JP2007035232A - 光ディスク原盤およびその製造方法、ならびに光ディスクスタンパの製造方法 - Google Patents

光ディスク原盤およびその製造方法、ならびに光ディスクスタンパの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 高記録密度化に対応した光ディスク原盤をより簡便、且つより表面性良好に製造できるようにする。
【解決手段】 亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層2を基板1上に製膜し、遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト層3を下地層2上に製膜し、無機レジスト層3にレーザ光を照射し潜像を形成し、無機レジスト層3を現像する。基板1と無機レジスト層3との間に下地層2を設けることにより、良好な感度を得ることができると共に、露光時に下地層2と無機レジスト層3との界面に現像液に不溶な反応層が形成されることを防止できる。
【選択図】 図1

Description

この発明は、無機レジスト層を備える光ディスク原盤およびその製造方法、ならびにそれを用いた光ディスクスタンパの製造方法に関する。
今日、情報記録媒体として用いられる光ディスクにはその用途に応じて、MD(Mini Disc)、MO(Magneto Optical)、DVD(Digital Versatile Disc)、Blu−ray Discなど様々なフォーマットが提案されている。いずれのフォーマットで使用される光ディスク基板も、一般的には樹脂材料の射出成形により作製されるため、光ディスクの低価格化が実現されている。光ディスク基板の射出成形においては、グルーブやピットなどのパターンを光ディスク基板に転写するための光ディスクスタンパが成形装置のキャビティ内に配設される。この光ディスクスタンパは、光ディスク原盤にメッキ処理を施すことで作製される。
以下、図9を参照しながら、光ディスク原盤の作製から光ディスク基板の作製までの概略につてい説明する。まず、図9(a)示すように、円盤状のガラス基板101を作製する。次に、図9(b)に示すように、ガラス基板101を回転させながら、このガラス基板101上にレジスト102を塗布する。
次に、図9(c)に示すように、ガラス基板101を回転させながら、このガラス基板101上に塗布されたレジスト102を所定の波長のレーザ光103により露光する。これにより、所望とする光ディスクのランドおよびグルーブなどに応じた潜像パターンがガラス基板101上に形成される。次に、図9(d)に示すように、ガラス基板101を回転させながら、ガラス基板101上に現像液104を滴下して現像処理をする。これにより、所望とする光ディスクのランドおよびグルーブなどに応じた凹凸パターンがガラス基板101上に形成される。以上により、目的とする光ディスク原盤が得られる。
次に、図9(e)に示すように、メッキ処理により光ディスク原盤111上にニッケルなどの金属を析出させてメッキ層105を形成する。次に、図9(f)に示すように、このメッキ層105を光ディスク原盤111から剥離した後、図9(g)に示すように、トリミングを施して所定のサイズにすることにより、光ディスクスタンパ106が得られる。そして、図9(h)に示すように、この光ディスクスタンパ106を射出成形装置の金型107に装着し、金型107を閉じてキャビティを形成し、このキャビティ内に矢印aに示す方向からポリカーボネート(PC)などの溶融樹脂を注入後、硬化させて金型107を開く。これにより、光ディスクスタンパ106の凹凸が転写させた光ディスク基板108が得られる。
また、レジストの露光・現像工程により所望のパターンをガラス基板上に形成した後、ガラス基板のエッチング工程(例えばイオンエッチング工程)をさらに備えることが提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。この工程をさらに設けることで、表面性に優れた光ディスク原盤を作製することができるので、媒体ノイズを低減できるという利点を得ることができる。
ところで、従来、ガラス基板上に塗布されるレジストとしては、ノボラック樹脂系のポジ型フォトレジストが用いられている。このレジストにより形成可能な最短ピット長は、使用する露光用光源であるレーザの波長λと、レーザから出射された光束をレジストに収束させるための対物レンズの開口数NA(Numerical Aperture)とを用いて以下の式により決定される。
P=K×λ/NA
この式中で、比例定数Kは、使用するレーザとフォトレジストとの組み合わせで決まる数値であり、およそ0.5〜0.8程度である。
したがって、光ディスクの高記録密度化に対応してより微細なパターンを形成するためには、(1)光源の短波長化と、(2)対物レンズの高NA化とが必要になる。そこで、(1)光源の短波長化については、紫外線レーザまたは電子ビーム露光などの光源を使用することが検討されているが、このような光源を露光装置に用いると、露光装置が従来のものに比べて複雑化し、安定性も低下してしまうという問題がある。また、(2)対物レンズの高NA化については、NAはその定義上1以下であるため、その限界値に近い0.9前後の高NAを有する対物レンズが一般的に用いられているが、0.9前後のNAを有する対物レンズと、可視レーザとを備えた系では、高記録密度に対応することは困難である。例えば、レーザ光の波長を413nm(DVD用スタンパの露光で使用されるレーザ波長)、Kを0.5、NAを0.9とすると、最短ピット長(スポット径)は370nm程度であり、高記録密度化にはこの系では対応できない。
そこで、ノボラック樹脂系の有機レジストに代えて、遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジストを用いることが提案されている(例えば、特許文献3参照)。この無機レジストでは、405nm程度の可視レーザ光による露光によっても、熱記録の特性によりスポット径より小さいパターンの露光が可能であるため、Blu−ray Discあるいはそれ以上の高記録密度化に対応した光ディスクのマスタリング技術に有用な技術として注目される。
