JP2007050620A - インクジェット印刷用フィルム - Google Patents

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博孝 荒井
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Abstract

【課題】
水系、水/溶剤混合系、溶剤(油性)系インクの何れのインクに対しても印刷文字及び画像の鮮明性に優れ、且つ耐ブロッキング性、耐水性及び耐候性に優れた屋外用途向けに適したインクジェット印刷用フィルムの提供。
【解決手段】
合成樹脂製基材フィルムの少なくとも片面にインクジェットインキ受容層を有するフィルムであって、該受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂を含有し、かつ該疎水性ポリウレタン系樹脂と該親水性ポリウレタン系樹脂の含有量の重量比が、該疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対し該親水性ポリウレタン系樹脂が20〜400重量部であるインクジェット印刷用フィルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、看板、ポスター、ステッカー及びマーキングフィルム等の表示類や、横断幕及び懸垂幕等の広告幕用等に用いられるインクジェット印刷用フィルムに関し、更に詳しくは、顔料水系及び顔料溶剤系(油性)等の各種インクの密着性に優れ、かつ印字及び印刷画像の鮮明性、耐水性並びに耐候性に優れるインクジェット印刷用フィルムに関する。
従来、看板、ポスター、ステッカー及びマーキングフィルム等の表示類や広告幕用フィルム材料としては着色性、加工性、印刷性及び耐候性に優れるポリ塩化ビニル系樹脂フィルムが多用されてきた。
近年、これらの分野では多品種小ロットの多様化するニーズに対してデザインから印刷加工までの一連の生産作業を合理的に行う方法として、コンピューターとインクジェットプリンターを組合せて用いる印刷方式が注目されており、パソコン上で作成したデザインまたは画像を大型インクジェットプリンターにて印刷処理する生産方式は、作業、納期の大幅短縮と作業効率の無駄を省く新しい印刷システムとして急速に実用化が進んでいる。
印刷用基材としてのポリ塩化ビニル系樹脂フィルムは、油性インクに対する初期の印刷適性を有するものの、長期間保管した場合には、可塑剤等のブリードにより印刷が不良となる等の問題があり、また水性インクに対しては印刷適性を有さないことや廃棄処理する場合のコストが必要となる等の諸問題が指摘されている。
最近では、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムの代替材料として一部用途に於いてはポリオレフィン系樹脂フィルムが実用化されているが、ポリオレフィン系樹脂は非極性樹脂であるため水性及び油性の何れのインクに於いても印字及び画像の鮮明性、密着性等が大幅に劣る欠点がある。
即ち、現状に於いては屋外使用に耐えうるインクジェット印刷用の印刷フィルム材料は未だ満足するものが作られておらず、特に顔料水系及び/または顔料溶剤系(油性)の各種インクに対する印刷適性と屋外耐候性能を満足する環境対応型のフィルム材料は極めて少なかった。
インクジェット記録材料の受容層にポリウレタン系樹脂を用いる技術としては、(1)イソシアネート化合物とポリエーテルポリオールの反応生成物を含有する組成物からなる受容層を基材上に設けたインクジェット記録用記録材(特許文献1)、(2)分子中にシロキサンセグメントを有する親水性ポリウレタン樹脂、親水性ポリウレア樹脂、親水性ポリウレタン−ポリウレア樹脂または親水性ポリアミド樹脂を受容層に用いるシート(特許文献2)、(3)分子中に第3級アミノ基を有する親水性樹脂からなる受容層を設けたインクジェット用記録シート(特許文献3)、(4)分子中に加水分解性シリル基を有する親水性樹脂を受容層に用いるインクジェット用記録シート(特許文献4)、(5)分子中にポリシロキサンセグメントを有し、且つ分子鎖末端及び/側鎖に加水分解性シリル基を有する親水性樹脂を用いるインクジェット用記録シート(特許文献5)、(6)ポリエステル系ポリウレタン系樹脂を主成分とし無機及び有機粒子を含有する受容層を形成したインクジェット用ラミネートクロス(特許文献6)等が開示されている。
しかしながら、これら公知のインクジェット印刷用フィルム等の受容層は、染料水系インクを対象としたもので、例えばOHPシートや用紙(ハガキ等)等の屋内で短期間使用する用途には適しているものの、屋外用途としては、受容層の基材層への密着性や受容層の耐水性、耐候性が劣る等の問題があった。
特公平3−42590公報 特開平10−291362公報 特開平11−240244公報 特開平11−263066公報 特開2000-71607公報 特開2002−302883公報
本発明は、屋外使用においても上記の品質低下が生じないインクジェット印刷用フィルムを提供することを主目的とし、特に、顔料水系及び/または顔料溶剤(油性)系インクの何れのインクにも対応が可能で、印字及び印刷画像の鮮明性、耐ブロッキング性、耐カールに優れ、かつインクジェットインキ受容層の基材への密着性、耐水性及び耐候性に優れたインクジェット印刷用フィルムを提供することを目的とする。
