JP2006512054A - 腸のコレステロール結合タンパク質の単離方法 - Google Patents

腸のコレステロール結合タンパク質の単離方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、コレステロールおよび/またはコレステロール再摂取阻害剤に結合することができる腸タンパク質を単離する方法を説明する。

Description

本発明は、腸のコレステロール吸収に関与する腸タンパク質の単離方法、およびコレステロール吸収阻害剤に結合する能力に関する。
ヒトにおいて、平均してコレステロールの約50%は、腸の管腔に存在する。管腔内コレステロールは、主に食餌および胆汁に由来する。1日に約2gのコレステロールが胆汁から放出される。腸のコレステロール吸収は、胆汁酸塩の存在に大きく依存する。したがって、胆汁酸塩の再摂取阻害剤または胆汁酸塩封鎖剤の投与は、腸のコレステロール吸収の阻害をもたらす。
腸のコレステロール吸収の阻害は、脂質障害、動脈硬化および心血管疾患の治療の重要な目標である。専門家の間の多数の意見では、腸のコレステロール吸収は物理化学的な拡散によって行われるとされている。
コレステロール輸送に関し、タンパク質が関与していることを示す多数の所見が知られている。腸のコレステロール吸収は、個体間で大きな多様性が生じる。インビトロ実験からの生化学データは、タンパク質が、腸の小単層小胞と刷子縁小胞間のコレステロール交換に関係していることを示す。メチル基(β−シトステロール)とエチル基(カンペステロール)が異なるだけである、β−シトステロールとカンペステロールのような植物ステロールの腸の吸収において、大きな差を観察することできた。ヒトにおいて、β−シトステロールはとりわけコレステロール吸収の阻害を示した。内腔投与により腸のコレステロール吸収を阻害する、高度に活性な2種のクラスの化合物群が存在する。この化合物群は、1種はサポニンに由来する化合物、例えばチケシドおよびパマケシドであり、もう1種は2−アゼチジノンの特定の誘導体である。コレステロール吸収の阻害剤としての2−アゼチジノンの誘導体はCladerら, J. Med. Chem. 39, 3684-3693, 1996に記載されている。本発明の目的に関し、吸収とは、物質のタンパク質への付着、およびこのタンパク質の助けによるこの物質の輸送を意味することを意図する。
腸のコレステロール吸収は、血清コレステロールホメオスタシスに有意に関与する。エゼチミブまたはパマケシドのような腸のコレステロール吸収の阻害剤は、臨床試験において、新規のコレステロール低下剤としてのその有効性を証明した。それらの分子の作用様式および腸のコレステロール吸収機構は、多大な科学的努力にもかかわらず、今もなお分かっておらず、論争中である。一般に、コレステロールは原形質膜および腸の刷子縁細胞膜を超えて受動拡散すると考えられているが、腸のコレステロール吸収のためのタンパク質仲介過程の証拠が増えており:コレステロール吸収は、強力な種差を示し、比較可能な物理化学特性を有する構造的に近縁のβ−シトステロールまたはカンペステロールのような植物ステロールは、コレステロールとは対照的にわずかにしか吸収されない。これにより、単純拡散過程ではないと考えられる。意味深い構造活性的関係を有する、コレステロールの特異的輸送阻害剤である2−アゼチジノンおよびステロールグリコシドの存在は、腸のコレステロール吸収のためのタンパク質仲介過程を強く示唆する。
コレステロールは、人体の機能に(少量で)不可欠な多用途の化合物である。動物のみがこれを製造し;ラードのような動物由来の生産物が処理中に添加されない限り、いずれの植物生産物もコレステロールを含まない。ヒトにおいて、コレステロールは3つの主機能を果たす。コレステロールは、ステロイドまたはコルチゾン様ホルモン、例えば性ホルモンを製造する特定の腺によって用いられる。コレステロールは、肝臓が脂肪の消化にと
って必須である胆汁酸を製造するのを助ける。最後になったが特に重要なことに、コレステロールは、細胞膜および細胞構造の主成分であり、体組織の基礎的要素の一種である。コレステロールなしでは、哺乳動物の生命は存続しない。
コレステロールに関する問題は、体が多すぎるコレステロールを有するか、またはふさわしくない場所にコレステロールの沈着がある場合に生じる。コレステロールが、心臓自身の筋組織への酸素の主要な供給者である、心臓の冠状動脈の内壁に沈着する場合、冠状動脈性心疾患が生じる。ここで、脂肪性の強固な、プラークと呼ばれる閉塞の形成にコレステロールが関与する。このプラークの蓄積には、動脈硬化、動脈の硬化および動脈硬化と様々な呼び方がある。コレステロールはまた、体内の他の場所の動脈内にも沈着し得、ここで卒中(脳内の閉塞した動脈から)および末梢血管疾患(脚の動脈の閉塞から)の発生に関与し得る。
全身にわたって移動するために、コレステロールはリポタンパク質と呼ばれる特別な分子で包まれなければならない。脂質、即ち脂肪コレステロール成分は、水溶性タンパク質の皮膜中に包まれる。異なる種類のリポタンパク質は、体内の動態的経済から異なるリポタンパク質、即ちある組織へコレステロールを輸送するもの、および他の組織からコレステロールを除去するもの、を含む。体内の主要なコレステロール運搬化合物は、低密度リポタンパク質即ちLDL−コレステロールである。LDLは、動脈内のコレステロールの沈着において重要な役割を果たしているようであるため、しばしば「悪玉コレステロール」と呼ばれる。LDLは非常に小さなタンパク質(分子中で最も密度の高い内容物)を有し、主に脂肪から成るため低密度と呼ばれる。高レベルのLDLは、冠状動脈性心疾患の危険性の増加と関連している。高密度リポタンパク質、即ちHDLは、コレステロールを動脈壁から取り除いて、それを肝臓に輸送して排出するのを助けるようであるため、しばしば「善玉コレステロール」と呼ばれる。LDLコレステロールとは対照的に、高レベルのHDLは冠状動脈性心疾患を防ぐようであるのに対して、低レベルのHDLは該疾患の危険性の増加と関係している。
コレステロール粒子の他の亜類型としては、脂肪が消化されるときに腸の細胞によって製造されるキロミクロン、およびLDLコレステロール製造の重要な前駆体として肝臓により製造される超低密度リポタンパク質(VLDL)がある。VLDLは、肝臓により製造されるトリグリセリドを輸送する主要リポタンパク質である。
心疾患の危険性を測定するためには、LDLおよびHDLが鍵となる。
高脂肪、高コレステロールの食餌が高レベルの血中コレステロールの一因である証拠、および高い血液コレステロールが心疾患の明確な危険因子であるという証拠の全て考えると、食餌または他の手段で血液コレステロールを低下させることによって、その危険性が減少すると考えるのは当然であるように思える。
本発明の目的は、腸のコレステロール吸収に関与し、コレステロール吸収阻害剤のための分子タンパク質標的となるタンパク質を単離する方法を提供することである。このような方法は、高コレステロールレベルを制御する治療的試みにとって、大きな利点を提供すると考えられる。
本発明は、タンパク質を単離する方法に関し、ここで、
