JP2006513986A - 成長ホルモンの結晶を製造するための方法 - Google Patents

成長ホルモンの結晶を製造するための方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2006513986A
JP2006513986A JP2004535333A JP2004535333A JP2006513986A JP 2006513986 A JP2006513986 A JP 2006513986A JP 2004535333 A JP2004535333 A JP 2004535333A JP 2004535333 A JP2004535333 A JP 2004535333A JP 2006513986 A JP2006513986 A JP 2006513986A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystals
functional derivative
propanol
concentration
solution
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2004535333A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006513986A5 (ja
Inventor
フランソン,ヨナス
モシャーラフ,ミトラ
レーティカリ,リーナ
ウオティラ,シニカ
ヴィスリ,カレヴィ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Pfizer Health AB
Original Assignee
Pfizer Health AB
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Pfizer Health AB filed Critical Pfizer Health AB
Publication of JP2006513986A publication Critical patent/JP2006513986A/ja
Publication of JP2006513986A5 publication Critical patent/JP2006513986A5/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/435Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • C07K14/575Hormones
    • C07K14/61Growth hormone [GH], i.e. somatotropin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • A61K38/16Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • A61K38/17Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from animals; from humans
    • A61K38/22Hormones
    • A61K38/27Growth hormone [GH], i.e. somatotropin
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P5/00Drugs for disorders of the endocrine system
    • A61P5/10Drugs for disorders of the endocrine system of the posterior pituitary hormones, e.g. oxytocin, ADH

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Endocrinology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Proteomics, Peptides & Aminoacids (AREA)
  • Gastroenterology & Hepatology (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • Diabetes (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Immunology (AREA)
  • Toxicology (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

以下のステップ:(a)2−プロパノールを包含する、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の水溶液の調製、(b)ステップ(a)で調製された溶液をインキュベーションしての、前記GHまたはその機能的誘導体の結晶化、および(c)ステップ(b)で形成された結晶の単離、を包含するGHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するため、1つの方法を提供する。GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための、結晶化剤としての2−プロパノールの新規使用もまた提供する。加えて、該方法により得ることのできる結晶、および該結晶を包含する医薬組成物を提供する。該結晶は薬剤として、このような薬剤の製造のため、およびヒトを含む哺乳類を治療する方法において有用である。

