JP2006527080A - 鉄ドープイオン交換体を用いた水処理装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、水性媒体から重金属を除去するための、鉄ドープイオン交換体で充填されて使用される、処理対象の液体を貫流させうる装置、好ましくは濾過ユニットと、さらにはその製造方法と、その使用と、に関する。

Description

本発明は、水性媒体、好ましくは飲料水から、重金属、特にヒ素を除去するための、鉄ドープイオン交換体で充填されて使用される、処理対象の液体を貫流させうる装置、好ましくは濾過ユニット、特に好ましくは吸着容器、特にフィルター吸着容器に関する。装置は、たとえば、家庭内で衛生設備および飲料水設備に装着可能である。
1999年、国立科学アカデミー(National Academy of Science)の研究から、飲料水中のヒ素が膀胱癌、肺癌、および皮膚癌を引き起こすことが立証された。
井戸水、水道水、または一般的に飲料水がヒ素または他の重金属で汚染されている地域では特に、近くに好適な飲料用水処理施設もなければ汚染物質を連続的に除去する好適なユニットも手近にないという問題に直面することが多い。
液体、好ましくは汚染水を精製するためのフィルターカートリッジ(吸着媒体を含有することもある)は、種々の実施形態が公知である。
天然水から固形分を分離除去するために、たとえば、好適なハウジング内のメンブランフィルターキャンドルが使用される。
ブリタ・ヴァッサー・フィルター・ジステーメ・ゲーエムベーハー(Brita Wasser−Filter−Systeme GmbH)は、水素形の弱酸性陽イオン交換体で充填されたカートリッジおよび装置を販売している。これらの装置は、飲料水の使用直前に家庭用ジャグ内の飲料水を完全脱塩または部分脱塩するように容易に適合させうる。
(特許文献1)には、イオン交換体および/または活性炭を含有する、飲料水の品質を改善するためのいわゆるカートリッジが開示されている。
(特許文献2)には、ライムスケールの生成を低減させるためのものではあるがライムを触媒的に析出させるべく弱酸性イオン交換物質を水処理物質として含有しうる化学的/物理的水処理用の装置が開示されている。
(特許文献3)には、特に鉛を除去するためのイオン交換体を有する飲料水フィルターが開示されている。ヒ素や水銀のような他の重金属は、活性炭により除去される。
通常、イオン交換体は、活性炭と併用されるが、活性炭は、活性炭の低い吸着容量に起因して、水系に存在するヒ素塩および重金属塩が十分な程度まで除去されないという欠点を有し、カートリッジの耐用寿命に影響を及ぼす。
先行技術で使用されるイオン交換樹脂は、きわめて無差別に水溶液のイオンに結合するので吸着において競争反応が頻繁に起こるという欠点を有する。上述した先行技術に基づくイオン交換体のさらなる欠点は、イオン交換体の吸着容量が水のpHに強く依存することであり、その結果、水のpHを設定するのに大量の化学物質が必要とされるので、吸着材カートリッジを家庭内で使用する場合には実用的でない。
独国特許出願公開第3535677号明細書 国際公開第02/066384A1号パンフレット 米国特許第6,197,193B1号明細書
したがって、本目的は、たとえば家庭内で、飲料水の処理に使用するための、重金属、好ましくは、ニッケル、水銀、鉛、ヒ素、特にヒ素の除去に好適なイオン交換体を有する、流れを貫流させうるとともに簡単に取扱いおよび再生を行いうる装置、好ましくはカートリッジを提供することである。
「ミレニアムにおけるイオン交換(Ion Exchange at the Millennium)」、142−149頁、2000年には、デュロライトC−145(Durolite C−145)のようなポーラス陽イオン交換体を鉄IIIイオンで負荷すること、ならびにヒ素Vイオンおよびヒ素IIIイオンを選択吸着するためのその使用が開示されている。そこに記載されている樹脂は、ヒ素をHAsO イオンとして選択的に吸着する。
特開昭52−133 890号公報には、遷移金属、たとえば水酸化鉄の鉄を吸着させたキレート樹脂または陽イオン交換体を利用してヒ素化合物を選択除去する方法が開示されている。
