清浄で効率的且つ環境に優しい電力源として、燃料電池が提案されており、様々な用途に用いることが可能である。燃料電池は、燃料(一般的に水素)及び酸化体(一般的に空気)を2つの適切な電極及び電解質と接触させることによって起電力を生じる、電気化学デバイスである。例えば水素ガス等の燃料は第1の電極、即ちアノード(負極)に導入され、電解質の存在下で電気化学的に反応し、電子及びカチオンを生じる。電子は、電極間に接続された電気回路を通って、アノードから第2の電極、即ちカソード(正極)へと循環する。カチオンは、電解質を通過してカソードに至る。同時に、酸素ガス又は空気等の酸化体がカソードに導入され、そこで、酸化体は、電解質及び触媒の存在下で電気化学的に反応して、アニオンを生成すると共に、電気回路を通って循環する電子を消費し、第2の電極ではカチオンが消費される。第2の電極、即ちカソードで形成されたアニオンは、カチオンと反応し、反応生成物を形成する。アノードは、燃料電極又は酸化電極と呼ばれることもあり、カソードは、酸化体電極又は還元電極と呼ばれることもある。2つの電極における半電池反応は、それぞれ次の通りである。
H2→2H++2e-
1/2O2+2H++2e-→H2O
外部の電気回路は電流を引き込み、このようにして電池から電力を受け取る。燃料電池の反応全体によって、上記の個別の半電池反応の合計によって示されるような電気エネルギーが生じる。この反応の典型的な副生成物は、水及び熱である。従って、化石燃料の燃焼又は核活動による発電と比較して、発電に燃料電池を用いることは、環境的な利益を提供する。幾つかの適用例としては、分散型の住宅用発電及び、自動車の排出レベルを低減するための電力システムがある。
実用では、燃料電池は単体では作動されない。むしろ、燃料電池は、積み重ねられ又は横に並べられ、一続きに接続される。燃料電池スタックと呼ばれる一続きの燃料電池は、通常はハウジングで包まれている。燃料及び酸化体はマニホールドを介して電極へと送られ、その間、反応物質又は別個の冷却媒体によって冷却される。スタック内には、集電器と、電池どうしのシールと、絶縁物とがある。システム内の燃料の流れを供給及び制御するための配管及び様々な器具が、燃料電池スタックの外部に接続されている。スタック、ハウジング及び関連づけられたハードウェアで、燃料電池ユニットが構成される。
様々なタイプの燃料電池が知られている。例えば、陽子交換膜(PEM)燃料電池は、ロバストであり且つ周囲温度とさほど異ならない温度で動作可能な、単純且つ小型の燃料電池の設計を可能にするので、従来の発電システムに対する最も有望な代替品の1つである。通常は、PEM燃料電池の燃料は純粋な水素ガスであり、水素ガスは電気化学的に反応し、反応の副生成物は水及び熱であるので、環境に優しい。従来のPEM燃料電池は、通常、2つの流れ場プレート(バイポーラプレート)、即ち、アノード流れ場プレート及びカソード流れ場プレートを含み、それらの間には陽子交換膜(MEA)が設けられている。MEAは、実際の陽子交換膜と、膜にコーティングされた燃料電池反応用の触媒層とを含む。更に、各流れ場プレートとPEMとの間には、ガス拡散媒体(GDM)又はガス拡散層(GDL)が設けられている。GDM又はGDLは、燃料又は酸化体である反応ガスがMEAの触媒表面に拡散するのを容易にしつつ、各流れ場プレートとPEMとの間に導電性を与える。
各流れ場プレートは、各端部に3つのアパーチャ又は開口部を有するのが一般的であり、各アパーチャは、燃料、酸化体及び冷却剤のうちの1つのための導入口又は排出口となる。しかし、燃料電池又はスタックの設計に応じて、流れ場プレートに、反応ガス又は冷却剤のそれぞれのための複数の導入口及び排出口を有することも可能である。燃料電池スタックが組み立てられると、1つの電池のアノード流れ場プレートが、隣接する電池のカソード流れ場プレートに当接する。流れ場プレートが重ね合わされて完成した燃料電池スタックが形成されると、これらのアパーチャは、流れ場プレートの厚さを貫通して延び且つ位置合わせされて、流れ場プレートに対して垂直に延び且つ燃料電池スタック全体を通って延びる細長い配分流路を形成する。流れ場は、通常、少なくとも1つの、ほとんどの場合には複数のオープンフェース(open-faced)流路を有し、この流路は適切な導入口及び排出口と連通する。反応ガスがこの流路を通って流れると、反応ガスはGDMを通って拡散し、MEA上において触媒の存在下で反応する。流れが連続して通過することにより、ほとんどの燃料又は酸化体が消費される間に、いかなる汚れも常に燃料電池を通って確実に流される。流れ場は、流れ場プレートのいずれかの面又は両面に設けられてよい。一般的には、MEAに面するアノード及びカソード流れ場プレートの面(以降、「前面」と呼ぶ)に、燃料又は酸化体用の流れ場がそれぞれ形成される。MEAとは反対側に面したアノード又はカソードいずれかの流れ場プレートの面(以降、「後面」と呼ぶ)には、冷却剤用の流れ場が設けられてもよい。
完成した燃料電池スタックが構成されると、燃料電池スタックから電流を集めて、その電流を外部の電気回路に供給するための一対の集電プレートが、一番外側の流れ場プレートの直近に設けられる。集電プレートの直近の外側には一対の絶縁板が設けられると共に、一対の端部プレートが絶縁体の直近に配置される。隣接する各対のプレート間にはシールが設けられる。シールは、通常は、燃料電池環境と適合する弾性材料でできたガスケットの形態である。燃料電池スタックは組み立て後に、要素を固定すると共に燃料電池スタックのシール及び活性領域に適切な圧縮が加わるのが確実になるように、クランプされるのが一般的である。この方法は、接触抵抗が最小になると共に電池の電気抵抗が最小になることを確実にするものである。
様々な流れ場の設計が知られている。周知の流れ場パターンの1つが特許文献1に見出される。流れ場プレートの1つの面に、単一の連続オープンフェース流体流路が設けられている。この流路は、流れ場プレートの両端部近傍にそれぞれ配置された導入口及び排出口を有する。導入口及び排出口は、燃料電池スタック内のガス配分マニホールドと連通している。流路は、流れ場プレートの面を複数の経路で横断する。この蛇腹形の流路は、流れ場プレートの寸法を増加させることなく長い流路を提供し、それにより、流路からMEAへの反応ガスの幾分十分な拡散を可能にする。