本発明の要旨とするところは、(1)合成樹脂製基材フィルムの少なくとも片面にインクジェットインキ受容層を有するフィルムであって、該受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂を含有し、かつ該疎水性ポリウレタン系樹脂と該親水性ポリウレタン系樹脂の含有量の重量比が、該疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対し親水性ポリウレタン系樹脂が20〜400重量部であることを特徴とするインクジェット印刷用フィルム、(2)インクジェットインキ受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂の合計量100重量部に対し、無機微粒子を5〜40重量部含有する上記(1)に記載のインクジェット印刷用フィルム、(3)疎水性ポリウレタン系樹脂が重量平均分子量20,000〜100,000のポリカーボネートポリウレタンを主成分とするものである上記(1)または(2)に記載のインクジェット印刷用フィルム、(4)親水性ポリウレタン系樹脂が、分子中にシロキサンセグメント及び/または加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂及びポリウレタン−ポリウレア系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載のインクジェット印刷用フィルム、(5)無機微粒子が、シリカ及び/またはセルロースである上記(2)〜(4)のいずれかに記載のインクジェット印刷用フィルム、(6)合成樹脂製基材フィルムとインクジェットインキ受容層との間に、ポリカーボネートポリウレタンを含有するプライマー層を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載のインクジェット印刷用フィルム、(7)合成樹脂製基材フィルムが、引張り弾性率が250〜900MPaのポリオレフィン系樹脂フィルムである上記(1)〜(6)のいずれかに記載のインクジェット印刷用フィルムに存する。
本発明のインクジェット印刷用フィルムは、受容層の基材への密着性、耐ブロッキング性、耐水性、耐候性及び耐カール性に優れ、更に各種インクの密着性に優れ、かつ印字及び印刷画像の鮮明性に優れる為、屋外で使用される看板、ポスター、ステッカー及びマーキングフィルム等の表示類や広告幕用のインクジェット印刷用フィルム材料(メディア)として好適である。
また、ポリ塩化ビニル系樹脂フィルムに比し、水性インクに対するインクジェット印刷適性も優れ且つ一般廃棄物としての処理が可能であることから産業、住宅、医療、雑貨用等の屋内及び屋外用の粘着フィルム(テープ)、ラミネートフィルム及びシート類として広範囲の用途に使用が可能である。
以下に本発明の詳細を説明する。
本発明の合成樹脂製基材フィルム(以下「基材フィルム」と記す)としては、例えば、市販のポリエステル、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、トリアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ナイロン及びポリイミド等の厚さ50〜200μmの合成樹脂製フィルムが使用できるが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂またはこれらの混合物や、更に前記ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂または混合物に、各種オレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー及びジエン系ゴム等からなる群から選ばれる1種以上のエラストマーを混合してなるポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。
上記ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分としたエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体(低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体であるメタロセン系ポリエチレン等)及びこれらの混合物並びに該ポリエチレン系樹脂とその他の樹脂の混合物等が挙げられる。
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、共重合体及びこれらの混合物並びに該ポリプロピレン系樹脂とその他の樹脂の混合物が挙げられる。該プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたはα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)、ブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、或いはグラフト共重合体(グラフトポリプロピレン)等が挙げられる。中でも、フィルムの柔軟性が優れている点でランダムポリプロピレンを主成分として使用することが好ましい。
このプロピレンと共重合可能なα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。通常、α−オレフィンの混合割合はプロピレンに対して1〜10重量%である。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、結晶融解熱(△H)が100g/J以下である低結晶性のプロピレン単独重合体等のプロピレン系熱可塑性エラストマーやエチレン−プロピレン共重合ゴム及び低密度メタロセン系ポリエチレン、特許第2912283号に記載の無定形弾性プロピレン系ホモポリマーや多段重合法によって得られるゴム成分を均一微粒分散したリアクタータイプのポリプロピレン等が好ましい材料として挙げられる。
