JP2007030129A - 合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製歯切工具 - Google Patents

合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製歯切工具 Download PDF

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Abstract

【課題】合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製歯切工具を提供する。
【解決手段】表面被覆超硬合金製歯切工具が、炭化タングステン基超硬合金製歯切工具基体の表面に、(a)いずれも(Ti,Al,Cr)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nmの薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、上記薄層Aは、組成式:[Ti1-(A+B)AlCr]Nを満足する(Ti,Al,Cr)N層、上記薄層Bは、組成式:[Ti1-(C+D)AlCr]Nを満足する(Ti,Al,Cr)N層からなり、(c)上記下部層は、単一相構造を有し、組成式:[Ti1-(E+F)AlCr]Nを満足する(Ti,Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】なし

Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた耐熱塑性変形性を有し、さらに高温硬さおよび高温強度も具備し、したがって特に合金鋼などの高い発熱を伴なう高速歯切加工に用いた場合にも、硬質被覆層に摩耗進行を加速する偏摩耗の原因となる熱塑性変形の発生がなく、この結果すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮する表面被覆超硬合金製歯切工具(以下、被覆超硬歯切工具という)に関するものである。
従来、一般に自動車や航空機、さらに各種駆動装置などの構造部材として各種歯車が用いられ、これら歯車の歯形の歯切加工に被覆超硬歯切工具(ソリッドホブ)が用いられている。

また、被覆超硬歯切工具としては、例えば図3に概略斜視図で示される通り、回転軸に対して放射状に、かつ長さ方向に沿って複数の歯溝が形成され、それぞれの歯溝間に、前記歯溝に面し、回転方向に対して前面がすくい面となる前後面と、逃げ面となる頂面(歯先歯面)および両側面(左右歯面)で構成された歯部が、長さ方向に沿って連続的に複数形成された形状に機械加工された炭化タングステン基超硬合金製歯切工具本体(以下、超硬歯切基体という)の表面に、各種の硬質被覆層を物理蒸着してなる被覆超硬歯切工具が知られている。
一方、通常のスローアウエイチップやエンドミル、さらにドリルなどの表面被覆超硬合金製切削工具の硬質被覆層としては、例えば、

組成式:[Ti1-(X+Y) AlX Cr]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.65、Yは0.01〜0.15を示す)、