Description

本発明は成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶を製造するための新規方法に関する。本発明はまた、前記方法により得ることのできる成長ホルモンの結晶、およびこのような結晶を含有する組成物に関する。
発明の背景
成長ホルモンは一般に、ヒトを含む動物の成長ホルモン、例えばヒト成長ホルモン(hGH)、ウシ成長ホルモン(bGH)、魚類の成長ホルモンおよびブタ成長ホルモン(pGH)をいう。
hGHは191のアミノ酸の単鎖からなるタンパク質である。この分子は2つのジスルフィド架橋により架橋結合されており、モノマーの形は22kDaの分子量を有する。しかし下垂体のヒト成長ホルモンは均質ではない。例えば同一遺伝子から産生される、より小さな20kDaのhGH変異体もまた公知である。妊娠中に胎盤により発現される “塩基性hGH”変異体(hGH−V)は、別個の遺伝子の産生物であるもう1つの類似体である。22kDaのhGHと同様に、この変異体も191のアミノ酸からなるが、分子全体の様々な位置で13のアミノ酸残基が異なる。例えばBewley T A et al, Adv Enzymol 42: 73-166, 1975 およびFrankenne F et al, J Clin Endocrin and Metabol 66: 1171-80, 1988 を参照のこと。
組換えhGH(22kDa)はここ数年間に、市販により入手できるようになった。ヒトの組織から調製される産生物は感染性物質、例えばクロイツフェルトヤコブ病の原因となる物質を含有する可能性があるため、この組換え型の方が下垂体由来の産生物より好まれている。
治療上有用な組換えhGH調製剤が市販されている:認可されたものとして、例えばGenotropin(登録商標), Pharmacia およびN末端に付加的なメチオニン残基を有する類似体、例えばSomatonorm(登録商標)がある。
hGHは、下垂体機能低下性小人症またはターナー症候群の患者において、線形的な成長を刺激するために使用されるが、他の適用もまた示唆されている。
タンパク質の安定性は一般に医薬工業における1つの問題点である。様々な乾燥方法、例えば凍結乾燥でタンパク質を乾燥することにより、この問題はしばしば解決されてきた。このタンパク質はその後、乾燥した形で分配、貯蔵された。患者は必然的に、使用前に溶媒中にこの乾燥したタンパク質を溶かさなければならないが、このことは不利な点でありもちろん患者にとっては不便である。凍結乾燥の方法はコストおよび時間のかかる工程である。成長ホルモン、例えばhGHを毎日注射する必要のある患者にとって、そして特に患者が小児の場合、この製品が取り扱い、投与、および注射するのに容易であることは重要である。凍結乾燥したhGHを溶かすには、慎重さと注意深さを必要とするため、好ましくは避けるべきであろう。
成長ホルモンを製造するもう1つの方法は結晶化による。成長ホルモンの結晶は、様々な新規ホルモン製剤、例えば注射可能な懸濁液、様々なタイプのインプラントおよび局所製剤のために使用することができる。
GHの適切な結晶を得るための様々な試みが行われてきた。Jones et al, Bio /Technology 5: 499-500, 1987 は、ポリエチレングリコールおよびβ−グルコシドを含有する溶液からハンギング・ドロップ技術を用いて、組換えヒト成長ホルモンを結晶化した。
Borisova et al, Doklady Biochemistry 301/1-6: 207-210, 1988 は、hGHではなくヒトDes−Phen−ソマトトロピンを、付加物を含むアセトン中にてハンギング・ドロップ技術を用いて結晶化した。
Clarkson et al, J Mol Biol 208: 719-721, 1989 は、様々な結晶化の方法を報告している。これらの方法には、バッファー中にエタノール、メタノールまたはアセトンを用いたハンギング・ドロップ技術、およびパラアルデヒドを用いたバッチ式による技術を含む。
Novo Nordisk A/S のUS 5 780 599において、化学的に安定で生物学的に活性な成長ホルモンのカチオン結晶を生産する方法が開示されている。この方法は以下のステップ:GHの溶液にpH5および8の間で2価無機カチオンを添加、0℃−30℃の温度で結晶を成長させること、および結晶の単離、を包含する。得られる結晶は常に2価無機カチオンを含む。好ましい2価無機カチオンはZn2+である。好ましくは有機溶媒をカチオンと共に加える。実験は有機溶媒のアセトンおよびエタノールに関して行われているが、2−プロパノールもまた2価無機カチオンと合わせての適切な有機溶媒であることが、手短に提案されている。
Kabi Pharmacia ABのWO 94/10192において、GHの結晶を製造するための方法が開示されているが、この方法は芳香族アルコール、例えばベンジルアルコールの使用を伴う。
hGHを投与するより良い方法が市場で求められている。hGHの結晶は、バッファーを共に含み、保存剤を含む場合も含まない場合もある懸濁液または注射可能な水溶液にて使用することができる。これらはまたデポ製剤中に、例えば油性または水性の懸濁液として、またはインプラントとして使用し、それにより薬剤の徐放性を提供することができる。結晶が十分に大きい場合には粉末として使用し、例えば創傷部表面に塗布することができる。
このため工業的スケールでGHの結晶を得る新規で再現性のある方法が必要とされている。GHの結晶の生産のための新規で発明的な方法を、本特許出願において提示する。
発明の概要
成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶を製造するための新規方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
実施する上で丈夫で技術的にシンプルなこのような方法を提供することもまた、本発明の1つの目的である。
医薬的に受容可能な条件を使用するこのような方法を提供することが、本発明のもう1つの目的である。
高収率を有するこのような方法を提供することが、本発明の1つの目的である。
以下の記述から明らかになる様々な目的のため、本発明はその最も広範囲な側面において、以下のステップを包含する、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶を製造するための新規方法を提供する:すなわち(a)2−プロパノールを包含する、GHまたはその機能的誘導体の水溶液を調製し、(b)ステップ(a)で調製される溶液をインキュベーションして、前記GHまたはその機能的誘導体を結晶化させ、(c)ステップ(b)で形成された結晶を単離する。
本発明による特定の方法において、前記2−プロパノールは多くても25%v/vの濃度で存在する。好ましくは前記2−プロパノールは5−25%v/vの範囲、より好ましくは16−20%v/vの範囲、さらにより好ましくは18−20%v/vの範囲の濃度で存在する。
本発明による1つの方法において、ステップ(a)で調製される溶液はまた、リン酸ナトリウム/カリウム、クエン酸、リン酸ナトリウム/カリウムおよびクエン酸を組み合わせたもの、およびBisTris−HCl から選択されるバッファーを包含する。本発明によるより好ましい方法において、前記バッファーはリン酸ナトリウム/カリウムである。
バッファーは10mMより高い濃度で存在することが好ましい。バッファーは10mM−0.8M、好ましくは20mM−0.8M、より好ましくは20mM−0.1Mの濃度範囲で存在することが特に好ましい。
本発明による特定の方法において、ステップ(a)で調製される溶液は、約6.2より低いpHに調整する。本発明による好ましい方法において、ステップ(a)で調製される溶液は、pH5.5−6.2の範囲、好ましくは5.5−5.7の範囲に調整する。
本発明によるもう1つの方法において、ステップ(a)で調製される溶液はpH約7.0より高い値に、好ましくは7.0−9.0の範囲に調整する。
本発明による1つの方法において、前記GHまたはその機能的誘導体は、ステップ(a)で調製される溶液中に0.1mg/ml以上、好ましくは1mg/ml以上の濃度で存在する。本発明による好ましい方法において、GHまたはその機能的誘導体の前記濃度は0.1−20mg/mlの範囲、好ましくは1−20mg/ml、より好ましくは12−18mg/mlの範囲とする。
本発明による特定の方法において、前記GHはヒトGHである。
本発明による特定の方法において、ステップ(a)の前記溶液における2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比は、0.5未満であり、亜鉛イオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比は0.003未満である。
本発明による好ましい方法において、2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比は、0.2未満、好ましくは0.1未満、より好ましくは0.003未満である。
本発明による特定の方法において、ステップ(a)の前記溶液における2価無機カチオンの濃度は約0.3mMより低く、好ましくは約0.1mMより低い。本発明による好ましい方法において、ステップ(a)の前記溶液は2価無機カチオンを実質的に含まない。
本発明による1つの方法において、ステップ(a)の前記溶液における亜鉛イオンの濃度は約0.002mMより低い。本発明による好ましい方法において、ステップ(a)の前記溶液は亜鉛イオンを実質的に含まない。
さらに本発明は、GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための結晶化剤(crystallizing agent)としての、2−プロパノールの新規使用を提供する。
成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を包含する水溶液から、GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための、前記水溶液における2−プロパノールの使用を提供する。本発明による好ましい使用において前記溶液は、2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.5未満、および亜鉛イオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.003未満を有する。
本発明はまた、本発明による方法により得ることのできるGHまたはその機能的誘導体の結晶を提供する。
加えて本発明は、本発明による成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶の治療有効量、およびそれに関する適切な医薬担体を包含する医薬組成物を提供する。本発明による好ましい組成物において、前記組成物は注射用の懸濁液である。本発明によるもう1つの好ましい組成物において、前記組成物はデポ製剤である。本発明によるなおもう1つの好ましい組成物において、前記組成物は乾燥製剤である。
本発明は、薬剤として使用するための本発明による成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶を提供する。
本発明はまた、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を必要とする、ヒトを含む哺乳類の治療用薬剤を製造するための、本発明によるGHまたはその機能的誘導体の結晶の新規使用を提供する。
最後に本発明は、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を必要とするヒトを含む哺乳類を治療する方法を提供するが、その方法は、本発明によるGHまたはその機能的誘導体の結晶の治療有効量を、このような治療を必要とする前記哺乳類に投与することを包含するものとする。
発明の詳細な説明
本発明は全体として、2−プロパノールがGHまたはその機能的誘導体を溶液から結晶化するための特に適切な結晶化剤である、という発見に基づく。
