JP2007051099A - 新規ポリフェノール化合物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、MRSAなどの薬剤耐性菌に対する抗菌活性および抗酸化作用を有する新規なポリフェノール化合物に関するものである。
近年、活性酸素などのフリーラジカルが生体に与える悪影響が指摘されている。例えば、生体内で発生したフリーラジカルはDNAを損傷し、細胞の増殖バランスを乱して癌を誘発したり、免疫力を低下させる上に、老化の原因となるとされている。
そこで、フリーラジカルを消滅させることができる抗酸化物質を含む食品や飲料が注目されるようになった。例えば、ビタミンEやC、カロチンなどの抗酸化物質を多く含む健康食品が市販されており、老化防止や癌予防などの効能がうたわれている。また、赤ワインにはアントシアニン等のフラボノイドが多く含まれており、強い抗酸化作用を有するものとして注目されたのも有名である。
さらにタマネギの外皮など、これまで廃棄されていたものにも強い抗酸化作用が見出され、健康食品に利用されている。例えば非特許文献1には、タマネギの外皮には主にアントシアニンとフラバノールに分類されるフラバノイドが含まれており、これが抗酸化作用、抗癌作用、抗菌活性等を有することが記載されている。
また、近年、抗生物質の使用量の増加に伴って、MRSA(メシチリン耐性黄色ブドウ球菌)など一般的な抗生物質に耐性を示す細菌が問題となっている。斯かる薬剤耐性菌は感染力等が弱く健康な者にとっては問題とならないが、病人など免疫力が低下している者には脅威であり、病院内感染による死者まで出している。そこで、従来、薬剤耐性菌に対して抗菌活性を有する化合物が検討されている。
例えば特許文献1には、ある種のフラボノイドが薬剤耐性菌のβ−ラクタム剤耐性を抑制して抗生物質に対する感受性を高めること、また、フラボノイドが薬剤耐性菌に対して抗菌活性を有することが開示されている。
Griffiths,G.ら,「タマネギ−健康に対する広い利点」,フィトセラピー・リサーチ(Phytother.Res.),第16巻,第603〜615頁(2002年) 特開平15−171274号公報([特許請求の範囲]、段落[0003])
Griffiths,G.ら,「タマネギ−健康に対する広い利点」,フィトセラピー・リサーチ(Phytother.Res.),第16巻,第603〜615頁(2002年)
上述した様に、ある種のフラボノイドが薬剤耐性菌に対する抗菌活性や抗酸化作用を有することは知られていた。しかし、より良好な活性や作用を有する化合物が求められていた。そこで、本発明が解決すべき課題は、天然有機化合物であって良好な抗薬剤耐性菌活性と抗酸化作用を有するものを提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、すでに健康食品として利用されているタマネギ外皮に含まれる化合物を単離精製してその化学構造を決定し、抗薬剤耐性菌活性と抗酸化作用につき試験した。その結果、本発明化合物が優れた効果を有することを見出して、本発明を完成した。
本発明のポリフェノール化合物は、下記式(I)で表されるものである:
[式中、
X1およびX2は、それぞれ独立して、少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
YとRは、一体となって、隣接する炭素原子および酸素原子と共に下記エチレンオキサイド構造を形成し、
X1およびX2は、それぞれ独立して、少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
YとRは、一体となって、隣接する炭素原子および酸素原子と共に下記エチレンオキサイド構造を形成し、
上記エチレンオキサイド構造中、X3は少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
或いは、Yは共有単結合を示し、且つRは水素原子、低級アルキル基または低級アルカノイル基を示し、
置換基(i)は、低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよい低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよいアリール基、後述する置換基(ii)を有してもよいヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示し、
置換基(ii)は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、水酸基、オキソ基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示す。]
或いは、Yは共有単結合を示し、且つRは水素原子、低級アルキル基または低級アルカノイル基を示し、
置換基(i)は、低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよい低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよいアリール基、後述する置換基(ii)を有してもよいヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示し、
