JP2006352808A - 電気・音響変換素子、アレイ型超音波トランスデューサおよび超音波診断装置 - Google Patents

電気・音響変換素子、アレイ型超音波トランスデューサおよび超音波診断装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ダイアフラム型電気・音響変換素子の電気・音響変換特性を安定させるとともに、その電気・音響変換素子用いて構成した超音波診断装置のノイズレベルを低減する。
【解決手段】 電気・音響変換素子9を、シリコン基板1上に形成された下部電極2と、その上部に空隙部4を挟んで上部電極6とによるコンデンサセル8によって構成し、上部電極6の空隙部4側に形成する電極短絡防止膜5を、電気的時定数が1秒より短く、かつ、10マイクロ秒より長くなる材料、例えば、化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコンによって形成する。その結果、電極短絡防止膜5は、微弱な導電性を持つことになるので、電極短絡防止膜5への帯電やそのドリフトを防止することができる。その結果、電気・音響変換素子9の電気・音響変換特性が安定し、さらには、超音波診断装置の音響ノイズレベルが低減する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、半導体マイクロ加工技術を用いて製作するダイアフラム型の電気・音響変換素子、並びに、その電気・音響変換素子を用いたアレイ型超音波トランスデューサおよび超音波診断装置に関する。
20世紀初頭、水晶の圧電現象を利用して超音波を送受信する試みが開始されたが、水晶は、その電気・機械変換効率が低いという問題があった。そのため、特に、受信トランスデューサとして十分な感度を得ることができず、実用的な製品に応用されるまで至らなかった。その後、電気・機械変換効率が極めて高いロッシェル塩が発見され、第2次世界大戦中には、これを用いてソナーが開発された。しかしながら、ロッシェル塩は、潮解性が大きいなど、結晶の安定性に問題があり、安定した圧電特性を得るには特別の注意が必要であった。
続いて、第二次大戦直後に、電気・機械変換効率が高く、しかも、安定した圧電特性を持ったチタン酸バリウムが発見された。チタン酸バリウムは、セラミックであるために製作形状の自由度が高いという長所も持ち合わせ、「圧電セラミックス」という概念が誕生した。そして、20世紀も後半に入ると、チタン酸バリウムよりもキュリー点が高く、さらに安定した圧電特性を持ったチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)セラミックスが発見された。PZTセラミックスの出現によって感度が高くしかも安定性に優れた圧電素子を得ることができるようになり、その後、PZTセラミックスを用いた圧電素子は、超音波トランスデューサなどに広く用いられるようになり、現在に至っている。
超音波トランスデューサの材料が水晶から圧電セラミックに代わったことは、それに付随する受信増幅アンプや送信駆動回路などの電子回路を真空管から半導体に代えるにあたって、電気的インピーダンス整合の面で好都合であった。しかしながら、駆動回路を含めた電子回路の半導体化には、高電圧、高周波数動作などの要件を満たす必要があったために、高速サイリスタ、さらには、高耐圧電界効果トランジスタ(FET:Field Effect Transistor)の実用化を待つ必要があった。このような超音波トランスデューサ周辺の電子回路の半導体化が実現された後、1990年代になって、半導体微細加工技術によりダイアフラム型超音波トランスデューサを形成する研究が始まった。このような半導体超音波トランスデューサが実現すれば、超音波トランスデューサとその周辺回路とを一連の半導体加工プロセスにより形成すること可能になり、超音波送受信器の製造コストと性能の両面において、画期的な効果を期待することができる。
非特許文献1には、半導体マイクロ加工技術により製作されたダイアフラム型超音波トランスデューサにおける電気・音響変換素子の例が示されている。その電気・音響変換素子の基本構造は、不純物がドープされたシリコン基板の上部に空隙部が設けられ、その空隙部を挟んでシリコン基板に対向するようにシリコン窒化膜のダイアフラムが形成され、そのダイアフラムの空隙部側の表面または内側に、さらに、電極層が形成されたものであった。
すなわち、その電気・音響変換素子の基本構造は、シリコン基板を下部電極、ダイアフラム側に形成された電極層を上部電極としたコンデンサであった。従って、これらの電極間に電圧を印加すれば、両電極上に反対符号の電荷が誘起され、互いに引力を及ぼしあうので、ダイアフラムが変位する。このとき、ダイアフラムの外側が水や生体に接していれば、これら水や生体を媒体として音波を放射する。また、DCバイアス電圧を印加することにより電極上に一定の電荷を誘起させておき、ダイアフラムが接している媒体から強制的に振動を加える、つまり、ダイアフラムに変位を与えると、その変位量に応じて電極間に付加的な電圧が生ずる。これらが非特許文献1に示されているダイアフラム型超音波トランスデューサの電気・音響変換の原理である。なお、この超音波受信時の音響から電気への変換の原理は、可聴音域のマイクロフォンとして用いられているDCバイアス型コンデンサマイクロフォンの原理と同じである。