この「蛇腹形」流路の概念に基づき、多大な改良がなされてきた。これらの改良は、特許文献2及び特許文献3に見出すことができる。しかし、これらの設計には多くの問題がある。蛇腹形流路では、反応ガスが流れ場を横断して流れる際に、大きな圧力降下が生じる。これは、燃料電池が、例えば周囲圧力等の比較的低い圧力で動作する場合に、燃料電池の性能に大きく影響する深刻な問題である。また、これらの設計におけるガスの分布は、曲がりくねった流路に沿って均一ではない。蛇腹形の流れ場では、ガスの流れは乱流になりがちであり、反応ガスの流れ、圧力又は温度の制御が比較的困難になる。更に、曲がりくねった流路では、流路内に水や汚れが溜まる箇所が多くなり、燃料電池の溢水や汚染の危険が増大する。
ほとんどの流れ場の設計に伴う別の問題は、燃料電池スタック内に配置された際に、アノード流れ場プレートのリブ及び流路が、カソード流れ場プレートのリブ及び流路としばしばずれることである。上述のように、アノード及びカソード流れ場プレートは、MEAの反対側に隣接して配置され、反応ガスは、GDM及びオープンフェース流路によって流れ場に形成されるチャンバを通って流れる。燃料電池スタックにはしばしば圧力が加えられるので、MEA及びGDMは剪断力を受け、これによって最終的にはMEAが損傷する。また、リブのオフセットにより、GDMにわたる反応ガスの配分が阻害され、燃料電池効率が下がる。
先の議論から、従来の燃料電池の更なる問題は、シーリングがしばしば複雑になることであると認識できる。MEA、流れ場プレート、集電プレート等の様々なアパーチャをシールしなければならない。更に、上述したように、各対の隣接するプレート間にシールが必要であり、各シールは複雑且つ手の込んだ構成になる。いずれか1つの反応ガスに対して、対応する第1の流れ場プレートに、流れ場全体並びにその導入口及び排出口を完全に封じるシールを設けることが考えられる。これにより、流れ場プレートとMEAとの間に良好なシールを形成可能になる。しかし、MEAの他方の側には、第1の流れ場プレートの導入口及び排出口に対応する第2の流れ場プレートのアパーチャを完全に封じるシールを設けることが必要である。この構成では、膜が部分的に第1の流れ場プレートの開放流路の上方に位置して、適切に支持されないので、ガスの混合を生じる不適切なシーリングとなるリスクがあり、非常に望ましくない。
従って、流体の流れ場にわたる圧力降下が小さく且つガスの分布がより均一な、燃料電池の流れ場プレートの必要性が残っている。流れ場プレートは、MEAに対する剪断の影響を低減すると共に、流れ場プレート間のシーリングを簡単にするのが好ましい。
米国特許第4,988,583号明細書
米国特許第6,099,984号明細書
米国特許第6,309,773号明細書
次に、本発明のより良好な理解と、本発明がどのように実施され得るかをより明確に示すために、本発明の好ましい実施形態を示す添付の図面を例として参照する。
まず図1を参照すると、本発明による燃料電池スタック内に配置された単一の燃料電池ユニット100の分解斜視図が示されている。以下では単一の燃料電池ユニット100の詳細を説明するが、公知の方法では、燃料電池スタックは通常、重ね合わされた複数の燃料電池で構成されることを理解されたい。燃料電池ユニット100の各燃料電池は、アノード流れ場プレート120と、カソード流れ場プレート130と、アノード流れ場プレート120とカソード流れ場プレート130との間に設けられた薄膜電極アセンブリ(MEA)124とを含む。各反応物質の流れ場プレートは、導入口領域と、排出口領域と、導入口を排出口に連通させると共にMEA124の外面に反応ガスを配分する手段を設けるオープンフェース流路とを有する。MEA124は、アノード触媒層(図示せず)とカソード触媒層(図示せず)との間に設けられた固体電解質(即ち、陽子交換膜)125を含む。アノード触媒層とアノード流れ場プレート120との間には、第1のガス拡散媒体(GDM)122が設けられており、カソード触媒層とカソード流れ場プレート130との間には、第2のGDM126が設けられている。GDM122、126は、燃料又は酸化体である反応ガスのMEA124の触媒表面への拡散を容易にする。更に、GDMは、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130のそれぞれと膜125との間の導電性を高める。
触媒反応では、純水な水素等の燃料がMEA124のアノード触媒層で酸化され、陽子及び電子を形成する。陽子交換膜125は、陽子がアノード触媒層からカソード触媒層へと移動するのを容易にする。電子は陽子交換膜125を通過できず、外部回路(図示せず)を通って流れるように強制され、このようにして電流を与える。MEA124のカソード触媒層では、酸素が電気回路から戻った電子と反応し、アニオンを形成する。MEA124のカソード触媒層で形成されたアニオンは、膜125を横断した陽子と反応し、反応生成物として液体の水を形成する。
引き続き図1を参照すると、以降、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130に関して「前」及び「後」という場合には、MEA124に対するそれらの向きを示す。従って、「前」面はMEA124に面する側を示し、「後」面はMEA124とは反対側に面する側を示す。アノード流れ場プレート120の後面には、第1の集電プレート116が当接する。同様に、カソード流れ場プレート130の後面には、第2の集電プレート118が当接する。集電プレート116、118は流れ場プレート120、130から電流を集めるものであり、外部の電気回路(図示せず)に接続される。第1及び第2の集電プレート116、118の直近には、第1及び第2の絶縁板112、114がそれぞれ配置される。第1及び第2の絶縁板112、114の直近には、第1及び第2の端部プレート102、104がそれぞれ配置される。端部プレート102、104に圧力を加えて、ユニット100を共に押圧してもよい。更に、各対の隣接するプレート間には、通常、シール手段が設けられる。好ましくは、複数のタイロッド131も設けられてもよい。タイロッド131は、カソード端部プレート104のねじ切りされたボアにねじ込まれ、アノード端部プレート102の対応するプレインボアを貫通する。燃料電池ユニット100及び燃料電池スタック全体を一体にクランプするために、ナット、ボルト、ワッシャー等の締結手段が公知の方法で設けられる。