このマスタリング技術は、レーザ光により無機レジスト材料の所望の領域を熱反応により状態変化させ、現像液に対する溶解度に選択比を持たせるものである。このとき無機レジスト材料をレーザ光により効率的に状態変化させるためには、基板材料を選択して最適な基板の熱伝導率が得られるようにする、または、基板と無機レジスト層との間に下地層を設け、この下地層材料を選択して最適な下地層の熱伝導率が得られるようにすることが重要となる(例えば特許文献3参照)。
特開2002−298449号公報 特開2003−281787号公報 特開2003−315988号公報
本発明者らの実験によれば、上述の特許文献3に記載された遷移金属(例えば、タングステン(W)およびモリブデン(Mo))の酸化物からなる無機レジスト層をガラス基板またはシリコン基板上に製膜して構成された光ディスク原盤では、汎用の青色半導体レーザ(波長405nm、最大発光出力30mW)を用いて無機レジスト層を露光すると、無機レジスト層の状態が変化し、露光部が現像液に対して選択的に可溶となるが、基板材料の選択により以下のような違いが生じることが確認されている。
すなわち、ガラス基板を用いた場合には、青色半導体レーザにより露光したときに、無機レジスト材料に対して熱量は効率的に供給されるものの、ガラス基板の熱伝導率が低すぎるため微細な径のピットの形状に、あるいは細い溝幅のグルーブの形状に無機レジスト材料を反応させ、パターンを形成させることが困難となる。
また、シリコン基板を用いた場合には、青色半導体レーザを用いて露光したときに、ガラス基板とは逆に熱伝導率が高いため、無機レジスト層を状態変化させるのに十分な熱量を与えることができない。したがって、露光感度が極めて低くなってしまい、その結果、所望のパターンを形成することができない。そこで、高出力のレーザを用いて所望のパターンに露光可能にすることが考えられるが、レーザの耐久性などの観点からすると、より低いレーザ出力でピットまたはグルーブなどの微細パターン形状を形成できることが望ましい。
そこで、シリコン基板のように熱伝導率の高い基板を使用する場合には、露光感度を高める方法として、上述の特許文献3に記載されているように、基板とレジスト層との間に下地層を設け、この下地層材料として、熱伝導率の低いアモルファスシリコン(a−Si)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(SiN)を選択することが考えられる。
しかしながら、アモルファスシリコン(a−Si)、二酸化ケイ素(SiO2)、窒化シリコン(SiN)を下地層として用いた場合、露光・現像工程で形成される凹凸パターン表面の平滑性が損なわれてしまう。Blu−ray Discを始めとする短波長光源を用いた光ディスクでは、解像度の高い光学系を用いて情報信号を記録または再生するため、基板表面に微細な荒れがあっても反射光が散乱して媒体ノイズ増加の要因となる。
そのため基板を成形するための光ディスクスタンパおよびこのスタンパを作製するための光ディスク原盤の表面性を向上させることが、媒体の低ノイズ化および高記録密度化には重要となる。そこで、光ディスク原盤の表面性を改善する方法として、上述の有機レジストの場合と同様に、無機レジストの露光・現像工程により所望のパターンをシリコン基板上に形成した後、シリコン基板をエッチング(例えばイオンエッチング)して、表面性を向上させる方法が考えられる。しかしながら、この方法を採用すると、エッチングの工程が増えるため、より簡便な方法が望まれる。
したがって、この発明の目的は、より簡便に作製でき、且つ、表面性が良好である、高記録密度化に対応した光ディスク原盤およびその製造方法、ならびにそれを用いた光ディスクスタンパの製造方法を提供するものである。
上述の課題を解決するために、第1の発明は、
基板と、
基板上に設けられた下地層と、
下地層上に設けられた無機レジスト層と
を備え、
下地層は、亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなることを特徴とする光ディスク原盤である。
第2の発明は、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
無機レジスト層を下地層上に製膜する工程と
を備えることを特徴とする光ディスク原盤の製造方法である。
第3の発明は、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
無機レジスト層を下地層上に製膜する工程と、
無機レジスト層にレーザ光を照射し潜像を形成する工程と、
無機レジスト層を現像することにより潜像に応じた凹凸形状を基板上に形成する工程と
を備えることを特徴とする光ディスク原盤の製造方法である。
第4の発明は、
亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト層を下地層上に製膜する工程と
無機レジスト層にレーザ光を照射し潜像を形成する工程と、
無機レジスト層を現像することにより潜像に応じた凹凸形状を基板上に形成する工程と、
凹凸形状が形成された基板に基づき光ディスクスタンパを形成する工程と
を備えることを特徴とする光ディスクスタンパの製造方法である。
第1〜第4の発明では、下地層の厚さを15nm以上100nm以下にすることが好ましい。また、無機レジスト層は、遷移金属の不完全酸化物を含む無機レジスト材料からなることが好ましい。遷移金属として、少なくともタングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含むことが好ましい。無機レジスト層中の酸素含有量が53原子%以上74原子%以下であることが好ましい。