置換基(ii)は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、水酸基、オキソ基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示す。]
上記定義の通り、本発明のポリフェノール化合物(I)には、以下の化合物(Ia)と(Ib)が含まれる。
本発明において、「アリール基」は芳香族炭化水素基を意味する。例えば、フェニル、ナフチル、インデニル等であり、好ましくはC6−C10アリール基、より好ましくはフェニルである。
「ヘテロアリール基」は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1個有する5員、6員または縮合芳香族ヘテロシクリル基を意味する。「ヘテロアリール基」としては、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、テトラゾリル、チエニル、フリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル等の5員ヘテロアリール基;ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル等の6員ヘテロアリール基;およびインドリル、イソインドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、クロモニル(1−ベンゾピラン−4(4H)−オン−イル)、ベンゾチエニル、テトラヒドロイミダゾ[1,2−a]ピラジン等の縮合ポリサイクリックヘテロアリール基が含まれる。
「低級」の語は、特に断らない限り炭素数1〜6を意味する。
よって、「低級アルキル基」は、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素を意味する。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル等であり、好ましくはC1−C4アルキル基、より好ましくはC1−C2アルキル基、最も好ましくはメチルである。
「低級アルカノイル基」は、ホルミルおよび、炭素数2〜6のアルキルカルボニル基を意味する。例えば、ホルミルの他、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘイサノイル等である。好適にはC1−C4アシルであり、より好ましくはC1−C2アシルであり、最も好ましくはアセチルである。
「低級アルコキシ基」は、炭素数1〜6の直鎖状または分枝鎖状の脂肪族炭化水素オキシ基を意味する。例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、tert−ブトキシ、ペントキシ、ヘキソシキ等であり、好ましくはC1−C4アルコキシであり、より好ましくはC1−C2アルコキシであり、最も好ましくはメトキシである。
「アミノ基」は、−NH2、1個の低級アルキル基により置換されているアミノ基(低級アルキルアミノ基)、および2個の低級アルキル基により置換されているアミノ基(ジ(低級アルキル)アミノ基)を示す。これらの中では、−NH2が好適である。
上記アリール基、ヘテロアリール基または低級アルキル基上に複数の置換基が存在する場合、或いは化合物中に複数の置換基が存在する場合には、それらは同一であってもよいし異なっていてもよい。例えば、1つのエチル基に2つのオキシ基と1つのメトキシ基が置換しているメチルグリオキシレート基も本発明の置換基に含まれる。ただし、アリール基またはヘテロアリール基の置換基としては、水酸基が好適である。
上記化合物(I)としては、
2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフラン−3−オン、
3−フロログルシノイル−2,3−エポキシフラバノン、
3−クエルセチニル−2,3−エポキシフラバノン、および
3−[3−(2,4,6−トリヒドロキシ−1−メチルグリオキシレートフェニル)]−2,3−エポキシフラバノン、
から選択されるポリフェノール化合物が好適である。
2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフラン−3−オン、
3−フロログルシノイル−2,3−エポキシフラバノン、
3−クエルセチニル−2,3−エポキシフラバノン、および
3−[3−(2,4,6−トリヒドロキシ−1−メチルグリオキシレートフェニル)]−2,3−エポキシフラバノン、
から選択されるポリフェノール化合物が好適である。
本発明に係る医薬、健康食品、抗薬剤耐性菌剤および抗酸化作用剤は、上記化合物(I)を含むことを特徴とする。ここで、抗薬剤耐性菌剤の対象となる薬剤耐性菌は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、カルバペネム耐性セラチア菌など、従来の抗生物質に耐性を示す病原菌をいう。本発明の化合物(I)は、特にMRSAに対して良好な抗菌活性を示す。
本発明の化合物(I)は良好な抗薬剤耐性菌活性を示すことから、MRSAなど薬剤耐性菌感染症の治療薬となり得る。また、優れた抗酸化作用を有することから、癌、循環系疾患などの成人病、老化などの予防剤や治療剤となり得る。さらに、本発明の化合物(I)はタマネギ外皮から単離された天然化合物であることから、生体に与える悪影響は極めて少ないと考えられる。よって本発明の化合物(I)は、医薬や健康食品として有用である。
上記本発明化合物(I)は、常法に従ってタマネギ外皮から単離精製することができる。
