JP2007197764A - 銅合金トロリ線およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高温での機械的強度(特に引張強さ)が十分に高く、溶断しにくいトロリ線およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと可避不純物からなる銅合金溶湯を溶製し(第1工程)、該銅合金溶湯から荒引線を鋳造し(第2工程)、前記荒引線を700〜1000℃で熱処理し(第3工程)、該熱処理後の荒引線を冷間加工してトロリ線とし(第4工程)、前記冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を300〜600℃で熱処理する(第5工程)ことで、高温での機械的強度(特に引張強さ)が十分に高く、溶断しにくいトロリ線が得られる。
【選択図】なし
【解決手段】Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと可避不純物からなる銅合金溶湯を溶製し(第1工程)、該銅合金溶湯から荒引線を鋳造し(第2工程)、前記荒引線を700〜1000℃で熱処理し(第3工程)、該熱処理後の荒引線を冷間加工してトロリ線とし(第4工程)、前記冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を300〜600℃で熱処理する(第5工程)ことで、高温での機械的強度(特に引張強さ)が十分に高く、溶断しにくいトロリ線が得られる。
【選択図】なし
Description
本発明は、トロリ線およびその製造方法に関し、詳しくは、高温度での機械的強度が著しく向上した銅合金トロリ線およびその製造方法に関する。
トロリ線は、電車の架線の最下部に配置され、パンタグラフと接触して電車に電力を送るための電線である。トロリ線に要求される特性としては、一般に、強度、導電率及び耐摩耗性などが挙げられる。従来のトロリ線の代表例としては、以下の(1)〜(6)が挙げられる。
(1)硬銅トロリ線:導電性は高いが、強度は低く、耐摩耗性に劣るという欠点がある(非特許文献1参照)。
(2)Cu−0.3%Sn合金トロリ線:導電性、強度、耐摩耗性とも比較的良好である(特許文献1参照)。
(3)PHCトロリ線:Cr、Zrなどの析出物の効果によって強度と導電性とを両立したトロリ線である。Cu−0.3%Sn合金トロリ線の約2倍の耐摩耗性を有している。しかし、連続鋳造圧延法の適用が困難であること、熱処理が複数回必要であること等により、Cu−Sn合金トロリ線と比較して高価となる(特許文献2および3参照)。
(4)鋼芯入りトロリ線:純銅の中心に鋼芯を配した構造を有するトロリ線である。該トロリ線は、鋼芯を有することから引張強度は高いが、外周が純銅であるため、初期の耐摩耗性は硬銅トロリ線と同等であり、劣る(特許文献4参照)。
(5)Cu−0.4%Sn合金トロリ線:Sn添加量を0.4%程度まで増加させ、さらに冷間加工度を上げることによって、高強度化を可能にしたトロリ線である(特許文献5参照)。
(6)その他:Cu−Ni−Si−Ag合金トロリ線(特許文献6参照)、Cu−P−(CoまたはMnまたはNi)合金トロリ線(特許文献7参照)などがある。
(2)Cu−0.3%Sn合金トロリ線:導電性、強度、耐摩耗性とも比較的良好である(特許文献1参照)。
(3)PHCトロリ線:Cr、Zrなどの析出物の効果によって強度と導電性とを両立したトロリ線である。Cu−0.3%Sn合金トロリ線の約2倍の耐摩耗性を有している。しかし、連続鋳造圧延法の適用が困難であること、熱処理が複数回必要であること等により、Cu−Sn合金トロリ線と比較して高価となる(特許文献2および3参照)。
(4)鋼芯入りトロリ線:純銅の中心に鋼芯を配した構造を有するトロリ線である。該トロリ線は、鋼芯を有することから引張強度は高いが、外周が純銅であるため、初期の耐摩耗性は硬銅トロリ線と同等であり、劣る(特許文献4参照)。
(5)Cu−0.4%Sn合金トロリ線:Sn添加量を0.4%程度まで増加させ、さらに冷間加工度を上げることによって、高強度化を可能にしたトロリ線である(特許文献5参照)。
(6)その他:Cu−Ni−Si−Ag合金トロリ線(特許文献6参照)、Cu−P−(CoまたはMnまたはNi)合金トロリ線(特許文献7参照)などがある。
上記のように、従来からトロリ線として種々の組成、構造のものが提案されている。しかし、エアセクション箇所に列車が停止すると、トロリ線が溶断するという問題を発生することがある。これは、エアセクション箇所に列車が停止し、車両動揺により、異なる電源に接続されたトロリ線からパンタグラフが離線すると、トロリ線間の電位差によってアークが発生して、その結果、トロリ線が溶断するものである。従って、列車がエアセクション箇所に停止してアークが発生しても溶断が生じにくい高耐熱性のトロリ線が求められている。