ここで、遷移金属の不完全酸化物は、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
第1〜第4の発明では、レーザ光を無機レジスト層に照射して露光を行ったときに、無機レジスト層および下地層を構成する材料が反応しないため、無機レジスト層と下地層との界面にアルカリ溶液に不要な反応層が形成されないと推測される。したがって、無機レジスト層の厚さとほぼ等しい溝パターンが基板上に形成されると推測される。
また、第1〜第4の発明では、基板と無機レジスト層との間に、亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を設けることで、良好な露光感度を得ることできる。
以上説明したように、この発明によれば、高記録密度化に対応した光ディスク原盤をより簡便、且つより表面性良好に製造できる。したがって、製造工程の増加を招くことなく、媒体ノイズの少ない好記録密度の光ディスクを提供することができる。
以下、この発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、この発明の一実施形態による光ディスク原盤の製造工程を説明するための模式図である。図2は、この発明の一実施形態による光ディスクスタンパの製造工程を説明するための模式図である。図3は、この発明の一実施形態による光ディスクの製造工程を説明するための模式図である。
光ディスク原盤の製造工程
まず、図1Aに示すように、平滑なシリコン基板1を作製する。そして、図1Bに示すように、例えばスパッタリング法により下地層2をシリコン基板1上に形成する。下地層2を構成する材料としては、例えば、ZnS−SiO2混合体、Ta25、TiO2などを用いることができる。下地層2をZnS−SiO2混合体により構成する場合には、ZnSの含有量は例えば70mol%以上100mol%以下の範囲から選ばれ、SiO2の含有量は例えば0mol%以上30mol%以下の範囲から選ばれる。
この下地層2の厚さは15nm以上100nm以下にすることが好ましい。15nm未満であると、十分な露光感度が得られなくなってしまう。これに対して、100nmを越えると、より高感度とできるものの、レーザパワーに対するレジスト層の反応も急峻となるため、レーザ露光時の対物レンズの極わずかなフォーカスのずれ、あるいは光源となるレーザの微少な出力変動によっても形成されるパターンのばらつきを招いてしまう。
次に、図1Cに示すように、例えばスパッタリング法により無機レジスト層3を下地層2上に形成する。この無機レジスト層3を構成する材料としては、例えば、遷移金属の不完全酸化物を用いることができる。このような遷移金属としては、例えば、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Agなどを用いることができる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、可視光または紫外線により大きな化学変化を得られる観点からすると、Mo、Wを用いることが好ましい。また、これらの遷移金属を1種のみならず、2種以上用いることも可能である。
酸化物を無機レジスト材料として用いる場合には、無機レジスト層3の酸素含有量は、53原子%以上74原子%以下であることが好ましい。酸素含有量をこの範囲にすることで、良好な表面性を得る、光ディスクマスタリング用のレジスト材料として適用できる。
シリコン基板1上に形成される無機レジスト層3の厚さは任意に設定可能であるが、所望のピットまたはグルーブの深さが得られるよう設定する必要がある。例えば、Blu−ray Discの場合には無機レジスト層3の厚さが15nm以上80nm以下の範囲であることが好ましく、DVD−RW(Digital Versatile Disc-ReWritable)の場合には20nm以上90nm以下の範囲であることが好ましい。
次に、図1Dに示すように、シリコン基板1を回転させると共に、露光ビーム3bを無機レジスト層3に照射して、無機レジスト層3を全面に渡って露光する。これにより、露光ビームの軌跡に応じた潜像3aが、無機レジスト層3の全面に渡って形成される。
次に、シリコン基板1を回転させながら、無機レジスト層3上に現像液を滴下して、図1Eに示すように、無機レジスト層3を現像処理する。例えば、無機レジスト層3をポジ型のレジストにより形成した場合には、レーザ光で露光した露光部は、未露光部に比較して現像液に対する溶解速度が増すので、レーザ光の露光に応じたパターンが無機レジスト層3に形成される。現像液としては、例えばテトラメチルアンモニウム水酸化溶液などのアルカリ現像液を用いることができる。以上により、目的とする光ディスク原盤を得ることができる。
光ディスクスタンパの製造工程
次に、図2Aに示すように、現像後の光ディスク原盤の凹凸パターン上に、例えば無電界メッキ法によりニッケル皮膜などの導電化膜4aを形成する。その後、導電化膜4aが形成された光デイスク原盤を電鋳装置に取り付け、電気メッキ法により導電化膜4上に例えば300±5[μm]程度の厚さになるようにメッキを施すことで、図2Bに示すように、凹凸パターンを有するメッキ層4を形成する。メッキ層4を構成する材料としては、例えば、ニッケルなどの金属を用いることができる。
次に、図2Cに示すように、例えばカッターなどにより光ディスク原盤からメッキ層4を剥離する。その後、このメッキ層4に対してトリミングを施して所定のサイズにした後、例えばアセトンなどを用いてメッキ層4の信号形成面に付着した無機レジストを洗浄する。以上により、目的とする光ディスクスタンパを得ることができる。
光ディスクの製造工程
次に、図3Aに示すように、例えば射出成形法により、光ディスクスタンパ5の凹凸パターンをポリカーボネート(PC)などの樹脂材料に転写して、光ディスク基板11を作製する。具体的には例えば、成型金型に光ディスクスタンパを配置し、金型を閉じてキャビティを形成し、このキャビティ内にポリカーボネートなどの溶融樹脂材料を注入し、硬化後に金型を開く。これにより、所望のピットおよびグルーブパターンが転写された光ディスク基板11が作製される。