a] 生物材料を用意し、
b] a]の生物材料を、放射標識された、前記タンパク質に特異的に結合することができる光反応性2−アゼチジノン化合物と共にインキュベートし、
c] 該生物材料を可溶化し、細胞破片を除去し、
d] 上清を、小麦胚芽レクチンアガロースを保持するデバイス上に加え、
e] d]の小麦胚芽レクチンアガロースからの溶離液を、ヒドロキシルアパタイトカラムに施し、これをリン酸緩衝液勾配によって溶離させて、
f] e]の放射標識画分を、分取SDS−PAGE上にロードし、
g] 該放射標識画分を回収し、また可能ならば沈殿させる。
生物材料は、好ましくは、ヒト、ラット、マウスまたはウサギの、腸の細胞培養または理想刷子縁細胞の、腸組織または腸細胞から得られる。
光反応性2−アゼチジノン化合物は好ましくは、次の構造(Kramer, W.ら(2000)FEBS
Letters 487, 293-297)を有する:
式I
Figure 2006512054
式中、Rは次の基a)〜e)の1つから選択される:
Figure 2006512054
式Iのa、bおよびcの化合物の合成は、2002年3月28日に発行されたDE 10042447 A1において開示されている。式Iのdおよびeの化合物の合成は、以下の実施例に記載される。
分子中の光分解性基は、直接的周辺に存在する分子、好ましくはタンパク質への共有結合をつくるために使用することができる。このために、光分解性基を有する化合物を、まず最初に、共有結合がつくられることになる分子の直接的周辺にもたらす。これは例えば、その化合物中の、タンパク質の特異的阻害剤、好ましくはコレステロール吸収阻害剤として作用する部分とは別の部分を介して行うことができる。該化合物を該分子と接触させて、次いでUV光で照射する。UV光の照射によって、光分解性基が活性化され、相互作用する分子、特にタンパク質への共有結合の生成が開始される。光分解性基として適当なものは例えば、ジアジリン、アジドまたはカルボニル官能基である。
照射のためには、例えば挿入したエチジウムブロマイドでポリヌクレオチドを可視化するために、または実験室の表面を滅菌するために使用されるような慣用のUVランプ、または特に「The Southern Ultraviolet Company, Hamden, CT」から入手できる光化学反応
装置を用いることができる。UV光による照射後の細胞の破壊は、慣用の方法を用いて行われる。この例としては、凍結および融解の繰返し、細胞の超音波処理、フレンチプレスの使用または界面活性剤および酵素の添加が挙げられる。細胞溶解物のタンパク質の分画は、例えば硫酸アンモニウムによる沈殿により、分画遠心法またはクロマトグラフィー技術の適用により行うことができる。この目的に適当なクロマトグラフィー技術としては、例えば、1次元もしくは2次元の変性もしくは未変性のポリアクリルアミドゲル電気泳動、高圧液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーまたはアフィニティークロマトグラフィーがある。これらの技術は、熟練した技術者にはよく知られており、例えば「Current Protocols in Protein Science」; John E. Caligan; Ben M. Dunn; Hidde L. Ploegh; David W. Speicher; Paul T. Wingfield; Wiley and Sons; ISBNO-471-11184-8に詳細に取り扱われている。
好ましくは、分画後のタンパク質の検出は、腸のコレステロール吸収阻害剤と光分解性基とを含有する化合物の放射標識によって行われる。このために用いることができる放射性同位元素は、例えば3Hまたは14Cである。適当な検出方法は、例えばタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動によりポリアクリルアミドゲル上に導入し、その後X線写真撮影に用いられるフィルム材を用いて共有結合した化合物を含むタンパク質を検出することである。他の適当な検出方法は、液体シンチレーション計数またはフラット・ベッド・スキャニングである。
生物材料は、好ましくは腸細胞から成る。腸細胞は、例えば動物の腸の解剖、および続けて精製、結合組織の酵素分解、および等張性緩衝液中での単細胞の懸濁によって得ることができる。腸細胞の提供に適当な腸組織は、とりわけ、屠殺後に残る動物の相当部である。腸細胞はまた、手術で得られた腸部からのヒト腸組織から提供されうる。腸細胞はまた、細胞培養技術の適用によって、本発明の目的のために提供される腸細胞培養からなることもできる。腸細胞の部分は、腸細胞の細胞小器官であってよい。細胞小器官は、好ましくは腸細胞膜である。腸細胞膜は、腸細胞の破壊後に、分画遠心法により得ることができる。腸細胞の部分はまた、好ましくはタンパク質画分である。腸細胞または腸細胞部分は、好ましくは哺乳動物の腸組織の刷子縁の細胞からなる腸細胞から得られる。好ましくその腸細胞を得ることができる哺乳動物としては、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターまたは他の脊椎動物種が挙げられるが、これに限定されない。これらの細胞は、このような生物の腸の刷子縁組織から、細胞懸濁液を調製することによって得ることができる。適当な腸材料は、例えば外科的処置によって得られる。他の供与源は、屠殺後に残る動物の部分に由来してもよい。腸細胞系の細胞は、ひとしく好適なものである。好適な細胞調製物を調製するために、腸組織を酵素処理に付して単細胞を開放し、分画遠心法を行ってもよい。続けて、得られた細胞または細胞小器官を適当な水性媒体中にとる。これらの水性媒体は、緩衝物質、塩、タンパク質およびその他に添加剤を含んでよい。
本発明はまた、腸のコレステロール吸収に関与し、コレステロール吸収阻害剤に結合する結合タンパク質を単離する方法に関し、ここで、
a] 生物材料を用意し、
b] a]の生物材料を、放射標識されているかまたはビオチン標識されているコレステロール再摂取の光反応性阻害剤と共にインキュベートし、
c] b]の生物材料を可溶化し、細胞破片を除去し、
d] 上清を、クロマトグラフィー処理に付すか、またはストレプトアビジン−アガロース上に加え、
e] 溶離液をSDS−PAGE上に加え、
f] 140〜150kDaの大きさの範囲に泳動したタンパク質を切り出し、溶離させ、また可能ならばリフォールドさせる。
生物材料は、好ましくは、ヒト、ラット、マウスまたはウサギの、腸細胞培養または理想刷子縁細胞の、腸組織または腸細胞から得られる。
ビオチン標識されたコレステロール再摂取阻害剤は、好ましくは次の構造を有する:
Figure 2006512054
本発明はまた、上述の本発明の方法により単離されたコレステロール吸収阻害剤に特異的に結合する能力を有するタンパク質に関する。該タンパク質は、好ましくは140〜150kDaの大きさであり、最も好ましくは145kDaの大きさである。該タンパク質はおそらくはグリコシル化されている。