「反応性および機能性ポリマー(Reactive & Functional Polymers)」、第54巻(2003年)、85−94頁には、鉄IIIキレート化イミノジアセテート樹脂へのヒ素V化合物の吸着が開示されている。
本目的の解決策すなわち本発明の主題は、鉄ドープイオン交換体を含有する装置、好ましくは濾過ユニット、特にカートリッジと、さらにはその製造方法と、水処理用、特に飲料水処理用の装置における、飲食品工業の装置における、さらには濾過ユニットにおけるその使用と、である。
本発明に関連する鉄ドープイオン交換体は、第1に、先に引用した参考文献に従って酸化鉄および/もしくは(オキシ)水酸化鉄でドープされたキレート交換体もしくは陽イオン交換体、または鉄III塩溶液を用いて負荷された陽イオン交換体、陰イオン交換体、もしくはキレート交換体である。本発明に関連する装置は、当該目的に好適な濾過ユニット、好ましくは、カートリッジ、容器、またはフィルターである。
同様に本発明の根底をなす目的は、充填媒体の吸着材性能のおかげで溶存汚染物質の高度除去を確実に行う鉄ドープイオン交換体を接触媒体または吸着媒体/反応媒体として用いて、飲料水、上水、鉱水、庭園池水、農業用水、聖水、および治療用水からヒ素および重金属を除去するための濾過ユニットを提供することであった。それと同時に、この濾過ユニットは、吸着材ハウジング内の機械的応力および液圧応力に耐え、しかも安全のために、設置されたフィルターの濾過性能により、汚染物質で負荷されている可能性のある懸濁不純物または摩耗イオン交換粒子の放出を回避する。
上述の鉄ドープイオン交換体を有する本発明に係る装置または濾過ユニットまたはカートリッジ、それらの提供、それらの使用、さらにはこれらが装填された装置は、この複雑な目的を解決する。
本目的は、入口開口および出口開口を備えた、プラスチック、木材、ガラス、紙、セラミックス、金属、または複合材料で作製されたハウジングよりなる装置、特に好ましくは濾過ユニットにより達成される。例示的な簡単な実施形態を説明図1aおよび1bに示す。これらのハウジングは、独国特許出願公開第19816871号明細書に広範に記載されている。入口開口および出口開口は、鉄ドープイオン交換体床を含有する実際のハウジング空間から被覆フラットフィルター装置により分離されている。したがって、処理対象の流体は、第1のフィルター層、イオン交換粒子、第2のフィルター層、および出口開口を連続的に貫通する。ハウジング空間は、イオン交換体で完全充填または部分充填されうる。ハウジング空間は、好ましくは円錐状または角錐状であるが、円柱状、球状、平行六面体状、または螺旋巻状であってもよい。ハウジング空間にテーパーを付けることにより(説明図1b参照)、任意の所望の位置で濾過を行うようにしたり、濾過対象の流体を吸着されることなく妨害されずに貫通させうる吸着材粒子床間にバイパスが形成されないようにしたりすることが可能である。ハウジング容積の97〜99%を占有するイオン交換体床でハウジング空間を充填することにより、精製対象の流体の高流量が確保される。なぜなら、イオン交換体の安定性のおかげで、流入液体に加わる抵抗が低いからである。
本発明の好ましい実施形態では、ハウジング空間は、円錐台または角錐台としてテーパー付き領域内に形成される。
フラットフィルター層用として、たとえば独国特許出願公開第19816871号明細書に、適用分野に応じて種々の材料が示されている。
再生にも好適である本発明に従って使用される吸着材タンクの改良実施形態を説明図2aおよび2bに示す。それらは、それぞれ、家庭用フィルターモジュールを長手方向断面図で示している。
