JP2007056370A - 電車線用銅合金導体の製造方法及び電車線用銅合金導体 - Google Patents

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Abstract

【課題】高導電率かつ高強度の電車線用銅合金導体を提供することにある。
【解決手段】銅母材に対し、錫を添加して溶解を行い、銅合金の溶湯を形成し、前記溶湯を形成し、前記溶湯を所定の温度で鋳造した鋳造材に熱間圧延加工を多段に施して荒引線にし、その荒引線に冷間加工を施して電車線用銅合金導体を製造する方法において、上記鋳造温度を800℃〜900℃とし、かつ、上記熱間圧延加工の最終圧延を、500℃を超え600℃以下の圧延温度で行う製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、パンタグラフ等を介して電車に給電を行う電車線(トロリ線)用銅合金導体の製造方法及び電車線用銅合金導体に関するものである。
電車線(トロリ線)用銅合金導体には、導電率が高い硬銅線または耐摩耗性、耐熱性を有する銅合金材(銅合金線)が使用されている。銅合金材としては、銅母材に錫(Sn)を添加し、そのSnの含有量を0.3重量%に調整したものが主流であり、新幹線を始めとする架線に採用されている。
近年では、電車の高速化が進められており、電車線の架線張力を高める必要があるので、電車線は1.5t張力架線から2.0t張力架線に変更されている。
そこで、これらの高張力架線に耐えうる高強度の電車線用銅合金導体が求められてきている。
高強度の電車線用銅合金導体としては、析出強化型合金を使用したものが製品化されている。また、Cu−Sn合金系のような固溶強化型合金を使用したものがある。
固溶強化型合金を使用した従来のトロリ線の製造方法としては、Snを0.4乃至0.7重量%含有した銅合金の鋳造材を、700℃以上の温度で熱間圧延して圧延材とし、この圧延材を500℃以下の温度で仕上げ圧延して荒引線とし、この荒引線を伸線加工してトロリ線を製造する方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
特開平6−240426号公報(表1)
しかしながら、析出強化型合金を使用したものは、材料ロットが小さく、しかも中間工程において熱処理を行うなど、作業性が悪いばかりか製造コストが高いなどのデメリットがある。したがって、電車線のように5年寿命の消耗製品には不向きである。
また、固溶強化型合金を使用したものは、Sn含有量を多くすればするほど強度向上を図ることができるが、その反面、極端に導電率が低下してしまい、電流容量の低下が避けられないので、やはり電車線としては不向きである。現状のSn合金系でSn含有量を多くして、必要な導電性を損なうことなく、高張力架線に必要な強度を有するものを製造することは非常に困難である。
特許文献1に記載された高強度銅合金トロリ線の製造方法では、添加元素がSnだけなので、仕上げ圧延を500℃以下の圧延温度で行って必要な強度を得ているが、Snの含有量が0.4乃至0.7重量%と多いので、強度は高いものの導電率は低くなってしまう。
高強度かつ高導電率の電車線を得るためには、Snと共にさらに別の元素を添加することが考えられる。この場合、仕上げ圧延(最終圧延)を500℃以下の温度で行うと、圧延時に圧延材の割れが多くなるので、荒引線の外観品質が極端に低下し、延いては電車線の強度が極端に低下するという問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、高導電率かつ高強度の電車線用銅合金導体を提供することにある。
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、請求項1の発明は銅母材に対し、錫を添加して溶解を行い、銅合金の溶湯を形成し、前記溶湯を形成し、前記溶湯を所定の温度で鋳造した鋳造材に熱間圧延加工を多段に施して荒引線にし、その荒引線に冷間加工を施して電車線用銅合金導体を製造する方法において、上記鋳造温度を800℃〜900℃とし、かつ、上記熱間圧延加工の最終圧延を、500℃を超え600℃以下の圧延温度で行うことを特徴とする電車線用銅合金導体の製造方法である。
請求項2の発明は、上記銅母材は、酸素含有量が0.01〜0.1重量%である請求項1記載の電車線用銅合金導体の製造方法である。
請求項3の発明は、上記銅母材に、上記添加元素と共にさらにリンを添加し、そのリンの含有量を2〜40ppmに調整した請求項2記載の電車線用銅合金導体の製造方法である。
