JP2007042363A - 燃料電池システムとその運転方法および燃料電池 - Google Patents

燃料電池システムとその運転方法および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】 燃料電池を構成する部材において進行し得る水熱分解を抑制する。
【解決手段】 電解質層と、電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池15を備える燃料電池システム10の運転方法は、燃料電池15の内部温度を取得する第1の工程と、取得された温度における電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を取得する第2の工程と、触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧を導出する第3の工程と、燃料電池15が所望の電力を発電するように燃料電池システム10を制御する際に、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧以上であるときには、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、燃料電池システム10の制御を変更する第4の工程と、を備える。
【選択図】 図3

Description

この発明は、燃料電池システムとその運転方法および燃料電池に関する。
一般に、複合酸化物には、温度の関数である水熱分解臨界水蒸気圧が存在し、この水熱分解臨界水蒸気圧を超える水蒸気圧に晒されると、上記複合酸化物では水熱分解反応が進行する。複合酸化物を備える燃料電池として、例えば、プロトン伝導性を有する複合酸化物(固体酸化物)を電解質層に備える燃料電池が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなプロトン伝導性を有する固体酸化物を電解質層として備える燃料電池では、電気化学反応の進行と共にカソードで生成水が生じる。そのため、電解質層とカソードとの接触部近傍の水蒸気圧が、そのときの燃料電池の運転温度における上記固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を超えると、電解質層において水熱分解が進行する可能性がある。また、燃料電池のカソードを、電極としての触媒活性と共に電子伝導性を有する複合酸化物によって形成する場合には、発電と共にカソードにおいて水熱分解が進行する可能性がある。
特開2004−146337号公報
燃料電池では、例えば負荷要求が変動する場合には運転条件が大きく変化し、これに伴って燃料電池における生成水の発生量や、生成水の発生量によって変動する燃料電池内部の水蒸気圧、あるいは燃料電池の内部温度が大きく変化する。このように、燃料電池の内部において、水蒸気圧及び温度が大きく変化する場合であっても、燃料電池を構成する電解質層や電極の構成材料が水熱分解を起こさないことが望まれる。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、燃料電池の発電中に燃料電池を構成する部材において進行し得る水熱分解を抑制することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の第1の燃料電池システムは、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極とを有する燃料電池と、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更するシステム制御部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第1の燃料電池システムによれば、界面水蒸気圧が、電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回るようにシステムの制御を変更するため、電解質層における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第1の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記燃料電池の内部温度を取得する温度取得部と、前記取得された内部温度における前記水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部と、前記界面水蒸気圧を導出する界面水蒸気圧導出部とを備えても良い。この場合には、取得された内部温度における臨界水上気圧と界面水蒸気圧とを用いるのて、燃料電池システムの制御の精度を向上させることができる。
本発明の第1の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記電解質層が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する許容水蒸気圧設定部を備え、
前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更することとしても良い。
このような構成とすれば、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回るようにするために燃料電池の制御を変更する動作の信頼性を高め、電解質層における水熱分解の進行を抑制する効果を高めることができる。
本発明の第2の燃料電池システムは、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記燃料電池の内部温度を取得する温度取得部と、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極を構成する材料の、前記取得された温度における水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部と、
前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧を導出する界面水蒸気圧導出部と、
前記燃料電池が所望の電力を発電するように前記燃料電池システムを制御すると共に、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更するシステム制御部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第2の燃料電池システムによれば、界面水蒸気圧が、第1の電極を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回るようにシステムの制御を変更するため、第1の電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第2の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記第1の電極が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する許容水蒸気圧設定部を備え、
前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更することとしても良い。
このような構成とすれば、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回るようにするために燃料電池の制御を変更する動作の信頼性を高め、第1の電極における水熱分解の進行を抑制する効果を高めることができる。
本発明の第1または第2の燃料電池システムにおいて、さらに、
前記第1の電極上を流れるガスにおける水蒸気分圧である気相水蒸気分圧を導出する気相水蒸気分圧導出部と、
前記第1の電極における電極分極を導出する電極分極導出部と
を備え、
前記界面水蒸気圧導出部は、前記気相水蒸気分圧と、前記電極分極と、前記燃料電池の内部温度とに基づいて、前記界面水蒸気圧を導出することとしても良い。
このような構成とすれば、界面水蒸気圧を、実験的に観察される電解質層における実際の分解挙動と良く一致する値として導出することができる。
本発明の第1または第2の燃料電池システムにおいて、前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が低下するように、前記燃料電池システムの制御を変更することとしても良い。
あるいは、本発明の第1または第2の燃料電池システムにおいて、前記システム制御部は、前記水熱分解臨界水蒸気圧が上昇するように、前記燃料電池システムの制御を変更することとしても良い。
このような構成とすれば、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回る状態に近づけることができる。
本発明の第3の燃料電池システムは、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する水熱分解予測部と、
前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、
前記水熱分解予測部によって、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測されたときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する温度制御部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第3の燃料電池システムによれば、燃料電池の内部温度を上昇させることで、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧以上になることを抑え、電解質層における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第4の燃料電池システムは、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記第1の電極を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する水熱分解予測部と、
前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、
前記水熱分解予測部によって、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測されたときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する温度制御部と
を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第4の燃料電池システムによれば、燃料電池の内部温度を上昇させることで、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧以上になることを抑え、第1の電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第3または第4の燃料電池システムにおいて、前記水熱分解予測部は、負荷要求が増大すると予測されるときに、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測することとしても良い。
このような構成とすれば、負荷要求の増大時に燃料電池内で進行する水熱分解を防止することができる。
本発明の第1の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記電解質層は、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極と接する表面を含む層を構成する第1の電解質部と、前記層以外の部分である他の層を構成する第2の電解質部と、を備え、
前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第1の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる第1の電解質部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、電解質層全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第1の燃料電池において、
前記第1の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
前記第2の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極側に供給される前記反応ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、電解質層全体で、水熱分解の進行を防止することができる。
本発明の第2の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記電解質層は、面内において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に対応する第1の電解質部と、前記分極抵抗がより小さくなる領域に対応する第2の電解質部と、を備え、
前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第2の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる第1の電解質部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、電解質層全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第3の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える単セルを複数積層することによって構成される燃料電池であって、
前記燃料電池において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に配設される前記単セルは、前記電解質層として第1の電解質部を備えると共に、前記分極抵抗がより小さくなる領域に配設される前記単セルは、前記電解質層として、前記第1の電解質部とは異なる材料から成る第2の電解質部を備え、
前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第3の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる領域に設けられた単セルが備える第1の電解質部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、燃料電池全体で、各単セルが備える電解質層における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第2または第3の燃料電池において、前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的低温になる領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的高温になる領域であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池の発電時に比較的低温になる領域を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成することにより、電解質層全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第2の燃料電池において、さらに、
前記触媒電極上に設けられて電極活物質を含有する反応ガスが流れる反応ガス流路を備え、