本発明は、上記の事情に鑑み、高温での機械的強度(特に引張強さ)が十分に高く、溶断しにくいトロリ線およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、Ni、Si及びCrを添加元素とする特定組成の銅合金から、荒引線を形成し、荒引線を特定温度で熱処理した後、冷間加工してトロリ線とし、冷間加工途上の荒引線又は冷間加工後のトロリ線に特定温度での熱処理を施すことにより、トロリ線として必要な導電性を有しながら機械的強度が大幅に向上して、高温での引張強さが極めて高いトロリ線を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、Ni、Si及びCrを添加元素とする銅合金(Cu−Ni−Si−Cr合金)についてはCOPPER DEVELOPMENT ASSOCIATION INC.社のホームページ(非特許文献2)等に記載されているように公知であるが、トロリ線への適用については今まで検討されていなかった。
なお、Ni、Si及びCrを添加元素とする銅合金(Cu−Ni−Si−Cr合金)についてはCOPPER DEVELOPMENT ASSOCIATION INC.社のホームページ(非特許文献2)等に記載されているように公知であるが、トロリ線への適用については今まで検討されていなかった。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]銅合金よりなるトロリ線であって、該銅合金が、Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる、トロリ線。
[2]300℃での引張強さが400MPa以上である、[1]記載のトロリ線。
[3]Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金溶湯を溶製する工程(第1工程)、前記銅合金溶湯から荒引線を鋳造する工程(第2工程)、前記荒引線を700〜1000℃で熱処理する工程(第3工程)、該熱処理後の荒引線を冷間加工してトロリ線を得る工程(第4工程)及び前記冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を300〜600℃で熱処理する工程(第5工程)を含む、トロリ線の製造方法。
[4]荒引線の冷間加工における冷間加工度が40〜90%である、[3]記載のトロリ線の製造方法。
[1]銅合金よりなるトロリ線であって、該銅合金が、Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる、トロリ線。
[2]300℃での引張強さが400MPa以上である、[1]記載のトロリ線。
[3]Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金溶湯を溶製する工程(第1工程)、前記銅合金溶湯から荒引線を鋳造する工程(第2工程)、前記荒引線を700〜1000℃で熱処理する工程(第3工程)、該熱処理後の荒引線を冷間加工してトロリ線を得る工程(第4工程)及び前記冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を300〜600℃で熱処理する工程(第5工程)を含む、トロリ線の製造方法。
[4]荒引線の冷間加工における冷間加工度が40〜90%である、[3]記載のトロリ線の製造方法。
本発明によれば、トロリ線としての機能(強度、導電性、形状)を満たし、しかも、高温での機械的強度(特に引張強さ)が著しく向上したトロリ線を得ることができる。よって、本発明のトロリ線をエアセクション箇所に架線すると、当該箇所に列車が停止してアークが発生しても容断に至るのを軽減することができる。エアセクション箇所にてアーク発生によってトロリ線が断線すると、列車の運行が不能になり、トロリ線張替え工事が完了するまでは不通となり、鉄道の公共性を著しく阻害することになるが、本発明のトロリ線を使用することにより、アーク発生事故が生じても、安全にダイヤ通りの運行を続けることができる。
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明のトロリ線は銅合金からなり、該銅合金は、Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物とからなる。