“成長ホルモン”および“GH”という用語は、一般にヒト成長ホルモンを含む動物の成長ホルモンをいう。GHは天然の材料、または組換えの材料のいずれに由来してもよい。GHは組換えGH(rGH)であることが好ましい。GHの例として、ヒト成長ホルモン(hGH)、ウシ成長ホルモン(bGH)、サケ、マスおよびマグロ由来のGHを含む魚類の成長ホルモン、ブタ成長ホルモン(pGH)、ならびにヒツジ成長ホルモンを含む。GHはhGHであることが好ましい。
成長ホルモンの“機能的誘導体”という用語はこれにより、自然に発生するおよび操作された類似体または変異体の双方を含むことを意味する。自然に発生する類似体または変異体の例として同一遺伝子から産生される20kDaのhGH変異体を含み、そして妊娠中に胎盤により発現される “塩基性hGH”変異体(hGH−V)は、別個の遺伝子の産生物であるもう1つの類似体である。操作された類似体または変異体として、遺伝子工学および組換え技術により産生されたGH突然変異体、ならびに化学的にまたは酵素により修飾されたGHを含む。
“結晶化”という用語は、規則的、反復的な形での分子の凝集により結晶が形成される、分子の過飽和溶液中で起こる周知の現象をいう。分子のよりランダムな凝集が起こると、アモルファスの沈殿が得られる。具体的にはタンパク質、例えばGH、の結晶化は、GHの過飽和溶液、すなわちGHの濃度が飽和点を上回っている溶液中で起こる。この状態はいくつかの方法、例えば溶媒の温度を下げること、または溶媒に結晶化剤を添加することにより達成することができる。
一般的な用語においてタンパク質の結晶化は、精製の方法、タンパク質の均質性の確立、安定な貯蔵の方法として、およびX線結晶学によるタンパク質の3次元構造決定のための出発点として有用である。
タンパク質が大きなサイズであるため、大きな結晶を得ることが望ましい場合には特に、結晶はむしろゆっくり成長する傾向がある。
使用する特定の結晶化の方法は、溶媒および結晶化剤の性質、ならびに利用できるタンパク質の量を含むいくつかの因子により左右される。ほとんどの場合、最も適切な方法および特異的な条件は現在の理論的知識からは明らかではなく、実験的に確立、至適化しなければならない。
多量のタンパク質を利用できる場合、結晶化はバッチにより行うことができる。手短には適切な結晶化剤を所望のタンパク質の溶液に加え、それにより過飽和溶液を達成する。
結晶化はまた分、時間、日のオーダーの期間にわたり結晶化剤の濃度を増加することにより、溶媒条件のより漸次的変化を通して達成することもできる。この条件を達成する2つの基本的な方法は、透析に基づいたシステムおよび拡散に基づいたシステムによる。
透析に基づいたシステムでは、透析膜がタンパク質および結晶化剤の溶液を結晶化剤の溶液から分離するが、この場合結晶化剤の溶液は、タンパク質の溶液より高濃度の結晶化剤を有するものとする。透析を通じて、タンパク質溶液は過飽和になる。
拡散に基づいたシステム、例えば“ハンギング・ドロップ”法および“シッティング・ドロップ”法では、検討するタンパク質を含有するサンプルおよび貯蔵容器間での揮発性種の蒸気拡散を通して、タンパク質は過飽和の状態に至る。サンプル中および貯蔵容器間の蒸気圧が等しくなるまで、拡散は継続する。
“ハンギング・ドロップ”法では、典型的には5−30μlのタンパク質サンプルの液滴を、カバースライドグラス上に置く。液滴がぶら下がっているスライドグラスがチャンバーの天井部分を構成するように、貯蔵容器の試薬溶液を含有するチャンバーの一番上にスライドグラスを設置する。チャンバーを十分に密封する。試薬溶液は典型的には結晶化剤および非揮発性種、例えば塩およびバッファーを包含するが、液滴もまた非揮発性種の一部を含有することが非常に重要である。平衡に達するように、液滴およびチャンバー内の蒸気圧が等しくなるまで液滴から揮発性種が蒸発し、液滴中のタンパク質および非揮発性種の濃度の増加をもたらす。
典型的には少量、例えば1−30μl、のタンパク質溶液を、少量、例えば1−30μl、の試薬溶液と混合する、ただしこの試薬溶液は貯蔵容器の溶液と同一とする。液滴中の試薬の濃度がチャンバー内の濃度とほぼ等しくなると、平衡に達する。したがって液滴の最終的な容積は、液滴中の試薬溶液の最初の容積とほぼ等しい。
“シッティング・ドロップ”法の原理は、液滴がカバーグラスの代わりにドロップホルダー上に置かれることを除いて、“ハンギング・ドロップ”法と同じである。より多くの結晶が望ましい場合、この方法は“ハンギング・ドロップ”法より大きな容積を使用することができる。
イソプロピルアルコールとしても知られている2−プロパノールは無色の液体であり、水およびほとんどの有機液体と混和できる。2−プロパノールは医薬的に受容可能な溶媒である。この溶媒は揮発性であり、したがって簡単な乾燥法で生成物から除去することができる。最後に2−プロパノールは高価ではなく、ユーザーにもなじみがある。
“試薬”という用語は一般に、バッファー、塩および結晶化剤を含む、結晶化の方法において使用されるあらゆる化学種をいう。“結晶化剤”という用語は、結晶化を引き起こす特定の成分をいう。
本発明の態様は、以下のステップを包含する成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶を製造するための方法を提供する:すなわち
(a)2−プロパノールを包含する、GHまたはその機能的誘導体の水溶液を調製し、
(b)ステップ(a)で調製した溶液をインキュベーションして、前記GHまたはその機能的誘導体を結晶化させ、および
(c)ステップ(b)で形成された結晶を単離する。
ステップ(a)の調製は、バッチでの結晶化、透析に基づいた結晶化、拡散に基づいた結晶化、例えば“ハンギング・ドロップ”による結晶化および“シッティング・ドロップ”による結晶化、またはその他のいかなる適切な結晶化法を伴ってもよい。
したがってステップ(a)は、2-プロパノールを包含する溶液の適切な容積を、GHまたはその機能的誘導体の水溶液と混合することを単に伴ってもよい。得られる溶液はバッチによるの結晶の生成に使用することができる。透析または拡散に基づいた結晶化の方法を使用する場合、ステップ(a)は、2−プロパノールを包含する貯蔵容器の溶液の適切な容積を、GHまたはその機能的誘導体の水溶液に混合することを伴ってもよい。ステップ(a)はまた、例えばバッファーを含む、または他の適切な物質を該溶液に添加することによる、該溶液のpHの調整を伴ってもよい。
ステップ(b)のインキュベーションは、ステップ(a)で調製される過飽和溶液から結晶を形成させることを伴う。当業者に公知のいくつかの結晶化の方法がある。実験室スケールでは“ハンギング・ドロップ”法および“シッティング・ドロップ”法が通常好ましい。工業スケールでは、結晶を得るために溶液をインキュベーションする最も便利な方法は、単純に溶液を一定時間放置することである。所望によりインキュベーションには、温度を下げること、緩やかに撹拌すること、または他のルーチーンの製造法を包含してもよい。
例として本発明による方法は、窒素雰囲気下、プロペラで撹拌する容器中で行ってもよい。この方法を開始してから室温で12時間維持する。その後温度を次の12時間で6℃まで線形的に下げる。
ステップ(c)の単離は、ステップ(b)で調製した結晶をあらゆる適切な方法で集めることを伴う。この方法は当業者によく知られている。より多くの結晶を得るため、可能であれば残っている溶液をさらにインキュベーションしてもよい。溶液中に残っているGHはまた、再利用してさらなる結晶化のサイクルを行ってもよい。
本発明による方法により、GHまたはその機能的誘導体の結晶を得ることができる。これらに限定されるわけではないが、得られる結晶は棒状としてよいが、結晶サイズおよびより詳細な構造は多様である。収率、例えば結晶化したGH−対−全体のGHの比率は、典型的には70%以上、しばしば90−95%の高さとなる。
GHまたはその機能的誘導体の水溶液は、25%(v/v)より高濃度ではない2−プロパノールを包含するように調製することを意図するものとする。2−プロパノールの濃度は5−25%v/vの範囲内であることが好ましい。高収率および/または大きな結晶を達成するためには、2−プロパノールの濃度は15−20%または16−20%v/v、より好ましくは18−20%v/vの範囲内であることが好ましい。特に好ましい2−プロパノールの濃度は20%v/vである。
本発明の態様において、ステップ(a)のGHまたはその機能的誘導体の水溶液の調製は、前記溶液中にバッファーを含めることをさらに伴う。バッファーは一般に、医薬的に受容可能なバッファーから選択される。適切なバッファーの例は、リン酸ナトリウム/カリウム、クエン酸、リン酸ナトリウム/カリウムおよびクエン酸を組み合わせたもの、ならびにBisTris−HClである。本発明の好ましい態様においてバッファーはリン酸バッファーである。バッファーを含めることで、この過程を通しての溶液の適切なpHの維持が促進される。バッファーの濃度は、結晶化の方法を逆に妨げることなく適切な緩衝効果を提供するように選択する。典型的にはバッファーの濃度は10mM以上である。好ましい態様において、バッファーの濃度は10mMから0.8M、または20mMから0.8M、好ましくは20mMから0.1Mの範囲である。
本発明の方法のもう1つの態様において、GHまたはその機能的誘導体の水溶液は、得られるpHが約6.2より低い値に調整されるように調製する。一般に水/2−プロパノール溶液中のGHの溶解度はpH6.5で最大値を有する、ということができる。この値よりpHが低くなると、2−プロパノール存在下でのGHの溶解度は減少する。したがって好ましい態様においてGHまたはその機能的誘導体の水溶液は、得られるpHが5.5から6.2、好ましくは5.5から5.7の範囲内に調整されるように調製する。本発明による方法において6.5より十分に高いpHを使用してもよいこともまた意図するものとする。したがって好ましい態様において、GHまたはその機能的誘導体の水溶液は、得られるpHが7.0以上、例えば7.0−9.0の範囲に調整されるように調製する。
特に好ましい態様においてステップ(a)で調製される溶液は、0.01−0.7Mリン酸バッファー、例えば0.1Mリン酸バッファーにおいて、およそ5.6のpHに調製する。
本発明による方法の態様において、ステップ(b)のインキュベーションは室温またはそれより低い温度で行う。得られる結晶の質は15−20℃でより良質であるが、収率はより低温、例えば6℃位でより高い。実際には使用する温度は、これら2つの因子を折衷したものになる。温度はまた、実験を通して変化させてもよい。例として、この方法は一定時間 例えば12時間、より高温 例えば15-25℃で開始し、その後一定時間 例えば12時間かけて6℃まで線形的に温度を下げることができる。適切な総インキュベーション時間は12時間−96時間、好ましくは24−48時間である。
本発明の方法の態様において、ステップ(a)のGHまたはその機能的誘導体の水溶液の調製には、最初のGH濃度を0.1mg/ml以上、例えば0.1から20mg/mlの範囲とする溶液を調製することを伴う。典型的には最初のGH濃度は1mg/ml以上、例えば1から20mg/ml、より好ましくは12から18mg/mlとする。いずれかのGHの機能的誘導体の重量または溶解度が、ネイティブのGHの値とかなり異なる場合には、これらの値をそれに応じて容易に変更できることは、理解されるだろう。本発明による方法の好ましい態様において、GHは天然の材料、または好ましくは組換えの材料に由来するヒトGHである。
本発明による方法において、ステップ(a)の水溶液中のカチオンの存在が結晶の質を低下させる、または結晶の形成を妨げることさえあることが発見された。特にZn2+イオンは結晶の形成を妨げることに特に効果がある。この発見は、Zn2+イオンの存在がGH結晶形成に有益な効果を有するとする、US 5,780,599が教示していることと著しい対照をなす。
したがって本発明による方法の好ましい態様において、ステップ(a)の溶液における2価無機カチオンの濃度は0.3mMより低い、好ましくは0.1mM未満より低い。好ましい態様においてステップ(a)の溶液は2価無機カチオンを含まない。
