JP6496109B2 - 電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法 - Google Patents

電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法 Download PDF

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本発明は、電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法に係わり、更に詳しくは導電性フィラーと絶縁性フィラーの併用によって電気絶縁性と熱伝導性を備えた樹脂組成物の製造方法に関するものである。
樹脂の熱伝導率を向上させつつ電気絶縁性を維持する技術として、セラミックに代表される無機フィラーを樹脂に充填することが検討されている。
特許文献1では、熱伝導率と電気絶縁性に優れる無機フィラーとしてセラミック系のフィラーを樹脂に充填する技術が提案されている。この方法では導電性のフィラーを用いていないため電気絶縁性は確保されるが、セラミック自体の熱伝導率が低いため樹脂複合材の熱伝導率は容易に向上せず、これを向上させるためには加工性に影響が出るほどの無機フィラーの量を充填する必要があった。
充填量を低減する試みとして2種以上の無機フィラーを充填する技術が提案されている。特許文献2には、窒化ホウ素と酸化亜鉛を組み合わせることで、より少ないフィラー充填量で熱伝導率を向上させつつ加工性も確保している。しかしながら、この方法では熱伝導率は最大で3.5W/m・Kが示されるのみであり、消費電力の大きな発熱体に対する放熱効果は限界があると予想される。
更に、熱伝導率を向上させるために、セラミックと熱伝導率に優れる炭素系フィラーとを組み合わせた技術が提案されている。炭素系フィラーを充填した材料は絶縁性の無機フィラーを充填した材料と比較して樹脂複合材の高熱伝導化を容易に達成できるが、炭素系フィラー自体の電気抵抗が非常に低いため、これを充填した複合材料も導電性を示す。特許文献3では、これを防ぐためにアルミナや窒化アルミなどの絶縁性無機フィラーを同時に充填し、炭素系フィラーの短絡を防止する技術が開示されている。しかしながら、この方法では絶縁性の無機フィラーを分散させても高い電気抵抗は得られず、絶縁性を向上させるために無機充填材の割合を増やすと比重の増加や、加工性の低下を招く傾向があった。
特開2012−255086号公報 特許第5359825号公報 特開2005−150362号公報
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、導電性フィラーと絶縁性フィラーの併用による樹脂複合材料の高熱伝導化技術において高い電気絶縁性と高熱伝導率とを兼ね備え、加工性良好な電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を行なった結果、図4に本発明の技術を用いた際に形成される相構造の模式図を示すが、平板状無機フィラーが分散して形成される層間にナノサイズの炭素系フィラーが分散する構造を形成し、更にこのような構造を維持しつつ2種以上の樹脂を用いて連続相と不連続な分散相とを形成し、炭素系フィラーを分散相に偏在させ、平板状無機フィラーを連続相に偏在させることにより、前記樹脂組成物が高い電気絶縁性と高熱伝導率とを兼ね備えることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明は、前述の課題解決のために、2種以上の熱可塑性樹脂(A)、導電性フィラー(C)及び無機フィラー(B)を含有し、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中に、導電性フィラー(C)を配合した熱可塑性樹脂(A1)が不連続に分散されるとともに、無機フィラー(B)が分散され、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中で無機フィラー(B)の粒子間に分散している電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法であって、前記導電性フィラー(C)が気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)又はグラフェンからなる炭素系導電性フィラーであり、前記無機フィラー(B)が窒化ホウ素又はアルミナからなる平板状無機フィラーであり、前記熱可塑性樹脂(A1)の配合量が10体積%以上、60体積%以下、前記熱可塑性樹脂(A2)の配合量が40体積%以上であり、前記無機フィラー(B)の配合量が10体積%以上、前記導電性フィラー(C)の配合量が0.1体積%以上、5体積%以下であり、前記導電性フィラー(C)の少なくとも一部と、前記2種以上の熱可塑性樹脂(A)のうち不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の少なくとも一部とを混合して、前記導電性フィラー(C)と前記熱可塑性樹脂(A1)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB1)及び、無機フィラー(B)と連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)の少なくとも一部とを混合して、前記無機フィラー(B)と前記熱可塑性樹脂(A2)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB2)を調製した後、前記混合物(MB1)と前記混合物(MB2)とを、相溶化剤として不飽和カルボン酸及びその無水物(D)を0.01重量%以上含有させて混合して、二軸押出混練機により溶融混練することによりペレット形状とした後、該ペレットをプレスしてなることを特徴とする電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法を構成した(請求項1)。