を満足するTiとAlとCrの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Cr)Nで示す]層からなる硬質被覆層を2〜8μmの平均層厚で蒸着形成することが知られており、さらに、上記硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Cr)N層は、構成成分であるAlによって高温硬さおよび高温耐酸化性、同Tiによって高温強度、同Crによって耐熱性の向上した特性を具備することも知られている。
さらに、上記の硬質被覆層を備えた被覆超硬歯切工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の超硬歯切基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するTi−Al−Cr合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記基体の表面に、上記(Ti,Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
特開平7−237010号公報
近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記従来の被覆超硬歯切工具においては、これを通常の歯切加工条件で用いた場合には問題はないが、これを高熱発生を伴う合金鋼等の高速歯切加工条件で用いた場合には、硬質被覆層の熱塑性変形が原因で偏摩耗形態をとるようになることから、摩耗が急速に進行するようになり、この結果比較的短時間で摩耗寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬歯切工具を開発すべく、上記従来の被覆超硬歯切工具の硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Cr)N層に着目し、研究を行った結果、
(a)硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Cr)N層において、Cr成分の含有割合を多くすれば耐熱塑性変形性が向上するが、上記の従来(Ti,Al,Cr)N層における1〜15原子%程度のCr含有割合では、合金鋼の高熱発生を伴う高速歯切加工における熱塑性変形の発生を防止するに十分でなく、これらの要求に満足に対応させるためには前記1〜15原子%をはるかに越えた40〜60原子%のCr含有が必要となるが、40〜60原子%のCr成分を含有した(Ti,Al,Cr)N層を硬質被覆層として実用に供するには、所定量のTiを含有させて所定の高温強度を確保する必要があるために、Al成分の含有割合は結果として非常に少ないものとなり、結局、硬質被覆層の高温硬さはきわめて低いものとなること。
(b)組成式:[Ti1-(A+B)AlCr]N(ただし、原子比で、Aは0.01〜0.10、Bは0.40〜0.60を示す)を満足する、Cr含有割合が40〜60原子%の(Ti,Al,Cr)N層と、
組成式:[Ti1-(C+D)AlCr]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.15〜0.30を示す)を満足する、相対的にAl成分の含有割合を多くした(Ti,Al,Cr)N層、
を、それぞれの一層平均層厚を5〜20nm(ナノメーター)の薄層とした状態で、交互積層すると、この(Ti,Al,Cr)N層は、薄層の交互積層構造によって、上記の高Cr含有の(Ti,Al,Cr)N層(以下、薄層Aという)のもつすぐれた耐熱塑性変形性と、前記薄層Aに比してCr含有割合が低く、かつ相対的に高Al含有の(Ti,Al,Cr)N層(以下、薄層Bという)のもつ相対的に高い高温硬さを具備するようになること。
(c)上記(b)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有する(Ti,Al,Cr)N層は、合金鋼の高速歯切加工で要求されるすぐれた耐熱塑性変形性と所定の高温硬さを具備するものの、十分に満足できる高温硬さを有するものであるとはいえないので、これを硬質被覆層の上部層として設け、一方同下部層として、耐熱塑性変形性は不十分であるが、相対的にAl成分の含有割合が高く、すぐれた高温硬さを具備する上記の従来硬質被覆層に相当する組成を有する(Ti,Al,Cr)N層、すなわち、
組成式:[Ti1-(E+F)AlCr]N(ただし、原子比で、Eは0.45〜0.65、Fは0.01〜0.15を示す)を満足する、単一相構造の(Ti,Al,Cr)N層、
を設けた構造にすると、この結果の硬質被覆層は、すぐれた耐熱塑性変形性、高温強度、および高温硬さのすべてを備えたものとなるので、この硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆超硬歯切工具は、高熱発生を伴う合金鋼の高速歯切加工でも、前記硬質被覆層に偏摩耗の原因となる熱塑性変形の発生がなくなり、正常摩耗形態をとるようになることから、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するようになること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、回転軸に対して放射状に、かつ長さ方向に沿って複数の歯溝が形成され、それぞれの歯溝間に、前記歯溝に面し、回転方向に対して前面がすくい面となる前後面と、逃げ面となる頂面(歯先歯面)および両側面(左右歯面)で構成された歯部が、長さ方向に沿って連続的に複数形成された形状を有する炭化タングステン基超硬合金製歯切工具基体の表面に、
(a)いずれも(Ti,Al,Cr)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも5〜20nm(ナノメ−タ−)の層厚を有する薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Ti1 -(A+B)AlCr]N(ただし、原子比で、Aは0.01〜0.10、Bは0.40〜0.60を示す)を満足する(Ti,Al,Cr)N層、
上記薄層Bは、
組成式:[Ti1-(C+D)AlCr]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.15〜0.30を示す)を満足する(Ti,Al,Cr)N層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Ti1-(E+F)AlCr]N(ただし、原子比で、Eは0.45〜0.65、Fは0.01〜0.15を示す)を満足する(Ti,Al,Cr)N層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する被覆超硬歯切工具(表面被覆超硬合金製歯切工具)に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の被覆超硬歯切工具の硬質被覆層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層の組成式および層厚
上記の通り、硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Cr)N層におけるAl成分には高温硬さを向上させ、一方同Ti成分には高温強度、さらに同Cr成分には耐熱塑性変形性を向上させる作用があり、下部層ではAl成分の含有割合を相対的に多くして、高い高温硬さを具備せしめるが、Alの含有割合を示すE値がTiとCrとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.45未満では、相対的にTiの割合が多くなって、合金鋼の高速歯切加工で要求されるすぐれた高温硬さを確保することができず、摩耗進行が急激に促進するようになり、一方Alの割合を示すE値が同0.65を越えると、相対的にTiの割合が少なくなり過ぎて、高温強度が急激に低下し、この結果チッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、E値を0.45〜0.65と定めた。
また、Crの割合を示すF値がTiとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、所定の最小限の耐熱塑性変形性を確保することができず、一方同F値が0.15を超えると、所定の高温強度確保が困難になることから、F値を0.01〜0.15と定めた。
さらに、その層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた高温硬さを硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その層厚が6μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その層厚を2〜6μmと定めた。
(b)上部層の薄層Aの組成式
上部層の薄層Aの(Ti,Al,Cr)NにおけるCr成分は、上記の通り相対的に含有割合を高くして、高熱発生を伴う合金鋼の高速歯切加工での耐熱塑性変形性の向上を図る目的で含有するものであり、したがってB値が0.40未満では所望のすぐれた耐熱塑性変形性を確保することができず、一方B値が0.60を越えると、隣接して高温強度のすぐれた薄層Bが存在しても、上部層の高温強度低下は避けられず、チッピング発生の原因となることから、B値を0.40〜0.60と定めた。
また、Alの割合を示すA値がTiとCrの合量に占める割合で、0.01未満では、最低限の高温硬さを確保することができず、摩耗促進の原因となり、一方同A値が0.10を超えると、高温強度に低下傾向が現れるようになり、チッピング発生の原因となることから、A値を0.01〜0.10と定めた。
(c)上部層の薄層Bの組成式
上部層の薄層Bにおいては、薄層Aに比してCr成分の含有割合を相対的に低くし、一方Al成分の含有割合を相対的に高く維持することで、相対的に高い高温硬さを具備せしめ、隣接する薄層Aの高温硬さ不足を補強し、もって、前記薄層Aのもつすぐれた耐熱塑性変形性と、前記薄層Bのもつ所定の高温硬さを具備した上部層を形成するものであるが、前記薄層Bの組成式におけるAlの含有割合を示すC値が0.20未満になると、Alの含有割合が少なくなり過ぎて、所定の高温硬さを確保することができず、硬質被覆層の摩耗進行が促進するようになり、一方同C値が0.35を越えると、相対的にTi成分の含有割合が低下し、高温強度低下は避けられず、チッピング発生の原因となることから、C値を0.20〜0.35と定めた。
また、Crの割合を示すD値がTiとAlの合量に占める割合で、0.15未満では、上部層全体としての耐熱塑性変形性の改善効果が少なく、一方同D値が0.30を超えると、上部層全体の高温強度が低下するようになることから、D値を0.15〜0.30と定めた。
(d)上部層の薄層Aと薄層Bの層厚
それぞれの層厚が5nm未満ではそれぞれの薄層を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果上部層に所望のすぐれた耐熱塑性変形性と、所定の高温硬さを確保することができなくなり、またそれぞれの層厚が20nmを越えるとそれぞれの薄層がもつ欠点、すなわち薄層Aであれば高温硬さ不足、薄層Bであれば耐熱塑性変形性の不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、それぞれの層厚を5〜20nmと定めた。
(e)上部層の層厚
その層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた耐熱塑性変形性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その層厚が1.5μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その層厚を0.5〜1.5μmと定めた。
この発明の被覆超硬歯切工具は、硬質被覆層が(Ti,Al,Cr)N層からなるが、硬質被覆層の上部層を薄層Aと薄層Bの交互積層構造とすることによってすぐれた耐熱塑性変形性を具備せしめ、同単一相構造の下部層がすぐれた高温硬さを有することから、特に高熱発生を伴う合金鋼の高速歯切加工でも、前記硬質被覆層の熱塑性変形が著しく抑制されるようになり、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するものである。

