JP2007056959A - 摩擦部材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 摩擦材の品質を保持し、かつ導入設備、及びメンテナンスのコストを抑えつつ、製造工程の時間短縮を実現する摩擦部材の製造方法を提供すること。
【解決手段】 摩擦材原料からなる成形材料を、上型1,中型2,下型3を備えた成形型内で加圧−加熱する成形工程を経て成形する摩擦部材4の製造方法において、前記成形工程の上型1,下型3の型温を190〜230℃に、圧力を0.05〜10MPaにすること。
【選択図】図2

Description

本発明は、自動車,大型トラック,鉄道車両,各種産業用機械等のディスクパッド、ブレーキライニング等に好適に用いられる摩擦部材の製造方法に関する。
摩擦部材には、ディスクパッドのように摩擦材に裏金(バックプレート)を貼り付けて製品となるものや、ブレーキライニングのように摩擦材のみで製品となるものがある。
一般に摩擦部材は、繊維基材,充填材,結合材等からなる摩擦材原料をレディゲミキサー,アイリッヒミキサー等の混合機を用いて均一に混合する「混合工程」、混合された各素材を一定量金型に投入しプレス機で加圧し予備成形品とする「予備成形工程」、予備成形品を別のプレス機で加圧・加熱する「成形工程」、摩擦部材全体の熱硬化性樹脂の反応を完結させ、摩擦性樹脂の安定化と機械的強度を確保するための「熱処理工程」、「塗装工程」、摩擦材面の研磨や溝入れ面取りを行う「研磨工程」、摩擦材表面を軽く焦がし新品時のブレーキの効きを確保する「ヒートシア工程」、「検査工程」を経て作製される。なお、ディスクパッドの場合は、上記の成形工程時に前もって打ち抜き加工され、脱脂処理,ブラスト処理,化成処理,プライマー処理等が施されたバックプレートと摩擦材が接着成形されることとなる。
上記の「成形工程」は、従来の摩擦材では、例えば、特許文献1に記載されているように圧力35MPa、型温180℃の状態で5〜10分加圧・加熱しているが、一般的には、圧力30〜50MPa、型温130〜180℃の状態で5〜15分程度、加圧・加熱している。
そして、特許文献2に記載されているように、摩擦材原料中に結合材として熱硬化性樹脂を含有していることにより、加圧・加熱中に数回程度除圧しいわゆるガス抜きを行っている。これらの条件は摩擦材の品質維持に必要不可欠なものではあるが、高い圧力が必要(特に多面取りにした場合)であることから設備が大掛かりになり、また単に型温を上げて成形時間を短縮しようとすると発生ガスの抜けが悪くなり摩擦材に品質上の問題、例えばフクレやクラックが発生する等の問題が生じ、摩擦材の更なるコストダウンを考えたとき「成形工程」をどのように改善していくかが問題となってきている。
特開2003−268352号公報 特開2003−145565号公報
本発明は、上記事情に鑑み、摩擦材の品質を保持し、かつ導入設備、及びメンテナンスのコストを抑えつつ、製造工程の時間短縮を実現する摩擦部材の製造方法を提供することをその課題とするものである。
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明の構成は、摩擦材原料からなる成形材料を、上型,中型,下型を備えた成形型内で加圧−加熱する成形工程を経て成形する摩擦部材の製造方法において、前記成形工程の上型,下型の型温を190〜230℃に、圧力を0.05〜10MPaにすることを特徴とするものである。
本発明は、上記構成において、中型の型温は、上型と下型の型温の熱伝導により成形材料に含まれる樹脂の融点以上で硬化温度未満にするのが好適である。また、中型は、多孔質材により形成された構成、熱伝導率調整用フィラーを含有する構成、磁性を有する材料を含有する構成にすることができる。更に、中型の型温は、成形工程中に高周波加熱により190〜230℃に調整することができる。
また、本発明は、上記構成において、成形材料は造粒物であるのが好ましく、更に、成形材料は、予備加熱したものであるのが好ましい。なお、この予備加熱は、高周波、又は、マイクロ波による誘電加熱によるものであるのが好ましい。
本発明は、従来よりもより高い温度と、小さい圧力で加圧・加熱成形したり、成形材料中の樹脂の硬化温度を考慮し、中型の型温を好適に調節することにより、短時間に加圧・加熱成形し摩擦部材を製造することができるので、従来のように大掛かりな設備、例えば大掛かりな液圧式の熱プレス装置を用いる必要がなく、また、従来の装置では壊れてしまうような柔らかい材質の成形型を使用することができるので、効率よく低コストでしかもフクレやクラックの無い摩擦部材を製造することができるという格別の効果が得られる。