次に、図3Bに示すように、情報信号部12を光ディスク基板11上に形成する。情報信号部12は、情報信号を記録可能および/または再生可能に構成され、その構成は、例えば、所望とする光ディスクが再生専用型、追記型および書換可能型のうちのいずれであるかに応じて適宜選択される。
所望とする光ディスクが再生専用型である場合には、情報信号部12は、例えば反射膜からなり、この反射膜の材料としては、例えば、金属元素、半金属元素、これらの化合物または混合物が挙げられ、より具体的には例えば、Al、Ag、Au、Ni、Cr、Ti、Pd、Co、Si、Ta、W、Mo、Geなどの単体、またはこれらの単体を主成分とする合金が挙げられる。そして、実用性の面を考慮すると、これらのうちのAl系、Ag系、Au系、Si系またはGe系の材料を用いることが好ましい。また、所望とする光ディスクが追記型である場合には、情報信号部12は、例えば、反射膜、有機色素膜を光ディスク基板11上に順次積層してなる積層膜である。所望とする光ディスクが書換可能型である場合には、情報信号部12は、例えば、反射膜、下層誘電体層、相変化記録膜、上層誘電体層を光ディスク基板11上に順次積層してなる積層膜である。
次に、平面円環形状の光透過性シートを、このシートの一主面に予め均一に塗布された感圧性粘着剤(PSA:Pressure Sensitive Adhesive)により、光ディスク基板11上の情報信号部12が形成された側に貼り合わせる。これにより、例えば100μmを有する光透過層13が情報信号部12上に形成される。以上の工程により、目的とする光ディスクを得ることができる。
この発明の一実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
無機レジスト層3とシリコン基体1との間に、ZnS−SiO2混合体などからなる下地層2を設けることにより、無機レジスト層3の高感度化、および光ディスク原盤の表面性の大幅な改善を実現できる。したがって、短波長レーザ光を用いて記録および/または再生を行なうBlu−ray Discを始めとした次世代の高密度光ディスクの低媒体ノイズ化を実現できる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。まず、実施例および比較例の作製に用いた製膜装置およびカッティング装置について説明する。
図4は、下地層および無機レジスト層の製膜に用いた製膜装置の概略構成を示す。図4に示すように、この製膜装置20は、3元のスパッタリング装置であり、製膜室となるスパッタチャンバ21と、このスパッタチャンバ21内を真空状態にする真空ポンプ22と、アルゴン(Ar)などの不活性ガスおよび酸素(O2)などの反応ガスを供給するためのガス供給部23と、ガス供給部23からスパッタチャンバ21内への不活性ガスおよび反応ガスの導入を制御するバルブ24とを備える。
スパッタチャンバ21内には、負電極として機能する第1〜第3のターゲット251〜253と、正極として機能するパレット26とが所定距離を持って対向配置されている。すなわち、パレット26とターゲット251〜253とから、一対の電極が構成されている。
第1のターゲット251として、亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなるZnS−SiO2ターゲットを用い、第2のターゲット252として、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなるW−Moターゲットを用い、第3のターゲット253として、シリコン(Si)からなるSiターゲットを用いた。なお、ZnS−SiO2ターゲットの組成は、SiO2の含有量を20mol%、ZnおよびSの含有量を80mol%とし、ZnとSとの組成比を1対1とした。
第1〜第3のターゲット251〜253はそれぞれ、第1〜第3の電源271〜273に接続され、この第1〜第3の電源271〜273により第1〜第3のターゲット251〜253に負の高電圧が印加される。また、パレット26は基板ホルダ(図示省略)を有し、この基板ホルダにより、第1〜第3のターゲット251〜253と対向するように、被製膜体であるシリコン基板1がパレット26上にチャックされる。パレット26のシリコン基板1が取り付けられる面とは反対側の面に、パレット26に取り付けられたシリコン基板1を面内方向に自転させるための基板自転駆動部28がパレット26と連動可能に設けられている。これにより、基板ホルダにチャックされたシリコン基板1を自転運動させながら、下地層2および無機レジスト層3を製膜することができる。
図5は、無機レジスト層の露光に用いたカッティング装置の概略構成を示す。青色半導体レーザ(BLD:Blue Laser Diode)31は、波長405nmの青色レーザ光を出射する。このレーザ光は、レンズ32およびレンズ33を通過した後、X−Yビームシフタ34においてレーザ光軸がX、Y方向に適宜調整される。次に、1/4波長板35においてレーザ光の偏光が変換された後、レーザ光は、ミラー36により反射されて、シャッター37に導かれ、このシャッター37により通過が制御される。
そして、シャッター37を通過したレーザ光は、シリンドリカルミラー38を介して音響光学偏向器(AOD:Acousto Optical Deflector)39に入射し、この音響光学偏向器39によって光学偏向が施される。次に、光学偏向が施されたレーザ光は、シリンドリカルミラー40を通過した後、ミラー41により反射されて、偏光分離素子(PBS:Polarization Beam Splitter)42に導かれる。次に、レーザ光は、偏光分離素子42により反射され、1/4波長板43により偏光が変換され、ビームエキスパンダ44によりビーム径が変換される。その後、レーザ光は、ダイクロイックミラー45により反射され、対物レンズ46により無機レジストサンプル61上に集光される。なお、無機レジストサンプル61は、ターンテーブル47上に載置され、スピンドル48により所定の速度により回転される。また、カッティング装置30は、移動光学テーブル60を備え、この移動光学テーブル60の移動に伴って、レーザ光のスポットが無機レジストサンプル61の径方向に移動される。