上部(3)および底部(10)の端に配置されたフィルタープレートと中心に配置された入口管(6)とを備えた、鉄ドープイオン交換体(5)を有する吸着材ハウジング(4)は、上端の蓋(13)を有するネジ付きジョイントおよび底端の底部アタッチメント(9)を有するネジ付きジョイントの両ネジ付きジョイントを緩めることによりユニットとして分離可能である。カートリッジが負荷された場合、新しいカートリッジを挿入し、底部プレートおよびカバープレートを洗浄することが可能である。上端で、入口管(6)は、使用時、好適なシールリングを介して入口ポート(2)にしっかりと固定される。入口管をカートリッジハウジングから取り出して新しいフレッシュカートリッジハウジングに挿入することが可能である。これを貫通して、送入液体は、懸濁物質、藻類などを前濾過して入口にこれらを保持するシーブバスケット(7)上に直接流入してから実際のイオン交換カートリッジ中に入るので、イオン交換物質は、集塊を形成することもなければ付着一体化することもない。シーブ(7)は、送入液体ストリームを底部空間内に均一に分布させるように機能するので、好ましくは円錐状、すなわち円錐台状であり、入口管を完全に包囲する。それは、入口管だけでなく、それを取り囲むフィルタープレート(10)にもルーズシールリングを介して固定される。シーブの組織は、慣用的な微細メッシュフィルター材料、たとえば、プラスチック、天然素材、または金属で構成可能である。
螺入底部(9)は、予想される懸濁物質のタイプおよび量に基づいて選択可能である好適なフィルター材料またはフィルターウェブ(8)を追加的に含みうる。多量の固体異物の場合、ネジを緩めて底部を取り外すことにより、シーブ(7)およびフィルターウェブ(8)の取出しおよび洗浄を容易に行いうる。微細孔性セラミックスで構成可能であるフィルタープレート(10)は、鉄ドープイオン交換体を有する接触空間(5)から底部空間(9)を分離するので、イオン交換物質が底部空間内に移行することはなく、前濾過された材料が接触空間内に移行することもない。鉄ドープイオン交換体を有する接触空間内に精製対象の水を通して底部から上部に上昇させることにより、除去対象の汚染物質をイオン交換物質に物理吸着および/または化学吸着させて除去する。カートリッジハウジングの上端のさらなるフィルタープレートは、イオン交換体が出口(12)に移行しないようにする。装置の高い水圧または長い使用時間が原因で、フィルタープレート(3)を貫通する微細画分がイオン交換体から摩耗除去される可能性がある。この(汚染物質で負荷された)微細画分が出口に移行しないように、蓋(13)の内側に、微細画分を保持するフィルター材料またはフィルターウェブ(11)が組み込まれる。
フィルター層(3)および(10)はまた、吸着材空間(5)上に流体を均一に分布させるとともにこれから送出された後で再び集合させるように機能する。異物および汚染物質から精製された清浄水は、出口ポート(12)を介して装置から出る。
蓋(13)は、操作時に連行されたガス(たとえば、カートリッジハウジング内に存在する空気)を最初の操作で逃散させるためにバルブを追加的に有しうる。
用途にもよるが、直前に記載の装置を逆方向のシーケンスで操作することが有利なこともある(図2b)。つまり、精製対象の水は、次に、入口ポート(1)から、懸濁物質および異物を保持するプレフィルター(11)上に直接入り、次に、フィルタープレート(3)を貫通し、溶存汚染物質がイオン交換物質に吸着する接触空間内に入り、カートリッジ底部プレート(10)を介して、摩耗イオン交換物質を保持すべく任意のフィルター材料(8)が組み込まれた底部空間(9)内に移行し、シーブバスケット(7)は、追加の濾過処理を行い、その結果として、精製水は、出口管(6)および出口ポートを介して、開口(1)から装置を出る。
しかしながら、先に記載したのと同一の原理に基づいて機能するさらに簡単な実施形態を図4に示す。それは、鉄ドープイオン交換体を含有しかつ装置自体がユニットを形成する装置を示している。
もちろん、原理的には、記載の構造体に類似しかつ記載の方法で機能する、すなわち、水の出入口開口および鉄ドープイオン交換体を含む他の実施形態および設計も可能である。
説明図5は、鉄ドープイオン交換体で充填されていて内存する汚染物質を吸着により除去すべく精製対象の水に供給しうるフィルターバッグを示している。
フィルターバッグおよび抽出スリーブは、たとえば、高温浸出飲料、特に茶を提供すべくさまざまな形態および設計が公知である。独国特許出願公開第839405号明細書には、たとえば、茶などを用意するために使用されるような折畳みバッグが記載されている。ダブルチャンバー系を形成する特別な折畳み方法により、溶出液と抽出対象の物質との強力な混合が保証される。
