JP4007104B2 - 高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆むく歯切工具 - Google Patents

高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆むく歯切工具 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、硬質被覆層が高強度を有し、かつ高温硬さと耐熱性にもすぐれ、したがって特に各種の鋼製歯車などの歯切加工を、高い機械的熱的衝撃を伴う高速条件で行なった場合に、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆むく歯切工具(以下、被覆歯切工具という)に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、一般に自動車や航空機、さらに各種駆動装置などの構造部材として各種歯車が用いられているが、これら歯車の歯形の歯切加工に、図3に概略斜視図で例示される形状の被覆歯切工具(ソリッドホブ)が用いられている。
【0003】
また、被覆歯切工具として、例えば図3に示される形状に機械加工された炭化タングステン基超硬合金または工具鋼からなる歯切工具本体を基体(以下、歯切基体という)とし、この歯切基体の表面に、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX TaZ)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.60、Ta:0.05〜0.20を示す)を満足するTiとAlとTaの複合窒化物[以下、(Ti,Al,Ta)Nで示す]層からなる硬質被覆層を1〜15μmの平均層厚で物理蒸着してなる被覆歯切工具が提案され、前記硬質被覆層を構成する(Ti,Al,Ta)N層が、Tiによる強度、およびAlによる高温硬さと耐熱性を有し、さらにTaによる一段の高温硬さを具備することから、かかる硬質被覆層を形成してなる被覆歯切工具はすぐれた歯切性能を発揮することも知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
さらに、上記の被覆歯切工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の歯切基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、アノード電極と所定組成を有するTi−Al−Ta合金がセットされたカソード電極(蒸発源)との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬歯切基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記歯切基体の表面に、上記(Ti,Al,Ta)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−137120号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
近年の歯切加工装置の高性能化はめざましく、一方で歯切加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、歯切加工は高速化の傾向にある。
具体的には、被覆歯切工具の歯切基体が、炭化タングステン基超硬合金の場合には、通常採用されている300m/min程度の切削速度を400m/min以上の切削速度で、また工具鋼の場合には、通常の150m/min程度の切削速度を200m/min以上の切削速度で歯切加工を行なうことが望まれている。
しかし、上記の従来被覆歯切工具においては、歯切加工を高い機械的熱的衝撃を伴う上記の高速条件で行なった場合には、特に硬質被覆層の強度不足が原因で、特に歯面を構成する逃げ面とすくい面の交わる切刃稜線部などにチッピング(微小割れ)が発生し易くなり、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆歯切工具を開発すべく、上記の従来被覆歯切工具を構成する硬質被覆層に着目し、研究を行った結果、
(a)上記の図2に示されるアークイオンプレーティング装置を用いて形成された従来被覆歯切工具を構成する(Ti,Al,Ta)N層は、層厚全体に亘って実質的に均一な組成を有し、したがって均質な強度、および高温硬さと耐熱性を有するが、例えば図1(a)に概略平面図で、同(b)に概略正面図で示される構造のアークイオンプレーティング装置、すなわち装置中央部に歯切基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側に相対的にAl含有量の高いTi−Al−Ta合金、他方側に相対的にAl含有量の低いTi−Al−Ta合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブルの外周部に沿って複数の歯切基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、蒸着形成される硬質被覆層の層厚均一化を図る目的で歯切基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記歯切基体の表面に(Ti,Al,Ta)N層を形成すると、この結果の(Ti,Al,Ta)N層においては、回転テーブル上にリング状に配置された前記歯切基体が上記の一方側の相対的にAl含有量の高いTi−Al−Ta合金のカソード電極(蒸発源)に最も接近した時点で層中にAl最高含有点が形成され、また前記歯切基体が上記の他方側の相対的にAl含有量の低いTi−Al−Ta合金のカソード電極に最も接近した時点で層中にAl最低含有点が形成され、上記回転テーブルの回転によって層中には層厚方向にそって前記Al最高含有点とAl最低含有点が所定間隔をもって交互に繰り返し現れると共に、前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造をもつようになること。
【0008】
(b)上記(a)の繰り返し連続変化成分濃度分布構造の(Ti,Al,Ta)N層において、対向配置の一方側のカソード電極(蒸発源)であるTi−Al−Ta合金におけるAlおよびTa含有量を上記の従来(Ti,Al,Ta)N層形成用Ti−Al−Ta合金のAlおよびTa含有量に相当するものとし、同他方側のカソード電極(蒸発源)であるTi−Al−Ta合金におけるAl含有量を上記の従来Ti−Al−Ta合金のAl含有量に比して相対的に低いものとすると共に、歯切基体が装着されている回転テーブルの回転速度を制御して、