前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的高い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的低い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池の発電時に水蒸気圧が比較的高くなる領域を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成することにより、電解質層全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第2または第3の燃料電池において、
前記第1の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記第1の電解質部との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第1の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
前記第2の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記第2の電解質部との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第2の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池全体で、電解質層における水熱分解の進行を防止することができる。
本発明の第1ないし第3いずれかの燃料電池において、
前記第2の電解質部を構成する材料は、前記第1の電解質部を構成する材料よりも、導電種であるイオンの伝導率が高い材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、電解質層全体で、水熱分解の進行を抑制すると共に、電解質層における水熱分解の進行の抑制に起因する電池性能の低下を抑えることができる。
本発明の第4の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極は、前記電解質層と接する表面を含む層を構成する第1の電極部と、前記層以外の部分である他の層を構成する第2の電極部と、を備え、
前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第4の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる第1の電極部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、第1の電極全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第4の燃料電池において、
前記第1の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
前記第2の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極側に供給される前記反応ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、電解質層全体で、水熱分解の進行を防止することができる。
本発明の第5の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極は、面内において、前記第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域を構成する第1の電極部と、前記分極抵抗がより小さくなる領域を構成する第2の電極部と、を備え、
前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第5の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる第1の電極部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、第1の電極全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第6の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える単セルを複数積層することによって構成される燃料電池であって、
前記燃料電池において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に配設される前記単セルは、前記第1の電極として第1の電極部を備えると共に、前記分極抵抗がより小さくなる領域に配設される前記単セルは、前記第1の電極として、前記第1の電極部とは異なる材料から成る第2の電極部を備え、
前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料であることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第6の燃料電池によれば、水熱分解が進行しやすい状態になる領域に設けられた単セルが備える第1の電極部を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成するため、燃料電池全体で、各単セルが備える第1の電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第5または第6の燃料電池において、
前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的低温になる領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的高温になる領域であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池の発電時に比較的低温になる領域を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成することにより、第1の電極全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第5の燃料電池において、さらに、
前記触媒電極上に設けられて電極活物質を含有する反応ガスが流れる反応ガス流路を備え、
前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的高い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的低い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池の発電時に水蒸気圧が比較的高くなる領域を、燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料で構成することにより、第1の電極全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第5または第6の燃料電池において、
前記第1の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極部と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第1の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
前記第2の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第2の電極部と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第2の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、燃料電池全体で、第1の電極における水熱分解の進行を防止することができる。
本発明の4ないし第6いずれか記載の燃料電池において、
前記第2の電極部を構成する材料は、前記第1の電極部を構成する材料よりも、電極としての触媒活性および電子伝導性が高い材料であることとしても良い。
このような構成とすれば、第1の電極全体で、水熱分解の進行を抑制すると共に、第1の電極における水熱分解の進行の抑制に起因する電池性能の低下を抑えることができる。
本発明の第7の燃料電池は、電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記電解質層として、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極と接する表面を少なくとも含む領域が、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料によって形成される電解質層を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第7の燃料電池によれば、電解質層における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明の第8の燃料電池は、 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極として、前記電解質層と接する表面を少なくとも含む領域が、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料によって形成される電極を備えることを要旨とする。
以上のように構成された本発明の第8の燃料電池によれば、第1の電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、燃料電池システムの運転方法などの形態で実現することが可能である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
A.水熱分解と水蒸気圧との関係:
B.第1実施例の燃料電池システム:
(B−1)システム構成:
(B−2)システム制御:
(B−3)第1実施例の変形例:
C.第2実施例の燃料電池システム:
D.第3実施例の燃料電池:
E.第4実施例の燃料電池:
F.第5実施例の燃料電池:
G.第6実施例の燃料電池スタック:
H.変形例:
A.水熱分解と水蒸気圧との関係:
プロトン伝導性固体酸化物を電解質層として有する燃料電池では、発電に伴ってカソードで水が生じ、この生成水が、カソードに給排されている酸化ガス中に気化することにより、酸化ガス中の水蒸気圧が上昇する。このように酸化ガス中の水蒸気圧が上昇したときに、水蒸気圧が、固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を超えると、固体酸化物から成る電解質層では水熱分解が進行する。そのため、燃料電池が備える電解質における水熱分解の進行を抑えるためには、酸化ガス中の水蒸気圧よりも、そのときの運転温度における固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧の方が高い状態を維持することが必要であると考えられる。
しかしながら、燃料電池の発電中に、酸化ガス中の水蒸気圧が、電解質層を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を超えない場合であっても、固体酸化物電解質層の表層部が水熱分解する場合があることを、本願出願人は新たな知見として見い出した。そして、このような知見から、電解質層とカソードとの界面を含む局所的な領域は、カソード上を流れる酸化ガス中とは異なる水蒸気分圧環境にある、すなわち、酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い所定の水蒸気圧に晒される状態と同視できる状態になるとの結論に至った。これは、電解質層とカソードとの界面を含む局所的な領域は、カソード分極に起因する電気化学的効果により、単に酸化ガス中の水蒸気分圧環境に晒されたときよりも、固体酸化物がより分解されやすい状態になるためと考えられる。
以下、電解質層とカソードとの界面近傍には、酸化ガス中よりも高い水蒸気圧となる特殊な環境が成立しているものと想定して、界面近傍におけるこのような仮想的な水蒸気分圧を、界面水蒸気圧と呼ぶことにする。すなわち、電解質とカソードとの界面近傍の局所的な状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧として表わした値を、界面水蒸気圧と呼ぶ。本願出願人は、上記界面水蒸気圧についてさらに詳細に解析し、界面水蒸気圧(以下、界面水蒸気圧を、Pinf(H2O)と表わす)を、以下の(1)式によって近似的に表わすことができることを見いだした。
Pinf(H2O)=Pvap(H2O)×exp(2Fη/RT) …(1)
ただし、Pvap(H2O):気相(酸化ガス中)の水蒸気圧、
F:ファラデー定数、
η:カソード分極、
R:気体定数、
T:温度、である。
すなわち、(1)式によって算出した界面水蒸気圧から予想される電解質層の分解条件と、実験的に観察された電解質層における実際の分解挙動とが、良く一致した。以下、これについて説明する。
図10は、代表的な固体酸化物についての水熱分解臨界水蒸気圧を表わす図である。図10(A)は、BaZrO3、SrZrO3、BaCeO3の3種類の固体酸化物についての水熱分解臨界水蒸気圧を示しており、図10(B)は、La0.5Sr0.5MnO3についての水熱分解臨界水蒸気圧を示す。図10(A)に示す固体酸化物に所定のドーパントを加えることで、プロトン伝導性を有する固体酸化物を作製することができる。このような固体酸化物を電解質層として用いる燃料電池において、酸化ガス中の水蒸気圧と電解質層の分解挙動とを調べると、酸化ガス中の水蒸気圧が、水熱分解臨界水蒸気圧の図からは水熱分解を起こさないと考えられる値であっても、電解質層表面が分解する場合がある。このように、酸化ガス中の水蒸気圧は水熱分解臨界水蒸気圧未満であるものの実際には分解が進行する場合に、(1)式に基づいて界面水蒸気圧を算出すると、界面水蒸気圧としては水熱分解臨界水蒸気圧を超える値が得られた。すなわち、酸化ガス中の水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧未満であっても、(1)式から算出される界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を超えるならば固体酸化物表面では水熱分解が進行するという結果が得られた。このようにして、(1)式が、実際の分解挙動を良く反映することが確認された。
以上のことから、本発明の実施例では、上記(1)式を用いて求めた仮想的な水蒸気圧である界面水蒸気圧Pinf(H2O)を、水熱分解臨界水蒸気圧未満にすることによって、電解質層における水熱分解反応の進行の抑制を図っている。なお、燃料電池において、電解質層だけでなく、カソード電極も、固体酸化物(例えば図10(B)に示す固体酸化物)によって構成することができる。そのため、実施例では、カソード電極を構成する固体酸化物においても、電解質層を構成する固体酸化物と同様にして、水熱分解の抑制を図っている。
B.第1実施例の燃料電池システム:
(B−1)システム構成:
図1は、本発明の第1実施例である燃料電池システム10の概略構成を表わすブロック図である。燃料電池システム10は、燃料電池15と、燃料ガス供給部30と、酸化ガス供給部40と、冷却部60と、制御部50と、を備えている。燃料電池15によって発電された電力は、負荷16に供給される。
燃料電池15は、固体酸化物型の燃料電池であり、単セルが複数積層されたスタック構造を有している。図2は、燃料電池15を構成する単セル20の概略構成を示す断面模式図である。単セル20は、水素透過性金属層22と、水素透過性金属層22の一方の面上に形成された電解質層21と、電解質層21上に形成されたカソード電極24と、から成る層構造を備えている。また、単セル20は、上記層構造を、さらに両側から挟持する2つのガスセパレータ28、29を備えている。ガスセパレータ28と水素透過性金属層22との間には、水素を含有する燃料ガスが通過する単セル内燃料ガス流路25が形成されている。また、ガスセパレータ29とカソード電極24との間には、酸素を含有する酸化ガスが通過する単セル内酸化ガス流路26が形成されている。