原料として使用するタマネギの種類は特に制限されず、黄タマネギ、紫タマネギ、白タマネギのいずれでも用いることができるが、黄タマネギが特に好適である。これらタマネギの外皮を洗浄し、乾燥して粉末状等にした上で、化合物(I)を抽出すればよい。
本発明化合物(I)は、複数のアリール基やヘテロアリール基を有することから、酢酸エチルやクロロホルムなど溶解性の高い有機溶媒に溶解性を示す。その一方で、粗抽出物など他の化合物との混合物の段階では水溶性も示す。従って、水や低級アルコールなどの水系溶媒や、酢酸エチルなどの有機溶媒を組合わせて抽出することによって、本発明化合物(I)を含む抽出物を得ることができる。
より具体的には、例えば、先ず抽出溶媒として水を用い、80〜100℃で6〜24時間程度加熱することにより抽出する。次いで、当該抽出物の中で油溶性も示す化合物を、酢酸エチル、クロロホルム、ジクロロメタンなどでさらに抽出すればよい。当該抽出は、これら有機溶媒と水、さらにはブタノールなどとの間で分液し、有機溶媒相を分離することにより行なってもよい。また、当該抽出の前に、メタノールやエタノールなどで予備的な抽出を行なってもよい。
得られた粗抽出物に対して、クロロホルムとメタノールなど極性の低い溶媒と高い溶媒との混合溶液で段階的に濃度勾配を設けたものを溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ、ゲル浸透クロマトグラフィ、および高速液体クロマトグラフィ(HPLC)などの公知の精製方法を組合わせたり繰り返すことによって、化合物を単離精製する。
本発明者らは、米ワシントン州産Yellow種のタマネギ外皮から十数種の化合物を単離精製し、NMR等により構造を決定した上で活性試験を行なうことによって、抗薬剤耐性菌活性と抗酸化作用を有する下記ポリフェノール化合物1〜4を見出した。
また、本発明者らは、下記化合物5も単離精製した。
本発明の化合物(I)は、抗薬剤耐性菌活性と抗酸化作用を有することから医薬や健康食品として利用することができる。例えば、基剤、助剤、賦形剤や他の薬剤と共に、軟膏剤や硬膏剤、テープ剤、パップ剤などの外用剤;液剤や懸濁剤などの注射用製剤;噴霧剤;カプセル剤、錠剤、散剤などの経口剤等とすることができる。また、一般的な健康食品へ添加してもよい。
患者に本発明化合物を投与する場合、投与量は患者の年齢や性別、疾患の重度などにより異なるが、本発明化合物は水溶性が高く安全な天然有機化合物であるので、通常の抗生物質等によりも多く投与できると考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
実施例1 化合物1〜5の単離
米ワシントン州産Yellow種のタマネギ外皮エキス(太邦株式会社(兵庫県西宮市)製造品、12kg)を240Lの水に投入し、90℃で12時間加熱した後に濾過した。濾液を減圧濃縮することによって、666gの粗抽出物を得た。当該粗抽出物をさらにメタノールで抽出し、減圧濃縮することによって、固体状残渣(224g)を得た。このメタノール抽出物を、酢酸エチル、ブタノールおよび水との間で分液した。酢酸エチル相を減圧濃縮し、得られた残渣(130.2g)を、クロロホルム/:メタノール(100/0から0/100までグラディエント)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ(関東化学社製、シリカゲル60N)によって、フラクション1〜9(F1〜F9)を得た。F6(32g)を、クロロホルム/:メタノール(95/5から0/100までグラディエント)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ(関東化学社製、シリカゲル60N)によって、フラクション1〜8(F6.1〜F6.8)を得た。F6.7(1.82g)を、メタノールを溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(Pharmacia社製、Sephadex LH−20)によって、フラクション1〜7(F6.7.1〜F6.7.7)を得た。F6.7.1(93mg)、F6.7.3(130mg)および6.7.5(368mg)を、GPC−HPLC(Shodex社製、Asahipack GS310−2G、溶出液:メタノール)で精製することによって、それぞれのフラクションから化合物5(33mg)、1(28mg)および2(36mg)を得た。また、F6.6を、メタノールを溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(Pharmacia社製、Sephadex LH−20)によって、フラクション1〜19(F6.6.1〜F6.6.19)を得た。F6.6.17は、化合物3(31mg)であった。