請求項4の発明は、上記銅合金材に、上記荒引線の線径が8〜30mmとなるように熱間圧延加工を多段に施す請求項1〜3いずれかに記載の電車線用銅合金導体の製造方法である。
請求項5の発明は、上記冷間加工は、加工度を50%以上とし、かつ線材温度が100℃以下となるように冷間加工装置の冷却を行う請求項1〜4いずれかに記載の電車線用銅合金導体の製造方法である。
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載された製造方法を用いて作製した電車線用銅合金導体である。
以上説明したことから明らかなように、本発明によれば、次のような優れた効果を発揮する。
(1)銅母材に対し、錫を添加して溶解を行い、銅合金の溶湯を形成し、溶湯を形成し、溶湯を所定の温度で鋳造した鋳造材に熱間圧延加工を多段に施して荒引線にし、その荒引線に冷間加工を施して電車線用銅合金導体を製造する方法において、鋳造温度を800℃〜900℃とし、かつ、熱間圧延加工の最終圧延を、500℃を超え600℃以下の圧延温度で行い、低温鋳造、低温圧延加工によって高強度の荒引線にし、その荒引線に加工熱を抑えた冷間加工を施しているので、導電率の大幅な低下を招くことなく高い引張強度を有する電車線を得ることができる。
(2)既存あるいは慣用の製造コストが低い連続鋳造圧延設備や冷間加工装置を使用できるので、高導電率かつ高強度の電車線を低コストで製造できる。
以下、本発明の好適実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
図1は、本発明の好適実施の形態である電車線用銅合金導体の製造方法の工程を示すフローチャートである。
図1に示すように本発明に係る電車線(トロリ線)用銅合金導体の製造方法は、銅母材に添加元素を添加して溶解し、銅合金の溶湯にする溶解工程(F1)と、銅合金の溶湯を鋳造して鋳造材にする鋳造工程(F2)と、その鋳造材に熱間圧延加工を多段に施して圧延材にする熱間圧延工程(F3)と、その圧延材を洗浄し巻取って荒引線にする洗浄・巻取り工程(F4)と、巻き取った荒引線を送り出し、その荒引線に冷間加工を施して電車線用銅合金導体にする冷間(伸線)加工工程(F5)とを有している。電車線用銅合金導体は、その後用途に応じた所望形状の電車線に加工される。
溶解工程(F1)から洗浄・巻取り工程(F4)までは、既存または慣用の連続鋳造圧延設備を用いて行う。また、冷間加工工程(F5)は、既存または慣用の冷間加工装置を用いて行う。
より詳細に説明すると、溶解工程(F1)は、酸素含有量が0.01〜0.1重量%の銅母材に、錫(Sn)、インジウム(In)のいずれか一種あるいは二種を添加し、その添加元素の含有量を0.15〜0.8重量%に調整して溶解し、銅合金の溶湯にする工程である。
添加元素のInとAgは、Snと同じように強度を向上させる元素であり、Snよりも導電率の低下が少ない特徴がある。よって、本実施の形態では、Snの含有量を0.4重量%未満とし、Inの含有量を増やし、導電率の低下を避けるようにしている。
例えば、SnとInの総含有量が0.15重量%未満では、製造条件を変えても強度向上の効果は認められない。また、SnとInの総含有量が0.8重量%を超えると、材料の変形抵抗が高くなるので、連続鋳造圧延設備における負荷が大きくなるばかりか、電車線としての最低導電率である60%を確保できなくなる。したがって、本実施の形態では、SnとInの総含有量を0.15〜0.8重量%の範囲で適切に調整することにより、実施例で後述するように、強度を向上させると共に導電率を60%IACS〜90%IACSの範囲で自在に調整することが可能である。
また、添加元素の含有量が多くなると熱間圧延加工時における銅線表面傷が多くなる傾向にある。よって、添加元素の含有量が多い場合(例えば0.5重量%以上)には、その熱間圧延加工時の銅線表面傷を減少させるため、銅母材に、上記添加元素(例えばSnとIn)と共にさらにリン(P)を添加し、そのPの含有量を2〜40ppmに調整して溶解し、銅合金の溶湯にする。Pの含有量が2ppm未満では銅線表面傷を低減させる効果はあまり認められず、Pの含有量が40ppmを超えると導電率が低下してしまう。
鋳造工程(F2)は、銅合金の溶湯を、通常の鋳造温度(900℃を超え1100℃未満)よりも低い800℃〜900℃の鋳造温度で鋳造して鋳造材にする工程である。
熱間圧延工程(F3)は、鋳造材に、圧延初期は700℃〜800℃の圧延温度で熱間圧延加工を施し、最終圧延は500℃を超え600℃以下の圧延温度で熱間加工を施して圧延材にする工程である。熱間圧延加工は、荒引線の強度を高めるために、加工度を80%〜90%となるようにしている。