以上のような電気・音響変換素子は、シリコンのように機械的に硬い材料で構成されていても、背面に空隙をもつダイアフラム構造になっているために、生体や水など機械的に柔らかい材料に対して良好な音響インピーダンス整合をとることができる。また、電気・音響変換素子がシリコン基板上に形成されたことによって、それを駆動または制御する超音波受送信回路を同じまたは直近に配置されたシリコン基板上に一体的に形成することが可能となった。
その後、ダイアフラム型超音波トランスデューサは、さらに研究・開発が進められ、その基本構造および動作原理は、大きくは変わっていないものの、送受信感度などの面で、PZTを用いた圧電型トランスデューサと比較するに足る水準に達している。
M. Haller and B. T. Khuri-Yakub, "A Surface Micromachined Electrostatic Ultrasonic Air Transducer", Proceedings of Ultrasonic Symposium, p.1241 - p.1244, 1 Nov. 1994
ところで、ダイアフラム型の電気・音響変換素子では、その変換効率を最大化するために、その電極には、ダイアフラムがシリコン基板に接触する寸前まで変位するような大きさのDCバイアス電圧を印加して、できる限り多くの電荷を誘起させる。そのため、ダイアフラム側の電極とシリコン基板とは接触し易くなる。しかしながら、実際にダイアフラム側の電極がシリコン基板に接触したり、限りなく接近したりすると、短絡して電極間に過大電量が流れたり、放電現象を生じたりする。その場合には、生じた過大電流などによって、電気・音響変換素子それ自身またはその素子に接続された周辺回路系が破壊されることになる。
そこで、現状の電気・音響変換素子の一般的な設計として、ダイアフラム側の電極または基板側の電極の少なくともいずれか一方の電極の空隙部側には、絶縁膜からなる電極短絡防止膜が設けられている。この電極短絡防止膜により、ダイアフラム側の電極がシリコン基板に接触しても、電極間が短絡したり放電現象は生じたりすることを防止することができる。
このような電極短絡防止膜は、窒化シリコン膜によって形成されることが多く、また、その窒化シリコン膜は、しばしば、CVD(Chemical Vapor Deposition)に代表される気相成長により形成される。ところが、CVDにより形成されるシリコン窒化膜は、熱酸化により形成されるシリコン酸化膜などに比べて結合の欠陥を多く含み、そのため、高電圧を印加すると帯電しやすい性質がある。しかも、その帯電する電荷量が、印加電圧値や時間とともにドリフトし、安定しない。
すなわち、CVD窒化膜などの電極短絡防止膜を設けた電気・音響変換素子では、このような不安定な電荷が、電気・音響変換の原理を構成するのに不可欠なコンデンサの電極間に生じることになる。従って、電極間に同じ電圧を印加しても、あるいは、ダイアフラムの電極が同じ量変位しても、電極に誘起される電荷量が変化し、ドリフトすることになる。そのため、電気・音響変換素子の電気・音響変換特性がドリフトし、安定しないことになる。
電気・音響変換特性のドリフトは、このような電気・音響変換素子を多数並べて構成されたアレイ型超音波トランスデューサの特性に重大な影響を及ぼす。アレイ型超音波トランスデューサを構成する各素子の電気・音響変換特性が個々バラバラにドリフトすると、そのアレイ型超音波トランスデューサを用いた超音波診断装置では、送信および受信ビームを形成させたときの装置全体としての音響ノイズレベルが著しく上昇するからである。以上のように、半導体ダイアフラム型の電気・音響変換素子を用いた超音波トランスデューサでは、感度と安定性の課題が十分には解決されていない。
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明の目的は、電極短絡防止膜を設けた電気・音響変換素子の電気・音響変換特性を安定させるとともに、その電気・音響変換素子を用いて構成した超音波トランスデューサ、さらには、超音波診断装置の音響ノイズレベルを低減することにある。
以上の目的を達成するために、本発明では、前記電極短絡防止膜に微弱な導電性を付与するようにした。すなわち、本発明の電気・音響変換素子は、シリコン基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極の上部に空隙部を挟んで前記第1の電極に対向するように形成された第2の電極とを含んで構成されたダイアフラム型の電気・音響変換素子であって、前記第1の電極および第2の電極の少なくともいずれか一方の電極の空隙部側に電極短絡防止膜が形成され、前記電極短絡防止膜は微弱な導電性を有し、その導電性を定める電気的時定数(=(誘電率/導電率)1/2)が、当該電気・音響変換素子に供給される電源電圧の立ち上がり時間よりも十分短く、かつ、当該電気・音響変換素子が変換対象とする音響波の振動周期よりも十分長いことを特徴とする。より具体的には、前記電極短絡防止膜の電気的時定数は、1秒より短く、かつ、10マイクロ秒より長いことを特徴とする。