上記Al最高含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX TaZ)N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.60、Z:0.05〜0.20を示す)、
上記Al最低含有点が、組成式:(Ti1-(X+Z)AlX TaZ)N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.25、Z:0.05〜0.20を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の厚さ方向の間隔を0.01〜0.1μmとすると、
上記Al最高含有点部分では、上記の従来(Ti,Al,Ta)N層のもつ高温硬さと耐熱性に相当する高温硬さと耐熱性を示し、一方上記Al最低含有点部分では、前記Al最高含有点部分に比してAl含有量が低く、Ti含有量の高いものとなるので、一段と高い強度が確保され、かつこれらAl最高含有点とAl最低含有点の間隔をきわめて小さくしたことから、層全体の特性として高温硬さと耐熱性を保持した状態で、一段と高い強度を具備するようになり、したがって、硬質被覆層がかかる構成の(Ti,Al,Ta)N層からなる被覆歯切工具は、特に各種の鋼製歯車などの歯切加工を、高い機械的熱的衝撃を伴う高速条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮するようになること。
以上(a)および(b)に示される研究結果を得たのである。
【0009】
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、装置中央部に歯切基体装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にAl最高含有点形成用Ti−Al−Ta合金、他方側にAl最低含有点形成用Ti−Al−Ta合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブルの外周部に沿って複数の歯切基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、前記歯切基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記歯切基体の表面に、(Ti,Al,Ta)Nからなる硬質被覆層を1〜15μmの全体平均層厚で蒸着してなる被覆歯切工具にして
上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
さらに、上記Al最高含有点が、組成式:[Ti1-(X+Z)AlX TaZ]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.60、Z:0.05〜0.20を示す)、
上記Al最低含有点が、組成式:[Ti1-(X+Z)AlX TaZ]N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.25、Z:0.05〜0.20を示す)、
を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmである、
高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する被覆歯切工具に特徴を有するものである。
【0010】
つぎに、この発明の被覆歯切工具において、これを構成する硬質被覆層の構成を上記の通りに限定した理由を説明する。
(a)Al最高含有点の組成
Al最高含有点の(Ti,Al,Ta)NにおけるTi成分は強度を向上させ、同Al成分は高温硬さおよび耐熱性を向上させ、さらに同Ta成分は一段と高温硬さを向上させる作用があり、したがってAlおよびTa成分の含有割合が高くなればなるほど高温硬さおよび耐熱性は向上し、高熱発生を伴う高速切削に適合したものになるが、Alの含有割合を示すX値がTiとTaの合量に占める割合(原子比)で0.60を越えても、またTaの含有割合を示すZ値が同0.20を越えても、高強度を有するAl最低含有点が隣接して存在しても層自体の強度の低下は避けられず、この結果チッピングなどが発生し易くなり、一方同X値が同0.45未満、さらに同Z値が0.05未満になると、Al最高含有点におけるAlおよびTa成分による高温硬さおよび耐熱性が低下し、摩耗が促進するようになることから、X値を0.45〜0.60、Z値を0.05〜0.20と定めた。
【0011】
(b)Al最低含有点の組成
上記の通りAl最高含有点は相対的に高温硬さおよび耐熱性にすぐれ、反面相対的に強度が不十分であるため、このAl最高含有点の強度不足を補う目的で、Ti含有割合が高く、一方Al含有量が低く、これによって高強度を有するようになるAl最低含有点を厚さ方向に交互に介在させるものであり、したがってAlの割合を示すX値がTiおよびTa成分との合量に占める割合(原子比)で0.25を越えると、相対的にTi含有量が低下するようになり、この結果強度が低下し、チッピング発生が起り易くなり、一方同X値が0.10未満になると、Al最低含有点に所定の高温硬さおよび耐熱性を確保することができず、摩耗促進の原因となることから、Al最低含有点でのAlの割合を示すX値を0.10〜0.25と定めた。
Al最低含有点におけるTa成分も、上記の通りAl成分との共存で高温硬さを向上させ、高熱発生を伴う高速切削に適応させる目的で含有するものであり、したがってZ値が0.05未満では所望の高温硬さ向上効果が得られず、一方Z値が0.20を越えるとAl最低含有点の強度に低下傾向が現れるようになり、チッピング発生の原因となることから、Z値を0.05〜0.20と定めた。
【0012】
(c)Al最高含有点とAl最低含有点間の間隔
その間隔が0.01μm未満ではそれぞれの点を上記の組成で明確に形成することが困難であり、この結果層に所望の高温硬さおよび耐熱性と、強度を確保することができなくなり、またその間隔が0.1μmを越えるとそれぞれの点がもつ欠点、すなわちAl最高含有点であれば強度不足、Al最低含有点であれば高温硬さおよび耐熱性不足が層内に局部的に現れ、これが原因で切刃にチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、その間隔を0.01〜0.1μmと定めた。
【0013】
(d)硬質被覆層の全体平均層厚
その層厚が1μm未満では、所望の耐摩耗性を確保することができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、切刃稜線部にチッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
