JP2007010464A - 鋼板表面の酸化膜厚計測方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 直火加熱炉の出側で走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、前記赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、4つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、前記赤外光の間欠照射によって検出される8つの検出値を用い、演算により膜厚を求める。
【選択図】 図1
Description
一方、焼鈍を行う直火加熱炉は、設備のコンパクト性、鋼板の通板性向上、熱応答特性等に優れ、経済的なメリットが大きく、また良好なめっき性を確保できる、Si、Mnの添加限界を高められる利点もある。このために、溶融亜鉛めっき鋼板製造ラインに設置された直火加熱炉は、鋼板の成分設計の自由度を広げ、より優れた材質特性を有する溶融亜鉛めっき鋼板の製造を可能にする特徴がある。直火加熱炉は、複数のゾーンに分かれ、負荷に応じた燃焼パターンが設定可能である。分割されたゾーンでは酸化促進加熱、還元加熱が連続して行われるが負荷に応じてゾーン単位で燃焼時間が制御され、加熱炉出側では鋼板温度として、数百℃以上までの加熱が達成される。短時間で急速に加熱された鋼板は、次工程の輻射管加熱炉にて焼鈍され、その後にめっき工程に導かれる。
従来から行われてきた解析方法としては、めっき特性と直火加熱条件との関係を、Si、Mn添加量毎に詳細に調査して加熱条件の変化量である空気比やバーナー火炎強度、燃焼ガス組成などを適正化するものであった。しかし、この方法では実際の溶融亜鉛めっき鋼板の製造工程においてプロセス量の変動が激しいこと、バーナー詰りや火炎異常などの発生、ガス組成変動などの影響により、実際に直火過熱炉出側で最適な酸化物層形成がなされていることを確認することが困難であった。
通常、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚をオンラインで連続的に測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法としては、蛍光X線を用いる方法や偏光解析法(エリプソメトリー法)、反射・吸収法などが応用されているが、直火過熱炉の出側に適用する場合には、鋼板が数百℃以上に加熱されているため、鋼板自体から熱放射があることから温度変化が誤差要因になること、さらに設置上の熱対策が複雑になること、設置コストが高くなることなどの経済的な観点からも適用が難しいという問題があった。
特許文献1のカラーセンサを応用した鋼板表面の酸化膜厚計測方法では、酸化膜厚値と鋼板の明度や色相の値が関係することから、それらの関係を事前に求めておいて、酸化膜厚を推定するものである。
1.直火過熱炉を備えた連続焼鈍工程で、走行鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を連続的に測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法であって、前記直火加熱炉の出側で走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、前記赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、4つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、前記赤外光の間欠照射によって検出される8つの検出値を用い、演算により膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測方法。
4.前記光検出装置は複数のハーフミラーにより光路を分岐させ、前記4つの波長域で同時にエネルギーを検出する複数の素子を含むことを特徴とする上記2.又は3.に記載の鋼板表面の酸化膜厚計測装置。
図1は、本発明の構成を模式的に示す断面図である。
図1中、1は走行鋼板を示し、2は、走行鋼板1を連続的に直火加熱するための直火加熱炉を示す。直火加熱炉2は、その内部が耐火物で覆われており、複数のゾーンに配置された直火バーナーにより走行する鋼板1を加熱する。空気比やガス組成、バーナー火炎条件を代えた複数のゾーンがラインに沿って直列に配置されている。このような直火加熱炉によって、走行する鋼板1が所定の燃焼パターンに従って加熱される。3は、本発明の実施の形態に係る酸化膜厚計測装置の反射、放射光強度検出装置を示す。
水冷式遮光管4はその一端部が走行する鋼板1と対向して炉内に延在され、測定用窓6が形成されている。この測定用窓6以外の部分からは、遮光管4を通過して、反射、放射光強度検出装置3(光検出装置)の集光レンズ系21に光が到達することがないように、背光雑音が遮蔽されている。
本発明の実施の形態に係る鋼板表面の酸化膜厚計測装置は、図3に示すように、集光レンズ系21を有し、赤外光の照射時には、走行鋼板1の鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと、赤外光源41から照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む光検出装置で測定するように構成されている。一方、赤外光の照射を回転チョッパー42により遮断した時には、走行鋼板1の鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーのみを、分光素子25〜28及び光検出素子29〜32を含む光検出装置で測定するように構成されている。