また、照射されたレーザ光に対する無機レジストサンプルからの戻り光は、対物レンズ46を通過し、ダイクロイックミラー45により反射され、ビームエキスパンダ44、1/4波長板43および偏光分離素子42を通過する。その後、戻り光は、ミラー49により反射され、レンズ50を通過した後、ND(Neutral Density)フィルタ51により減衰されて、電荷結合素子(CCD:Charge Coupled Device)52に供給される。ここで電荷結合素子52は、原盤からの戻り光のスポット形状、プロファイル等を観察する目的で配置され、露光条件が最適か否かを確認するために用いられる。
フォーカス用LD(Laser Diode)53は、波長633nmを有するフォーカス用のレーザ光を出射する。フォーカス用LD53から出射された光は、フォーカス用偏光分離素子(PBS:Polarization Beam Splitter)54を通過し、1/4波長板55によりその偏光が変換される。そして、そのレーザ光は、ダイクロイックミラー56にて反射され、ダイクロイックミラー45を透過した後、対物レンズ46により無機レジストサンプル61上に集光される。
また、フォーカス用レーザ光に対する無機レジストサンプル61からの戻り光は、ダイクロイックミラー45を透過した後、ダイクロイックミラー56にて反射された後、1/4波長板55によりその偏光が変換される。そして、戻り光は、フォーカス用偏光分離素子54により反射されて、フォーカス用位置検出素子(F−PSD:Focus-Position Sensitive Device)57に供給される。このフォーカス用位置検出素子57が、供給されたレーザ光に基づき位置検出をし、検出結果に応じて対物レンズ46が制御される。
以下、図4および図5を参照しながら、実施例および比較例、ならびにその評価について説明する。
実施例1
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚100nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例2
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚80nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例3
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚60nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例4
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚50nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例5
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚40nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例6
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚30nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例7
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚15nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
比較例1
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第3のターゲット253であるSiターゲットをスパッタリングして、膜厚100nmのアモルファスシリコン膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をアモルファスシリコン膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
比較例2
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜アルゴンガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第3のターゲット253であるSiターゲットをスパッタリングして、膜厚50nmのアモルファスシリコン膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をアモルファスシリコン膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
比較例3
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜アルゴンガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第3のターゲット253であるSiターゲットをスパッタリングして、膜厚25nmのアモルファスシリコン膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、膜厚27.5nmの無機レジスト層をアモルファスシリコン膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
比較例4
