JP2006342192A - 電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂 - Google Patents

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Abstract

【課題】 ポリアミド樹脂の熱伝導性を飛躍的に向上させた電気絶縁性のある熱伝導性樹脂により、各種電気・電子部品、自動車電装部品などの放熱性と電気絶縁性を必要とする用途を提供する。
【解決手段】 本発明は層状珪酸塩が分子レベルに均一に分散されているポリアミド樹脂(以下ナノコンポジットポリアミド樹脂と略す)をマトリックス樹脂として用い、アルミナを高配合してなる電気絶縁性でかつ熱伝導性樹脂を提供する。

Description

本発明は、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂で、放熱性と電気絶縁性を求められる電気、電子部品あるいは自動車電装部品などの用途に関するものである。
ポリアミド樹脂は機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性などに優れていることから、各種電気・電子部品、自動車部品などの各種分野における成形材料として幅広く使われている。
しかしながら、ポリアミド樹脂の熱伝導性は一般に低く、発熱を伴う電子部品の放熱ができず、機能を損なう可能性があるため使用用途が限定されていた。
特に電気・電子部品分野では、電気絶縁性が求められることが多く、そのため樹脂材料の熱伝導性の改善とともに電気絶縁性が必要とされている。
樹脂材料の熱伝導率の改良は、一般にはアルミナ、シリカなどの無機フィラーやカーボンファイバー、黒鉛、低触点合金などの熱伝導性材料をマトリックス樹脂に単独または併用して配合することにより改良が試みられている。
しかし、カーボンファイバー、黒鉛、低融点合金などは導電性のため電気絶縁性が損なわれ、使用用途が限定されている。
一方アルミナやシリカは電気絶縁性であるが、熱伝導率はそれほど大きくはなく、高熱伝導性を達成するためには高充填化が必要で、そのため形状を球状にして流動性を上げたり、大きさの異なるものを組み合せるなどして最密充填がなされている。しかし高充填にすると樹脂の流動性が極端に悪くなりコンパウンドや成形が難しいのが現状である。
微細な層状フィラーを併用する場合はさらに流動性が悪く、そのため熱伝導率改善の障害となっていた。
またアルミナ配合の熱伝導率が小さい原因としては、マトリックス樹脂の熱伝導率の低いことが律速となり、樹脂組成物の熱伝導の妨げになっている。そのため樹脂自体の熱伝導率を上げることが試みられているが有効なものは得られていない。
微細な層状フィラーを併用することによりマトリックス樹脂層の熱伝導率を向上させることが試みられている。例えば特許文献1(特開2002−256147号公報)には、平均厚さが0.5μm以上の板状フィラーを2〜20重量%球状アルミナと併用し溶融混合することにより熱伝導率が向上することが提案されているが、機械による溶融混練では分子レベルの微分散は困難である。従って板状フィラーの添加量が少ないときは熱伝導率改善の効果が少なく、添加量が多くなると樹脂の流動性を阻害することになり、高充填化はできず、結果として良好な熱伝導材料は得られない。
強度、耐熱性、靱性などを向止させる目的でポリアミド樹脂に層状珪酸塩を微分散することは特許文献2(国際公開特許公報WO98/49235)や特許文献3(特開2000−212432号公報)に記載されているが、いずれも強度や耐熱性に関するもので熱伝導に関する記述はない。
特開2002−256147号公報 国際公開特許公報WO98/49235 特開2000−212432号公報
本発明の解決しようとする問題点は電気、電子部品あるいは自動車部品などの放熱性と電気絶縁性が求められる用途に電気絶縁牲があり、かつ熱伝導性に優れた高熱伝導性樹脂を提供することにある。
本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、層状珪酸塩などの層状フィラーを分子レベルまで分散することにより、流動性を損なわずに熱伝導性を向上させたナノコンポジットポリアミド樹脂をマトリックス樹脂とし、球状アルミナを高充填に併用することで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた熱伝導性樹脂用途が得られることを見出し、本発明に到違した。
層状珪酸塩の添加量が2重量%以下ではマトリックス樹脂の熱伝導率改善には不足で、5重量%以上となるとナノコンポジット樹脂自体の流動性が阻害されアルミナの高充填ができない。好ましくは4〜5重量%が最適である。
(1)マトリックス樹脂としてナノコンポジットポリアミド樹脂に熱伝導性無機粒状フィラーを高配合することで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
(2)上記(1)において熱伝導性無機粒状フィラーとしてアルミナを高配合してなることで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
(3)上記(1)(2)においてナノコンポジットポリアミド樹脂に用いられる層状フィラーが層状珪酸塩であり、その珪酸塩層が分子レベルに均一に分散されていることを特徴とすることで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
(4)上記(1)〜(3)において層状珪酸塩が4〜5重量%配合されたナノコンポジットポリアミド樹脂を用いたことで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
(5)上記(1)〜(4)においてナノコンポジットポリアミド樹脂5〜15重量%とアルミナを85〜95重量%を配合してなることで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
(6)上記(1)〜(5)においてマトリックス樹脂としてナノコンポジットポリアミド樹脂40〜70重量%とポリフェニレンサルファイド樹脂30〜60重量%を配合してなることで、電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂となった。
本発明で使用するナノコンポジットポリアミド樹脂としては、ポリアミド重合工程の際に層状珪酸塩を分子レベルに分散したものが市販されている。例えばユニチカ株式会社製のナノコンポジットナイロン(商品名;NANOCON)で未配合6ナイロンと比較し、流動性は変わらず、高強度で耐熱性に優れている。