引き続き図1を参照すると、端部プレート102、104には、各種の流体を供給するための複数の接続ポートが設けられている。具体的には、第2の端部プレート104は、第1及び第2の空気接続ポート106、107と、第1及び第2の冷却剤接続ポート108、109と、第1及び第2の水素接続ポート110、111とを有する。当業者には理解されるように、MEA124、第1及び第2のガス拡散媒体122、126、アノード及びカソード流れ場プレート120、130、第1及び第2の集電プレート116、118、第1及び第2の絶縁板112、114、並びに第1及び第2の端部プレート102、104は、一端部の近傍に3つの導入口を有すると共に反対側の端部の近傍に3つの排出口を有し、それらは位置合わせされて、酸化体としての空気、冷却剤、及び燃料としての水素のための流体流路を形成する。全ての排出口が一つの端部に配置されることは必須ではない。即ち、対になった流れが同じ方向に流れるのではなく、対向流であってもよい。図示しないが、各種ポート106〜111は、後述するように個々の流れ場プレートのアパーチャで形成された、燃料電池ユニット100の長さに沿って延びる複数のダクトと連通することを理解されたい。
冷却剤は、水、脱イオン水、油、エチレングリコール及び/又はプロピレングリコールを含むがこれらに限定されない任意の公知の熱交換流体であってよいことが、当業者には理解されよう。本明細書で説明する特定の実施形態には様々な冷却剤を使用可能であるが、簡潔にするために、ここで説明する実施形態では、全ての熱交換流体は脱イオン水である。
次に図2aを参照すると、アノード流れ場プレート120の前面が示されている。アノード流れ場プレート120は、その一端部近傍に3つの導入口、即ち、アノード空気導入アパーチャ136、アノード冷却剤導入アパーチャ138及びアノード水素導入アパーチャ140を有し、これらはそれぞれ第1の空気接続ポート106、第1の冷却剤接続ポート108及び第1の水素接続ポート110と連通する。アノード流れ場プレート120は、その反対側の端部近傍に3つの排出口、即ち、アノード空気排出アパーチャ137、アノード冷却剤排出アパーチャ139及びアノード水素排出アパーチャ141を有し、これらはそれぞれ第2の空気接続ポート107、第2の冷却剤接続ポート109及び第2の水素接続ポート111と連通する。
図2aでは、アノード流れ場プレート120の前面には、複数のオープンフェース流路で構成される水素流れ場132が設けられている。流れ場132は、アノード水素導入アパーチャ140をアノード水素排出アパーチャ141に連通させる。しかし、水素は、前面の導入アパーチャ140からアノード流れ場プレート120の流れ場132に直接は流れない。流れ場132と導入口140及び排出口141のそれぞれとの間の水素の流れを、より詳細に説明する。当業者には周知のように、水素が流れ場132の流路に沿って流れると、水素の少なくとも一部が第1のGDM122を横断して拡散し、MEA124のアノード触媒層で反応し、陽子及び電子を形成する。次に、陽子は膜125を横断してカソード触媒層に向かって移動する。未反応の水素は流れ場132に沿って流れ続け、最終的にアノード水素排出口141を介してアノード流れ場プレート120から出る。
引き続き図2aを参照すると、流れ場132並びに各種導入口及び排出口の周囲には、反応ガス及び冷却剤の漏洩や混合を防止するためのシール200が設けられている。図2cに示されているように、通常は燃料電池環境に適合可能な弾性材料でできたガスケットであるシールは、アノード流れ場プレート120の前面のシール溝201内に配置されている。シール溝201は、流れ場132並びに導入口及び排出口を完全に封じるように形成される。シール溝201は、機械加工、エッチング等を用いて形成できる。所望により、溝は、アノード流れ場プレート120の周囲の異なる位置において、様々な深さ(図2aの紙面に対して垂直な方向)及び/又は幅(図2aの紙面の方向)を有してよい。実際には、シールガスケット200は、導入アパーチャ及び排出アパーチャを、アノード流れ場プレート120の前面の流れ場132から完全に分離する。通常は、シール溝201及びそれに対応するガスケットは、一定の深さを有する。
次に図2bを参照すると、アノード流れ場プレート120の後面が示されている。本発明では、アノード流れ場プレート120の後面は平坦で平滑であり、いかなる流路も設けられない。水素導入アパーチャ140及び水素排出アパーチャ141に隣接して、複数のスロット180が設けられている。これらのスロットはアノード流れ場プレート120の厚さを貫通し、それによってアノード流れ場プレート120の前面と後面とを連通させる。本発明のアノード流れ場プレート120の後面には、シールガスケットやシールガスケット溝は必要ない。これは、プレートの構造を簡単にして製造コストを低減することによる、従来の燃料電池設計を超える改良点である。後述するように、カソード流れ場プレート130の後面のシールガスケットによって、シーリングが達成される。
次に図3aを参照すると、カソード流れ場プレート130の前面が示されている。カソード流れ場プレート130は、その一端部近傍に3つの導入口、即ち、カソード空気導入アパーチャ156、カソード冷却剤導入アパーチャ158及びカソード水素導入アパーチャ160を有し、これらはそれぞれ第1の空気接続ポート106、第1の冷却剤接続ポート108及び第1の水素接続ポート110と連通する。カソード流れ場プレート130は、その反対側の端部近傍に3つの排出口、即ち、カソード空気排出アパーチャ157、カソード冷却剤排出アパーチャ159及びカソード水素排出アパーチャ161を有し、これらはそれぞれ第2の空気接続ポート107、第2の冷却剤接続ポート109及び第2の水素接続ポート111と連通する。