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスと酸素を導入した。なお、アルゴンガスと酸素とは流量比17:3で混合した。そして、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用い、投入電力135W、ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)にて膜厚100nmのSiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量85sccm、15sccmに制御しながら導入し、直流電源を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタし、膜厚27.5nmの無機レジスト層をSiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例8
図4に示すスパッタチャンバ21内を真空引きして、チャンバ内真空度を5×10-4Pa以下とした後、スパッタチャンバ21内にアルゴンガスを導入した。そして、発振周波数13.56MHzの高周波電源を用いて、投入電力100W、製膜アルゴンガス圧7.5mTorr(1.0Pa)の製膜条件にて、第1のターゲット251であるZnS−SiO2ターゲットをスパッタリングして、膜厚100nmのZnS−SiO2膜をシリコン基板上に製膜した。
次に、スパッタリングチャンバ21内にアルゴンガス、酸素を導入量90sccm、10sccmに制御しながら導入した。そして、直流パルス電源(周波数4.5kHz)を用いて、投入電力135W、製膜ガス圧4.5mTorr(0.6Pa)の製膜条件にて、第2のターゲット252であるW−Moターゲットをスパッタして、酸素含有量53原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。以上により、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例9
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、85sccm、15sccmとして、酸素含有量63.3原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例10
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、80sccm、20sccmとして、酸素含有量69.3原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例11
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、78sccm、22sccmとして、酸素含有量71.5原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例12
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、77sccm、23sccmとして、酸素含有量72.0原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例13
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、75sccm、25sccmとして、酸素含有量73.2原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例14
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、74sccm、26sccmとして、酸素含有量73.8原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例15
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、73sccm、27sccmとして、酸素含有量74.0原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
実施例16
スパッタリングチャンバ21内に導入するアルゴンガス、酸素の導入量をそれぞれ、70sccm、30sccmとして、酸素含有量74.4原子%、膜厚50nmの無機レジスト層をZnS−SiO2膜上に積層した。これ以外のことは実施例8とすべて同様にして、目的とする無機レジストサンプルを得た。
露光特性の評価
次に、上述のようにして得られた無機レジストサンプルの露光特性を以下のようにして評価した。まず、上述のようにして得られた実施例1〜7および比較例1〜4の無機レジストサンプルの反射率Rbを測定した。次に、図5に示す露光装置のターンテーブル47に無機レジストサンプルを載置し、無機レジストサンプルを回転させながら露光ビームを照射して、無機レジストサンプルの全面を露光した。その後、無機レジストサンプルの反射率Raを測定した。
以下に、露光条件を示す。
露光装置:光ディスクマスタリング装置(カッティング装置 図5参照)
光源:半導体レーザ(波長405nm)
対物レンズ:NA=0.85
対物レンズ送り速度:0.32μm/revolution
スピンドル:CLV 4.94m/sec
図6は、無機レジストサンプルの露光感度を示す。図6において、横軸は露光時のレーザ出力(レーザパワー)を示し、縦軸は反射光量比を示している。但し、実際に図5の光学系を通して無機レジストサンプル上に照射されるレーザ光のレーザパワーは、光学素子の吸収などによりBLD出射時の23%程度となる。
このように露光前後の反射光量比(露光後の反射光量Ra/露光前の反射光量Rb)を求めることにより、無機レジストサンプルに形成した潜像の状態を推測することができる。これは以下の理由による。レーザ光の露光により無機レジスト層に潜像を形成すると膜の反射率が低下する。したがって、無機レジストサンプルの任意の半径位置において同心円状に1トラックだけ露光し、同トラック上に露光時よりも低い(レジストが反応しない)レーザパワーのレーザ光を照射して無機レジストサンプルからの反射光量を求めると、露光によって原盤からの反射光量の低下が見られる。したがって、露光前後の反射光量比を求めることによって、潜像の状態を推測できる。