2価無機カチオンを除外するという所望はまた、ステップ(a)の水溶液における2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比として表してもよい。好ましい態様において該モル比は、0.5未満、好ましくは0.2未満である。より好ましい態様において、該モル比は0.1未満、好ましくは0,003未満である。
上で考察したように、ステップ(a)の水溶液において亜鉛イオンの低濃度を維持することが特に望ましい。したがって本発明による方法の好ましい態様において、Zn2+の濃度はステップ(a)の溶液において0.002mMより低い。好ましい態様においてステップ(a)の溶液は2価亜鉛イオンを含まない。
Zn2+を除外するという所望はまた、ステップ(a)の水溶液におけるZn2+−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比として表してもよい。好ましい態様において該モル比は、0.003未満である。
亜鉛イオンおよび他の2価無機イオンに関する “含まない”という用語は、このようなイオンを意図的に添加しなかった状態、すなわちこれらのイオンの濃度が、通常の水において自然に発生するその濃度以下である状態をいう。
“モル比”という用語は2つの種間のモルの関係をいう。本発明において溶液中の2価無機カチオン、例えばZn2+、−対−GHのモル比は、GHの結晶が液相から析出する場合には変化(増加)するものとしてよいことは、理解されるだろう。
溶液中の2価無機カチオンの有効性をキレート剤、例えばEDTAおよびEGTAの使用により低減させてもよいことは知られている。これらの剤は2価無機カチオンと複合体を形成し、溶液中のカチオンの有効濃度を低下させることになる。さらにリン酸バッファーおよびクエン酸バッファーを含むある種のバッファーは、キレート特性を有する。したがって本発明においてキレート剤の使用を通して、水溶液中の2価無機カチオンの望ましくない高濃度の効果を低減させてもよいことを意図するものとする。したがって溶液中にキレート剤を組み合わせることで、Zn2+を含む2価無機カチオンが取り込まれると予測される。それでもやはりこれらの化合物を排除し、Zn2+を含む2価無機カチオンの使用を単純に回避、または制限することが好ましい。
明確にするため、請求項で特定する濃度およびモル比は、結晶化直前の水溶液の状態をいうことを強調すべきであろう。工業的製造に都合のよいバッチの結晶化において、結晶化させるタンパク質、および結晶化剤を含むあらゆる試薬の濃度およびモル比は、溶液の調製の結果として定まる。
しかし拡散に基づいたシステムにおいて、所望のタンパク質を含有して調製される溶液における対応する濃度および比率は、貯蔵容器の溶液との平衡の後で変化するものである。それにもかかわらず、あらゆる揮発性種は拡散し、液滴および貯蔵容器の溶液間で平衡に達するという周知の事実から、得られる濃度および比率は容易に予測することができる。したがって最終的な容積は非揮発性種により決定されることになる。実際にこのことは、結晶化直前の水溶液の濃度およびモル比は、液滴の組成およびスタート時の容積、ならびに貯蔵容器の溶液の組成を含む実験の設定に固有であることを意味する。同様に透析に基づいたシステムにおいて、結晶化直前の水溶液中の対応する濃度およびモル比は、実験の設定に固有である規定される。
結晶化が進行すると、溶解し得るGHの濃度は明らかに減少することになる。
本発明は上述の方法に限定されると考えるべきではない。もう1つの側面により本発明は、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を包含する水溶液から、GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための、前記水溶液における2−プロパノールの新規使用を提供する。
先に述べたように得られる結晶の特徴および収率は、2−プロパノールおよびGHまたはその機能的誘導体の濃度、バッファーおよび2価無機カチオン 特にZn2+の存在および濃度、pHならびに温度を含む、いくつかのパラメータによりさらに影響を受ける。特にステップ(a)の溶液は、2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.5未満、および亜鉛イオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.2未満を有することが好ましい。
あるいはステップ(a)の溶液中において、2価無機カチオンの濃度が約0.3mMより低く、亜鉛イオンの濃度が約0.002mMより低いことが好ましい。溶液が2価無機カチオン、特に亜鉛イオン、を実質的に含まないことが、特に好ましい。
本発明のさらなる態様は、本発明による方法で製造されるGHまたはその機能的誘導体の結晶を提供する。限定するわけではないが、得られる結晶は棒状としてよいが、結晶のサイズおよびより詳細な構造は多様である。該結晶は、ヒトを含む哺乳類の治療における薬剤として有用であるとしてよい。所望により該結晶は、GHまたはその機能的誘導体を必要とするヒトと含む哺乳類の治療用薬剤の製造のために有用であるとしてよい。
得られる結晶は医薬的目的に有用であることを意図するものとする。したがって本発明の態様は、本発明による成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶の治療有効量、およびそれに関する適切な医薬担体を包含する医薬組成物を提供する。該組成物は、局所、経鼻、経肺、経口、直腸から、および非経口の投与を含む、いくつかの公知の投与剤形のいずれに適していてもよい。これに限定することなく、該組成物は注射用懸濁液、デポ製剤、または使用前に再構成しなければならない、結晶を包含する乾燥製剤としてよい。
GHの組成物に関する適切な医薬担体は、当業者に周知である。
本発明のさらなる態様は、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を必要とする、ヒトを含む哺乳類を治療する方法を提供する。該方法は、該哺乳類へのGHまたはその機能的誘導体の結晶の治療有効量の投与を包含する。該投与は以下の経路:局所、経鼻、経肺、経口、直腸から、および非経口、のいずれを経てもよい。好ましい態様において投与は非経口的に行う。
本発明の態様において本方法は、望ましくない不純物を含有するGHの溶液からの、GHの精製に有用である。
先に述べたようにNovo Nordisk A/S のUS 5 780 599において、成長ホルモンのカチオン結晶を生成する方法が開示されている。この方法は以下のステップを包含する:すなわち、pH5および8の間でのGHの溶液への2価無機カチオンの添加、0℃−30℃の温度で結晶を成長させること、および結晶の単離。得られる結晶は常に2価無機カチオン、好ましくはZn2+を含む。0.27mM hGHおよび0.36mM Zn2+(Zn2+/hGHのモル比 約1.34)の溶液のインキュベーションがGHの結晶を提供すると記載されている。無機カチオン2+/GHのモル比が0.5未満ではないこと、またはZn2+/GHのモル比が0.2未満ではないことが、各々Zn2+または2価無機カチオンの適切な濃度を提供することを、さらに示唆している。
本発明による方法において、2−プロパノールをそれ自体で結晶化剤として使用する場合、2価無機カチオンの存在が事実上結晶の形成を妨げる、または製造されるあらゆる結晶の質を低下させることが発見された。以下の実施例6において、0.002M Zn2+([Zn2+]/[hGH]比 約0.003)ほどの少量でも、2−プロパノール存在下での結晶化を妨げることが発見された。以下の実施例7において、2−プロパノールを結晶化剤として使用する場合、2価無機カチオンFe2+(0.2−0.8mM)、Mg2+(4−10mM)、およびCa2+(1−3mM)の存在は、もし存在する場合には、形成される結晶の質を低下させることが発見された。したがって本発明による結晶化溶液におけるこれらのイオンの存在を排除、または制限することが望ましい。モル比は以下の通りであった:Fe2+/GH:0.18−0.73、Mg2+/GH:3.7−9.2、Ca2+/GH:0.92−2.8。
US 5 780 599の示唆された態様において、有機溶媒をカチオンと共に加えている。実験は有機溶媒のアセトンおよびエタノールに関して行われているが、2−プロパノールもまた2価無機カチオンと合わせての適切な有機溶媒であることが、手短に提案されている。
本発明による方法において、2−プロパノールはそれ自体で適切な結晶化剤であり、2価無機カチオン、特に亜鉛イオンの存在が、GHまたはその誘導体の得られる結晶の質を低下させることが、実験的に示されている。
したがってUS 5 780 599は、それ自体で適切な結晶化剤としての2−プロパノールの使用を教示してはいない。反対にUS 5 780 599は、結晶化剤として高濃度の亜鉛イオンの、所望によりある種の有機溶媒と合わせての使用を教示している。
本発明を実施例により以下にさらに説明することにする。実施例は本発明の範疇を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例
以下において、実施例1−7は結晶のスクリーニングの実験に関し、実施例8−15はストック結晶バッチの実験に関し、そして実施例16−23はGHの溶解度の実験に関する。
実施例1 hGHの調製
結晶スクリーニングに使用するすべてのhGHの材料は、水に対して透析した。得られたサンプルを0.45μmセルロースアセテートメンブレンを通して濾過し、存在し得る固体不純物を除去し、微生物の混入を防いだ。得られたhGH溶液を水で希釈し、所望のタンパク質濃度の溶液を作成した。
実施例2 2−プロパノール濃度およびpHの結晶スクリーニング
2−プロパノールを、ハンギング・ドロップ蒸気拡散技術を用いて、5%から30%(v/v)の範囲の濃度、および5.3から7.8の範囲のpH値でスクリーニングした。
手短には33mg/mlのGHを含有するサンプル 5μl、および20mM リン酸−Na−K、pH5.3、5.6、6.0、6.4、7.0、または7.8中に5、10、20または30%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、円形のシリコン処理したカバースライドグラス上にピペットで取り、混合した。このスライドグラスを24穴の組織培養ボックスの上に設置し、グリースで密封した。チャンバーは同じ試薬溶液(貯蔵容器の溶液と呼ぶ)を1ml含有した。平衡後、液滴中の試薬濃度はチャンバー内の濃度とほぼ等しい。したがって液滴の最終容積は、最初にピペットでとった試薬溶液の容積(5μl)とほぼ等しく、およそ20mM リン酸Na/K、33mg/ml GH、および5%から30%(v/v)2−プロパノールを含有する。
液滴は顕微鏡で頻繁に評価した。いくつかの興味深い対象は、顕微鏡に設置したOlympus デジタルカメラを用いて撮影した。結果を表1に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
インキュベーションの4日後アモルファスの沈殿または液層の分離が、pH5.3および5.6の液滴中に認められた。11日後、5−20% 2−プロパノールを含む液滴中に、アモルファスの沈殿に加えて結晶が観察された。結晶はほとんど非常に小さな針状であった。20%濃度のpH5.3では棒状も、そしてpH5.6では小さな針状に加えて非常に大きな棒状の結晶が認められた。20% 2−プロパノールおよびpH6.0の液滴は、11日後に数個の結晶しか含有していなかったが、アモルファスの沈殿は認められなかった。
実施例3 2−プロパノール濃度およびpHの結晶スクリーニング
2−プロパノールを、ハンギング・ドロップ蒸気拡散技術を用いて、14%から20%(v/v)の範囲の濃度、および5.6から7.0の範囲のpH値でさらにスクリーニングした。
手短には17mg/ml GHを含有するサンプル 5μl、および0.1M リン酸Na/K、pH5.6、6.0、または7.0中に14、16、18または20%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、実施例2に述べたように混合、処理した。結果を表2に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