つぎに、この発明の被覆超硬歯切工具を実施例により具体的に説明する。

原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結して、直径:85mm×長さ:125mmの超硬合金製丸棒素材を形成し、この素材から機械加工にて、外径:80mm×長さ:120mmの全体寸法をもち、2条右捩れ×16溝の形状をもった図3に示されるソリッドホブ型の超硬歯切基体A〜Jをそれぞれ製造した。

(a)ついで、上記の超硬歯切基体A〜Jのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、それぞれ表2に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層A形成用Ti−Al−Cr合金、他方側のカソード電極(蒸発源)として、同じくそれぞれ表2に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層B形成用Ti−Al−Cr合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、また前記両Ti−Al−Cr合金から90度ずれた位置に前記回転テーブルに沿ってカソード電極(蒸発源)として下部層形成用Ti−Al−Cr合金を装着し、

(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬歯切基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記下部層形成用Ti−Al−Cr合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬歯切基体表面を前記Ti−Al−Cr合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬歯切基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記下部層形成用Ti−Al−Cr合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬歯切基体の表面に、表2に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Ti,Al,Cr)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)ついで、装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬歯切基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加した状態で、前記薄層A形成用Ti−Al−Cr合金のカソード電極とアノード電極との間に50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、前記超硬歯切基体の表面に所定層厚の薄層Aを形成し、前記薄層A形成後、アーク放電を停止し、代って前記薄層B形成用Ti−Al−Cr合金のカソード電極とアノード電極間に同じく50〜200Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、所定層厚の薄層Bを形成した後、アーク放電を停止し(この場合薄層Bの形成から開始してもよい)、再び前記薄層A形成用Ti−Al−Cr合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Aの形成と、前記薄層B形成用Ti−Al−Cr合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Bの形成を交互に繰り返し行い、もって前記超硬歯切基体の表面に、層厚方向に沿って表2に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表2に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆超硬歯切工具1〜10をそれぞれ製造した。