ここで、前記熱可塑性樹脂分散相の直径が500μm以下であることが好ましい(請求項)。
更に、連続相に分散する平板状無機フィラー(B)の平均粒子径が、1μm以上、50μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、50μm以下であり、平均粒子径を平均厚さで除した値が1より大きく且つ、分散相に偏在する炭素系導電性フィラー(C)が繊維状あるいは平板状であることがより好ましい(請求項)。
そして、前記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、プレス温度260℃、プレス時間5分、プレス圧力30MPaの条件でプレス成形して作製したサンプルの物性が、面方向の熱伝導率が2W/m・K以上であり且つ体積抵抗率が1011Ω・cm以上且つ絶縁耐電圧が3kV/mm以上となる(請求項)。
また、本発明は、2種以上の熱可塑性樹脂(A)、導電性フィラー(C)及び無機フィラー(B)を含有し、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中に、導電性フィラー(C)を配合した熱可塑性樹脂(A1)が不連続に分散されるとともに、無機フィラー(B)が分散され、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中で無機フィラー(B)の粒子間に分散している電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法であって、前記導電性フィラー(C)が気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)又はグラフェンからなる炭素系導電性フィラーであり、前記無機フィラー(B)が窒化ホウ素又はアルミナからなる平板状無機フィラーであり、前記熱可塑性樹脂(A1)の配合量が10体積%以上、60体積%以下、前記熱可塑性樹脂(A2)の配合量が40体積%以上であり、前記無機フィラー(B)の配合量が10体積%以上、前記導電性フィラー(C)の配合量が0.1体積%以上、5体積%以下であり、前記導電性フィラー(C)の少なくとも一部と、前記2種以上の熱可塑性樹脂(A)のうち不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の少なくとも一部とを混合して、前記導電性フィラー(C)と前記熱可塑性樹脂(A1)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB1)及び、無機フィラー(B)と連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)とを、相溶化剤として不飽和カルボン酸及びその無水物(D)を0.01重量%以上含有させて混合して、二軸押出混練機により溶融混練することによりペレット形状とした後、該ペレットをプレスしてなることを特徴とする電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法を提供する(請求項)。
第2の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法においても、前記熱可塑性樹脂分散相の直径が500μm以下であること(請求項)、連続相に分散する平板状無機フィラー(B)の平均粒子径が、1μm以上、50μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、50μm以下であり、平均粒子径を平均厚さで除した値が1より大きく且つ、分散相に偏在する炭素系導電性フィラー(C)が繊維状あるいは平板状であること(請求項)が好ましい。そして、この製造方法によって、前記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、プレス温度260℃、プレス時間5分、プレス圧力30MPaの条件でプレス成形して作製したサンプルの物性が、面方向の熱伝導率が2W/m・K以上であり且つ体積抵抗率が1011Ω・cm以上且つ絶縁耐電圧が3kV/mm以上となる(請求項)。
本発明の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法によれば、導電性フィラー()を含有する熱可塑性樹脂分散相が、熱可塑性樹脂連続相中に偏在された無機フィラー()の間に分散状態で配置され、熱伝導性と電気絶縁性を高度に備えた電気絶縁性熱伝導樹脂組成物を得ることができる。
本発明における分散相としてのポリエチレン(PE)量に伴う熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率の変化を示すグラフである。 本発明における分散相としてのポリエチレン(PE)量に伴う熱伝導性樹脂組成物の体積抵抗率の変化(印加電圧500V)を示すグラフである。 分散相の径の変化に伴う熱伝導性樹脂組成物の熱伝導率の変化を示すグラフである。 連続相と分散相に各フィラーが分散した構造の模式図である。 連続相のみで無機フィラーと導電性フィラーが分散した構造の模式図である。 連続相と分散相において分散相に導電性フィラーが分散した構造の模式図である。 連続相のみで無機フィラーが分散した構造の模式図である。 連続相と分散相に各フィラーが分散した構造を示すSEM破断面画像である。
