JP2006517922A - メタスチン誘導体およびその使用 - Google Patents

メタスチン誘導体およびその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】
【解決手段】
本発明は、癌転移抑制活性および癌増殖抑制活性を有する、式X-AA1-AA2-AA3-AA4-Z (I)によって表されるメタスチン誘導体、またはその塩、あるいはそのプロドラッグに関する。本発明はまた、癌の予防または治療薬剤としてのこれらの誘導体の使用に関する。

Description

本発明は、新規なメタスチン誘導体およびそれらの使用に関する。
全世界において、癌が主要な死因の1つであることは周知である。癌治療の最近の戦略は、転移に焦点をあててきた。この過程において癌細胞は悪性腫瘍から解離し、周囲のまたは遠くの組織に侵入し、そこで増殖する。KiSS-1として知られている遺伝子の産物がヒトメラノーマ(黒色腫)および乳癌の転移を抑制することが見出された。
KiSS1ペプチドは、最初、ヒト染色体の微小核融合導入法によって非転移性とされたC8161メラノーマ細胞において示差的にアップ・レギュレーションされるものとして同定された。(Lee,JH et al., J Natl Cancer Inst 1996, 88, 1731-7)。ヒトメラノーマおよび乳癌細胞へのKiSS1のトランスフェクションは、これらの細胞を増殖させることなく転移を阻止することが見出された。(Lee,JH et al., Cancer Res 1997, 57, 2384-87)。さらに、KiSS1遺伝子産物は、プロモーターへのNF-κB結合の減少をもたらすことによって、92-kDaの4型コラゲナーゼ(MMP-9)の発現を抑制することが示された。(Yan, C. et al., J Biol Chem 2001, 276, 1164-72)。KiSS1遺伝子産物は、正常なヒト胎盤、精巣、脳、膵臓および肝臓で発現されることが見出された。(Muir, AI et al., J Biol Chem 2001, 276, 28969-75)。
KiSS-1遺伝子は、145個のアミノ酸残基からなるペプチドをコードし、このペプチドはプロセシングされて、最終的にはC末端がアミド化された54アミノ酸からなるペプチドとなる。「メタスチン」と呼ばれるこの54アミノ酸ペプチドは、OT7T175またはAXOR12として知られるGタンパク質共役型オーファン受容体のリガンドである。(Muir, AI et al., 前出;Ohtaki, T. et al., Nature 2001, 411, 613-7: Hori, A. et al., Biochem Biophys Res Commun 2001, 286, 958-63; Kotani, M. et al., J Biol Chem 2001, 276, 34631-6)。この受容体は、ラットの7回膜貫通型オーファン受容体GPR54に対して高度のホモロジーを有し(Lee DK et al., FEBS Lett 1999, 446, 103-7)(81%アミノ酸同一性)、このことはこれらの二つの受容体がオルソログ(相同分子種、ortholog)であることを示唆している。メタスチンは局所接着キナーゼ(focal adhesion kinase)の発現および活性を増強し、またhOT7T175をトランスフェクトしたB16-BL6メラノーマの肺転移をin vivoで減少させた。(Ohtaki, T. et al., 前出)。メタスチンは、hOT7T175をトランスフェクトしたチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の走化性および侵襲を、ホスホリパーゼCの活性化、アラキドン酸放出およびERKのリン酸化によって抑制することも見出された。(Hori, A. et al., 前出;およびKotani, M. et al., 前出)。これらの経路は細胞増殖を典型的に誘導するものであるが、細胞増殖における変化は観察されなかった。
KiSS1遺伝子は、ヒト染色体lq32-q41上に位置する。(West, A. et al., Genomics 1998, 54, 145-8)。しかし、後の実験から得られた証拠は、KiSS1の発現は6q16.3-q23間の40-cM領域に位置する1つまたは複数の遺伝子によって制御されている可能性が高いことを示唆している。(Lee JH et al., J Natl Cancer Inst 1996, 88, 1731-7)。膵癌においては、6q、8p、9p、17pおよび18qの遺伝子座が頻繁に観察され、それらの変異はリンパ節転移および遠方転移を引き起こす傾向がある。これは、これらの領域における膵癌転移に関与する1つまたは複数の転移抑制遺伝子の存在を示唆している。(Rigaud, G. et al., Int J Cancer 2000, 88, 772-7; Yatsuoka, T. et al., Am J Gastroenterol 2000, 95, 2080-5; Harada, T. et al., Oncology 2002, 62, 251-8)。これらのことは、膵癌がメタスチン発現のダウン・レギュレーションと関連していることを示唆している。さらに、他の癌、例えば卵巣癌、乳癌および甲状腺乳頭癌において、正常組織と比較してメタスチン受容体hOT7T175の過剰発現が示された(Muir, AI et al., 前出;Ohtaki, T. et al., 前出)。ただし、メタスチン自体が腫瘍組織において過剰発現される頻度はより低い。(Lee, JH et al., 前出)。膵癌におけるKiSS-1の発現(すなわちメタスチンの産生)およびその受容体の発現は、いまだに研究されていない。同様に、内因性に受容体を発現する癌細胞の動きに対するメタスチンの作用も、いまだに研究されていない。
これらの所見は、KiSS1-hOT7T175が転移抑制系として作用することを示している。メタスチンは正常細胞の細胞増殖特性に影響を与えることなく癌細胞の転移を抑制するので、癌治療のためにはメタスチン受容体を標的にすることが望ましい。したがって、メタスチン受容体と結合し、癌転移を抑制し、および/または癌増殖を抑制する化合物をもつことが望ましい。さらに、転移抑制活性を有し、かつ急性もしくは慢性膵炎または膵癌の治療に用いることができる化合物をもつことは有用である。
WO00/24890はヒトメタスチンを開示し、WO01/75104はマウスまたはラットメタスチンを開示し、そしてWO002/85399はメタスチンを含んでなる徐放性製剤を開示している。これらの参照文献は、メタスチンが癌の転移を抑制できることを開示している。しかし、癌転移および癌増殖を抑制し、かつ癌の治療剤として有用な化合物を開発することが望ましい。
本発明者らは、メタスチンのアミノ酸配列の一部に一致するまたは類似するペプチドに特定の修飾を行うことにより、得られる誘導体が安定し、かつ顕著な癌転移抑制活性および癌増殖抑制活性を示すことを見出した。
本発明は、式:

[式中、Xは下記の式によって表される基であり:

(ここでYは下記の式(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)によって表される基であり:
(i)
(ii)
(iii)
(iv)
(v)
式中、R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子またはC1-6アルキル基より選択され;
W1およびW2はそれぞれ水素原子、C1-6アルキル基、C6-14アリール基または複素環基より選択され;
Rは下記の式によって表され:


nは0、1または2である。)
AA1は天然または非天然の芳香族アミノ酸であり;
AA2はGly、Ala、Proまたは Picであり;
AA3は脂肪族アミノ酸であり;
AA4は塩基性アミノ酸またはシトルリンであり;
そしてZは:
(i) 天然または非天然の芳香族アミノ酸、またはそのアミド、あるいはそのエステル;
(ii)下記の式によって表される基:

(ここでn1は0、1または2である。)
(iii) 下記の式によって表される基:

(ここでn2は0、1または2である。)
または
(iv) 下記の式によって表される基:

(ここでn2は0、1または2である。)
より選択される。]
によって表されるメタスチン誘導体またはその塩を提供する。
本発明はまた、4-[N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミノメチル]ベンゾイル-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FMO52a)(配列番号:4)、4-(グアニジノメチル) ベンゾイル-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FMO53a)(配列番号:3)またはそれらの塩である、上に規定するメタスチン誘導体(I)を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩のプロドラッグを提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、有用な癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤である。本発明の医薬組成物はまた、有用な癌予防剤または治療剤である。
本発明の医薬組成物はまた、有用な膵臓機能調節剤である。本発明の医薬組成物は、特に急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の有用な予防剤または治療剤である
本発明はまた、有用な胎盤機能調節剤である、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる医薬組成物を提供する。
本発明はまた、繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の有用な予防剤または治療剤である、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる医薬組成物を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌転移または癌増殖の抑制方法を提供する
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌の予防方法または治療方法を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における膵臓機能の調節方法を提供する
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防方法または治療方法を提供する
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における胎盤機能の調節方法を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防方法または治療方法を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、癌の予防剤または治療剤を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の膵臓機能調節剤を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防剤または治療剤を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の胎盤機能調節剤を提供する。
本発明はまた、上に規定するメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防剤または治療剤を提供する。
本発明はまた、癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
本発明はまた、癌増殖の予防剤または治療剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
本発明はまた、哺乳動物の膵臓機能調節剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
本発明はまた、哺乳動物の急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防剤または治療剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
本発明はまた、哺乳動物の胎盤機能調節剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
本発明はまた、哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防剤または治療剤を製造するための、メタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用を提供する。
上述の式において、Xは下記の式によって表される基である:

式中、各記号は前記と同意義を有する。
Yは下記の式(i)、(ii)、(iii)、(iv)または(v)によって表される基であり:
(i)
(ii)
(iii)
(iv)
(v)
式中、R1からR4はそれぞれ水素原子またはC1-6アルキル基より選択され、W1およびW2はそれぞれ水素原子、C1-6アルキル基、C6-14アリール基または複素環基より選択される。
C1-6アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、等が挙げられる。特定の実施形態においては、C1-3アルキル基、例えばメチル、エチル等が好ましい。
YがY3である実施形態においては、R1からR4はそれぞれ好ましくは水素原子である。
C6-14アリール基としては、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、2-ビフェニリル、3-ビフェニリル、4-ビフェニリルおよび2-アントリル等が挙げられる。
W1およびW2に用いられる複素環基は、炭素原子に加えて窒素原子、硫黄原子、酸素原子から選択される1〜4個のヘテロ原子を有する、5〜14員(単環式、二環式または三環式)複素環基である。好ましくは、(i) 5〜14員(好ましくは5〜10員)芳香族複素環基、(ii) 5〜10員非芳香族複素環基、または(iii) 7〜10員複素架橋環等および6員芳香族複素環基から任意の水素原子を1個除去して得られる1価の基が用いられる。複素環基の具体例としては、芳香族複素環基、例えばチエニル(2-チエニル、3-チエニル)、フリル(2-フリル、3-フリル)、ピリジル(2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、チアゾリル(2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、オキサゾリル(2-オキサゾリル、4-オキサゾリル)、キノリル(2-キノリル、3-キノリル、4-キノリル、5-キノリル、8-キノリル)、イソキノリル(1-イソキノリル、3-イソキノリル、4-イソキノリル、5-イソキノリル)、ピラジニル、ピリミジニル(2-ピリミジニル、4-ピリミジニル)、ピロリル(1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、イミダゾリル(1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、ピラゾリル(1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、ピリダジニル(3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、イソチアゾリル(3-イソチアゾリル)、イソオキサゾリル(3-イソオキサゾリル)、インドリル(1-インドリル、2-インドリル、3-インドリル)、2-ベンゾチアゾリル、ベンゾ[b]チエニル(2-ベンゾ[b]チエニル、3-ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[b]フラニル(2-ベンゾ[b]フラニル、3-ベンゾ[b]フラニル)等、および非芳香族複素環基、例えばピロリジニル(1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル)、オキサゾリジニル(2-オキサゾリジニル)、イミダゾリニル(1-イミダゾリニル、2-イミダゾリニル、4-イミダゾリニル)、ピペリジニル(1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル)、ピペラジニル(1-ピペラジニル、2-ピペラジニル)、モルホリノ、チオモルホリノ等が挙げられるが、これらに限定されない。
W1およびW2の好ましい例としては、2-ピリジル基、3-ピリジル基、4-ピリジル基、などが挙げられる。
好ましい実施形態においては、YはY3、Y5、N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミノ基および4-グアニジノ基より選択される。
Rは

