JP2006342138A - 2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、MOD法のプレカーサとして有用な2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ニオブ含有量が13〜16質量%であり、炭素含有量が50〜58質量%の範囲内であり、且つニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されていることを特徴とする。また、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと、2−エチルヘキサン酸とを反応させることを特徴として製造することができる。
【選択図】図1
【解決手段】本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ニオブ含有量が13〜16質量%であり、炭素含有量が50〜58質量%の範囲内であり、且つニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されていることを特徴とする。また、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと、2−エチルヘキサン酸とを反応させることを特徴として製造することができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、特定の構造を有する2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体及びその製造方法に関する。
ニオブ元素を含有するセラミック薄膜は、特異的な電気特性を有するため、様々な用途への応用が検討されている。特に、優れた誘電特性の特徴を応用した高誘電体キャパシタ、強誘電体キャパシタ、ゲート絶縁膜、バリア膜、圧電素子等の電子部品の電子部材に用いられている。例えば、非特許文献1には、チタン酸ジルコン酸鉛のチタンサイトの一部をニオブに置換したニオブ添加チタン酸ジルコン酸鉛(PNZT)薄膜が報告されている。
上述のような薄膜の製造法としては、塗布熱分解法やゾルゲル法等のMOD(Metal Organic Deposition)法、CVD(Chemical Vapour Deposition)法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等が挙げられる。比較的加工精度の低い薄膜については、製造コストが小さく、薄膜形成が容易なMOD法が好適な方法である。MOD法に用いられる薄膜のプレカーサは、主にアルコシド化合物、有機酸金属塩が使用されており、ニオブプレカーサについても同様である。
また、特許文献1には、溶液中の金属組成比(モル比)がA:B:C=X:Y:Zで表され(ただし、AはSrとBa及び/又はPb、BはBi、CはTa及び/又はNbを示す。)、0.4≦X≦1.0、1.5≦Y≦3.5、Z=2であり、Sr:Ba:Pb=a:b:cで表したときに、0.7X≦a<X、0<b+c≦0.3Xとなるように有機溶媒中に金属化合物を混合してなるBi系強誘電体薄膜形成用組成物(請求項1)が開示されている。また、特許文献1の[0023]段落には、ニオブ化合物として、ニオブエトキシド、ニオブプロポキシド、ニオブブトキシド、ニオブ−2−メトキシエトキシド等のアルコキシドや、オクチル酸ニオブ、n−ヘキサン酸ニオブ、2−エチル酪酸ニオブ、i−吉草酸ニオブ等のカルボン酸等が例示されている。
更に、特許文献2には、組成がBi2(TamNb1−m)2O8(ただし、0≦m≦1)で表される、厚さ5〜50nmの下地層と、該下地層上に形成された、組成が(SrxBi1−x)Bi2(TaYNb1−Y)2Oz(ただし、0.4≦X≦1、0≦Y≦1、Zは各金属元素に付随した酸素の数の合計)で表される主層とを備えてなるBi系強誘電体薄膜(請求項1)及び組成がBi2(TamNb1−m)2O8(ただし、0≦m≦1)で表される、厚さ5〜50nmの下地層と、該下地層上に形成された、組成が[{Srx(Pb及び/又はBan}XBi1−X]Bi2(TaYNb1−Y)2Oz(ただし、0<n≦0.3、0.4≦X≦1、0≦Y≦1、Zは各金属元素に付随した酸素の数の合計)で表される主層とを備えてなるBi系強誘電体薄膜(請求項2)が開示されている。また、特許文献2の[0025]段落には、ニオブ化合物として、ニオブエトキシド、ニオブプロポキシド、ニオブブトキシド、ニオブ−2−メトキシエトキシド等のアルコキシドや、オクチル酸ニオブ、n−ヘキサン酸ニオブ、2−エチル酪酸ニオブ、i−吉草酸ニオブ等のカルボン酸塩が例示されている。