米ワシントン州産Yellow種のタマネギ外皮エキス(太邦株式会社(兵庫県西宮市)製造品、12kg)を240Lの水に投入し、90℃で12時間加熱した後に濾過した。濾液を減圧濃縮することによって、666gの粗抽出物を得た。当該粗抽出物をさらにメタノールで抽出し、減圧濃縮することによって、固体状残渣(224g)を得た。このメタノール抽出物を、酢酸エチル、ブタノールおよび水との間で分液した。酢酸エチル相を減圧濃縮し、得られた残渣(130.2g)を、クロロホルム/:メタノール(100/0から0/100までグラディエント)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ(関東化学社製、シリカゲル60N)によって、フラクション1〜9(F1〜F9)を得た。F6(32g)を、クロロホルム/:メタノール(95/5から0/100までグラディエント)を溶出液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィ(関東化学社製、シリカゲル60N)によって、フラクション1〜8(F6.1〜F6.8)を得た。F6.7(1.82g)を、メタノールを溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(Pharmacia社製、Sephadex LH−20)によって、フラクション1〜7(F6.7.1〜F6.7.7)を得た。F6.7.1(93mg)、F6.7.3(130mg)および6.7.5(368mg)を、GPC−HPLC(Shodex社製、Asahipack GS310−2G、溶出液:メタノール)で精製することによって、それぞれのフラクションから化合物5(33mg)、1(28mg)および2(36mg)を得た。また、F6.6を、メタノールを溶出液とするゲル浸透クロマトグラフィ(Pharmacia社製、Sephadex LH−20)によって、フラクション1〜19(F6.6.1〜F6.6.19)を得た。F6.6.17は、化合物3(31mg)であった。
実施例2 化合物1〜5の同定
上記実施例1で単離した化合物1〜5の各項目について、下記により分析した。
上記実施例1で単離した化合物1〜5の各項目について、下記により分析した。
旋光度 − JASCO DIP−370
UVスペクトル − 島津製作所製、UV2100 UV−vis
IRスペクトル − JASCO社製 FT/IR−420
1H−NMR(400MHz)、13C−NMR(100MHz) − Brucker社製 AVANCE400、溶媒:CD3OD
FAB−MASスペクトル − SX−102A
測定結果は、以下の通りであった。
UVスペクトル − 島津製作所製、UV2100 UV−vis
IRスペクトル − JASCO社製 FT/IR−420
1H−NMR(400MHz)、13C−NMR(100MHz) − Brucker社製 AVANCE400、溶媒:CD3OD
FAB−MASスペクトル − SX−102A
測定結果は、以下の通りであった。
化合物1
旋光度 − [α]D−4.3°(メタノール,c0.5)
IRスペクトル − ν(KBr)3217,1687,1628,1292,1161cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)321(3.10),292(3.40)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 303.0522[M−H]+、304.0555[M]+
対応する化学式: C15H12O7 304.0583
以上の結果から、化合物1を2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフラン−3−オンと判断した。なお、NMRデータによる同定は、COSY、HSQCおよびHMBCにより確認した。以下でも同様である。
旋光度 − [α]D−4.3°(メタノール,c0.5)
IRスペクトル − ν(KBr)3217,1687,1628,1292,1161cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)321(3.10),292(3.40)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 303.0522[M−H]+、304.0555[M]+
対応する化学式: C15H12O7 304.0583
以上の結果から、化合物1を2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフラン−3−オンと判断した。なお、NMRデータによる同定は、COSY、HSQCおよびHMBCにより確認した。以下でも同様である。
化合物2
旋光度 − [α]D+44.9°(アセトン,c0.07)
IRスペクトル − ν(KBr)3249,1635,1292,1169cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)327(3.54),291(3.79)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 426.0511[M]+
対応する化学式: C21H14O10 426.0587
以上の結果から、化合物2を3−フロログルシノイル−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
旋光度 − [α]D+44.9°(アセトン,c0.07)
IRスペクトル − ν(KBr)3249,1635,1292,1169cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)327(3.54),291(3.79)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 426.0511[M]+
対応する化学式: C21H14O10 426.0587