水素透過性金属層22は、水素透過性を有する金属によって形成される緻密な層であり、例えば、パラジウム(Pd)またはPd合金により形成することができる。あるいは、バナジウム(V)等の5族金属(Vの他、ニオブ、タンタル等)または5族金属の合金を基材として、少なくともその一方の面(単セル内燃料ガス流路側の面)にPdやPd合金層を形成した多層膜としても良い。この水素透過性金属層22は、本実施例の燃料電池においてアノード電極として働く。
電解質層21は、プロトン伝導性を有する固体酸化物から成る層である。電解質層21を構成する固体電解質としては、例えば、BaCeO3 系や、SrZrO3系や、BaZrO3系、あるいはSrCeO3 系などのペロブスカイト型セラミックスプロトン伝導体を用いることができる。電解質層21は、緻密な水素透過性金属層22上に成膜されるため、充分な薄膜化(例えば、0.1〜5μm)が可能となる。したがって、固体酸化物の膜抵抗を低減することができ、従来の固体電解質型燃料電池の運転温度よりも低い温度である約200〜600℃程度で燃料電池を運転することができる。
カソード電極24は、例えば、電気化学反応を促進する触媒活性と共に電子伝導性を有する固体酸化物によって形成することができる。カソード電極24を構成する固体電解質としては、例えば、La0.6Sr0.4CoO3や、La0.5Sr0.5MnO3等のペロブスカイト型導電体を用いることができる。あるいは、カソード電極24は、上記触媒活性を有する貴金属、例えばパラジウム(Pd)や白金(Pt)によって形成しても良い。白金のように水素透過性を有しない貴金属によりカソード電極24を構成する場合には、カソード電極24を充分に薄く形成するなどにより、カソード電極24においてガス透過性を確保すればよい。
ガスセパレータ28,29は、電子伝導性を有する材料(例えば、ステンレス鋼等の金属)により形成されたガス不透過な部材である。ガスセパレータ28,29の表面には、既述した単セル内燃料ガス流路25や単セル内酸化ガス流路26を形成するための所定の凹凸形状が形成されている。なお、図2に示した本実施例の単セル20においては、ガスセパレータと電極(水素透過性金属層22あるいはカソード電極24)との間に、さらに、導電性と共にガス透過性を有する部材(集電体)を配設する等の変形が可能である。
燃料電池が発電する際には、単セル内燃料ガス流路25に供給される燃料ガス中の水素分子が、水素透過性金属層22の表面において、触媒金属である水素透過性金属の働きで水素原子あるいはプロトンに分離する。分離した水素原子あるいはプロトンは、水素透過性金属層22内を透過し、その後、プロトンの状態で電解質層21内をさらに透過する。このとき、カソード電極24では、カソード電極24を構成する固体酸化物が触媒活性を有することにより、電解質層21を透過してカソード電極24に達したプロトンと、単セル内酸化ガス流路26に供給される酸化ガス中の酸素とから水が生じ、電気化学反応が進行する。
なお、燃料電池15には、その内部温度を検出するための温度センサ17が設けられている。温度センサ17は、例えば熱電対によって構成することができる
燃料ガス供給部30は、燃料ガス供給源32と燃料ガス用配管34とを有しており、燃料電池15内に形成される単セル内燃料ガス流路25に、水素を含有する燃料ガスを供給する。燃料ガスとしては、水素ガスを用いることができ、この場合には、燃料ガス供給源32としては、水素ボンベや、水素吸蔵合金を備える水素タンクを用いることができる。また、燃料ガスとして改質ガスを用いても良く、この場合には、燃料ガス供給源32としては、炭化水素やアルコールなどの炭化水素系燃料から水素リッチな改質ガスを生成する装置を用いることができる。
酸化ガス供給部40は、ブロワ42と酸化ガス用配管44とを有しており、燃料電池15内に形成される単セル内酸化ガス流路26に、酸化ガスとして空気を供給する。
また、燃料電池15と負荷16とを接続する配線には、燃料電池15からの出力電流を検出する電流センサ18が設けられている。さらに、燃料電池システム10には、燃料電池15からの出力電圧を検出するために、電圧センサ19が設けられている。
冷却部60は、燃料電池15を冷却して燃料電池15の運転温度を所定範囲に保つための冷媒を、燃料電池15内部に流通させるための構造である。冷却部60は、冷媒流路63と、冷媒流路63に冷媒として空気を導入するブロワ64と、冷媒流路63に接続されるスタック内冷媒路62とを備えている。スタック内冷媒路62は、燃料電池15の内部において、各単セル間に、あるいは所定数の単セルを積層する毎に設けられており、冷媒流路63を介してブロワ64から空気が供給される。本実施例の燃料電池システム10では、ブロワ64の駆動量、すなわち、スタック内冷媒路62に供給される空気量を調節することによって、燃料電池15の内部温度を調節可能となっている。
制御部50は、マイクロコンピュータを中心とした論理回路として構成され、詳しくは、予め設定された制御プログラムに従って所定の演算などを実行するCPU55と、CPU55で各種演算処理を実行するのに必要な制御プログラムや制御データ等が予め格納されたROM56と、同じくCPU55で各種演算処理をするのに必要な各種データが一時的に読み書きされるRAM57と、各種の信号を入出力する入出力ポート58等を備える。この制御部50は、例えば燃料電池15に対する負荷要求に関する情報や、燃料電池15の運転状態に係る情報(例えば、電流センサ18、電圧センサ19あるいは温度センサ17の検出信号)を取得する。そして、制御部50は、燃料電池15の発電制御に関わる機能を有する各機能部(例えば、燃料ガス供給部30や酸化ガス供給部40や冷却部60)に駆動信号を出力する。
(B−2)システム制御:
図3は、燃料電池15を構成する固体酸化物における水熱分解反応の進行を抑えるために実行される水熱分解判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。本ルーチンは、燃料電池15の発電中に、制御部50のCPU55において、所定の時間間隔で実行される。
本ルーチンが実行されると、CPU55は、最初に燃料電池15に対する負荷要求を取得する(ステップS100)。その後、CPU55は、取得した負荷要求に従って、燃料電池15の発電条件および負荷16を制御する(ステップS110)。燃料電池15の発電条件の制御としては、CPU55は、負荷要求に応じた電力を発電するために設定される所定量の燃料ガスおよび酸化ガスが燃料電池15に供給されるように、燃料ガス供給部30および酸化ガス供給部40に駆動信号を出力する。具体的には、燃料ガス供給部30の燃料ガス供給源32が水素ボンベを備える場合には、水素ボンベから燃料電池15への水素供給量を調節する圧力調整弁に対して駆動信号を出力する。また、燃料ガス供給源32が改質器を備える場合には、改質器に供給する炭化水素などの改質原料の量を調節する流量調整弁に対して駆動信号を出力する。酸化ガス供給部40については、ブロワ42に対して駆動信号を出力する。また、負荷16の制御としては、負荷16が例えば電動機である場合には、CPU55は、電動機の駆動量が負荷要求に応じた駆動量となるように電動機に対して駆動信号を出力する。
次にCPU55は、燃料電池15の内部温度Tおよびカソード分極ηを取得する(ステップS120)。燃料電池15の内部温度Tの取得は、温度センサ17の検出信号の取得により行なう。なお、燃料電池15の内部温度Tは、燃料電池15の内部温度を直接検出する以外の方法により求めても良い。燃料電池15の内部温度を良く反映して、燃料電池15の内部温度と一定の相関関係を有する温度を検出することによって容易に内部温度を求めることができる。例えば、燃料電池15から排出される燃料ガスや酸化ガス、あるいは冷媒の温度を検出して、内部温度Tを求めても良い。また、温度を検出する以外の方法、例えば、燃料電池15における発電量から算出される発熱量に基づいて、内部温度Tを推定しても良い。
カソード分極ηは、さらに電流センサ18および電圧センサ19の検出信号を取得して、これらの検出値に基づいて導出される。ここで、燃料電池15における抵抗は、IR抵抗と分極抵抗(アノード分極およびカソード分極)との和として把握することができる。IR抵抗とは、主として、燃料電池15を構成する各部材(例えば、電解質層21、水素透過性金属層22、カソード電極24、セパレータ28,29)が示す抵抗値と、上記各部材間に生じる接触抵抗との和から成る。ここで、カソード分極ηは、例えば燃料電池15において交流インピーダンス法を行なうことにより求めることができる。交流インピーダンス法とは、燃料電池に微少な正弦交流波を印加してインピーダンスの解析を行なう周知の手法であり、上記IR抵抗、アノード分極およびカソード分極を分離して把握することが可能となる。図1の燃料電池15に対して、図示しない交流印加部を用いて正弦交流波を印加し、検出される電流値および電圧値に基づいて、制御部50においてインピーダンスの解析を行なえば良い。
あるいは、カソード分極ηを直接検出するのではなく、推定値として求めても良い。上記各部材が示す抵抗値と、各部材間に生じる接触抵抗とは、各部材を構成する材料に応じて定まる値である。特に、電解質層21が示す抵抗値は温度に応じて変化する値であるため、上記IR抵抗は、温度および出力電流に応じて定まる値として把握することができる。そのため、検出した電流値および電圧値から求まる全体の抵抗値と、温度および出力電流に基づいて推定されるIR抵抗とから、分極抵抗を推定することができる。また、分極抵抗のうち、アノード分極は無視できる程度に小さいため、推定した分極抵抗をカソード分極ηとして取り扱うこととしても良い。
ステップS120で内部温度Tおよびカソード分極ηを取得すると、CPU55は、カソード電極24上を流れる酸化ガス中の水蒸気圧Pvap(H2O)を算出する(ステップS130)。燃料電池15は、水が全て気体として存在する温度条件であるため、酸化ガス中の水蒸気圧Pvap(H2O)は、燃料電池15で生じる生成水量と、カソードに供給される酸化ガス流量と、空気中の水蒸気分圧とから算出することができる。ここで、発電に伴って生じる生成水量は、以下に示す燃料電池における電気化学反応を表わす式と、燃料電池における発電量とに基づいて算出することができる。なお、以下の(2)式はアノードにおける反応を示し、(3)式はカソードにおける反応を示し、(4)式は燃料電池全体における反応を示している。
2 → 2H++2e- …(2)
(1/2)O2+2H++2e- → H2O …(3)
2+(1/2)O2 → H2O …(4)
燃料電池15における発電量は、ステップS100で取得した負荷要求、あるいは、ステップS110で負荷16に対して出力した駆動信号に基づいて、知ることができる。カソードに供給される酸化ガス流量は、ステップS110でブロワ42に出力した駆動信号に基づいて知ることができる。空気中の水蒸気分圧は、予め制御部50内のメモリに記憶しておけばよい。
なお、燃料電池15において、酸化ガスを常に一定の過剰率(負荷要求に対して理論的に定まる必要量に対する実際の供給ガス量の割合)で供給する制御を行なう場合には、酸化ガス中の水蒸気圧は一定に保たれる。したがって、このような制御を行なう場合には、過剰率に応じて定まる水蒸気圧を予め制御部50に記憶しておけばよい。
次に、CPU55は、電解質層21とカソード電極24との界面近傍における既述した仮想的な水蒸気分圧である界面水蒸気圧Pinf(H2O)を算出する(ステップS140)。このときCPU55は、界面水蒸気圧導出部として機能する。界面水蒸気圧Pinf(H2O)は、ステップS130で算出した酸化ガス中の水蒸気圧Pvap(H2O)と、ステップS120で取得したカソード分極ηおよび内部温度Tを用いて、既述した(1)式に基づいて算出する。
また、CPU55は、電解質層21を構成する固体酸化物の、現在の内部温度Tにおける水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を導出する(ステップS150)。このとき、CPU55は、上記内部温度Tにおける電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部として機能する。水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)は、図10に示したように温度に応じて定まる値であるため、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)と内部温度Tとの関係を予め制御部50内にマップとして記憶しておき、ステップS150では、このマップを参照すればよい。
その後、CPU55は、ステップS140で算出した界面水蒸気圧Pinf(H2O)と、所定の基準値refAとを比較する(ステップS160)。ここで、所定の基準値refAとは、ステップS150で導出した水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)から所定の安全マージン値margBを減じた値である。すなわち、以下の(5)式が成り立つ。
refA=Pcrit(H2O)−margB …(5)
このステップS160は、固体酸化物によって形成される電解質層21の表層部が、水熱分解される可能性がある状態であるか否かを判断する工程であり、水熱分解されないとの判断を行なう際の信頼性を確保するために、上記安全マージン値margBが設けられている。したがって、安全マージン値margBは、界面水蒸気圧Pinf(H2O)や水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を求める際に生じる得る誤差の原因、例えば、電流センサ18や電圧センサ19や温度センサ17における測定誤差、あるいは既述したマップ作成時に生じる誤差を考慮して、適宜設定すればよい。基準値refAを算出する際には、CPU55は、電解質層21が水熱分解されない水蒸気圧としての許容水蒸気圧を設定する許容水蒸気圧設定部として機能する。
ステップS160において、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refA以上である場合には、電解質層21を構成する固体酸化物が水熱分解される状態になっていると考えられる。そのため、このような場合には、CPU55は、燃料電池15の出力電圧が上昇するように、燃料電池15の運転条件を変更する制御を行ない(ステップS170)、本ルーチンを終了する。このステップS170は、具体的には、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refAよりも小さくなって、上記固体酸化物が水熱分解されない状態になるように、ステップS110で設定し実行している燃料電池15の発電条件および負荷16に関する制御状態を変更するものである。
燃料電池では一般に、低負荷時(出力電力が小さいとき)ほどカソード分極ηが小さくなるが、出力電力は、出力電圧を上昇させることにより減少させることができる。出力電圧を上昇させてカソード分極ηを小さくすることで、(1)式より、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を小さくすることができ、その結果、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を基準値refAよりも小さくする、あるいはこのような状態に近づけることができる。燃料電池15の出力電圧を上昇させるような制御の変更とは、より具体的には、負荷16が電動機である場合には、制御部50から負荷16に対する駆動信号の目標値を変更して、負荷16における消費電力を小さくすることによって実行される。このステップS170では、負荷16の消費電力が一定の大きさで小さくなるように負荷16に対する駆動信号の目標値を変更しても良く、この場合には、ステップS170を実行するごとに、所望の状態に近づけることができる。あるいは、ステップS170では、界面水蒸気圧Pinf(H2O)と基準値refAとの差に基づいて、負荷16の消費電力における望ましい減少量を設定し、設定した消費電力の減少量に基づいて、負荷16に対する駆動信号の目標値を変更しても良い。なお、ステップS170では、燃料電池15の出力電圧を上昇させると共に、燃料電池15に供給する燃料ガスおよび酸化ガス量を少なくするように、ステップS110で設定した制御を変更しても良い。