インキュベーション12日後、18% 2−プロパノール、pH5.6の液滴中に短く太い棒状結晶が観察された。インキュベーション19日後には、16% 2−プロパノール、pH5.6の液滴中に短く太い棒状結晶が認められた。
実施例4 バッファー強度の結晶スクリーニング
リン酸塩を、2−プロパノールとの組み合わせでスクリーニングした。リン酸塩は0.4Mから0.7Mまでの4つの濃度、および7.0から8.2までの3つのpH値についてスクリーニングした。同じ条件を、15%および20%(v/v)2−プロパノールでスクリーニングした。最終的なタンパク質濃度は17mg/mlであった。
手短には17mg/ml GHを含有するサンプル 5μl、および0.4、0.5、0.6または0.7M リン酸−Na−K、pH7.0、7.8または8.2中に15または20%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、実施例2に述べたように混合、処理した。結果を表3に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
Figure 2006513986
2日でアモルファスの沈殿が、0.7Mリン酸塩、20% 2−プロパノール、pH7.8およびpH8.2の液滴中に認められた。インキュベーション5日後、針状結晶が15% 2−プロパノール、pH7.8またはpH8.2の液滴中に観察された。0.6Mリン酸塩、20% 2−プロパノール、pH7.8およびpH8.2の液滴は、液層の分離および非常に小さな針状結晶を含有していた。インキュベーション23日後、ほぼすべての液滴が結晶を含有していた。最も高濃度のリン酸塩の液滴は、液層の分離および非常に小さな針状結晶またはアモルファスの沈殿を含有していた。
実施例5 バッファー強度の結晶のスクリーニング
リン酸塩を、2−プロパノールとの組み合わせでスクリーニングした。リン酸塩は0.5Mから0.8Mまでの4つの濃度、および7.0から8.2までの3つのpH値でスクリーニングした。同じ条件を、10%(v/v)2−プロパノールを含む場合、および2-プロパノールを含まない場合についてスクリーニングした。最終的なタンパク質濃度は17mg/mlであった。
手短には17mg/ml GHを含有するサンプル 5μl、および0.5、0.6、0.7、または0.8Mリン酸−Na−K、pH7.0、7.8または8.2中に0または10%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、実施例2に述べたように混合、処理した。結果を表4に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
2−プロパノールを含む液滴のほとんどに針状結晶が得られた。2−プロパノールを含有しない液滴には、主としてアモルファスの沈殿、よくても非常に小さな針状結晶が形成されただけであった。pH8.2では2−プロパノールを含む液滴はまた、多くのアモルファス沈殿を含有していた。
実施例6 ZnCl の結晶スクリーニング
ZnClを、2−プロパノールとの組み合わせでスクリーニングした。ZnClは0.002mMから0.20mMまでの4つの濃度、および5.6から7.0までの3つのpH値でスクリーニングした。同じ条件を、10%および15%(v/v)2−プロパノールを含む場合についてスクリーニングした。20mM bis−Tris−HClバッファーを使用してpHをコントロールした。
手短には17mg/ml GHを含有するサンプル 5μl、および0.1M リン酸Na−K、pH5.6、6.0または7.0中に0.002、0.01、0.05または0.2mMZnCl、および10または15%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、実施例2に述べたように混合、処理した。結果を表5に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
Figure 2006513986
インキュベーション19日後、ほとんどの液滴はアモルファスの沈殿またはゲルを含有していた。結晶は得られなかった。
このように0.002mMから0.20Mの範囲の濃度でのZn2+イオンの存在は、検討した条件での結晶の形成を妨げる。したがって本発明による結晶化溶液におけるこれらのイオンの存在を排除または制限することが望ましい。注目すべきことにZn2+/GHのモル比は、0.003−0.26の範囲であった。
実施例7 2価金属イオンの結晶スクリーニング
3つの2価金属イオン、Fe2+、Mg2+、Ca2+を、pH値5.6および6.0でスクリーニングした。サンプルを、2−プロパノールを含まない場合、または18%(v/v)2−プロパノールを含む場合についてスクリーニングした。
手短には24mg/ml GHを含有するサンプル 5μl、および10mM bis−Tris−HCl、pH5.6もしくは6.0中に、0.2もしくは0.8mM Fe(II)SO、4.0もしくは10mM MgCl、または1.0もしくは3.0mM CaCl、および10もしくは15%(v/v)2−プロパノールを含有する試薬溶液 5μlを、実施例2に述べたように混合、処理した。結果を表6に示す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
結晶化剤として単独で使用した2価金属イオンは結晶を生成せず、液相の分離、ゲルまたはアモルファスの沈殿しか観察されなかった。2−プロパノールを共に使用すると棒状または針状結晶が得られたが、液滴のほとんどにはやはりアモルファスの沈殿が存在していた。インキュベーション41日までの後に結果に変化は認められなかった。
このように2価無機カチオンFe2+(0.2−0.8mM)、Mg2+(4−10mM)、およびCa2+(1−3mM)の存在は、もし存在する場合には形成される結晶の質を低下させる。したがって本発明による結晶化溶液中のこれらのイオンの存在を排除または制限することが望ましい。注目すべきことに該モル比は以下のようであった:Fe2+/GH:0.18−0.73、Mg2+/GH:3.7−9.2、Ca2+/GH:0.92−2.8。
実施例8 2−プロパノールを含む結晶のミニバッチの調製
2−プロパノールのシステムを、数ミリリットルのバッチにて検討した。2つの2−プロパノール濃度 16および18%(v/v)、ならびに2つのpH値 pH5.6およびpH5.8を使用した。タンパク質溶液およびストック結晶化媒質を、最終濃度を達成するように等しい比率で混合した。
全体として、小さなスケールのバッチの結晶化をシリンジ内で行った。結晶化は、マグネティクスターラーを入れた小さなビーカー内で試薬を混合することにより行った。次にこの混合液をシリンジ内に吸引し、混合液から空気の泡を除き、シリンジをキャップで密封した。シリンジを垂直方向の回転装置(16rpm)にセットした。この緩やかな方法の概念は、空気/液体の界面を最小とし、完全な混合を確実なものとし、沈降物の形成を妨げることである。
16% 2−プロパノール中での結晶化用に、ストックの結晶化媒質は以下の試薬:32%(v/v)2−プロパノールおよび0.2M リン酸塩、pH5.6または5.8、を含有するものとした。18% 2−プロパノール中での結晶化用には、ストックの結晶化媒質は以下の試薬:36%(v/v)2−プロパノールおよび0.2M リン酸塩、pH5.6または5.8、を含有するものとした。
水中(24.1mg/ml)で透析した1.5mlのhGHをピペットでマグネティクスターラーを入れた小さなビーカー中にとった。1.5mlの結晶化ストック試薬を、継続的に撹拌しながら滴下させて加えた。媒質を加えた後、溶液をシリンジ内に吸引し、室温にて垂直方向の回転装置にセットした。
溶解し得るタンパク質の含有量を翌日決定した。サンプルを観察し、そして形成されたあらゆる結晶を、顕微鏡下でより詳細に検討した。結果を表7に示す。
Figure 2006513986
16%(v/v)2−プロパノールおよびpH5.6のサンプルは、数時間以内に結晶化し始めた。結晶は両端が鋭くとがった太い棒状であった。すべてのサンプルは翌日には結晶を含有していた。16%(v/v)2−プロパノールのサンプル中の結晶のほとんどは、太い棒状であった。16%(v/v)2−プロパノールおよびpH5.8のサンプルもまた、細い棒状結晶およびいくつかのゲルの塊を含有していた。18% 2−プロパノールのサンプル中の結晶は主として、細い棒状または針状であった。いくつかの両端のとがった太い棒状結晶もまた観察された。結晶の収率は71%および94%の間で変化した。最大の収率は18% 2-プロパノール、pH5.6のサンプルで得られた。最も良質の結晶は、16% 2-プロパノール、pH5.6のサンプルで達成された。
2−プロパノールは両端の鋭くとがった棒状結晶を生成したが、結晶の太さは結晶化の条件にかなり依存するようである。この結果は、バッチの結晶化を2−プロパノール中で良い収率で行うことができることを示す。
実施例9 2−プロパノール中でのストック結晶バッチの調製
hGH溶液(23.7mg/ml)100mlを250ml丸底フラスコに注いだ。チューブマグネティックミキサー(PAM Solutions Ltd Oy)を作動させた。100mlのストック結晶化媒質(36% 2-プロパノール、0.2M リン酸塩、pH5.6)を〜20mlずつ加えた。試薬 40mlを加えた後、溶液は沈殿し始めた。残りのストック結晶化媒質を加えた後、沈殿物を顕微鏡で観察した。沈殿物は非常に小さな結晶またはゲルの塊からなっていた。
翌日、バッチは棒状結晶および結晶凝集塊を含有していた。ゲルの塊は数個のみが観察された。最終的な溶解し得るタンパク質濃度は1.1mg/mlで、結晶の収率は91%であった。結晶を沈降させ、透明な母液〜150mlを除去することにより、バッチを濃縮した。濃縮された結晶スラリーの総タンパク質濃度は40.3mg/mlであった。
実施例10 2−プロパノール中のストック結晶バッチの調製
hGH出発材料が26.3mg/mlの濃度であり、そして、蠕動ポンプを用いて1.5時間でストック結晶化媒質の添加を行ったことを除いて、ストック結晶バッチを実施例9に述べた方法で調製した。ストック結晶化媒質のおよそ3分の1を加えた時点で、バッチは沈殿し始めた。数時間後バッチを顕微鏡で観察し、ゲルの塊を含有していることを発見した。
翌日、バッチ中のゲルの塊の大半が細い棒状結晶に変化していた。対物グラス上のゲルの塊は、夜の間に非常に大きな棒状に変化していた。最終的に溶解し得るタンパク質濃度は0.74mg/mlで、結晶の収率は94%であった。結晶を沈降させ、透明母液 〜100mlを除去することにより、バッチを濃縮した。濃縮された結晶スラリーの総タンパク質濃度は23.3mg/mlであった。
実施例11 2−プロパノール中のストック結晶バッチの調製
結晶の収率を上げるため2-プロパノールの濃度を18%から20%に上げたことを除いて、実施例10に述べた方法でストック結晶バッチを調製した。
hGHの生の材料(31.2mg/ml)80mlを250ml丸底反応フラスコに注いだ。80mlのストック結晶化媒質(40% 2-プロパノール、0.2M リン酸塩、pH5.6)を数時間かけて蠕動ポンプで加えた。試薬の容量の3分の1を加えた後、溶液は沈殿し始めた。試薬を加えた後数時間で、結晶が顕微鏡で観察され、細い凝集塊の結晶およびいくつかのより大きな棒状結晶を含有することが発見された。翌日、結晶の量が増加していた。最終的な溶解し得るタンパク質濃度は1.3mg/ml、結晶の収率は92%であった。2日後、結晶のスラリーを沈降、および上清の除去により濃縮した。濃縮された結晶スラリーの総タンパク質濃度は55.6mg/mlであった。
実施例12 低温での2−プロパノール中のバッチの結晶化
2−プロパノール中のバッチの結晶化を、+2℃で調製した。hGHの材料 30mlを反応フラスコに注ぎ、等量のストック結晶化媒質(36% 2-プロパノール、0.2M リン酸塩、pH5.6)をゆっくり注ぎながら加えた。添加中にアモルファスまたはゲル様の沈殿が形成された。
