JP2007031456A - アセトンシアンヒドリンの製造方法 - Google Patents

アセトンシアンヒドリンの製造方法 Download PDF

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Abstract


【課題】アミンを触媒として、無機アルカリに較べ15〜20℃高い温度で反応しても、アセトンシアンヒドリンへの着色増加が見られない製造方法及び安定した品質を維持できる精製方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一槽の完全混合型反応槽を用い、塩基触媒としてのアミンの存在下、温度−20〜+40℃かつ直接測定法のpH7.4 〜8.3 の条件で、青酸とアセトンを反応させてアセトンシアンヒドリンを合成し、次いで得られた粗アセトンシアンヒドリンに酸を添加して塩基触媒を中和し、蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液の直接測定法によるpHを2.6〜3.1
とし、粗アセトンシアンヒドリンを単一の蒸留塔を用いて精留することを特徴とするアセトンシアンヒドリンの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は塩基触媒の存在下に青酸とアセトンを反応させてアセトンシアンヒドリンを合成し、次いで使用した塩基触媒を中和して得られる、塩、未反応青酸、未反応アセトンおよび水を含む粗アセトンシアンヒドリンを連続的に精製し、これらの不純物を実質的に含まない精製アセトンシアンヒドリンを効果的に製造する方法に関する。
アセトンシアンヒドリンは一般的に塩基触媒の存在下に青酸とアセトンを反応させて得られた粗アセトンシアンヒドリンを精製し、製造する。反応により得られる粗アセトンシアンヒドリンには、未反応の青酸およびアセトンの他に、反応原料に伴われて持ち込まれる水および塩基触媒を中和する際に発生する水、青酸の安定剤として用いられる酸性物質(例えば、リン酸、硫酸などの高沸点物や亜硫酸ガスなどの低沸点物を含む)、アセトンシアンヒドリン自体の安定性を保つために過剰に加えられた酸性物および中和に際して発生する塩等が含まれること、またアセトンシアンヒドリンが高温で分解され易いことから、粗アセトンシアンヒドリンの精製には様々な工夫が必要とされている。
アミンを触媒としたシアンヒドリンの製造法として、(1) 液状かつ沸点にその温度を保持し、塩基を溶解した青酸にそれと等モルの脂肪族ケトン類を加えることによるケトンシアンヒドリン類の製造方法。塩基としては、苛性ソーダ、アンモニア、ピリジン、ピペリジン、ジピペリジルキノリン、1級、2級及び3級アミン、青酸カリウム、青酸ソーダが使用できる。実施例としては、液体青酸中にピリジンを溶解した沸騰溶液中にアセトンを加え、そして、少し過剰な硫酸を加え酸性化し、アセトンシアンヒドリンを合成する方法が提案されている(特許文献1)。
また、無機アルカリを触媒としたアセトンシアンヒドリンの製造方法としては、(2) アルカリ触媒の存在下に青酸とアセトンを反応させて得られた粗アセトンシアンヒドリンを精製するにあたり、粗アセトンシアンヒドリンの水分量を2.5重量%以下に維持すると共に、精留塔塔底液の10体積%水溶液のpHを3.2〜4.5
の領域になるように調整して精留することを特徴とするアセトンシアンヒドリンの製造方法が提案されている(特許文献2)。
上記の(1) の方法はアミン触媒で青酸とアセトンを反応させる際のpHの最適な範囲の記載はない。またアミン触媒により合成した粗アセトンシアンヒドリンの精製についての好適な条件については言及していない。特に蒸留においては高温でアセトンシアンヒドリンを扱うため、分解を抑制する工夫が必要であるがその記述は無く、工業的かつ安定的にアセトンシアンヒドリンを製造する方法としては不十分である。