尚、結晶融解熱(△H)とは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、樹脂を一度融解点以上にして溶融した後、10℃/分の速度で冷却した時のDSCチャート上の結晶ピーク面積より計算した値のことである。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン−ブタジエンブロック共重合体やスチレン−イソプレン共重合体等が挙げられる。中でもスチレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−ブタジエンブロック共重合体等のスチレン−ブタジエン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
また、スチレン系熱可塑性エラストマーは水素添加されたものがより好ましい。
ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−イソプレン共重合ゴム等が挙げられる。
本発明の基材フィルムには、白色顔料等の着色剤が配合してもよく、更にその他、必要に応じて他の合成樹脂や酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)等の耐候性助剤、充填剤、スリップ剤(滑剤)、アンチブロッキング剤等を本発明の目的及び性能を損なわない範囲内で配合することが出来る。
上記の耐候性助剤として添加するHALSは、基材フィルムに添加した場合、経時でのブリードアウトが問題になる場合があるため、分子量が10000以上であることが好ましい。このようなくHALSとしては、例えばN,N’,N”,N’”−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチルー2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N'−ビス(2,2,6,6,テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペジル)ブチルアミンの重縮合物、ポリ((6−1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物、1,6−ヘキサジアミン,N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチル)4−ピペリジル)重合体、2,4−ジクロロ−6−(モルフォリル)1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
また上記紫外線吸収剤としては、基材フィルムに添加した場合、ブリードアウトし難いものが好ましく、分子量350以上のものが好ましい。このような紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)−4−オクチルフェノール2量体、2−(4,6−ビス(2,4チジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシルオキシ)フェノール等が挙げられる。
基材フィルムの成形は、例えばポリオレフィン系樹脂に上記した添加剤等を必要に応じて配合し、これをTダイ押出成形法、インフレーション成形法またはカレンダー成形法等公知のフィルム成形法により成形することにより製造することができる。
基材フィルムは単層でも多層でもよいが、基材フィルムが内層、中間層、外層を有する場合、各層の積層方法としては、成形した個々の層(フィルム)をラミネーターで貼り合わせる方法やフィルム成形と同時に圧着ラミネートする方法を用いることが出来るが、多層Tダイ押出成形法によって成形と同時に積層フィルムを作成するのが工程数も減らすことができるため特に好ましい。
基材フィルムを着色基材フィルムとする場合は、例えば、前記中間層に着色顔料を配合すればよく、このように中間層に着色剤を配合することにより隠蔽性及び物性面を満足する基材フィルムが得られる。該顔料の配合量は、該中間層中のポリオレフィン系樹脂100重量部に対し3〜20重量部とするのが好ましい。
本発明の基材フィルムの厚さは通常50〜200μmで、引張り弾性率は250〜900MPaであるのが好ましい。
厚さが50μm未満だと受容層形成の塗工処理時に溶剤または熱等で基材フィルムが膨潤し、張力シワを生じ易い等加工性を著しく悪化する恐れがある。200μmを超えると剛性が大きくなり過ぎ加工性及びインクジェット印刷用フィルムとした際の曲面追従性を悪化させる恐れがあるので好ましくない。
また、基材フィルムの引張り弾性率が250MPa未満であるとフィルムが伸び易く上記同様に受容層形成の塗工処理等の二次加工性及び製品化後の貼りつけ施工性が劣る恐れがあり、900MPaを超えると剛性が強くなり過ぎ曲面追従性悪化する恐れがあるので好ましくない。
本発明の基材フィルムはインクジェットインキ受容層との密着性を向上させる為に、予め基材フィルム表面に易接着処理を施すことが好ましく、更に該易接着処理により基材フィルム表面のヌレ指数(JIS K 6768)を37mN/m以上にするのが好ましい。
易接着処理としては、公知のコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理または火炎処理等の方法が挙げられる。