ステップS160において、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refA未満である場合には、電解質層21を構成する固体酸化物は水熱分解されない状態にあると考えられる。そのため、CPU55は、ステップS110で設定し実行している燃料電池15の発電条件および負荷16に関する制御状態を維持し(ステップS180)、本ルーチンを終了する。すなわち、負荷要求に応じた電力が燃料電池15から得られる運転状態を維持する。
以上のように構成された本実施例の燃料電池システム10によれば、燃料電池による発電を行なう際に、電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)に基づいて燃料電池システムの制御を変更することによって、上記固体酸化物の水熱分解の抑制を可能にしている。すなわち、上記固体酸化物が設けられた環境における水蒸気圧が、固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を下回るように、システム制御を変更しているため、固体酸化物の水熱分解を抑制することができる。
特に本実施例では、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)以上である場合に、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)よりも小さくなるように制御を変更している。すなわち、電解質層21において、カソード電極24との界面近傍の水蒸気圧が、電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧よりも低くなるように制御を変更している。このように、単にカソード側に供給されるガス中の水蒸気圧ではなく、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を想定し、この界面水蒸気圧に基づいて制御を行なうことにより、水熱分解が進行しやすい界面近傍領域を含めて電解質層21全体で、水熱分解の進行を抑制することができる。これにより、電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解に起因する燃料電池15の性能低下を抑制すると共に、燃料電池15の耐久性を向上させることができる。このとき、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)未満である場合、すなわち電解質層21を構成する固体酸化物が水熱分解されない状態である場合には、燃料電池15において負荷要求に応じた発電が行なわれる状態が維持される。したがって、全体としては負荷要求に応じた発電量が得られる制御を行ないつつ、燃料電池15内部の水蒸気圧の状態が、固体酸化物が水熱分解され得る状態となったときには、制御を変更することによって、上記水熱分解の進行を抑制することができる。
なお、本実施例では、界面水蒸気圧Pinf(H2O)と比較するために、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)に代えて、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)から所定の安全マージン値margBを減じた値である基準値refAを用いている。これにより、界面水蒸気圧Pinf(H2O)や水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を求める際に誤差が生じていても、界面水蒸気圧が水熱分解臨界水蒸気圧を下回る状態を実質的に維持可能となり、制御の信頼性を向上させることができる。
(B−3)第1実施例の変形例:
(B−3−1)変形例1:
第1実施例では、(5)式に従って基準値refAを設定する際に安全マージン値margBを用いているが、この安全マージン値margBは、一定の値とする必要はない。基準値refAを設定する際に参照する水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)は、燃料電池15の内部温度に基づいて導出するが、例えば、燃料電池15の内部温度が、温度検出の際の誤差が大きくなる温度であると判断される場合には、安全マージン値margBを、より大きな値としても良い。具体的には、温度センサ17が、温度によって温度測定誤差が変動する性質を有する場合に、検出した温度が、測定誤差が大きくなると予想される温度範囲であるときには、安全マージン値margBを、より大きな値とすれば良い。
(B−3−2)変形例2:
第1実施例では、ステップS160において、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refA以上である場合には、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refA未満となるように制御を変更しているが、水熱分解の進行を停止させるために、燃料電池15の発電を停止させることとしても良い。例えば、何らかの理由により、ステップS170において燃料電池15の出力電圧を上昇させる処理を行なっても、界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refA以上である状態を改善できない事態が生じる可能性が考えられる。また、ステップS160において界面水蒸気圧Pinf(H2O)が基準値refAに比べて極めて大きく、許容し難い速度で水熱分解が進行する事態が生じる可能性が考えられる。このような場合には、燃料電池15と負荷16との間の接続を切断し、燃料電池15の発電を停止させる制御を行なっても良い。
(B−3−3)変形例3:
第1実施例では、ステップS170において、燃料電池15の出力電圧を上昇させる制御を行なうことによって、固体酸化物が水熱分解される状態の解消を図っているが、異なる制御を行なっても良い。例えば、ブロワ42の駆動量を増加させて、燃料電池15のカソードに供給する酸化ガス量を増加させても良い。酸化ガス量を増加させることで、酸化ガス中の水蒸気圧Pvap(H2O)が低下し、その結果、酸化ガス中の水蒸気圧Pvap(H2O)の値を用いて(5)式に基づいて算出される界面水蒸気圧Pinf(H2O)も低下する。したがって、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を基準値refA未満にすることが可能となる。
あるいは、冷媒によって燃料電池15を冷却させる程度を抑えることによって、燃料電池15の温度を上昇させても良い。燃料電池15の内部温度Tを上昇させると、ステップS150で導出される固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が上昇し、その結果、基準値Aが大きくなる。これにより、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を基準値refA未満にすることが可能となる。燃料電池15を冷却させる程度を抑えるには、例えば、ブロワ64の駆動量を減少させて、冷媒である空気流量を減少させればよい。
実施例のように燃料電池15の出力電圧を上昇させる制御は、極めて短い時間で効果が得られるため望ましいが、界面水蒸気圧Pinf(H2O)を低下させることができれば、あるいは基準値Aを大きくすることができれば、異なる制御であっても同様の効果が得られる。
(B−3−4)変形例4:
第1実施例では、ステップS120でカソード分極ηを取得する際に、燃料電池15全体の出力電圧および出力電流を検出し、燃料電池15全体を代表する値として、カソード分極ηを検出しているが、異なる構成としても良い。例えば、特定の単一の単セル、あるいは特定の複数の単セルのそれぞれに電圧センサを設け、交流インピーダンス法を行なう際に、上記特定の単セルについてインピーダンスの解析を行なってカソード分極ηを求めても良い。このような構成とすれば、上記特定の単セルについて、電解質層表面で水熱分解が進行するか否かを判断することができる。特に、上記特定の単セルとして、電解質層が水熱分解される状態になりやすい単セル(例えば温度が低下しやすい位置の単セル)を選択しておけば、いずれかの単セル内で水熱分解が進行し始める前に、水熱分解の進行を抑制する適切な措置をとることが可能となる。
(B−3−5)変形例5:
第1実施例では、CPU55が負荷要求を取得した後に、負荷要求に応じた電力を燃料電池15が出力するように制御を変更し、その後、内部温度Tを検出すると共に、出力電圧および出力電流を検出することによってカソード分極ηを求めている。このように、負荷要求に応じて実際に運転状態を変更したうえで、固体酸化物の水熱分解が進行される状態となったか否かを判断するのではなく、運転状態を変更した結果を予測して、この予測に基づいて、固体酸化物が水熱分解される状態になるか否かを判断することとしても良い。燃料電池では、発電量が定まれば、出力電圧および出力電流を予想することができる。また、燃料電池における発電量と発熱量の関係や、燃料電池における熱容量を予め調べておくことにより、燃料電池の発電状態に関する制御を変更した後の燃料電池温度を予測することも可能である。そして、予測に基づいて、固体酸化物が水熱分解される状態になると判断される場合には、固体酸化物が水熱分解されない状態となるように、具体的には、例えば燃料電池15の出力電圧が充分に低くなるように、燃料電池15の発電状態を制御すればよい。このように予測に基づいて判断する場合には、電解質層21を構成する固体酸化物は、短い時間であっても水熱分解される環境に晒されることがない。
(B−3−6)変形例6:
第1実施例では、電解質層21における、カソード電極24との界面近傍での水熱分解を抑制しているが、カソード電極24を固体酸化物によって構成する場合には、上記構成に加えて、あるいは上記構成に代えて、カソード電極24における、電解質層21との界面近傍での水熱分解を抑制することとしても良い。
カソード電極24の界面における水熱分解を抑制するには、図3のステップS150において、電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)に代えて、カソード電極24を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を導出すればよい。そして、カソード電極24を構成する固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧に基づいて基準値refAを設定し、この基準値refAを、ステップS160の判断で用いれば良い。
電解質層21とカソード電極24との両方を固体酸化物によって形成する場合には、それぞれについて図3に示した判断を行なっても良い。また、電解質層21を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧と、カソード電極24を構成する固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧のいずれかが、燃料電池の運転温度範囲において常に低くなる場合には、低い方の水熱分解臨界水蒸気圧のみに基づいて、図3に示した判断を行なうこととしても良い。
(B−3−7)変形例7:
第1実施例の燃料電池システム10では、負荷16は、必要な電力を全て燃料電池15から得ることとしたが、異なる構成としても良い。例えば、燃料電池15とは異なる電源として2次電池を備えることとして、燃料電池15と2次電池のうちの一方および両方から、負荷16に対して電力を供給する構成としても良い。この場合にも、図3のステップS170において、燃料電池15の出力電圧がより低くなるように制御を変更して燃料電池15からの出力電力量を減少させることで、同様の効果が得られる。また、このように負荷16に対してさらに他の電源から電力供給可能とすることで、燃料電池15内部の水蒸気圧の状態に関わらず、負荷要求を満たす電力を負荷16に対して供給し続けることが可能となる。
C.第2実施例の燃料電池システム:
第1実施例では、実測値あるいは推定値に基づいて界面水蒸気圧Pinf(H2O)および水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を求め、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が界面水蒸気圧Pinf(H2O)以上にならないように制御している。これに対して、界面水蒸気圧Pinf(H2O)および水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)を具体的に導出することなく、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が界面水蒸気圧Pinf(H2O)以上になる可能性が高いと判断されるときに、固体酸化物の水熱分解を抑制するための制御を行なうことも可能である。以下に、このような構成を第2実施例として説明する。
図4は、第2実施例の燃料電池システムにおいて、実行される負荷増大予想処理ルーチンを表わすフローチャートである。第2実施例の燃料電池システムは、第1実施例の燃料電池システム10と同様の構成を有しているため、以下、第1実施例と同じ参照番号を用いて詳しい説明は省略する。第2実施例の燃料電池システム10は、特に、車両の駆動用電源として電気自動車に搭載されており、負荷16は、車両の駆動力を発生するモータである。また、第2実施例の燃料電池システム10を搭載される車両は、さらに、GPS信号を受信するカーナビゲーションシステムを搭載しており、制御部50は、カーナビゲーションシステムから、GPS信号に係る情報を含む情報(以下、カーナビ情報という)を取得することができる。図4に示す負荷増大予想処理ルーチンは、燃料電池システム10の稼働中に、制御部50のCPU55において、所定の時間間隔で実行される。
本ルーチンが実行されると、CPU55は、最初にカーナビ情報を取得する(ステップS200)。ステップS200で取得するカーナビ情報は、車両の現在位置に関する情報(現在位置の高度に関する情報を含む)の他、車両の走行先に関する地理的情報(車両の走行先における高度情報を含む)を含む。
カーナビ情報を取得すると、CPU55は、取得した情報に基づいて、燃料電池15に対する負荷要求が、所定の大きさで増大すると予想されるか否かを判断する(ステップS210)。例えば、カーナビ情報に基づいて、車両の走行先の高度の上昇傾向から、負荷要求の大きな増加を要する勾配の登りの坂道にさしかかろうとしていると判断される場合には、負荷要求の増大が予想されると判断する。ここで、ステップS210における判断は、界面水蒸気圧が、電解質層21および/またはカソード電極24を構成する固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧から求められる基準値refA以上となる可能性があるか否かを判断するものである。したがって、電解質層21および/またはカソード電極24を構成する固体酸化物が示す水熱分解臨界水蒸気圧や、負荷増大時に供給酸化ガス量が増加する際の反応性など、システム全体の性質を考慮して、ステップS210における具体的な判断基準を設定すればよい。
ステップS210において負荷要求の増大が予想されない場合には、燃料電池15の内部温度Tに関する特段の制御は不要であるため、CPU55は、本ルーチンを終了する。
ステップS210において、負荷要求の増大が予想されると判断した場合には、CPU55は、燃料電池15が所定の高温状態にあるか否かを判断する(ステップS220)。ここで、所定の高温状態とは、燃料電池15の内部温度が、定常状態に比べてより高くなるように制御されている状態をいう。本実施例では、燃料電池15が定常運転を行なうときには、温度センサ17が検出する温度が所定の温度範囲内に維持されるように、ブロワ64を制御することにより、燃料電池15の内部温度を、定常状態に対応する一定の温度範囲に保っている。上記所定の高温状態とは、温度センサ17の検出温度が、上記定常状態に対応する一定の温度範囲に代えて、定常状態に対応する一定の温度範囲よりも高温側にシフトした温度範囲内に維持されるように、燃料電池15の内部温度の制御が行なわれている状態をいう。定常状態に対応する一定の温度範囲、および、所定の高温状態に対応する温度範囲、すなわち、定常状態および所定の高温状態のそれぞれにおける内部温度Tの目標温度範囲は、予め設定されて制御部50内に記憶されている。