【0014】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の被覆歯切工具を実施例により具体的に説明する。
(実施例1)
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr3 2 粉末、TiN粉末、(W,Ti)C[質量割合で、WC/TiC=50/50]粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPa の圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2KPaの窒素雰囲気中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結して、直径:85mm×長さ:125mmの超硬合金製丸棒素材を形成し、この素材から機械加工にて、外径:80mm×長さ:120mmの全体寸法をもち、4条右捩れ×20溝の形状をもった図1に示されるソリッドホブ型の歯切基体A〜Jをそれぞれ製造した。
【0014】
ついで、上記の歯切基体A〜Jのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブル外周部にそって装着し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、種々の成分組成をもったAl最高含有点形成用Ti−Al−Ta合金、他方側のカソード電極(蒸発源)としてAl最低含有点形成用Ti−Al−Ta合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、またボンバート洗浄用金属Tiも装着し、まず、装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する歯切基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって歯切基体表面をTiボンバート洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して10Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する歯切基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつそれぞれのカソード電極(前記Al最高含有点形成用Ti−Al−Ta合金およびAl最低含有点形成用Ti−Al−Ta合金)とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記歯切基体の表面に、層厚方向に沿って表2に示される目標組成のAl最低含有点とAl最高含有点とが交互に同じく表2に示される目標間隔で繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、かつ同じく表2に示される目標全体層厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆歯切工具1〜10をそれぞれ製造した。
【0016】
また、比較の目的で、上記の歯切基体A〜Jのそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図2に示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、またボンバート洗浄用金属Tiも装着し、まず、装置内を排気して0.5Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記歯切基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、カソード電極の前記金属Tiとアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって歯切基体表面をTiボンバート洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して10Paの反応雰囲気とすると共に、前記歯切基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記カソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記歯切基体A〜Jのそれぞれの表面に、表3に示される目標組成および目標層厚を有し、かつ層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al,Ta)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、比較被覆歯切工具1〜10をそれぞれ製造した。
【0017】
つぎに、上記の本発明被覆歯切工具1〜10および比較被覆歯切工具1〜10を用いて、材質がJIS・S50Cの調質鋼にして、モジュール:1.75、圧力角:17.5度、歯数:33、ねじれ角:36度左捩れ、歯丈:5.36mm、歯幅:15.5mmの寸法および形状をもった歯車の加工を、
切削速度(回転速度):400m/min、
送り:2.5mm/rev、
加工形態:クライム、シフトなし、ドライ(エアーブロー)、
の条件で高速歯切加工で行い、逃げ面摩耗幅が0.1mmに至るまでの歯車加工数を測定した。この測定結果を表2,3それぞれに示した。
【0018】
【表1】
Figure 0004007104
【0019】
【表2】
Figure 0004007104
【0020】
【表3】
Figure 0004007104
【0021】
(実施例2)
質量%で、C:1.36%、Si:0.41%、Mn:0.28%、Cr:4.03%、Mo:6.05%、W:4.80%、V:3.24%、Co:5.12%を含有し、残りがFeと不可避不純物からなる組成を有し、かつ焼入れ焼戻し熱処理で素地に細長炭化物が分散分布した組織を有するものとした直径:85mm×長さ:125mmの工具鋼製丸棒素材を用意し、この素材から機械加工にて、外径:80mm×長さ:120mmの全体寸法をもち、4条右捩れ×20溝の形状をもった図1に示されるソリッドホブ型の歯切基体を製造した。
【0022】