以上の結果から、化合物2を3−フロログルシノイル−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
化合物3
旋光度 − [α]D+17.5°(アセトン,c0.8)
IRスペクトル − ν(KBr)3330,2927,1637,1458,1300cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)378(3.36),298(3.44),256(3.54)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 602.0525[M]+
対応する化学式: C30H18O14 602.0697
以上の結果から、化合物3を3−クエルセチニル−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
旋光度 − [α]D+17.5°(アセトン,c0.8)
IRスペクトル − ν(KBr)3330,2927,1637,1458,1300cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)378(3.36),298(3.44),256(3.54)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 602.0525[M]+
対応する化学式: C30H18O14 602.0697
以上の結果から、化合物3を3−クエルセチニル−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
化合物4
旋光度 − [α]D+19.3°(アセトン,c0.015)
IRスペクトル − ν(KBr)3629,1674,1300,1174cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)289(3.55),228(3.51)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 512.0664[M]-
対応する化学式: C24H16O13 512.0591
以上の結果から、化合物4を3−[3−(2,4,6−トリヒドロキシ−1−メチルグリオキシレートフェニル)]−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
旋光度 − [α]D+19.3°(アセトン,c0.015)
IRスペクトル − ν(KBr)3629,1674,1300,1174cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)289(3.55),228(3.51)nm
1H−NMRデータ − 表1に示す
13C−NMRデータ − 表2に示す
分子イオンピーク − 512.0664[M]-
対応する化学式: C24H16O13 512.0591
以上の結果から、化合物4を3−[3−(2,4,6−トリヒドロキシ−1−メチルグリオキシレートフェニル)]−2,3−エポキシフラバノンと同定した。
化合物5
IRスペクトル − ν(KBr)3903,1610,1508,1236,1076cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)290(2.27),279(2.62),274(2.65)nm
1H−NMRデータ − 7.09(d,2,8.4Hz,H-3,H-5),7.06(dd,1,7.8,7.7Hz,H-5’),7.00(d,2,8.4Hz,H-2,H-6),6.69(d,1,7.7Hz,H-6’),6.62(s,1,H-2’),6.60(d,1,7.8 Hz,H-4’),4.89(1H,HODシングレットと重複,H-1’’’),3.91(d,1,12.1Hz,H-6’’’eq),3.71(dd,1,12.1,3.6Hz,H-6’’’ax),3.45(m,4,H-2’’’−H-5’’’),2.82(m,4,H7a,H7b,H8a,H8b)
13C−NMRデータ − 158.3(C-3’),157.4(C-4),144.6(C-1’),137.1(C-1),130.4(C-2,C-6),130.3(C-5’),120.9(C-6’),117.7(C-3,C-5),116.4(C-2’),113.8(C-4’),102.5(C-1’’’),78.1(C-3’’’),78.0(C-5’’’),75.0(C-2’’’),71.4(C-4’’’),62.6(C-6’’’),39.2(C-8),38.1(C-7)
分子イオンピーク − 376.1522[M]+
対応する化学式: C20H24O7 376.1522
以上の結果から、化合物5をルヌラリン−4−O−β−D−グルコシドと同定した。
IRスペクトル − ν(KBr)3903,1610,1508,1236,1076cm-1
UVスペクトル − λmax(logε)290(2.27),279(2.62),274(2.65)nm
1H−NMRデータ − 7.09(d,2,8.4Hz,H-3,H-5),7.06(dd,1,7.8,7.7Hz,H-5’),7.00(d,2,8.4Hz,H-2,H-6),6.69(d,1,7.7Hz,H-6’),6.62(s,1,H-2’),6.60(d,1,7.8 Hz,H-4’),4.89(1H,HODシングレットと重複,H-1’’’),3.91(d,1,12.1Hz,H-6’’’eq),3.71(dd,1,12.1,3.6Hz,H-6’’’ax),3.45(m,4,H-2’’’−H-5’’’),2.82(m,4,H7a,H7b,H8a,H8b)