特に、アセトンシアンヒドリンの分解に関わる最も重要な因子は、発明者らの研究によれば液のpHと温度であり、アミンを触媒として合成した粗アセトンシアンヒドリンの精製において分解を抑止する好適なpHと温度の条件については、上記の(1)
の方法以外についても従来提案されていなかった。上記の(2) の方法は、無機アルカリを触媒としてアセトンシアンヒドリンを製造する製造方法としては、従来の問題を解決する提案として有意義なものであるが、無機アルカリを使用するため、様々な問題点を有している。すなわち、アミンを触媒とする方法は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムをはじめとする無機アルカリを使用する方法では避けきれない問題点を一挙に解決出来る。
反応後の粗アセトンシアンヒドリンの安定化のために、中和剤としてたとえば硫酸を使用すると、硫酸塩を生成する。その硫酸塩はアセトンシアンヒドリンへの溶解度が小さく、塩の結晶を析出する。そのため、多くは精製工程に濾過器を設置しており、その切り替えおよび再生の度に有用成分が損失するとともに、その廃液の処理が必要となる。また、アセトンシアンヒドリンは毒物であり、濾過器の切り替え、再生作業の際の作業員の中毒の危険性も無視できない。
更に、その塩のアセトンシアンヒドリンへの溶解度は、温度によって変化するため、濾過器で除去した後も、温度の変化により再度塩の結晶を析出する場合もあり、機器、配管及び弁類への塩固着、閉塞が発生し易いという問題がある。ところが、アミンを触媒とする方法は塩類の析出が無いため、以上の問題が全く発生しない。濾過器が不要となるため、設備費の低減がはかれる。
次に、無機アルカリの場合は、工業的には水もしくは有機溶媒に溶解して供給する方法が一般的であり、更に中和反応によっても水が生成する。そのため精製工程で、未反応青酸、未反応アセトンを回収するためには当該水または有機溶媒を分離するために更にもう1基の蒸留塔が必要となる。しかし、アミンの場合は単体で液体のため、溶液にする必要が無く、かつ中和反応で水が生成しないため、精製工程への触媒由来の水または有機溶媒、および中和反応生成水の持ち込みが無い。よってそれらを分離する蒸留塔が不要となり、設備が簡略化されるとともに、その分離のためのエネルギーが削減できる。
更に、アセトンシアンヒドリンと硫酸を主原料とするメタクリル酸メチルモノマーを製造する際に副生する廃酸を硫酸として回収する場合、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを触媒として製造したアセトンシアンヒドリン中のナトリウム、カリウムは最終的に廃酸中に排出されるため、燃焼分解の際、燃焼炉の耐火材を劣化させる。しかし、アミンの中和生成物は燃焼炉でガスに分解されるため、耐火材の劣化は起こらない。
以上の様にアミン触媒をアセトンシアンヒドリンの合成に使用することは、その製造工程において多くの利点があるものの、アミンを触媒として使用した反応の好適な条件、および合成した粗アセトンシアンヒドリンの分解を抑制して精製する効果的な方法は提案されていなかった。一方、無機アルカリでの反応の際、温度を20℃を越えて反応させると、青酸の重合物の生成およびケトンの一部の着色成分への転化により、アセトンシアンヒドリンの色度が増加し、品質を悪化させる。よって品質の安定のためには、反応温度は少なくとも20℃以下に保たねばならず、反応熱は全て冷凍機による除熱となり、エネルギーを多大に消費するため、この冷却エネルギーの低減も強く求められている。
また、オレフィンのアンモオキシデーション反応によって副生する青酸を原料としてアセトンシアンヒドリンを製造する場合、多くは青酸中に安定剤として、酸性ガス(たとえば亜硫酸ガス)を含有する。その酸性ガスは青酸とアセトンとの反応の際、同時に触媒である塩基と反応して塩を作る。無機アルカリの場合、その塩(例えば亜硫酸カリウム、亜硫酸ナトリウム)は、高温で不安定であり、粗アセトンシアンヒドリンの精留の際、蒸留塔塔底の高温条件で一部分解し、酸性ガスを塔頂に放散させる。その結果、アセトンシアンヒドリンの分解に大きく寄与する塔底のpHを変化させるため、分解を抑制して安定的に精製アセトンシアンヒドリンを得るには、蒸留塔の運転に細心の注意が必要であり、熟練した運転員を必要としていた。