本発明によれば、電極短絡防止膜を電気的時定数が、例えば、1秒より短く、かつ、10マイクロ秒より長くなるような材料を用いて形成することによって、その電極短絡防止膜に微弱な導電性を付与することができる。電極短絡防止膜がそのような微弱な導電性を持つことによって、電極短絡防止膜は、超音波の動作領域における時間スケールでは、誘電体として動作し、電源投入時の立ち上がり時間程度の時間スケールでは、導電体として動作するようになる。すなわち、後者の時間スケールでは、電極短絡防止膜には、電荷が速やかに帯電し、また、速やかに放電することになる。従って、電極短絡防止膜に帯電した電荷がドリフトするような現象は生じない。そのため、電極短絡防止膜を設けた電気・音響変換素子の電気・音響変換特性が安定し、その電気・音響変換素子を用いて構成した超音波診断装置の音響ノイズレベルが低減する。
また、前記電極短絡防止膜は、化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコン膜で形成されたものであることを特徴とする。
窒化シリコンは、化学量論的に安定な絶縁物であるが、その窒化シリコンにシリコンを化学量論的に過剰に含ませると、シリコンに余剰の結合手を生じさせることになり、その結合手が電荷の移動媒体となって、微弱な導電性を持つことになる。すなわち、微弱な導電性を持った電極短絡防止膜を、シリコンを化学量論的に過剰に含んだ窒化シリコンによって実現することができる。
本発明によれば、電極短絡防止膜を設けた電気・音響変換素子の電気・音響変換特性が安定し、その電気・音響変換素子を用いて構成した超音波診断装置の音響ノイズレベルが低減する。
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳しく説明する。
図1は、本発明の実施形態における半導体ダイアフラム型の電気・音響変換素子の構造の概念を示す図、図2は、その電気・音響変換素子の単位構成要素であるコンデンサセルの断面構造を示した図である。
図1に示すように、電気・音響変換素子9は、コンデンサセル8がシリコン基板1上に平面的にハニカム状に複数配列されて構成される。ここで、コンデンサセル8は、シリコン基板1上に形成された下部電極2と、空隙部4を挟んで下部電極2に対向するように形成された上部電極6とからなるコンデンサである。
このコンデンサセル8の上部電極6は、上部電極6側から圧力、つまり、音圧が加えられた場合、または、上部電極6と下部電極2との間に電圧が印加された場合には、下部電極2側へ撓む。電気・音響変換素子9における電気・音響変換の原理は、上部電極6がこのとき撓んだ変位量と、撓むことによって生じた電荷量や電圧変化量との関係に基づくものである。その関係の詳細については、後記する。
図1および図2に示すように、上部電極6の空隙部4側には、上部電極6が下部電極2側へ撓んだときに下部電極2と接触・短絡することを防止するための電極短絡防止膜5が形成されている。また、図2に示すように(図1では図示せず)、下部電極2の上部には絶縁層7が形成され、絶縁層7によって上部電極6を機械的、構造的に支持する。すなわち、電気・音響変換素子9のダイアフラムの主体は、この絶縁層7によって構成される。なお、この絶縁層7は、電気・音響変換素子9全体を外部の環境から保護する役割も担っている。
次に、図2を参照して、電気・音響変換素子9を構成するコンデンサセル8の断面構造について、さらに詳しく説明する。
図2に示すように、コンデンサセル8は、例えば、n型の不純物がドープされ、導電性が付与されたn型シリコン基板1上に形成される。シリコン基板1は、通常、下部電極2を兼ねており、図示した下部電極2の部分は、その導電性を高めるために、しばしば、不純物濃度が高くなるように形成される。
シリコン基板1のすぐ上部には、窒化シリコン(Si34)などからなる絶縁層3が形成されており、その厚さはおよそ100nmである。また、その絶縁層3の一部は除去され、空隙部4となっている。従って、空隙部4は、およそ100nmの厚みに相当し、また、平面的には6角形状をなし(図1参照)、その内径はおよそ50μmである。
絶縁層3および空隙部4の上部には、シリコンを化学量論的に過剰に含んだ窒化シリコン((Si34xSi1-x)からなる電極短絡防止膜5が形成されている。電極短絡防止膜5の厚さはおよそ100nmである。このとき、0.7<x<0.95とするのが好ましい。通常の窒化シリコンは絶縁体であるが、シリコンを化学量論的に過剰に含んだ窒化シリコンにおいては、微弱な導電性が得られる。その微弱な導電性の果たす効果などについては、後記する。
電極短絡防止膜5の上部には、厚さがおよそ100nmのアルミニウムなどからなる上部電極6が形成され、さらにその上部には、窒化シリコン(Si34)などからなる絶縁層7が形成されている。絶縁層7の厚さは、およそ1500nmであり、絶縁層7は、電気・音響変換素子9のダイアフラムの機械的強度を担う層となっている。すなわち、上部電極6と下部電極2との間に電圧が印加されたり、絶縁層7の外部から圧力を受けたりした場合には、電極短絡防止膜5、上部電極6および絶縁層7が一体となって撓み、いわゆるダイアフラムを構成する。