該タンパク質の分子量は、使用されるSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動方法によって生じる一定の範囲の不確実性を前提として表示されるが、この不確実性は他の相当する方法についても知られている。分子量の変動は、最大+/−10%の範囲である。表示される値は、複数回の実験の平均に相当する。表示される分子量が145kDaであるタンパク質の場合、互いに独立して行った10回のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動実験の分子量決定により、標準偏差+/−7.55kDaで、平均145.3kDaが得られた。
グリコシル化を調べるのに適当な方法の詳細は、熟練した技術者であれば、「Carbohydrate Biotechnology Protocols, Methods in Biotechnology, 10 (1999) Human Press, ISBN 0-89603-563-8, C. Bucke編」において見出すことができよう。
本発明は、さらに、本発明のタンパク質と、次の構造を有する化合物とから形成される複合体に関する:
Figure 2006512054
本発明は、さらに、本発明のタンパク質、並びに薬剤処方用の製薬上許容し得る化合物および/または薬剤処方用の添加剤を含む医薬組成物に関する。このような物質は一般に知られており、例えばMack Publishing社によるRemingtons Pharmaceutical Sciences(第5版)に記載されている。
本発明はまた、本発明のタンパク質と上述の化合物との複合体、および薬剤処方用の製薬上許容し得る化合物を含む医薬組成物に関する。
本発明はまた、高コレステロールレベルとリンクしている疾患の治療用の医薬組成物の製造のための、本発明のタンパク質の使用を包含する。このような疾患は、例えば肥満、動脈硬化、高血圧、心不全等である。コレステロールレベルが199mg/dLであると、高レベルとみなされる。
本発明はまた、高コレステロールレベとリンクしている疾患の治療用の医薬組成物の製造のための、本発明のタンパク質と上述の化合物との複合体の使用を包含する。
本発明はまた、コレステロール再摂取を阻害する化合物を同定するための本発明のタンパク質の使用に関し、ここで、
a] 本発明のタンパク質を含む生物材料を用意し、
b] 化合物を用意し、
c] 該生物材料と該化合物を接触させて、
d] c]の生物材料により摂取されるコレステロール量を測定し、
e] d]の結果を、a]の生物材料と同じ種類および/または組織特異性を有するがb]の化合物と接触させていない生物材料からコレステロール摂取を測定した対照実験の結果と比較し、
f] e]の結果において、b]の化合物と接触させた細胞のコレステロール摂取の減少が測定される場合、これは、コレステロール再摂取を阻害する化合物を示している。
本発明はまた、高コレステロールレベルとリンクしている疾患を治療するための、このような方法により同定される化合物および製薬上許容し得る添加剤を含む医薬に関する。
このような化合物の分子量は、好ましくは100〜50000Daの範囲であり、より
好ましくは100〜5000Daである。この化合物は、化合物を含むコレステロール類似物、タンパク質、ペプチド、または脂肪酸であってよい。
化合物は、例えば化学合成によって得られる。該化合物は、完全合成プログラムによる化学化合物の貯蔵物およびカタログ(「化合物ライブラリ」)から得られるような、化学化合物のコレクションの一部であってもよい。他の例としては、該化合物は、微生物、特に細菌、真菌または動物または植物種により製造することもできる(天然物質)。天然物質の場合、適当な生物から単離することにより得ることもできる。タンパク質と化合物の接触は、大抵は、例えばジメチルスルホキシドまたはエタノールのような溶剤を一定の割合で混合した水溶液中で行われる。該水溶液は、緩衝物質、イオンまたは例えばタンパク質、グリセリン等のような安定化添加剤を含んでもよい。特定の一定条件、例えば温度、pH、イオン条件、タンパク質濃度もしくは化合物濃度、または体積は、該接触に都合のよいのものを用いることができる。したがって、例えば、接触させる間は温度を37℃で一定に保つことが好ましいかもしれない。接触後の、該化合物の該タンパク質への結合は、例えば、放射標識したコレステロールまたはコレステロール吸収阻害剤との相互作用により、また別法として該タンパク質に対する該化合物の親和性の測度としてコレステロールまたはコレステロール吸収阻害剤の置換を用いて、測定を行う。
5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタン酸[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]アミドの合成
以下の節の番号1〜14は、図1の一般的反応スキームに関連するものである。
ビオチン標識光反応性コレステロール阻害剤(5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタン酸[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]−アミド)の合成
前記ビオチン標識光反応性コレステロール阻害剤に関する以下の節の番号1〜14は、図1および図2の反応スキームに関連するものである。
3−[5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−5−フェニル−ペンタノイル]−4−フェニル−オキサゾリジン−2−オン(1)
Figure 2006512054
3−(5−ヒドロキシ−5−フェニル−ペンタノイル)−4−フェニル−オキサゾリジン−2−オン、30gをDMF50mLに溶解した。DMF25mL中のイミダゾール14.3gおよびtert−ブチル−ジメチルシリルクロリド19gを加えた後に、反応混合物を全成分が溶解するまで、室温で撹拌した(2〜4時間)。反応溶液を濃縮し、水を加えてから酢酸エチルエステルにより抽出した。有機相を硫酸マグネシウムにより乾燥し、蒸発させた後に、化合物1を得た:C26H35NO4Si (453.6) MS (ESI+) 476 (M+Na+)。
(4−メトキシ−ベンジリデン)−(4−ニトロ−フェニル)−アミン(2)
イソプロパノール160mL中のアニスアルデヒド50g(370mmol)に、パラ−ニトロアニリン51g(370mmol)を加えた。80℃で2時間後に、生成物が沈殿した。反応混合物を室温に冷却し、ろ過した。残留物をイソプロパノールで洗浄した。乾燥後に、黄色結晶形態の生成物2、62.9gを得た(収率66%):C14H13N2O3 (257.27)。
3−{5−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−2−[(4−メトキシ−フェニル)−(4−ニトロ−フェニルアミノ)−メチル]−5−フェニル−ペンタノイル}−4−フェニル−オキサゾリジン−2−オン(3)
Figure 2006512054