英国特許第452285号 特公平1-32828号公報
本発明は、アミンを触媒として、無機アルカリに較べ15〜20℃高い温度で反応しても、アセトンシアンヒドリンへの着色増加が見られない製造方法及び安定した品質を維持できる精製方法を提供するものである。
すなわち、本発明は、
[1] 少なくとも一槽の完全混合型反応槽を用い、塩基触媒としてのアミンの存在下、温度−20〜+40℃かつ直接測定法のpH7.4 〜8.3 の条件で、青酸とアセトンを反応させてアセトンシアンヒドリンを合成し、次いで得られた粗アセトンシアンヒドリンに酸を添加して塩基触媒を中和し、蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液の直接測定法によるpHを2.6〜3.1とし、粗アセトンシアンヒドリンを単一の蒸留塔を用いて精留することを特徴とするアセトンシアンヒドリンの製造方法。
[2] 精留が130 ℃以下であることを特徴とする[1]記載のアセトンシアンヒドリンの製造方法。
[3] 蒸留塔塔底温度100 ℃の時、塔底液の10体積%水溶液のpHを2.65〜3.0 、塔底温度125 ℃の時、同じく塔底液のpHを2.7 〜2.95とし、その中間の塔底温度においては、温度の上昇に対し比例的にそのpHの範囲を狭めることを特徴とする[2]記載のアセトンシアンヒドリンの製造方法。
安定的かつ工業的にアセトンシアンヒドリンを製造することが可能となった。すなわち、無機アルカリを触媒として使用した製造工程において発生する塩類の析出が無いため、その塩を分離するための濾過器が不要となる。よってその濾過器の切り替えおよび再生作業のたびに発生していた有効成分の損失、廃液の処理が無くなり、また、アセトンシアンヒドリンによる作業中の中毒の危険性も回避出来る。
アミン類は、単体で液体のため、溶液にする必要が無く、精製工程への触媒由来の水もしくは有機溶媒の持ち込みが無い。更に触媒の中和時に水が生成しないので、精製工程での未反応青酸、未反応アセトンの回収の際、水および有機溶媒を分離する塔が不要になる。無機アルカリを使用して、20℃以上の高温で反応させると、精製アセトンシアンヒドリンの色度が増大する。それに対し、アミンを触媒として反応した場合、2槽を用いれば、第1槽の反応温度は最大40℃であっても、第2槽の温度さえ10℃以下に保てば、アセトンシアンヒドリンの色度の増加が無く、反応成績も良好であり、アセトンシアンヒドリン品質への影響が無い。よって反応熱の大部分が通常の冷却塔水で除去でき、冷却エネルギーが少なくて済む。その削減エネルギーは、アセトンシアンヒドリン1kg当たり37W・
h に達する。
更に、アセトンシアンヒドリンと硫酸を主原料とするメタクリル酸メチルモノマーを製造する際に副生する廃酸を硫酸回収する場合、燃焼分解の際、燃焼炉の耐火材の劣化を促進する無機アルカリ触媒由来のたとえばカリウムあるいはナトリウムが混入せず、アミンの中和生成物は燃焼炉でガスに分解されるため、耐火材の劣化は起こらない。
オレフィンのアンモオキシデーション反応の際に副生する青酸中には安定剤として酸性ガスを含むが、その酸性ガスをアミンによって固定化することによって、精留時のpHの変化を抑制し、安定的に精製アセトンシアンヒドリンを得ることができる。
本発明を詳細に説明する。本発明において、反応槽は、完全混合型であり、二槽以上の完全混合型反応槽を用いてもよい。二槽の完全混合型反応槽を用い、第1段反応槽の条件を、温度10〜40℃、pH7.4 〜8.3 とし、アセトンシアンヒドリンへの転化率を75%以上、更に好ましくは、転化率を80%以上とした後、第2段反応槽の温度を−20〜+10℃で反応させて、粗アセトンシアンヒドリンを合成することが好ましい。