続いて、図3〜図5を参照して、上部電極6と下部電極2との間に電極短絡防止膜5が形成されている場合のコンデンサについて、その電気的な特性の評価を試みる。ここで、図3は、空隙部と電極短絡防止膜とを挟んで構成されたコンデンサについてその電気的モデルの例を示した図、図4は、図3と同じ構成のコンデンサについて電極短絡防止膜に電荷が蓄積された場合の電気的モデルの例を示した図、図5は、(a)図3と同じ構成のコンデンサについて電極短絡防止膜に微弱な導電性が付与された場合の電気的モデルの例を示した図、(b)その等価回路を示した図である。
図3において、上部電極6と下部電極2とによって構成されるコンデンサを理想的な平行平板コンデンサとみなし、上部電極6に接する電極短絡防止膜5の誘電率をε、その厚さをaとし、また、真空の誘電率をε0、空隙部4の厚さをz、電極面積をSとすれば、このコンデンサの電気容量は、S/(z/ε0+a/ε)となる。このとき、上部電極6と下部電極2との間に電圧V(上部電極6の下部電極2に対する電圧)が印加されていた場合には、下部電極2には、−SV/(z/ε0+a/ε)の電荷量が蓄積される。
このとき、下部電極2の位置における電界強度は、下向きにV/(z+aε0/ε)であるので、下部電極2に働く力は、上向きにε0SV2/(z+aε0/ε)2と計算される。従って、上部電極6には、下向きにε0SV2/(z+aε0/ε)2の力が働く。すなわち、上部電極6と下部電極2との間に働く力は、印加電圧Vの2乗に比例し、誘電率で補正した電極間距離(z+aε0/ε)の2乗に反比例する。従って、同じ印加電圧で大きな力を出すには、電極短絡防止膜5の厚さaと空隙部4の厚さzとを、動作に支障がない範囲で小さくする必要がある。
次に、電極短絡防止膜5に電荷が蓄積した場合の影響を評価する。図4に示すように、電極短絡防止膜5の上部電極6からxの距離の位置に蓄積している電荷量をq(x)とすると、この電荷量q(x)により下部電極2に誘起される電荷量は、−xq(x)/(zε/ε0+a)となる。従って、下部電極2に誘起される総電荷量Qzは、次の(式1)のように表わすことができる。
Figure 2006352808
ここで、上部電極6と下部電極2との間に電圧Vが印加されていた場合には、Qzに働く力Fqは、上向きであり、次の(式2)によって表わすことができる。
Figure 2006352808
従って、下部電極に働く力の合計Faは、上向きであり、図3で求めた力に(式2)の力を加え、次の(式3)によって表わすことができる。
Figure 2006352808
従って、電荷q(x)の符号が、Vの符号と一致しているならば、電荷q(x)が帯電していない場合に比べ、上部電極6と下部電極2との間に印加された電圧Vが同じであっても、Fqだけ大きな力が生じることになる。このとき、電荷q(x)が安定しているならば、この電荷q(x)により生じる力を利点として活用することもできる。
ところが、一般的なCVD窒化シリコン膜などに生じる電荷q(x)は、時間的にドリフトする。そのため、上部電極6と下部電極2との間に印加された電圧Vが同じであるときにも、時間的にドリフトする電荷q(x)のため、上部電極6と下部電極2との間に生じる力もドリフトすることになる。すなわち、電気・音響変換素子9の電気・音響変換特性がドリフトすることになり、それを用いて構成した超音波トランスデューサの実用性が著しく損なわれてしまう。
そこで、本実施形態においては、前記したように電極短絡防止膜5を、シリコンを化学量論的に過剰に含んだ窒化シリコンによって形成し、電極短絡防止膜5に微弱な導電性を付与する。そして、電気・音響変換素子9が主に適用される超音波診断装置の動作の状況を考慮して、電極短絡防止膜5に付与すべき微弱な導電性の範囲を定める。
一般に、超伝導体を除くあらゆる物質は、ある時間スケールでは導電体でありながら、他の時間スケールでは誘電体であり得る。ある物質が、ある時間スケールにおいて誘電体として振る舞うか、導電体として振る舞うかは、その物質の誘電率と導電率との比により決まる。石英ガラスを例にとれば、
誘電率:ε≒3.8×8.85pF/m≒34pF/m、
導電率:σ≒10-17/Ωm
であるから、
時定数:τ=(ε/σ)1/2≒1800秒=30分
に比べ、十分に短い時間スケールでは誘電体として振る舞い、十分に長い時間スケールでは導電体として振る舞う。
ところで、本実施形態の電気・音響変換素子9は、主として、パルス状超音波を送受信することによって、人体に代表される生体中のイメージングを行う超音波診断装置(超音波断層撮像装置)に適用される。その超音波診断装置に含まれる動作の時間スケールを時間の短い順に列挙すると、以下のようなものがある。
(1)超音波周期: 0.1〜1μ秒
(2)超音波パルス長: 0.3〜3μ秒
(3)パルス送信繰り返し周期: 0.1〜1m秒
(4)撮像(フレーム)周期: 10〜100m秒
(5)撮像モード切換え時間: 0.1〜10秒
(6)電源投入立ち上がり時間: 10〜100秒
本実施形態における電気・音響変換素子9において、上部電極6と下部電極2との間に印加されるAC電圧VACの時間スケールは、(1)超音波周期によって決定され、また、DCバイアス電圧VDCの時間変化の時間スケールは、(6)電源投入立ち上がり時間によって決定される。従って、電極短絡防止膜5の時定数τを、(1)超音波周期より十分長く、かつ、(6)電源投入立ち上がり時間より十分短く設定すれば、電極短絡防止膜5は、印加AC電圧VACに対して誘電体として、印加DCバイアス電圧VDCに対しては導電体として安定して振る舞う。