反対に、フィルター作用を有する半透性のバッグまたはポケット(たとえば、上述の折畳みバッグ)に鉄ドープイオン交換体を組み込むことも可能であり、これらのパッケージを精製対象の天然水に供給することにより、特定の接触時間の後で吸着材への吸着により水から汚染物質が除去されるようにすることが可能である(説明図5参照)。鉄ドープイオン交換体は、第1に、フィルターバッグ内の機械的応力および液圧応力に耐え、第2に、フィルター膜のフィルター性能のおかげで、吸着媒体の摩耗により形成される微細画分が精製対象の水中に逃散することが回避される。
本発明の種々の実施形態は、フィルター作用を有するハウジング内に鉄ドープイオン交換体を組み込むことが可能でありかつ精製対象の液体をフィルターハウジング内に通して貫流させうるかまたはフィルターパッケージを精製対象の液体に供給することにより汚染物質の吸着を確実に行いうるという事実を共有する。
鉄ドープイオン交換体の製造は、先に引用した文献から公知であるが、このほかに、他の製造方法も考えられる。
鉄をドープする場合、強酸性もしくは弱酸性の陽イオン交換体、強塩基性もしくは弱塩基性の陰イオン交換体、またはキレート樹脂が好適である。これらは、ゲルタイプまたはマクロポーラスのイオン交換体でありうるが、マクロポーラスタイプが好ましい。鉄ドープイオン交換体の粒子サイズは、100〜2000μm、好ましくは200〜1000μmの範囲内である。粒度分布は、不均一分散であっても単分散であってもよい。
鉄負荷に特にきわめて好適であるのは、イミノ二酢酸基を有するレヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207およびレヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP208マクロポーラス陽イオン交換体、さらにはレヴァティット(Lewatit)(登録商標)SP112およびレヴァティット(Lewatit)(登録商標)モノ・プラス(Mono Plus)SP112マクロポーラス強酸性陽イオン交換体である。
たとえば、ローア(Roer)ら著、「反応性および機能性ポリマー(Reactive & Functional Polymers)」、第54巻(2003年)、85−94頁では、キレート形成性イミノ二酢酸基を有するバイエル(Bayer)製のレヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207マクロポーラス陽イオン交換体が使用されている。これは、最初に空気乾燥され、0.5mm未満の粒度を有する画分に篩い分けられる。脱塩水で洗浄した後、樹脂は、0.1モルHClによる酸形に転化される。その後、カラムに移され、脱塩水を用いてpH=5になるように再び洗浄され、最後に、HClによりpH2.5に設定される。
FeIIIイオンによる負荷は、ガラスカラム中で行われ、0.1モルFe3+溶液(FeCl・6HO;pH2.0)を用いてバッチ方式で実施される。これは、カラムからの流出物のFe3+濃度が供給物のFe3+濃度に対応するまで行われる。
比較的低い容量を有する樹脂を鉄で負荷することについては、「反応性および機能性ポリマー(Reactive & Functional Polymers)」、第54巻(2003年)87頁の指示を参照されたい。
As(V)の特に良好な吸着を考慮して、ドープイオン交換体のFe(III)イオンをアルカリとの反応により水和型酸化鉄に転化させうる。
たとえば、セングプタ(Sengupta)ら著,「ミレニアムにおけるイオン交換(Ion Exchange at the Millennium)」、142−149頁、2000年では、以下の工程により、サブミクロンの水和型酸化鉄(HFO)粒子を用いた球状マクロポーラス陽イオン交換体のハイブリッド収着材が製造されている。
工程1 スルホン酸官能基上におけるFeIIIによる酸性媒体中のポーラス陽イオン交換体の負荷。
工程2 イオン交換体の細孔内におけるFeIIIの脱着およびFeIII水酸化物の同時析出。
工程3 エタノールによる樹脂の洗浄および温和な熱処理による部分アモルファスの水酸化鉄から結晶性のゲータイトおよびヘマタイトへの転化。