ついで、上記の歯切基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、厚さ方向に沿って表4に示される目標組成のAl最高含有点とTi最高含有点とが交互に同じく表4に示される目標間隔で繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Ti最高含有点、前記Ti最高含有点から前記Al最高含有点へAl含有量がそれぞれ連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、かつ同じく表4に示される目標全体層厚の硬質被覆層を蒸着形成することにより、本発明被覆歯切工具11〜16をそれぞれ製造した。
【0023】
また、比較の目的で、上記の歯切基体を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示される通常のアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表5に示される目標組成および目標層厚を有し、かつ層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al,Ta)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、比較被覆歯切工具11〜16をそれぞれ製造した。
【0024】
つぎに、上記の本発明被覆歯切工具11〜16および比較被覆歯切工具11〜16を用いて、材質がJIS・SCr420Hの低合金鋼にして、モジュール:2、圧力角:20度、歯数:20、ねじれ角:30度左捩れ、歯丈:4.7mm、歯幅:20mmの寸法および形状をもった歯車の加工を、
切削速度(回転速度):250m/min、
送り:2.5mm/rev、
加工形態:クライム、シフトなし、ドライ(エアーブロー)、
の条件で高速歯切加工で行い、逃げ面摩耗幅が0.2mmに至るまでの歯車加工数を測定した。この測定結果を表4,5それぞれに示した。
【0025】
【表4】
Figure 0004007104
【0026】
【表5】
Figure 0004007104
【0027】
この結果得られた本発明被覆歯切工具1〜16および比較被覆歯切工具1〜16を構成する硬質被覆層について、厚さ方向に沿ってオージェ分光分析装置を用いてTi、Al、およびTaの含有量を測定した。これらの測定結果から、本発明被覆歯切工具1〜16の硬質被覆層では、厚さ方向に沿って目標組成と実質的に同じ組成を有するAl最高含有点とAl最低含有点とが目標間隔と実質的に同じ間隔で交互に存在し、かつ硬質被覆層の全体平均層厚も目標全体層厚と実質的に同じ値を示し、さらに前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造をもつことも確認された。一方比較被覆歯切工具1〜16の硬質被覆層においては、厚さ方向に沿って組成変化が見られず、かつ目標組成と実質的に同じ組成および目標全体層厚と実質的に同じ全体平均層厚を示すことが確認された。
【0028】
【発明の効果】
表2〜5に示される結果から、硬質被覆層が層厚方向にAl最低含有点とAl最高含有点とが交互に所定間隔をおいて繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有する本発明被覆歯切工具1〜16は、いずれも鋼製歯車の歯切加工を、高い機械的熱的衝撃を伴う高速条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮するのに対して、硬質被覆層が層厚方向に沿って実質的に組成変化のない(Ti,Al,Ta)N層からなる比較被覆歯切工具1〜16においては、前記硬質被覆層の強度不足が原因で、特に切刃稜線部にチッピングが発生し、これが原因で比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆歯切工具は、通常の条件での切削加工は勿論のこと、特に各種の鋼歯車などの歯切加工を、高い機械的熱的衝撃を伴う高速条件で行なった場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すものであるから、歯切加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の被覆歯切工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。
【図2】従来被覆歯切工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いた通常のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。
【図3】被覆歯切工具の概略斜視図である。

Claims (1)

  1. 装置中央部に炭化タングステン基超硬合金または工具鋼で構成された歯切工具本体からなる基体の装着用回転テーブルを設け、前記回転テーブルを挟んで、一方側にAl最高含有点形成用Ti−Al−Ta合金、他方側にAl最低含有点形成用Ti−Al−Ta合金をカソード電極(蒸発源)として対向配置したアークイオンプレーティング装置を用い、この装置の前記回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置にテーブルの外周部に沿って複数の前記基体をリング状に装着し、この状態で装置内雰囲気を窒素雰囲気として前記回転テーブルを回転させると共に、前記基体自体も自転させながら、前記の両側のカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間にアーク放電を発生させて、前記基体の表面に、TiとAlとTaの複合窒化物層からなる硬質被覆層を1〜15μmの全体平均層厚で蒸着してなる表面被覆むく歯切工具にして
    上記硬質被覆層が、層厚方向にそって、Al最高含有点とAl最低含有点とが所定間隔をおいて交互に繰り返し存在し、かつ前記Al最高含有点から前記Al最低含有点、前記Al最低含有点から前記Al最高含有点へAl含有量が連続的に変化する成分濃度分布構造を有し、
    さらに、上記Al最高含有点が、組成式:[Ti1-( + )AlTa]N(ただし、原子比で、Xは0.45〜0.60、Zは0.05〜0.20を示す)、
    上記Al最低含有点が、組成式:[Ti1-( + )AlTa]N(ただし、原子比で、Xは0.10〜0.25、Zは0.05〜0.20を示す)、
    を満足し、かつ隣り合う上記Al最高含有点とAl最低含有点の間隔が、0.01〜0.1μmであること、
    を特徴とする高速歯切加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆むく歯切工具。
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