そこで、本実施形態においては、電気・音響変換素子9が超音波断層撮像装置などの超音波トランスデューサに使用されるものとして、電極短絡防止膜5の電気的時定数τを、(1)超音波周期より十分長く、かつ、(6)電源投入立ち上がり時間より十分短く設定する。すなわち、電極短絡防止膜5には、その時定数τが10μ秒以上、かつ、1秒以下となるような微弱な導電性を付与する。
図5(a)を参照して、電極短絡防止膜5に以上のような微弱な導電性が付与された場合のコンデンサの電気的モデルの例について説明する。図5に示すように、上部電極6と下部電極2との間には、超音波パルスなどのAC電圧VACが印加される。この場合、このコンデンサは、AC電圧VACに対しては、電極短絡防止膜5が誘電体として動作するため、コンデンサとしての電極間距離は、空隙部4の厚さzと電極短絡防止膜5の厚さaとの合計(z+a)となる。また、DCバイアス電圧VDCに対しては、その時間変化のスケールが非常に長い(無限大)ので、電極短絡防止膜5は導電体として動作する。従って、DCバイアス電圧VDCに対するコンデンサの実効的な電極間距離は、空隙部4の厚さzとなる。
すなわち、図5(a)のコンデンサは、AC電圧VACに応じて動作するコンデンサと、DCバイアス電圧VDCに応じて動作するコンデンサとが並列に接続された形になっている。従って、下部電極2に誘起される電荷量は、AC電圧VACによって誘起される電荷量と、DCバイアス電圧VDCによって誘起される電荷量とが合計されたものとなる。
図5(a)においては、AC電圧VACによって下部電極2に誘起される電荷量は、図3のコンデンサの電気的モデルと同様に計算することができ、
−SVAC/(z/ε0+a/ε)
となる。また、DCバイアス電圧VDCによって誘起される電荷量は、
−ε0SVDC/zとなる。よって、コンデンサの下部電極2に誘起される電荷量の合計は、
−SVAC/(z/ε0+a/ε)−ε0SVDC/z
となる。従って、下部電極2の位置における電界強度は、下向きに
DC/z+VAC/(z+aε0/ε)
となり、従って、下部電極2に働く力は、上向きに
ε0S[VDC/z+VAC/(z+aε0/ε)]2となる。
また、電極短絡防止膜5に導電性を付与した場合には、電極短絡防止膜5は、図5(b)の等価回路に示すように、その抵抗値がa/σSである抵抗として機能する。従って、図5(a)のコンデンサのインピーダンスは、次に示す(式4)または(式5)によって表わすことができる。ここで、(式5)は(式4)を単に変形した式である。
−jz[1/(ωε+σ2/ωε)+1/ωε0]/S
+aσ/(σ2ε2+σ2)/S (式4)
=z/ωS{−j[1/(ε+σ2/ω2ε)+1/ε0
+(a/z)ωσ/(ω2ε2+σ2)} (式5)
ここで、jは虚数単位、ωは駆動電圧または電流の角周波数である。簡単のために、電気音響変換の効果を表す項は無視している。
(式4)の第2項は、素子のインピーダンスの実数部であり、これに対応する(式5)の大括弧{ }内の第2項は、電極短絡防止膜5に導電性を与えたことにより生ずるパワーロスの相対的な大きさをおおよそ表したものになっている。この第2項はω=σ/εのとき、最大値(a/2z)/εをとる。従って、電気信号の角周波数ωが、このσ/εに近いと、電極短絡防止膜5に導電性を与えたことにより生ずるパワーロスが大きくなってしまう。このことは、電極短絡防止膜5のσ/εを、このコンデンサの使用角周波数に対して十分に小さいかあるいは充分に大きく設定する必要があることを意味している。すなわち、本実施形態では、このコンデンサを比較的周波数の高い超音波(1〜10MHz)を扱う電気・音響変換素子9として用いるので、電極短絡防止膜5のσ/εは、超音波周波数に対して充分に小さく設定する方がより現実的である。
以上のように、電極短絡防止膜5の電気的時定数τを、10μ秒以上、かつ、1秒以下に設定すれば、電極短絡防止膜5は、超音波パルスの時間スケールでは誘電体として動作し、電源投入立ち上がり時間の時間スケールでは導電体として動作する。また、その電気的なパワーロスも小さくて済む。よって、特性の安定した電気・音響変換素子9、さらには、特性の安定した超音波トランスデューサを得ることができる。
なお、本実施形態では、電極短絡防止膜5の電気的時定数τの最小値を10μ秒としたが、これは、電気的時定数τの最小値を超音波診断装置で通常使用される超音波の「超音波周期:0.1〜1μ秒」より十分に大きい値として、その10倍の10μ秒としたことによる。従って、超音波診断装置で通常使用される超音波の超音波周期が将来変わった場合には、電極短絡防止膜5の電気的時定数τの最小値は、超音波診断装置で通常使用される超音波の10倍の値によって定めてもよい。