更に、第1段反応槽の温度が15℃の時、pHを8.0 〜8.2 、温度が35℃の時、pHを7.5 〜7.7 とし、この内挿及び外挿した範囲内で反応させることが好ましい。本発明において、塩基触媒はアミンが用いられる。アミン触媒としては、第一アミン、第二アミン、第三アミンがあり、塩基性の強さおよび取扱いの容易さからモノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンが用いられ、中でもジエチルアミンが好ましい。
本発明において、青酸は、オレフィンのアンモオキシデーション反応により副生する青酸であってもよい。この場合、多くは青酸中に安定剤として酸性ガス(たとえば亜硫酸ガス)を含んでいる。アミンが触媒であるので、粗アセトンシアンヒドリン合成時に生成した酸性ガスとの塩は、無機アルカリとの塩に比較して精留塔塔底で安定であり、塩の分解が抑制され、分解亜硫酸ガスの精留塔塔頂への放散が激減し、精留前の粗アセトンシアンヒドリンと蒸留塔塔底アセトンシアンヒドリンとのpHとの差が1/5 〜1/10に大幅に縮小された結果、従来、細心の注意が必要であった蒸留塔塔底のpHの調整が容易にできるようになった。
具体的には、粗アセトンシアンヒドリンに酸を添加し、蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液のpHを2.6〜3.1 とし、粗アセトンシアンヒドリンを単一の蒸留塔を用いて精留することが好ましい。精留する温度は、130℃以下であることが好ましい。蒸留塔の条件は、蒸留塔塔底温度100℃の時、塔底液の10体積%水溶液のpHを2.65〜3.0 、塔底温度125 ℃の時、同じく塔底液のpHを2.7〜2.95とし、その中間の塔底温度においては、温度の上昇に対し比例的にそのpHの範囲を狭める範囲で操作することが好ましい。
次に、合成した粗アセトンシアンヒドリンを蒸留により精製する際、pHが大きく分解に寄与し、しかもその分解を抑制するpHの範囲は水酸化カリウム、水酸化ナトリウムを始めとする無機アルカリと異なり、かつ温度によっても変化することを見出し、その好ましいpH条件に設定することによりアセトンシアンヒドリンを効果的に精製することが出来る。
すなわち、粗アセトンシアンヒドリンに酸を添加し、蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液のpHを2.6〜3.1 とし、粗アセトンシアンヒドリンを単一の蒸留塔を用いて精留することが好ましい。本発明方法を更に詳しく説明すると、アセトンシアンヒドリンは一般に原料として、アセトンと酸性安定剤(例えば、硫酸、リン酸、亜硫酸ガスなど)を含んだ青酸とを用い、これらをアミン(例えばジエチルアミン)の存在下に液体反応槽内で反応させて合成される。反応の際のアセトンに対する青酸のモル比は0.9〜1.1、アミンのモル比は0.0007〜0.0015である。この反応は発熱反応であるので除熱しながら行い、反応収率を向上させるために反応温度を−20〜+40℃の範囲に保ち、かつpHを7.4〜8.3の範囲に調整する。この際青酸用の酸性安定剤はほとんどアミン触媒で中和されて反応液中にとどまる。
反応終了後、生成した粗アセトンシアンヒドリンを安定に保持するために硫酸やリン酸などの酸で中和する。そのpHは蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液pHを2.6〜3.1 の領域になるように調整する。実用上は精留前の粗アセトンシアンヒドリンのpHと蒸留塔塔底の精製アセトンシアンヒドリンとのpHの相関を、実験的あるいはプロセス上の経験から把握しておくことが重要である。
