JP2007056735A - 水動力装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】水面落差が比較的小さな水路においても、その水路内水深の利用落差範囲内で水面落差を形成することにより、比較的大きな出力を安定して供給可能な水動力装置を提供する。
【解決手段】水動力装置10は、一対の側壁1aおよび底盤1bで形成された水路1内を矢線S方向に流れる水流Rの一部を堰き止めて水面落差を形成するため水路1内に起伏可能に配置された堰上げ部材2と、堰上げ部材2を越流する水流で回転する水車3と、水車3を回転可能に軸支した状態で堰上げ部材2の上縁部2aを起伏可能に支持する昇降機構4と、水路1内を流れる水流Rの水位の上下動に応じて昇降機構4を作動させる高さ調節機構9と、を備えている。高さ調節機構9は、水路1内の水流Rにより昇降機構4を上方に付勢するフロート5と、昇降機構4を上方に付勢する重錘6と、で形成されている。
【選択図】 図1

Description

本発明は農業用水路などの既設水路の流水から動力を取り出すことのできる水動力装置に関する。
日本全国に配備されている農業用水路は、その幹線水路の総延長だけでも約45,000kmの長さにも達し、地球を一周する以上の長さがあるといわれている。従来、日本各地では、農業用水路などの各種水路内の流水から動力を取り出す手段として水車が利用されてきたが、近年、水路内を流れる水量の増減に対応できるものが提案されている(例えば、特許文献1,2参照。)。
特許文献1記載の水動力装置(水力利用装置)は、上流側の貯留水量が所定値以下になると流水路を閉じて水流を堰き止め、前記貯留水量が所定値に達すると流水路を開く堰き止め手段と、この堰き止め手段の下流側に設けられ流水エネルギーを動力に変換する動力変換手段(水車)とを備えている。このため、流量の少ない水路であっても、流入水を効率的に利用することができる。
特許文献2記載の水動力装置(除塵装置)は、水路を流れる水流の水位に応じて高さ変更可能であって、水位が低いときは浸水しない水車を備えている。このため、水流の水位に応じた高さに水車が位置することにより安定した回転を得ることができる。
特開平11−256555号公報 特開2001−214423号公報
特許文献1,2に記載されている水車は、水路を流れる流水の水面落差をそのまま利用して回転するものであるため、水面落差が大きい水路であれば大きな出力が得られるが、水面落差が小さい場合、必要な出力が得られないことがある。従って、農業用水路のように比較的水面落差の小さな水路に設置した場合、動力源として利用できないことがある。
本発明が解決しようとする課題は、水面落差が比較的小さな水路においても、その水路内水深の利用落差範囲内で水面落差を形成することにより、比較的大きな出力を安定して供給可能な水動力装置を提供することにある。
本発明の水動力装置は、水路内を流れる水流の一部を堰き止めて水面落差を形成するため前記水路内に起伏可能に配置され少なくとも一部が可撓性部材で形成された堰上げ部材と、前記堰上げ部材を越流する水流で回転する水車と、前記水車を回転可能に軸支した状態で前記水車を昇降可能且つ前記堰上げ部材の一部を起伏可能に支持する昇降機構と、前記水路内の水位の上下動に応じて前記昇降機構を作動させる高さ調節機構と、を備えたことを特徴とする。
このような構成とすれば、水路内に起伏可能に配置された堰上げ部材によって水面落差が形成され、この水面落差によって堰上げ部材を越流する水流が発生し、この水流によって水車が回転するため、水面落差が比較的小さな水路においても比較的大きな出力を供給することができる。また、水路内の水位の上下動に応じて高さ調節機構が昇降機構を作動させることにより、水車の昇降および堰上げ部材の起伏が自動的に行われるため、水路内の水流の増減により水位が上下動することがあっても、略一定の水面落差を形成することができる。このため、水路内の水位が上下動しても水車は、ほぼ一定状態で回転することとなり、安定した出力を得ることができる。即ち、水路内の水流に増水が発生しても、上流水深が著しく変化することなく通水できるので、堰上げ部材の上流における水路断面の不足を補うことができる。
ここで、前記高さ調節機構として、前記水路内の水流により前記昇降機構を上昇方向に付勢するフロートと、前記昇降機構を上昇方向に付勢する重錘と、を設ければ、水位の変動に応じて上下動するフロートによって昇降機構が作動することとなるため、水位変化に的確に対応することができる。また、昇降機構を上昇方向に付勢する重錘が、フロートの浮力を補助する機能を発揮するため、フロートの浮力不足をカバーすることができ、フロートの大型化を回避することができる。
