の前記交換層がFe、Co、Niのうちの少なくとも一つの元素を含む磁性体である
    請求項1乃至のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  11. 前記交換層の飽和磁束密度が1000emu/cc以上である、
    請求項10記載の磁気記録再生装置。
  12. 前記交換層が、1.5nm以下の厚さであり、かつRu、Ir、Re、Rhのうちの少なくとも一つの元素を含む、
    請求項1乃至11のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  13. 前記保管層が、順に積層される第2保管層、保管交換層、第1保管層を有し、
    前記第1保管層は、垂直磁気異方性を有する第3の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第3の非磁性母材とを有し、
    前記第2保管層は、垂直磁気異方性を有する第4の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第4の非磁性母材とを有し、
    前記保管交換層は、Ru、Ir、Re、Rhのうちの少なくとも一つの元素を含み、1.5nm以下の厚さであり、前記第1保管層および前記第2保管層間の交換相互作用を伝達する、
    請求項1乃至12のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  14. 前記表層記録層が、垂直磁気異方性を有する磁性粒子と前記磁性粒子の周囲に存在する非磁性母材とからなるグラニュラー層と、前記グラニュラー層上に堆積された連続磁性層とから構成され、
    前記グラニュラー層と前記連続磁性層とが交換結合している
    請求項1乃至13のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  15. 前記制御部が、次の工程の実行をさらに制御する、
    前記工程(4)の前に前記表層記録層の情報をバッファメモリに記録する工程、
    前記工程(4)の後に、前記バッファメモリのデータを前記表層記録層に記録する工程、
    請求項1乃至14のいずれか1項に記載の磁気記録再生装置。
  16. 前記磁気記録媒体または前記磁気記録媒体と異なる第2の磁気記録媒体の表層記録層または保管層が前記バッファメモリとして機能する
    請求項15記載の磁気記録再生装置。
  17. 磁気記録媒体への情報の記録再生を行う磁気記録再生方法であって、
    前記磁気記録媒体が、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記保管層は、垂直磁気異方性を有する第1の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第1の非磁性母材とを有し、
    前記表層記録層は、垂直磁気異方性を有する第2の磁性粒子とこの磁性粒子の周囲に配置される第2の非磁性母材とを有し、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記磁気記録再生方法が次の工程(1)〜(6)を有し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程と、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程と、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程と、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程と、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程と、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程と、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記表層記録層を前記第1のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 加熱されている状態での前記保管層の保磁力
    Hexs: 前記保管層に印加される交換磁界
    Has: 漏洩磁界等を含めて外部から印加される磁界の総和
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体に対して、前記表層記録層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 高周波磁界を印加されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生方法。
  18. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記表層記録層を前記第1のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 加熱されている状態での前記保管層の保磁力
    Hexs: 前記保管層に印加される交換磁界
    Has: 漏洩磁界等を含めて外部から印加される磁界の総和
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体に対して、前記表層記録層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 高周波磁界を印加されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置。
  19. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記表層記録層を前記第1のキュリー温度よりも低い温度に加熱して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 加熱されている状態での前記保管層の保磁力
    Hexs: 前記保管層に印加される交換磁界
    Has: 漏洩磁界等を含めて外部から印加される磁界の総和
    前記工程(5)において、媒体面内方向に1kOe以上の外部磁界を印加する
    磁気記録再生装置。
  20. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体に対して、前記表層記録層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 高周波磁界を印加されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置
  21. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記表層記録層の第1のキュリー温度が前記保管層の第2のキュリー温度よりも高く、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記工程(5)において、媒体面内方向に1kOe以上の外部磁界を印加する
    磁気記録再生装置。
  22. 磁気記録媒体およびこの磁気記録媒体への情報の記録再生を制御する制御部を具備する磁気記録再生装置であって、
    前記磁気記録媒体は、基板上に順に積層される保管層、交換層、表層記録層を備え、
    前記交換層は、磁性金属または非磁性金属を有し、前記保管層および前記表層記録層間の交換相互作用を伝達し、
    前記表層記録層の保磁力Hcr、前記表層記録層に作用する交換磁界Hexr、前記表層記録層に作用する外部磁界Har、前記保管層の保磁力Hcs、前記保管層に作用する交換磁界Hexs、前記保管層に作用する外部磁界Hasが、室温において次の条件を満たし、
    Hcr>Hexr+Har
    Hcs>Hexs+Has
    前記制御部は次の工程(1)〜(6)の実行を制御し、
    (1)前記表層記録層に第1の情報を磁気的に記録する工程、
    (2)前記表層記録層に記録された前記第1の情報を前記保管層に転送する工程、
    (3)前記表層記録層に第2の情報を磁気的に記録する工程、
    (4)前記表層記録層から前記第2の情報を磁気的に再生する工程、
    (5)前記保管層に記録された第1の情報を前記表層記録層に転送する工程、
    (6)前記表層記録層に転写された前記第1の情報を磁気的に再生する工程、
    前記工程(2)において、前記磁気記録媒体に対して、前記保管層の共鳴周波数に近い周波数の高周波磁界を印加して、次の条件を満たし、
    Hcs<Hexs+Has
    Hcs: 高周波磁界を印加されている状態での前記保管層の保磁力
    前記磁気記録媒体は、前記表層記録層のキュリー温度が前記保管層のキュリー温度よりも低く、
    前記工程(5)において、前記磁気記録媒体を前記保管層のキュリー温度よりも低い温度に加熱し、下記の条件を与える
    Hcr<Hexr+Har
    Hcr: 加熱されている状態での前記表層記録層の保磁力
    磁気記録再生装置。
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