ステップS220において燃料電池15が所定の高温状態ではないと判断されると、CPU55は、次に、燃料電池15の内部温度Tを上昇させる処理を実行し(ステップS230)、本ルーチンを終了する。燃料電池15の内部温度Tを上昇させる処理とは、具体的には、燃料電池15を所定の高温状態にする処理である。すなわち、内部温度Tの制御を行なう際の目標温度範囲を、定常状態に対応する一定の温度範囲から、所定の高温状態に対応する温度範囲へと切り替える処理である。このように、目標温度範囲をより高い温度範囲へと変更することにより、燃料電池15の内部温度Tのレベルは上昇する。
ステップS220において燃料電池15が所定の高温状態にあると判断されるときには、負荷増大が予測されて、すでに燃料電池15を所定の高温状態にする処理が行なわれたと考えられるため、CPU55は、所定の高温状態を維持して本ルーチンを終了する。
以上のように構成された第2実施例の燃料電池システム10によれば、負荷増大を予測したときには、実際の負荷増大に先だって燃料電池15の内部温度Tを上昇させておくことができ、これによって、負荷増大時に、電解質層21やカソード電極24を構成する固体酸化物の水熱分解の進行を抑制することができる。これは、温度が高いほど、固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)は一般に高くなるため、水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)に基づいて設定される基準値Aが、界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い状態を維持しやすくなることによる。また、温度が高いほどカソード分極ηは一般に小さくなるため、カソード分極ηが大きくなる高負荷時においてもカソード分極ηの増大を抑えることができ、これによって界面水蒸気圧Pinf(H2O)の増大も抑えられて、基準値Aが界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い状態を維持しやすくなるためである。
第1実施例で説明したように、固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が基準値refA未満である状態にするためには、出力電圧の制御を始めとして種々の制御が可能である。その中で、内部温度Tを上昇させる制御は、実際に内部温度Tを上昇させて効果を得るまでには比較的時間を要するものの、内部温度Tを上昇させることで得られるPcrit(H2O)をrefA未満とするうえでの効果は、他の制御に比べて大きい。本実施例では、負荷要求の増大を前もって予測して、効果が得られるまでに要する時間は長いものの、より大きな効果が得られる対策である内部温度Tの上昇を行なうことで、固体酸化物の水熱分解を効果的に防止している。
第2実施例では、ステップS220において、燃料電池15が所定の高温状態にあるか否かの判断を、内部温度Tの目標温度範囲の設定状態に基づいて判断しているが、異なる構成としても良い。例えば、温度センサ17が検出した実際の検出値に基づいて、燃料電池15が所定の高温状態にあるか否かを判断しても良い。
また、第2実施例では、ステップS230において内部温度Tを上昇させるために、内部温度Tの目標温度範囲の設定を変更しているが、異なる処理を行なっても良い。例えば、燃料電池15に供給する燃料ガスの温度を高めることによって、燃料電池15の内部温度Tを上昇させることができる。具体的には、燃料電池システム10が、燃料ガス供給源32として、炭化水素系燃料を改質する改質器を備えると共に、改質器における改質温度が燃料電池15の運転温度よりも高く、燃料電池15への供給に先立って改質ガスを降温させる場合が考えられる。このような燃料電池システムでは、ステップS230において、改質ガスを降温させる程度を減少させることによって、内部温度Tを上昇させることができる。
また、第2実施例では、燃料電池システム10を車両の駆動用電源として電気自動車に搭載し、車両の駆動力を発生するモータを負荷16としているが、異なる構成としても良い。例えば、燃料電池システム10を、特定の建物や施設に電力を供給する定置型の発電装置として用いることができる。このようなシステムでは、界面水蒸気圧が、電解質層21および/またはカソード電極24を構成する固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧から求められる基準値refA以上になると予想される程度に、特定の時間帯において上記建物や施設における消費電力が増大する場合が考えられる。このような場合には、ステップS210において、上記特定の時間帯に近づいたか否かを判断すればよい。上記特定の時間帯が近づいたときに、燃料電池15の内部温度Tを上昇させる制御を行なえば、実際に負荷要求が増大したときには、燃料電池15が備える固体酸化物における水熱分解の進行を抑制することができる。
D.第3実施例の燃料電池:
第1および第2実施例では、燃料電池システム10における運転制御によって、固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が界面水蒸気圧Pinf(H2O)未満である状態の維持を図っている。これとは別に、電解質層21やカソード電極24を構成する固体酸化物の種類や配置を選択することにより、固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧Pcrit(H2O)が界面水蒸気圧Pinf(H2O)未満となる状態の維持を図ることが可能である。このような構成を第3実施例として以下に説明する。
図5は、第3実施例の燃料電池を構成する単セル120の概略構成を現わす断面模式図である。第3実施例の燃料電池は、例えば第1実施例の燃料電池システム10において、燃料電池15と同様に用いることができる。第3実施例の単セル120は、第1実施例の単セル20と類似する構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。単セル120は、単セル20における電解質層21に代えて、電解質層121を備えている。図5では、単セル120において、水素透過性金属層22と、電解質層121と、カソード電極24とが積層される様子のみを表わしている。
第3実施例の単セル120が備える電解質層121は、第1実施例の電解質層21と同様のプロトン伝導性を有する固体酸化物から成る層である。図5に示すように、第3実施例の電解質層121は、カソード電極24と接する表面を含む層を構成する第1電解質部121aと、水素透過性金属層22と接する側の層を構成する第2電解質部121bとを備えている。第1電解質部121aと、第2電解質部121bとは、それぞれを構成するプロトン伝導性固体酸化物の組成が異なっている。
既述したように、固体酸化物は、水熱分解臨界水蒸気圧として、温度に応じた固有の値を示す。このような水熱分解臨界水蒸気圧と温度との関係は、固体酸化物の組成に応じて一定の関係が定まる。本実施例の電解質層121では、第1電解質部121aを構成する固体酸化物の方が、第2電解質部121bを構成する固体酸化物に比べて、燃料電池が発電する際の温度範囲にわたって、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示すように、各々の層を構成する固体酸化物の組成が選択されている。例えば、図10(A)では、示した温度範囲にわたって、BaZrO3はBaCeO3に比べて高い水熱分解臨界水蒸気圧を示している。第1電解質部121aを構成する固体酸化物と第2電解質部121bを構成する固体酸化物とは、上記BaZrO3とBaCeO3とのような関係にある固体酸化物である。
なお、第1電解質部121aおよび第2電解質部121bは、同種の固体酸化物に異なる種類および/または量のドーパントを加えた固体酸化物によって形成しても良いし、異なる種類の固体酸化物に所定のドーパントを加えた固体酸化物によって形成しても良い。例えば、BaZrO3のジルコニウムサイトの一部をイットリウム(Y)やインジウム(In)で置き換えた固体酸化物を用いる際に、用いるドーパント量を第1電解質部121aと第2電解質部121bとで異ならせ、異なる水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物の層を形成してもよい。あるいは、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示すBaZrO3に所定のドーパントを加えた固体酸化物を用いて第1の電解質部121aを形成すると共に、より低い水熱分解臨界水蒸気圧を示すBaCeO3に所定のドーパントを加えた固体酸化物を用いて第2の電解質部121bを形成しても良い。
このような電解質層121は、例えば、水素透過性金属層22上にPVDあるいはCVDによって電解質層121を成膜する際に、最初に、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物の層を成膜した後に、途中で成膜材料を変更して、その後、より低い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物の層を成膜すればよい。
以上のように構成された第3実施例の燃料電池によれば、カソードに供給される酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水蒸気圧である界面水蒸気圧Pinf(H2O)に晒される状態と同視できる状態になる第1電解質部121aを、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物で形成するため、電解質層121における水熱分解の進行を抑制することができる。ここで、電解質層において、界面水蒸気圧Pinf(H2O)に晒される状態と同視できる状態になるのは、カソード電極と接する表面を含む限られた領域だけである。したがって、第1電解質部121aの厚さは、10〜100nmとすれば良く、全体の性能や製造工程上の便宜などを考慮して、適宜設定すればよい。
このとき、特に、第1電解質部121aを構成する固体酸化物として、燃料電池の発電の際の運転条件として予想される条件にわたって、電解質層121とカソード電極24との界面近傍の局所的な状態を表わす水蒸気圧である界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物を用いることが望ましい。このような構成とすれば、燃料電池の発電を行なう際に、特別な制御を行なうことなく、第1電解質部121aにおける水熱分解の進行を防止可能となる。なお、燃料電池の発電の際の運転条件として予想される条件とは、燃料電池の発電量が変動する際に、燃料電池が取りうる内部温度範囲、および、取りうる酸化ガスにおける水蒸気圧の範囲を含む条件をいう。
このような第3実施例の燃料電池においては、第2電解質部121bを構成する固体酸化物は、第1電解質部121aを構成する固体酸化物ほどには、水熱分解臨界水蒸気圧が高い必要はない。しかしながら、燃料電池の発電の際の運転条件として予想される条件にわたって、酸化ガス中の水蒸気圧よりも水熱分解臨界水蒸気圧が高い状態が維持されるように、第2電解質部121bを構成する固体酸化物の組成を選択することが望ましい。これにより、燃料電池の発電の際に、特別な制御を行なうことなく、電解質層121全体における水熱分解の進行を防止可能となる。
なお、一般にプロトン伝導性固体酸化物は、所定の温度で示す水熱分解臨界水蒸気圧が高いほど、プロトン伝導性が低くなるという性質を示す。これは、結晶構造に歪みがなく安定性の高い固体酸化物ほど水熱分解臨界水蒸気圧が高くなるが、このように強固な結晶構造を持つ固体酸化物ほどプロトン伝導性が低下するためと考えられる。したがって、第3実施例のように、カソード電極24と接する表面を含む層を構成する固体酸化物として、他の層を構成する固体酸化物よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物を用いる場合に、後者が前者よりもプロトン伝導性の高い固体酸化物である場合には、電解質層全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
なお、電解質層において、プロトン伝導性が低下する程度が許容できる場合には、より広い範囲、例えば電解質層全体を、燃料電池の発電の際の運転条件にわたって界面水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を示し得る固体酸化物によって形成しても良い。
第3実施例では、電解質層121において、界面側の層と他の層との間で、構成する固体酸化物の組成を異ならせたが、カソード電極を構成する固体酸化物の組成も同様にして設定することができる。このような構成を第3実施例の変形例として図6に示す。図6では、図5と同様に、単セルにおいて、水素透過性金属層と、電解質層と、カソード電極とが積層される様子のみを表わしている。
第3実施例の変形例の燃料電池における単セルは、図2の単セル20において、カソード電極24に代えてカソード電極124を備えている。カソード電極124は、電解質層21と接する表面を含む層を構成する第1カソード電極部124aと、セパレータ29側の層を構成する第2カソード電極部124bとによって構成されている。ここで、第1カソード電極部124aは、第2カソード電極部124bに比べて、燃料電池の運転温度範囲にわたって、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示すように、固体酸化物の組成が選択されている。
カソード電極は、例えば、構成材料となる固体酸化物の微粒子(例えば平均粒径1μm程度)を作製してペースト化し、このペーストを用いて電解質層上にスクリーン印刷を行なうことにより形成することができる。この場合には、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物を備えるペーストを用い、例えば上記微粒子1層分の厚さに印刷することで、第1カソード電極部124aを形成すればよい。また、その上に、より低い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物を備えるペーストを用いて印刷を行ない、第2カソード電極部124bを形成すればよい。あるいは、電解質層と同様に、PVDやCVDによってカソード電極124を形成することも可能である。
このような第3実施例の変形例の燃料電池によれば、カソード電極124における水熱分解の進行を抑制することができる。ここで、第2カソード電極部124bを構成する固体酸化物として、燃料電池において予想される発電の際の運転条件にわたって、酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物を用いれば、特別な制御を行なうことなく、カソード電極124全体における水熱分解の進行を防止可能となる。このとき、特に、第1カソード電極部124aを構成する固体酸化物として、燃料電池において予想される発電の際の運転条件にわたって、界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物を用いることで、特別な制御を行なうことなく第1カソード電極部124aにおける水熱分解の進行を防止可能となる。さらに、第2カソード電極部124bを構成する固体酸化物として、第1カソード電極部124aを構成する固体酸化物よりも、電極としての触媒活性および電子伝導性が高い固体酸化物を用いるならば、カソード電極124全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。カソード電極において、触媒活性および電子伝導性が低下する程度が許容できる場合には、より広い範囲、例えばカソード電極全体を、燃料電池の発電の際の運転条件にわたって界面水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を示し得る固体酸化物によって形成しても良い。