次いで、当該粗アセトンシアンヒドリンを減圧蒸留塔に送入する。本発明方法においては通常塔底温度130 ℃以下、好ましくは100℃〜125 ℃及び塔底圧力8×103 〜21×103Pa 以下で減圧蒸留する。減圧蒸留塔においては実質上全量の低沸点成分と少量(好ましくは1%以下)の分解アセトンシアンヒドリンが塔頂へ留出し、留出物のうち溶解亜硫酸ガスの放散により減圧蒸留塔の頭頂部に集められた酸性ガスは真空系へ排出され、残りの未反応もしくはアセトンシアンヒドリンからの分解青酸、アセトンを含む液はアセトンシアンヒドリン合成反応槽へ戻される。
以下、本発明方法の好ましい実施態様につき添付図1を参照して説明する。酸性安定剤を含む青酸1、アセトン2、およびアミン触媒3をそれぞれ配管を通してアセトンシアンヒドリン合成反応槽4に送入する。反応槽4には反応熱を除去して温度を一定に保つための温度調整手段が備えられている。その好適は温度の範囲は−20〜+40℃である。更に反応槽4では反応収率を維持するために適正なpH(直接測定値で7.4〜8.3)に保つように触媒量の調整を行う。反応槽4は1槽あるいは多槽のいずれともすることが出来るが、冷却エネルギーを節約し、かつ収率を向上させるためには、第1反応槽を冷却塔水で冷却後、第2反応槽を冷凍機によって深冷し(−20〜+10℃)、反応平衡を生成物側に移行させるほうが良い。更に第1反応槽の好適なpHは反応温度によって異なり、アミンの過剰な添加を避けるためにも、反応温度によりpHは変化させることが好ましい(例えば15℃反応ではpH8.0〜8.2、35℃反応では7.5 〜7.7 、その中間の温度での反応では温度の上昇に対し比例的にそのpHを下げる)。また連続式もしくは回分式のいずれの反応型式であってもよい。
反応槽4からの反応液はそのままの温度で直ちに中和槽6にて中和用酸5で中和されて安定化される。酸5は過剰に添加して液を好ましいpH値に保つように調整される。そのpHは蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液pHで2.6〜3.1 である。塔底温度によってその最適なpH範囲は変化し、例えば100 ℃の場合2.65〜3.0 、125℃の場合2.7 〜2.95、その中間の温度においては、温度の上昇に対し比例的にそのpHの範囲を狭めることが好ましい。実用上は中和後の粗アセトンシアンヒドリンのpHと蒸留塔塔底の精製アセトンシアンヒドリンとのpHの相関を、実験的あるいはプロセス上の経験から把握しておくことが必要である。発明者らの研究によれば精製アセトンシアンヒドリンのpHが粗アセトンシアンヒドリンpHよりも0.1〜0.2高い値を示す。これは粗アセトンシアンヒドリンには、安定剤として添加した酸の他に、亜硫酸や未反応性青酸の如き極めて揮発しやすい酸を含み、その揮発性酸が蒸留塔塔頂に放散するためである。これに対し無機アルカリ(例えば水酸化カリウム)を触媒として合成した場合、そのpHの差は0.5〜1.0であり、アミンを触媒とした場合に較べて、蒸留塔塔底のpHの制御が難しい。これは亜硫酸ガスと無機アルカリより生成した亜硫酸アルカリが蒸留塔塔底で一部分解し、亜硫酸ガスの放散が起こることによる。
中和し安定化した粗アセトンシアンヒドリンは熱交換器8にて減圧蒸留塔9の塔底からの精製アセトンシアンヒドリン15と熱交換され、減圧蒸留塔9に入る。減圧精留塔9内では溶解亜硫酸ガスの放散及び青酸の放散が起こり、塔底部に近づくに従ってこれらの分解や放散が進み、液のpHは高くなる。なお、アセトンおよびアセトンシアンヒドリンの一部も塔頂へ放散される。塔頂成分は、凝縮器10により凝縮し、槽11に溜まり、一部は蒸留塔9に還流され、残りは留出液13としてアセトンシアンヒドリン合成反応槽に戻される。一方、未凝縮成分として大部分を占める亜硫酸ガスと、系内への洩れ込み空気は減圧用エジェクター12より排出される。塔底からは上記の青酸、アセトンおよび酸性ガスを実質的に含まない精製アセトンシアンヒドリン15が抜き出される。
実施例1