一方、前記昇降機構として、四節リンク機構を設ければ、昇降機構は四節リンク機構に基づいて昇降動作するため、水車の昇降および堰上げ部材の起伏が安定した姿勢で行われることとなる。従って、水路内には設定通りの水面落差が形成され、これによって生じる越流水を水車の稼動力として有効利用することができる。
また、前記堰上げ部材の少なくとも一部を、伸縮性を有する板材で形成すれば、水位の変動による昇降機構の昇降動作に伴って堰上げ部材自体が伸縮可能となるため、昇降機構に軸支されている水車を安定した姿勢で昇降させることが可能となり、常に安定した稼働状態を得ることができる。
さらに、前記水路内の水位が設定値を超えると、前記堰上げ部材の堰き止め機能を喪失させる水路開放機構を設ければ、集中豪雨などで水路内の流水が増大する事態が発生したとき、水路開放機構が堰上げ部材の堰き止め機能を喪失させ、水路を開放するため、水路からの溢水を回避することができる。即ち、異常洪水などの出水が発生したとき、当該装置の堰上げ部材を自動開放することにより、水路に配置された当該水動力装置が流下水の障害になるのを回避できるため、水路からの溢水を回避することができる。なお、出水時の増水を検知して水路解放機構を自動的に作動させる手段としては、水位の増減に伴って昇降するフロ−トを利用した水位検知機構などを用いることができる。
本発明により、水面落差が比較的小さな水路においても比較的大きな出力を安定して供給可能な水動力装置を提供することができる。
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の第1実施形態である水動力装置を示す一部切欠斜視図、図2は図1に示す水動力装置の垂直断面図である。
図1,図2に示すように、水動力装置10は、対向配置された一対の側壁1aおよび底盤1bで形成された水路1内を矢線S方向に流れる水流Rを堰き止めて水面落差Dを形成するため水路1内に起伏可能に配置された堰上げ部材2と、堰上げ部材2を越流する水流R1によって回転する水車3と、水車3を回転可能に軸支した状態で堰上げ部材2の上縁部2aを起伏可能に支持する昇降機構4と、水路1内を流れる水流Rの水位の上下動に応じて昇降機構4を作動させる高さ調節機構9と、を備えている。
堰上げ部材2は可撓性部材の一つである合成ゴムで形成され、全体形状は長方形の板状をなしている。堰上げ部材2の幅2wは水路1の幅1wと略同じに形成され、その下縁部2bは水路1の底盤1bに管状体7を介して回動可能に係止され、上縁部2aは管状体8を介して、後述する昇降機構4を構成する水平アーム4aの上流側端部に回動可能に係止されている。従って、堰上げ部材2は、昇降機能4の水平アーム4aの平行移動に伴う管状体8の昇降により、水路1の下流側に凸状に撓んだ状態を保ちながら管状体7を中心に起伏可能であり、これによって、水路1内を矢線S方向に流れる水流Rの一部を堰き止めて水面落差Dを形成することができる。
昇降機構4は、水路1の左右の側壁1aにそれぞれ2本ずつ支軸14,15を介して回動自在に軸支された傾動アーム4b,4cと、左右の傾動アーム4b,4cの下端部同士をそれぞれ支軸12,16を介して互いに回動自在に連結する水平アーム4aと、で構成される四節リンク機構をなしている。また、左右の水平アーム4aからそれぞれ垂下された複数の取付部材11によってフロート5が固定されている。水路1の上流側に位置する左右2本の傾動アーム4bの下端部の間に、支軸12を介して水車3が回動自在に軸支されている。左右の傾動アーム4bの上端部はそれぞれ、下流側に位置する傾動アーム4cの支軸15より高い位置まで延設され、左右の傾動アーム4bの上端部の間に支軸13を介して重錘6が配置されている。左右の傾動アーム4b,4cがそれぞれ支軸14,15を中心に回動することにより、左右の水平アーム4および、これらの間に軸支された水車3などが昇降する。
高さ調節機構9は、水路1内の水流Rにより昇降機構4を上昇方向に付勢するフロート5と、昇降機構4を上昇方向に付勢する重錘6と、で形成されている。即ち、水路1内の水流Rでフロート5に生じる浮力により昇降機構4を上昇させる方向に付勢し、重錘6は自重により傾動アーム4bの上端部を下方へ付勢することにより、昇降機構4を上昇させる方向へ付勢する。