本発明の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物は、2種以上の熱可塑性樹脂(A)及び1種以上の導電性フィラー()及び1種以上の無機フィラー()から成り、導電性フィラー()との親和性が高く、不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)には少なくとも1つの導電性フィラー()が偏在しており、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)には電気絶縁性を有する無機フィラー)のうち少なくとも1つが偏在してなる電気絶縁性熱伝導樹脂組成物であって、不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の配合量が10体積%以上、60体積%以下、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)の配合量が40体積%以上であることを特徴としている。ここで、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の配合量が上限を超えた場合、連続相と分散相の逆転が起き、熱伝導率の低下だけでなく、電気絶縁性及び流動性の低下を招く傾向にある。また、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の配合量が下限よりも少ないと、3次元的な熱伝導パスが効率的に形成されないので、十分な熱伝導性が得られない。
前記熱可塑性樹脂(A)として、ポリアリーレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられるが、特に分散相として用いる樹脂としては、導電性フィラーとの親和性が特に高いポリオレフィン系樹脂が望ましい。
ポリアミド系樹脂の具体的には、アミノ酸、ラクタム及びジアミンのうちの少なくとも1種と、ジカルボン酸とを主たる原料として得られるナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン69、ナイロン6T、ナイロン9T、ナイロンMXD6、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/610、ナイロン6/6Tコポリマー、ナイロン6/66/610コポリマー、ナイロン6/12コポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6/6I、ナイロン66/6I/6コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6I/66コポリマー、ナイロン6/66/610/12コポリマー、ナイロン6T/M−5Tコポリマーなどが挙げられる。中でも、得られた樹脂組成物の耐薬品性、耐衝撃性及び流動性のバランスがよいという観点から、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12及びこれらを主成分とする共重合体が好ましく、ナイロン6及びナイロン6を主成分とする共重合体がより好ましい。
ポリアリーレン系樹脂の具体的には、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など、ポリアリーレンオキシド系のポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル(PPE)などが挙げられる。ポリアリーレンオキシドはポリスチレン、耐衝撃ポリスチレンなどのスチレン系樹脂を添加することができる。中でも、耐熱性と耐薬品性及びコストの観点からPPSがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の具体的にはエチレン、プロピレン等のα−オレフィン類から生成する繰返し単位を主成分とするホモポリマーまたはコポリマーが挙げられ、例えばプロピレンのホモポリマー、エチレンのホモポリマー、さらにはエチレンと他のα−オレフィン(例えばプロピレン、ブテン−1など)を共重合させたブロックまたはランダムコポリマーが挙げられる。これらは1種または2種以上で用いることができる。本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂は直鎖状、分岐状のいずれのものでもよい。前記ポリオレフィン系樹脂としてポリプロピレン系樹脂の場合、アイソタクティック、アタクティック、シンジオタクティックなどいずれのポリプロピレン系樹脂も使用することができる。前記エチレンとしては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超高分子量ポリエチレン(UHMW−PE)などが挙げられる。
ポリエステル系樹脂の具体的にはポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリへキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/デカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート/シクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリエチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレンテレフタレート/サクシネート、ポリプロピレンテレフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/サクシネート、ポリエチレンテレフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/アジペート、ポリエチレンテレフタレート/セバケート、ポリプロピレンテレフタレート/セバケート、ポリブチレンテレフタレート/セバケート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリプロピレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/サクシネート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/アジペート、ポリブチレンテレフタレート/イソフタレート/セバケート、ビスフェノールA/テレフタル酸、ビスフェノールA/イソフタル酸、ビスフェノールA/テレフタル酸/イソフタル酸、などが挙げられる。中でも、耐熱性及び耐候性の観点からポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)がより好ましい。
