JP2007042692A - 薄膜コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明では、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度の向上及びリーク電流密度の低減を同時に実現することが可能な薄膜コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
下部電極2を基板上に形成する下部電極形成工程と、Ba、Sr、Ti系の各有機誘電体原料を含有する原料液を前記下部電極の表面に塗布する原料液塗布工程と、有機誘電体原料を焼成してチタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を形成する金属酸化物薄膜形成工程と、上部電極4を形成する上部電極形成工程と、を有する薄膜コンデンサ10の製造方法において、焼成雰囲気を酸素含有不活性ガス雰囲気として、酸素雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度よりも大きい容量密度を有するチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成することを特徴とする。
【選択図】図2
Description
まず、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を形成するための基板1の表面に下部電極2を形成する。
次にチタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を形成することを目的として、下部電極2の表面に有機誘電体原料を含有する原料液を塗布する。本発明では、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を溶液法によって形成する。溶液法として、例えば、ゾルゲル法や有機金属分解法(MOD)を例示することができる。本実施形態では、MOD法により誘電体薄膜であるチタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を形成する場合を例として説明する。MOD法によれば、(1)原子レベルの均質な混合が可能であること、(2)組成制御が容易で再現性に優れること、(3)特別な真空装置が必要なく常圧で大面積の成膜が可能であること、(4)工業的に低コストであること、等の利点から広く利用されている。以下に、MOD法によるチタン酸バリウムストロンチウム薄膜3の形成方法について説明する。
豊田中央研究所R&Dレビュー Vol.32 No.3(1997.9)pp61−70
仮焼工程では、塗布層に含まれる溶媒および有機物の一部を除去させることが望ましい。塗布層中の溶媒を蒸発させるために、空気中で乾燥させる。あるいは、酸素雰囲気中で乾燥させてもよい。温度条件は、例えば室温〜120℃、1分〜10分程度で溶媒が揮発するときに生じやすい塗布層の表面荒れの発生を抑制する条件とする。その後、300〜500℃に加熱して塗布層に含まれる有機物を除去する。
次に、下部電極2の表面に塗布した塗布層を酸素含有不活性ガス雰囲気中で加熱し、有機誘電体原料をさらに熱分解、結晶化し、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を焼成する。酸素含有不活性ガスとして、例えば窒素と酸素との混合ガス、アルゴンと酸素との混合ガス、ヘリウムと酸素との混合ガス又は窒素とアルゴンとヘリウムと酸素との混合ガスを使用することができる。従来では、金属酸化物薄膜を焼成する場合、誘電体の酸素欠損の発生を抑制するために、酸素雰囲気中で結晶化して金属酸化物薄膜を形成していた。一方、本実施形態では、酸素含有不活性ガスの酸素含有率を20%以下とすることが望ましい。より望ましくは、酸素含有不活性ガスの酸素含有率を10%以下とする。本実施形態では、結晶化を酸素雰囲気中ではなく酸素含有不活性ガス雰囲気中で焼成して行い、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を形成することで、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3の粒成長を促進させ、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3の容量密度を酸素雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度よりも大きくすることができる。すなわち、本実施形態では、組成式(Ba1−xSrx)yTiO3(但し、0<x<1、y>1)によって表記されるチタン酸バリウムストロンチウム薄膜において、y>1としてチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度を確保した上で、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜を酸素雰囲気中ではなく酸素含有不活性ガス雰囲気中で焼成することによってさらに容量密度を高めることができる。さらにチタン酸バリウムストロンチウム薄膜にMn元素を含有させることにより、リーク電流密度を室温で且つ電界強度100kV/cmの条件で10−7A/cm2以下と十分小さくでき、容量密度が高く、且つリーク電流密度も低いバランスが取れたチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成することができる。さらに酸素含有不活性ガスの酸素含有率を20%以下とすると、容量密度はさらに向上し、酸素雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度よりも10%以上大きくできる。