塩化メチレン135mL中の、生成物1、5.4g(12.0mmol)、および生成物2、6.2g(24mmol)に、ジイソプロピルエチルアミン8mLを10℃で加え、トリメチルシリルクロリド4.8mLを滴下して加えた。1時間後に、塩化メチレン中の四塩化チタンの1モル溶液、14mLを−10℃で滴下して加えた。これを−10℃で3時間撹拌し、−30℃で更に12時間撹拌せずに保存した。その後、酢酸8mLおよび酒石酸7%水溶液140mLを加え、室温で更に2時間撹拌した。亜硫酸水素ナトリウム20%水溶液50mLを加えた後に、更に1時間撹拌して、塩化メチレンで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィー、酢酸エチル/ヘプタン=1/3→1/1により精製した。生成物3、6.3g(74%)を、明黄色固体化合物形態で得た:C40H47N3O7Si (709.92) MS (ESI+) 710 (M+H+)。
3−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−3−フェニル−プロピル]−4−(3−メトキシ−フェニル)−1−(4−ニトロ−フェニル)−アゼチジン−2−オン(4)
Figure 2006512054
生成物3、6.1g(8.6mmol)、ビストリメチルシリルアセタミド7.3mL、テトラブチルアンモニウムフルオリド0.5g、およびtert−ブチルメチルエーテル100mLからなる混合物を、アルゴン雰囲気下、室温で10時間撹拌した。反応の終了後に、氷冷して酢酸5mLをゆっくりと加え、濃縮した。残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン=1/2)により分離した。生成物4、3.3g(70%)を明黄色固体化合物形態で得た:C31H38N2O5Si (546.74) MS (ESI+) 547.3 (M+H+)。
1−(4−アミノ−フェニル)−3−[3−(tert−ブチル−ジメチル−シラニルオキシ)−3−フェニル−プロピル]−4−(3−メトキシ−フェニル)−アゼチジン−2−オン(5)
Figure 2006512054
オートクレーブを使用して、5バールの水素雰囲気下で、酢酸エチル50mL中の生成物4、3.0g(5.5mmol)、およびパラジウムチャコール10%、1.0gを2時間反応させた。反応溶液を濾過し、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール=10/1)により分離した。生成物5、2.4g(86%)、を固体形態の無色化合物として得た。C31H40N2O3Si (516.76) MS (ESI+) 517.4 (M + H+)。
1−(4−アミノ−フェニル)−3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−4−(3−メトキシ−フェニル)−アゼチジン−2−オン(6)
Figure 2006512054
2N塩酸水溶液15mLを、テトラヒドロフラン20mL中の生成物5、2.3gに加えて、2時間撹拌した。炭酸水素ナトリウムの水溶液を反応液に加え、酢酸エチルで抽出した。有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲル上のクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン=1/1→1/0)により精製した。生成物6、1.1gを、固体形態の無色化合物として得た:C25H26N2O3 (402.50) MS (ESI+) 403.2 (M + H+)。
(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチル)−カルバミン酸−9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(8)
Figure 2006512054
生成物6、0.8g(2.0mmol)、および5−(Fmoc−アミノ)−バレリアン酸
7 (Fluka)、1.35g(4.0mmol)を、DMF(ジメチルホルムアミド)1
5mLに溶解した。以下のもの:TOTU (Fluka)4.8g、オキシム(ヒドロキシイミノ−cyanouceti acid−エチルエステル; Fluka)1.6g、およびNEM(4−エチル−モルホリン)5.5mLを段階的に加えた。室温で1時間後、反応液を酢酸エチル100mLで希釈し、水で3回洗浄した。有機相をMgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘプタン2:1)で精製した。生成物8、0.58g(41%)を、非晶質固体形態で得た:C45H45N3O6(723. 8) MS(ESI+) 724.4 (M + H+)。
5−アミノ−ペンタン酸−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニル}−アミド(9)
Figure 2006512054
生成物8、570mg(0.78mmol)、およびジエチルアミン0.8mLを、DMF(ジメチルホルムアミド)5mLに溶解した。これを室温で1時間後に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール/濃アンモニア 30:10:3)で精製した。生成物9、220mg(56%)、を非晶質化合物形態で得た:C30H35N3O4 (501.63) MS (ESI+) 502.3 (M + H+)。
[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]−カルバミン酸−9H−フルオレン−9−イルメチルエステル(11)
Figure 2006512054
生成物9、200mg(0.40mmol)、およびFmoc−p−アジド−Phe−OH 10 (Bachem)340mg(0.79mmol)を、DMF(ジメチルホルムアミド)4mLに溶解し、生成物8の製造に従い反応させた。生成物11、300mg(82%)を、非晶質固体形態で得た:C54H53N7O7 (912.07) MS(ESI+) 912.5 (M + H+)。
5−[2−アミノ−3−(4−アジド−フェニル)−プロピオニルアミノ]−ペンタン酸{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニル}−アミド(12)
Figure 2006512054
生成物11、300mg(0.33mmol)、およびジエチルアミン0.8mLを、DMF(ジメチルホルムアミド)4mLに溶解し、化合物9の製造に従い反応させた。化合物12、42mg(19%)を、非晶質固体化合物形態で得た:C39H43N7O5 (689.82) MS(ESI+) 690.3 (M + H+)。
5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペ
ンタン酸−[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]−アミド(14)