以上のような構成とすれば、水路1内に起伏可能に配置された堰上げ部材2によって水流Rが堰き止められることによって水面落差Dが形成され、この水面落差Dによって堰上げ部材2を越流する水流R1が発生し、この水流R1によって水車3を回転させることができる。このため、水面落差が比較的小さな水路1においても水車3により比較的大きな出力を供給することができる。
また、水路1内の水位の上下動に応じて高さ調節機構9が昇降機構4を作動させことにより、水車3が昇降するとともに堰上げ部材2の上縁部2aが昇降することで堰上げ部材2が起伏するため、水流Rが増減して水路1内の水位が上下動することがあっても、堰上げ部材2の堰き止め作用により略一定の水面落差Dを形成することができる。即ち、堰上げ部材2に加わる水流Rの水圧は、堰上げ部材2を支持する昇降機構4を下降させる方向に作用するが、高さ調節機構9が昇降力のバランスを自動調整して昇降機構4を上下動させることにより、水面落差Dを略一定に保つことができる。従って、水路1内の水位が上下動することがあっても、水車3は、ほぼ一定状態で回転することとなり、安定した出力を得ることができる。
さらに、堰上げ部材2は合成ゴムで形成され、可撓性および伸縮性を有しているため、昇降機構4の上下動に順応して昇降可能であり、水流Rの水圧を受けて下流側に凸形状に変形した状態を保つため、どの高さ位置においても確実な堰き止め作用を発揮する。この場合、水位の変動による昇降機構4の昇降動作に伴って堰上げ部材2が伸縮可能であるため、昇降機構4に軸支されている水車3を安定した姿勢で昇降させることができ、常に安定した稼働状態を得ることができる。
また、昇降機構4は、水路1内の水位の変動に応じて上下動するフロート5および重錘6の重量によって作動するため、水位変化に的確に対応することができる。また、昇降機構4を上昇方向に付勢する重錘6がフロート5の浮力を補助する機能を発揮するため、フロート5の浮力不足をカバーすることができ、フロート5の小型化を図ることができる。さらに、昇降機構4は平行四辺形に基づく四節リンク機構を形成しているため、水車3および堰上げ部材2を常に安定した姿勢で昇降および起伏させることができる。なお、重錘6の重量を大きくすると堰上げ部材2によって形成される水面落差Dが大きくなり、重量を小さくすると水面落差Dが小さくなる傾向がある。そのほか、水動力装置10は、既設の水路施設物を改造することなく搬入設置することができるため、全国的に存在する既設の水路に対して広く利用することができる。
次に、図3〜図5を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。図3は本発明の第2実施形態である水動力装置を示す垂直断面図、図4は図3に示す水動力装置を構成する水車および堰上げ部材を示す概略構成図、図5は図3に示す水動力装置を用いた除塵施設を示す垂直断面図である。なお、図3〜図5において、図1,図2と同じ符号を付している部分は、第1実施形態の水動力装置10の構成部分と同じ機能、効果を発揮する部分であり、説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態の水動力装置20においては、水車3の外周3aと近似した凹曲面部21aを有する補助フロート21が水車3の下方に配置されている。水車3の支軸12方向の長さと補助フロート21の同方向の長さとは略等しく、補助フロート21の内部は空洞であり、浸水不能の水密構造であるため、フロート6と同様、水流Rで生じる浮力により水車3を上昇させる方向に付勢する。また、補助フロート21の凹曲面部21aは、ここを越流する水流を水車3の外周に沿って流下させる機能を有している。
合成ゴム板で形成された堰上げ部材2の下流側の面には、四角管状をした複数のフロート部材22が水流Rの流下方向と直交する方向(水路1の幅方向)に取り付けられ、堰上げ部材2の下縁部2は、円管状のフロート管27を介して水路1の底盤1bに係止されている。フロート部材22およびフロート管27の内部はいずれも空洞であり、浸水不能の水密構造をなしている。フロート管27は、水路1の底盤1bにその幅方向に沿って固着されたH型鋼製の固定部材26に沿って配置され、フロート管27を直径方向に貫通する係止孔27aに係止されたワイヤ23によって固定部材26に係止されている。ワイヤ23の基端側は、底盤1bに軸支された滑車25を経由して、水路1の側壁1a上に配置された巻き取り機24に巻かれた状態でロックされている。