図3aでは、カソード流れ場プレート130の前面には、複数のオープンフェース流路で構成される酸化体(通常は空気)流れ場142が設けられている。流れ場142は、カソード空気導入アパーチャ156をカソード空気排出アパーチャ157に連通させる。しかし、アノード流れ場プレート120の設計と同様に、空気は、導入アパーチャ156からカソード流れ場プレート130の前面の流れ場142に直接は流れない。当業者には周知のように、空気が流れ場142の流路に沿って流れると、酸素の少なくとも一部が第2のGDM126を横断して拡散し、カソード触媒層において、外部回路から戻った電子と反応してアニオンを形成する。次に、アニオンは、MEA124を横断して移動した陽子と反応し、液体の水及び熱を形成する。未反応の空気は流れ場142に沿って流れ続け、最終的にカソード空気排出口157を介してカソード流れ場プレート120から出る。
アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130では、各種導入口136〜141及び排出口156〜161は、互いに位置合わせされて6つのダクト又は流路を形成するアパーチャを含み、ダクト又は流路は燃料スタックを通って延びると共にそれぞれの端部においてポート106〜111にそれぞれ接続される。
引き続き図3aを参照すると、流れ場142並びに各種導入アパーチャ及び排出アパーチャの周囲には、反応ガス及び冷却剤の漏洩や混合を防止するためのシール300が設けられている。なお、アノード流れ場プレート120の設計と同様に、通常は燃料電池環境に適合可能な弾性材料でできたガスケットであるシールは、カソード流れ場プレート130の前面のシール溝内に配置されている。簡単にするために、ここではこのシール溝は図示しない。同様に、所望により、溝は、カソード流れ場プレート130の周囲の異なる位置において、様々な深さ及び/又は幅を有してよい。実際には、シールガスケット300は、導入アパーチャ及び排出アパーチャを、カソード流れ場プレート130の前面の流れ場142から完全に分離する。
次に図3bを参照すると、カソード流れ場プレート130の後面が示されている。本発明では、カソード流れ場プレート130の後面には、複数のオープンフェース流路で構成される冷却剤流れ場144が設けられている。アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130の前面と同様に、冷却剤流れ場144並びに各種導入アパーチャ及び排出アパーチャの周囲には、シール400が設けられている。なお、シールは、カソード流れ場プレート130の後面のシール溝内に配置されている。簡単にするために、ここではこのシール溝は図示しない。同様に、所望により、溝は、カソード流れ場プレート130の周囲の異なる位置において、様々な深さ及び/又は幅を有してよい。しかし、シールガスケット200、300は、導入アパーチャ及び排出アパーチャを、アノード流れ場プレート120の前面のアノード流れ場132及びカソード流れ場プレート130の前面のカソード流れ場142から完全に分離するが、一方、シールガスケット400は、水素及び空気の導入口及び排出口を、冷却剤流れ場144から完全にシールするのみであり、流れ場と冷却剤導入アパーチャ158及び排出アパーチャ159との間の水の流れを可能にする。
この流れ場144は、カソード冷却剤導入アパーチャ158をカソード冷却剤排出アパーチャ159に連通させる。水は、カソード冷却剤導入アパーチャ158から入って、流れ場144の流路に沿って流れ、最終的にカソード冷却剤排出アパーチャ159を介して冷却剤流れ場144から出る。燃料電池反応は発熱性であり、反応速度は温度の影響を受けるので、水が流れることによって燃料電池反応で生じる熱が奪われ、燃料電池スタックの温度の上昇が防止され、それによって燃料電池反応が安定したレベルに調整される。
次に図3b〜図3dを参照すると、空気導入アパーチャ156及び排出アパーチャ157はそれぞれ、カソード流れ場プレート130の後面に、冷却剤流れ場144に向かうアパーチャ延長部281を有する。アパーチャ延長部には、空気導入アパーチャ156及び空気排出アパーチャ157に隣接して、複数のスロット280が設けられている。これらのスロットはカソード流れ場プレート130の厚さを貫通し、それによってカソード流れ場プレート130の前面と後面とを連通させる。アパーチャ延長部281には、空気導入アパーチャ156又は空気排出アパーチャ157にそれぞれ向かうようにスロット280間に延びる複数の突出部282が設けられている。図3dからより良好にわかるように、シールガスケット400と略同じ高さを有する突出部282は、複数の流路284を定め、空気導入アパーチャ156又は空気排出アパーチャ157の縁部に届く手前で止まり、それによって、スロット280と空気導入アパーチャ156又は空気排出アパーチャ157との間を空気が流れるのを容易にする。シールガスケット400は、アパーチャ延長部281、及びそれに従ってスロット280を、冷却剤流れ場144並びに他の導入アパーチャ及び排出アパーチャから完全に分離する。
カソード水素導入アパーチャ160及び排出アパーチャ161も、それぞれアパーチャ延長部181を有する。同様に、アパーチャ延長部181には、水素導入アパーチャ160及び排出アパーチャ161にそれぞれ向かって延びる複数の突出部182が設けられている。突出部182は、カソード流れ場プレート130の後面とアノード流れ場プレート120の後面とが互いに当接された際に、突出部182がアノード流れ場プレート120のスロット180間に延びるような、カソード流れ場プレート130上の位置に設けられる。アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130は当接する後面を有し、このことは、アノードプレート120が1つの燃料電池の一部であり、カソードプレート130が隣接する燃料電池の一部であることを必然的に意味することが理解されよう。図3bでは、図2bに示されている2つのスロット180に対応するこのような突出部182が1つだけ示されている。しかし、これらの図は説明目的でのみ用いられ、実際の突出部182、282及びスロット180、280の数は、図示されているものと必ずしも同じではないことを理解されたい。突出部182は、シールガスケット400と略同じ高さを有し、複数の流路184を定め、水素導入アパーチャ160又は水素排出アパーチャ161の縁部に届く手前で止まり、それによって、スロット180と水素導入アパーチャ160又は水素排出アパーチャ161との間を水素が流れるのを容易にする。シールガスケット400は、アパーチャ延長部181、及びそれに従ってスロット180を、冷却剤流れ場144並びに他の導入アパーチャ及び排出アパーチャから完全に分離する。