Figure 2006512054
化合物12、40mg(0.058mmol)、およびD−ビオチニル−N−ヒドロキシスクシニミド 13 (Bachem)60mgを、DMF(ジメチルホルムアミド)0.5mLに溶解した。これを室温で1時間後に濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(塩化メチレン/メタノール/濃アンモニア 30:5:1)により精製した。化合物14、29mg(55%)を、非晶質固体化合物形態で得た:C49H57N9O7S (912.12) MS(ESI+) 916.6(M + H+)。
光親和性標識および結合研究:
ウサギの小腸の刷子縁組織からの小胞を、当業者に既知の方法により単離した(Kramerら、J. Biol. Chem. 268, 18035-18046 (1993))。本発明の式Ia)、またはIb)、またはIc)、またはId)、またはIe)の放射標識化合物を用いて、Rayonet RPR-100型(The Southern Ultraviolet Company, Hamden, Conn.から入手可能)の光化学反応装置中で、光親和性標識を行った。その刷子縁膜小胞(タンパク質100〜200μg)を、10mMTris/Hepes緩衝液(pH7.4)、100mMNaCl、100mMマンニトール中の該化合物の1種(体積200μL)と共に、暗所で、20℃で5分間インキュベートした。刷子縁小胞の代わりに、細胞小器官、特にその膜を使用することもできる。以下の記述は、これらに同様に適用される。暗所でのインキュベーションの後に、20秒間または60秒間254nmのUV光で照射した。次いで、刷子縁小胞を、上述の緩衝液で2回洗浄した。従来の技術、例えばエタノールの添加、塩もしくは界面活性剤の添加、加熱、凍結および融解の繰り返し、または当業者に既知の他の適当な方法により、タンパク質を沈殿させて、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分画した。放射標識されたタンパク質は、LSCまたはフルオログラフィによって検出可能であった。刷子縁組織の標識されたタンパク質の、化合物に対する親和性は、1〜100nMの範囲であった。
動物および膜の調整:
体重4〜5kgのオスニュージーランド白ウサギ(Harlem Winkelmann, Borchem,ドイツ)を、Altronine(R)標準食餌C 2023 (Altronin(R), Lage,ドイツ)で、自由な状態で飼育した。胃、十二指腸、空腸、回腸、盲腸、大腸、直腸および腎臓の刷子縁膜小胞を、M
2+沈降方法により調製した。ラット肝ミクロソームおよびラット脂肪細胞膜を、標準技術により調製した。
コレステロール吸収の阻害:
腸のコレステロール吸収を、Zilversmit/Hughes方法の改良法により測定した。標準食餌(Altronin(R), Lage,ドイツ)で飼育したオスNMRIマウス(Charles River Deutschland GmbH, Salzfeld,ドイツ)を、12時間食餌を与えず飢餓状態にした。ビヒクルとして0.5%メチルセルロース/5%Solutol(BASF, Ludwigshafen,ドイツ)の溶液0.5mLを、各コレステロール吸収阻害剤3mgと共に、またはこれを含まずに、各動物に強制栄養によって与え、続けて0.24μCi[14C]コレステロールおよび0.25μCi[3H]シトステロールを含むIntralipid(R)溶液0.25mL(Pharmacia & Upjohn, Erlangen,ドイツ)を与えた。動物(各群につき5匹のマウス)を代謝ケージで飼育し、糞を回収した。24時間後に、動物を殺して糞および肝臓中の放射活性を燃焼分析により測定した。
コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質の可溶化:
ウサギ小腸の刷子縁膜小胞を光親和性標識後、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/300mMマンニトールで数回洗浄した。得られたペレットを、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/75mM KCl/5mM MgCl2/1mM EGTA/1mM DTT/1% (w/v) n−オクチルグルコシド/1% Triton X-100/1% (w/v)(「可溶化緩衝液」)中で、4℃で60分間可溶化して、タンパク質濃度1mg/mLとした。別法として、膜タンパク質は、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)中の1% SDSを用いて、4℃で10分間可溶化して、タンパク質濃度10mg/mLとして、続けて10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/1% n−オクチルグルコシドで1:10希釈してもよい。遠心分離後に、可溶化された膜タンパク質を含む上清を、界面活性剤として1%n−オクチルグルコシドを含む適当なクロマトグラフィー用緩衝液と混合し、希釈した。
コレステロール吸収阻害剤に結合する放射標識145kDa結合タンパク質を、光反応性2−アゼチジノンC−1による光親和性標識後に精製する:
光親和性標識
ウサギ回腸刷子縁膜小胞(タンパク質250μg)の8個の試料を、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/100mM NaCl/100mMマンニトール中の66nM(0.3μCi) [3H]C−1で、20℃で30分間、暗所でインキュベートした。4 RPR 2537Åランプを備えたRayonet RPR 100光化学反応装置(The Southern Ultraviolet Company, Hamden, コネチカット州,米国)中で、254nmで30秒間放射した後に、試料を回収し、遠心分離後に、膜小胞を10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/300mMマンニトール、2mL中に再懸濁し、20℃で20分後、遠心分離した。この手順を3回繰返した。得られたペレットを「可溶化緩衝液」2mLで可溶化した。遠心分離後、上清のアリコート40μLを取り、SDS−PAGEを行い、ゲルを薄切りにして膜タンパク質中への放射活性の取り込みについて分析した。
小麦胚芽レクチンアフィニティークロマトグラフィー
可溶化された膜タンパク質を含む上清を、小麦胚芽レクチンアガロースゲル0.5mLに添加した。20℃で30分後、遠心分離によりビーズを回収し、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/100mM NaCl/100mMマンニトール/1% (w/v) n−オクチルグルコシド、2mLで3回洗浄した。摂取したタンパク質を、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/100mM NaCl/100mMマンニトール/300mM N−アセチル−D−グルコサミン、2mL、4部で溶離させて;全溶離液において、アミノペプチダーゼNおよびスクラーゼの活性を測定し、各画分のアリコート100μLからタンパク質を沈殿させて、SDS−PAGEにより分析した。
ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー
小麦胚芽レクチンクロマトグラフィーのN−アセチルグルコサミン溶離液を、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)/1%(w/v)n−オクチルグルコシドで10倍希釈し、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)/1%(w/v)n−オクチルグルコシドで平衡化したヒドロキシルアパタイトカラム(高さ10cm、直径1cm)に付して、一定速度0.25mL/分で、1mL画分を回収した。続けてタンパク質を、次のようにして溶離させた:10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4)/1%(w/v)n−オクチルグルコシド、10mL、続けて、ホスフェート勾配:ホスフェート10〜250mMで15mL、250〜700mMで15mL、そして700〜1000mMで10mL。各画分において、アミノペプチダーゼNおよびスクラーゼの活性および放射活性を測定した。各画分100μLを取り出し、タンパク質を沈殿させ、続けてSDS−PAGEを行い、ゲルを2mm片に薄切りにして、放射活性標識されたタンパク質の分布を決定した。
分取SDSゲル電気泳動
放射活性標識された145kDaタンパク質を含む画分を回収し、タンパク質をクロロホルム/メタノールで沈殿させた。試料を、SDS−試料緩衝液(62.5mM Tris/HCl(pH6.8)2%SDS/5%2−メルカプトエタノール/10%グリセロール/0.001%ブロモフェノールブルー)中に溶解した後に遠心分離し、透明な上清を分取7.5%SDSゲル(直径28mm;分離ゲル長:5cm)の分離ゲルに付した。500V(40mM、6W)で電気泳動を行い、溶離液を1.5mL画分に分けた。各画分のアリコート150μLを、SDS−PAGEによるタンパク質組成の分析に用いた。
ストレプトアビジン−ビオチンアフィニティークロマトグラフィーによる、コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質の精製:
ウサギ回腸刷子縁膜小胞(タンパク質200μg)の10個の試料を、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/100mM NaCl/100mMマンニトール中で、200μMビオチン標識コレステロール阻害剤C−4と共に、暗所で30分間、20℃でインキュベートし、次いで4 RPR 2537Åランプを備えたRayonet RPR-100光化学反応装置中で、254nmで30秒間放射した。小胞を回収後、Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/300mMマンニトール、2mLで3回洗浄した。最終的に得られたペレットを「可溶化緩衝液」2mL中に4℃で1時間懸濁した。遠心分離後、透明な上清を、ストレプトアビジン−アガロースビーズ0.5mLと混合し、4℃で2時間撹拌を続けた。遠心分離後、ビーズを、10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/300mMマンニトール/1%n−オクチルグルコシド/4mM PMSF/4mMヨードアセタミド/4mM EDTA、2mLと共に4℃で10分間インキュベートし、続けて遠心分離した。この手順を2回繰り返した後、タンパク質が、ストレプトアビジン−アガロースビーズから、5mMビオチンを含む上記の緩衝液2mL、3部中に溶離した。アミノペプチダーゼNおよびスクラーゼの酵素活性を測定するために、およびSDS−PAGEにより分析するために、全溶離液からアリコートを取り出した。最終精製のために、コレステロール吸収阻害剤に共有結合する、修飾型145kDa結合タンパク質を含むビオチン溶離液を、上述の分取SDSゲル電気泳動によって得た。
酵素断片化:
両方の手順により単離した145kDaタンパク質を、クロロホルム/メタノールで沈殿させて、Tris/HCl緩衝液(pH6.8)/6.2% SDS/0.5% 2−メル
カプトエタノール/0.0005%ブロモフェノールブルー、3μL中に再溶解した。上記の緩衝液中に新しく調製したキモトリプシン溶液(35ng/mL)5μLを加え、30℃で1時間インキュベートして、酵素断片化を行った。4mM EDTA/4mM PMSF/4mMヨードアセタミドを含むSDS試料緩衝液を加え、95℃で5分間加熱することにより反応を停止し、続けてTris/トリシンゲル上のSDS−PAGEを行った。
SDSゲル電気泳動
電気泳動システムLE2/4(Amersham Pharmacia Biotech, Freiburg,ドイツ)を使用して垂直スタッブゲル(20×17×0.15cm)中で、ゲル濃度7〜10.5%、アクリルアミド97.2%およびN,N−メチレンビスアクリルアミド2.8%の比で、または、分析のために、電気泳動システムXcell II (Novex社製)を使用してプレキャストNOVEXゲル(4〜12%、12%または15%、Invitrogen (Groningen, The Netherlands))中で、SDS−PAGEを行った。ペプチド断片の電気泳動による分離を、Schaeggre & Jagowに従い、Tris/トリシン ゲル(16.5%)中で行った。電気泳動後、ゲルを12.5%トリクロロ酢酸中で固定し、続けてServa Blue R 250で染色した。放射活性の分布を測定するために、ゲルレーンをそれぞれ2mm片に切り、組織可溶化剤Biolute S 250μLでタンパク質を加水分解し、シンチレーターQuickszint 501、4mLを用いて液体シンチレーションを計数した。
コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質の可溶化:
コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質の精製の必須条件は、この内在性膜タンパク質が非変性状態で十分に可溶化することである。種々の界面活性剤による可溶化実験から、CHAPS、NP-40、ジギトニンおよびTriton-X-114では有意な可溶化が達成されないのに対して、SDSを用いると光標識タンパク質の約80〜90%が、およびZwittergent9〜13を用いると約60%が可溶化され得ることが明らかになった。10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/300mMマンニトール中の、Triton-X-100、n−オクチルグルコシド、デシルマルトシド、ドデシルマルトシドまたはコレステロールへミスクシネート/ドデシルマルトシドのような非イオン性界面活性剤の1%溶液は、145kDaタンパク質を部分的に可溶化するのみであり、従ってこれの精製を阻害した。最終的に、145kDaタンパク質の60〜80%を可溶化して、これによって精製手順を可能にする、2種のプロトコルを見出した、即ち:a)1%SDSで可溶化し、続けて1%n−オクチルグルコシドで希釈して、出発濃度0.1%SDS/1%n−オクチルグルコシドとする;b)10mM Tris/Hepes緩衝液(pH7.4)/75mM KCl/5mM MgCl2/1mM EGTA/1mM DTT/1% Triton X-100/1%n−オクチルグルコシド(「可溶化緩衝液」)で可溶化する。可溶化手順は、クロマトグラフィー手順による刷子縁膜タンパク質の良好な分画を可能した。