この方法では、実質的に12重量%のFeを用いてイオン交換体の負荷が達成される。たとえば、プロライト(Purolite)C−145がイオン交換体として使用される。
使用される微細な酸化鉄および/または(オキシ)水酸化鉄は、500nmまで、好ましくは100nmまで、特に好ましくは4〜50nmの粒度、および50〜500m/g、好ましくは80〜200m/gのBET表面積を有する。
一次粒度は、測定によりたとえば60000:1の拡大率の走査型電子顕微鏡画像から決定された(計測器:XL 30 ESEM FEG、フィリップス(Philips))。たとえば、α−FeOOH相において、一次粒子が針状である場合、粒度の指標として針幅を報告しうる。ナノ微粒子状α−FeOOH粒子の場合、100nmまでの針幅が観測されるが、主として4〜50nmである。α−FeOOH一次粒子は、通常5:1から50:1まで、典型的には5:1から20:1までの長さ:幅比を有する。しかしながら、ドーピング手順または特殊反応手順により、針形状は、それらの長さ:幅比に関して変化しうる。たとえば、α−FeOH相、γ−FeOH相、FeOH相において、一次粒子が等尺である場合、粒子直径は、確実に20nmよりも短い可能性もある。
ナノ微粒子状の酸化鉄または(オキシ)水酸化鉄を顔料および/またはFe(OH)と混合することにより、走査型電子顕微鏡写真上で、所与の顔料または種粒子は、ナノ微粒子状種粒子またはアモルファスFe(OH)ポリマーにより保持一体化されるかまたは互いに付着するそれらの公知の粒子モルホロジーで存在することが認められる。
特開昭52−133 890号公報の実施例2には、200ml/時で300mlの0.05モル硝酸鉄水溶液(pH3)により7mlのH形強酸性陽イオン交換体を負荷することが記載されている。最後に、樹脂は、100mlの純水で洗浄される。実施例3では、それに対応して7mlのキレート樹脂がナトリウム形で負荷される(ダウエックス(Dowex)(登録商標)A1、ユニチカ(Unitika)UR10、30〜50メッシュ)。
濾過ユニット(たとえばカートリッジ)中の鉄ドープイオン交換体は、液体の精製に、特に、重金属を除去するために、本発明に従って使用される。この技術分野における好ましい用途は、水(特に飲料水)の汚染除去である。ごく最近、飲料水からのヒ素の除去に関心が払われている。本発明に係る鉄ドープイオン交換体は、これに著しく好適である。なぜなら、鉄ドープイオン交換体を有する本発明に係る装置を用いることにより、米国の管轄官庁EPAにより設定された低い限界値でさえも遵守しうるだけでなく、それをさらに下回りうるからである。
このために、鉄ドープイオン交換体は、たとえば、他のタイプの汚染物質を除去するために活性炭が装填されてすでに使用されているような従来の装置で使用可能である。たとえば、適切であれば攪拌機を備えたシスターンまたは類似の容器において、バッチ操作が実際に可能であるが、貫流式吸着材のように連続的に操作されるプラントで使用することが好ましい。
飲料水を与えるように処理される原水は、通常、藻類や類似の生物のような有機不純物をも含有しているので、使用時、イオン交換体の表面は、水の進入すなわち除去対象の成分の吸着を妨害するかまたはさらには阻止する一般に粘液性の析出物で覆われる。このため、濾過ユニットは、折に触れて水で逆流洗浄され、好ましくは、運転休止中の個別装置で低水消費量のときに実施される。この操作時、樹脂は渦攪拌され、それに伴って表面に機械的応力が加わる結果として、望ましくない析出物は除去され、使用時の流動方向と逆方向に排出される。洗浄水は、通常、下水処理施設に供給される。この場合、本発明に係る鉄ドープイオン交換体は、特にきわめて有用であることが実証される。なぜなら、その強度が高いので、イオン交換物質の顕著な損失が記録されたり廃水に供給される逆流洗浄水が重金属で高度に汚染されたりすることなく、短時間で洗浄を行いうるからである。
好適なプレフィルターおよびポストフィルターを利用して、濾過ユニットを目詰まりさせる可能性のある汚染物質を保持する。
材料の摩耗は、イオン交換体の安定性およびその好適なパッキングにより、最小限に抑えられる。