本発明のトロリ線は銅合金からなり、該銅合金は、Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物とからなる。
本発明のトロリ線に使用する銅合金は、トロリ線としての形状を付与できる組成を有し、かつ、優れた高温強度(すなわち、高温において十分に高い機械的強度)を発現し得る組成を有している。
本発明において、トロリ線(銅合金)の強化機構は、Ni、Si及びCrの添加元素が銅素材中に析出することによる析出強化であり、析出物はNi−Si化合物、Cr化合物等である。添加元素の組成範囲はトロリ線を製造し得る組成(すなわち、トロリ線として必要な導電性、形状付与性が得られる組成)を前提として、トロリ線が優れた高温強度(すなわち、高温において十分に高い機械的強度)を発現する範囲としたものである。
本発明において、銅合金中のNi含有量が1.8重量%未満の場合は、十分に高い高温強度を得ることが困難となり、3.0重量%を超える場合は、導電性が著しく低下するとともに、トロリ線に加工することが困難になってしまう。すなわち、Niを適量含有することでトロリ線の高温強度が向上するという効果が得られる。Niの含有量は好ましくは2.0〜3.0重量%であり、より好ましくは2.0〜2.8重量%である。
また、銅合金中のSiの含有量が0.4重量%未満の場合は十分に高い高温強度を得ることが困難になり、0.8重量%を超える場合は、導電性が著しく低下するとともに、トロリ線に加工することが困難になってしまう。すなわち、Siを適量含有することでトロリ線の高温強度が向上するという効果が得られる。Siの含有量は好ましくは0.5〜0.8重量%であり、より好ましくは0.5〜0.7重量%である。
また、銅合金中のCrの含有量が0.1重量%未満の場合は所定の高温強度を得ることが困難になり、0.8重量%を超える場合は、導電性が著しく低下するとともに、トロリ線に加工することが困難になってしまう。すなわち、Crを適量含有することでトロリ線の高温強度が向上するという効果が得られる。Crの含有量は好ましくは0.2〜0.6重量%であり、より好ましくは0.4〜0.5重量%である。
また、銅合金中の合金元素(Ni、Si、Cr)以外の残部は全て銅であることが好ましいが、実際には不可避不純物が含まれる。不可避不純物としては、例えば、鉛、砒素、ビスマス、鉄、酸素等が挙げられるが、これらの合計含有量は、得られるトロリ線の導電性低下や表面傷発生の防止等の観点から、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.2重量%以下である。特に、鉄に関しては、その含有量を0.15重量%以下にするのが望ましい。また、酸素が多く存在すると、溶解・圧延中に、Ni、Si、Crの合金元素に悪影響を及ぼす可能性があるため、酸素の含有量は0.002重量%以下に抑えるのが望ましい。
本発明のトロリ線の製造方法は、上記組成の銅合金から、トロリ線の形状を確保でき、高温強度を十分に高めることができる加工方法であれば、如何なる方法でもよいが、経済性、表面品質の安定性等の点から、上記組成の銅合金溶湯を溶製する工程(第1工程)、銅合金溶湯から荒引線を作製する工程(第2工程)、荒引線を熱処理する工程(第3工程)、熱処理後の荒引線を冷間加工する工程(第4工程)及び冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を熱処理する工程(第5工程)を経る方法が好ましい。
すなわち、まず、シャフト炉などで電気銅を溶解し、この鋼溶湯を保持炉内に流し込み所定の添加元素(合金元素)を上記の規定値内で添加して銅合金溶湯を溶製する(第1工程)。
次に、第1工程で得られた銅合金溶湯を鋳造してビレットを作製し、該ビレットを熱間押出方式又は熱間圧延方式等で荒引線に加工する(第2工程)。
荒引線の外径は、後述するように、トロリ線の最終外径に応じて適宜決定されるが、一般的には10〜30mmの範囲である。なお、当該荒引線の作製工程は、溶解鋳造と荒引線製造を連続して行うホイルベルト式やツインベルト式等の連続鋳造圧延方式で行っても良い。
荒引線の外径は、後述するように、トロリ線の最終外径に応じて適宜決定されるが、一般的には10〜30mmの範囲である。なお、当該荒引線の作製工程は、溶解鋳造と荒引線製造を連続して行うホイルベルト式やツインベルト式等の連続鋳造圧延方式で行っても良い。