本発明のインクジェット印刷用フィルムは、基材フィルムの少なくとも片面にインクジェットインキ受容層を有しており、該受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂を含有し、かつ該疎水性ポリウレタン系樹脂と該親水性ポリウレタン系樹脂の含有量の重量比が、該疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対し親水性ポリウレタン系樹脂が20〜400重量部である。特に該重量比は、該疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対して該親水性ポリウレタン系樹脂が50〜200重量部であるのが好ましい。
親水性ポリウレタン系樹脂の含有量が、疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対し400重量部を超えると、耐候性が低下するとともに溶剤系(油性)インキに対する適正が低下するので好ましくなく、また、20重量部未満になると、疎水性ポリウレタン系樹脂との溶液混合性が悪化し相分離を起こしやすくなるとともに、水性インキに対する適性が低下するので好ましくない。
なお、インクジェットインキ受容層(以下「受容層」と記す)の疎水性ポリウレタン系樹脂の含有量は20〜80重量%であるのが好ましい。
疎水性ポリウレタン系樹脂としては、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール及びポリブタジエンポリオール類からなる群より選ばれる少なくとも1種と、脂肪族イソシアネート、脂環族イソシアネート及び芳香族イソシアネート等の各種有機ジイソシアネート類からなる群より選ばれる少なくとも1種とを重合して得られるポリウレタン系樹脂があげられ、重量平均分子量が20,000〜100,000の高分子量ポリウレタン系樹脂が好ましい。
疎水性ポリウレタン系樹脂としては、中でも、基材フィルムとの密着性、耐候性が優れる点でポリカーボネートポリオールと脂肪族ジイソシアネート及び/または脂環族ジイソシアネートとを重合して得られるポリカーボネートポリウレタンを主成分とするものが好ましく、特に重量平均分子量が20,000〜100,000の前記ポリカーボネートポリウレタンを主成分とするものが好ましい。
疎水性ポリウレタン系樹脂中のポリカーボネートポリウレタンの量は55〜100重量%であるのが好ましく、特に70〜100重量%であるのが好ましい。
疎水性ポリウレタン系樹脂の重量平均分子量が20,000未満だと受容層が柔軟になりすぎ、巻物としたときの耐ブロッキング性が悪くなり、100,000を超えると塗工液とした際の粘度が高くなり過ぎ混合性、塗工乾燥時の作業性を悪化させるので好ましくない。
親水性ポリウレタン系樹脂としては、分子中に親水基を有するポリウレタン系樹脂であって、例えば、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等の親水基を有するポリエーテルポリオール及びポリオキシアルキレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種と有機ジイソシアネートとを重合して得られるポリウレタン系樹脂や、シランカップリング剤、加水分解性シリル基及び/またはアミノ基等の親水基を有するシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種と有機ポリイソシアネートとの反応生成物をポリウレタン重合時に一原料として使用し共重合して得られる分子中にポリシロキサンセグメント及び加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂、これらのポリウレタン系樹脂の混合物が挙げられ、更に他の親水性ポリウレタン系樹脂を混合して用いてもよい。
前記シランカップリング剤としては、分子中に1個または2個以上のアミノ基、エポキシ基、水酸基、カルボキシル基またはメルカプト基等の反応基を有するシロキサン化合物が挙げられる。
シランカップリング剤、加水分解性シリル基及び/またはアミノ基等の親水基を有するシランカップリング剤からなる群から選ばれる少なくとも1種と有機ポリイソシアネートとの反応生成物をポリウレタン重合時に一原料として併用し、共重合して得られる分子中にポリシロキサンセグメント及び加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂としては、
(a)ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール及びポリプロピレングリコール等からなる群から選ばれる少なくとも1種のグリコール類と有機ジイソシアネートとの反応物にイソシアネート基を有するシランカップリング剤を共重合して得られる分子側鎖型加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂、
(b)ポリジメチルシロキサンポリオール等と有機ジイソシアネートとを重合して得られる、シロキサンセグメントを有するポリウレタン系樹脂及びポリジメチルシロキサンジアミン等と有機ジイソシアネートとを重合して得られる、シロキサンセグメントを有するポリウレア系樹脂、
(c)ポリエチレンオキサイドジアミンと有機ジイソシアネートとの反応物にγ−アミノプロピルトリエトキシシラン等を重合した分子末端型加水分解型シリル基を有するポリウレア系樹脂等が挙げられる。