バッチ内の沈殿は次の夜の間に結晶に変化することはなかった。バッチは、結晶の代わりに大きなゲルの粒子を含有していた。溶解し得るタンパク質濃度は0.54mg/mlであった。バッチのpHは6.2であると測定された。
実施例13 低温での2−プロパノール中のバッチの結晶化
2−プロパノール中のバッチの結晶化を、+8℃で調製した。hGHの材料 20mlを反応フラスコに注ぎ、等量のストック結晶化媒質(36% 2-プロパノール、0.2M リン酸塩、pH5.6)をゆっくり注ぎながら加えた。添加中にアモルファスまたはゲル様の沈殿物が形成された。
1日目の夜の後、沈殿はまだゲルのままであった。溶解し得るタンパク質濃度は1.8mg/mlであった。バッチに、実施例11のバッチからの結晶スラリー 200μlの種を加えた。2日目の夜の間に、沈殿は棒状結晶に変化した。バッチのpHは6.2であると測定された。溶解し得るタンパク質濃度は1.7mg/mlであった。
実施例14 低温での2−プロパノール中のバッチの結晶化
2−プロパノール中のバッチの結晶化を、+15℃で調製した。hGHの材料 20mlを反応フラスコに注ぎ、等量のストック結晶化媒質(36% 2-プロパノール、0.2M リン酸塩、pH5.6)をゆっくり注ぎながら加えた。添加中にアモルファスまたはゲル様の沈殿物が形成された。
1日目の夜の後、沈殿はまだゲルのままであった。溶解し得るタンパク質濃度は1.5mg/mlであった。バッチに、実施例11のバッチからの結晶スラリー 200μlの種を加えた。2日目の夜の間に、沈殿は細い針状結晶に変化した。バッチのpHは6.3であると測定された。溶解し得るタンパク質濃度は0.5mg/mlであった。
実施例15 低下した温度での結晶のインキュベーション
実施例14において、+15℃での2−プロパノール中で調製されたバッチは結晶を生成した。これらの結晶がより低い温度でその形状を変えるかどうかを調べるため、徐々に温度を下げ、顕微鏡で結晶を観察した。結晶は各温度について少なくとも一晩、インキュベーションした。
温度を低下している間、結晶の形状はそれほど変化しなかった。溶解し得るタンパク質濃度は、検討したすべての温度で非常に低いまま維持された。結果を表8に示す。
Figure 2006513986
2−イソプロパノール中での結晶化は、+8℃およびより高い温度でも成功した。冷蔵庫の温度で結晶を保存することができるはずである。相図(実施例23、図5−7)により、より低い温度でさえも結晶化を行うことができるはずである。この場合は2−プロパノール濃度、pH等のようなその他の条件の簡単な調整が必要となると思われる。
実施例16 溶解度の実験のための結晶懸濁液の調製:洗浄による方法
ストック結晶スラリーのアリコートを各実験条件用に洗浄した。実験は1.5mlエッペンドルフチューブ内で行った。結晶スラリー 800μlおよび試薬溶液 500μlをチューブ内で混合した。結晶を遠心し(8832 g、1分)、上清を捨てた。試薬溶液 750μlを加え、結晶をプラスティック棒で懸濁させた。遠心および上清の廃棄を繰り返した。最後に1500μlの試薬溶液を加え、結晶を懸濁させた。チューブをサーモスタット付きのチャンバー内に+20℃で維持した。サンプルは少なくとも3日間、平衡に達するまでインキュベーションした。
実施例17 溶解度の実験のための結晶懸濁液の調製:透析による方法
結晶を実験条件にて透析した。10mlの試薬溶液をピペットでガラス製のバイアルにとった。1mlの結晶懸濁液をピペットで透析チューブ(MWCO 6000−8000、0.32ml/cm)内にとった。透析チューブの一本の端は結んで閉じ、他方の端はバイアルと、バイアルのふたをするために使用するゴム栓の間に透析チューブを挟むことにより閉じた。バイアルはサーモスタット付きのチャンバー内で+20℃にてオービタルシェーカー上で緩やかに撹拌した。透析溶液は4時間後に新しい試薬溶液に取り替えた。サンプルは溶解度が平衡に達するまで、少なくとも3日間インキュベーションした。
温度実験用に、所望の化学的条件まで透析した結晶スラリーを、小さなガラス製のバイアルに分取しサーモスタット付きのチャンバー内で様々な温度で少なくとも2日間、インキュベーションした。
実施例18 溶解度の実験のための結晶懸濁液の調製:希釈による方法
濃縮されたストック結晶スラリーを適切な試薬で希釈し、実験の設定点の試薬条件を達成するようにした。サンプルは平衡に達するよう、少なくとも3日間インキュベーションした。
実施例19 hGH結晶の溶解度における2−プロパノールの濃度の効果
実施例16の洗浄による方法、または実施例17の透析による方法のいずれかを用いて、一連の溶解度の実験を0.1Mリン酸塩、5−30%(v/v)2−プロパノール、pH5.3−8.0を含有する試薬溶液中で、+20℃にて行った。GH結晶は、様々な試薬溶液中で溶解度が平衡に達するまで行い、得られた溶解し得るhGHの濃度を決定した。すべてのタンパク質のアッセイは、波長280nmで吸光度を測定することにより行った。吸光度の値は因子0,73で割ることにより、乾燥物質の値に変換した。
結果を表9に示し、図1および3にグラフで表す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
2−プロパノール濃度およびpHを組み合わせた効果は複雑であった。溶解度の最小値はすべてのpH値でおよそ20%(v/v)2−プロパノールで認められた。2−プロパノール濃度20%まで、2−プロパノール濃度の増加によりhGH結晶の溶解度は減少した。20%より高い2−プロパノール濃度で、溶解度は再び増加した。30%の2−プロパノール濃度では、溶解し得るタンパク質濃度は25%の2−プロパノールの値より低かったが、結晶はゲル細粒に変換しており、したがってこの溶解度は結晶の溶解度とは比較できない。これらの実験の設定点は図から除外した。
典型的には結晶化剤の濃度が増加すると、タンパク質の溶解度は減少する。しかし2−プロパノールにおいて、溶解度の最小値はおよそ20%で観察することができた。
実施例20 2−プロパノール中のhGHの溶解度におけるリン酸塩濃度の効果
実施例17の透析による方法を用いて、一連の溶解度の実験を0.4−0.7Mリン酸塩、10%または15%(v/v)2−プロパノール、pH5.3または7.8を含有する試薬溶液において、+20℃で行った。GH結晶は、様々な試薬溶液中で溶解度が平衡に達するまで行い、得られた溶解し得るhGH濃度を決定した。結果を表10に示し、図2にグラフで表す。
Figure 2006513986
hGH結晶の溶解度は、2−プロパノール中のリン酸塩の濃度の増加に伴って減少した。pH5.3では0.4Mおよび0.7Mリン酸塩中の溶解度間の変化は小さかった。10% 2−プロパノールのpH7.8で溶解度は顕著に減少した。実験後の観察の際、pH5.3の結晶は大きく十分な結晶形が成長していた。pH7.8の結晶は変化していた;これらはずっと小さく、結晶の一部とくっついて塊となるゲルが一部認められた。ゲルの形成が溶解度曲線の形に何らかの影響を与えていたと思われる。
実施例21 2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度におけるpHの効果
実施例19で得られたデータはまた、様々な2−プロパノール濃度(5−25%)でのhGH結晶の溶解度におけるpH(5.3−8.0)の効果としてグラフで表してもよい。この結果を図3(表9および図1参照)に示す。
hGH結晶の溶解度におけるpHの効果は通常とはむしろ異なっていた。pH6.5で最大値に達するまで、pH値の増加に伴って溶解度は急激に増加した。最大の溶解度の範囲は、すべてのプロパノール濃度においてほぼpH6.5であった。pH値7.0および8.0では、溶解度は再びずっと低くなったが、溶解度はまだ十分に高く、直ちに問題にするほどではなかった。結晶は高いpH値でもその形を変えることはなかった。
pHの全体としての効果は、pHが高くなるとすべての2−プロパノール濃度で溶解度もまた増加する、ということであった。低いpH値では、低い溶解度の範囲がより広くなり、10%の2−プロパノール濃度でさえも、溶解度は低かった。
実施例22 2−プロパノールと組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度におけるpHの効果
実施例17の透析による方法を用いて、一連の溶解度の実験を0.4または0.7Mリン酸塩、15%(v/v)2−プロパノール、pH5.3−7.0を含有する試薬溶液中で、+20℃にて行った。GH結晶は、様々な試薬溶液中で溶解度が平衡に達するまで行い、得られた溶解し得るhGH濃度を決定した。結果を表11に示し、図4にグラフで表す。
Figure 2006513986
15% 2−プロパノール中の0.4Mおよび0.7Mリン酸塩中のhGHの結晶の溶解度は、pH6.2で最大値に達するまで、pHの増加に伴って増加した(図4)。最大値の後、溶解度は再び減少した。0.1Mリン酸塩では、最大値は多少より高いpH値であるpH6.5で得られた。この種のタンパク質溶解度曲線は一般的ではない。
実施例23 2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度における温度の効果
実施例17の透析による方法を用いて、一連の溶解度の実験を0.1Mリン酸塩、10%または20%(v/v)2−プロパノール、pH5.3または5.7を含有する試薬溶液において、2−30℃の範囲の様々な温度で行った。GH結晶は、様々な試薬溶液中で溶解度が平衡に達するまで行い、得られた溶解し得るhGH濃度を決定した。結果を表12に示し、図5にグラフで表す。
Figure 2006513986
2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度は、温度の上昇に伴って増加した。pH5.7では、温度の効果はpH5.3の場合より強く表れた。
実施例24 2−プロパノールと組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度における温度の効果
実施例17の透析による方法を用いて、一連の溶解度の実験を0.4または0.8Mリン酸塩、10%または20%(v/v)2−プロパノール、pH5.7を含有する試薬溶液において、2−30℃の範囲の様々な温度で行った。GH結晶は、様々な試薬溶液中で溶解度が平衡に達するまで行い、得られた溶解し得るhGH濃度を決定した。結果を表13に示し、図6(10% 2−プロパノール)および図7(20% 2−プロパノール)にグラフで表す。
Figure 2006513986
Figure 2006513986
2−プロパノールを組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度は、温度の上昇に伴って増加した(図6および7)。様々なリン酸塩の濃度間の溶解度の差異は、20% 2−プロパノールにおけるよりも10% 2−プロパノールにおける方が、より大きかった。0.4および0.8Mリン酸塩濃度の20%(v/v)2−プロパノール中では、最も高い温度で結晶はゲルに変換した。ゲルの溶解度は結晶の溶解度とは比較できないため、これらの結果は図から除外した。
図1は、hGH結晶の溶解度についての2−プロパノール濃度の効果を示す図である。 図2は、2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度についてのリン酸塩濃度の効果を示す図である。 図3は、2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度についてのpHの効果を示す図である。 図4は、2−プロパノールと組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度についてのpHの効果を示す図である。 図5は、2−プロパノール中のhGH結晶の溶解度についての温度の効果を示す図である。 図6は、10%(v/v)2−プロパノールと組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度についての温度の効果を示す図である。 図7は、20%(v/v)2−プロパノールと組み合わせてのリン酸塩中のhGH結晶の溶解度についての温度の効果を示す図である。