次に、荒引線に熱処理を施す(第3工程)。該熱処理は、最終のトロリ線に優れた高温強度を付与する析出物を効果的に析出させるために、添加元素を固溶させる処理であり、「溶体化処理」と呼ばれる。該熱処理の温度は700〜1000℃とするのが好ましく、850〜900℃とするのがより好ましい。700℃より低い温度では添加元素の固溶が不十分となり、1000℃より高い温度では結晶粒の粗大化が著しくなり、その後の加工が困難になる。該熱処理の時間は0.1〜4時間が好ましく、より好ましくは0.2〜2時間である。熱処理時間が0.1時間未満では、添加元素の固溶が不十分となり、4時間を超えると強度の低下と結晶粒の粗大化が生じる。また、かかる荒引線の熱処理においては、加熱温度に加えて、加熱後の冷却速度を制御することが所望の特性のトロリ線を得る上で重要であり、荒引線の加熱終了時から室温(すなわち、JIS Z 0050に規定の5〜35℃)までの冷却速度は50℃/分以上が好ましく、より好ましくは100℃/分以上である。該冷却速度が50℃/分未満であると、添加元素の固溶が不十分となるため好ましくない。また、冷却速度が速すぎると、特性上の問題はないが、設備が高価となる。なお、当該荒引線の熱処理工程は、ビレットを荒引線に加工する熱間押出や熱間圧延時の加熱で代用することも可能である。
次に、上記のようにして得られた荒引線に対して冷間加工を施して加工効果による強度アップを図るとともに、所望のトロリ線形状を付与してトロリ線とする(第4工程)。ここで、冷間加工はダイスによる伸線加工が一般的であるが、圧延加工、スウェージング加工などを適応してもよい。なお、トロリ線の形状は、トロリ線の具体的な使用形態等に応じて適宜決定でき、特に限定はされないが、例えば、JIS E 2101に示されるような溝付き硬鋼トロリ線の形状、JIS E 2101に示されるような円形硬鋼トロリ線の形状などが代表例として挙げられる。なお、ここで、冷間加工とは室温(JIS Z 0050によれば5〜35℃)まで温度が低下した荒引線に上記のダイスによる伸線加工、圧延加工、スウェージング加工等を行うことである。
本発明において、荒引線の外径は最終のトロリ線の外径に基づいて決定される。すなわち、荒引線からトロリ線までの冷間加工度が好ましくは40〜90%、より好ましくは50〜85%となるように荒引線の外径を設定する。なお、最終のトロリ線の外径は一般的には10〜20mmである。冷間加工度が40%より小さいとトロリ線として必要な強度が得られにくくなり、また、冷間加工度が90%より大きいとトロリ線として必要な導電性が得られにくくなる。ここでいう「冷間加工度」とは加工前後の断面積減少率で表し、次式で求められる。
冷間加工度(%)=(荒引線断面積−トロリ線断面積)÷荒引線断面積×100
冷間加工度(%)=(荒引線断面積−トロリ線断面積)÷荒引線断面積×100
本発明では、冷間加工して得られたトロリ線(冷間加工後のトロリ線)に対して熱処理を施すことが重要である(第5工程)。この熱処理は、既出物を析出させて、トロリ線に対して高い高温強度を付与する処理であり、時効処理と呼ばれる。該熱処理の温度は300〜600℃とするのが好ましく、350〜500℃とするのがより好ましい。300℃より低い温度では析出物の析出が不十分となって、十分に高い高温強度を得ることができなくなり、600℃より高い温度では軟化が生じて強度が低下してしまう。該熱処理の時間は0.5〜4時間が好ましく、1〜3時間がより好ましい。熱処理時間が0.5時間未満では、十分に高い高温強度が得られにくく、4時間を超える場合は高い強度が得られなくなってしまう。なお、かかる熱処理は冷間加工途上の線材に施してもよい。
本発明のトロリ線は、優れた高温強度(高温において十分に高い機械的強度)を有することが特徴であり、具体的には、300℃で測定される引張強さが400MPa以上(望ましくは450MPa以上)を示す。300℃で測定される引張強さが400MPa以上を示すことで、エアセクション箇所に列車が停止し、トロリ線の離線によってアークが発生した場合も、溶断しにくい。また、引張強さ(25℃)は600MPa以上、導電率は40%以上を示し、トロリ線として必要な機能(強度、導電性)を満たす。
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明する。
下記の表1に示す組成を有する銅合金からなるトロリ線(断面積:110mm2)を、次に示す工程に従って製造した。なお、それぞれの合金元素の組成は、JIS H 3250(銅および銅合金棒)に規定された分析方法に従って決定した。
下記の表1に示す組成を有する銅合金からなるトロリ線(断面積:110mm2)を、次に示す工程に従って製造した。なお、それぞれの合金元素の組成は、JIS H 3250(銅および銅合金棒)に規定された分析方法に従って決定した。