なお、本実施例にて用いた材料系では反射光量比が90%程度となる露光条件において、160nm程度のグルーブ幅となる潜像が形成されることを予め確認した。ここで、160nmのグルーブ幅は記録型Blu−ray Discのグルーブ幅の仕様に沿うよう選択したものである。なお、図6において、レーザパワー−反射光量比の曲線が図中左側に位置するものほど高感度な膜と見ることができる。
図6から、実施例1〜7および比較例1〜4について以下のことが分かる。
まず、アモルファスシリコン(a−Si)からなる下地層を有する比較例1〜3に着目すると以下のことが分かる。下地層の膜厚を25nm以上とすることで潜像が形成されるが、25nm程度の膜厚では、反射光量比を90%程度とするためにはレーザパワー20mW以上が必要となり、十分な露光感度が得られていないことが分かる。一方、下地層を100nmとすると、レーザパワー20mW以下で反射光量比90%程度にでき、十分な露光感度が得られることが分かる。なお、カッティング装置のレーザの寿命などを考慮すると、レジストを高感度化し、できるだけ低いレーザ出力で露光できることが望ましいため、下地層の膜厚としては100nm程度が望ましいと思われる。
次に、ZnS−SiO2からなる下地層を有する実施例1〜7に着目すると以下のことが分かる。いずれの無機レジストサンプルでも、レーザパワー20mW以下で反射光量比90%程度にでき、十分な露光感度を得ることができることが分かる。また、ZnS−SiO2を下地層として用いた場合には、15nm程度の膜厚でも100nmのa−Si下地層と同等の露光感度が得られることが分かる。
次に、SiO2からなる下地層を有する比較例4に着目すると以下のことが分かる。下地層を100nmとすると、レーザパワー20mW以下で反射光量比90%程度にでき、十分な露光感度が得られることが分かる。
また、図示および説明を省略するが、実施例1〜7と同様にして下地層の材料としてZnS−SiO2混合体を用いて、膜厚が15nm未満および膜厚が100nmを越える無機レジストサンプルを作製し、上述の実施例および比較例と同様にして露光特性の評価を行ったところ、以下のことが分かった。
15nm以上100nm以下の膜厚を有する無機レジストサンプルでは上述のように同様に十分な露光感度が得られる。これに対して、15nm未満の膜厚では、反射光量比を90%程度とするためにはレーザパワー20mW以上が必要となり、十分な露光感度が得られなくなってしまう。また、100nmを越える膜厚では、実施例1〜7に比してより高感度にできるものの、レーザパワーに対する無機レジスト層の反応もより急峻となる(図6の露光特性の傾きが急峻となる)ため、レーザ露光時の対物レンズの極わずかなフォーカスずれ、あるいは光源となるレーザの微少な出力変動が、形成されるパターンのばらつきにつながってしまう。以上の点を考慮すると、ZnS−SiO2混合体からなる下地層の膜厚は、15nm以上100nm以下に選択することが好ましことが分かる。
表面性の評価
次に、上述のようにして露光された実施例1および比較例1,4の無機レジストサンプルを現像し、表面性を評価した。
まず、以下のようにして実施例1および比較例1,4の無機レジストサンプルを現像した。無機レジストサンプルを現像装置に搬送し、所定位置に載置した。そして、無機レジストサンプルを回転させながら、無機レジスト上に現像液を滴下した。これにより、無機レジスト層が現像されて、DCグルーブが形成された。なお、現像液としては、テトラメチルアンモニウム水酸化溶液を用いた。以上により、目的とする光ディスク原盤を得た。
次に、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)(日本ビーコ株式会社製、商品名:Dimension3000)により、実施例1および比較例1,4の無機レジストサンプルの表面を観察した。
図7に、原子間力顕微鏡により観察されたグルーブの断面プロファイルを示す。図7から、比較例1(a−Si下地層)、比較例4(SiO2下地層)、実施例1(ZnS−SiO2下地層)の順に、表面の凹凸が小さくなっていることが分かる。すなわち、下地層をZnS−SiO2混合体により構成することにより、優れた表面性を有する光ディスク原盤が得られることが分かる。
次に、実施例1、比較例1,4の表面粗度Raを求めた。表面粗度Raは、具体的には以下のようにして求めた。すなわち、上述の原子間力顕微鏡(日本ビーコ株式会社製、商品名:Dimension3000)を用いて、スキャンサイズ2μm×2μmの範囲を、256sample/line(サンプリング回数が1スキャンあたり256)にて測定し、スキャンエリア内から任意の5本のグルーブを選び、これらのグルーブの断面プロファイルから同装置付属の解析ソフトを用いて表面粗度Raの平均を求めた。
上述のようにして表面粗度Raを求めたところ、比較例1(a−Si下地層)、比較例4(SiO2下地層)、実施例1(ZnS−SiO2下地層)の表面粗度Raはそれぞれ、1.0nm、0.8nm、0.2nm程度であった。
すなわち、比較例1(a−Si下地層)、比較例4(SiO2下地層)では、現在一般的に用いられている有機レジストを用いた光ディスクマスタリングプロセスで得られる光ディスク原盤(以下、従来の光ディスク原盤と称する)の表面性とほぼ同等の表面性が得られることが分かった。これに対して、実施例1(ZnS−SiO2下地層)では、表面粗度を従来の光ディスク原盤の1/4程度に低減することができ、従来の原盤に比して表面性を大幅に改善できることが分かった。