更に、不飽和カルボン酸及びその無水物を0.01重量%以上、1重量%以下、望ましくは0.1重量%以上、0.8重量%以下、より望ましくは0.2重量%以上、0.5重量%以下を含有し、不飽和カルボン酸及びその無水物としてアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、桂皮酸、無水マレイン酸及びブテントリカルボン酸からなる群より選ばれる1種以上が望ましいが特に限定されるものではない。上記不飽和カルボン酸及びその無水物の上限を超える場合、不連続な分散相の径が増大するだけでなく不連続相の中に連続相の成分が入り込み、不連続相がサラミ構造を形成し複合材料の熱伝導率の低下を招く傾向にある。
本組成物においては、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)に導電性フィラー()が偏在してなる不連続な熱可塑性樹脂分散相が、無機フィラー)の粒子間に分散しており、該熱可塑性樹脂分散相の直径は500μm以下、より望ましくは100μm以下、最も望ましくは50μm以下である。
更に、連続相に分散する無機フィラー)が平板状無機フィラーであり、平均粒子径が0.1μm以上、300μm以下及び平均厚さが0.01μm以上、100μm以下であり、望ましくは平均粒子径が1μm以上、100μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、50μm以下、最も望ましくは平均粒子径が1μm以上、50μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、10μm以下であり、平均粒子径を平均厚さで除した値が1より大きく、望ましくは100以上、最も望ましくは500以上である。無機フィラーとして、窒化ホウ素、アルミナ、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、金属ケイ素、窒化ケイ素などが挙げられ、特に平板状無機フィラーとして、六方晶系窒化ホウ素(h-BN)、平板状アルミナなどが挙げられるが、比較的低硬度で充填した際の加工が容易なh-BNがより望ましい。
更に、分散相に偏在する導電性フィラー()が炭素系フィラーで、該導電性フィラーが繊維形状であり、直径1μm以下であり、繊維長を直径で除した値が10以上、より望ましくは100以上、最も望ましくは500以上である。また、前記導電性フィラーは平板状でもよく、平均厚みが10μm以下、より望ましくは1μm以下、最も望ましくは0.5μm以下であり、平均厚みで除した値は10以上、より望ましくは100以上、最も望ましくは500以上である。炭素系フィラーとして、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェンなどが挙げられる。中でも、熱伝導のパスを形成しやすいサイズであるVGCFが最も望ましい。
連続相に分散する無機フィラー)の配合量が10体積%以上、望ましくは20体積%以上、より望ましくは30体積%以上であり、分散相に偏在する導電性フィラー()の配合量が0.5体積%以上、5体積%以下、望ましくは1体積%以上、3体積%以下である。
熱伝導率が2W/m・K以上であり、望ましくは3W/m・K以上、最も望ましくは5W/m・K以上であり、且つ体積抵抗率が1011Ω・cm以上望ましくは1013Ω・cm以上、最も望ましくは1015Ω・cm以上であり、且つ絶縁耐圧が3kV/mm以上、望ましくは5kV/mm以上である。
本発明の熱伝導性樹脂組成物は、2種以上の熱可塑性樹脂(A)と導電性フィラー()とを混合することで得られるもので二軸式混練押出機を用いて混練することが好ましい。混練する前の繊維状炭素材料について、粉末状態のナノ繊維を用いてもよいし、熱伝導性樹脂組成物に用いる樹脂と同種の樹脂をナノ繊維とあらかじめ混合して、ペレットにしたマスターバッチを用いてもよい。前記導電性フィラー()と前記2種以上の樹脂(A)のうち不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)とを混合して前記導電性フィラー()と前記樹脂(A1)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB1)及び、無機フィラー()と連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)とを混合して、前記無機フィラー()と前記熱可塑性樹脂(A2)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB2)を調製した後、前記混合物(MB1)と前記混合物(MB2)とを、二軸押出混練機により溶融混練することで本発明の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物が得られる。
また、前記混合物(MB1)と無機フィラー()及び連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)とを二軸押出混練機により溶融混練しても本発明の性能を損なうことはなく、工数の低減が図れるため本発明を更によい物とする効果がある。なお、サイドフィード等により溶融した樹脂にフィラーを添加しても良く、このような順序で混練することにより、混練時に平板状フィラー及びナノ繊維に加わるせん断応力などの機械的負荷を最小限に抑制することができ、これらが破壊されるのを防ぐことができる。