当然ながら、アパーチャ延長部181及びその上の突出部182を、アノード流れ場プレート120の後面のアノード水素アパーチャ導入口140及びアパーチャ排出口141に隣接して設けることも可能である。この場合、カソード流れ場プレート130の後面のガスケット400は、アノード水素導入アパーチャ140、排出アパーチャ141並びにそれらに関連づけられたアパーチャ延長部181、突出部182及びスロット180を封じるように構成される。
或いは、1つのガスに必要なアパーチャ延長部を、そのガス用のプレートに設けることも可能である。従って、アノードプレートの後面には、水素即ち燃料ガス導入アパーチャ140及び排出アパーチャ141のアパーチャ延長部を設けることが可能である。これに対応して、カソードプレートの後面には、酸化体導入アパーチャ156及び排出アパーチャ157のアパーチャ延長部を設けることが可能である。いずれの場合にも、各プレートに、そのプレートを貫通する適切なスロットを設けることが可能である。
更に、流れを改善するために、アノードプレート120及びカソードプレート130のそれぞれに、燃料ガス流用及び酸化体流用のアパーチャ延長部を設けることも可能である。実際には、その場合、それぞれのダクトから延びてスロットに向かい、プレートの前面へと延びる延長チャンバが、一方のプレート及び他方のプレートにそれぞれ部分的に設けられる。プレートの厚さが低減される場合には、この構成が望ましいこともあると考えられる。当該技術分野においては、燃料電池スタックに可能な限り高い出力密度を備えるのが望ましく、この理由により、流れ場プレートを可能な限り薄くすることが常に望ましいことが理解されよう。
流れ場プレートの少なくとも1つに平面を設けることは、複数の長所を有することも理解されよう。これにより流れ場プレートの設計が簡潔になり、流れ場プレートの製造も簡単になるはずである。更に、シーリング構成を顕著に簡潔化し、プレートの精確な位置合わせの要求が最小限になる。実際、この平面に対しては、より高い位置合わせ公差が許容可能になり、延長アパーチャ、スロット等の寸法を、許容される公差に対応するよう適宜設定できる。
燃料電池スタック100が組み立てられると、1つの電池のアノード流れ場プレートの後面が、隣接する電池のカソード流れ場プレートの後面に当接する。カソード流れ場プレート130の後面のシールガスケット400は、アノード流れ場プレート120の平滑な後面に接触し、2つのプレート間のシーリングが達成される。従って、水素導入アパーチャ160、排出アパーチャ161及びそのアパーチャ延長部181はそれぞれ、アノード流れ場プレート120の後面と共に1つのチャンバを定める。水素は、第1の水素接続ポート110を通って入り、アノード及びカソード水素導入アパーチャ140及び160によって形成された燃料電池スタックを貫通するダクトを通って流れ、上述のチャンバへと流れる。ここから、各燃料電池について、水素は、1つの燃料電池のカソード流れ場プレート130のアパーチャ延長部181の流路184に沿って流れ、隣接する燃料電池のアノード流れ場プレート120のスロット180を通って、アノード流れ場プレート120の前面の水素流れ場132に至る。この、流れ場132の反対側から水素を供給する設計は「裏側供給」と呼ばれ、先の特許出願である米国特許出願第09/855,018号の主題である。流れ場132における水素の流れのパターンの詳細は後述する。
同様に、空気導入アパーチャ156、空気排出アパーチャ157及びそのアパーチャ延長部281はそれぞれ、アノード流れ場プレート120の後面と共に1つのチャンバを定める。空気は、第1の空気接続ポート106を通って入り、アノード及びカソード空気導入アパーチャ136及び156によって形成されたダクトを通って流れ、上述のチャンバへと流れる。ここから、空気は、カソード流れ場プレート130のアパーチャ延長部281の流路284に沿って流れ、カソード流れ場プレート130のスロット280を通り、カソード流れ場プレート130の前面の酸化体流れ場142に至る。ここでも、本発明においては、酸化体は「裏側」から供給される。流れ場142における空気の流れのパターンの詳細は後述する。
次に、再び図2aを参照すると、アノード流れ場プレート120の前面の水素流れ場132のパターンが示されている。図2aに示されるように、複数の第1の又は燃料導入配分流路170が、水素導入口140に隣接したスロット180と連通しており、基本的に、各スロット180と連通した一対の導入配分流路がある。第1の又は導入配分流路170が、流れ場132の主要又は中央部分に対して略横断方向に、異なる範囲まで延びている。他の導入配分流路170をオフセットして収容するために、第1の又は配分流路170の幾つかは、図示されるように、水素導入アパーチャ140に隣接したスロット180の直近に、縦に延びる短い部分170aを有すると共に、流れ場132の横断方向に延びる部分170bを有する。各第1の又は導入配分流路170は、複数のリブ173によって隔てられた複数の中央又は主要流路172に分かれている。これらの主要流路172は直線的であり、流れ場132の長さに沿って、水素導入アパーチャ140から水素排出アパーチャ141に向かって平行な関係で延びている。