その後に、スパッタリング法などで上部電極4を形成する。膜厚は特に限定されないが50nm以上、500nm以下に設定することが望ましい。上部電極4の材料は、下部電極で例示した材料を使用できるが、下部電極2の電極材料と同じ材料とすることが望ましい。ただし、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜3の焼成が完了後、その後の工程において高温焼成を行わない場合では、Cu、Al又はNiを主成分とする電極材料を用いても良い。上部電極4を形成した後に、アニール処理を施してもよい。アニール処理は、pO2=20〜100%、400〜1000℃の温度で行えばよい。また、必要に応じてパッシベーション層5(保護層)を形成する。パッシベーション層5の材料は、SiO2、Al2O3等の無機材料、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂等の有機材料を用いることができる。なお、前記各層の形成する際にその都度フォトリソグラフィ技術を用いて所定のパターンニングを行ってもよい。上記工程を経ることで本実施形態に係るチタン酸バリウムストロンチウム薄膜3を備える薄膜コンデンサ10が得られる。なお、本発明に影響を与えない範囲で、誘電体に添加物を加えてもよい。
(実施例)
まず、誘電体薄膜を形成することになる原料液を調整した。本実施例では、組成式(Ba1−xSrx)yTi1−zMnzO3(但し、0<x<1、y>1)によって表記されるチタン酸バリウムストロンチウム薄膜のうち、xとyとzとを表1に示す6組の値に変化させて、それぞれの値で示される組成式を有するチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成した。Ba、Sr、Ti、Mnのモル比を一定とする限り、原料液の濃度は適宜変更可能である。これらの原料液は、それぞれクリーンルーム内で、孔径0.2μmのPTFE製シリンジフィルタによって、クリーンルーム内で洗浄済のガラス製容器内に濾過した。
誘電体薄膜を形成するための基板を準備した。基板としては、シリコン単結晶基板を用いた。また、基板表面に熱酸化処理によりSiO2を積層して酸化膜(絶縁層)を形成した後に、絶縁層の上にTiO2を積層して誘電体薄膜と基板との密着性を良好にする密着層を形成した。絶縁層の膜厚を0.5μmとし、密着層の膜厚を0.2μmとした。下部電極としてPt薄膜を、スパッタリング法により100nmの厚さで形成した。基板の厚さを2mmとし、その面積を10mm×10mmとした。
次に、表1に示した原料液を、下部電極の上に塗布した。塗布法としては、スピンコート法を用いた。具体的には、前記基板をスピンコータにセットし、下部電極の表面に、それぞれの原料液を10μリットルほど添加し、4000r.p.m.および20秒の条件で、スピンコートし、下部電極の表面に塗布層を形成した。
その後、380℃の酸素雰囲気中で10分間、塗布層の脱脂を行った。
次に、塗布層を熱分解してチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成するため、基板を高速昇温炉(RTA炉)に入れた。焼成温度を900〜950℃とし、焼成雰囲気を酸素雰囲気から、窒素と酸素とからなる酸素含有不活性ガス雰囲気に換えて、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜を焼成した。これにより、塗布層は結晶化されて、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜が得られた。スピンコート、脱脂、焼成、の3つの工程を複数回繰り返し行い、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜の膜厚を目的の膜厚とした。膜厚は、120nmとした。ここで、表1に示す原料液番号2、原料液番号3、原料液番号4、原料液番号5のそれぞれについて、焼成雰囲気中の酸素含有率を0%、5%、10%、20%と変化させて形成した4種類のチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を実施例とした。また、原料液番号6において、酸素含有率を0%として形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を実施例とした。原料液番号2、原料液番号3、原料液番号4、原料液番号5、原料液番号6のそれぞれについて、焼成雰囲気中の酸素含有率を100%として形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を比較例とした。また、原料液番号1については、酸素含有率を100%として形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を参考例とし、原料液番号6については、焼成雰囲気中の酸素含有率を5%、10%、20%として形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を総て参考例とした。実施例、参考例及び比較例を表2及び表3に示す。なお、形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の化学組成は蛍光X線による分析から、所望の化学組成となったことを確認した。