なお、便宜上、図示および説明を省略するが、実施例1とは膜厚が異なる実施例2〜7の無機レジストサンプルにおいても、実施例1とほぼ同様の表面粗度を得ることができ、従来の原盤に比して表面性を大幅に改善できた。また、無機レジスト層の酸素含有量を53原子%以上74原子%以下の範囲で変化させた実施例8〜15でも、実施例1とほぼ同様の表面粗度を得ることができ、従来の原盤に比して表面性を大幅に改善できた。
無機レジスト層中の酸素含有量の評価
まず、上述の露光特性の評価と同様の露光条件にて、実施例8〜16の無機レジストサンプルを露光した。次に、無機レジストサンプルを現像装置に搬送し、所定位置に載置した。そして、無機レジストサンプルを回転させながら、無機レジスト層上に現像液を滴下して現像を行った。なお、現像液としては、テトラメチルアンモニウム水酸化溶液を用いた。以上により、目的とする光ディスク原盤を得た。
次に、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)(日本ビーコ株式会社製、商品名:Dimension3000)により、上述のようにして得られた光ディスク原盤の表面を観察して、酸素含有量に対する無機レジスト層の機能を評価した。
なお、膜中の酸素含有量は、X線マイクロアナライザー(XMA:X−ray Micro Analyzer)(Philips製、XL30FEG+EDAX DX4i)を用いて、実施例8〜16と同条件にて成膜した膜厚100nmの無機レジスト膜の組成を定量分析することで求めた。
図8に、酸素含有量に対する無機レジスト層の機能を評価した結果を示す。光ディスクマスタリング用のレジスト材料として適切な機能を得るためには、無機レジスト層中の酸素含有量を53原子%以上74原子%以下とすることが好ましく、53原子%以上63.3原子%以下または72原子%以上74原子%以下とすることがより好ましいことが分かる。
以上、この発明の一実施形態について具体的に説明したが、この発明は、上述の一実施形態に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
例えば、上述の一実施形態において挙げた数値はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる数値を用いてもよい。
また、上述の一実施形態では、光ディスク原盤から光ディスクスタンパを作製する場合を例として説明したが、光ディスクスタンパの作製はこの例に限定されるものではない。例えば、光ディスク原盤からメタルマスタを作製し、このメタルマスタからマザーを作製し、このマザーから光ディスクスタンパを作製するようにしてもよい。
この発明の一実施形態による光ディスク原盤の製造工程を説明するための断面図である。 この発明の一実施形態による光ディスクスタンパの製造工程を説明するための断面図である。 この発明の一実施形態による光ディスクの製造工程を説明するための断面図である。 下地層および無機レジスト層の製膜に用いた製膜装置の概略構成を示す模式図である。 無機レジスト層の露光に用いたカッティング装置の概略構成を示す模式図である。 無機レジストサンプルの露光感度を示すグラフである。 原子間力顕微鏡により観察されたグルーブの断面プルファイルである。 酸素含有量に対する無機レジスト層の機能を評価した結果を示すグラフである。 従来の光ディスク原盤作製から光ディスク基板作製までの概略を説明するための模式図である。
符号の説明
1 シリコン基板
2 下地層
3 無機レジスト層
6 光ディスクスタンパ
11 光ディスク基板
12 情報信号部
13 光透過層

Claims (8)

  1. 基板と、
    上記基板上に設けられた下地層と、
    上記下地層上に設けられた無機レジスト層と
    を備え、
    上記下地層は、亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなることを特徴とする光ディスク原盤。
  2. 上記下地層の厚さが15nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項1記載の光ディスク原盤。
  3. 上記無機レジスト層は、遷移金属の不完全酸化物を含む無機レジスト材料からなることを特徴とする請求項1記載の光ディスク原盤。
  4. 上記遷移金属として、少なくともタングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含むことを特徴とする請求項3記載の光ディスク原盤。
  5. 上記無機レジスト層中の酸素含有量が53原子%以上74原子%以下であることを特徴とする請求項1記載の光ディスク原盤。
  6. 亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
    無機レジスト層を上記下地層上に製膜する工程と
    を備えることを特徴とする光ディスク原盤の製造方法。
  7. 亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
    無機レジスト層を上記下地層上に製膜する工程と、
    上記無機レジスト層にレーザ光を照射し潜像を形成する工程と、
    上記無機レジスト層を現像することにより上記潜像に応じた凹凸形状を上記基板上に形成する工程と
    を備えることを特徴とする光ディスク原盤の製造方法。
  8. 亜鉛(Zn)、硫黄(S)および酸化シリコン(SiO2)からなる下地層を基板上に製膜する工程と、
    遷移金属の不完全酸化物からなる無機レジスト層を上記下地層上に製膜する工程と
    上記無機レジスト層にレーザ光を照射し潜像を形成する工程と、
    上記無機レジスト層を現像することにより上記潜像に応じた凹凸形状を上記基板上に形成する工程と、
    上記凹凸形状が形成された上記基板に基づき光ディスクスタンパを形成する工程と
    を備えることを特徴とする光ディスクスタンパの製造方法。
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