また、比較の目的で、上記の超硬歯切基体A〜Jを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として、それぞれ表3に示される目標組成に対応した成分組成をもったTi−Al−Cr合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒータで装置内を500℃に加熱した後、前記超硬歯切基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Ti−Al−Cr合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬歯切基体表面を前記Ti−Al−Cr合金でボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬歯切基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記Ti−Al−Cr合金のカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬歯切基体の表面に、表3に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Ti,Al,Cr)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆超硬歯切工具1〜10をそれぞれ製造した。

つぎに、上記の本発明被覆超硬歯切工具1〜10および比較被覆超硬歯切工具1〜10を用いて、材質がJIS・SCr420Hの合金鋼にして、

モジュール:2.0、圧力角:20度、歯数:29、ねじれ角:25度右捩れ、 歯幅:20.0mmの寸法および形状をもった歯車の加工を、

切削速度(回転速度): 450m/min、
送り: 1.8mm/rev、
加工形態:クライム、シフトなし、ドライ(エアーブロー)、
の高速歯切加工条件(上記JIS・SCr420Hの合金鋼歯車の加工の場合の切削速度は通常 350m/min)で行い、
逃げ面摩耗幅が 0.1 mmに至るまでの歯車加工数を測定した。
この測定結果を表2、3にそれぞれに示した。

Figure 2007030129
Figure 2007030129
Figure 2007030129

この結果得られた本発明被覆超硬歯切工具1〜10の(Ti,Al,Cr)Nからなる硬質被覆層を構成する上部層の薄層Aおよび薄層B、さらに同下部層の組成、並びに比較被覆超硬歯切工具1〜10の(Ti,Al,Cr)Nからなる硬質被覆層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散型X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。

また、上記の硬質被覆層の構成層の平均層厚を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。
表2、3に示される結果から、本発明被覆超硬歯切工具は、いずれも硬質被覆層がそれぞれ組成の異なる、(Ti,Al,Cr)Nからなる単一相構造の下部層と、層厚がそれぞれ5〜20nmの薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有する上部層で構成され、前記下部層がすぐれた高温硬さ、さらに前記上部層がすぐれた耐熱塑性変形性を有し、硬質被覆層はこれらのすぐれた特性を兼ね備えたものとなるので、合金鋼製歯車の歯切加工を、高い発熱を伴う高速歯切加工条件で行なった場合にも、チッピング、偏摩耗の発生なく、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が単一相構造の(Ti,Al,Cr)N層からなる比較被覆超硬歯切工具は、前記高速歯切加工条件では、特に耐熱塑性変形性不足が原因で摩耗進行が速く、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の表面被覆超硬合金製歯切工具(本発明被覆超硬歯切工具)は、通常の条件での歯切加工は勿論のこと、特に各種の合金鋼製歯車などの歯切加工を、高い発熱を伴う高速歯切加工条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた性能を示すものであるから、歯切加工装置の高性能化、並びに歯切加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。

この発明の被覆超硬歯切工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。 通常のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。 超硬歯切工具(ソリッドホブ)の概略斜視図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金製歯切工具基体の表面に、

    (a)いずれもTiとAlとCrの複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
    (b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
    上記薄層Aは、
    組成式:[Ti1-(A+B)AlCr]N(ただし、原子比で、Aは0.01〜0.10、Bは0.40〜0.60を示す)を満足するTiとAlとCrの複合窒化物層、
    上記薄層Bは、
    組成式:[Ti1-(C+D)AlCr]N(ただし、原子比で、Cは0.20〜0.35、Dは0.15〜0.30を示す)を満足するTiとAlとCrの複合窒化物層、からなり、
    (c)上記下部層は、単一相構造を有し、
    組成式:[Ti1-(E+F)AlCr]N(ただし、原子比で、Eは0.45〜0.65、Fは0.01〜0.15を示す)を満足するTiとAlとCrの複合窒化物層、
    からなる硬質被覆層を蒸着形成してなることを特徴とする合金鋼の高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製歯切工具。
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