続いて、電極短絡防止膜5の製法の例について説明する。電極短絡防止膜5は、前記したように化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコンSi34よりなる。このような窒化シリコン膜は、モノシランSiH4とアンモニアNH3との混合ガスを用いたCVD法により成膜形成することができ、通常、(Si340.8Si0.2の組成比を持つ。その組成比は、モノシランSiH4とアンモニアNH3との混合比を変えることによって制御することができる。この組成比の場合、誘電率、導電率およびそれらにより決まる時定数は、それぞれ、次のような値となる。
誘電率: ε≒8×8.85pF/m≒100pF/m、
1/導電率: 1/σ≒1MΩm、
時定数: τ=(ε/σ)1/2≒10m秒
この時定数は、前記のように、この電気・音響変換素子を基本単位として超音波診断装置に使用するアレイ型超音波トランスデューサを構成する目的にとって好適である。
なお、窒化シリコンとシリコンとの組成比により、誘電率はそれほど大きく変化しないが、導電率は大きく変化する。時定数τを、10μ秒以上、かつ、1秒以下に設定するためには、(Si34xSi1-xにおいて、およそ0.7<x<0.95とすることが好ましい。また、本実施形態では、電極短絡防止膜5の材料として、化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコンを用いたが、同様の時定数を持った材料であれば他の材料を用いてもよい。
ところで、電極短絡防止膜5は、元々、空隙部4が潰れて上部電極6と下部電極2とが接触したときに流れる過電流を防止し、周辺の駆動回路などが破壊されないようにすることを目的に設けられたものであった。本実施形態においては、電極短絡防止膜5に前記した範囲の時定数程度の微弱な導電性を付与したわけであるが、以下に、その程度の微弱な導電性では、上部電極6と下部電極2とが接触しても、過電流は流れず、周辺の駆動回路などが破壊されないことを示す。
一般に、超音波診断装置に用いられるアレイ型超音波トランスデューサは、電気・音響変換素子9をアレイ状に配列して構成したものである。電気・音響変換素子9は、コンデンサセル8を複数個並列接続したものであり、電気的に独立した1つの素子を構成する。本実施形態における電極短絡防止膜5の厚さは100nmであるので、その面積あたりの電気抵抗は、およそ、1MΩm×100nm=0.1Ωm2である。また、超音波診断装置に最も広く用いられる超音波周波数は数MHzであるので、電気・音響変換素子9のコンデンサ部分の面積は、オーダーとしておよそ1mm2程度である。従って、空隙部4が潰れて上部電極6が下部電極2に接触するときのシャント抵抗の大きさは、全面が接触し、抵抗が最小になる場合で0.1Ωmm2×1mm2=100kΩ程度である。これは、駆動回路などの周辺回路や配線がシャント電流によって破壊されるのを防ぐのに十分な大きさである。従って、上部電極6と下部電極2とが接触しても、過電流は流れず、周辺の駆動回路などが破壊されることはない。
図6は、本実施形態における電気・音響変換素子を多数配列して構成したアレイ型超音波トランスデューサを用いた超音波診断装置の構成の例を示した図である。図6に示すように、電気・音響変換素子9は、下部電極2と上部電極6とを含んで構成されたコンデンサセル8が並列に複数個接続されて構成される。また、アレイ型超音波トランスデューサ10は、電気・音響変換素子9が多数配列されて構成される。ここでは、電気・音響変換素子9が電子回路的に電気・音響変換を独立して行う単位素子として機能する。ここで、電気・音響変換素子9の下部電極2は、共通して接地されるが、上部電極6は、電気・音響変換素子9の入力および出力端子として機能する。
このような多数の電気・音響変換素子から構成されるアレイ型超音波トランスデューサ10は、通常、1つのシリコン基板上に形成される、つまり、1つのシリコンチップに集積化化(1チップ化)される。1チップ化することによって、電気・音響変換素子9間の特性のばらつきを抑えることができるとともに、超音波トランスデューサ1つ1つの位置精度の向上を図ることができる。
また、図6に示すように、超音波診断装置100は、アレイ型超音波トランスデューサ10に加え、バイアス電圧制御部11、送信遅延・重み選択部12、送波ビームフォーマ13、切り替えSW(スイッチ)群14、送受信シークエンス制御部15、受波ビームフォーマ20、フィルタ21、包絡線信号検出器22、スキャンコンバータ23などの周辺回路や、表示部24などの周辺装置を含んで構成される。
ここで、電気・音響変換素子9の各々の上部電極6は、切り替えSW群14を介してバイアス電圧制御部11、送波ビームフォーマ13および受波ビームフォーマ20に接続される。切り替えSW群14は、電気・音響変換素子9に対する駆動回路を構成するとともに、入力/出力等の信号の切り替え等を制御する。なお、このうち切り替えSW群14や送波ビームフォーマ13など、特に、高電圧に係る回路部分を中心に、前記した1チップ化されたアレイ型超音波トランスデューサ10と同じシリコンチップ内に集積化される。