まず、シャフト炉にて電気銅を溶解し、所定の合金元素を添加して銅合金溶湯を溶製した。次にこの銅合金溶湯を鋳造してビレットを得、このビレットを用いて熱間押出方式にて、外径が21mmの銅合金荒引線を得た。次に、得られた荒引線に対して900℃で1.5時間の加熱を行う熱処理を施した。なお、該熱処理における加熱後の冷却速度は50℃/分になるようにした。続いて、引抜きダイスによる冷間加工を施して加工硬化による強度アップをさせると共に、JIS E 2101に示されるような溝付きトロリ線形状を付与し、トロリ線を完成させた。なお、冷間加工の途上において450℃で2時間の熱処理を行った。また、冷間加工度は、(荒引線の断面積−トロリ線の断面積)÷荒引線の断面積×100=(346−110)÷346×100=68(%)であった。
こうして製造された表1に示す合金組成からなる実施例1〜3及び比較例1〜7の銅合金トロリ線(断面積:110mm2)の引張強さ、導電率及び高温引張強さを測定した。評価方法はそれぞれ以下の通りとした。
引張強さ:JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に従い25℃での引張強さを測定した。
導電率:JIS H 0505(非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法)による。
高温引張強さ:高温槽を備えた引張試験機を用いてJIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に従って25℃、100℃、200℃、300℃、400℃での引張強さを測定した。
引張強さ:JIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に従い25℃での引張強さを測定した。
導電率:JIS H 0505(非鉄金属材料の体積抵抗率及び導電率測定方法)による。
高温引張強さ:高温槽を備えた引張試験機を用いてJIS Z 2241(金属材料引張試験方法)に従って25℃、100℃、200℃、300℃、400℃での引張強さを測定した。
下記表2は実施例1〜3及び比較例1〜7の銅合金トロリ線の引張強さ、導電率及び300℃での引張強さである。
表2から、本発明のトロリ線(実施例1〜3)の引張強さは従来使用されているCu−Sn合金トロリ線(比較例7)に比して非常に高く、逆に、導電率は低くなっているが、エアセクションに用いるトロリ線としては十分な特性(導電率40%以上)を維持していることが分かる。また、300℃での引張強さは400MPa以上を達成しており、高温でも高い強度を維持していることがわかる。これに対し、比較例1〜6のトロリ線は、銅合金中の添加元素であるNi、Si及びCrのうちの少なくとも一つの含有量が本発明の規定範囲を外れていることから、300℃での引張強さが400MPa以上を達成するものは(比較例2、4、6)、導電率が40%よりも低くなって、トロリ線としての十分な導電性が得られず、導電率が40%以上を達成するものは(比較例1、3、5)、300℃での引張強さが400MPaよりも小さくなり、高温では十分な強度が得られないことが分かる。
図1は実施例1〜3及び比較例1〜7のトロリ線の温度と引張強さとの関係を示す特性線図であり、本発明のトロリ線(実施例1〜3)は従来トロリ線(比較例1)に比べて高温での引張強さが高く、300℃での引張強さは400MPaよりも遥かに高く、アークが発生しても溶断しにくいトロリ線であることが分かる。
本発明のトロリ線は、主に在来線のトロリ線としてこれまで用いられてきたCu−0.3%Sn合金に比べ、優れた高温強度を有することから、エアセクション箇所に列車が停止し、アークが発生しても、溶断しにくい。従って、万一のアーク発生事故の際に従来よりも安全でダイヤ通りの列車運行を確保することができる。
Claims (4)
- 銅合金よりなるトロリ線であって、該銅合金が、Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる、トロリ線。
- 300℃での引張強さが400MPa以上である、請求項1記載のトロリ線。
- Niを1.8〜3.0重量%、Siを0.4〜0.8重量%、Crを0.1〜0.8重量%含有し、残部がCuと不可避不純物からなる銅合金溶湯を溶製する工程(第1工程)、前記銅合金溶湯から荒引線を鋳造する工程(第2工程)、前記荒引線を700〜1000℃で熱処理する工程(第3工程)、該熱処理後の荒引線を冷間加工してトロリ線を得る工程(第4工程)及び前記冷間加工途上の線材又は冷間加工後のトロリ線を300〜600℃で熱処理する工程(第5工程)を含む、トロリ線の製造方法。
- 荒引線の冷間加工における冷間加工度が40〜90%である、請求項3記載のトロリ線の製造方法。
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