E.第4実施例の燃料電池:
第3実施例では、電解質層において、カソード電極と接する表面を含む層と他の層との間で固体酸化物の組成を異ならせ、上記表面を含む層における水熱分解の進行を抑制しているが、電解質層の面内で、固体酸化物の組成を異ならせることとしても良い。界面水蒸気圧Pinf(H2O)はカソード分極ηが大きいほど高くなるため、電解質層の面内におけるカソード分極の分布状態に基づいて固体酸化物の組成を異ならせることにより、電解質層における水熱分解の進行を抑制することができる。カソード分極の分布状態は、例えば、温度分布状態に基づいて判断することができる。すなわち、温度が低いほど、カソード分極は一般に大きくなる。温度分布状態に基づいて電解質層の面内における固体酸化物の組成を異ならせる構成を、第4実施例として以下に説明する。
図7は、第4実施例の燃料電池を構成する電解質層221の構成を表わす平面図である。第4実施例の燃料電池は、例えば第1実施例の燃料電池システム10において、燃料電池15と同様に用いることができ、第1実施例の燃料電池15と類似する構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。第4実施例の燃料電池は、燃料電池15を構成する単セル20と同様の単セルを基本構造とすると共に、単セル20における電解質層21に代えて、図7に示す電解質層221を備えている。
図7に示すように、電解質層221は、その外周部側の領域に第1電解質部221aを備え、他の領域、すなわち中心部側の領域に第2電解質部221bを備えている。第1電解質部221aは、第2電解質部221bに比べて、燃料電池が発電する際の温度範囲にわたって、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって構成されている。例えば、第1電解質部221aは、第3実施例の第1電解質部121aと同様の固体酸化物によって形成すればよく、第2電解質部221bは、第3実施例の第2電解質部121bと同様の固体酸化物によって形成すればよい。
このような電解質層221を形成するには、例えば、最初に、水素透過性金属層22上において第2電解質部221bを形成すべき領域をマスキングしたうえで第1電解質部221aを成膜し、その後、第1電解質部221aをマスキングして、第2電解質部221bを成膜すればよい。
燃料電池が発電する際には、一般に、スタック構造の外周部から放熱が行なわれるため、燃料電池の内部温度の分布状態は、外周部ほど低温となる。既述したように、温度が低いほど、カソード分極が大きくなることにより界面水蒸気圧は高くなるが、温度が低いときには、さらに固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧が低くなるため、界面水蒸気圧が水熱分解水蒸気圧以上となり易くなる。すなわち、固体酸化物は水熱分解し易くなる。そのため、電解質層221において、温度が低下しやすい外周部を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって構成することにより、固体酸化物がより水熱分解し易い環境となる外周部領域においても、電解質層221を構成する固体酸化物の水熱分解を抑制することができる。
なお、燃料電池内の温度分布に関わる条件、例えば、予想される負荷要求やスタック構造における熱容量あるいは燃料電池の設置場所を考慮して、第1電解質部221aおよび第2電解質部221bを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。このような温度分布状態に関わる影響を考慮したうえで、燃料電池が発電する際の運転条件下において、第1電解質部221aを設ける領域における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第1電解質部221aを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。また、燃料電池が発電する際の運転条件下において、第2電解質部221bを設ける領域における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第2電解質部221bを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、燃料電池の発電を行なう際に、特別な制御を行なうことなく、電解質層221全体において水熱分解の進行を防止可能となる。ここで、上記第1電解質部221aおよび第2電解質部221bにおいて、第3実施例と同様に、カソード電極と接する表面を含む限られた領域のみを、上記条件を満たす固体酸化物によって形成することも可能である。この場合には、上記表面を含む限られた領域以外の領域は、燃料電池において予想される発電の際の運転条件にわたって、酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物によって形成すればよい。
また、上記第1電解質部221aと第2電解質部221bとの面内での配置、すなわち第1電解質部221aおよび第2電解質部221bの形状は、燃料電池が設置される環境など、燃料電池の内部温度の分布状態に影響する要因を考慮して適宜変更することができる。また、既述したように、プロトン伝導性固体酸化物は一般に、所定の温度で示す水熱分解臨界水蒸気圧が高いほどプロトン伝導性が低くなるという性質を示す。したがって、上記のように第1電解質部221aに比べて高温になる第2電解質部221bを、燃料電池の運転条件下においてより低い水熱分解臨界水蒸気圧を示すと共により安定な固体酸化物によって構成することで、電解質層全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
なお、電解質層221において面内で固体酸化物の組成を異ならせる際に、面内を3つ以上の領域に分割して、それぞれの領域で、構成する固体酸化物の組成を異ならせることとしても良い。全体として、燃料電池の発電時により低温になり易い領域を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す性質を有する固体酸化物で形成することで、同様の効果が得られる。
第4実施例では、燃料電池の内部温度の分布状態に応じて、電解質層221を構成する固体酸化物の組成を面内で異ならせたが、同様にして、カソード電極を構成する固体酸化物の組成を面内で異ならせても良い。例えば、カソード電極において、低温になり易い外周部の領域を第3実施例の変形例の第1カソード電極部124aと同様の固体酸化物で形成し、他の領域、すなわち中心部側の領域を、第2カソード電極部124bと同様の固体酸化物で形成することができる。このように、発電時により低温になり易い領域を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって形成することで、カソード電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
特に、低温になり易い領域と他の領域のいずれにおいても、燃料電池の発電中に、各々の領域で予想される界面水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、各々の領域を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、カソード電極全体において水熱分解の進行を防止可能となる。このとき、電解質層と接する表面を含む限られた領域のみを上記固体酸化物によって形成しても良い。この場合には、他の領域は、燃料電池の発電中に各々の領域で予想される酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるような固体酸化物によって構成すれば良い。また、中心部側の領域を構成する固体酸化物として、外周部の領域を構成する固体酸化物よりも、電極としての触媒活性および電子伝導性が高い固体酸化物を用いるならば、カソード電極全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
F.第5実施例の燃料電池:
第4実施例では、温度分布状態に基づくカソード分極の分布状態に応じて、電解質層の面内で固体酸化物の組成を異ならせているが、異なる構成とすることもできる。カソード分極の分布状態は、例えば、酸化ガス中の水蒸気圧に基づいて判断することもできる。すなわち、酸化ガス中の水蒸気圧が高いほど、カソード分極は一般に大きくなる。酸化ガス中の水蒸気圧に基づいて電解質層の面内における固体酸化物の組成を異ならせる構成を、第5実施例として以下に説明する。なお、酸化ガス中の水蒸気圧がより高くなるときの他に、酸化ガス中の酸素分圧がより低くなるときにも、カソード分極は一般に大きくなるといえる。ここで、燃料電池の単セル内酸化ガス流路では、酸化ガス中の水蒸気圧が高い領域ほど酸化ガス中の酸素濃度が低くなるため、以下の説明は、水蒸気圧についてのみに着目して説明する。
図8は、第5実施例の燃料電池が備える単セル320の構成の概略を現わす断面模式図である。第5実施例の燃料電池は、例えば第1実施例の燃料電池システム10において、燃料電池15と同様に用いることができ、第1実施例の燃料電池15と類似する構成を有するため、共通する部分には同じ参照番号を付して説明を省略し、異なる構成についてのみ説明する。第5実施例の単セル320は、単セル20における電解質層21に代えて、電解質層321を備えている。図8では、単セル320において、水素透過性金属層22と、電解質層321と、カソード電極24とが積層される様子のみを表わしている。
図8に示すように、第5実施例の燃料電池では、各単セル面において一定の方向に酸化ガスが流れるように、単セル内酸化ガス流路26が形成されている。すなわち、単セル面において一定の方向に酸化ガスが流れる単セル内酸化ガス流路26が形成されるように、セパレータ29表面の凹凸形状が設けられている。
第5実施例の電解質層321は、第1電解質部321aと、第2電解質部321bとを備えている。第1電解質部321aは、第2電解質部321bに対して、面内における酸化ガスの流れがより下流側となる領域に設けられている。また、第1電解質部321aは、第2電解質部321bに比べて、燃料電池が発電する際の温度範囲にわたって、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって構成されている。例えば、第1電解質部321aは、第3実施例の第1電解質部121aと同様の固体酸化物によって形成すればよく、第2電解質部321bは、第3実施例の第2電解質部121bと同様の固体酸化物によって形成すればよい。
燃料電池が発電する際には、カソード電極において水が生じるため、単セル内酸化ガス流路26内では、下流側ほど酸化ガス中の水蒸気圧が高くなる。既述したように、酸化ガス中の水蒸気圧が高いほど、カソード分極が大きくなることにより界面水蒸気圧は高くなるが、酸化ガス中の水蒸気圧が高いこと自身によっても、界面水蒸気圧は高くなり((1)式参照)、固体酸化物が水熱分解しやすくなる。すなわち、界面水蒸気圧が水熱分解水蒸気圧以上となり易くなる。そのため、電解質層321において、水蒸気圧が高くなる傾向にある下流側領域を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって構成することにより、固体酸化物がより水熱分解し易い環境となる下流側領域においても、電解質層321を構成する固体酸化物の水熱分解を抑制することができる。
なお、燃料電池が発電する際の運転条件における単セル内酸化ガス流路26内の酸化ガス中の水蒸気圧の変動および水蒸気の分布状態を予め予測して、第1電解質部321aおよび第2電解質部321bを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。すなわち、燃料電池の運転状態が変化して酸化ガス中の水蒸気圧が変動しても、第1電解質部321aを設ける領域における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第1電解質部321aを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。また、酸化ガス中の水蒸気圧が変動しても、第2電解質部321bを設ける領域における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第2電解質部321bを構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、燃料電池の発電を行なう際に、特別な制御を行なうことなく、電解質層321全体において水熱分解の進行を防止可能となる。ここで、上記第1電解質部321aおよび第2電解質部321bにおいて、第3実施例と同様に、カソード電極と接する表面を含む限られた領域のみを、上記条件を満たす固体酸化物によって形成することも可能である。この場合には、上記表面を含む限られた領域以外の領域は、燃料電池において予想される発電の際の運転条件にわたって、それぞれの領域における酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物によって形成すればよい。
また、上記第1電解質部321aと第2電解質部321bとの面内での配置は、単セル内酸化ガス流路26の流路形状、すなわち面内を酸化ガスがどのように流れるかに応じて、より下流側の領域に第1電解質部121aが設けられるように適宜変更すればよい。また、既述したように、プロトン伝導性固体酸化物は、所定の温度で示す水熱分解臨界水蒸気圧が高いほどプロトン伝導性が低くなるという性質を示すため、上記構成とすることで、電解質層全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
なお、電解質層321において面内で固体酸化物の組成を異ならせる際に、面内を3つ以上の領域に分割して、それぞれの領域で、構成する固体酸化物の組成を異ならせることとしても良い。全体として、酸化ガスの流れの下流側に相当する領域を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す性質を有する固体酸化物で形成することで、同様の効果が得られる。
第5実施例では、単セル面内における酸化ガス中の水蒸気圧の変化に応じて、電解質層321を構成する固体酸化物の組成を面内で異ならせたが、同様にして、酸化ガス中の水蒸気圧に応じて、カソード電極を構成する固体酸化物の組成を面内で異ならせても良い。例えば、カソード電極において、酸化ガス流れの下流側に相当する領域を第3実施例の変形例の第1カソード電極部124aと同様の固体酸化物で形成し、他の領域、すなわち酸化ガス流れの上流側に相当する領域を、第2カソード電極部124bと同様の固体酸化物で形成することができる。このように、水蒸気圧がより高い酸化ガスが流れる領域を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す性質を有する固体酸化物で形成することで、カソード電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
特に、下流側の領域と上流側の領域とのいずれにおいても、燃料電池の発電中に、各々の領域で予想される界面水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、各々の領域を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、カソード電極全体において水熱分解の進行を防止可能となる。このとき、電解質層と接する表面を含む限られた領域のみを上記固体酸化物によって形成しても良い。この場合には、他の領域は、燃料電池の発電中に各々の領域を通過する酸化ガス中の水蒸気圧として予想される水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるような固体酸化物によって構成すれば良い。また、上流側の領域を構成する固体酸化物として、下流側の領域を構成する固体酸化物よりも、電極としての触媒活性および電子伝導性が高い固体酸化物を用いるならば、カソード電極全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