ここで、増幅処理装置33の信号は演算処理装置34に送られ、演算処理装置34では、後述する所定の演算処理を行うことにより、走行鋼板1の表面に形成された膜厚や走行鋼板1の温度が求め、出力装置34に出力するように構成されている。なお、本発明の実施の形態に係る鋼板表面の酸化膜厚計測装置は、図4に示すように、反射、放射光強度検出装置3の受光窓の中心と、水冷式遮光管4の一端部に形成した測定用窓6の中心とを結ぶ直線が走行鋼板1の表面と直交するように直火加熱炉2の出側に設置されている。44は、測定用窓6を形成した遮蔽板を示し、41は赤外光源を、42は回転チョッパーを示す。回転チョッパー42により、赤外光源41からの赤外光を間欠的に走行鋼板1の表面に照射する。43は、ハーフミラーを示し、45は回転タイミング検出装置を示す。
直火加熱炉2の条件(例えば空気比や燃焼温度・時間など)を変化させて、鋼板表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を5段階に変えた鋼板サンプルを作成し、膜厚の異なる鋼板サンプルの赤外反射スペクトルを、鉄系酸化物が形成されていない下地鋼板に対する相対反射率をて測定した結果を図2に示す。
また、オンラインでの測定に際して測定対象の振動、バタツキの影響を除去したり、照射光源変動の影響を少なくする目的で、特定の2つの波長での反射比(反射光強度比)を利用する方式も一般的に用いられている。この対策の利点を考慮することにより、前記の鋼板表面の酸化膜厚測定に対しても2波長反射比を膜厚測定に利用することが可能である。本発明では、基本的にはこの方式を応用するものである。
また、鋼種が異なると被膜物性(屈折率等)が異なるので赤外反射スペクトルも異なるため、膜厚推定に利用する波長として別の波長を選択することが必要になる。例えば、別の波長λ3を利用して2波長反射比R(λ3)/R(λ2)から鋼板上の酸化物の膜厚[d]の推定が可能である。
ただし、
Ire(λ,T):光源にて対象を照射した場合の波長λでの測定強度(温度;T)、
Ira(λ,T):波長λでの自発光輝度強度(温度;T)、
R(λ):波長λでの反射率、
ε(λ):波長λでの放射率、
I0(λ):波長λでの光源照射強度とする。
プランクの法則から
Lb(λ,T)=(2c1/λ5){1/(exp(c2/λT)−1)}
(i)赤外光源から鋼板表面に赤外光を照射した場合の測定
Ire(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T)+I0(λ1)・R(λ1) ・・・・・(1)
Ire(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T)+I0(λ2)・R(λ2) ・・・・・(2)
(ii)赤外光源から鋼板表面に照射する赤外光を遮断した場合の測定(自発光輝度測定)
Ira(λ1,T)=ε(λ1)・Lb(λ1,T) ・・・・・(3)
Ira(λ2,T)=ε(λ2)・Lb(λ2,T) ・・・・・(4)
(1)から(4)を用いることで、
R(λ2)/R(λ1)={Ire(λ2,T)−Ira(λ2、T)}/{Ire(λ1,T)−Ira(λ1,T)}
・・・・・(5)
反射率比と酸化物の膜厚[d]との関係は前述したように、Si含有量の量に応じてある程度の鋼種に分類すると特定の一価の関数によって表現できる関係が得られるので、ある鋼種に対しての関係式をf1なる関数とすれば、
d=f1{R(λ2)/R(λ1)} ・・・・・(6)
と表現できる。別の鋼種に対して同様にして関係式を表す関数をf2とすれば、
d=f2{R(λ3)/R(λ2)} ・・・・・(7)
と表現できる。また、(6)、(7)の各式をまとめて一般化すると、以下の1つの式として表現可能である。
高張力鋼管での鋼種としてはSi、Mn等の成分含有量に応じて複数種類存在するが、(8)式での係数;A1、A2を適宜設定することにより、反射率比と酸化物の膜厚[d]とを結びつける関係式を導くことが可能である。
以上に説明した方法は、直火過熱炉の前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が後段ゾーンで還元されることで生成される還元Feが少ない場合には、十分な精度で鉄系酸化物の膜厚推定が可能であることが確認されている。しかし、実際に製造される溶融亜鉛めっき鋼板は、直火過熱炉の前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の一部が直火加熱炉の後段のゾーンで還元性雰囲気で加熱処理されるため、前段ゾーンで生成された鉄系酸化物の最表面に還元Feが点在している例が多い。
+A3×f3{R(λ4)/R(λ3)} ・・・・・(9)
ここで、前述の3波長を含めてλ4<λ3<λ2<λ1である。
以上説明したように、4つの波長を組み合わせて測定される反射率比と、予め得られている関係式とを組み合わせることで、最表面に還元Feが点在している状態となった場合でも鋼板表面に生成された鉄系酸化物の膜厚dを精度良く測定できる。