上述した親水性ポリウレタン系樹脂の中でも、疎水性ポリウレタン系樹脂との混合性の点から、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の親水基を有するポリエーテルポリオール及び/またはポリオキシアルキレンポリオールと有機ジイソシアネートを重合して得られるポリウレタン系樹脂を主成分とするもの、分子中にポリシロキサンセグメント及び/又は加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂、ポリウレタン-ポリウレア系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種からなるものが好ましい。
親水性ポリウレタン系樹脂のポリシロキサンセグメントの含有量は0.5〜10重量%、加水分解性シリル基は0.01〜10当量/樹脂1gであるのが好ましい。
疎水性ポリウレタン系樹脂と親水性ポリウレタン系樹脂の計量及び混合は、各樹脂を溶剤または水に溶解し、得られた各溶液を計量し、高速ミキサーにて混合する方法が採用できる。
疎水性ポリウレタン系樹脂の溶剤としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、イソプロピルアルコール等のアルコール類、その他酢酸エチル等の低沸点溶剤が使用できる。
また、親水性ポリウレタン系樹脂の溶剤としては、イソプロピルアルコール等のアルコール類、ケトン系溶剤等の他、少量の水等も使用できる。
これらの溶剤は溶解性、混合性を考慮して適宜選択すればよい。
本発明の受容層中には、インク吸収性、耐ブロッキング性または耐候性等を改善する目的で、無機フィラー、有機フィラーまたは紫外線吸収剤等を配合することができる。
無機フィラーとしては、合成シリカ、セルロース粉末、カオリン、クレー、タルク、ケイソウ土、炭酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト及びアルミナ等が挙げられ、有機フィラーとしては、平均粒子径1〜5μmのポリアクリル樹脂ビーズ、ポリウレタン樹脂ビーズ及びポリカーボネート樹脂ビーズ等の樹脂粒子が挙げられる。中でも、合成シリカとセルロース粉末はインク吸収性や耐ブロッキング性の向上効果が大きいため好ましく、特にセルロース粉末が好ましい。
無機フィラーの配合量は、疎水性ポリウレタン系樹脂と親水性ポリウレタン系樹脂の合計量100重量に対し5〜40重量部であるのが好ましい。
5重量部未満では、インクの吸収性もしくは定着性または耐ブロッキング性に大きな効果はなく、40重量部を超えるとインクジェット印刷用フィルムのカールが激しく起こるので好ましくない。
合成シリカは、一次粒子の平均粒子径が3〜10nmのものであって、一次粒子が軟凝集して3〜5μm程度の粉体の形態をとっている。その製法としては、原料の珪砂から珪酸ソーダ液を得、更に酸またはアルカリとの反応によって得られる湿式法と高温気相反応により得られる乾式法とがある。
本発明では何れの製法による合成シリカであっても使用可能である。
セルロース粉末としては、木材粉末を精製し平均粒子径5〜20μmに微細化したセルロース粉末が挙げられる。該セルロース粉末を使用した場合には、合成シリカを使用した場合と同等以上のインク吸収性及び耐ブロッキング性が良好となり、屋外耐候性能についても吹き出し(チョーキング)が比較的少なくなる。
また、合成シリカとセルロース粉末等を混合使用することも可能である。
本発明のインクジェット印刷用プラスチックフィルムの受容層には、屋外での長期及び過酷な条件下での耐候性を更に向上させる目的で、紫外線吸収剤及び/またはヒンダードアミン系光安定剤を配合することが好ましい。
紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−3'ラウリル−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコールの縮合物及びヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体等が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物及びポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等が挙げられる。
紫外線吸収剤及びヒンダードアミン系光安定剤の配合量は各々単独または併用した場合でも、受容層の樹脂成分100重量部に対し0.1〜10重量部の範囲とすることが好ましい。0.1重量部未満だと過酷な条件下での受容層の劣化及び黄変防止等の効果が十分でなく、一方、10重量部を超えるとブルーム現象が起こる恐れや、インクの吸収性、鮮明性及び密着性等を低下させる恐れがあるので好ましくない。
更に、本発明の受容層中には、本発明の目的を損ねない範囲で、必要に応じ、他の合成樹脂や、顔料、耐水化剤、分散剤、消泡剤等を配合することができる。
基材フィルム上に受容層を形成する方法としては、溶剤に疎水性ポリウレタン系樹脂と親水性ポリウレタン系樹脂及び必要に応じその他の配合剤を分散混合させて適当な濃度に調製した受容層形成用の塗料を基材フィルムの表面または処理面上に直接塗工する方法が採用でき、塗工方法としてはナイフコート、コンマナイフコート、リバースロールコート、バーコートまたはダイコート等の公知の方法を用いることができる。
また、溶液混合性の劣る塗料の場合には、必要により疎水性ポリウレタン系樹脂と親水性ポリウレタン系樹脂との混合液を塗工直前までミキシングしながら供給して塗工する方法や混合溶液を20〜60℃付近の一定温度下に保温しながら塗工する方法等を採用することができる。