安定剤として亜硫酸ガス500ppmを含む液化青酸を280kg/h 、アセトンを601kg/h および触媒としてジエチルアミンを1000リットルの攪拌装置および冷却装置を備えた第1反応槽へ連続的に供給した。反応温度は冷凍機冷媒および冷却塔水を用いて冷却して15℃、22℃、35℃に変化させた。更にジエチルアミン供給量を徐々に下げ、後流の中和槽出口液のアセトンシアンヒドリン純度が92重量%以上を保つ下限のpHで運転した。
この反応液を続けて同型、同容量の第2反応槽へ連続的に送入し、温度を5℃に保った。次にこの反応液を200 リットルの攪拌装置付き中和槽へ供給、98重量%濃硫酸で中和し、10体積%水溶液pHを2.7に保った。その結果は表1の通りであった。
実施例2
ジエチルアミンを触媒に用いて合成した、遊離青酸0.075 重量%、水0.152 重量%、10体積%水溶液のpH2.85の通常得られる精製アセトンシアンヒドリンを濃硫酸およびジエチルアミンを用いて、10体積%水溶液pHをそれぞれ2.62、2.72、2.76、2.93、3.01に調整した。ついでこの液と、未調整液(pH=2.85)各500mlを攪拌機付丸底フラスコに仕込み、それぞれ温度100℃、110℃、120 ℃、125 ℃に60分間加熱、攪拌した。冷却後その一部を採取し、硝酸銀滴定法により遊離青酸を定量し、アセトンシアンヒドリンの分解速度を求めた。
加熱時の青酸の放散を防ぐためにフラスコには還流凝縮器を取り付け、冷却剤で冷却した。結果を表2に示す。この結果、分解速度はpHと温度の関係はlnK=A+B/Tで表せられる。ただしpHの範囲は2.6〜3.1 の範囲に限定される。
ここでK=分解速度 [mol% /分] 、T=絶対温度〔°K]A=−387.21×(pH)2 +2190.2×(pH)−3068.2B=1.75984×105×(pH)2 −9.95273 ×105 ×(pH)+1.394433×106発明者らの経験によれば、蒸留塔の安定的な運転のためには、アセトンシアンヒドリンの塔内での分解率は2mol%程度以下に抑えなければならない。実用的には蒸留塔塔底のアセトンシアンヒドリンの滞留時間は、少なくとも20分程度必要であり、分解速度は0.1mol%/分以下に抑える必要がある。この分解率以下に保つための最適なpH範囲は塔底温度によって変化し、例えば100℃の場合2.65〜3.0 、125 ℃の場合2.7 〜2.95、その中間の温度においては、温度の上昇に対し比例的にそのpHの範囲は狭くなる。
実施例3
安定剤として亜硫酸ガス500ppmを含む液化青酸を292kg/h 、アセトンを627kg/h および触媒としてジエチルアミンを0.6kg/h で1000リットルの攪拌装置および冷却装置を備えた第1反応槽へ連続的に供給した。反応温度は冷却塔水を用いて冷却して35℃を保ち、反応液のpHは7.6であった。
この反応液を続けて同型、同容量の第2反応槽へ連続的に送入し、温度を5℃に保った。次にこの反応液を200 リットルの攪拌装置付き中和槽へ供給、98重量%濃硫酸で中和し、10体積%水溶液pHを2.7に保った。中和後の液の分析値は、10体積%水溶液pH2.7、遊離青酸 2.1重量%、アセトン 4.6重量%、水分 0.2重量%、塩 0.2重量%、アセトンシアンヒドリン92.9重量%、色度APHA 50であった。
次に、このアセトンシアンヒドリンを920kg/h で、棚段26段からなる減圧蒸留塔に供給した。供給液は塔底液と熱交換され70℃に昇温し、下から16段の棚段へ送入した。安定時の塔内温度は、塔頂9℃、下から16段78℃、下から10段71℃、下から4段95℃、塔底 122℃であり、絶対圧力は、塔底 18.5 ×103Pa 、塔頂14.9 ×103Pa であった。
塔底から、精製アセトンシアンヒドリン(10体積%水溶液pH 2.8、遊離青酸0.04 重量%、アセトン 0.5重量%、水分 0.2重量%、純度99.3重量%、色度APHA100)856kg/h
を得た。塔頂からは、亜硫酸ガスが真空エジェクターより、駆動蒸気と共に0.02kg/hで排出され、留出液128kg/hを得、その半量を塔頂へ戻し、残りを反応槽へ送った。減圧蒸留塔での分解率は0.55%であった。