ε(λ4)=f4(d) ・・・・・(10)
このように、放射率が同定され、式(3)などと同様で実測されるIra(λ4,T)と同定されたε(λ4)とから温度Tが求められる。
この理由は、走行鋼板1の表面での酸化膜の膜厚の長手方向変動が急激である場合でも、短い時間間隔で、走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射することができ、また4つの波長域で同時にエネルギーを検出することができるから、赤外光の間欠照射によって検出される異なる8つの検出値を用い、演算により膜厚を迅速に求めることができる。従って、応答性に優れる鋼板表面の酸化膜厚計測装置とすることができる。
集光レンズ系21透過した光は、第一のハーフミラー22により、2つの経路に分けられ、第二のハーフミラー23に一部の光が導かれ、残りの光が第三のハーフミラー24に導かれる。前記第二のハーフミラー23で光は、さらに2つの経路に分岐され、ハーフミラー23を透過した光が、干渉フィルター等の分光素子25を透過して12μm用検出素子である光検出素子29により反射光強度及び放射輝度測定される。ハーフミラー23で反射された光は、分光素子26を透過して7μm用検出素子である光検出素子30により反射光強度及び放射輝度測定される。第一のハーフミラー22を透過した光は、第三のハーフミラー24で2つの経路に分岐され、第三のハーフミラー24で反射した光が分光素子27を経て3.5μm用検出素子31により反射光強度及び放射輝度測定される。第三のハーフミラー24を透過した光が分光素子28を経て2.5μm用検出素子32により反射光強度及び放射輝度測定される。以上の4組の分光素子25〜28及び光検出素子29〜32により、それぞれの波長に対する反射光強度及び放射輝度が同時に測定され、測定された光強度信号は増幅処理装置33に送られる。また、測定対象の鋼種毎に前述した関係式f1、f2、f3や各係数A1、A2、A3、さらにf4の関係式の情報は演算処理装置34に記憶されており、演算処理装置34ににより、所定の演算処理が実施されて、走行鋼板1の表面に生成された酸化膜の膜厚や走行鋼板1の温度の値が求められ、その結果が出力装置34に出力される。その際、走行鋼板1の表面には、赤外光源41から赤外光が間欠的に照射される。
また、酸化膜の膜厚を算出する関係式としては、2つの波長での反射率比の関数を3つ求めて、それらに一定の係数を乗算した重み付けをしているが、3組の反射率比の値から多重回帰式を算出した1つの関数式で代用することも可能である。
2 直火加熱炉
3 反射、放射光強度検出装置
4 水冷式遮光管
5 ロール
6 測定用窓
7 熱電対
8 演算装置
9 記憶装置
10 出力装置
11 プロセス管理用生後装置
21 集光レンズ系
22、23、24 ハーフミラー
25〜28 分光素子
29〜32 光検出素子
33 増幅処理装置
34 演算処理装置
35 出力装置
41 赤外光源
42 回転チョッパー
43 ハーフミラー
44 測定用窓6を形成した遮蔽板
45 回転タイミング検出装置
Claims (4)
- 直火過熱炉を備えた連続焼鈍工程で、走行鋼板の表面に生成される鉄系酸化物の膜厚を連続的に測定する鋼板表面の酸化膜厚計測方法であって、前記直火加熱炉の出側で走行鋼板の表面に赤外光を間欠的に照射し、前記赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射した赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板からの自発光放射エネルギーのみを、4つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出し、前記赤外光の間欠照射によって検出される8つの検出値を用い、演算により膜厚を求めることを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測方法。
- 直火過熱炉を備えた連続焼鈍ラインに設置する鋼板表面の酸化膜厚計測装置であって、前記直火加熱炉の出側で走行鋼板の表面に向けて赤外光を照射するための赤外光源と、該赤外光源からの赤外光を間欠的に照射するための光遮断装置と、前記赤外光が鋼板表面に照射される赤外光の照射時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーと照射された赤外光の鋼板表面からの反射光エネルギーとの合計されたエネルギーを、前記赤外光の照射が遮断される時には鋼板表面から放射される自発光放射エネルギーのみを、4つの異なる赤外波長帯域にてそれぞれ検出するための光検出装置と、該光検出装置の信号を電気的に増幅する増幅処理装置と、前記赤外光の間欠照射によって検出される8つの検出値を用い、演算により膜厚を求める演算装置と、を具備したことを特徴とする鋼板表面の酸化膜厚計測装置。
- 前記光遮断装置は窓部を有する回転チョッパーを含むことを特徴とする請求項2に記載の鋼板表面の酸化膜厚計測装置。
- 前記光検出装置は複数のハーフミラーにより光路を分岐させ、前記4つの波長域で同時にエネルギーを検出する複数の素子を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の鋼板表面の酸化膜厚計測装置。
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