また、本発明特有の効果を従来方法と対比して述べると、従来は、成形温度が高すぎると、摩擦材原料の硬化反応が急速に進行し、急激に大量の反応ガスが発生するためクラックが発生するという問題があり、また、成形圧力が小さ過ぎると、摩擦材原料を圧縮するのに時間がかかり過ぎて効率的でないという問題があることから、180℃以下の成形温度と、30〜50MPaという大きい成形圧力で加熱・加圧する成形が行なわれていた。しかし、180℃を越える成形温度で加熱しても、成形圧力が小さければ、クラックが発生せず、また、成形圧力が小さくても、180℃を越える成形温度で加熱すれば、短時間で摩擦材原料を圧縮できることがわかった。クラックが発生するのは、上記の通り、成形温度が高く、急激に大量のガスが発生するためであると考えられていたが、成形圧力も大きく関係し、また、成形圧力が小さいと圧縮に時間がかかるのは、成形温度が大きく関係しているものと推測される。
摩擦材原料混合物は、圧縮されることにより、圧縮歪みを生じる。ガス抜き処理時に除圧されると圧縮歪みは厚み方向に開放され、スプリングバックが生じる。圧力が大きいほど圧縮歪みが大きくなり、スプリングバック量も大きくなる。
即ち、成形圧力が大きいと、1回目の加圧で、製品とほぼ同じ高さまで圧縮される。成形温度が高いので摩擦材内部で急激に大量の反応ガスが発生し、摩擦材の内圧が高くなる。この状態でガス抜きをすると、摩擦材はスプリングバックし、摩擦材の側面から大量のガスが噴出する。その結果、クラックが発生する。
また、摩擦材原料は、加熱されることで樹脂が溶融し、流動し易い状態となることで、小さい圧力でも圧縮が可能となる。しかし、成形温度が低いと樹脂が溶融し、流動し易い状態となるまで時間がかかるため、小さい圧力だと圧縮するのに時間がかかる。
これに対し、本発明は、小さな圧力で徐々に加圧するので、スプリングバック量が少なく、大量のガスが噴出してもクラックが発生し難くなり、また、高い温度で加熱するので、樹脂が素早く溶融し、摩擦材原料が流動し易い状態となり、小さい圧力でも短時間で摩擦材原料を圧縮できる。また、本発明では、中型の型温を成形工程中の例えば開始時点では樹脂の軟化温度以上、硬化温度以下で加熱する。中型と接する摩擦部材側面の樹脂が硬化しないので、側面がらガスが抜け易くなる。ガスが抜け易くなるので、より短時間で成形でき、より外観の良い摩擦部材を得ることができる。そして、ある程度ガスが抜けたら、途中から190〜230℃という高い温度で加熱するので、摩擦部材側面の樹脂の硬化を素早く完了させることができるという効果が得られる。
次に、本発明の実施の形態例を図に拠り説明する。図1は一般的な摩擦部材の製造工程の一例を示すブロック図、図2は本発明を実施する製造装置の一例の要部拡大断面図である。
図1は、上述した一般的な摩擦部材の製造工程の流れを示したものである。図2は、図1における成形工程において使用される装置で、本発明を実施するための装置の一例である。
図2において、1は上型、2は上下に貫通孔を有する中型、3はこの中型2の貫通孔に挿入する下型であり、これら上型1,中型2,下型3により本発明を実施するための熱プレス装置を構成する。4はこの熱プレス装置で成形する摩擦部材であり、5はこの摩擦部材4のバックプレートである。なお、図2では摩擦部材4にバックプレート5を貼り付けたディスクパッドを製造する例を示しているが、ブレーキライニングのようにバックプレートを付けない摩擦部材4のみの場合も、本発明の適用対象となる。
上記の上型1と下型3は、ここでは金属製のものを使用している。また、中型2には、ダイス鋼SKD11などの金属製のものを使用することができるが、多孔質材で中型2を形成するのが好ましい。
多孔質材であると中型の熱伝導率が低くなり、中型の型温を一定に保つことができ、製品品質がより安定するからである。多孔質材としては、多孔質セラミックスを使用することもできるが、このセラミックスによる中型の製作はきわめて高価となるため、導入コストがかかり過ぎるという問題がある。そこで、導入コストを考えると、多孔質材として、木材、合板、木材を粉砕し固めたパーティクルボード、MDF(Medium Density Fiberboard),HDF(High Density Fiberboard)、紙,米ぬか,おから等を樹脂で固めたもの、セメント、コンクリート、モルタル、摩擦材の研磨粉を樹脂で固めたものなどを使用することが望ましい。
また、中型2には、グラファイト,金属粉等の熱伝導率調整用フィラーを含有させた構成、黒酸化鉄、鉄粉、ステンレス粉などの磁性を有する材料を含有させた構成、更に、これら熱伝導率調整用フィラーと磁性を有する材料をともに含有させた構成もある。因みに、熱伝導率調整用フィラーを含有させることにより、中型2の温度を急激に上げることができ、摩擦部材4の側面の硬化を迅速に完了させることができる。また、磁性を有する材料を含有させることにより、より短時間で中型2の温度を上げることができる。