である。
特定の実施形態においては、Rは好ましくは

である。
本発明の化合物においては、nは0、1または2である。特定の実施形態においては、n=1がより好ましい。
Xの好ましい例は、4-(N,N-ビス-(2-ピリジルメチル)アミノエチル)ベンゾイルまたは4-(グアニジノメチル)ベンゾイルである。
AA1は天然または非天然の芳香族アミノ酸である。有用な芳香族アミノ酸の例としては、Phe、Trp、Tyr、Hisまたは 1-もしく2-ナフチルアラニンが挙げられる。特定の実施形態においては、AA1は好ましくはPheである。
AA2はGly、Ala、Proまたは Picからなる群より選択される。AA2の好ましい例は、Gly、D-Ala、D-ProまたはD-Picである。特定の実施形態においては、AA2は好ましくはGlyである。
AA3は脂肪族アミノ酸である。有用な脂肪族アミノ酸の例としては、Leu、Ile、Val、Nle、AlaおよびMetが挙げられる。特定の実施形態において、AA3は好ましくはLeuである。
AA4は塩基性アミノ酸またはシトルリンである。有用な塩基性アミノ酸の例としては、Arg、LysまたはOrnが挙げられる。特定の実施形態において、AA4は好ましくはArgである。
Zは下記の(i)、(ii)、(iii)または(iv)より選択される:
(i) 天然または非天然の芳香族アミノ酸、またはそのアミド、あるいはそのエステル;
(ii)下記の式によって表される基:

(ここでn1は0、1または2である。)
(iii) 下記の式によって表される基:

(ここでn2は0、1または2である。)
(iv) 下記の式によって表される基:

(ここでn2は0、1または2である。)
Zとして有用な芳香族アミノ酸の例としては、Phe、Trp、Hisまたは1-もちくは2-ナフチルアラニンのアミドが挙げられる。特定の実施形態において、Zは好ましくはTrpのアミドである。
本発明のメタスチン誘導体(I)の好ましい例は、後述の調製例において調製される化合物である。最も好ましい本発明のメタスチン誘導体の例には、FM052aおよびFMO53aが含まれる。
本発明のメタスチン誘導体(I)は、公知のペプチドの合成法に従って製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。既知の縮合方法や保護基の脱離法としてはたとえば、以下の(1)〜(5)に記載された方法が挙げられる(これらの文献はその全体を本明細書に組み入れる):
(1)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
(2)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
(3)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
(4)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
(5)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
さらに、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明のペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は既知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、既知の方法によって遊離体に変換することができる。
保護されたアミノ酸またはペプチドの縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、トリスホスホニウム塩類、テトラメチルウロニウム塩類、カルボジイミド類等がよい。トリスホスホニウム塩類としてはベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(PyBOP)、ブロモトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(PyBroP)および7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェイト(PyAOP)、テトラメチルウロニウム塩類としては2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロホスフェイト(HBTU)、2-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-ヘキサフルオロホスフェイト(HATU)、2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TBTU)、2-(5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TNTU)、O-(N-スクシミジル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムテトラフルオロボレイト(TSTU)、カルボジイミド類としてはDCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)およびN-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDCI・HCl)などが挙げられる。縮合にはラセミ化阻害剤(例えば、HONB, HOBt, HOAt, HOOBtなど)の添加が好ましい。縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。たとえば、酸アミド類(例:無水または含水のN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなど)、ハロゲン化炭化水素類(例:塩化メチレン、クロロホルムなど)、アルコール類(例:トリフルオロエタノール、フェノールなど)、スルホキシド類(例:ジメチルスルホキシドなど)、三級アミン類(例:ピリジンなど)、エーテル類(例:ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、ニトリル類(例:アセトニトリル、プロピオニトリルなど)、エステル類(例:酢酸メチル、酢酸エチルなど)あるいはこれらの適切な混合物などが用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5から6倍過剰で用いられる。固相合成の場合にはニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールなどを用いて未反応アミノ酸をアシル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。
原料のアミノ基の保護基としては、たとえば、Z、Boc、tert-ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2-ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmoc、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばRとして上記したC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C7-14アラルキル基の他、アリル、2-アダマンチル、4-ニトロベンジル、4-メトキシベンジル、4-クロロベンジル、フェナシル基およびベンジルオキシカルボニルヒドラジド、tert-ブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジド、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
セリンおよびスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C2-4)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基などの有機酸から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、tert-ブチル基、トリチル基(Trt)などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、 2,6-ジクロルベンジル、2-ニトロベンジル、Br-Z、tert-ブチル、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr)、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmoc、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
アルギニンのグアニジノ基の保護基としてはTos,Z, 4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル(Mtr), p-メトキシベンゼンスルホニル(MBS), 2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル(Pmc), メシチレン-2-スルホニル(Mts)、2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf)、Boc、Z、NO2、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
リジンの側鎖アミノ基の保護基としてはZ, Cl-Z, トリフルオロアセチル、Boc、Fmoc、Trt、Mtr、4,4-ジメチル-2,6-ジオキソシクロヘキシリデンエイル(Dde)、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
トリプトファンのインドリル保護基としてはフォルミル(For)、Z, Boc、Mts、Mtr、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
アスパラギンおよびグルタミンの保護基としてはTrt, キサンチル(Xan)、4,4'-ジメトキシベンズヒドリル(Mbh)、2,4,6-トリメトキシベンジル(Tmob)、または当技術分野で公知の他のものなどが挙げられる。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt))とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応する亜リン酸アミドが挙げられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えばPd黒あるいはPd炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、臭化トリメシルシラン(TMSBr)、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、テトラフルオロホウ酸、トリス(トリフルオロ)ホウ素、三臭化ホウ素あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはカチオン捕捉剤(例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾールなど)や、ジメチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタンジチオール等の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオール、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料の反応に関与すべきでない官能基を保護する保護基は、既知の基あるいは他の手段から適宜選択しうる。同様に、保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは当技術分野で公知の方法により実施しうる。
ペプチドのアミド体を得る方法としては、アミド体合成用樹脂を用いて固相合成するか又はカルボキシル末端アミノ酸のα-カルボキシル基をアミド化した後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα-アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(またはアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ポリペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を用いて精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。
本発明のメタスチン誘導体(I)が、立体配置異性体、ジアステレオマー、配座異性体等として存在する場合には、所望により、前記の分離、精製手段によりそれぞれを単離することができる。また、本発明の化合物がラセミ体である場合には、通常の光学分割手段によりS異性体及びR異性体に分離することができる。
本発明のメタスチン誘導体(I)に立体異性体が存在する場合には、この異性体が単独の場合、および複数の異性体が混合物として存在する場合も本発明に含まれる。
また、本発明のメタスチン誘導体(I)は、水和物であっても、または非水和物であってもよい。
本発明のメタスチン誘導体(I)は同位元素(例、3H、14C、35S)等で標識されていてもよい。
本明細書に記載のペプチドにおいては、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。ペプチドのC末端は、アミド(-CONH2)、カルボキシル基(-COOH)、カルボキシレート(-COO-)、アルキルアミド(-CONRR)またはエステル(-COOR)であってよく、特にアミド(-CONH2)が好ましい。エステルまたはアルキルアミド基におけるRとしては、C1-6アルキル基(例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルおよびn-ブチルなど)、C3-8シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなど)、C6-12アリール基(例えば、フェニル、α-ナフチルなど)、フェニル-C1-2アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルなど)、C7-14アラルキル基(例えば、α-ナフチルメチルなどのα-ナフチル-C1-2アルキル基)、などののほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のメタスチン誘導体(I)の塩の例としては、金属塩、アンモニウム塩、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性または酸性アミノ酸との塩等が挙げられる。金属塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム塩等が挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、2,6-ルチジン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン等との塩が挙げられる。無機酸との塩の好適な例としては、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等との塩が挙げられる。有機酸との塩の好適な例としては、例えばギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等との塩が挙げられる。塩基性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアルギニン、リジン、オルニチン等との塩が挙げられ、酸性アミノ酸との塩の好適な例としては、例えばアスパラギン酸、グルタミン酸等との塩が挙げられる。
このうち、薬学的に許容し得る塩が好ましい。例えば、化合物内に酸性官能基を有する場合にはアルカリ金属塩(例、ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例、カルシウム塩、マグネシウム塩、バリウム塩等)等の無機塩、アンモニウム塩等が好ましい。また、化合物内に塩基性官能基を有する場合には、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸等無機酸との塩、または酢酸、フタル酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸等の有機酸との塩が好ましい。
本発明のメタスチン誘導体(I)またはその塩(以下、本発明のメタスチン誘導体(I)と略記する)のプロドラッグとは、生体内における生理条件下で、またはで酵素や胃酸等による反応により本発明のメタスチン誘導体(I)に変換される化合物を意味する。すなわち、本発明のプロドラッグとは、酵素または胃酸などによって酸化、還元、加水分解等を起こして本発明のメタスチン誘導体(I)に変化する化合物をいう。
本発明のメタスチン誘導体(I)のプロドラッグの例としては、(a)本発明のメタスチン誘導体(I)のアミノ基がアシル化、アルキル化、リン酸化等された化合物(例えば、本発明のメタスチン誘導体(I)のアミノ基がエイコサノイル化、アラニル化、ペンチルアミノカルボニル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メトキシカルボニル化、テトラヒドロフラニル化、ピロリジルメチル化、ピバロイルオキシメチル化、tert-ブチル化等された化合物);(b)本発明のメタスチン誘導体(I)の水酸基がアシル化、アルキル化、リン酸化、ホウ酸化された化合物(例えば、本発明のメタスチン誘導体(I)の水酸基がアセチル化、パルミトイル化、プロパノイル化、ピバロイル化、スクシニル化、フマリル化、アラニル化、ジメチルアミノメチルカルボニル化等された化合物);および(c)本発明のメタスチン誘導体(I)のカルボキシ基がエステル化、アミド化等された化合物(例えば、本発明のメタスチン誘導体(I)のカルボキシ基がエチルエステル化、フェニルエステル化、カルボキシメチルエステル化、ジメチルアミノメチルエステル化、ピバロイルオキシメチルエステル化、エトキシカルボニルオキシエチルエステル化、フタリジルエステル化、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)メチルエステル化、シクロヘキシルオキシカルボニルエチルエステル化、メチルアミド化等された化合物);等が挙げられる。
これらのプロドラッグは、既知の方法によって本発明のメタスチン誘導体(I)から製造することができる。
また、本発明のメタスチン誘導体(I)のプロドラッグは、広川書店1990年刊「医薬品の開発」第7巻(薬剤設計)163頁から198頁に記載されているような生理的条件で本発明のメタスチン誘導体(I)に変化するものであってもよい。
本発明のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグ(以下、本発明の化合物と略記する)は癌転移抑制活性または癌増殖抑制活性を有する。このため、本発明のメタスチン化合物は、あらゆる癌(例えば、肺癌、胃癌、肝癌、膵癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、乳癌、腎臓癌、膀胱癌、脳腫瘍、等)の予防・治療剤などの医薬組成物として有用である。
さらに、本発明の化合物は膵臓機能調節作用を有するため、種々の膵臓疾患(例えば、急性または慢性膵炎、膵癌等)の治療・予防剤として使うことができる医薬組成物として有用である。
また、本発明の化合物は胎盤機能調節作用を有するため、例えば、繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝異常、脂質代謝異常または分娩誘発の予防または治療剤として使うことができる医薬組成物として有用である。
本発明の化合物を含有してなる医薬は、毒性が低く、医薬製剤の製造法で一般的に用いられている既知の手段に従って、本発明の化合物をそのままあるいは薬理学的に許容される担体と混合して、例えば、錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等の医薬製剤として、経口的または非経口的(例、局所、直腸、静脈投与等)に安全に投与することができる。本発明の化合物の本発明製剤中の含有量は、製剤全体の約0.01ないし約100重量%である。本発明の化合物の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与経路などにより差異はあるが、経口投与の場合、例えば癌患者に対して(体重60kgとして)一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与経路などによっても異なるが、例えば癌患者に対して(体重60kgとして)一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。当技術分野で公知の方法にしたがって、患者の体重によって投与量を調節することができる。