銅合金の溶湯を800℃〜900℃の低温で鋳造し、しかも最終圧延を500℃を超え600℃以下の低温条件で熱間圧延加工することにより、荒引線の組織を微細化することができ、線材強度を向上させることが可能である。
例えば、低温鋳造で最終圧延が620℃の圧延温度では、荒引線の組織の微細化が認められず、大幅な機械的強度の向上は認められなかった。これに対し、最終圧延の圧延温度が500℃以下の低温では、Sn、Inの含有量が多く、しかも含有元素が三元素になると、圧延時の割れが多くなり、荒引線の外観品質が極端に低下する。よって、最終圧延の圧延温度は500℃を超え〜600℃以下が最適である。
洗浄・巻取り工程(F4)は、圧延材を洗浄し巻き取って荒引線にする工程である。巻き取った荒引線の線径φは、例えば、8〜30mmとなるように、より好ましくは22〜25mmとなるようにしている。
冷間加工工程(F5)は、巻き取った荒引線を送り出し、その荒引線に、加工度を50%以上とし、かつ連続伸線時における加工熱による強度低下の影響をより少なくするため、線材温度が100℃以下となるようにダイスなどの冷間加工装置の冷却を行う冷間加工を施して、電車線用銅合金導体にする工程である。
電車線の強度を向上させるためには、熱間圧延加工での加工度を高めて荒引線の強度を向上させる必要があると共に、冷間加工における加工度も50%以上を確保する必要がある。
これらの条件を満たす荒引線の線径φは、上述したように22〜25mmが最適である。線径φが25mmを超えると、つまり熱間圧延加工での加工度が小さいと、電車線に加工した際の大きな強度向上が得られなくなると共に、冷間加工時の加工硬化によって伸び特性が低下するためである。
電車線用銅合金導体は、その後用途に応じた所望形状の電車線、例えば、図2に示すような電車線21に加工される。電車線21は、電車線本体22の両側部にハンガイヤー取付用のイヤ溝23a,23bが形成されている。電車線本体22の下側の外周面は、電車のパンタグラフが摺動する部位である大弧面24である。電車線本体22の上側の外周面は小弧面25である。電車線21の断面積は110mm2 〜170mm2 である。
以上説明した本発明に係る電車線用銅合金導体の製造方法を用いれば、後述する実施例で明らかになるように、導電率が60%IACS以上の高導電率であり、かつ高張力架線で必要とされる引張強度が420MPa以上の高強度の電車線を製造できる。
このように、本発明に係る電車線用銅合金導体の製造方法は、銅母材に、Sn、In、Agのいずれか一種あるいは二種を添加し、その添加元素の含有量を0.15〜0.8重量%に調整して銅合金の溶湯にし、その溶湯を低温鋳造(鋳造温度が800〜900℃)と、低温圧延加工(最終圧延温度が500℃を超え600℃以下)とによって高強度の荒引線にし、その荒引線に加工熱を抑えた冷間加工を施しているので、導電率の大幅な低下を招くことなく高い引張強度を有する電車線を得ることができる。
また、本発明に係る製造方法は、既存あるいは慣用の製造コストが低い連続鋳造圧延設備や冷間加工装置を使用できるので、高導電率かつ高強度の電車線を低コストで製造できる。
本発明に係る製造方法の特徴の一つは、実施例で後述するように、銅母材に添加するSnの含有量を、現状と同じあるいは特許文献1に記載された高強度銅合金トロリー線の製造方法よりも少ない値(0.3重量%)に調整したにもかかわらず、低温鋳造と低温圧延加工によって荒引線の組織を微細化することで、高導電率かつ高強度の電車線用銅合金導体を低コストで製造することにある。これは、銅母材に添加するSnの含有量を多くすると、強度が高くなるものの、導電率が低下したりコストが高くなったりする点を考慮したからである。
本発明の効果を検証するために、添加元素の含有率を様々に変え、図2で説明した数種の電車線21を作製し、その引張強度(MPa)と、導電率(%IACS)と、外観との三つの特性を調べた。電車線21に加工する前の荒引線の線径φは23mmとし、電車線21の断面積は170mm2 (170SQ)とした。目標の導電率は60%IACS以上、かつ引張強度は420MPa以上とした。
(試料1〜12)
試料1〜12は、いずれも銅母材に添加するSn含有量を0.3重量%に固定した。これは、現状のCu−Sn系合金を用いた電車線と同じである。