ここで分子レベルに均一に分散されるとは、層状珪酸塩がポリアミド樹脂マトリックス中に分散する際に、それぞれが平均20A以上の層状距離を保っている場合をいう。ここで層状距離とは、層状珪酸塩の珪酸塩層の重心間の距離を指し、均一分散されるとは、前記珪酸塩層の一枚一枚、もしくは平均的な重なりが5層以下の多層物が平行あるいはランダムに、もしくは平行とランダムが混在した状態で、その50%以上が、好ましくはその70%以上が塊を形成することなく分散されている状態をいう。具体的には、透過型電子顕微鏡写真観察を行なったり、引張伸度のばらつきの評価を行うことにより確認することができる。
本発明で用いられるアルミナは、最密高充填のため、球状で粒子径の異なる大きさのものを組み合わせたものが有効である。添加量は85〜95重量%が望ましく、95重量%以上では樹脂の流動性が悪く、85重量%以下では熱伝導の効果が少ない。
また、本発明で用いられる樹脂としてはナノコンポジットポリアミド樹脂に熱伝導性を損なわない範囲の物性改良目的で従来公知の樹脂との併用が可能である。具体的には例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーポネート柑脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、シリコーン系樹脂、フッ素樹脂、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、天然あるいは合成ゴム系樹脂などが挙げられる。
さらに、最適配合としてナノコンポジットポリアミド樹脂にポリフェニレンサルファイド樹脂を配合することにより、樹脂組成物の熱伝導率を損なわずに流動性と耐熱性を付与することができる。
また、本発明で用いられる層状珪酸塩としてはマイカに限定されず、モンモリロナイト、バーミキュライト等がある。
また本発明に用いられる熱伝導性無機粒状フィラーとしてはアルミナに限定されず、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素などのセラミック粒子が上げられる。
ナノコンポジットナイロン6と球状アルミナの溶融混練はスクリュー型2軸押出機を用い、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数50rpmの条件でペレット化した。ここで得られた樹脂組成物を試験片に射出成形し、熱伝導率および電気伝導度を測定した。熱伝導率の測定に関しては、ASTH E1530に準拠し、φ50mm×t3mmの試験片をアニター社製ユニサーモ2021型試験器を用いて試験条件23℃で測定した。
ナノコンポジットポリアミド樹脂としてユニチカ株式会社製ナノコンポジット6ナイロン(商品名;NANOCO)M1030DH(合成マイカ4重量%入り)を15重量%に球状アルミナ85重量%をそれぞれ計量後ドライブレンドし、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し、物性評価した。
ナノコンポジットポリアミド樹脂としてユニチカ株式会社製ナノコンポジット6ナイロン(商品名;NANOCO)M1030DH(合成マイカ4重量%入り)を10重量%に球状アルミナ90重量%をそれぞれ計量後ドライブレンドし、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し物性評価した。
ナノコンポジットポリアミド樹脂としてユニチカ株式会社製ナノコンポジット6ナイロン(商品名;NANOCO)M1030DH(合成マイカ4重量%入り)を5重量%に球状アルミナ95重量%をそれぞれ計量後ドライブレンドし、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し物性評価した。
[比較例1]
比較例1としてユニチカ株式会社製6ナイロン樹脂(商品名;ユニチカナイロン6A1030JR)15重量%に球状アルミナ85重量%をそれぞれ計量後、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し物性評価した。
[比較例2]
比較例2としてユニチカ株式会社製6ナイロン樹脂(商品名;ユニチカナイロン6A1030JR)10重量%に球状アルミナ90重量%をそれぞれ計量後、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し物性評価した。
[比較例3]
比較例3としてユニチカ株式会社製6ナイロン樹脂(商品名;ユニチカナイロン6A1030JR)5重量%に球状アルミナ95重量%をそれぞれ計量後、実施例と同様の方法で混練、ペレット化し物性評価した。
結果は表1に示したとおりで、ナノコンボジットポリアミド樹脂を用いることにより、マトリックス自体の熱伝導率が改善され、さらに分子レベルに分散した層状珪酸塩の微細繊維がアルミナ粒子の熱伝達の繋ぎ役としての相乗効果を発揮するため、アルミナの充填量が多くなるに伴い、飛躍的に熱伝導性が向上することがわかる、
Figure 2006342192
本発明により得られる電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂の用途は電気・電子部品や自動車部品などの放熱性と電気絶縁性が求められる樹脂部品に用いられる。
例えば、半導体素子、抵抗あるいはモーターなど発熱性が高く、電気絶縁性が必要な電気機器部品に特に好適であり、また自動車、家電、照明機器、事務機など多くの放熱部品用途に適用できる。

Claims (6)

  1. マトリックス樹脂としてナノコンポジットポリアミド樹脂に熱伝導性無機粒状フィラーを高配合してなる電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
  2. 熱伝導性無機粒状フィラーとしてアルミナを高配合してなる請求項1記載の電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
  3. ナノコンポジットポリアミド樹脂に用いられる層状フィラーが層状珪酸塩であり、その珪酸塩層が分子レベルに均一に分散されていることを特徴とする請求項1又は2記載の電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
  4. 層状珪酸塩が4〜5重量%配合されたナノコンポジットポリアミド樹脂を用いた請求項1,2又は3記載の電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
  5. ナノコンポジットポリアミド樹脂5〜15重量%とアルミナを85〜95重量%を配合してなる請求項1,2,3又は4記載の電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
  6. マトリックス樹脂としてナノコンポジットポリアミド樹脂40〜70重量%とポリフェニレンサルファイド樹脂30〜60重量%を配合してなる請求項1,2,3,4又は5記載の電気絶縁性でかつ熱伝導性に優れた成形用樹脂。
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