排出口では、複数の第2の又は燃料排出収集流路171が、水素排出アパーチャ141に隣接したスロット180と連通している。これと対応して、第2の又は燃料排出収集流路171が、流れ場132の略横断方向に、異なる範囲まで延びている。他の燃料排出収集流路171をオフセットして収容するために、第2の又は燃料排出収集流路171の幾つかは、水素排出アパーチャ141に隣接したスロット180の直近に、縦に延びる短い部分171aを有すると共に、流れ場132の横断方向に延びる部分171bを有する。第2の又は排出収集流路171が、第1の又は導入配分流路170に対応して配置されている。各第1の又は導入配分流路170から分かれた複数の主要流路172は、対応する1つの第2の又は排出収集流路171へと収束する。なお、第1及び第2の流路170、171の縦に延びる部分170a、171は、主要流路172の長さと比較してかなり短い。各収集及び配分流路170、171と関連づけられた主要流路172の数は、同じであっても又は同じでなくてもよい。更に、1つの導入配分流路170から供給される全ての主要流路172が同じ排出収集流路171に接続されること、及びその逆は、必須ではない。所望の場合、リブ173及び/又は流路172の幅は、異なる流路対リブの比率を得るように調節可能である。
従って、水素は、水素導入アパーチャ140に隣接したスロット180から第1の又は燃料導入配分流路170へと個別に流れる。次に、各第1の又は燃料導入配分流路170における水素の流れは、複数の中央又は主要流路172へと更に分けられる。水素は、複数の主要流路172に沿って流れ、アノード流れ場132の反対側の端部の第2の又は排出収集流路171によって集められる。従って、水素は、第2の又は排出収集流路171に沿って流れ、水素排出アパーチャ141に隣接したスロット180を通り、アノード流れ場プレート120の後面に至る。上述のように、カソード水素排出口161及びその延長部分181は、アノード流れ場プレート120の後面と共に1つのチャンバを定める。従って、水素はチャンバに入り、アノード及びカソード水素排出アパーチャ141及び161によって形成された燃料電池スタックを貫通するダクトを通って流れ、第2の水素接続ポート111を通って燃料電池スタックから出る。水素の流れを第1の又は導入配分流路170へと分け、次に、複数の主要流路172へと分け、それに対応して排出口で収集することにより、水素ガスの分布が改善されると共に、水素がGDMにわたってより均一に散逸され、それにより、流れ場の横断方向の圧力差が低減され、燃料電池効率が向上する。
次に図3aを参照すると、カソード流れ場プレート130の前面の酸化体流れ場142のパターンが示されており、この酸化体流れ場には概ね同様の手法が用いられている。ここでは、酸化体は周囲空気である(適切に濾過、加湿等の処理がなされている)。酸素は空気の約20%しか構成していないので、遙かに大きな体積及び質量の流れが必要である。これを理由として、空気導入口156及び排出口157はより大きく、3つのスロット280が設けられている。図3aに示されるように、複数の第3の又は酸化体導入配分流路186が、空気導入アパーチャ156に隣接したスロット280と連通している。第3の又は導入配分流路186は、流れ場142の主要又は中心部分に対して略横断方向に、異なる範囲まで延びている。他の導入配分流路186をオフセットして収容するために、導入配分流路186の幾つかは、空気導入アパーチャ156に隣接したスロット280の直近に、縦に延びる短い部分186aを有すると共に、流れ場142の横断方向に延びる部分186bを有する。各第3の導入配分流路186は、複数のリブ189によって隔てられた複数の中央又は主要流路188に分かれている。これらの主要流路188は直線的であり、流れ場142の長さに沿って、空気導入アパーチャ156から空気排出アパーチャ157に向かって平行な関係で延びている。
排出口では、複数の第4の又は酸化体排出収集流路187が、空気排出アパーチャ157に隣接したスロット280と連通している。これと対応して、第4の又は排出収集流路187が、流れ場142の略横断方向に、異なる範囲まで延びている。他の排出収集流路187をオフセットして収容するために、第4の又は排出収集流路187の幾つかは、空気排出アパーチャ157に隣接したスロット280の直近に、縦に延びる短い部分187aを有すると共に、流れ場142の横断方向に延びる部分187bを有する。第4の又は排出収集流路187が、第3の又は導入配分流路186に対応して配置されている。各第3の又は導入配分流路186から分かれた複数の主要流路188は、対応する1つの第4の又は排出収集流路187に収束する。なお、導入配分流路186及び排出収集流路187の縦に延びる部分は、主要流路188の長さと比較してかなり短い。各導入配分流路186及び排出収集流路187と関連づけられた主要流路188の数は、同じであっても又は同じでなくてもよい。所望の場合、リブ189及び/又は流路188の幅は、異なる流路対リブの比率を得るように調節可能である。同様に、燃料又は水素の流れ場に関して、1つの導入配分流路186から供給される全ての主要流路188が同じ排出収集流路187に接続されること、及びその逆は、必須ではない。
従って、空気は、空気導入アパーチャ156に隣接したスロット280から第3の又は空気導入配分流路186へと個別に流れる。次に、各第3の又は空気導入配分流路186における空気の流れは、複数の中央又は主要流路188へと更に分けられる。空気は、複数の主要流路188に沿って流れ、カソード流れ場142の反対側の端部の第4の又は排出収集流路187によって集められる。従って、空気は、第4の又は排出収集流路187に沿って流れ、空気排出口157に隣接したスロット280を通り、カソード流れ場プレート130の後面に至る。上述のように、カソード空気排出アパーチャ157及びそのアパーチャ延長部281は、アノード流れ場プレート120の後面と共に1つのチャンバを定める。従って、空気はチャンバに入り、カソード及びカソード空気導入アパーチャ137及び157によって形成された燃料電池スタックを貫通するダクトを通って流れ、第2の空気接続ポート107を通って燃料電池スタックから出る。空気の流れを第3の又は導入配分流路186へと分け、次に、複数の主要流路188へと分け、それに対応して排出口で収集することにより、空気の分布が改善されると共に、空気がGDMにわたってより均一に散逸され、それにより、流れ場の横断方向の圧力差が低減され、燃料電池効率が向上する。