試料1〜4は、いずれも銅母材に添加するIn含有量を0.1重量%とし、銅母材の酸素(O2 )含有量をそれぞれ10,50,340,1000ppmとした。重量%は、ほぼ1/10000ppmである。試料5,6は、いずれもIn含有量を0.2重量%とし、銅母材にSn,Inと共に添加するP含有量をそれぞれ0,2ppmとし、銅母材の酸素含有量をそれぞれ400,320ppmとした。試料7は、In含有量を0.3重量%、P含有量を10ppm、O2 含有量を380ppmとした。試料8は、In含有量を0.4重量%、P含有量を21ppm、O2 含有量を380ppmとした。試料9〜11は、いずれもIn含有量を0.5重量%とし、P含有量をそれぞれ38,51ppm,1ppm以下とし、O2 含有量をそれぞれ400,387,410ppmとした。試料12は、In含有量を0.6重量%とした。その特性結果を表1に示す。
Figure 2007056370
表1に示すように、試料1〜11は、In含有量が0.1〜0.5重量%なので、In含有量が多いほど引張強度(438〜507MPa)が高く、導電率(84〜62%IACS)が低くなることがわかる。特に、試料8〜11は、Sn含有量が0.3重量%、In含有量が0.4重量%以上なので、高張力架線として最適な500MPa以上となっている。試料9〜11は、SnとInの総含有量が0.8重量%になっているが、導電率が60%IACS以上を確保している。したがって、銅母材にSnと共にInを添加すると、導電率の低下を抑えつつ強度を向上できることがわかる。試料12は、SnとInの総含有量が0.9重量%なので、連続鋳造圧延設備における負荷が大きく、荒引線および電車線の製造は困難あるいは不可であった。
また、試料1,2は、銅母材のO2 含有量が低酸素銅ベースと同様の50ppm以下なので、荒引線および電車線の外観に細かな傷が認められた。一方、試料4においては、銅母材のO2 含有量が1000ppmと多くなっているが、荒引線および電車線の外観に細かな傷が若干認められた。したがって、O2 含有量が100〜1000ppm(0.01〜0.1重量%)の銅母材を使用するとよい。
さらに、試料5と試料6を比較すると、P含有量が0ppmの試料5は外観が可であったのに対し、P含有量が2ppmの試料6は良となったので、銅母材にSn、Inと共にPを添加すると外観を向上できることがわかる。一方、P含有量が50ppmの試料10は、外観は良となるものの導電率の低下が大きくなった。したがって、銅母材にSn、Inと共にPを添加する場合は、P含有量を2〜40ppmに調整するとよい。
次に、鋳造温度と最終圧延温度を様々に変えて線径の異なる荒引線を作製し、その荒引線に冷間加工を施して製造した電車線21の引張強度(MPa)と伸び(%)の特性を調べた。電車線21の断面積は170mm2 (170SQ)とした。目標の引張強度は420MPa以上とした。
(実施例1〜3)
実施例1〜3は、いずれも、銅母材に添加するSn含有量を0.3重量%、鋳造温度を通常よりも低温の880℃、最終圧延温度を560℃に固定した。また、実施例1〜3は、荒引線径をそれぞれ23,25,30mmとし、O2 含有量をそれぞれ320,380,410ppmとした。
(比較例1〜4)
比較例1〜4は、いずれも銅母材に添加するSn含有量を0.3重量%とした。また、比較例1〜4は、荒引線径をそれぞれ23,23,25,30mmとし、O2 含有量をそれぞれ400,380,380,400ppmとした。比較例2は、鋳造温度を880℃とし、最終圧延温度を380℃とした。比較例1,3,4は、いずれも鋳造温度を通常温度の920℃とし、最終圧延温度を620℃とした。
実施例1〜3と比較例1〜4の特性結果を表2に示す。
Figure 2007056370
表2に示すように、荒引線径が23mmの実施例1と比較例1を比較すると、実施例1は、鋳造温度が通常よりも低温の880℃、かつ最終圧延温度が500℃を超え600℃以下の560℃なので、鋳造温度が通常温度の920℃、かつ最終圧延温度が600℃を超える620℃の比較例1よりも、電車線の引張強度が15MPa向上したことがわかる。電車線の伸びは、実施例1と比較例1でほぼ同等である。
同様に、荒引線径が同じ実施例2と比較例3、実施例3と比較例4を比較すると、実施例2,3は、比較例3,4よりも電車線の引張強度がそれぞれ18,15MPa向上したことがわかる。電車線の伸びは、実施例2と比較例3、実施例3と比較例4でほぼ同等である。
また、実施例1〜3の引張強度を比較するとわかるように、荒引線径を23mmから25mm,30mmと大径化すると、伸線加工の加工度を高めても、引張強度および伸びが徐々に低下する傾向にある。これは、上述したように、荒引線径が25mmを超えると、熱間圧延加工での加工度が小さいことから、電車線に加工した際の大きな強度向上が得られなくなると共に、冷間加工時の加工硬化によって伸び特性が低下するためである。したがって、荒引線の線径は22〜25mmが最適である。