G.第6実施例の燃料電池スタック:
第4および第5実施例では、電解質層の面内で、固体酸化物の組成を異ならせたが、スタック構造全体に対する位置に応じて、電解質層を構成する固体酸化物の組成を異ならせても良い。このような構成を第6実施例として以下に説明する。
図9は、第6実施例の燃料電池415の概略構成を表わす説明図である。燃料電池415は、例えば第1実施例の燃料電池システム10において、燃料電池15と同様に用いることができ、第1実施例の燃料電池15に類似する構成を有している。燃料電池415は、単セルを積層したスタック構造を有しているが、スタック構造において、積層方向の両端部近傍には、所定数の第1の単セル420aを備えており、他の領域、すなわち、積層方向のより中央部側には、第2の単セル420bを備えている。
第1の単セル420aおよび第2の単セル420bは、第1実施例の単セル20と同様の構成を有しているが、第1の単セル420aと第2の単セル420bとでは、電解質層を構成する固体酸化物の組成が異なっている。すなわち、第1の単セル420aが備える電解質層は、第2の単セル420bが備える電解質層に比べて、燃料電池が発電する際の温度範囲にわたって、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す固体酸化物によって構成されている。例えば、第1の単セル420aが備える電解質層は、第3実施例の第1電解質部121aと同様の固体酸化物によって形成すればよく、第2の単セル420bが備える電解質層は、第3実施例の第2電解質部121bと同様の固体酸化物によって形成すればよい。
燃料電池が発電する際には、一般に、スタック構造の積層方向端部の近傍ほど、スタック構造からの放熱が多くなり、温度が低くなり易い。既述したように、温度が低いほど、カソード分極が大きくなることにより界面水蒸気圧は高くなるが、温度が低いときには、さらに固体酸化物における水熱分解臨界水蒸気圧が低くなるため、固体酸化物は水熱分解しやすくなる。すなわち、界面水蒸気圧が水熱分解水蒸気圧以上となり易くなる。そのため、スタック構造において、温度が低下しやすい積層方向端部近傍を、水熱分解臨界水蒸気圧がより高い固体酸化物によって構成される電解質を備える単セルで構成することで、発電時に水熱分解が起きやすい低温状態となるスタック端部において、電解質の水熱分解を抑制することができる。
なお、燃料電池内の温度分布に関わる条件、例えば、予想される負荷要求やスタック構造における熱容量あるいは燃料電池の設置場所を考慮して、第1の単セル420aおよび第2の単セル420bが備える電解質層を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。このような温度分布状態に関わる影響を考慮したうえで、燃料電池が発電する際の運転条件下において、第1の単セル420a内における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第1の単セル420aが備える電解質層を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。また、燃料電池が発電する際の運転条件下において、第2の単セル420b内における界面水蒸気圧Pinf(H2O)よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、第2の単セル420bが備える電解質層を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、燃料電池の発電を行なう際に、特別な制御を行なうことなく、スタック構造全体において、電解質層の水熱分解の進行を防止可能となる。ここで、上記第1の単セル420aが備える電解質層および第2の単セル420bが備える電解質層において、第3実施例と同様に、カソード電極と接する表面を含む限られた領域のみを、上記条件を満たす固体酸化物によって形成することも可能である。この場合には、上記表面を含む限られた領域以外の領域は、燃料電池において予想される発電の際の運転条件にわたって、各単セル内を通過する酸化ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な固体酸化物によって形成すればよい。
また、スタック端部に配設する第1の単セル420aの数は、スタックからの放熱に関わる諸条件、例えば、燃料電池の運転温度や燃料電池が設置される環境、あるいはスタック構造全体の熱容量に応じて、適宜設定すればよい。また、既述したように、プロトン伝導性固体酸化物は、所定の温度で示す水熱分解臨界水蒸気圧が高いほどプロトン伝導性が低くなるという性質を示すため、上記構成とすることで、スタック構造全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
なお、第6実施例では、スタック構造を構成する単セルとして、第1の単セル420aと第2の単セル420bとの2種類を用いたが、電解質層を構成する固体酸化物の組成が異なる3種類以上の単セルを用いても良い。スタック全体として、燃料電池の発電時により低温になりやすい領域に、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す性質の固体酸化物を備えた単セルを配設することで、同様の効果が得られる。
第6実施例では、スタック全体の温度分布状態に応じて、スタック全体に対する位置に応じて、電解質層221を構成する固体酸化物の組成を異ならせたが、同様にして、カソード電極を構成する固体酸化物の組成を異ならせても良い。例えば、積層方向の両端部近傍に設けた単セルが備えるカソード電極は、第3実施例の変形例の第1カソード電極部124aと同様の固体酸化物で形成し、積層方向のより中央部側に設けた単セルが備えるカソード電極は、第2カソード電極部124bと同様の固体酸化物で形成することができる。このように、発電時により低温になる領域に設ける単セルが備えるカソード電極を、より高い水熱分解臨界水蒸気圧を示す性質を有する固体酸化物で形成することで、スタック全体として、カソード電極における水熱分解の進行を抑制することができる。
特に、燃料電池の発電中に、低温になり易い単セル内と、より高温になり易い単セルのいずれにおいても、それぞれの単セルで予想される界面水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるように、カソード電極を構成する固体酸化物を選択することが望ましい。これにより、スタック構造全体において、カソード電極の水熱分解の進行を防止可能となる。このとき、電解質層と接する表面を含む限られた領域のみを上記固体酸化物によって形成してもよい。この場合には、他の領域は、燃料電池の発電中に各単セル内を通過する酸化ガス中の水蒸気圧として予想される水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能となるような固体酸化物によって構成すれば良い。また、積層方向のより中央部側に設けた単セルが備えるカソード電極を構成する固体酸化物として、電極としての触媒活性および電子伝導性がより高い固体酸化物を用いるならば、スタック全体として、水熱分解進行の抑制と、電池性能の維持の両立が可能となる。
H.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
第1ないし第6実施例の燃料電池は、プロトン伝導性を有する固体酸化物から成る電解質層および水素透過性金属層を有する燃料電池としたが、異なる種類の燃料電池に本発明を適用することも可能である。例えば、固体酸化物型燃料電池であって、プロトン伝導性を有する固体酸化物を電解質層として用いると共に、水素分離膜を有しない燃料電池を用いても良い。ここで、水素透過性金属層を備える燃料電池は、既述したように、電解質層の薄型化が可能となることで、より低い温度で運転可能となる。このように運転温度がより低い燃料電池は極めて有用であるが、運転温度を低くすることで、水熱分解臨界水蒸気圧がより低くなるため、水熱分解がより起こりやすくなる。したがって、水素透過性金属層を備える燃料電池は、本願発明による効果を特に顕著に得ることができるが、水素透過性金属層を有しない燃料電池であっても、本願発明を適用することで、同様の効果を得ることができる。
また、プロトン伝導性固体酸化物によって電解質層を構成する場合に、ペロブスカイト型以外のプロトン伝導性固体酸化物、例えばパイロクロアやスピネル型の固体酸化物を用いても良い。この場合にも、それぞれの固体酸化物が示す水熱分解臨界水蒸気圧を考慮して制御を行なうことで、あるいは固体酸化物の組成の選択を行なうことで、同様の効果が得られる。
あるいは、電解質層を、酸化物イオン伝導性を有する固体酸化物によって形成した固体酸化物型燃料電池において、本願発明を適用しても良い。この場合には、アノード側で水が生じる。したがって、例えば第1実施例のステップS140において(1)式に基づいて界面水蒸気圧を算出する際には、カソード分極に代えてアノード分極を用いればよい。さらに、(1)式に基づいて界面水蒸気圧を算出する際には、酸化ガス中の水蒸気圧に代えて、燃料ガス中の水蒸気圧を用いればよい。
また、第1実施例で制御を行なう際、あるいは、第3実施例で電解質層を構成する固体酸化物の組成を選択する際に用いる界面水蒸気圧を、(1)式とは異なる近似の方法、あるいは他の推定方法により求めることとしても良い。ガス中の水蒸気圧とは異なる水蒸気圧に晒される状態と同視できる電解質層と電極との界面の状態を、良く反映する近似方法や推定方法を用いて、同様の制御を行なうことで、あるいは固体酸化物の組成を選択することで、同様の効果を得ることができる。
第1実施例の燃料電池システムの概略構成を表わすブロック図である。 実施例の単セルの概略構成を示す断面模式図である。 水熱分解判断処理ルーチンを表わすフローチャートである。 負荷増大予想処理ルーチンを表わすフローチャートである。 第3実施例の単セルの概略構成を現わす断面模式図である。 第3実施例の変形例の単セルの概略構成を現わす断面模式図である。 第4実施例の燃料電池を構成する電解質層の構成を表わす平面図である。 第5実施例の単セルの概略構成を現わす断面模式図である。 第6実施例の燃料電池の概略構成を表わす説明図である 固体酸化物の水熱分解臨界水蒸気圧を示す説明図である。
符号の説明
10…燃料電池システム
15,415…燃料電池
16…負荷
17…温度センサ
18…電流センサ
19…電圧センサ
20,120,320…単セル
21,121,221,321…電解質層
22…水素透過性金属層
24,124…カソード電極
25…単セル内燃料ガス流路
26…単セル内酸化ガス流路
28,29…ガスセパレータ
30…燃料ガス供給部
32…燃料ガス供給源
34…燃料ガス用配管
40…酸化ガス供給部
42…ブロワ
44…酸化ガス用配管
50…制御部
55…CPU
56…ROM
57…RAM
58…入出力ポート
60…冷却部
62…スタック内冷媒路
63…冷媒流路
64…ブロワ
121a,221a,321a…第1電解質部
121b,221b,321b…第2電解質部
124a…第1カソード電極部
124b…第2カソード電極部
420a…第1の単セル
420b…第2の単セル

Claims (35)

  1. 燃料電池システムであって、
    電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極とを有する燃料電池と、
    前記燃料電池の内部温度を取得する温度取得部と、
    前記取得された温度における前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部と、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更するシステム制御部と
    を備える燃料電池システム。
  2. 請求項1記載の燃料電池システムにおいて、さらに、
    前記燃料電池の内部温度を取得する温度取得部と、
    前記取得された内部温度における前記水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部と、
    前記界面水蒸気圧を導出する界面水蒸気圧導出部とを備える燃料電池システム。
  3. 請求項2記載の燃料電池システムにおいて、さらに、
    前記電解質層が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する許容水蒸気圧設定部を備え、
    前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システム。
  4. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記燃料電池の内部温度を取得する温度取得部と、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極を構成する材料の、前記取得された温度における水熱分解臨界水蒸気圧を取得する臨界水蒸気圧取得部と、
    前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧を導出する界面水蒸気圧導出部と、
    前記燃料電池が所望の電力を発電するように前記燃料電池システムを制御すると共に、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更するシステム制御部と
    を備える燃料電池システム。
  5. 請求項4記載の燃料電池システムにおいて、さらに、
    前記第1の電極が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する許容水蒸気圧設定部を備え、
    前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システム。
  6. 請求項2ないし5いずれか記載の燃料電池システムにおいて、さらに、
    前記第1の電極上を流れるガスにおける水蒸気分圧である気相水蒸気分圧を導出する気相水蒸気分圧導出部と、
    前記第1の電極における電極分極を導出する電極分極導出部と
    を備え、
    前記界面水蒸気圧導出部は、前記気相水蒸気分圧と、前記電極分極と、前記燃料電池の内部温度とに基づいて、前記界面水蒸気圧を導出する
    燃料電池システム。
  7. 請求項2ないし6いずれか記載の燃料電池システムにおいて、
    前記システム制御部は、前記界面水蒸気圧が低下するように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システム。
  8. 請求項2ないし7いずれか記載の燃料電池システムにおいて、
    前記システム制御部は、前記水熱分解臨界水蒸気圧が上昇するように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システム。
  9. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムの運転方法であって、
    (a)前記燃料電池の内部温度を取得する第1の工程と、
    (b)前記取得された温度における前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧を取得する第2の工程と、
    (c)前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧を導出する第3の工程と、
    (d)前記燃料電池が所望の電力を発電するように前記燃料電池システムを制御する際に、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する第4の工程と
    を備える燃料電池システムの運転方法。
  10. 請求項9記載の燃料電池システムの運転方法であって、さらに、