実施例4
実施例3と同様に、ジエチルアミンを触媒として、5ヶ月連続でアセトンシアンヒドリンを製造した。その期間、減圧蒸留塔供給液および塔底抜き出し液は円筒焼結金属をエレメントとした濾過器を通して運転したが、濾過器の差圧の上昇は見られず、濾過器の切り替えおよび再生作業は全く発生しなかった。この期間の精製アセトンシアンヒドリン製造量は平均680kg/hであった。
比較例1
実施例3と同様にジエチルアミンを触媒として粗アセトンシアンヒドリンを合成した。中和槽の10体積%水溶液pHを硫酸により3.2 に調整し、(10体積%水溶液pH3.2、遊離青酸 2.1重量%、アセトン 4.6重量%、水分0.2重量%、塩0.2重量%、アセトンシアンヒドリン92.9重量%以下)の粗アセトンシアンヒドリンを得た。
次に、このアセトンシアンヒドリンを実施例1と同一の減圧蒸留塔に供給したところ、塔底圧力および塔頂圧力が上昇し始め、塔底温度は再沸器に蒸気を加えているにもかかわらず100℃以下であり、塔頂の留出量は急激に増加した。塔底液は、10体積%pH3.4 、遊離青酸0.55 重量%であったため運転を中止した。
比較例2
50重量%水酸化カリウム水溶液を触媒として、実施例3と同様に、第1反応槽を冷却塔水により冷却し(反応温度35℃)、粗アセトンシアンヒドリンを合成した。得られた粗アセトンシアンヒドリンの組成は、10体積%水溶液pH3.1、遊離青酸2.5重量%、アセトン 5.5重量%、水分 0.4重量%、塩 0.15 重量%、アセトンシアンヒドリン91.5重量%、色度APHA 200であった。
続いて、粗アセトンシアンヒドリンを実施例3と同様に減圧蒸留塔に供給し、10体積%pH 3.8、遊離青酸 0.03 重量%、アセトン 0.4重量%、水分0.2重量%、純度99.4重量%、色度APHA 250の精製アセトンシアンヒドリンを得た。
比較例3
実施例3と同一の設備で、水酸化カリウムを触媒としてアセトンシアンヒドリンを製造した結果、5ヶ月で減圧蒸留塔供給液濾過器の差圧上昇による切り替えおよび再生作業が計30回(月平均6回)、塔底液濾過器の同作業が13回(月平均2.6回)発生した。この期間の精製アセトンシアンヒドリン製造量は平均520kg/hであった。
Figure 2007031456
Figure 2007031456
本発明方法の一実施態様を示すフロー図である。
符号の説明
1 青酸
2 アセトン
3 アミン触媒
4 反応槽
5 中和用酸
6 中和槽
7 粗アセトンシアンヒドリン
8 熱交換器
9 減圧蒸留塔
10 凝縮器
11 還流受槽
12 減圧エジェクター
13 回収青酸、アセトンおよびアセトンシアンヒドリン混合液
14 再沸器
15 精製アセトンシアンヒドリン

Claims (3)

  1. 少なくとも一槽の完全混合型反応槽を用い、塩基触媒としてのアミンの存在下、温度−20〜+40℃かつ直接測定法のpH7.4 〜8.3 の条件で、青酸とアセトンを反応させてアセトンシアンヒドリンを合成し、次いで得られた粗アセトンシアンヒドリンに酸を添加して塩基触媒を中和し、蒸留塔塔底から採取される精製アセトンシアンヒドリンの10体積%水溶液の直接測定法によるpHを2.6〜3.1とし、粗アセトンシアンヒドリンを単一の蒸留塔を用いて精留することを特徴とするアセトンシアンヒドリンの製造方法。
  2. 精留が130 ℃以下であることを特徴とする請求項1記載のアセトンシアンヒドリンの製造方法。
  3. 蒸留塔塔底温度100 ℃の時、塔底液の10体積%水溶液のpHを2.65〜3.0 、塔底温度125 ℃の時、同じく塔底液のpHを2.7 〜2.95とし、その中間の塔底温度においては、温度の上昇に対し比例的にそのpHの範囲を狭めることを特徴とする請求項2記載のアセトンシアンヒドリンの製造方法。
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