基材フィルム上に受容層形成用塗料を塗工してなる積層フィルムの乾燥は、熱風循環炉または遠赤外線炉等を通す等の公知の乾燥方法を用いればよく、塗料中の溶媒を蒸発させて固化させ受容層を形成する。
乾燥温度は基材フィルムの耐熱性を考慮する必要があるが、通常60〜100℃が適当である。
乾燥後の受容層の厚さは、10〜40μm、好ましくは20〜30μmである。
受容層の厚さが10μm未満だとインク溶媒の吸収性が劣り、印字及び印刷画像の鮮明性、耐ブロッキング性が低下する恐れがある。一方、40μmを超えると受容層塗膜の乾燥性が悪化して、乾燥ムラが生じ易いばかりでなく、カール発生の原因となるので好ましくない。
更に、本発明のインクジェット印刷用フィルムは、基材フィルムと受容層との間にプライマー層を有するのが好ましい。該プライマー層の形成には、受容層との接着性を考慮して、ポリウレタン系樹脂またはアクリル−ウレタン共重合体等を成分(主剤)とする1液型塗料や、必要に応じて更に架橋剤(硬化剤)を添加混合する2液型塗料が使用できる。
プライマー層のポリウレタン系樹脂またはアクリル−ウレタン共重合体等の含有量は、50〜100重量%であるのが好ましく、更に60〜100重量%であるのが好ましい。
ポリウレタン系樹脂(主剤)としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール等の各種ポリオール類から選ばれる少なくとも1種と有機ジイソシアネートとを公知の方法で重合したポリウレタン系樹脂が挙げられる。
架橋剤(硬化剤)成分としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシネート、水素添加トリレンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネート等の脂肪族及び脂環族ジイソシアネートのイソシアヌレート重合体やこれらとエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパントリメタクリレート等とを付加重合したアダクト体等が挙げられる。
2液型塗料とする場合、主剤に対し架橋剤(硬化剤)を官能基当量比1〜2の範囲で適量添加混合して使用することができる。
ポリウレタン系樹脂としては、過酷な使用条件下に於いても優れた柔軟性、耐候性を保持する点で、ポリカーボネートポリオールと脂肪族及び/または脂環族ポリイソシアネートとを重合して得られる重量平均分子量20,000〜100,000の高分子量ポリカーボネートポリウレタンを主成分に用いるのが特に好ましい。該ポリカーボネートポリウレタンはプライマー層中のポリウレタン系樹脂中55〜100重量%であるのが好ましく、特に70〜100重量%であるのが好ましい。
プライマー層を形成する際の塗料の塗工量は0.1〜3g/mが適当であり、該塗料を、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール等の適当な溶剤で希釈して濃度を調整し、グラビアロール、ナイフ及びロールコートまたはバーコーター等にて前記基材フィルムの表面または易接着処理面上に塗工し乾燥させることにより、プライマー層を形成することができる。
本発明のインクジェット印刷用フィルムは、フィルムの受容層を有しない面(両面に受容層が形成されている場合は任意の面)に必要に応じてコロナ放電処理やアンカーコートを施した後、粘着剤層を設けることにより看板、車両等に貼り付け可能なインクジェット印刷用粘着フィルムが得られる。
粘着剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系、アミド系及びスチレン系粘着剤、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー及びエチレン系不飽和カルボン酸やその無水物でグラフト変性された酸変性オレフィン樹脂等の各種粘着剤が好適に用いられ、また、その形態は、溶液型、エマルジョン型、ホットメルト型等いずれであってもよい。前記粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的として必要に応じて、例えばα−ピネンやβ−ピネン重合体、ジテルペン重合体、α−ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂など適当な粘着付与剤を配合できる。さらに、液状ポリマーやパラフィン系オイルなどの軟化剤、充填剤、顔料、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤等、用途等に応じて必要な種々の添加剤が配合できる。
以下に本発明の実施形態について実施例を用いて詳述するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
<評価方法>
(1)重量平均分子量の測定
東ソー(株)製 HLC8020型ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて溶媒にテトラヒドロフラン(THF)を使用し、昭和電工(株)製カラム KF806Lにて展開した。
得られた結果はポリスチレン標準サンプルを基準に重量平均分子量(Mw)で表した。
(2)引張弾性率
JIS K 7127に準じて下記の条件で基材フィルムの引張弾性率を測定した。
なお、試験片は、フィルム成形直後にサンプリングし、23℃雰囲気下で1日放置したものを用いた。ダンベルは1号、引張速度は50mm/分で実施した。
(3)受容層の基材フィルムへの密着性