ビオチン標識2−アゼチジノン光親和性プローブの設計:
コレステロール吸収阻害剤の標的タンパク質のワンステップ精製のために、本発明者らは、ビオチン含有光分解性基であるN−(ビオチニル)−4−アジドフェニルアラニンを、スペーサーを介して、2−アゼチジノンコレステロール吸収阻害剤のN−フェニルまたはベンジルアミノ環のパラ位に結合させた。構造活性相関により、腸のコレステロール吸収の阻害についての生体内効力を維持する重要な化学修飾が、この位置で可能であることが示された。ビオチン標識光親和性ラベルC−4をNMRI−マウスに適用後、腸のコレステロール吸収は容量依存性で阻害され、ビオチン標識光分解性コレステロール吸収阻害剤の生物学的有効性を示し、タンパク質を同定するための前提条件は、このプローブにより腸のコレステロール吸収に関連づけられた。ビオチン標識コレステロール阻害剤C−4の増加濃度の存在下で、ウサギ小腸BBMVをアジドベンゾイル誘導性[3H]C−1で光親和性標識することによって、145kDaタンパク質の標識の程度が濃度依存性で減少し、これは、小腸細胞の刷子縁膜における、コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質とのC−4の特異的相互作用を示唆する。
トリチウム標識2−アゼチジノンコレステロール吸収阻害剤C−1で光標識した、145kDa結合タンパク質の精製:
光標識した145kDa結合タンパク質は、SDSゲル上でスクラーゼ/イソマルターゼ複合体またはアミノペプチダーゼNのような刷子縁膜の非常に多量の膜タンパク質が移動する分子量範囲に局在化し、従って、配列決定のためには、これらのタンパク質から完全に分離することが不可欠である。生化学研究を行い、この145kDaタンパク質は、N−グリカナーゼによる脱グリコシル化に際して分子量が145kDaから110kDaに移動したことから、グリコシル化された内在性膜タンパク質であると同定された。従って本発明者らは、アフィニティークロマトグラフィーのための推定のリガンドとして種々のレクチンを調べた。小麦胚芽レクチンアガロースにより、スクラーゼおよびアミノペプチダーゼN活性の70〜80%が溶離したのに対して、光標識145kDaタンパク質は完全にその溶離が遅滞(retardation)された。N−アセチルグルコサミンにより、放射標識145kDaタンパク質の全量を、30〜50%のアミノペプチダーゼNおよびスクラーゼ活性と共に溶離することができた。全体として、コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質を4〜5倍濃縮することができた。更に精製するために、多数の異なる手法を評価した。MonoQまたはMonoSカラム上でイオン交換クロマトグラフィーを行うことによって、スクラーゼ/イソマルターゼから完全に分離されたが、アミノペプチダーゼNからは部分的にしか分離されなかった。一方、金属−キレート−アフィニティークロマトグラフィーでは、はっきりとした分離は得られなかった。ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーでは、145kDaタンパク質が大幅に濃縮され、スクラーゼおよびアミノペプチダーゼNから分離することができた。至適化されたホスフェート勾配プロフィールにより、145kDaタンパク質を他の膜タンパク質からほぼ完全に分離することができた;145kDaタンパク質は、高濃度のホスフェートで溶離し、スクラーゼまたはアミノペプチダーゼNの有意な酵素活性は見られなかった。ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーからの溶離液を、分取SDS−PAGEに付して、最終精製を行った。純粋な145kDaタンパク質の推定量は、ヒドロキシルアパタイトカラムに付された材料の1〜3%であり、濃縮係数は、刷子縁膜について、150倍<濃縮係数<500倍であり、腸細胞総タンパク質について、2500〜10000倍であった。
ビオチン標識光分解性コレステロール吸収阻害剤による光親和性標識後の、ストレプトアビジン−ビオチンアフィニティークロマトグラフィーによる、コレステロール吸収阻害剤に結合する145kDa結合タンパク質の精製
ウサギ小腸BBWVを、200μMのC−4と共にインキュベートし、254nmで紫外線照射して架橋した。可溶化後、ビオチン標識2−アゼチジノンコレステロール吸収阻害剤を含む共有結合修飾したタンパク質を、ストレプトアビジン−ビーズで抽出した。十分に洗浄した後、結合したタンパク質を10mMビオチン溶液で溶離させて、SDS−PAGEで分析した。ストレプトアビジン−ビーズによって、主にMw145kDaの1種のタンパク質が保持されており、一方、紫外線照射を行わないと、タンパク質は全く検出されなかった。これは、145kDaタンパク質が、ビオチン標識された光分解性コレステロール吸収阻害剤C−4に結合する1次結合タンパク質であることを示している。ストレプトアビジン−ビーズからのビオチン抽出物は、スクラーゼ/イソマルターゼまたはアミノペプチダーゼNの検出可能な酵素活性を有さず、これは、溶離した145kDaタンパク質が、おそらくは、ビオチン標識コレステロール吸収阻害剤の共有結合によって修飾された、単一のタンパク質部分であることを示している。C−4による光標識の際に、エゼチミブのような他のコレステロール吸収阻害剤が200μM存在することによって、ストレプトアビジンビーズで抽出可能な145kDaタンパク質の量は減少する。これは、同一の結合部位についての、C−4とのコレステロール吸収阻害剤の直接的競合を示して