本発明は、後述する摩擦材原料からなる成形材料を上記熱プレス装置の上型1,中型2,下型3を備えた成形型内に入れ、加圧−加熱する成形工程を経て摩擦部材を成形するとき、成形工程における上型1と下型3の型温を190〜230℃にすると共に、圧力を0.05〜10MPaにすることに主な特徴がある。このとき、中型2の型温を上型1と下型3の型温の熱伝導により成形材料に含まれる樹脂の融点以上で硬化温度未満にするのが好ましい。この温度は成形材料に含まれる樹脂により異なるが、一例としてフェノール樹脂を使用した場合、約80〜130℃の温度に保つことができれば望ましい。
上記温度に保つことができるのは、多孔質材で形成されている中型2の場合、熱伝導率が低いので、加圧・加熱成形の回数を重ねても温度が上昇し難いからであると推測される。中型2の温度を上型1と下型3よりも低く、上記のように成形材料に含まれる樹脂の融点(軟化温度)以上で硬化温度未満(一例として約80〜130℃)にすることで、この中型2と接する摩擦部材4の側面の硬化反応が遅くなり、側面からガスが抜け易くなる。
本発明では、この中型2の型温を成形工程中、例えば、成形工程の後半から、或は、成形工程の終了前に高周波加熱により190〜230℃に調節するようにすることができる。中型2の型温は成形工程の開始段階では、上記のように上型1と下型3の型温の熱伝導により上述した温度に保たれるが、成形工程の終了時点で摩擦部材4全体の硬化反応を完了させる場合は、一気に硬化温度に上げる必要があるからである。なお、高周波加熱については、図示しないが、例えば高周波誘導加熱コイルを用いて中型2の型温を調節するようにしてもよい。
次に、本発明に用いる摩擦材原料からなる成形材料は、粉末状のものでもよいが、造粒物であるのが好ましい。このような粒度が大きい造粒物を使用すると粒子同士の摩擦による圧力伝達のロスが小さくなる、即ち、粉末状のものを使用したときよりもより低い圧力で成形することができ、より短時間で加圧・加熱成形することができる。
成形材料は、予備加熱しなくてもよいが、予備加熱したものを通常は使用する。本発明は、この成形材料の予備加熱は、内部加熱が可能な高周波、又は、マイクロ波による誘電加熱により行うこともある。
上記の成形工程を経た後、摩擦部材4及びバックプレート5は、熱処理工程に移行するが、熱処理は、熱処理炉で高温雰囲気中に熱処理する方法と、高温の熱板に挟んで熱処理する方法で実施することができる。高温の熱板で挟む方法が短時間で処理できるので好ましい。
本発明の形態例は上記の通りであるが、以下、本発明の実施例について、比較例とともに説明する。
〔実施例1〜17〕
下記の表1に示す組成の摩擦部材原料を、下記の表2に示した成形条件の下で実施例1〜実施例17の摩擦部材をそれぞれ製造し、同じく表3に示した成形条件の下で比較例1〜比較例8の摩擦部材をそれぞれ製造した。なお、表2,表3には製造した各摩擦部材の製品外観、耐摩耗性、摩擦係数も示してある。
Figure 2007056959
〔評価〕
上記実施例1〜実施例17の摩擦部材、及び、比較例1〜比較例8の摩擦部材についての評価は、同じく表2,表3にそれぞれ示してある。
Figure 2007056959
Figure 2007056959
本発明は、従来の摩擦材の製造方法のような大きい圧力、180℃以下の温度で加圧・加熱するのではなく、従来より、より小さい圧力,より高い温度で加圧・加熱成形することにより従来の摩擦材に勝るとも劣らない外観,性能を有する摩擦部材を短時間、低コストで製造することができる。
一般的な摩擦部材の製造工程の一例を示すブロック図。 本発明を実施する製造装置の一例の要部拡大断面図。
符号の説明
1 上型
2 中型
3 下型
4 摩擦部材
5 バックプレート

Claims (9)

  1. 摩擦材原料からなる成形材料を、上型,中型,下型を備えた成形型内で加圧−加熱する成形工程を経て成形する摩擦部材の製造方法において、前記成形工程の上型,下型の型温を190〜230℃に、圧力を0.05〜10MPaにすることを特徴とする摩擦部材の製造方法。
  2. 中型の型温を、上型と下型の型温の熱伝導により成形材料に含まれる樹脂の融点以上で硬化温度未満にする請求項1の製造方法。
  3. 中型は、多孔質材により形成されたものである請求項1又は2の製造方法。
  4. 中型は、熱伝導率調整用フィラーを含有する請求項1〜3のいずれかの製造方法。
  5. 中型は、磁性を有する材料を含有する請求項1〜4のいずれかの製造方法。
  6. 中型の型温は、成形工程中に高周波加熱により190〜230℃にする請求項1〜5のいずれかの製造方法。
  7. 成形材料は、造粒物である請求項1〜6のいずれかの製造方法。
  8. 成形材料は、予備加熱したものである請求項1〜7のいずれかの製造方法。
  9. 予備加熱は、高周波、又は、マイクロ波による誘電加熱によるものである請求項1〜8のいずれかの製造方法。
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