実施例1から実施例17、参考例1から参考例4及び比較例1から比較例5のそれぞれについて、電気特性値の評価を行った。電気特性値を評価するためにチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の面上に上部電極としてφ0.1mmのPt薄膜を、スパッタリング法により200nmの厚さで形成した。電気特性値として容量密度、リーク電流密度を室温の条件下で計測した。容量密度は、YHP4194Aインピーダンスアナライザ(Agilent社製)を用いて100Hzから15MHzまでの範囲で計測した。リーク電流密度は、半導体パラメータアナライザ4156C(Agilent社製)を用いて、室温で且つ電界強度100kV/cmの条件下で計測した。結果を表4から表8に示す。また、図2に、組成式においてx=0.3、y=1.03で固定した場合の焼成雰囲気中の酸素含有率に対する容量密度の変化を示したグラフを示す。図2において、横軸は焼成雰囲気中の酸素含有率を示し、縦軸は、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度を示す。また、図2において、各グラフは、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜のMn元素の含有率を0、0.01、0.015、0.02、0.025と変化させて形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度を示している。また、図3に、組成式においてx=0.3、y=1.03で固定した場合のチタン酸バリウムストロンチウム薄膜のMn元素の含有率(組成式におけるzの値)に対するチタン酸バリウムストロンチウム薄膜のリーク電流密度の変化を示すグラフを示す。図3において、横軸はMn元素の含有率を示し、縦軸は、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜のリーク電流密度を示す。また、図3において、各グラフは、焼成雰囲気中の酸素含有率を0%、5%、10%、20%、100%と変化させて形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜のリーク電流密度を示している。また、図4に、組成式においてx=0.3、y=1.03で固定した場合の焼成雰囲気中の酸素含有率に対するリーク電流密度の変化を示したグラフを示す。図4において、横軸は焼成雰囲気中の酸素含有率を示し、縦軸は、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜のリーク電流密度を示す。また、図4において、各グラフは、チタン酸バリウムストロンチウム薄膜のMn元素の含有率を0.01、0.015、0.02、0.025と変化させて形成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜のリーク電流密度を示している。なお、図2、図3及び図4は、表4から表8の結果を基にグラフ化した図である。
2 下部電極
3 チタン酸バリウムストロンチウム薄膜
4 上部電極
5 保護層
10 薄膜コンデンサ
Claims (7)
- 下部電極を基板上に形成する下部電極形成工程と、Ba系有機誘電体原料、Sr系有機誘電体原料及びTi系有機誘電体原料を含有する原料液を前記下部電極の表面に塗布する原料液塗布工程と、前記下部電極の表面に塗布した前記原料液に含有される前記有機誘電体原料を焼成してチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成する金属酸化物薄膜形成工程と、前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜の表面上に上部電極を形成する上部電極形成工程と、を有する薄膜コンデンサの製造方法において、
前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜は組成式(Ba1−xSrx)yTiO3(但し、0<x<1、y>1)によって表記される組成式とし、且つ前記金属酸化物薄膜形成工程における前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜の焼成雰囲気を酸素含有不活性ガス雰囲気として、酸素雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度よりも大きい容量密度を有するチタン酸バリウムストロンチウム薄膜を形成することを特徴とする薄膜コンデンサの製造方法。 - 前記原料液にMn系有機誘電体原料を含有させて、前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜に副成分としてMn元素を含有させ、前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜を組成式(Ba1−xSrx)yTi1−zMnzO3(但し、0<x<1、y>1)によって表記したときのzを0<z<0.025としたことを特徴とする請求項1に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
- 前記チタン酸バリウムストロンチウム薄膜は、前記組成式においてyを1.02以上、1.06以下としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
- 前記酸素含有不活性ガス雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜は、室温で且つ電界強度100kV/cmの条件下におけるリーク電流密度が10−7A/cm2以下であることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
- 前記酸素含有不活性ガス雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度は、前記酸素雰囲気中で焼成したチタン酸バリウムストロンチウム薄膜の容量密度よりも10%以上大きいことを特徴とする請求項1、2、3又は4に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
- 前記金属酸化物薄膜形成工程において、焼成温度を600℃以上、1000℃以下としたことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
- 前記金属酸化物薄膜形成工程において、前記酸素含有不活性ガスの酸素含有率を20%以下としたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5又は6に記載の薄膜コンデンサの製造方法。
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