加工温度は、用いる樹脂に適した温度で行なわれる。例えばポリプロピレンの場合、160℃以上、260℃以下であることが望ましい。このような温度で混練することにより、樹脂へのせん断力を適切に調節することができる。
混練に用いるスクリューは、せん断力が得られる形状であれば特に限定されないが、ナノフィラーを十分分散させるために1セグメント以上のニーディングを有するスクリューデザインが望ましい。スクリュー回転速度は、加工温度、樹脂粘度、樹脂の状態に応じて適切なせん断力がかかる速度を選択する。比較的高スクリュー回転速度の方が高せん断力を得られるが、同時に樹脂温も上昇するため、樹脂の分解が起きない速度にとどめておくべきである。
本発明の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物には、その他の添加剤として、金属酸化物及び金属水酸化物などの金属化合物、カーボンブラックなどの導電性物質を含有させることもできる。また、ステアリン酸セリウムなどの金属塩安定剤、含硫黄化合物系、ヒンダードアミン系、ヒンダードフェノール系、アクリレート系、リン系有機化合物などの酸化防止剤や耐熱安定剤、ベンゾフェノン系などの紫外線吸収剤や耐候剤、光安定剤、離型剤、滑剤、結晶核剤、着色剤、シランカップリング剤、粘度調節剤などの表面処理剤、顔料、染料、着色防止剤、可塑剤、難燃剤(赤燐、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、シリコーン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤など)を添加することができる。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。得られた樹脂組成物の物性は以下の方法により測定した。
<サンプル作製>
原料の形状は、熱可塑性樹脂(a−1)、(a−2)、(a−3)を用いた試作材では溶融混練しペレット形状とした。熱硬化性樹脂(a−4)を用いた試作材では所定の組成に調整した液状材料をガラス板上にキャストし、乾燥後回収しフレーク形状とした。
<熱伝導率>
試作材を100℃で5時間乾燥した後、表1の条件でプレス成形を行い、厚み0.2mmのサンプルを得た。この成形品から15mm×15mm×0.2mmの矩形の試料を切り出し、全自動レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(アルバック理工(株)製 TC-7000)を用いて基板評価法により面方向の熱拡散率を測定した後、各サンプルの密度及び比熱を用いて次の式1に従って熱伝導率を算出した。
λ(W/m・K)=ρ(g/m)×Cp(J/g・K)・α(m/s) (式1)
<体積抵抗率>
試作材を100℃で5時間乾燥した後、表1の条件でプレス成形を行い、厚み0.2mmのサンプルを得た。この成形品から50mm×50mm×0.2mmの矩形の試料を切り出し、ハイレジスタンスメーター(アジレントテクノロジーズ(株)製 4339B)を用いてJIS K6911に準拠して500Vの電圧を印加し1分後の体積抵抗率を測定した。
<耐電圧>
試作材を100度で5時間乾燥した後、表1の条件でプレス成形を行い、厚み0.2mmのサンプルを得た。この成形品から50mm×50mm×0.2mmの矩形の試料を切り出し、ハイレジスタンスメーター(アジレントテクノロジーズ(株)製 4339B)を用いて印加電圧を段階的に上げ、各電圧で1分後の抵抗値を測定し、これを抵抗値が急激に下がるまで行なった。抵抗値の急激な低下を絶縁破壊とし、この直前の電圧を耐電圧とした。
<分散相の径測定と成分の特定>
試作材を100度で5時間乾燥した後、表1の条件でプレス成形を行い、厚み0.2mmのサンプルを得た。この製品から10mm×5mm×0.2mmの矩形試料を切り出し、液体窒素に30秒浸漬した後、カッターで凍結破断した。得られたサンプルの破断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて不連続な分散相の径を観察した。不連続な分散相の成分はエネルギー分散型X線分析(EDX)を用いて特定した。
<樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(a−1):ポリフェニレンサルファイド(PPS、DIC(株)製 T−1、比重1.4)
熱可塑性樹脂(a−2):ポリエチレン(HDPE、旭化成(株)製 J−240、比重0.98)
熱可塑性樹脂(a−3):ポリアミド(PA6、ユニチカ(株)製 A1015LP、比重1.12)
熱硬化性樹脂(a−4):エポキシ(DIC(株) 「エピクロン ビスフェノールA型 840」、エポキシ当量180−190g/eq、液状)
<無機フィラー(B)>
窒化ホウ素(b−1):窒化ホウ素(水島合金鉄(株)製 「HP−1W」、面内の平均直径10μm、アスペクト比100以上、比重2.2)
平板状アルミナ(b−2):平板状アルミナ(キンセイマテック(株)製 「10030」、平均粒子径10μm、アスペクト比100以上、比重3.9)
黒鉛(b−3):鱗片状黒鉛(日本黒鉛(株)製 「CB150」、面内の平均直径130μm、アスペクト比100以上、比重2.2)
導電性フィラー(C)>
導電性フィラー(c−1):カーボンナノ繊維(昭和電工(株)製 「VGCF−H」、平均直径150nm、アスペクト比100以上、比重2.2)
<添加剤(D)>
添加剤(d−1):無水マレイン酸(キシダ化学(株)製 無水マレイン酸 純度99.0%以上、融点52〜54℃)
<実施例1〜4>