Claims (37)

  1. 以下のステップ:
    (a)2−プロパノールを包含する、成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の水溶液であって、2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比が0.5未満であり、亜鉛イオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比が0.003未満であるような、前記溶液を調製し、
    (b)ステップ(a)で調製した溶液をインキュベーションして、前記GHまたはその機能的誘導体を結晶化させ、および
    (c)ステップ(b)で形成された結晶を単離する、
    ことを包含する、GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造する方法。
  2. 前記2−プロパノールが、多くても25%v/vの濃度で存在する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記2−プロパノールが、5−25%v/vの範囲の濃度で存在する、請求項2に記載の方法。
  4. 前記2−プロパノールが、16−20%v/vの範囲の濃度で存在する、請求項3に記載の方法。
  5. 前記2−プロパノールが、18−20%v/vの範囲の濃度で存在する、請求項4に記載の方法。
  6. ステップ(a)で調製される溶液がまた、リン酸ナトリウム/カリウム、クエン酸、リン酸ナトリウム/カリウムおよびクエン酸を組み合わせたもの、ならびにBisTris−HCl から選択されるバッファーを包含する、請求項1−5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記バッファーがリン酸ナトリウム/カリウムである、請求項6に記載の方法。
  8. 前記バッファーが10mMより高い濃度で存在する、請求項6または7に記載の方法。
  9. 前記バッファーが20mM−0.8Mの濃度範囲で存在する、請求項8に記載の方法。
  10. 前記バッファーが20mM−0.1Mの濃度範囲で存在する、請求項9に記載の方法。
  11. ステップ(a)で調製される溶液を約6.2より低いpHに調整する、請求項1−10のいずれか1項に記載の方法。
  12. ステップ(a)で調製される溶液を5.5−6.2の範囲のpHに調整する、請求項11に記載の方法。
  13. ステップ(a)で調製される溶液を5.5−5.7の範囲のpHに調整する、請求項12に記載の方法。
  14. ステップ(a)で調製される溶液を約7.0より高いpHに調整する、請求項1−10のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記GHまたはその機能的誘導体が、ステップ(a)で調製される溶液中で0.1mg/ml以上の濃度で存在する、請求項1−14のいずれか1項に記載の方法。
  16. GHまたはその機能的誘導体の前記濃度が1mg/ml以上である、請求項15に記載の方法。
  17. GHまたはその機能的誘導体の前記濃度が1−20mg/mlの範囲である、請求項16に記載の方法。
  18. GHまたはその機能的誘導体の前記濃度が12−18mg/mlの範囲である、請求項17に記載の方法。
  19. 前記GHがヒトGHである、請求項1−18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体の前記モル比が0.2未満である、請求項1−19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体の前記モル比が0.1未満である、請求項20に記載の方法。
  22. 2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体の前記モル比が0.003未満である、請求項21に記載の方法。
  23. ステップ(a)の前記溶液において、2価無機カチオンの濃度が約0.3mMより低い、請求項1−22のいずれか1項に記載の方法。
  24. ステップ(a)の前記溶液において、2価無機カチオンの濃度が約0.1mMより低い、請求項23項に記載の方法。
  25. ステップ(a)の前記溶液が実質的に2価無機カチオンを含まない、請求項24に記載の方法。
  26. ステップ(a)の前記溶液において、亜鉛イオンの濃度が約0.002mMより低い、請求項1−25のいずれか1項に記載の方法。
  27. ステップ(a)の前記溶液が実質的に亜鉛イオンを含まない、請求項26に記載の方法。
  28. GHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための結晶化剤としての、2−プロパノールの使用。
  29. 成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を包含する水溶液からGHまたはその機能的誘導体の結晶を製造するための、前記水溶液における2−プロパノールの使用であって、前記溶液は2価無機カチオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.5未満、および亜鉛イオン−対−GHまたはその機能的誘導体のモル比 0.003未満を有するものとする、前記使用。
  30. 請求項1−27のいずれか1項に記載の方法により得ることのできる、GHまたはその機能的誘導体の結晶。
  31. 請求項30に記載の成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶の治療有効量、およびそれに関する適切な医薬担体を包含する医薬組成物。
  32. 前記組成物が注射用の懸濁液である、請求項31に記載の医薬組成物。
  33. 前記組成物がデポ製剤である、請求項31に記載の医薬組成物。
  34. 前記組成物が乾燥製剤である、請求項31に記載の医薬組成物。
  35. 薬剤として使用するための、請求項30に記載の成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体の結晶。
  36. 成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を必要とする、ヒトを含む哺乳類の治療用薬剤の製造のための、請求項30に記載のGHまたはその機能的誘導体の結晶の使用。
  37. 成長ホルモン(GH)またはその機能的誘導体を必要とするヒトを含む哺乳類を治療する方法であって、請求項30に記載のGHまたはその機能的誘導体の結晶の治療有効量を、このような治療を必要とする前記哺乳類に投与することを包含する前記方法。
JP2004535333A 2002-09-13 2003-09-12 成長ホルモンの結晶を製造するための方法 Withdrawn JP2006513986A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
SE0202719A SE0202719D0 (sv) 2002-09-13 2002-09-13 Process for mfg crystals of growth hormone
PCT/SE2003/001422 WO2004024753A1 (en) 2002-09-13 2003-09-12 Process for manufacturing crystals of growth hormone