13C−NMRデータ − 158.3(C-3’),157.4(C-4),144.6(C-1’),137.1(C-1),130.4(C-2,C-6),130.3(C-5’),120.9(C-6’),117.7(C-3,C-5),116.4(C-2’),113.8(C-4’),102.5(C-1’’’),78.1(C-3’’’),78.0(C-5’’’),75.0(C-2’’’),71.4(C-4’’’),62.6(C-6’’’),39.2(C-8),38.1(C-7)
分子イオンピーク − 376.1522[M]+
対応する化学式: C20H24O7 376.1522
以上の結果から、化合物5をルヌラリン−4−O−β−D−グルコシドと同定した。
実施例3 抗MRSA活性試験
本実験に供したMRSA#5菌とMRSA COL株は、徳島大学薬学部微生物薬品化学研究室の保存株を使用した。その内MRSA COL株は、John J.Iandolo教授(オークランド大学ヘルスサイエンスセンター)から分与されたものである。
本実験に供したMRSA#5菌とMRSA COL株は、徳島大学薬学部微生物薬品化学研究室の保存株を使用した。その内MRSA COL株は、John J.Iandolo教授(オークランド大学ヘルスサイエンスセンター)から分与されたものである。
ペーパーディスクとしてWhatman AA disc(直径6.0mm)を用い、化合物3をジメチルスルホキシド(関東化学社製)に溶解して10mg/mL溶液を調製し、滅菌したペーパーディスク上に100μg添加した。別途、Mueller−Hinton II agar(BBL社製)に抗生物質であるオキサシリン(Sigma社製)を10μg/mLの割合で添加した培地20mLの平板培地を、角シャーレ(栄研化学社製、2号)に作製した。また、オキサシリンを添加しない培地も同様に作製した。この平板培地へ、MRSA#5菌とMRSA COL株をそれぞれ105CFU/mLとなる様に懸濁した半流動培地(Difco社製,Mueller−Hinton broth)を8mL重層した。各シャーレに上記ペーパーディスクを置いて37℃で24時間培養し、増殖阻止帯の直径を測った。また、比較のために、MRSAに対する抗菌活性を有さない抗生物質であるセファプリンを20μg/ディスクで添加したペーパーディスクについても、同様の実験を行なった。結果を表3に示す。
当該結果より、本発明化合物であるポリフェノール化合物3は、良好な抗MRSA活性を有することが実証された。また、オキサシリンと組合わせることによりさらに効果は高まることから、本発明のポリフェノール化合物3は、他の抗生物質と併用することによって、より優れた抗MRSA活性を示すことが分かった。
実施例4 抗酸化作用試験
本発明のポリフェノール化合物1〜4の2.5mMエタノール溶液を段階的に希釈することによって、濃度0〜100μMのエタノール溶液を調製した。また、別途1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(以下、「DPPH」という)の100μMエタノール溶液を調製した。両溶液を320μLのエタノールに加え、室温で30分間反応させた後、残存するDPPHラジカルの濃度を電子スピン共鳴法により計測した。また、抗酸化活性の指標として、下記反応によりDPPHラジカルと1対1で反応するL−システインを用いた(DPPH*+システイン−SH→DPPH:H+システイン−S*)。なお、安定性の問題から、L−システインは50mMの酢酸緩衝液(pH5.5)で溶解して実験に用いた。結果を図1に示す。
本発明のポリフェノール化合物1〜4の2.5mMエタノール溶液を段階的に希釈することによって、濃度0〜100μMのエタノール溶液を調製した。また、別途1,1−ジフェニル−2−ピクリルヒドラジル(以下、「DPPH」という)の100μMエタノール溶液を調製した。両溶液を320μLのエタノールに加え、室温で30分間反応させた後、残存するDPPHラジカルの濃度を電子スピン共鳴法により計測した。また、抗酸化活性の指標として、下記反応によりDPPHラジカルと1対1で反応するL−システインを用いた(DPPH*+システイン−SH→DPPH:H+システイン−S*)。なお、安定性の問題から、L−システインは50mMの酢酸緩衝液(pH5.5)で溶解して実験に用いた。結果を図1に示す。
図1の結果の通り、L−システインはDPPHと1対1で反応するために、DPPHに対するシステインの濃度比(比:L−システイン/DPPH)が1.0でDPPHラジカルを100%消去している。一方、本発明のポリフェノール化合物1〜4では、DPPHに対する各化合物の濃度比(比:化合物1〜4/DPPH)が0.2〜0.4の時点でDPPHラジカルをほぼ100%消去している。よって、本発明のポリフェノール化合物は優れた抗酸化作用を有することが明らかにされた。
Claims (8)
- 下記式(I)で表されるポリフェノール化合物:
X1およびX2は、それぞれ独立して、少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
YとRは、一体となって、隣接する炭素原子および酸素原子と共に下記エチレンオキサイド構造を形成し、
或いは、Yは共有単結合を示し、且つRは水素原子、低級アルキル基または低級アルカノイル基を示し、