本発明の製剤の製造に用いられる薬学的に許容される担体としては、慣用されている各種有機あるいは無機担体物質が含まれる。製剤素材には、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、可溶化剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤等も含まれる。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤、等の通常の添加物を適切な量で用いることもできる。
有用な賦形剤としては、限定はされないが、例えば乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられる。
有用な結合剤としては、限定はされないが、例えば結晶セルロース、ショ糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、サッカロース、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられる。
有用な崩壊剤としては、限定はされないが、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、およびL-ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
有用な溶剤としては、限定はされないが、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
有用な溶解補助剤としては、限定はされないが、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
有用な懸濁化剤としては、限定はされないが、界面活性剤、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン等;親水性高分子、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が含まれる。
有用な等張化剤としては、例えばグルコース、D-ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトール等が含まれるが、これに限定されない。
有用な緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が含まれるが、これに限定されない。
有用な無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が含まれるが、これに限定されない。
有用な防腐剤としては、例えば、p-ヒドロキシベンゾエート類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられるが、これに限定されない。
有用な抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、およびα-トコフェロールが挙げられるが、これに限定されない。
本発明の有用な化合物の例は、本発明の化合物以外の薬物と同時に使用することができる。本発明の化合物と併用し得る薬物(以下、併用薬物と略記する)としては、例えば、化学療法剤、ホルモン療法剤、免疫療法剤等の癌治療のための薬剤が挙げられる。
化学療法剤としては、例えば、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗癌性抗生物質、植物由来抗癌剤等が挙げられるが、これに限定されない。
アルキル化剤としては、限定はされないが、例えば、ナイトロジェンマスタード、塩酸ナイトロジェンマスタード−N−オキシド、クロラムブチル、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、カルボコン、トシル酸インプロスルファン、ブスルファン、塩酸ニムスチン、ミトブロニトール、メルファラン、ダカルバジン、ラニムスチン、リン酸エストラムスチンナトリウム、トリエチレンメラミン、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、ピポブロマン、エトグルシド、カルボプラチン、シスプラチン、ミボプラチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、アルトレタミン、アンバムスチン、塩酸ジブロスピジウム、フォテムスチン、プレドニムスチン、プミテパ、リボムスチン、テモゾロミド、トレオスルファン、トロホスファミド、ジノスタチンスチマラマー、カルボコン、アドゼレシン、システムスチン、ビゼレシン等が含まれる。
代謝拮抗剤としては、限定はされないが、例えば、メルカプトプリン、6-メルカプトプリンリボシド、チオイノシン、メトトレキサート、エノシタビン、シタラビン、シタラビンオクフォスファート、塩酸アンシタビン、5-FU系薬剤(例、フルオロウラシル、テガフール、UFT、ドキシフルリジン、カルモフール、ガロシタビン、エミテフール等)、アミノプテリン、ロイコボリンカルシウム、タブロイド、ブトシン、フォリネイトカルシウム、レボフォリネイトカルシウム、クラドリビン、エミテフール、フルダラビン、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、ペントスタチン、ピリトレキシム、イドキシウリジン、ミトグアゾン、チアゾフリン、アンバムスチン等が挙げられる。
抗癌性抗生物質としては、例えば、アクチノマイシンD、アクチノマイシンC、マイトマイシンC、クロモマイシンA3、塩酸ブレオマイシン、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ドキソルビシン、塩酸アクラルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸エピルビシン、ネオカルチノスタチン、ミスラマイシン、ザルコマイシン、カルチノフィリン、ミトタン、塩酸ゾルビシン、塩酸ミトキサントロン、塩酸イダルビシン等が挙げられるが、これに限定されない。
植物由来抗癌剤としては、例えば、エトポシド、リン酸エトポシド、硫酸ビンブラスチン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、テニポシド、パクリタキセル、ドセタクセル、ビノレルビン等が含まれるが、これに限定されない。
ホルモン療法剤としては、限定はされないが、例えば、ホスフェストロール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセリン、酢酸メドロキシプロゲステロン、酢酸メゲストロール、酢酸クロルマジノン、酢酸シプロテロン、ダナゾール、アリルエストレノール、ゲストリノン、メパルトリシン、ラロキシフェン、オルメロキフェン、レボルメロキシフェン、抗エストロゲン(例、クエン酸タモキシフェン、クエン酸トレミフェン)、ピル製剤、メピチオスタン、テストロラクトン、アミノグルテチイミド、LH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン)、ドロロキシフェン、エピチオスタノール、スルホン酸エチニルエストラジオール、アロマターゼ阻害薬(例、塩酸ファドロゾール、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン、ボロゾール、フォルメスタン)、抗アンドロゲン(例、フルタミド、ビカルタミド、ニルタミド)、5α-レダクターゼ阻害薬(例、フィナステリド、エプリステリド)、副腎皮質ホルモン系薬剤(例、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン)、アンドロゲン合成阻害薬(例、アビラテロン)、レチノイドおよびレチノイドの代謝を遅らせる薬剤(例、リアロゾール)等が挙げられる。なかでもLH-RHアゴニスト(例、酢酸ゴセレリン、ブセレリン、リュープロレリン)が好ましい。
免疫療法剤(BRM)としては、例えば、ピシバニール、クレスチン、シゾフィラン、レンチナン、ウベニメクス、インターフェロン類、インターロイキン類、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、エリスロポエチン、リンホトキシン、BCGワクチン、コリネバクテリウム・パルブム(Corynebacterium parvum)、レバミゾール、ポリサッカライドK、プロコダゾール等が挙げられるが、これに限定されない。
本発明の化合物と併用薬物とを組み合わせることにより下記の有益な効果が得られる:
(1)本発明の化合物または併用薬物を単独で投与する場合に比べて、その投与量を軽減することができる、
(2)患者の症状(軽症、重症など)に応じて、本発明の化合物と併用する薬物を選択することができる、
(3)本発明の化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療期間を長く設定することができる、
(4)本発明の化合物と作用機序が異なる併用薬物を選択することにより、治療効果の持続を図ることができる;および
(5)本発明の化合物と併用薬物とを併用することにより、相乗効果が得られる。
以下、本発明の化合物(I)と併用薬物を併用して使用することを「本発明の併用剤」と称する。
本発明の併用剤の使用に際しては、本発明の化合物と併用薬物の投与時期は限定されず、本発明の化合物またはその医薬組成物と併用薬物またはその医薬組成物とを、投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。併用薬物の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。
本発明の併用剤の投与形態は、特に限定されず、本発明の化合物と併用薬物とが組み合わされて投与されればよい。このような投与形態の例としては、(1)本発明の化合物と併用薬物とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、(2)本発明の化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、(3)本発明の化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、(4)本発明の化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、および(5)本発明の化合物と併用薬物とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の化合物および併用薬物をこの順序で、または逆の順序で投与する)等が挙げられる。
本発明の併用剤は、毒性が低い。したがって、本発明の化合物および/または前記併用薬物を公知の方法に従って、薬理学的に許容される担体と混合して医薬組成物、例えば錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、散剤、顆粒剤、カプセル剤、(ソフトカプセルを含む)、液剤、注射剤、坐剤、徐放剤等として、経口的又は非経口的(例、局所、直腸、静脈等)に安全に投与することができる。注射剤は、静脈内、筋肉内、皮下、臓器内への投与あるいは直接病巣に投与することができる。
当技術分野で公知の任意の製薬上許容される担体を本発明の併用剤の製造に用いることができ、例えば、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質として用いられる。他の成分の例としては、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤及び崩壊剤、あるいは液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤及び無痛化剤等があげられる。更に必要に応じ、通常の添加物、例えば防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、吸着剤、湿潤剤等を適宜、適量用いることもできる。
有用な賦形剤としては、例えば乳糖、ショ糖、D−マンニトール、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられるが、これに限定されない。
有用な結合剤としては、例えば結晶セルロース、ショ糖、D−マンニトール、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、デンプン、ショ糖、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等が挙げられるが、これに限定されない。
有用な崩壊剤としては、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、L−ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
有用な溶剤としては、例えば注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油等が挙げられる。
溶解補助剤としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
懸濁化剤としては、界面活性剤、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン、等;親水性高分子、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
有用な等張化剤としては、例えばグルコース、 D−ソルビトール、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール等が挙げられるが、これに限定されない。
有用な緩衝剤としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液等が挙げられるが、これに限定されない。
有用な無痛化剤としては、例えばベンジルアルコール等が挙げられるが、これに限定されない。
防腐剤としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸等が挙げられる。
抗酸化剤としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸、α−トコフェロール等が挙げられる。
本発明の併用剤における本発明の化合物と併用薬物との配合比は、投与対象、投与経路、疾患等により適宜選択することができる。
例えば、本発明の併用剤における本発明の化合物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の併用剤における併用薬物の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約0.01ないし100重量%、好ましくは約0.1ないし50重量%、さらに好ましくは約0.5ないし20重量%程度である。
本発明の併用剤における担体等の添加剤の含有量は、製剤の形態によって相違するが、通常製剤全体に対して約1ないし99.99重量%、好ましくは約10ないし90重量%程度である。
また、本発明の化合物および併用薬物をそれぞれ別々に製剤化する場合も同様の含有量でよい。
これらの製剤は、当技術分野で公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の化合物および併用薬物は、分散剤(例、ツイーン(Tween)80(Atlas Powder, US))、HCO 60(日光ケミカルズ製)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン等)、安定化剤(例、アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(例、ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶化剤(例、グリセリン、エタノール等)、緩衝剤(例、リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(例、塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトール、ソルビトール、グルコース等)、pH調節剤(例、塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(例、パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール等)、溶解剤(例、濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(例、プロピレングリコール、ショ糖等)、無痛化剤(例、グルコース、ベンジルアルコール等)等と共に水性注射剤に、あるいはオリーブ油、ゴマ油、綿実油、コーン油等の植物油、プロピレングリコール等の溶解補助剤に溶解、懸濁あるいは乳化して油性注射剤に成形し、注射剤とすることができる。
経口投与用製剤とするには、自体公知の方法に従い、本発明の化合物または併用薬物に例えば、賦形剤(例、乳糖、ショ糖、デンプン等)、崩壊剤(例、デンプン、炭酸カルシウム等)、結合剤(例、デンプン、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等)又は滑沢剤(例、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール6000等)等を添加して圧縮成形し、次いで必要により、味のマスキング、腸溶性あるいは持続性の目的のため自体公知の方法でコーティングすることにより経口投与製剤とすることができる。そのコーティング剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリオキシエチレングリコール、ツイーン 80、プルロニック F68、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシメチルセルロースアセテートサクシネート、オイドラギット(メタアクリル酸・アクリル酸コポリマー;Rhom, DE)および色素(例、ベンガラ,二酸化チタン等)等が用いられる。経口投与用製剤は速放性製剤、徐放性製剤のいずれであってもよい。
例えば、坐剤とするには、公知の方法に従い、本発明の化合物または併用薬物を油性又は水性の固状、半固状あるいは液状の坐剤とすることができる。前記組成物に用いる油性基剤としては、例えば、高級脂肪酸のグリセリド〔例、カカオ脂、ウイテプゾル類(Dynamite Novel, DE)等〕、中級脂肪酸〔例、ミグリオール類(Dynamite Novel, DE)等〕、あるいは植物油(例、ゴマ油、大豆油、綿実油等)等が用いられる。また、水性基剤としては、例えばポリエチレングリコール類、プロピレングリコール、水性ゲル基剤としては、例えば天然ガム類、セルロース誘導体、ビニール重合体、アクリル酸重合体等が挙げられる。