鉄ドープイオン交換体は異質バインダーを含んでいないので、使用後の材料は、廃棄処分が比較的簡単であるが、再生することも可能である。たとえば、吸着されたヒ素は、たとえば、濃厚な水酸化ナトリウム溶液で処理することにより、化学的に除去しうるので、イオン交換体は、同一用途に用いるために再循環させたりまたは焼却したりすることのできるクリーンな材料として回収される。用途および法規定にもよるが、飲料水から取り出された重金属がこのように永久的に固定されて水循環から除去される場合、重金属で汚染されて使い尽くされたイオン交換体を使用に供することが可能である。
[実施例]
実施例1
プロライト(Purolite)C−145(マクロポーラス陽イオン交換体)は、セングプタ(Sengupta)ら著、「ミレニアムにおけるイオン交換(Ion Exchange at the Millennium)」、142−149頁(2000年)に記載されているように、サブミクロンの水和型酸化鉄粒子を利用して、第1の工程でスルホン酸官能基上において鉄IIIイオンで酸性媒体中の陽イオン交換体を充填することにより、製造される。第2の工程で、イオン交換体の細孔内におけるFeIIIの脱着およびFeIII水酸化物の同時析出が行われ、第3の工程で、樹脂は、エタノールで洗浄され、温和な熱で処理される。
樹脂は、11.6%のFeで充填される。
この樹脂を図2aに準拠した装置に充填し、280ppbのヒ素イオンを含有する水溶液でフラッシングする。ヒ素は、HAsO として樹脂に結合される。
送出時、水溶液は、5ppbのヒ素を含有する。すなわち、ヒ素は、水溶液から実質的に定量的に除去された。
実施例2
粒度<0.5mmを有するキレート形成性イミノ二酢酸基により官能化されたマクロポーラス陽イオン交換体レヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207を0.1モルHClにより酸形に転化し、ガラスカラムに充填する。ここで、樹脂を、最初に、pH=5になるように脱イオン水により洗浄し、最後に、HClによりpH=2.5に設定する。次に、上部から0.1モルFe3+溶液(FeCl・6HO;pH2.0)を少しずつ樹脂上に添加する。同一濃度のFe3+イオンが流出物中でも測定されるまで、これを行う。次に、樹脂をFeイオンでドープする。
Fe3+イオンでドープされたこの樹脂を図4に準拠した装置中に充填する。
実施例3
酸化鉄/オキシ水酸化鉄でドープされたイオン交換体の製造
400mlのレヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207を、1リットルあたり103.5gの塩化鉄(III)を含有する750mlの塩化鉄(III)水溶液および750mlの脱イオン水と混合し、そして室温で2.5時間攪拌する。次に、濃度10重量%の水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを6に設定し、20時間保持する。
その後、シーブを介してイオン交換体を濾別し、流出物が透明になるまで脱イオン水で洗浄する。
樹脂収量:380ml
負荷イオン交換体ビーズのFe含有率を調べたところ、14.4%であった。結晶相として、α−FeOOHが粉末回折図から同定可能である。
実施例4
実施例3から得られた鉄ドープイオン交換体の試験。
2.2cmの直径と13cmの高さと160〜200μmの細孔幅を有するG0フリットよりなる底部とを有する円筒状濾過ユニット中に、実施例3から得られた50mlの鉄ドープイオン交換体を充填する。ヒ酸水素二ナトリウムとして100μg/lの含有率のAs(V)を有する水を、いずれの場合においても30分間にわたりさまざまな流量でこのフィルタユニットに貫流させ、そして流出物中のそれぞれのヒ素含有率を元素分析により決定した。
Figure 2006527080
このほか、0.5μmの孔径を有するミクロフィルターに100床体積/hの流量で100mlの実験流出物を通して濾過する。残渣は、フィルター上で検出できなかった。
実施例5(比較例)