比較例2は、鋳造温度が880℃、かつ最終圧延温度が500℃以下の380℃なので、連続鋳造圧延設備の鋳造、圧延加工時の負荷が大きく、電車線の製造が不可能となる。
実施例で明らかになったように、本発明に係る電車線用銅合金導体の製造方法は、現状の電車線に使用されているCu−Sn系合金を主体として、銅母材に、Snと共にSnと同等の強度を有するInを適宜添加することで、導電率を高く保ちながら高い引張強度を有する電車線用銅合金導体を低コストで製造できる点に特徴がある。
電車線としてのCu−Sn系合金は、高い耐摩耗性能を有しているので、その性能を損なわないために、銅母材に添加するSn含有量は、少なくとも現状と同じ0.15重量%以上が必要である。
高張力架線に必要不可欠な引張強度は電車線の摩耗限度を考慮すると420MPa以上、より好ましくは500MPa以上であるので、銅母材にSnと共に添加するIn含有量は0.4重量%以上が最適である。しかし、Inは希少金属であるために高価であり、コストメリットを出すためには、その含有量を最小限にする必要がある。
また、銅母材に添加するSnとInの総含有量が0.8重量%を超えると、連続鋳造材の硬度が高くなり、連続鋳造圧延設備の圧延ロールに対する負荷が極端に大きくなってしまい、製品化することが難しくなる。
したがって、高導電率かつ高強度の電車線を製造するためには、実施例で言えば試料8,9のように、Sn含有量が0.3重量%、In含有量が0.4重量%もしくは0.5重量%が最適である。
連続鋳造圧延加工工程においては、低温鋳造、低温圧延加工を施すことにより、荒引線の組織を微細化することができる。しかし、鋳造圧延時の極端な低温化を図ると、材料の変形抵抗が高くなることによって設備への負荷が大きくなり量産化が困難になる。
したがって、実施例で言えば、実施例1,2のように、880℃の低温鋳造とし、最終圧延温度は560℃が最適である。
上記実施例では、銅母材にSnとInを添加した例で説明したが、銅母材にSnとAgを添加しても同様の効果が得られる。
また、銅母材に添加すると、InやAgと同じように高い導電率を保ちつつ強度向上を図れる添加元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)がある。例えば、銅合金材として、酸素含有量が0.01〜0.1重量%の銅母材に、Sn、In、Mg、Bのいずれか一種あるいは二種を添加し、その添加元素の含有量を0.15〜0.8重量%に調整したものを使用してもよい。上述した実施例におけるInをMgに置き換えた場合、MgがInよりも安価なので、ほぼ同じ効果が得られると共に、製造コストをさらに低減することが可能となる。
上記実施の形態では、鋳造温度を通常の温度よりも低くしたが、鋳造温度を極端に下げた場合、鋳造材に外傷が発生する可能性が高くなるので、鋳造温度を通常の温度で行うようにしてもよい。
本発明の好適実施の形態を示すフローチャートである。 本発明に係る電車線用銅合金導体の製造方法を用いて作製した電車線の一例を示す断面図である。

Claims (6)

  1. 銅母材に対し、錫を添加して溶解を行い、銅合金の溶湯を形成し、前記溶湯を形成し、前記溶湯を所定の温度で鋳造した鋳造材に熱間圧延加工を多段に施して荒引線にし、その荒引線に冷間加工を施して電車線用銅合金導体を製造する方法において、
    上記鋳造温度を800℃〜900℃とし、かつ、上記熱間圧延加工の最終圧延を、500℃を超え600℃以下の圧延温度で行うことを特徴とする電車線用銅合金導体の製造方法。
  2. 上記銅母材は、酸素含有量が0.01〜0.1重量%である請求項1記載の電車線用銅合金導体の製造方法。
  3. 上記銅母材に、上記添加元素と共にさらにリンを添加し、そのリンの含有量を2〜40ppmに調整した請求項2記載の電車線用銅合金導体の製造方法。
  4. 上記鋳造材に、上記荒引線の線径が8〜30mmとなるように熱間圧延加工を多段に施す請求項1〜3いずれかに記載の電車線用銅合金導体の製造方法。
  5. 上記冷間加工は、加工度を50%以上とし、かつ線材温度が100℃以下となるように冷間加工装置の冷却を行う請求項1〜4いずれかに記載の電車線用銅合金導体の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載された製造方法を用いて作製した電車線用銅合金導体。
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