熱可塑性樹脂(a−2)とカーボンナノ繊維(b−2)の成分が表2に示す比になるように配合し、二軸混練押出機(池貝(株)製 PCM30、スクリュー径30mm、L/D17.5)に投入し、加工温度180℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレット形状のマスターバッチ(MB1)を得た。次に、 熱可塑性樹脂(a−1)と無機フィラー(b−1)の成分が表2に示す比になるように配合し、(MB1)と同様に加工温度280℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行ない、冷却水槽で固化した溶融物をカッターにより切断してマスターバッチ(MB2)を得た。更に(MB1)と(MB2)をポリ袋中で攪拌混合し均一に混合した後、二軸押出混練機に投入し、加工温度280℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<実施例5>
熱可塑性樹脂(a−1)とカーボンナノ繊維(b−2)の成分が表2に示す比になるように配合し、二軸混練押出機(池貝(株)製 PCM30、スクリュー径30mm、L/D17.5)に投入し、加工温度280℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレット形状のマスターバッチ(MB1)を得た。次に、熱可塑性樹脂(a−3)と無機フィラー(b−1)の成分が表2に示す比になるように配合し、(MB1)と同様に加工温度260℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行ない、冷却水槽で固化した溶融物をカッターにより切断してマスターバッチ(MB2)を得た。更に(MB1)と(MB2)をポリ袋中で攪拌混合し均一に混合した後、吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<実施例6>
無機フィラー(b−1)の代わりに無機フィラー(b−2)を充填した以外は実施例3と同様の手順でペレット状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<実施例7〜8>
(MB1)と(MB2)を溶融混練する段階で、無水マレイン酸以外の組成の合計100%に対して、表2に示す割合で無水マレイン酸を添加(外添)した以外は実施例3と同様の手順でペレット状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<実施例9>
カーボンナノ繊維(b−1)の充填量を1体積%に変更し、熱可塑性樹脂の成分(a−1)及び(a−2)ともに32体積%に変更した以外は実施例3と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<実施例10>
無機フィラー(b−1)の充填量を20体積%に変更し、熱可塑性樹脂の成分(a−1)及び(a−2)ともに39体積%に変更した以外は実施例3と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例1>
熱可塑性樹脂(a−1)を65体積%、無機フィラー(b−1)を35体積%配合し、二軸混練押出機(池貝(株)製 PCM30、スクリュー径30mm、L/D17.5)に投入し、加工温度280℃、スクリュー回転数120rpmで溶融混練を行なった。吐出された溶融物を水槽で冷却し、カッターにより切断してペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例2>
カーボンナノ繊維(b−1)を2体積%追加し、熱可塑性樹脂の成分(a−1)の組成を63体積%に変更した以外は比較例1と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例3,4>
表2に示す組成割合でワニス状の熱硬化性樹脂(a−4)及び無機フィラー(b−1)を配合した組成物を超音波槽及び遊星回転式の混合機にて分散・混合し、ガラス板上にキャストしバーコートした後、これを熱風乾燥炉中で90℃、30分間静置して乾燥させた。乾燥後ガラス板から剥離し砕いてフレーク状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例5>
無機フィラー(B)を0体積%にし、熱可塑性樹脂(a−1)を68.6体積%、及び熱可塑性樹脂(a−2)を29.4体積%に変更した以外は実施例1と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例6>
カーボンナノ繊維(c−1)を0体積%に変更し、熱可塑性樹脂(a−1)を65体積%、熱可塑性樹脂(a−2)を0体積%に変更した以外は実施例6と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例7>
添加剤(d−1)を7重量%に変更した以外は実施例7と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
<比較例8>
カーボンナノ繊維(c−1)及び熱可塑性樹脂(a−2)を0体積%に変更し、熱可塑性樹脂(a−1)を80体積%に変更した以外は実施例10と同様の手順でペレット形状の組成物を得た。この樹脂組成物について、熱伝導率、体積抵抗率、耐電圧及び分散相の径測定と成分の特定を前記手法に従って測定した。
ここで、図1及び図2は、実施例1〜4及び比較例2の結果を、PE充填量をパラメータとしてグラフ化したものであり、図3は実施例3,7,8の結果を、分散相の径をパラメータとしてグラフ化したものである。表2、表3から明らかなように、実施例1〜4は本発明にかかる不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)(以下、分散相(A1)と略することもある)、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)(以下、連続相(A2)と略することもある)、無機フィラー(B)、導電性フィラー(C)のうち少なくとも一つを含まない樹脂組成物(比較例1〜5)に比べて熱伝導率、体積抵抗率及び耐電圧を高い水準で兼ね備えているものであった。