インクジェット印刷用フィルムの受容層表面にニチバン(株)製粘着テープの粘着面を押しつけローラーで密着後該テープ一端を高速度で剥離した。
剥離したテープの粘着面と受容層表面の外観状態を目視で観察し密着状態を下記に従い○、×で評価し、結果を表−1に示した。
○:受容層の剥離無し
×:受容層の剥離が部分的にでも発生
(4)カール性
受容層形成後のインクジェット印刷用フィルムを室温23℃で平面上に放置し、端部のカール、ソリ状態を目視判定し、下記に従い○〜×で評価し、結果を表−1に示した。
○:カール、ソリが全く無い
△:カールはしないが端部が浮く(20mm未満)
×:フィルム端部が20mm以上浮く、またはカールする
(5)耐候性
インクジェット印刷用フィルムの受容層面を被照射面として、スーパーUV試験(岩崎電気(株)製SUV−W11型、ブラックパネル温度63℃、湿度70%、紫外線照射5時間/結露1時間サイクル)とサンシャインウェザロメーター試験(スガ試験機製WEL−SUN−HC型、ブラックパネル温度63℃、雨有り)の2種類の耐候性試験を実施した。
評価は、表−1に記載の曝露時間(スーパーUV試験(S−UV)は紫外線照射累積時間、サンシャインウェザロメーター(SWOM)は曝露時間で記載)における外観変化を目視で観察し、下記に従い○〜×で評価した。結果を表−1に示した。
○:外観変化無し(極微色変化)
△:外観変化小(小クラック発生、極微色変化)
×:外観変化大(大クラック発生、変色顕著)
(6)インクジェット印刷性
インクジェット印刷用フィルムの受容層面に、水性インクまたは溶剤系インクを装備した市販のインクジェットプリンターを用いて、風景写真画像を印刷し、それを試験片として用い、下記の評価項目に記載の評価を行い、結果を表−1に示した。
i)水性インクによる印刷
インクジェットプリンター機種:ローランドディー.ジー(株)製 Hi−Fi JET FJ−50(6色ピエゾ型)
インク顔料;シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンタ
印刷出力;720dpi
ii)溶剤系インクによる印刷
インクジェットプリンター機種:武藤工業(株)製 ラミレスPJ−1304NX(オンデマンド方式)
インク顔料;シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック
印刷出力;384dpi
(評価項目)
(a)鮮明性
試験片の印刷画像の鮮明性を目視観察し、下記に従い○〜×で評価し、結果を表−1に示した。
○:良い
△:普通
×:悪い
(b)発色性
試験片の印刷画像の発色性を目視観察し、下記に従い○〜×で評価し、結果を表−1に示した。
○:良い
△:普通
×:悪い
(c)耐ブロッキング性
印刷直後に試験片の印刷面と硫酸紙を重ね、A−4大サイズ当り約10Nの荷重を掛けて23℃雰囲気下で1日間放置後、硫酸紙を除去しながらブロッキング状態を観察し、下記に従い○〜×で評価し、結果を表−1に示した。
○:ブロッキングなし
△:わずかにブロッキングあり
×:ブロッキングあり
(d)耐水性
試験片を5×5cm大の小片にカットし、該小片を蒸留水に5分間浸漬して取り出した後、画像の滲み状態等を目視で観察し、下記に従い○〜×で評価し、結果を表−1に示した。
○:変化無し
△:極微のにじみが発生するが、画像は認識できる
×:にじみがひどく、画像が認識できない
<実施例1〜6>
(1)基材フィルムの作成
i)基材フィルムAの作成:
メルトフローレート2.4(g/10分)、融点165℃のホモポリプロピレン35重量部、メルトフローレート7.0(g/10分)、融点140℃のランダムポリプロピレン35重量部、水素添加SBR30重量部及びヒンダードアミン系光安定剤としてポリ((6−1,1,3,3,−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))0.5重量部を混合したポリプロピレン樹脂組成物を用いて、三菱重工(株)製多層押出成形機により、厚さ0.1mmの3層積層体(層比:内層/中間層/外層=1/8/1)を作成した。なお、中間層のみ酸化チタン顔料を中間層樹脂成分100重量部に対して15重量部配合した。
次に、積層体の両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルムAを得た。得られた基材フィルムAの両面のヌレ指数は45mN/mであった。
ii)基材フィルムBの作成:
メルトフローレート7.0(g/10分)、融点140℃のランダムポリプロピレン50重量部、メルトフローレート2.5(g/10分)、融点160℃の低結晶性熱可塑性プロピレン単独重合体(プロピレン系熱可塑性エラストマー)50重量部を混合した組成物を用い、三菱重工(株)製多層押出成形機により、厚さ0.08mmの3層積層体(層比:内層/中間層/外層=1/8/1)を作成し、基材フィルムBとした。なお、中間層のみ酸化チタン顔料を中間層樹脂成分100重量部に対して15重量部配合した。
次に、基材フィルムAの場合と同様に、積層体の両面をコロナ処理して、両面コロナ処理の基材フィルムBを得た。得られた基材フィルムBの両面のヌレ指数は50mN/mであった。
また、各基材フィルムの引張弾性率測定結果を表−1に記載した。
(2)プライマーの調製及び塗工処理
ポリヘキサメチレンポリカーボネートジオールとイソホロンジイソシアネートをモル比で1:1で混合し、反応させて得られた重量平均分子量50,000のポリカーボネートポリウレタンを用い、下記配合組成のプライマーを調製した。
(配合) 配合量(重量部)
ポリカーボネートポリウレタン溶液(*1) 100
架橋剤溶液(*2) 5
希釈溶剤(メチルエチルケトン) 70

(*1)固形分濃度20重量%、溶剤:メチルエチルケトン/イソプロピルアルコール=85/15(重量比)
(*2)ヘキサメチレンジイソシアネート三量体溶液、固形分濃度75重量%、溶剤:酢酸エチル

次いで、前記基材フィルムのコロナ処理面に175メッシュのグラビアロールを使用してプライマーを塗工後、80℃の熱風乾燥機内に10秒間滞留させ、ライン中で冷却しながら巻き取り張力約7kg/全幅で巻き取り、基材フィルム/プライマー層からなる積層フィルムを作成した。
乾燥後のプライマー層重量を測定した結果は何れも約0.6g/m2であった。
(3)受容層の形成
i)疎水性ポリウレタン塗料Aの調整
上記(2)に記載のポリカーボネートポリウレタン200重量部に合成シリカ(日本シリカ工業(株)製、NIPGEL AZ400)8重量部及びイロプロピルアルコール32重量部を配合し、固形分濃度20重量%の疎水性ポリウレタン塗料Aを調製した。
ii)親水性ポリウレタン塗料Bの調製
メチルエチルケトン250重量部とジメチルホルムアミド145重量部の混合溶媒中に、ポリジメチルシロキサンポリオール8重量部、ポリエチレングリコール142重量部、エチレングリコール8重量部を溶解し、60℃で攪拌しながら水素添加MDI52重量部を100重量部のメチルエチルケトンに溶解したものを徐々に滴下し、滴下終了後80℃で6時間反応させてポリウレタン樹脂溶液を得た(固形分は約35重量%、ポリウレタン樹脂の重量平均分子量約100,000)。次に得られたポリウレタン樹脂100重量部に合成シリカ(日本シリカ工業(株)製、NIPGEL AZ400)7重量部及びイソプロピルアルコール103重量部を配合し、固形分濃度20重量%の親水性ポリウレタン塗料Bを調製した。
iii)親水性ポリウレア塗料Cの調製
ジメチルホルムアミド280重量部にポリジメチルシロキサンジアミン5重量部、ポリエチレンオキサイドジアミン145重量部、プロピレンジアミン8重量部を溶解し、攪拌しながら、水素添加MDI47重量部を100重量部のジメチルホルムアミドに溶解したものを徐々に滴下して反応させてポリウレア溶液を得た(固形分は約35重量%、ポリウレアの重量平均分子量約100,000)。次に、ポリウレア100重量部に合成シリカ(日本シリカ工業(株)製、NIPGEL AZ400)7重量部及びイソプロピルアルコール103重量部を配合し、固形分濃度20重量%の親水性ポリウレア塗料Cを調製した。
<受容層の形成>
上記の各種樹脂塗料を表−1に示した組成となるように混合し、得られた受容層形成用塗料を前記した基材フィルム/プライマー層からなる積層フィルムのプライマー層上に、乾燥後の受容層の厚さが約20μmになる様にナイフコーターで塗工し、100℃の熱風オーブン中に約2.5分間放置して乾燥させ、基材フィルム/プライマー層/受容層からなるインクジェット印刷用フィルムを作成した。得られたフィルムの各種評価結果を表−1に示した。
<比較例1及び2>
受容層形成用の樹脂塗料として、前記した疎水性ポリウレタン塗料及び親水性ポリウレタン塗料をそれぞれ単独で使用した以外は実施例1と同様にしてインクジェット印刷用フィルムを得た。得られたフィルムの各種評価結果を表−1に示した。
Figure 2007050620


Claims (7)

  1. 合成樹脂製基材フィルムの少なくとも片面にインクジェットインキ受容層を有するフィルムであって、該受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂を含有し、かつ該疎水性ポリウレタン系樹脂と該親水性ポリウレタン系樹脂の含有量の重量比が、該疎水性ポリウレタン系樹脂100重量部に対し該親水性ポリウレタン系樹脂が20〜400重量部であることを特徴とするインクジェット印刷用フィルム。
  2. インクジェットインキ受容層が疎水性ポリウレタン系樹脂及び親水性ポリウレタン系樹脂の合計量100重量部に対し、無機微粒子を5〜40重量部含有する請求項1に記載のインクジェット印刷用フィルム。
  3. 疎水性ポリウレタン系樹脂が重量平均分子量20,000〜100,000のポリカーボネートポリウレタンを主成分とするものである請求項1または2に記載のインクジェット印刷用フィルム。
  4. 親水性ポリウレタン系樹脂が、分子中にシロキサンセグメント及び/または加水分解性シリル基を有するポリウレタン系樹脂、ポリウレア系樹脂及びポリウレタン−ポリウレア系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を主成分とするものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用フィルム。
  5. 無機微粒子が、シリカ及び/またはセルロースである請求項2〜4のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用フィルム。
  6. 合成樹脂製基材フィルムとインクジェットインキ受容層との間に、ポリカーボネートポリウレタンを含有するプライマー層を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用フィルム。
  7. 合成樹脂製基材フィルムが、引張り弾性率が250〜900MPaのポリオレフィン系樹脂フィルムである請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェット印刷用フィルム。
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