いる;対照的に、胆汁酸、脂肪酸、グルコース、オリゴペプチドまたはアミノ酸のための他の腸の栄養輸送体の基質は、抽出可能な145kDaタンパク質の量に影響しなかった。種々の器官からの細胞膜を用いたこれらの標識実験を行うことにより、ウサギの胃、盲腸、大腸、直腸、腎臓、肝臓または脂肪細胞からのBBMVの標識後には、ストレプトアビジン−ビーズで遅滞される145kDaタンパク質は抽出されなかったのに対して、小腸(十二指腸、空腸および回腸)からのBBMVの標識によってのみ、145kDaタンパク質が抽出されることが明らかになった。従って、145kDa結合タンパク質は、腸コレステロール吸収が起こる解剖学的部位、即ち十二指腸、空腸および回腸から精製できるのみであった。小麦胚芽レクチンクロマトグラフィーおよびヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーによって、およびストレプトアビジン−ビオチン−アフィニティークロマトグラフィーによって精製した145kDaタンパク質は、SDSゲル上では区別できない。キモトリプシンによる酵素断片化の後に、4〜35kDaの分子量範囲の多数のペプチドとほぼ一致したペプチドパターンが得られ、これは両方法によって精製された145kDaタンパク質が同一のものであり、排他的にではないにしても、大部分は、ただ1種のタンパク質部分のみを含んでいることを示している。
5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタン酸[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]アミド(14)の合成のための反応スキームの第1部 5−(2−オキソ−ヘキサヒドロ−チエノ[3,4−d]イミダゾール−6−イル)−ペンタン酸[2−(4−アジド−フェニル)−1−(4−{4−[3−(3−ヒドロキシ−3−フェニル−プロピル)−2−(4−メトキシ−フェニル)−4−オキソ−アゼチジン−1−イル]−フェニルカルバモイル}−ブチルカルバモイル)−エチル]アミド(14)の合成のための反応スキームの第2部

Claims (21)

  1. a] 生物材料を用意し、
    b] a]の生物材料を、放射標識された、タンパク質に特異的に結合することができる光反応性2−アゼチジノン化合物と共にインキュベートし、
    c] 該生物材料を可溶化し、細胞破片を除去し、
    d] 上清を、小麦胚芽レクチンアガロースを保持するデバイス上に加え、
    e] d]の小麦胚芽レクチンアガロースからの溶離液を、ヒドロキシルアパタイトカラムに施し、
    f] e]の放射標識画分を、分取SDS−PAGE上にロードし、
    g] 該放射標識画分を回収し、また可能ならば沈殿させる、
    ことからなる、タンパク質の単離方法。
  2. 生物材料が、ヒト、ラット、マウスまたはウサギの、腸細胞培養または理想刷子縁細胞の、腸組織または腸細胞から得られる、請求項1に記載の方法。
  3. 光反応性2−アゼチジノン化合物が、次の式Iの構造:
    Figure 2006512054
    を有し、
    式中、Rは次の基a)〜e):
    Figure 2006512054
    の1つから選択される、請求項1に記載の方法。
  4. a] 生物材料を用意し、
    b] a]の生物材料を、放射標識されているかまたはビオチン標識されているコレステロール再摂取の光反応性阻害剤と共にインキュベートし、
    c] b]の生物材料を可溶化し、細胞破片を除去し、
    d] 上清を、クロマトグラフィー処理に付すか、またはストレプトアビジン−アガロース上に加え、
    e] 溶離液をSDS−PAGE中に加え、
    f] 140〜150kDaの大きさの範囲に泳動したタンパク質を切り出し、溶離させ、また可能ならばリフォールドさせる、
    ことからなる、コレステロール結合タンパク質の単離方法。
  5. 生物材料が、ヒト、ラット、マウスまたはウサギの、腸細胞培養または理想刷子縁細胞の、腸組織または腸細胞から得られる、請求項4に記載の方法。
  6. ビオチン標識されているコレステロール再摂取の光反応性阻害剤が、次の構造:
    Figure 2006512054
    を有する、請求項5に記載の方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により単離された、コレステロール吸収阻害剤に特異的に結合する能力を有するタンパク質。
  8. タンパク質が140〜150kDaの大きさである、請求項7に記載のタンパク質。
  9. タンパク質が145kDaの大きさである、請求項8に記載のタンパク質。
  10. タンパク質がグリコシル化されている、請求項8に記載のタンパク質。
  11. 請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質と、式I:
    Figure 2006512054
    [式中、Rは次の基a)〜e):
    Figure 2006512054
    の1つから選択される]
    の化合物とから形成される、複合体。
  12. 請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質と、次の構造:
    Figure 2006512054
    を有する化合物とから形成される、複合体。
  13. 請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質、および医薬の処方のための製薬上許容し得る化合物を含む医薬組成物。
  14. 請求項11または12に記載の複合体、および医薬の処方のための製薬上許容し得る化合物を含む医薬組成物。
  15. 高コレステロールレベルとリンクしている疾患を治療するための請求項13に記載の医薬組成物を製造するための、請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質の使用。
  16. 高コレステロールレベルとリンクしている疾患を治療するための請求項14に記載の医薬組成物を製造するための、請求項11または12に記載の複合体の使用。
  17. a] 請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質を含む生物材料を用意し、
    b] 化合物を用意し、
    c] a]の生物材料とb]の化合物を接触させて、
    d] c]の生物材料により摂取されるコレステロール量を測定し、
    e] d]の結果を、a]の生物材料と同じ種類および/または組織特異性を有するがb]の化合物と接触させていない生物材料からコレステロール摂取を測定した対照実験の結果と比較し、
    f] e]の結果において、b]の化合物と接触させた細胞のコレステロール摂取の減少が測定される場合、これは、コレステロール再摂取を阻害する化合物を示している、
    コレステロール再摂取を阻害する化合物を同定するための、請求項7〜10のいずれか1項に記載のタンパク質の使用。
  18. 高コレステロールレベルとリンクしている疾患を治療するための、請求項17に記載の方法により同定される化合物および製薬上許容し得る添加剤を含む医薬。
  19. 化合物の分子量が、100〜50000Daである、請求項18に記載の医薬。
  20. 分子量が100〜5000Daである、請求項19に記載の医薬。
  21. 化合物が、化合物を含むコレステロール類似物、またはタンパク質、またはペプチド、または脂肪酸である、請求項18に記載の医薬。
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