バイアス電圧制御部11は、切り替えSW群14を介して上部電極6に印加するDC電圧を制御する。また、送波ビームフォーマ13は、送受信シークエンス制御部15の制御の下、送信遅延・重み選択部12の指示に従って所定の出力超音波信号を形成する。また、受波ビームフォーマ20は、送受信シークエンス制御部15の制御の下、上部電極6の電圧信号から受信超音波の信号を再生する。そして、受波ビームフォーマ20によって再生された受信超音波の信号は、フィルタ21、包絡線信号検出器22を経て、スキャンコンバータ23へ入力され、スキャンコンバータ23によって2次元画像として再生され、表示部24に表示される。
図7は、図6の超音波診断装置を用いて超音波受信ビームを形成したときのビーム・プロファイルの例を示した図である。このとき使用した超音波診断装置100のアレイ型超音波トランスデューサ10は、幅0.25mmの電気・音響変換素子9を64個1列に配列したもの(1次元アレイ・トランスデューサ)である。そして、このアレイ型超音波トランスデューサ10から距離80mm離れたところに受信ビームを形成した。
図7において、実線で示したプロファイルは、本実施形態の電気・音響変換素子9(電極短絡防止膜5に微弱な導電性を付与したもの)からなるアレイ型超音波トランスデューサ10により形成された受信ビーム・プロファイルである。また、参考のために破線で示したプロファイルは、従来のように電極短絡防止膜5を絶縁体とした電気・音響変換素子9からなるアレイ型超音波トランスデューサ10により形成された受信ビーム・プロファイルである。いずれの場合も、−6dB、幅5mm程度の主ビームが形成されており、空間分解能については同程度の性能が実現されている。
ところが、後者の場合、つまり、電極短絡防止膜5が通常の絶縁性(導電性がほとんどない)窒化シリコン(Si34)であった場合には、電気・音響変換素子9ごとに異なる量の電荷が電極短絡防止膜5に帯電し、そのため送受信感度が電気・音響変換素子9ごとに大きくばらついてしまう。その感度のばらつきは、音圧に対応する電気信号のAC電圧成分がDC電圧バイアス成分に比べて桁違いに小さいような場合に、特に、著しく大きくなる。また、受信感度を上げるために、空隙部4を挟む上下の層が接触する寸前の高いDCバイアス電圧を印加すればするほど、電極短絡防止膜5に帯電する電荷量が頻繁に変化するので、感度も頻繁にドリフトする。従って、電気・音響変換素子9ごとの感度のばらつきを補正するのは困難である。
さらに、空隙部4を挟む上下の層が接触する寸前のDCバイアス電圧条件では、その上下の層が接近するので、空隙部4の厚さが著しく小さくなる。従って、DCバイアス電圧を印加しないときの空隙部4の厚さの電気・音響変換素子9ごとの相対ばらつきが小さくても、動作時、つまり、空隙部4を挟む上下の層が接触する寸前のDCバイアス電圧条件では、空隙部4の厚さの大きな相対ばらつきとなって現れる。これによって、ますます、電極短絡防止膜5におけるDCバイアス電界の大きなばらつきを生むので、電極短絡防止膜5に帯電する電荷量のばらつきとそのドリフトの問題はさらに深刻になる。
図7において破線で示したプロファイルは、前記の電極短絡防止膜5への帯電のばらつきに起因する電気・音響変換素子9ごとの受信感度のばらつきが、±30%に達したときの受信ビーム・プロファイルである。そのプロファイルによれば、主ビームの周辺では、中央の主ビームを基準とした音響ノイズレベルが−30dB程度に達しており、高精細な画像を表示することが要求される近年の超音波診断装置に用いる受信ビームとして、許容不可能なレベルに達してしまっている。
一方、本実施形態では、電気・音響変換素子9の電極短絡防止膜5を、化学量論的にシリコンを過剰に含んだ窒化シリコンで形成したので、電極短絡防止膜5への帯電のばらつきの問題が解消される。そのため、電気・音響変換素子9ごとの受信感度ばらつきを抑圧することができ、図7において実線で示したプロファイルは、電気・音響変換素子9ごとの受信感度ばらつきを±2%に抑圧したときの受信ビーム・プロファイルである。そのプロファイルによれば、主ビームの周辺では、中央の主ビームを基準とした音響ノイズレベルが−50dB以下に抑えられている。この受信ビームの音響ノイズレベルは、送受信ダイナミックレンジが80〜100dBの高精細な画像を表示することが要求される近年の超音波診断装置100にとっても十分に使用に耐え得るレベルである。
以上のように、本実施形態においては、電気・音響変換素子9の電極短絡防止膜5を、化学量論的にシリコンを過剰に含んだ窒化シリコンで形成し、その電気的時定数が1秒より短く10マイクロ秒より長くなるような導電性を付与することにより、電極短絡防止膜5への帯電のばらつきを防止することができる。その結果、電気・音響変換素子9の素子特性のドリフト、さらには、受信感度のばらつきを抑圧することができるようになるので、超音波断層撮像用に十分な受信感度で、かつ、そのばらつきが十分に小さい電気・音響変換特性を備えた電気・音響変換素子9を実現することができる。そして、この電気・音響変換素子9を多数用いることにより、近年の超音波診断装置に求められる性能に十分に耐え得るレベルの音響ノイズレベルと送受信感度とを併せ持ったアレイ型超音波トランスデューサ10を実現することができる。