徐放性製剤の例としては、徐放性マイクロカプセル剤等が挙げられるが、これに限定されない。徐放性マイクロカプセルを得るには、公知の方法を採用できるが、例えば、下記のセクション(2)に示す徐放性製剤に成型して投与するのが好ましい。
本発明の化合物は、固形製剤(例、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤)等の経口投与用製剤に成型するか、坐剤等の直腸投与用製剤に成型するのが好ましい。特に経口投与用製剤が好ましい。
併用薬物は、薬物の種類に応じて前記した剤形とすることができる。
以下に、本発明の化合物または併用薬物の注射剤およびその調製、本発明の化合物または併用薬物の徐放性製剤又は速放性製剤およびその調製、本発明の化合物または併用薬物の舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤およびその調製について具体的に示す。
(1)注射剤およびその調製
本発明の化合物または併用薬物を水に溶解することにより調製される注射剤が好ましい。該注射剤には安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩を含有させてもよい。
該注射剤は、本発明の化合物または併用薬物と所望により安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の双方を水に溶解することにより得られる。
前記安息香酸、サリチル酸の塩としては、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアンモニウム塩、メグルミン塩、その他トロメタモール等の有機酸塩等が挙げられる。
注射剤中の本発明の化合物または併用薬物の濃度は0.5〜50w/v%、好ましくは約3〜20w/v%程度である。また安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の濃度は0.5〜50w/v%、好ましくは3〜20w/v%が好ましい。
また、本発明の製剤には一般に注射剤に使用される添加剤を適宜配合することができる。例えば安定化剤(アスコルビン酸、ピロ亜硫酸ナトリウム等)、界面活性剤(ポリソルベート80、マクロゴール等)、可溶剤(グリセリン、エタノール等)、緩衝剤(リン酸及びそのアルカリ金属塩、クエン酸及びそのアルカリ金属塩等)、等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム等)、分散剤(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デキストリン)、pH調節剤(塩酸、水酸化ナトリウム等)、保存剤(パラオキシ安息香酸エチル、安息香酸等)、溶解剤(濃グリセリン、メグルミン等)、溶解補助剤(プロピレングリコール、ショ糖等)、無痛化剤(グルコース、ベンジルアルコール等)等を添加することができる。これらの添加剤は一般に注射剤に通常用いられる割合で配合される。
注射剤のpHは、pH調節剤の添加により2〜12、好ましくは2.5〜8.0に調整するのがよい。
注射剤は本発明の化合物または併用薬物と所望により安息香酸塩又は/およびサリチル酸塩の双方を、また必要により前記添加剤を水に溶解することにより得られる。これらの溶解はどのような順序で行ってもよく、従来の注射剤の製法と同様に適宜行うことができる。
注射用水溶液は加温するのがよい。または、通常の注射剤と同様に例えば濾過滅菌,高圧加熱滅菌等を行うことにより注射剤として供することができる。
注射用水溶液は、例えば100〜121℃の条件で5〜30分高圧加熱滅菌するのがよい。
さらに多回分割投与製剤として使用できるように、溶液に抗菌性を付与した製剤としてもよい。
(2)徐放性製剤または速放性製剤およびその調製
本発明の化合物または併用薬物を含む核を所望により水不溶性物質や膨潤性ポリマー等の被膜剤で被覆することにより得られる徐放性製剤が好ましい。例えば、1日1回投与型の経口投与用徐放性製剤が好ましい。
被膜剤に用いられる水不溶性物質としては、セルロースエーテル類、例えばエチルセルロース、ブチルセルロース等;セルロースエステル類、例えばセルロースアセテート、セルロースプロピオネート等;ポリビニルエステル類、例えばポリビニルアセテート、ポリビニルブチレート等;アクリル酸/メタクリル酸共重合体、メチルメタクリレート共重合体、エトキシエチルメタクリレート/シンナモエチルメタクリレート/アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、メタクリル酸アルキルアミド共重合体、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリメタクリレート、ポリメタクリルアミド、アミノアルキルメタクリレート共重合体、ポリ(メタクリル酸アンヒドリド)、グリシジルメタクリレート共重合体、とりわけアクリル酸系ポリマー[例えば、オイドラギットRS-100,RL-100,RS-30D,RL-30D,RL-PO,RS-PO(アクリル酸エチル・メタアクリル酸メチル・メタアクリル酸塩化トリメチル・アンモニウムエチル共重合体)、オイドラギットNE-30D(メタアクリル酸メチル・アクリル酸エチル共重合体)等のオイドラギット類(Rhom Farma)]、硬化油、例えば硬化ヒマシ油(例、ラブリーワックス(Freunt)等);ワックス類、例えばカルナバワックス、脂肪酸グリセリンエステル、パラフィン等;ポリグリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。
膨潤性ポリマーとしては、酸性の解離基を有し、pH依存性の膨潤を示すポリマーが好ましく、胃内のような酸性領域では膨潤が少なく、小腸や大腸等の中性領域で膨潤が大きくなる酸性の解離基を有するポリマーが好ましい。
このような酸性の解離基を有し、pH依存性の膨潤を示すポリマーとしては、架橋型ポリアクリル酸共重合体、例えばカーボマー(Carbomer)934P、940、941、974P、980、1342等、ポリカーボフィル(polycarbophil)、カルシウムポリカボーフィル(calcium polycarbophil)(最後の2つはBF Goodrich製)、ハイビスワコー103、104、105、304(いずれも和光純薬(株)製)等が挙げられる。
徐放性製剤に用いられる被膜剤は親水性物質をさらに含んでいてもよい。該親水性物質としては、例えばプルラン、デキストリン、アルギン酸アルカリ金属塩等の硫酸基を含有していてもよい多糖類、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有する多糖類、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
徐放性製剤の被膜剤における水不溶性物質の含量は約30ないし90%(w/w)、好ましくは約35ないし80%(w/w)、さらに好ましくは約40ないし75%(w/w)、膨潤性ポリマーの含量は約3ないし30%(w/w)、好ましくは約3ないし15%(w/w)である。被膜剤は親水性物質をさらに含んでいてもよく、その場合被膜剤における親水性物質の含量は約50%(w/w)以下、好ましくは約5〜約40%(w/w)、さらに好ましくは約5〜35%(w/w)である。ここで前記%(w/w)は被膜剤液から溶媒(例、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール等)を除いた被膜剤組成物に対する重量%を示す。
徐放性製剤は、以下に例示するように薬物を含む核を調製し、次いで得られた核を、水不溶性物質や膨潤性ポリマー等を加熱溶解あるいは溶媒に溶解又は分散させた被膜剤液で被覆することにより製造される。
I.薬剤を含む核の調製
被膜剤で被覆される薬物を含む核(以下、単に核と称することがある)の形態は特に制限されないが、好ましくは顆粒あるいは細粒等の粒子状に形成される。核が顆粒又は細粒から構成される場合、その平均粒子径は、好ましくは約150ないし2,000μm、さらに好ましくは約500ないし1,400μmである。
核の調製は通常の製造方法で実施することができる。例えば、薬物に適当な賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定化剤等を混合し、この混合物から湿式押し出し造粒法、流動層造粒法等により核を調製する。
核の薬物含量は、約0.5ないし95%(w/w)、好ましくは約5.0ないし80%(w/w)、さらに好ましくは約30ないし70%(w/w)である。
核に含まれる賦形剤としては、例えばショ糖、乳糖、マンニトール、グルコース等の糖類、澱粉、結晶セルロース、リン酸カルシウム、コーンスターチ等が用いられる。中でも、結晶セルロース、コーンスターチが好ましい。
結合剤としては、例えばポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、プルロニックF68、アラビアゴム、ゼラチン、澱粉等が用いられる。崩壊剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム(ECG505)、クロスカルメロースナトリウム(Ac-Di-Sol)、架橋型ポリビニルピロリドン(クロスポビドン)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L-HPC)等が用いられる。中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。滑沢剤、凝集防止剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウムおよびその無機塩、および潤滑剤としてポリエチレングリコール等が用いられる。安定化剤としては酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸が用いられる。
核は前記製造法以外にも、例えば核の中心となる不活性担体粒子上に水、低級アルコール(例、メタノール、エタノール等)等の適当な溶媒に溶解した結合剤をスプレーしながら、薬物あるいはこれと賦形剤、滑沢剤等との混合物を少量づつ添加して行なう転動造粒法、パンコーティング法、流動層コーティング法や溶融造粒法によっても調製することができる。不活性担体粒子としては、例えばショ糖、乳糖、澱粉、結晶セルロース、ワックス類で製造されたものが使用でき、その平均粒子径は約100 μmないし約1,500 μmであるものが好ましい。
核に含まれる薬物と被膜剤とを分離するために、防護剤で核の表面を被覆してもよい。防護剤としては、例えば前記親水性物質、水不溶性物質等が用いられる。防護剤は、好ましくはポリエチレングリコールおよびヒドロキシアルキル基又はカルボキシアルキル基を有する多糖類、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロースが用いられる。該防護剤には安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸や、タルク等の滑沢剤を含んでいてもよい。防護剤を用いる場合、その被覆量は核に対して約1ないし15% (w/w)、好ましくは約1ないし10% (w/w)、さらに好ましくは約2ないし8%(w/w)である。
防護剤は通常のコーティング法により被覆することができ、具体的には、防護剤を例えば流動層コーティング法、パンコーティング法等により核に被覆することができる。
II. 核の被膜剤による被覆
前記工程Iで得られた核を、前記水不溶性物質及び pH依存性の膨潤性ポリマー、および親水性物質を加熱溶解あるいは溶媒に溶解又は分散させた被膜剤液により被覆するで徐放性製剤が製造される。
核の被膜剤液による被覆方法として、例えば噴霧コーティングする方法等が挙げられる。
被膜剤液中の水不溶性物質、膨潤性ポリマー又は親水性物質の組成比は、被膜中の各成分の含量がそれぞれ前記含量となるように適宜選ばれる。
被膜剤の被覆量は、核(防護剤の被覆量を含まない)に対して約1ないし90%(w/w)、好ましくは約5ないし50%(w/w)、さらに好ましくは約5ないし35%(w/w)である。
被膜剤液の溶媒としては水又は有機溶媒を単独であるいは両者の混液を用いることができる。混液を用いる際の水と有機溶媒との混合比(水/有機溶媒:重量比)は、1ないし100%の範囲で変化させることができ、好ましくは1ないし約30%である。該有機溶媒としては、水不溶性物質を溶解するものであれば特に限定されないが、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール等の低級アルコール、アセトン等の低級アルカノン、アセトニトリル、クロロホルム、メチレンクロライド等が用いられる。このうち低級アルコールが好ましく、エチルアルコール、イソプロピルアルコールが特に好ましい。水及び水と有機溶媒との混液が被膜剤の溶媒として好ましく用いられる。この時、必要であれば被膜剤液中に被膜剤液安定化のために酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸等の酸を加えてもよい。
噴霧コーティングにより被覆する場合の操作は通常のコーティング法により実施することができ、具体的には、被膜剤液を例えば流動層コーティング法、パンコーティング法等により核にスプレーコーティングすることで実施することができる。この時必要であれば、タルク、酸化チタン、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、軽質無水ケイ酸等を滑沢剤として、グリセリン脂肪酸エステル、硬化ヒマシ油、クエン酸トリエチル、セチルアルコール、ステアリルアルコール等を可塑剤として添加してもよい。
被膜剤による被膜後、必要に応じてタルク等の帯電防止剤を混合してもよい。
速放性製剤は、液状(溶液、懸濁液、乳化物等)であっても固形状(粒子状、丸剤、錠剤等)であってもよい。経口投与剤および注射剤等非経口投与剤が用いられるが、経口投与剤が好ましい。
速放性製剤は、通常、活性成分である薬物に加えて、製剤分野で慣用される担体、添加剤や賦形剤(以下、賦形剤と略称することがある)を含んでいてもよい。用いられる製剤賦形剤は、製剤賦形剤として常用される賦形剤であれば特に限定されない。例えば経口固形製剤用の賦形剤としては、乳糖、デンプン、コーンスターチ、結晶セルロース(旭化成(株)製、アビセルPH101等)、粉糖、グラニュー糖、マンニトール、軽質無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、L−システイン等が用いられ、好ましくはコーンスターチおよびマンニトール等が挙げられる。これらの賦形剤は二種又はそれ以上を組み合わせて使用できる。賦形剤の含有量は速放性製剤全量に対して、例えば約4.5〜99.4 w/w %、好ましくは約20〜98.5 w/w %、さらに好ましくは約30〜約97 w/w %である。
速放性製剤における薬物の含量は、速放性製剤全量に対して、約0.5〜95%、好ましくは約1〜60%の範囲から適宜選択することができる。
速放性製剤が経口固形製剤の場合、通常前記成分に加えて、崩壊剤を含有する。このような崩壊剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム(五徳薬品製、ECG-505)、クロスカルメロースナトリウム(例えば、旭化成(株)製、アクチゾル(Actisol))、クロスポビドン(例えば、BASF社製、コリドン(Kollidon) CL)、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(信越化学(株))、カルボキシメチルスターチ(松谷化学(株))、カルボキシメチルスターチナトリウム(木村産業製、エキスプロタブ)、部分α化デンプン(旭化成(株)製、PCS)等が用いられ、例えば水と接触して吸水、膨潤、あるいは核を構成している有効成分と賦形剤との間にチャネルを作る等により顆粒を崩壊させるものを用いることができる。これらの崩壊剤は、二種又はそれ以上を組み合わせて使用できる。崩壊剤の配合量は、用いる薬物の種類や配合量、放出性の製剤設計等により適宜選択されるが、速放性製剤全量に対して、例えば約0.05〜30 w/w %、好ましくは約0.5〜15 w/w %である。
速放性製剤が経口固形製剤である場合、前記の組成に加えて、所望により固形製剤において慣用の添加剤をさらに含んでいてもよい。このような添加剤としては、例えば結合剤(例えば、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等)、滑沢剤(例えば、ポリエチレングリコール、ステアリン酸マグネシウム、タルク、軽質無水ケイ酸(例えば、アエロジル(日本アエロジル))、界面活性剤(例えば、アルキル硫酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルおよびポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体等の非イオン系界面活性剤等)、着色剤(例えば、タール系色素、カラメル、ベンガラ、酸化チタン、リボフラビン類)、必要であれば、僑味剤(例えば、甘味剤、香料等)、吸着剤、防腐剤、湿潤剤、帯電防止剤等が用いられる。また、安定化剤として酒石酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸等の有機酸を加えてもよい。
前記結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコールおよびポリビニルピロリドン等が好ましく用いられる。
速放性製剤は、通常の製剤の製造技術に基づき、前記各成分を混合し、必要により、さらに練合し、成型することにより調製することができる。前記混合は、一般に用いられる方法、例えば、混合、練合等により行われる。具体的には、例えば速放性製剤を粒子状に形成する場合、前記徐放性製剤の核の調製法と同様の手法により、バーチカルグラニュレーター、万能練合機(畑鉄工所製)、流動層造粒機FD−5S(Pulek社製)等を用いて混合しその後、湿式押し出し造粒法、流動層造粒法等により造粒することにより調製することができる。
このようにして得られた速放性製剤と徐放性製剤とは、そのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に常法により別々に製剤化後、同時あるいは任意の投与間隔を挟んで組み合わせて投与する製剤としてもよく、また両者をそのままあるいは適宜、製剤賦形剤等と共に一つの経口投与製剤(例、顆粒剤、細粒剤、錠剤、カプセル等)に製剤化してもよい。両製剤を顆粒あるいは細粒に調製して、同一のカプセル等に充填して経口投与用製剤としてもよい。
(3)舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤およびその調製
舌下錠、バッカル製剤、口腔内速崩壊剤は錠剤等の固形製剤であってもよいし、口腔粘膜貼付錠(フィルム)であってもよい。
舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤としては、本発明の化合物または併用薬物と賦形剤とを含有する製剤が好ましい。また、滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤等の補助剤を含有していてもよい。また、吸収を容易にし、生体内利用率を高めるためにβ-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体(例、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン等)等を含有していてもよい。
前記賦形剤としては、乳糖、ショ糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、軽質無水ケイ酸等が挙げられる。滑沢剤としてはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカ等が挙げられ、特に、ステアリン酸マグネシウムやコロイドシリカが好ましい。等張化剤としては塩化ナトリウム、グルコース、フルクトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、サッカロース、グリセリン、尿素等が挙げられ、特にマンニトールが好ましい。親水性担体としては、膨潤性親水性担体、例えば結晶セルロース、エチルセルロース、架橋性ポリビニルピロリドン、軽質無水ケイ酸、ケイ酸、リン酸二カルシウム、炭酸カルシウム等が挙げられ、特に結晶セルロース(例、微結晶セルロース等)が好ましい。水分散性ポリマーとしてはガム(例、トラガカントガム、アカシアガム、グアーガム)、アルギン酸塩(例、アルギン酸ナトリウム)、セルロース誘導体(例、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ゼラチン、水溶性デンプン、ポリアクリル酸(例、カーボマー)、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリカーボフィル、アスコルビン酸パルミチン酸塩等が挙げられ、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリアクリル酸、アルギン酸塩、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が好ましい。特にヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。安定化剤としては、システイン、チオソルビトール、酒石酸、クエン酸、炭酸ナトリウム、アスコルビン酸、グリシン、亜硫酸ナトリウム等が挙げられ、特に、クエン酸やアスコルビン酸が好ましい。
舌下錠、バッカル又は口腔内速崩壊剤は、本発明の化合物または併用薬物と賦形剤とを当技術分野で公知の方法により混合することにより製造することができる。さらに、所望により滑沢剤、等張化剤、親水性担体、水分散性ポリマー、安定化剤、着色剤、甘味剤、防腐剤等の補助剤を混合してもよい。前記成分を同時に若しくは時間差をおいて混合した後、加圧打錠成形することにより舌下錠、バッカル錠又は口腔内速崩壊錠が得られる。適度な硬度を得るため、打錠成形の過程の前後において必要に応じ水やアルコール等の溶媒を用いて加湿・湿潤させ、成形後、乾燥させて製造してもよい。
粘膜貼付錠(フィルム)に成型する場合は、本発明の化合物または併用薬物および前記した水分散性ポリマー(好ましくは、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、賦形剤等を水等の溶媒に溶解させ、得られる溶液を流延させて(cast)フィルムとする。さらに、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、着色剤、緩衝剤、甘味剤等の添加物を加えてもよい。フィルムに適度の弾性を与えるためポリエチレングリコールやプロピレングリコール等のグリコール類を含有させたり、口腔の粘膜ライニングへのフィルムの接着を高めるため生物接着性ポリマー(例、ポリカルボフィル、カルボポール)を含有させてもよい。流延は、非接着性表面に溶液を注ぎ、ドクターブレード等の塗布用具で均一な厚さ(好ましくは10〜1000ミクロン程度)にそれを広げ、次いで溶液を乾燥してフィルムを形成することにより達成される。このように形成されたフィルムは室温若しくは加温下で乾燥させ、所望の表面積に切断すればよい。
好ましい口腔内速崩壊剤としては、本発明の化合物または併用薬物と、本発明の化合物または併用薬物とは不活性である水溶性若しくは水拡散性キャリヤーとの網状体からなる固体状の急速拡散投与剤が挙げられる。該網状体は、本発明の化合物または併用薬物を適当な溶媒に溶解した溶液とから構成されている固体状の該組成物から溶媒を昇華することによって得られる。
該口腔内速崩壊剤の組成物中には、本発明の化合物または併用薬物に加えて、マトリックス形成剤と二次成分とを含んでいるのが好ましい。
該マトリックス形成剤としては、動物性タンパク類若しくは植物性タンパク類、例えばゼラチン類、デキストリン類ならびに大豆、小麦ならびにオオバコ(psyllium)種子タンパク質等;ゴム質物質、例えばアラビアゴム、ガーガム、寒天ならびにキサンタンガム等;多糖類;アルギン酸類;カルボキシメチルセルロース類;カラゲナン類;デキストラン類;ペクチン類;ポリビニルピロリドン等の合成ポリマー類;ゼラチン-アラビアゴム複合体等から誘導される物質が含まれる。さらに、マンニトール、デキストロース、ラクトース、ガラクトースならびにトレハロース等の糖類;シクロデキストリン等の環状糖類;リン酸ナトリウム、塩化ナトリウムならびにケイ酸アルミニウム等の無機塩類;グリシン、L-アラニン、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒドロシキプロリン、L-イソロイシン、L-ロイシンならびにL-フェニルアラニン等の炭素原子数が2から12までのアミノ酸等が含まれる。
マトリックス形成剤は、その1種若しくはそれ以上を、固形化の前に、溶液又は懸濁液中に導入することができる。かかるマトリックス形成剤は、界面活性剤に加えて存在していてもよく、また界面活性剤が排除されて存在していてもよい。マトリックス形成剤はそのマトリックスを形成することに加えて、本発明の化合物または併用薬物の拡散状態をその溶液又は懸濁液中に維持する助けをする。
上記組成物は、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤、着色剤、pH調整剤、香味料、甘味料若しくは食味マスキング剤等の二次成分を含有していてよい。適当な着色剤としては、赤色、黒色ならびに黄色酸化鉄類およびElis and Eberald社のFD&Cブルー2号ならびにFD&Cレッド40号等のFD&C染料が挙げられる。適当な香味料には、ミント、ラスベリー、甘草、オレンジ、レモン、グレープフルーツ、カラメル、バニラ、チェリーならびにグレープフレーバーおよびその組合せたものが含まれる。適当なpH調整剤は、クエン酸、酒石酸、リン酸、塩酸およびマレイン酸が含まれる。適当な甘味料としてはアスパルテーム、アセスルフェームKならびにタウマチン等が含まれる。適当な食味マスキング剤としては、重炭酸ナトリウム、イオン交換樹脂、シクロデキストリン包接化合物、吸着質物質ならびにマイクロカプセル化化合物が含まれる。
製剤は、通常約0.1〜50重量%、好ましくは約0.1〜30重量%の本発明の化合物または併用薬物を含む。約1分〜60分の間、好ましくは約1分〜16分の間、より好ましくは約2分〜5分の間に(水に)本発明の化合物または併用薬物の90%以上を溶解させることが可能な製剤(前記、舌下錠、バッカル等)や、口腔内に入れられて1ないし60秒以内に、好ましくは1ないし30秒以内に、さらに好ましくは1ないし10秒以内に崩壊する口腔内速崩壊剤が好ましい。
前記賦形剤の製剤全体に対する含有量は、約10〜99重量%、好ましくは約30〜90重量%である。B-シクロデキストリン又はβ-シクロデキストリン誘導体の製剤全体に対する含有量は0〜約30重量%である。滑沢剤の製剤全体に対する含有量は、約0.01〜約10重量%、好ましくは約1〜5重量%である。等張化剤の製剤全体に対する含有量は、約0.1〜90重量%、好ましくは、約10〜70重量%である。親水性担体の製剤全体に対する含有量は約0.1〜50重量%、好ましくは約10〜30重量%である。水分散性ポリマーの製剤全体に対する含有量は、約0.1〜30重量%、好ましくは約10〜25重量%である。安定化剤の製剤全体に対する含有量は約0.1〜10重量%、好ましくは約1〜5重量%である。前記製剤はさらに、着色剤、甘味剤、防腐剤等の添加剤を必要に応じ含有していてもよい。
本発明の化合物の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与経路、等により異なるが、経口投与する場合、例えば癌患者一人あたり(体重約60 kgとして)、通常、1日あたり約0.1〜約100 mg、好ましくは約1.0〜約50 mg、より好ましくは約1.0〜約20 mgである。非経口投与の場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与経路などによっても異なるが、例えば癌患者に対して(体重60 kgとして)、一日量として約0.01〜約30 mg程度、好ましくは約0.1〜約20 mg程度、より好ましくは約0.1〜約10 mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。投与量は、当技術分野で公知の方法にしたがって、患者の体重に合わせて調節することができる。もちろん、前記したように投与量は種々の条件で変動するので、前記投与量より少ない量で十分な場合もあり、また範囲を超えて投与する必要のある場合もある。
併用薬物は、副作用が問題とならない範囲でどのような量を設定することも可能である。併用薬物としての一日投与量は、症状の程度、投与対象の年齢、性別、体重、対象の感受性差、投与期間、間隔、性質、調剤、医薬製剤の種類、有効成分の種類等によって異なり、特に限定されないが、薬物の量として通常、例えば経口投与で哺乳動物1kg体重あたり約0.001〜2000 mg、好ましくは約0.01〜500 mg、さらに好ましくは、約0.1〜100 mg程度であり、これを通常1日1回または4回に分けて投与する。
本発明の医薬組成物を投与するに際しては、併用薬物を先に投与した後、本発明の化合物を投与してもよいし、本発明の化合物を先に投与し、その後で併用薬物を投与してもよい。または、2つを同時に投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は有効成分、剤形、投与方法により異なるが、例えば、併用薬物を先に投与する場合、併用薬物を投与した後1分〜3日以内、好ましくは10分〜1日以内、より好ましくは15分〜1時間以内に本発明の化合物を投与する方法が用いられる。本発明の化合物を先に投与する場合、本発明の化合物を投与した後、1分〜1日以内、好ましくは10分〜6時間以内、より好ましくは15分から1時間以内に併用薬物を投与する方法が用いられる。
好ましい投与方法としては、例えば、経口投与製剤に製形された併用薬物を1日量として約0.001〜200 mg/kg経口投与し、15分後に非経口投与製剤に製形された本発明の化合物 約0.005〜0.5 mg/kgを1日量として非経口的に投与する。
以下に、本発明を下記の参考例、実施例および実験例により詳細に説明するが、これらの例は単に説明のために供するものであって、本発明を限定するものではなく、また、本発明の範囲を逸脱しない範囲で変化させてもよい。
以下の実施例中の「室温」は通常約10℃ないし約35℃を示す。%は、収率はmol/mol%を、クロマトグラフィーで用いられる溶媒は体積%を、その他は重量%を示す。プロトンNMRスペクトルで、OHやNHプロトン等ブロードで確認できないものについてはデータに記載していない。
その他の本文中で用いられている略号は下記の意味を表す。
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
BisPy: N,N-ビス(2-ピリジルメチル)
TFA: トリフルオロ酢酸
Gu-Amb: 4-(グアニジノメチル)ベンゾイル
Pic: ピペコリン酸
本明細書および図面において、アミノ酸、ペプチド、保護基、活性化基、などを略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
Gly: グリシン
Ala: アラニン
Val: バリン
Leu: ロイシン
Ile: イソロイシン
Ser: セリン
Thr: スレオニン
Met: メチオニン
Glu: グルタミン酸
Asp: アスパラギン酸
Lys: リジン
Arg: アルギニン
His: ヒスチジン
Phe: フェニルアラニン
Tyr: チロシン
Trp: トリプトファン
Pro: プロリン
Asn: アスパラギン
Gln: グルタミン
Cys: システイン
Nle: ノルロイシン
Orn: オルニチン
Asx: アスパラギンまたはアスパラギン酸
Glx: グルタミンまたはグルタミン酸
Amb: 4-(アミノメチル)安息香酸
ATP: アデノシン三リン酸
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
[配列番号:1]ヒト由来メタスチンのアミノ酸配列
以下の実施例は、本発明をより詳細に例証するものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
保護されたペプチド樹脂を合成するための一般的な手順
Fmocに基づく固相ペプチド合成法により、保護されたペプチド樹脂を手動で構築した。Arg側鎖保護のため、Pbfを用いた。脱Fmocは、DMF中で20%ピペリジンを用いて実施した(2 x 1分、1 x 20分)。5当量の試薬(Fmoc-アミノ酸、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド(DIPCDI)およびHOBt-H2O)を用いて処理することにより、DMF中で1.5時間、Fmoc-アミノ酸を遊離アミノ酸とカップリングした。
調製例1: BisPy-Amb-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FM052a)(配列番号:4)
一般的なカップリングプロトコールによって、Trp、Arg(Pbf)、Leu、Gly、Phe、Amb残基をFmoc-Rink樹脂上で連続的にカップリングした(0.51 mmol/g、78.4 mg、0.04 mmol)。20%ピペリジンで処理した後、保護されたペプチド樹脂をDMF-メチレンクロライド中で2-ピリジンカルボキシアルデヒド(32μL、0.338 mmol)およびNaBH(OAc)3 (112 mg、0.528 mmol)を用いて25℃で2時間処理することによってN末端アミノ基を修飾した。この樹脂をTFA/チオアニソール/m-クレゾール/1,2-エタンジチオール/H2O (160:10:10:5:10:4、5 mL)で0℃で2時間処理した。この樹脂を濾過して反応混合物から単離し、TFAで2回洗浄し、次に濾液と洗浄液を混合して減圧下で濃縮した。減圧下で濃縮後、氷冷Et2Oを添加した。遠心より粉末を回収し、デカンテーションにより上清から分離し、次にこの粉末をEt2Oで3回洗浄し、1N酢酸に溶解し、蒸留水で希釈した。分取HPLC(Cosmosil 5C18 AR-IIカラム、ナカライテスク製;アセトニトリル:水)で精製後、単一ピークポリペプチドを得て、凍結乾燥した。このペプチドの純度をHPLCで測定した。このようにして、表題の環状ペプチドFM052aをテトラ-TFA塩(8.43 mg、収率15%)の無色の凍結乾燥粉末として得た。
調製例2: Gu-Amb-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FM053a)(配列番号:3)
ピリジン-2-アルデヒドおよび水素添加トリアセトキシボロンナトリウムを用いた他は本質的にFM052aの調製と同じ方法で、FM053aの合成を実施した。N末端アミノ基の修飾は、DMF中で1H-ピラゾール-1-カルバキシアミジン-ハイドロクロライド(29 mg、0.200 mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(70 mL、0.400 mmol)を用いて処理することにより行い、表題のペプチドFM053aをジ-TFA塩(5.96 mg、収率14%)の無色の凍結乾燥粉末として得た。
略語:Pbf = 2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロベンゾフラン-5-スルホニル;DMF = N,N-ジメチルホルムアミド;BisPy = N,N-ビス(2-ピリジルメチル);TFA = トリフルオロ酢酸;Gu-Amb = 4-(グアニジノメチル)ベンゾイル
実験例:膵癌細胞の遊走に対するメタスチン誘導体FM052aおよびFM053aの効果
(i) 細胞培養
膵癌細胞系AsPC-1、BxPC-3、Capan-2、CFPAC-1、Panc-1およびSuit-2をAmerican Type Culture Collection より購入した。10%ウシ胎児血清、100単位/mlペニシリン、および100μg/mlストレプトマイシンを補充した適切な培地中で、37℃で、5% CO2/95%空気の湿潤雰囲気下で細胞を単層として培養した。AsPC-1およびPanc-1については、80%コンフルエンスに到達した時点で培地を除去し、細胞をリン酸緩衝化生理的食塩水(PBS)で洗浄し、そして順次用量を増やしたメタスチン(武田薬品工業、大阪、日本)および10%ウシ胎児血清で処理した。15分後に、タンパク質を以下に記述するように単離した。
(ii) 患者および腫瘍サンプル
この試験では、1998年1月から2001年6月の間に本発明者らの勤務する科で膵切除を受けた、膵管腺癌を有する30人の患者を対象とした。他の膵悪性腫瘍、例えば、管内乳頭粘液性腺癌、腺房細胞癌および内分泌腫瘍、等を有する患者は除外した。組織病理学的診断は、京都大学病院病理学科で確認された。膵癌のステージは、pTNM (UICC)システム[Sobin, L.H.およびFleming, I.D. TNM 悪性腫瘍分類(TNM Classification of Malignant Tumors), 5版, (1997); 国際癌防止連合およびアメリカ癌合同委員会(Union Internationale Contre le Cancer and the American Joint Committee on Cancer), Cancer. 80: 1803-4, 1997]にしたがった。院内ガイドラインにしたがって患者からインフォームドコンセントを得た後、腫瘍サンプルを集めた。mRNA発現用サンプルは、手術時に液体窒素中で直ちに凍結し、-80℃で保存した。
(iii) 定量的RT-PCR
遺伝子発現をモニターするため、定量的リアルタイムRT-PCRを実施した。このアプローチは、DNAポリメラーゼ(AmpliTaq Gold)の5'エキソヌクレアーゼ活性を利用するものであった(Bieche, I. et al., Cancer Res. 59:2759-65, 1999; Schmittgen, T.D. et al., Anal Biochem. 285: 194-204, 2000;およびYuan, A. et al., Lab Invest. 80:1671-80, 2000)。