上述の円筒状濾過ユニット中に、ノンドープキレート樹脂レヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207とオキシ水酸化鉄(米国特許公開第2002/0074292号明細書の実施例2に基づくα−FeOOH)との混合物50mlを充填する。混合比は、混合物が14.4%の鉄含有率の鉄を有するように選択される。これは実施例4のときと同一の鉄含有率である。ヒ酸水素二ナトリウムとして100μg/lの含有率のAs(V)を有する水を、いずれの場合においても同様に30分間にわたりさまざまな流量でこのフィルタユニットに貫流させ、そして流出物中のそれぞれのヒ素含有率を元素分析により決定する。
Figure 2006527080
このほか、0.5μmの孔径を有するミクロフィルターに100床体積/hの流量で100mlの実験流出物を通して濾過する。主にFeOOHよりなる約10mgの残渣が測定される。この残渣を塩酸に溶解させ、ヒ素に関して分析する。18μgのヒ素が見いだされた。濾過ユニット内において、選択された条件下で、測定可能量のヒ素を含有する微細オキシ水酸化鉄が精製対象の水に放出されることは明らかである。
鉄ドープイオン交換体を有する吸着材タンク。 鉄ドープイオン交換体を有するテーパー付き吸着材タンク。 鉄ドープイオン交換体含有カートリッジとハウジングとを有する装置。 装置の逆方向操作(図2aを参照)。 鉄ドープイオン交換体を有するフィルターカートリッジハウジング。 鉄ドープイオン交換体を有する吸着材タンク。 鉄ドープイオン交換体を有するポケットフィルター。
符号の説明
図1aおよび1bに対する説明符号:
1 装置ハウジング
2 鉄ドープイオン交換体
3 入口ポート
4 出口ポート
5 流体分配チャネルを有する第1のフラットフィルター層
6 流体集合チャネルを有する第2のフラットフィルター層
図2a、2b、3に対する説明符号:
1 入口管または出口管
2 シールリング
3 フィルタープレート
4 イオン交換カートリッジハウジング
5 鉄ドープイオン交換体を有する接触空間
6 入口管
7 シーブバスケット
8 プレフィルターまたはポストフィルター
9 底部
10 フィルタープレート
11 ポストフィルターまたはプレフィルター
12 出口管または入口管
図5に対する説明符号:
1 フィルターバッグ
2 酸化鉄ドープイオン交換体
3 吊り具

Claims (8)

  1. 流体から汚染物質を除去するための、媒体を貫流させうる濾過ユニットであって、この装置が鉄ドープイオン交換体の床を収容することを特徴とする、濾過ユニット。
  2. 前記イオン交換体が、酸化鉄および/もしくは(オキシ)水酸化鉄でまたは鉄III塩溶液を利用してドープされていることを特徴とする、請求項1に記載の濾過ユニット。
  3. カートリッジハウジング(その容器内には、中心に位置する入口管と、端面に対向するフラットフィルター層とが装着される)と、精製対象の前記流体の供給および排出を確保する蓋と、さらには底部と、よりなることを特徴とする、請求項1に記載の流体から汚染物質を除去するための濾過ユニット。
  4. 前記鉄ドープイオン交換体が、スルホン酸基により官能化されたマクロポーラス陽イオン交換体またはキレート形成性イミノ二酢酸基により官能化された陽イオン交換体のいずれかであり、鉄でドープされていることを特徴とする、請求項1に記載の濾過ユニット。
  5. プロライト(Purolite)C−145、レヴァティット(Lewatit)(登録商標)SP112、レヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP207、またはレヴァティット(Lewatit)(登録商標)TP208を基材とする鉄ドープイオン交換体が使用されることを特徴とする、請求項4に記載の濾過ユニット。
  6. 前記流体が汚染水であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の濾過ユニット。
  7. ニッケル、水銀、鉛、およびヒ素を水性媒体から吸着する方法であって、請求項1に記載の濾過ユニットが使用されることを特徴とする、方法。
  8. ニッケル、水銀、鉛、およびヒ素、好ましくはヒ素を水性媒体から吸着するための、請求項1に記載の濾過ユニットの使用。
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