次に図3bを参照すると、カソード流れ場プレート130の後面の冷却剤流れ場144のパターンが示されている。図3bに示されるように、複数の第5の又は冷却剤導入配分流路190が、冷却剤導入アパーチャ158と連通している。第5の又は導入配分流路190は、冷却剤導入アパーチャ158から縦に延びる部分190aを有すると共に、流れ場144の略横断方向に異なる範囲まで延びる部分190bを有する。流れ場144の長さ及び他の導入配分流路190を収容するために、第5の又は導入配分流路190の縦に延びる部分190aは様々な長さを有する。各第5の又は導入配分流路190は、複数のリブ193によって隔てられた複数の主要流路192に分かれている。これらの主要流路192は直線的であり、流れ場144の長さに沿って、冷却剤導入アパーチャ158から冷却剤排出アパーチャ159に向かって平行な関係で延びている。
複数の第6の又は冷却剤排出収集流路191が、冷却剤排出アパーチャ159と連通している。第6の又は排出収集流路191は、冷却剤排出口159から縦に延びる部分191aを有すると共に、流れ場144の略横断方向に異なる範囲まで延びる部分191bを有する。流れ場144の長さ及び他の冷却剤排出収集流路191を収容するために、第6の又は冷却剤排出収集流路191の縦に延びる部分191aは様々な長さを有する。第6の又は冷却剤排出流路191は、第5の又は導入配分流路190に対応して配置される。各第5の又は導入配分流路190から分かれた複数の流路192は、対応する第6の又は排出収集流路191へと収束する。なお、第5及び第6の流路190、191の縦に延びる部分190a、191aは、流路192の長さと比較してかなり短い。各第5の又は導入配分流路190から分かれる流路192の数は、同じであっても又は同じでなくてもよい。ここでも、導入配分流路190から分かれた全ての流路が1つの排出収集流路191に接続されること、及びその逆は、必須ではない。所望の場合、リブ193及び/又は流路192の幅は、異なる流路対リブの比率を得るように調節可能である。
従って、冷却剤は、第1の冷却剤接続ポート108から入り、アノード及びカソード冷却剤導入アパーチャ138及び158によって形成されたダクトを通って流れ、カソード冷却剤導入アパーチャ158に至る。ここから、冷却剤は、冷却剤導入アパーチャ158から個別に第5の又は冷却剤導入配分流路190に流れ込む。次に、各第5の流路190における冷却剤の流れが、更に複数の主要流路192に分けられる。冷却剤は複数の主要流路192に沿って流れ、冷却剤流れ場144の反対側の端部において、複数の第6の又は排出収集流路191に集められる。従って、冷却剤は、第6の又は排出収集流路191に沿って、冷却剤排出アパーチャ159へと流れる。ここから、冷却剤は、カソード及びカソード冷却剤排出アパーチャ139及び159によって形成された燃料電池スタックを貫通するダクトを通って流れ、第2の冷却剤接続ポート109を通って燃料電池スタックから出る。第5の又は導入配分流路190から複数の中央又は主要流路192への冷却剤の流れを分けることにより、冷却剤の分布が改善されると共に、熱が流れ場にわたってより均一且つ効率的に移される。
本発明では、アノード流れ場132、カソード流れ場142及び/又は冷却剤流れ場144は、流路を複数のグループに分けるという概念を用いる。この概念は、流れ場設計の複雑さを増すことなく、流れ場にわたるより均一な流体の分布を提供する。本発明では直線的な流路の使用も可能であり、直線的な流路は、曲がりくねった流路を超える幾つかの固有の長所を提供する。
次に図3eを参照すると、カソード流れ場プレート130の前面の酸化体導入配分流路186a及び186bの拡大図が示されている。この特定の例では、各導入配分流路186bは、4つのリブ189によって隔てられた5つの主要流路188に分けられる。主要流路188の縦方向、即ち流れ場142の方向に沿って、各主要流路188は、流れ場142の横断方向に延びる導入配分流路186bから離間した位置で始まる。この例では、リブ189によって設定される全ての主要流路188の開始点は、導入配分流路186bから略同じ距離Dだけ離間されている。これは必須ではなく、各主要流路は導入配分流路186bに対する異なる位置から始まってもよいことを理解されたい。より良好な流れの分布を生じると共に圧力降下を最小限にするために、この例では、導入配分流路186bと主要流路188の開始点との間の距離Dは、主要流路188の幅の1.5〜2倍であるのが好ましく、この距離Dは、導入配分流路の幅に応じてこれより大きくてもよい。導入配分流路186a、186bの幅は、主要流路188の幅の1〜1.5倍であるのが好ましい。
アノード流れ場プレート120の前面では、主要流路172の開始点は、燃料導入配分流路170bから或る距離だけ離間されることを理解されたい。この距離は、主要流路172の幅の1.5〜2倍であるのが好ましい。更に、主要流路172の両端部は燃料排出収集流路171bから離間され、この距離は、主要流路172の幅の1.5〜2倍であるのが好ましい。同様に、主要流路188の両端部は酸化体排出収集流路187bから離間され、この距離は、主要流路188の幅の1.5〜2倍であるのが好ましい。
図3eに示されるように、導入配分流路186a及び186bの各接合部には、酸化体ガスの流れを容易にして乱流を低減するためにフィレット186cが設けられている。同様に、主要流路188及び導入配分流路186bの接合部にはフィレット186dが設けられている。フィレット186c及び186dは、乱れが少ない流れのパターンを生じるのを補助すると共に、流れ場142にわたる圧力を低減する。フィレット186cは、0.03125インチ、即ち0.79mmの半径を有するのが好ましく、フィレット186dは、1/64インチ、即ち0.395mmの半径を有するのが好ましい。なお、アノード流れ場プレート120の前面の燃料導入配分流路170及び燃料排出収集流路171、並びに、カソード流れ場プレート130の前面の酸化体排出収集流路187にも、フィレットを設けることが可能である。
上記の説明では、燃料ガス、酸化体及び冷却剤用の流路を、このような流路は一般的にプレートの中央にあり且つ一般的に存在する流路の大部分を含むという意味で、「主要」として示した。主要流路は、適切な面にわたる均一な燃料分布を提供するように選択されると共に、全流れ場領域にわたって延びるのが理想的である。実際には、導入及び排出マニホールド機能を備えるために、導入配分流路及び排出収集流路を設けることが必要である。