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006513986A true JP2006513986A (ja) 2006-04-27
JP2006513986A5 JP2006513986A5 (ja) 2006-06-15

Family

ID=20288983

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004535333A Withdrawn JP2006513986A (ja) 2002-09-13 2003-09-12 成長ホルモンの結晶を製造するための方法

Country Status (8)

Country Link
EP (1) EP1539797A1 (ja)
JP (1) JP2006513986A (ja)
AU (1) AU2003259002A1 (ja)
BR (1) BR0314187A (ja)
CA (1) CA2498525A1 (ja)
MX (1) MXPA05002826A (ja)
SE (1) SE0202719D0 (ja)
WO (1) WO2004024753A1 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010520475A (ja) * 2007-03-05 2010-06-10 ロディア オペレーションズ 物質の結晶化を追跡する方法と対応する微小流体装置およびスクリーニング方法

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB201409451D0 (en) 2014-05-28 2014-07-09 Ipabc Ltd Antimicrobial preparations, methods for preparing the same and uses thereof to combat microorganisms

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5130298A (en) * 1989-05-16 1992-07-14 Ethicon, Inc. Stabilized compositions containing epidermal growth factor
US5109117A (en) * 1990-06-26 1992-04-28 Monsanto Company Method of somatotropin naturation using urea and a soluble organic alcohol
DK168790D0 (ja) * 1990-07-13 1990-07-13 Novo Nordisk As
US5849704A (en) * 1991-12-20 1998-12-15 Novo Nordisk A/S Pharmaceutical formulation
SE9302278D0 (sv) * 1992-10-28 1993-07-02 Kabi Pharmacia Ab Growth hormone
JP3723857B2 (ja) * 1998-02-04 2005-12-07 日本ケミカルリサーチ株式会社 ヒト成長ホルモン含有水性医薬組成物

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010520475A (ja) * 2007-03-05 2010-06-10 ロディア オペレーションズ 物質の結晶化を追跡する方法と対応する微小流体装置およびスクリーニング方法

Also Published As

Publication number Publication date
CA2498525A1 (en) 2004-03-25
MXPA05002826A (es) 2005-09-30
WO2004024753A1 (en) 2004-03-25
BR0314187A (pt) 2005-08-09
AU2003259002A1 (en) 2004-04-30
EP1539797A1 (en) 2005-06-15
SE0202719D0 (sv) 2002-09-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100266502B1 (ko) 성장호르몬과히스티딘으로이루어지는안정화된약학제제
US6117984A (en) Growth hormone crystals and a process for production of these GH-crystals
RU2156257C2 (ru) Способ получения стабильного кристаллического аналога цинк-инсулина
FR2619567A1 (fr) Cristaux de serum-albumine humaine et procede pour leur preparation
SE509295C2 (sv) Insulinanalog-protamin-komplex
JPH11502856A (ja) 単量体インスリン類似体製剤
CN104892749B (zh) 一种德谷胰岛素结晶的制备方法及应用
JP2001524090A (ja) ペプチド、タンパク質および核酸を投与するための安定製剤形態
US7713351B2 (en) Method for crystallization of proteins using polysaccharides
AU679012B2 (en) Process for manufacturing crystals of growth hormone and crystals thereby obtained
JPH08225597A (ja) 安定なインシュリンアナログ結晶の製造
JP2006513986A (ja) 成長ホルモンの結晶を製造するための方法
KR20210143253A (ko) 안정한 펩티드 제제의 제조 방법
US20220289811A1 (en) A formulation of insulin based on crystal-seeding in hydrogels and method thereof
US6894023B1 (en) Growth hormone crystals and a process for production of these GH-crystals
Cienfuegos Rodríguez et al. Pharmaceutically active protein crystals grown in-situ within a hydrogel
Álvarez Cienfuegos Rodríguez Insulin crystals grown in short peptide supramolecular hydrogels show enhanced thermal stability and slower release profile.
RU2261108C2 (ru) Способ получения комбинированного препарата инсулина человека
EA045889B1 (ru) Способ получения стабильных пептидных составов
JPH02209895A (ja) 結晶性ヒト顆粒球コロニー刺激因子及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060420

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060420

A761 Written withdrawal of application

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A761

Effective date: 20080121