本発明の実施形態における半導体ダイアフラム型の電気・音響変換素子の構造の概念を示す図である。 図1の電気・音響変換素子の単位構成要素であるコンデンサセルの断面構造を示した図である。 空隙部と電極短絡防止膜とを挟んで構成されたコンデンサについてその電気的モデルの例を示した図である。 図3と同じ構成のコンデンサについて電極短絡防止膜に電荷が蓄積された場合の電気的モデルの例を示した図である。 (a)図3と同じ構成のコンデンサについて電極短絡防止膜に微弱な導電性が付与された場合の電気的モデルの例を示した図、(b)その等価回路を示した図である。 本実施形態における電気・音響変換素子を多数配列して構成したアレイ型超音波トランスデューサを用いた超音波診断装置の構成の例を示した図である。 図6の超音波診断装置を用いて超音波受信ビームを形成したときのビーム・プロファイルの例を示した図である。
符号の説明
1 シリコン基板
2 下部電極
3 絶縁層
4 空隙部
5 電極短絡防止膜
6 上部電極
7 絶縁層
8 コンデンサセル
9 音響変換素子
10 アレイ型超音波トランスデューサ
11 バイアス電圧制御部
12 送信遅延・重み選択部
13 送波ビームフォーマ
14 切り替えSW群
15 送受信シークエンス制御部
20 受波ビームフォーマ
21 フィルタ
22 包絡線信号検出器
23 スキャンコンバータ
24 表示部
100 超音波診断装置

Claims (10)

  1. シリコン基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極の上部に空隙部を挟んで前記第1の電極に対向するように形成された第2の電極とを含んで構成されたダイアフラム型の電気・音響変換素子において、
    前記第1の電極および第2の電極の少なくともいずれか一方の電極の空隙部側に電極短絡防止膜が形成されており、
    前記電極短絡防止膜は微弱な導電性を有し、その導電性を定める電気的時定数が、当該電気・音響変換素子に供給される電源電圧の立ち上がり時間よりも十分短く、かつ、当該電気・音響変換素子が変換対象とする音響波の振動周期よりも十分長いこと
    を特徴とする電気・音響変換素子。
  2. 前記音響波の振動周期よりも十分長い時定数とは、前記音響波の振動周期の10倍以上であること
    を特徴とする請求項1に記載の電気・音響変換素子。
  3. 前記電源電圧立ち上がり時間よりも十分短い時定数とは、1秒以下であり、前記音響波の振動周期よりも十分長い時定数とは、10マイクロ秒以上であること
    を特徴とする請求項1に記載の電気・音響変換素子。
  4. 前記電極短絡防止膜は、窒化シリコン膜であること
    を特徴とする請求項1に記載の電気・音響変換素子。
  5. 前記シリコン窒化膜は、化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコンで形成されていること
    を特徴とする請求項4に記載の電気・音響変換素子。
  6. 前記化学量論的にシリコンを過剰に含む窒化シリコンの組成を(Si34xSi1-xで表わしたとき、xの値が0.7<x<0.95の範囲の値であること
    を特徴とする請求項5に記載の電気・音響変換素子。
  7. シリコン基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極の上部に空隙部を挟んで前記第1の電極に対向するように形成された第2の電極とを含んで構成されたダイアフラム型の電気・音響変換素子を複数用いたアレイ型超音波トランスデューサにおいて、
    前記複数の電気・音響変換素子が1つのシリコン基板上に並べて形成されており、
    前記電気・音響変換素子を構成する前記第1の電極および第2の電極の少なくともいずれか一方の電極の空隙部側に電極短絡防止膜が形成されており、
    前記電極短絡防止膜は微弱な導電性を有し、その導電性を定める電気的時定数が、当該電気・音響変換素子に供給される電源電圧の立ち上がり時間よりも十分短く、かつ、当該電気・音響変換素子が変換対象とする音響波の振動周期よりも十分長いこと
    を特徴とするアレイ型超音波トランスデューサ。
  8. 前記電気・音響変換素子が形成されたシリコン基板上には、その電気・音響変換素子を駆動する回路の少なくとも一部が形成されていること
    を特徴とする請求項7に記載のアレイ型超音波トランスデューサ。
  9. シリコン基板上に形成された第1の電極と、前記第1の電極の上部に空隙部を挟んで前記第1の電極に対向するように形成された第2の電極とを含んで構成されたダイアフラム型の電気・音響変換素子を用いた超音波診断装置において、
    前記電気・音響変換素子を構成する前記第1の電極および第2の電極の少なくともいずれか一方の電極の空隙部側に電極短絡防止膜が形成されており、
    前記電極短絡防止膜は微弱な導電性を有し、その導電性を定める電気的時定数が、当該電気・音響変換素子に供給される電源電圧の立ち上がり時間よりも十分短く、かつ、当該電気・音響変換素子が変換対象とする音響波の振動周期よりも十分長いこと
    を特徴とする超音波診断装置。
  10. 請求項9に記載の超音波診断装置において
    前記電気・音響変換素子は複数用いられ、その複数の電気・音響変換素子は1つのシリコン基板上に並べて形成されていること
    を特徴とする超音波診断装置。
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