この導入配分及び排出収集流路構成では、ガス流がまず1つの流路(導入配分流路)に沿って流れ、次に複数の小さい流路(主要流路)に分岐する、分岐構造が設けられることも理解されよう。この構造は更なる細分レベルを含み得る。例えば、導入配分流路は複数の二次的な配分流路に接続されてもよく、二次的な配分流路の各々が複数の主要流路に接続されてもよい。これと対応して、排出口には、複数の主要流路からのガスを集める二次的な収集流路が設けられ、これらの二次的な収集流路は、単一の排出収集流路に接続される。
次に図4a及び図4bを参照すると、本発明の燃料電池及び従来の設計の燃料電池の断面図が示されている。本発明は略直線形の流路を用いるので、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130のリブ173、189の実質的な部分が位置合わせされるように、即ち、アノード流れ場プレート120のリブ173がカソード流れ場プレート130のリブ189に押し当てられ、その間にMEA124が挟持されるように、アノード及びカソード流れ場プレート120、130を製造することが可能である。図2a及び図3aに示されるように、本発明では、流れ場の端部の分岐部を除き、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130の中央部分は、略直線形の流路172、188及びリブ173、189で構成される。従って、流路及びリブの幅、流路対リブの比率、又は流れ場プレートを横断する流路の数を調節することにより、これらの中央部分において両プレートのリブを一致させることができる。
アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130のリブを一致させることにより、従来の非一致型設計を超える複数の長所が与えられる。従来の非一致型流れ場プレートを用いた燃料電池スタックと、本発明による流れ場を用いた燃料電池スタックとを、それぞれ稼働させる比較実験において、従来の燃料電池スタックでは、非一致型リブによる剪断効果に起因して、GDM及びMEAが過剰に圧縮及び過剰に伸張されることが示された。一方、本流れ場設計を用いた燃料電池スタックでは、GDM及びMEAの損傷は観察されなかった。更に、燃料電池の性能及び効率も向上した。
図5は、2つの燃料電池スタックの分極曲線の比較を示している。このグラフの曲線は、電池の電圧と電流密度との関係を示す。曲線501は、図4aのように、アノード及びカソード流れ場プレートのリブが少なくとも中央部分において互いに一致する、本発明による燃料電池の分極曲線を表す。3つの燃料電池スタックは全て、スタック内に100個の電池を有する。曲線502及び503は、異なるGDMが用いられると共にアノード及びカソード流れ場プレートのリブが一致しない、即ち、図4bのように中央部分でリブがオフセットされた、2つの燃料電池スタックの性能を表す。図からわかるように、3つの全てのケースにおいて、任意の所与の電流密度について、電流密度が増加すると電池電圧が減少しているが、本発明の燃料電池スタックの電池電圧は他の2つのスタックよりも高く、これは、より良好な性能を示すものである。
本発明では、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130は、同じパターン及び同じ流路対リブ比率を有する。流路対リブの比率は1.5:1であるのが好ましい。しかし、アノード流れ場プレート120及びカソード流れ場プレート130のリブが互いに一致する、即ち、互いに正対する場合には、問題が生じ得ることに留意されたい。燃料電池反応の式から、水素と酸素との量論比は1:2であることが理解される。実際の動作では、燃料電池スタックが十分な反応物質を確実に有するように、燃料ガス及び酸化体ガスは、反応物資の消費速度、及びそれに従って燃料電池スタックの電力出力に対して、過剰な流量で燃料電池スタックに供給される。このためには、アノード流れ場132にわたって流れる燃料ガスの量よりも多い酸化体ガスが、カソード流れ場142にわたって流れることが必要である。従来は、これは通常、より多くの活性領域を設けるためにカソード流路の幅を広げることによって達成される。本実施形態では、流れ場のパターン及び流路対リブの比率が両方の流れ場プレート120及び130で同じであるので、十分な量の空気がGDM126を横断してMEA124へと散逸可能なように、単にカソード流路の深さを増加させることによって、この要求を満たすことができる。カソード流れ場プレート120及びアノード流れ場プレート130の流路の深さの比率は、燃料電池反応で実際に用いられる燃料及び酸化体によって異なる。反応ガスとして、純水な水素と約20%の酸素を含む空気とを用いる場合には、カソード流れ場プレート120及びアノード流れ場プレート130の流路の深さの比率は2〜3:1であるのが好ましい。より好ましくは、この比率は3:1である。改質装置から水素を得る場合、即ち、燃料ガス中の純水な水素が40%だけである場合には、この比率は1.5〜2:1であるのが好ましい。
本発明の精神は、燃料電池の流れ場プレートの最適化に関する。なお、流れ場プレート及び本発明の燃料電池スタックの形状は、上記の説明で開示されたものに限定されず、例えば、必ずしも本明細書で開示されたような長方形でなくてもよいことを認識されたい。更に、流れ場プレート、MEA及びガス拡散媒体に選択された材料は従来の燃料電池技術の主題であり、それらは本発明の一部を構成するものではない。
上記の説明は好ましい実施形態を構成するものであるが、本発明は、添付の特許請求の範囲の適切な範囲の正当な意味を逸脱することなく、変形及び変更され得ることを認識されたい。例えば、本発明は、燃料として純粋な水素を用いる、アルカリ、溶融炭酸塩、及びリン酸を含むがこれらに限定されない他のタイプの燃料電池における適用可能性を有し得る。更に、システム内の構成要素の数及び構成は変更され得るが、依然として特許請求の範囲の範囲及び精神に含まれる。