    (e)前記電解質層が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する第5の工程を備え、
    前記第4の工程は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システムの運転方法。
  11. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムの運転方法であって、
    (a)前記燃料電池の内部温度を取得する第1の工程と、
    (b)前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極を構成する材料の、前記取得された温度における水熱分解臨界水蒸気圧を取得する第2の工程と、
    (c)前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な領域における現在の燃料電池の運転条件下での状態を表わす値であって、水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧を導出する第3の工程と、
    (d)前記燃料電池が所望の電力を発電するように前記燃料電池システムを制御する際に、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を超えた場合、あるいは、超えることが予測される場合には、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する第4の工程と
    を備える燃料電池システムの運転方法。
  12. 請求項11記載の燃料電池システムの運転方法であって、さらに、
    (e)前記第1の電極が水熱分解されない水蒸気圧として、前記取得された水熱分解臨界水蒸気圧よりも低い許容水蒸気圧を設定する第5の工程を備え、
    前記第4の工程は、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧以上であるときには、前記界面水蒸気圧が前記許容水蒸気圧を下回るように、前記燃料電池システムの制御を変更する
    燃料電池システムの運転方法。
  13. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する水熱分解予測部と、
    前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、
    前記水熱分解予測部によって、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測されたときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する温度制御部と
    を備える燃料電池システム。
  14. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を有する燃料電池を備える燃料電池システムであって、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記第1の電極を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する水熱分解予測部と、
    前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、
    前記水熱分解予測部によって、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測されたときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する温度制御部と
    を備える燃料電池システム。
  15. 請求項13または14記載の燃料電池システムであって、
    前記水熱分解予測部は、負荷要求が増大すると予測されるときに、前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測する
    燃料電池システム。
  16. 電解質層と該電解質層の両側に配設された触媒電極とを有する燃料電池と、前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、
    (a)前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記電解質層を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する第1の工程と、
    (b)前記第1の工程で前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測したときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する第2の工程と
    を備える燃料電池システムの運転方法。
  17. 電解質層と該電解質層の両側に配設された触媒電極とを有する燃料電池と、前記燃料電池の内部温度を調節する温度調節部と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、
    (a)前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる側の第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧が、前記第1の電極を構成する材料の水熱分解臨界水蒸気圧以上になるか否かを予測する第1の工程と、
    (b)前記第1の工程で前記界面水蒸気圧が前記水熱分解臨界水蒸気圧以上になると予測したときには、前記燃料電池の内部温度が上昇するように、前記温度調節部を制御する第2の工程と
    を備える燃料電池システムの運転方法。
  18. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記電解質層は、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極と接する表面を含む層を構成する第1の電解質部と、前記層以外の部分である他の層を構成する第2の電解質部と、を備え、
    前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  19. 請求項18記載の燃料電池において、
    前記第1の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
    前記第2の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極側に供給される前記反応ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料である
    燃料電池。
  20. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記電解質層は、面内において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に対応する第1の電解質部と、前記分極抵抗がより小さくなる領域に対応する第2の電解質部と、を備え、
    前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  21. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える単セルを複数積層することによって構成される燃料電池であって、
    前記燃料電池において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に配設される前記単セルは、前記電解質層として第1の電解質部を備えると共に、前記分極抵抗がより小さくなる領域に配設される前記単セルは、前記電解質層として、前記第1の電解質部とは異なる材料から成る第2の電解質部を備え、
    前記第1の電解質部を構成する材料は、前記第2の電解質部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  22. 請求項20または21記載の燃料電池であって、
    前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的低温になる領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的高温になる領域である
    燃料電池。
  23. 請求項20記載の燃料電池であって、さらに、
    前記触媒電極上に設けられて電極活物質を含有する反応ガスが流れる反応ガス流路を備え、
    前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的高い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的低い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域である
    燃料電池。
  24. 請求項20ないし23いずれか記載の燃料電池において、
    前記第1の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記第1の電解質部との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第1の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
    前記第2の電解質部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記第2の電解質部との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第2の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料である
    燃料電池。
  25. 請求項18ないし24いずれか記載の燃料電池において、
    前記第2の電解質部を構成する材料は、前記第1の電解質部を構成する材料よりも、導電種であるイオンの伝導率が高い材料である
    燃料電池。
  26. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極は、前記電解質層と接する表面を含む層を構成する第1の電極部と、前記層以外の部分である他の層を構成する第2の電極部と、を備え、
    前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  27. 請求項26記載の燃料電池において、
    前記第1の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
    前記第2の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極側に供給される前記反応ガス中の水蒸気圧よりも高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料である
    燃料電池。
  28. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極は、面内において、前記第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域を構成する第1の電極部と、前記分極抵抗がより小さくなる領域を構成する第2の電極部と、を備え、
    前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  29. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える単セルを複数積層することによって構成される燃料電池であって、
    前記燃料電池において、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極における分極抵抗がより大きくなる領域に配設される前記単セルは、前記第1の電極として第1の電極部を備えると共に、前記分極抵抗がより小さくなる領域に配設される前記単セルは、前記第1の電極として、前記第1の電極部とは異なる材料から成る第2の電極部を備え、
    前記第1の電極部を構成する材料は、前記第2の電極部を構成する材料に比べて、前記燃料電池が発電する際の温度条件下において、水熱分解臨界水蒸気圧がより高くなる材料である
    燃料電池。
  30. 請求項28または29記載の燃料電池であって、
    前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的低温になる領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に比較的高温になる領域である
    燃料電池。
  31. 請求項28記載の燃料電池であって、さらに、
    前記触媒電極上に設けられて電極活物質を含有する反応ガスが流れる反応ガス流路を備え、
    前記分極抵抗がより大きくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的高い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域であり、前記分極抵抗がより小さくなる領域は、前記燃料電池の発電時に前記反応ガス流路において水蒸気圧が比較的低い前記反応ガスが流れる領域に対応する領域である
    燃料電池。
  32. 請求項28ないし31いずれか記載の燃料電池において、
    前記第1の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極部と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第1の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料であり、
    前記第2の電極部を構成する材料は、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第2の電極部と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした第2の界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料である
    燃料電池。
  33. 請求項26ないし32いずれか記載の燃料電池において、
    前記第2の電極部を構成する材料は、前記第1の電極部を構成する材料よりも、電極としての触媒活性および電子伝導性が高い材料である
    燃料電池。
  34. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記電解質層として、前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極と接する表面を少なくとも含む領域が、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質層との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料によって形成される電解質層を備える
    燃料電池。
  35. 電解質層と、該電解質層の両側に配設された触媒電極と、を備える燃料電池であって、
    前記触媒電極のうち発電に伴って生成水が生じる第1の電極として、前記電解質層と接する表面を少なくとも含む領域が、前記燃料電池が発電する際の運転条件下において、前記第1の電極と前記電解質との界面近傍の局所的な状態を表わす値であって水熱分解に影響する程度を水蒸気圧で表わした界面水蒸気圧よりも、高い水熱分解臨界水蒸気圧を維持可能な材料によって形成される電極を備える
    燃料電池。
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