すなわち、遺伝子特異的PCRプライマー対によって規定されるアンプリコン内に、2つの蛍光色素によって標識されるオリゴヌクレオチドプローブを設計し、TaqManプローブと称した。このプローブが完全である限り、5'末端のリポーター色素(6-カルボキシ-フルオレセイン;FAM)の発光は、3'末端の第2の蛍光色素(6-カルボキシ-テトラメチル-ローダミン;TAMRA)によってクエンチされる。PCRの伸長期の間に、ポリメラーゼがTaqManプローブを開裂し、その結果、リポーター色素の放出をもたらした。リポーター色素発光の増大量を、分析ソフトウエアと組み合わせた自動配列検出器(ABI Brism 7700 Sequence Detection System; PE Applied Biosystems)で検出した。反応条件は、製造業者のプロトコールにしたがった。5μlのcDNA(逆転写混合物)、25μlのTaqMan Universal PCR Master Mix (PE Applied Biosystems)およびプライマーについては最終濃度0.3μM、TaqManハイブリダイゼーションプローブについては最終濃度0.2μMのオリゴヌクレオチドを50μl容量で分析した。
分析には下記のプライマーおよびTaqManプローブを用いた(武田)。
上流プライマー:5'-ACTCACTGGTTTCTTGGCAGC-3'(配列番号:5)
下流プライマー:5'-ACCTTTTCTAATGGCTCCCCA-3'(配列番号:6)
TaqManプローブ:5' (FAM)-ACTGCTTTCCTCTGTGCCACCCACT- (TAMRA) 3'(配列番号:7)
(以上KiSS-1用)、および
上流プライマー:5'-CGACTTCATGTGCAAGTTCGTC-3'(配列番号:8)
下流プライマー:5'-CACACTCATGGCGGTCAGAG-3'(配列番号:9)
TaqManプローブ:5' (FAM) -ACTACATCCAGCAGGTCTCGGTGCAGG- (TAMRA)3'(配列番号:10)
(以上hOT7T175用)
サーマルサイクラーのパラメーターは、95℃10分(Taqポリメラーゼの熱活性化のため)の後、95℃15秒および60℃1分を1サイクルとして40サイクル実施した。質および標準化のためのGAPDH RNA評価は、標準的TaqManプローブ化学を利用したTaqMan GAPDH Control Reagent kit (PE Applied Biosystems)を用いて実施した。
(iv) タンパク質抽出およびウエスタン・ブロッティング
セルスクレイパーを用いて細胞をマイクロチューブに回収して、リン酸化阻害RIPAバッファー[50 mM HEPES (pY 7.0), 250 mM NaCl, 0.1% Nonidet P-40, 1 mM フェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)および20 μg/ml メシル酸ガベキサート含有] 中で60分間溶解し、次にライセート(lysate)を10秒間超音波処理した。全抽出物を12,000 rpmで10分間4℃で遠心し、上清を回収した。タンパク質アッセイキット(Tonein-TP;大塚製薬、東京、日本)を用いてタンパク質濃度を測定した。ライセートを1容量のゲルローディングバッファー[50 mM Tris-HCl (pH 6.7), 4% SDS, 0.02%ブロモフェノールブルー, 20%グリセリンおよび4% 2-メルカプトエタノール含有] に再懸濁し、95℃で90秒間煮沸した。抽出したタンパク質を文献記載の通りにウエスタン・ブロッティングにかけた(Wada, M. et al., Pancreas. 15:176-82, 1997)。すなわち、タンパク質の30μgアリコートをSDS-PAGE (12%ゲル)により単一次元にサイズ分画して、セミドライ式エレクトロブロット装置(Bio-Rad, Richmond, CA)を用いて0.45μmのポリビニリデンジフルオリド膜(Bio-Rad, Richmond, CA)上にトランスブロットした。次に、このブロットをTBSTバッファーで3回洗浄し、第1抗体溶液 [抗ホスホERK抗体(#pTEpY; Promega, Madison, WI)、抗ホスホp38MAPK抗体(#pTGpY; Promega, Madison, WI)または抗ホスホJNK抗体(#pTPpY; Promega, Madison, WI)および0.2% I-block (Promega, Madison, WI)を含有] 中で2時間、室温でインキュベートした。TBSTバッファーで3回洗浄後、ブロットを西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗ウサギIgG(TBSTバッファーを用いた1:2000希釈物)と共に1時間室温でインキュベートした。TBSTバッファーで3回洗浄後、高感度ケミルミネッセンス法試薬(Amersham Life Sciences, Amersham, UK)を用いて製造者のプロトコールにしたがって膜を処理した。この膜をX線フィルムに5-60秒間暴露した。ATTO濃度アナライザーシステムAE-6929M (ATTOコーポレーション、東京、日本)によりタンパク質発現を測定し、発現量を数字で表した。標的タンパク質の量をベータアクチンの量で割り算し、相対強度を得た。
(v) 細胞増殖アッセイ
増殖アッセイを行うために、AsPC-1およびPanc-1細胞を10% FBS培地中に播き(内径3 cmの培養皿あたり1x104個)、順次用量を増やしたメタスチンと共に48および98時間インキュベートした。細胞をトリプシン処理し、血球計数器で細胞数を数えた。
(vi) 細胞遊走およびマトリゲル浸潤アッセイ
ポリビニルピロリドン不含ポリカーボネートを枠にはめたフィルター(ポアサイズ:8μm)をマイクロケモタシス(microchemotasis)チェンバー(Corning Coster Corp., Cambridge, MA)に取り付けた。細胞(AsPC-1は200μlのRPMI1640中に、およびPanc-1は200μlのDMEM中に2x106個)およびペプチドを上室に添加し、37℃で12時間インキュベートして下室へ遊走させた。下室は、化学誘引物質としてAsPC-1に対しては10% FBS/RPMI1640を、Panc-1に対しては5% FBS/DMEMを含んでいた。膜の上面から非遊走細胞を綿棒で取り除いた後、膜の下面の細胞をDiff-Quick (国際試薬株式会社、神戸、日本)で固定、染色した。定量のため、顕微鏡下で、あらかじめ定めた5つの視野で倍率200Xで細胞を数えた。
細胞 (AsPC-1は200μlのRPMI1640中に、およびPanc-1は200μlのDMEM中に2x106個) およびペプチドをマトリゲルで被覆したTranswell (ポアサイズ:8μm; Becton Dickinson Laware, Bedford, MA)に加え、37℃で12時間インキュベートした。Transwellの下室は、AsPC-1に対しては10% FBS/RPMI1640を、Panc-1に対しては5% FBS/DMEMを含んでいた。膜の上面からマトリゲルおよび細胞を取り除いた後、膜の下面の細胞をDiff-Quickで固定、染色し、上記と同様に細胞数を測定した。浸潤インデックスは、遊走細胞数あたりの浸潤細胞数と定義した。
(vii) 統計学的分析
濃度または遊走活性におけるグループ間の比較統計学的評価は、まず最初に反復測定の二元配置分散分析(ANOVA)によって、次にTurkey-Kramer HDS分析を用いたポストホックテストによって実施した。膵臓組織中のmRNAレベルを比較するためには、ウイルコクソンの順位和検定を実施した。高および低KiSS-1またはhOT7T175レベルを有する30人の患者を対象に、カイ2乗検定(またはフィッシャーの直接確率検定)を用いて臨床病理学的特性を比較した。すべてのアッセイは3回独立して実施した。統計学的分析は、マッキントッシュ用JMP統計ソフトウエア(バージョン3.02)を用いて実施した。p <0.05で統計的に有意とみなした。
(viii)膵癌組織におけるKiSS-1およびhOT7T175発現
最初に、30個の浸潤性膵管癌組織サンプルおよび5個の近接正常膵組織サンプルにおけるKiSS-1およびその受容体hOT7T175のmRNAレベルをリアルタイムRT-PCRで調べた(図1)。5個の正常膵組織サンプル中5個で低レベルのメタスチンmRNAが検出されたが、膵管癌組織サンプルでは30個中14個がメタスチンを発現しているのみであった。膵癌組織は正常膵組織と比較してメタスチンmRNAの発現が低い傾向があった。対照的に、メタスチン受容体hOT7T175 mRNAの発現は、正常膵組織ではほとんど観察されなかったが、膵癌では30個のサンプル中30個で検出された。
統計学的には、膵癌組織は正常膵組織と比べてメタスチンの発現が少ない可能性が高く(p=0.0183)、また正常膵組織と比べてメタスチン受容体hOT7T175の発現が多い可能性が高い(p=0.0272)。5個のサンプル対において、近接正常膵組織サンプルと比較して全ての膵癌組織サンプルでhOT7T175は過剰発現された(データ省略)。メタスチンレベル、hOT7T175発現、および臨床病理学的因子(例えば、腫瘍サイズ、TNM状態、後腹膜浸潤または神経浸潤)の間には明らかな相関性は見出されなかった。
(ix)膵癌細胞系におけるメタスチンおよびその受容体の発現
6つの膵癌細胞系におけるメタスチンおよびその受容体hOT7T175のmRNA発現を上記のようにリアルタイムRT-PCRによって測定した(図2)。6つの膵癌細胞系のうち、AsPC-1およびSuit-2は低レベルのメタスチンを発現したが、他の4つの細胞系は発現しなかった。対照的に、全細胞系ともヒトメタスチンの受容体であるhOT7T175を発現し、Panc-1は最も強度に発現した。これらの結果に基づいて、AsPC-1細胞系をhOT7T175低発現の代表として、Panc-1細胞系をhOT7T175高発現の代表として選択し、これら2つの細胞系を以下の試験に用いた。
(x) 増殖、遊走および浸潤性に対する内因性メタスチン受容体の影響
上記の2つの細胞系を用いて、膵癌に対するメタスチンの増殖効果を検討した。組み換えメタスチンを指数増殖期にあるAsPC-1細胞およびPanc-1細胞に最終濃度0、100 nM、1 μMおよび10μMで48時間および96時間添加した。図3は、メタスチンとのインキュベーション下のAsPC-1細胞またはPanc-1細胞の細胞増殖曲線を示す。AsPC-1もPanc-1もメタスチンとのインキュベーションによる増殖遅滞を示さなかった。これは、メタスチンが膵癌細胞の増殖に何ら影響を及ぼさないことを示唆する。
次に、これらの細胞系における遊走活性および浸潤活性に対するメタスチンの影響を調べた。図4Aは、順次用量を増やしたメタスチン(0 nM、100 nM、1 μM、10μM)を12時間添加した場合のAsPC-1およびPanc-1の遊走スコアを示す。ミリリットルあたり2x106個の細胞を上室でメタスチンと共にインキュベートし、細胞を下室へ遊走させた。下室は化学誘引物質として10% FBS/培地を含有していた。メタスチンはPanc-1細胞の遊走活性を40%減少まで抑制したが(p<0.01)、AsPC-1の遊走活性は殆ど影響をうけないことが示された。Panc-1の遊走スコアは、メタスチンを1および10μM添加した場合にもAsPC-1に比べて有意に減少している(両方ともp<0.01)が、AsPC-1細胞の方は軽度な遊走減少が観察されただけであった。対照的に、両細胞系とも、遊走活性によって相殺した場合、メタスチンとのインキュベーションによる浸潤性の低下は何ら示さなかった(図4B)。図4bはメタスチンを12時間用いた、AsPC-1およびPanc-1細胞の浸潤アッセイを示す。細胞(2x106個/ml)およびペプチドをマトリゲルで被覆したTranswellに添加し、37℃で12時間インキュベートした。Transwellの下室は10% FBS/培地を含有していた。AsPC-1およびPanc-1の両細胞とも、10μMメタスチンの添加によって浸潤活性は何ら影響を受けなかった。
(xi) 内因性メタスチン受容体によるERK活性化
膵癌において内因性メタスチン受容体によって活性化されるシグナル経路を評価するため、メタスチンで処理することによってMAPKの活性化を調べた。遊走または浸潤アッセイの場合と同様に、指数増殖期にある細胞を血清含有培地中でインキュベートし、次にメタスチンを含む1% BSA培地に移した。順次用量を増やしたメタスチン(0 nM、0.1μM、1μM、10μM)と共に15分インキュベートした後、ERK1/2、p38およびJNK1/2の活性化をイムノブロットにより測定した(図5A)。ウエスタンブロット分析から、リン酸化ERK1 (pERK1)およびリン酸化ERK2 (pERK2)に対応するダブルバンド、リン酸化p38 (pp38)に対応するシングルバンド、ならびにリン酸化JNK1 (pJNK1)およびリン酸化JNK2 (pJNK2)を示すダブルバンドが同定された。AsPC-1およびPanc-1の両方において、添加したメタスチンの量が増えるにつれ、pERK1は増加した。Panc-1においてp38の軽度な活性化が観察されたが、AsPC-1では観察されなかった。メタスチン添加によるpJNK類の減少または増加は全く見られなかった。図5Bは、AsPC-1細胞およびPanc-1細胞におけるpERK1/2およびpp38の相対強度を示す。メタスチンは、AsPC-1およびPanc-1の両方においてERK1の活性化を増大させ、そしてp38を軽度に活性化させたが、これらの条件下ではPanc-1においてJNKを用量依存的に活性化することはなかった(図5B)。
(xii) KiSS-1由来ペプチドであるFMO53aおよびFMO52aは、hOT7T175発現癌細胞系の遊走を減少させた。
メタスチン-52ペプチドの2つのより短い変異体を上述のように合成し、それぞれFMO53aおよびFMO52aと名づけた(図6)。可能性のある二塩基開裂部位(RK/RR)および開裂/アミド化部位(GKR)を太字で示す。下線を付した文字部分は予測されるシグナルペプチドを示す。hOT7T175を強発現するPanc-1細胞に対するそれらの生物学的活性を調べた。図7Aは、2つのペプチド(すなわち、KiSS-1の短い誘導体であるFMO53aおよびFMO52a)とインキュベートしたPanc-1の増殖活性を示す。予想されたように、細胞増殖はこれら2つのペプチドによって影響されなかった。遊走活性アッセイにおいて、これら2つのペプチドはPanc-1細胞の遊走インデックスを低下させた。ただし、FMO53aは、メタスチンとほぼ同一の活性を有するFMO52aに比べて抑制が弱かった(図7B)。これら2つのペプチドのメタスチンとのシグナル伝達を比較するため、ERK1/2、p38およびJNKの活性化を上述のようにイムノブロットによって調べた。これら2つのペプチドならびにメタスチンの添加によって、Panc-1細胞においてERK1活性化が観察された。しかし、Panc-1細胞にFMO53aを添加した場合は、FMO52aの添加に比べてpERK1の活性化は少なかった。このことは上述の遊走抑制結果とよく一致していた。pp38は、上記2つの誘導体とインキュベートした後、軽度に活性化され、そしてpJNK類は増加しなかった(図7C)。ERK活性化率は、これらのペプチドの遊走抑制度とよく相関しているように思われた。
本発明のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグは、優れた癌転移抑制活性および癌増殖抑制活性を有し、癌(例えば、肺癌、胃癌、肝癌、膵癌、大腸癌、直腸癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、乳癌、腎臓癌、膀胱癌、脳腫瘍、等)の予防・治療用医薬として有用である。本発明のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグは、膵臓機能調節活性を有し、膵臓疾患(例えば、急性または慢性の膵炎、膵癌、等)の予防・治療用医薬として有用である。本発明のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグは、胎盤機能調節活性を有し、絨毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防・治療用医薬として有用である。
図1Aは、膵癌組織におけるメタスチンmRNAの発現を示す。 図1Bは、膵癌組織におけるhOT7T175 mRNAの発現を示す。 図2は、6つの膵癌細胞系におけるKiSS-1 mRNAおよびhOT7T175 mRNAの発現を示す。 図3は、膵癌細胞(AsPC-1およびPanc-1)増殖に対するメタスチンの影響を示す。バーは平均値±SDである。 図4Aは、図に示す濃度のメタスチンを12時間用いた、AsPC-1およびPanc-1細胞の遊走アッセイを示す。バーは平均値±SDである。* は、対照に対してp<0.01を表す。 図4Bは、メタスチンを12時間用いた、AsPC-1およびPanc-1細胞の浸潤アッセイを示す。バーは平均値±SDである。* は、対照に対してp<0.01を表す。 図5Aは、メタスチンで処理した後のAsPC-1細胞およびPanc-1細胞のMAPK活性化のウエスタンブロット分析を示す。 図5Bは、メタスチンで処理した後のAsPC-1細胞およびPanc-1細胞におけるpERK1/2およびpp38の相対強度を示す。結果は、3回の独立した実験の代表的なものである。バーは平均値±SDである。* は、AsPC-1に対してp<0.01を表す。 図5Aは、メタスチンで処理した後のAsPC-1細胞およびPanc-1細胞のMAPK活性化のウエスタンブロット分析を示す。 図5Bは、メタスチンで処理した後のAsPC-1細胞およびPanc-1細胞におけるpERK1/2およびpp38の相対強度を示す。結果は、3回の独立した実験の代表的なものである。バーは平均値±SDである。* は、AsPC-1に対してp<0.01を表す。 図6は、KiSS-1ペプチド(配列番号:2)およびその誘導体(記載の順番に、それぞれ配列番号:1、3および4)のペプチド配列を示す。 図7Aは、KiSS-1の短い誘導体を用いた、Panc-1の増殖アッセイを示す。 図7Bは、これらの誘導体を用いた、Panc-1の遊走アッセイを示す。バーは平均値±SDである。* は、対照に対してp<0.05を表す。 図7Cは、2つの誘導体を添加した場合のMAPK活性化を示す。 図7Aは、KiSS-1の短い誘導体を用いた、Panc-1の増殖アッセイを示す。 図7Bは、これらの誘導体を用いた、Panc-1の遊走アッセイを示す。バーは平均値±SDである。* は、対照に対してp<0.05を表す。 図7Cは、2つの誘導体を添加した場合のMAPK活性化を示す。 図7Aは、KiSS-1の短い誘導体を用いた、Panc-1の増殖アッセイを示す。 図7Bは、これらの誘導体を用いた、Panc-1の遊走アッセイを示す。バーは平均値±SDである。* は、対照に対してp<0.05を表す。 図7Cは、2つの誘導体を添加した場合のMAPK活性化を示す。
【配列表】