巻き取り機24は、水路1を流れる水量が一定値を超えるとロックが自動解除され、ワイヤ23が繰り出し可能となるため、図5に示すように、堰上げ部材2の下縁部2bを係止しているフロート管27が固定部材26から離脱し、その堰き止め機能が喪失される。このとき、堰上げ部材2の上縁部2aは補助フロート21に係止されているため、堰上げ部材2は水流Rに従って下流側へ棚引いたような状態となる。
水動力装置20の機能、効果は、図1,図2に示した水動力装置10と同様であるが、補助フロート21を備えているため、安定した越流水を得ることができ、水車の効率向上を図ることができる。また、堰上げ部材2にフロート部材22を設けているため、堰上げ部材2自体にも浮力が付加され、堰上げ部材2の変位を少なくすることができる。
さらに、水路1内を流れる水位が設定値を超えると、巻き取り機24のロックが自動解除されてワイヤ23が繰り出され、堰上げ部材2の堰き止め機能が喪失する水路開放機構を設けている。従って、集中豪雨などで水路1の流水が設定値より増大する事態が生じたとき、この水路開放機構が堰上げ部材2の堰き止め機能を喪失させ、水路1を開放するため、水路1からの溢水を回避することができる。
次に、図5を参照して、水動力装置20を用いた除塵施設について説明する。図5に示すように、水動力装置20の上流側の水路1内に、通水性を有する無端ベルト状の除塵用回転部材31を備えた除塵機32が、下流に向かって上り勾配をなす状態で配置されている。水動力装置20を構成する水車3の回転力はチェーン29を介して減速機28に伝達され、減速機28の回転力はチェーン30を介して除塵機32に伝達される。水車3は比較的強力な回転力を発生するため、外部からの電力供給などを受けることなく、水動力装置20の水車3の回転力のみによって除塵機32を作動させることができる。
以上の実施形態における水動力装置10,20は、水路1の平面視状態において、それぞれの水車3の支軸12が、水路1内の水流Rの流下方向と直交する方向に配置されているが、本発明はこれらに限定するものではない。従って、例えば、水車3の支軸12方向のサイズが水路1の幅1wより大である場合、水車3の支軸12が水路1内の水流Rの流下方向と斜めに交差する方向に配置することもできる。
本発明の水動力装置は、水力発電機の駆動源、水路内除塵施設あるいは揚水ポンプの動力源などとして、広く利用することができる。
本発明の第1実施形態である水動力装置を示す一部切欠斜視図である。 図1に示す水動力装置の垂直断面図である。 本発明の第2実施形態である水動力装置を示す垂直断面図である。 図3に示す水動力装置を構成する水車および堰上げ部材を示す概略構成図である。 図3に示す水動力装置を用いた除塵施設を示す垂直断面図である。
符号の説明
1 水路
1a 側壁
1b 底盤
1w,2w 幅
2 堰上げ部材
2a 上縁部
2b 下縁部
3 水車
3a 外周
4 昇降機構
4a 水平アーム
4b,4c 傾動アーム
5 フロート
6 重錘
7,8 管状体
9 高さ調節機構
10,20 水動力装置
11 取付部材
12,13,14,15,16 支軸
21 補助フロート
21a 凹曲面部
22 フロート部材
23 ワイヤ
24 巻き取り機
25 滑車
26 固定部材
27 フロート管
28 減速機
29,30 チェーン
D 水面落差
R,R1 水流
S 矢線

Claims (5)

  1. 水路内を流れる水流の一部を堰き止めて水面落差を形成するため前記水路内に起伏可能に配置され少なくとも一部が可撓性部材で形成された堰上げ部材と、前記堰上げ部材を越流する水流で回転する水車と、前記水車を回転可能に軸支した状態で前記水車を昇降可能且つ前記堰上げ部材の一部を起伏可能に支持する昇降機構と、前記水路内の水位の上下動に応じて前記昇降機構を作動させる高さ調節機構と、を備えたことを特徴とする水動力装置。
  2. 前記高さ調節機構として、前記水路内の水流により前記昇降機構を上昇方向に付勢するフロートと、前記昇降機構を上昇方向に付勢する重錘と、を設けた請求項1記載の水動力装置。
  3. 前記昇降機構として、四節リンク機構を設けた請求項1または2記載の水動力装置。
  4. 前記堰上げ部材の少なくとも一部を、伸縮性を有する板材で形成した請求項1〜3のいずれかに記載の水動力装置。
  5. 前記水路内の水位が設定値を超えると、前記堰上げ部材の堰き止め機能を喪失させる水路開放機構を設けた請求項1〜4のいずれかに記載の水動力装置。
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