置換基(i)は、低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよい低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよいアリール基、後述する置換基(ii)を有してもよいヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示し、
置換基(ii)は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、水酸基、オキソ基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示す。] - 下記式(Ia)で表されるポリフェノール化合物:
X1およびX2は、それぞれ独立して、少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
Rは水素原子、低級アルキル基または低級アルカノイル基を示し、
置換基(i)は、低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよい低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよいアリール基、後述する置換基(ii)を有してもよいヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示し、
置換基(ii)は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、水酸基、オキソ基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示す。] - 下記式(Ib)で表されるポリフェノール化合物:
X1、X2およびX3は、それぞれ独立して、少なくとも1の水酸基を置換基として有し、さらに後述する置換基(i)を有してもよいアリール基またはヘテロアリール基を示し、
置換基(i)は、低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよい低級アルキル基、後述する置換基(ii)を有してもよいアリール基、後述する置換基(ii)を有してもよいヘテロアリール基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示し、
置換基(ii)は、低級アルキル基、低級アルコキシ基、低級アルカノイル基、水酸基、オキソ基およびアミノ基よりなる群から選択される置換基を示す。] - 2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−5,7−ジヒドロキシ−2−メトキシベンゾフラン−3−オン、
3−フロログルシノイル−2,3−エポキシフラバノン、
3−クエルセチニル−2,3−エポキシフラバノン、および
3−[3−(2,4,6−トリヒドロキシ−1−メチルグリオキシレートフェニル)]−2,3−エポキシフラバノン、
から選択されるポリフェノール化合物。 - 請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェノール化合物を含むことを特徴とする医薬。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェノール化合物を含むことを特徴とする健康食品。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェノール化合物を含むことを特徴とする抗薬剤耐性菌剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のポリフェノール化合物を含むことを特徴とする抗酸化作用剤。
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2013020184A1 (en) * | 2011-08-11 | 2013-02-14 | Neuprotect Pty Ltd | Flavonoid compounds, and methods of use thereof |
CN115626905A (zh) * | 2022-10-20 | 2023-01-20 | 北京理工大学 | 一种由邻炔基苯酚合成苯并呋喃酮的方法 |
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JP2001139486A (ja) * | 1999-11-11 | 2001-05-22 | Shinji Murata | 玉ねぎの外皮の加工物 |
JP2004229615A (ja) * | 2003-01-31 | 2004-08-19 | New Industry Research Organization | ケルセチン組成物、食品保存剤及びその製造方法 |
JP2006115810A (ja) * | 2004-10-25 | 2006-05-11 | Newton Club:Kk | 水分抽出用の玉葱外皮粉末健康食品 |
-
2005
- 2005-08-18 JP JP2005237783A patent/JP2007051099A/ja active Pending
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