すなわち、実施例1〜4においては、導電性フィラー(C)が偏在した熱可塑性樹脂(A1)が不連続な分散相を形成し、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)に偏在する無機フィラー(B)の層間に該分散相が分散している構造を形成していることが確認された(図8、図4)。更に、不連続な分散相となる熱可塑性樹脂成分(A1)の配合量の変化に伴い、不連続な分散相の径が変化しており、高熱伝導率を有する導電性フィラー(C)が偏在した分散相(A1)と熱を伝導する媒体である無機フィラー(B)との接触面積が変化した結果、実施例3において熱伝導パスの効率が最大となったと考えられ、熱伝導率は最大値を示し、且つ分散相(A1)により導電性フィラー(C)の短絡が阻害され電気絶縁性も維持された(図1、図2)。
一方、1種の熱可塑性樹脂のみからなる比較例1では導電性フィラー(C)による熱伝パスが形成されずに、熱伝導率が低く、これに導電性フィラー(C)を充填した樹脂組成物(比較例2、図5)では導電性フィラー(C)の短絡を阻害する分散相(A1)が存在しないため体積抵抗率及び耐電圧は著しく低下した。電気絶縁性を有する無機フィラー(B)の代わりに導電性のフィラー(b−3)を充填した組成物(比較例3,4)では導電を阻害する物がないため、体積抵抗率及び耐電圧が著しく低下した。更に、導電性フィラー(C)が偏析する分散相(A1)及び連続相(A2)を有するが無機フィラー(B)を含まない組成物(比較例5、図6)においては分散相(A1)が導電性フィラー(C)の短絡を阻害しているため、分散相(A1)が存在しない組成物(比較例2)と比較して、体積低効率及び耐電圧は高い水準を維持したが、熱を伝導する媒体(無機フィラー(B)が存在しないため熱伝導率は低かった。
また、実施例5においては不連続な分散相(A1)として熱可塑性樹脂(a−1)、連続相(A2)として熱可塑性樹脂(a−3)からなる組成物であり、分散相(A1)と連続相(A2)の樹脂種が変わったとしても導電性フィラー(C)が分散相(A1)に偏在し、無機フィラー(B)が連続相(A2)に偏在する構造をとることによって高い熱伝導率と電気絶縁性を兼ね備えた組成物となった。
更に、無機フィラー(B)を窒化ホウ素(b−1)から平板状アルミナ(b−2)に変更した組成物(実施例6)においても、熱伝導パスを形成する導電性フィラー(C)を有さない組成物(比較例6、図7)と比較して高い熱伝導率を示しており、無機フィラー(B)の成分が変わったとしても導電性フィラー(C)が分散相(A1)に偏在し、無機フィラー(B)が連続相(A2)に偏在する構造をとることによって高い熱伝導率と電気絶縁性を兼ね備えた組成物となった。
実施例3、7,8では添加剤(D)として無水マレイン酸(d−1)を添加することにより分散相(A1)の径を変えた組成物である。添加剤(d−1)の添加量とともに分散相(A1)の径が変化し、それに伴い熱伝導率も変化した。実施例7において分散相(A1)の熱伝導率は最大値を示し、高熱伝導率を有する導電性フィラー(C)が偏在した分散相(A1)の径が変化し、熱を伝導する媒体である無機フィラー(B)との接触面積が変化した結果、熱伝導パスの効率が最大となったと考えられ、且つ分散相(A1)により導電性フィラー(C)の短絡が阻害され電気絶縁性も維持された(図3)。
一方、添加剤(d−1)を過剰に添加した組成(比較例7)では、分散相(A1)が不連続ではなく連続相となった結果、導電性フィラー(C)の短絡を阻害する能力が低下し、体積抵抗率及び耐電圧は著しく低下した。
無機フィラー(B)または導電性フィラー(C)の充填量を変えた組成物(実施例9、10)においても、分散相が存在しない組成物(比較例8、図7)と比較して、熱伝導率、体積抵抗率及び耐電圧は高い水準で維持された。
以上説明したように、本発明によれば、より少ないフィラー充填量により熱伝導性と絶縁性とを高水準で兼ね備える樹脂組成物を得ることが可能となる。したがって、本発明の樹脂組成物は、熱伝導性、放熱性、及び絶縁性などが要求される用途、例えば、自動車用各種部品、電気・電子機器用各種部品、高熱伝導性シート、放熱板、電磁波吸収体などの用途として有用である。
1 不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)
2 連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)
無機フィラー(B)
4 導電性フィラー(C)

Claims (8)

  1. 2種以上の熱可塑性樹脂(A)、導電性フィラー(C)及び無機フィラー(B)を含有し、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中に、導電性フィラー(C)を配合した熱可塑性樹脂(A1)が不連続に分散されるとともに、無機フィラー(B)が分散され、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中で無機フィラー(B)の粒子間に分散している電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法であって、前記導電性フィラー(C)が気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)又はグラフェンからなる炭素系導電性フィラーであり、前記無機フィラー(B)が窒化ホウ素又はアルミナからなる平板状無機フィラーであり、前記熱可塑性樹脂(A1)の配合量が10体積%以上、60体積%以下、前記熱可塑性樹脂(A2)の配合量が40体積%以上であり、前記無機フィラー(B)の配合量が10体積%以上、前記導電性フィラー(C)の配合量が0.1体積%以上、5体積%以下であり、前記導電性フィラー(C)の少なくとも一部と、前記2種以上の熱可塑性樹脂(A)のうち不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の少なくとも一部とを混合して、前記導電性フィラー(C)と前記熱可塑性樹脂(A1)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB1)及び、無機フィラー(B)と連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)の少なくとも一部とを混合して、前記無機フィラー(B)と前記熱可塑性樹脂(A2)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB2)を調製した後、前記混合物(MB1)と前記混合物(MB2)とを、相溶化剤として不飽和カルボン酸及びその無水物(D)を0.01重量%以上含有させて混合して、二軸押出混練機により溶融混練することによりペレット形状とした後、該ペレットをプレスしてなることを特徴とする電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  2. 前記熱可塑性樹脂分散相の直径が500μm以下である請求項記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  3. 連続相に分散する平板状無機フィラー(B)の平均粒子径が、1μm以上、50μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、50μm以下であり、平均粒子径を平均厚さで除した値が1より大きく且つ、分散相に偏在する炭素系導電性フィラー(C)が繊維状あるいは平板状である請求項1又は2記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  4. 前記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、プレス温度260℃、プレス時間5分、プレス圧力30MPaの条件でプレス成形して作製したサンプルの物性が、面方向の熱伝導率が2W/m・K以上であり且つ体積抵抗率が1011Ω・cm以上且つ絶縁耐電圧が3kV/mm以上となる請求項1〜何れか1項に記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  5. 2種以上の熱可塑性樹脂(A)、導電性フィラー(C)及び無機フィラー(B)を含有し、連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中に、導電性フィラー(C)を配合した熱可塑性樹脂(A1)が不連続に分散されるとともに、無機フィラー(B)が分散され、分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)中で無機フィラー(B)の粒子間に分散している電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法であって、前記導電性フィラー(C)が気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ(CNT)又はグラフェンからなる炭素系導電性フィラーであり、前記無機フィラー(B)が窒化ホウ素又はアルミナからなる平板状無機フィラーであり、前記熱可塑性樹脂(A1)の配合量が10体積%以上、60体積%以下、前記熱可塑性樹脂(A2)の配合量が40体積%以上であり、前記無機フィラー(B)の配合量が10体積%以上、前記導電性フィラー(C)の配合量が0.1体積%以上、5体積%以下であり、前記導電性フィラー(C)の少なくとも一部と、前記2種以上の熱可塑性樹脂(A)のうち不連続な分散相を形成する熱可塑性樹脂(A1)の少なくとも一部とを混合して、前記導電性フィラー(C)と前記熱可塑性樹脂(A1)とを二軸押出混練機により溶融混練し作製した混合物(MB1)及び、無機フィラー(B)と連続相を形成する熱可塑性樹脂(A2)とを、相溶化剤として不飽和カルボン酸及びその無水物(D)を0.01重量%以上含有させて混合して、二軸押出混練機により溶融混練することによりペレット形状とした後、該ペレットをプレスしてなることを特徴とする電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  6. 前記熱可塑性樹脂分散相の直径が500μm以下である請求項記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  7. 連続相に分散する平板状無機フィラー(B)の平均粒子径が、1μm以上、50μm以下及び平均厚さが0.1μm以上、50μm以下であり、平均粒子径を平均厚さで除した値が1より大きく且つ、分散相に偏在する炭素系導電性フィラー(C)が繊維状あるいは平板状である請求項5又は6記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
  8. 前記ペレットを100℃で5時間乾燥した後、プレス温度260℃、プレス時間5分、プレス圧力30MPaの条件でプレス成形して作製したサンプルの物性が、面方向の熱伝導率が2W/m・K以上であり且つ体積抵抗率が1011Ω・cm以上且つ絶縁耐電圧が3kV/mm以上となる請求項5〜7何れか1項に記載の電気絶縁性熱伝導樹脂組成物の製造方法。
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