Claims (28)

  1. 式:
    [式中、Xは下記の式によって表される基であり:

    (ここでYは
    (i)
    (ii)
    (iii)
    (iv)
    または
    (v)
    によって表される基であり;
    R1、R2、R3およびR4はそれぞれ水素原子またはC1-6アルキル基より選択され;
    W1およびW2はそれぞれ水素原子、C1-6アルキル基、C6-14アリール基または複素環基より選択され;
    Rは下記の式によって表される基であり:


    nは0、1または2である。)
    AA1は天然または非天然の芳香族アミノ酸であり;
    AA2はGly、Ala、Proまたは Picであり;
    AA3は脂肪族アミノ酸であり;
    AA4は塩基性アミノ酸またはシトルリンであり;
    そしてZは:
    (i) 天然または非天然の芳香族アミノ酸、またはそのアミド、あるいはそのエステル;
    (ii)下記の式によって表される基:

    (ここでn1は0、1または2である。)
    (iii) 下記の式によって表される基:

    (ここでn2は0、1または2である。)
    または
    (iv) 下記の式によって表される基:

    (ここでn2は0、1または2である。)
    より選択される。]
    によって表されるメタスチン誘導体またはその塩。
  2. 4-[N,N-ビス(2-ピリジルメチル)アミノメチル]ベンゾイル-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FMO52a)(配列番号:4)、4-(グアニジノメチル) ベンゾイル-Phe-Gly-Leu-Arg-Trp-NH2 (FMO53a)(配列番号:3)またはそれらの塩より選択される、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)。
  3. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩のプロドラッグ。
  4. 製薬上許容される担体および治療上有効量の請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる医薬組成物。
  5. 癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  6. 癌の予防剤または治療剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  7. 膵臓の機能調節剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  8. 急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防剤または治療剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  9. 哺乳動物の胎盤機能調節剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  10. 繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防剤または治療剤である、請求項4に記載の医薬組成物。
  11. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌転移または癌増殖の抑制方法。
  12. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における癌の予防方法または治療方法。
  13. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における膵臓機能の調節方法。
  14. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防方法または治療方法。
  15. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における胎盤機能の調節方法。
  16. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの有効量を哺乳動物に投与することを含んでなる、哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防方法または治療方法。
  17. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤。
  18. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、癌の予防剤または治療剤。
  19. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の膵臓機能調節剤。
  20. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防剤または治療剤。
  21. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物の胎盤機能調節剤。
  22. 請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグを含んでなる、哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防剤または治療剤。
  23. 癌転移抑制剤または癌増殖抑制剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
  24. 癌増殖の予防剤または治療剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
  25. 哺乳動物の膵臓機能調節剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
  26. 哺乳動物の急性もしくは慢性の膵炎または膵癌の予防剤または治療剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
  27. 哺乳動物の胎盤機能調節剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
  28. 哺乳動物における繊毛癌、胞状奇胎、侵入奇胎、流産、胎児発育不全、糖代謝不全、脂質代謝不全または分娩誘発の予防剤または治療剤を製造するための、請求項1に記載のメタスチン誘導体(I)またはその塩あるいはそのプロドラッグの使用。
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