また、特許文献3には、ペロブスカイト型A−サイトモイエティー、ペロブスカイト型B−サイトモイエティー、および超格子生成モイエティーを含む複数のポリオキシアルキレート化金属モイエティーを提供する工程を包含する、電子素子を作成するための方法であって、該方法は、該各金属モイエティーを、複数の層(116、124、128)を順に有する積層化超格子材料(112)に対応する相対割合で組み合わせる工程であって、該順は、A−サイト金属、B−サイト金属、およびその混合物からなる群より選択される金属の酸化物から形成される、A/Bイオン性サブユニットセル(146)を有するA/B(124)と;超格子生成イオン性サブユニットセルを有する超格子生成層(116)と;A−サイト金属およびB−サイト金属の両方を含有するペロブスカイト型AB層(128)であって、該AB層は該A/B層の格子とは異なるペロブスカイト型酸素八面体格子を有するペロブスカイト型AB層と、を含んでいる工程と、該前駆体溶液を基板に塗布する工程と、該基板上の該前駆体溶液を処理することにより、該A/B層、該超格子生成層、および該ペロブスカイト型AB層を有する混合積層化格子材料を形成する工程と、を特徴とする方法が開示されている。また、特許文献3の47頁実施例4には、プレ前駆体溶液の原料として2−エチルヘキサン酸ニオブを使用することが記載されている。
上述のような有機酸ニオブは、製造方法及び製造条件により、得られる誘導体の性質、物性が大きく異なり、MOD法のプレカーサとしては扱いにくいという問題点を有していた。
一般に有機酸ニオブは、(RCOO)5Nbと表記される場合が多いが、炭素含有量、Nb含有量共に様々である。実際に、有機酸ニオブを形成する結合ユニットは、「RCOO−NbとNb−O−Nb」、「RCOO−NbとNb=O」または「RCOO−NbとNb−O−NbとNb=O」であり、例えば単純な構造で代表したモデルを示すと下記化学式のようになるが、実際に化学構造を正確に同定することは困難である。なお、下記化学式において、Lは有機酸残基を表す。
ここで、例えば、ニオブペンタアルコキシドと有機酸を反応させることにより得られた(RCOO)5Nbの組成に近い炭素含有量、Nb含有量を有する有機酸ニオブ誘導体は、保存安定性が悪い。なお、ニオブペンタアルコキシドから得られた有機酸ニオブ誘導体は、アルコキシ基が残存し易いことが知られており、実際には、RCOO−Nb、Nb−O−Nb、Nb−OR’(OR’は原料由来のアルコキシ基)から構成される化合物と考えられている。また、(RCOO)5Nbの構造を有する化合物自体の保存安定性が悪いことも考えられる。一方、分子中のNb−O−Nbの連鎖が大きいものは、分子量、ニオブ含有量が大きくなり、炭素含有量が小さくなる。このような有機酸ニオブ誘導体は溶解性が悪化するので、使用できる溶剤やその濃度が制限され、即ち、溶解性のマージンが狭くなる。また、他の金属プレカーサと併用する時に、得られる薄膜中に酸化ニオブが局在化するので、所望する均一な組成や結晶構造を形成できない部分が多くなり、得られる薄膜は、期待される電気特性が得られない。
更に、Nb[C4H9CH(C2H5)COO]5の理論値に近い2−エチルヘキサン酸ニオブ、即ち、ニオブ含有量が11.5質量%前後のものをプレカーサとして使用した塗布液は保存安定性が悪いという問題を有している。また、このような有機酸ニオブは、更に他のプレカーサ化合物と混合して使用する場合に化学反応により、塗布液のゲル化や沈殿が生ずる等の問題点もある。
従って、本発明の目的は、MOD法のプレカーサとして有用な2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有する2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体が上記問題点を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ニオブ含有量が13〜16質量%であり、炭素含有量が50〜58質量%の範囲内であり、且つニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されていることを特徴とする。
即ち、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ニオブ含有量が13〜16質量%であり、炭素含有量が50〜58質量%の範囲内であり、且つニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されていることを特徴とする。
また、上記2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと、2−エチルヘキサン酸とを反応させることを特徴として製造することができる。
本発明によれば、有機溶剤に対する溶解性に優れ、他のプレカーサ化合物と混合した時に安定した溶液を提供することができるMOD法のプレカーサとして好適な2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体が得られるという効果を奏するものである。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、ニオブ含有量が13〜16質量%、好ましくは13〜15質量%の範囲内にあり、炭素含有量が50〜58質量%、好ましくは52〜57質量%の範囲内にあり、ニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されているものである。なお、2−エチルヘキサン酸ニオブの理論値は、ニオブ含有量が11.5質量%であり、炭素含有量が59.4質量%である。
ここで、ニオブ含有量が13質量%未満となると、保存安定性が悪くなるために好ましくなく、また、16質量%を超えると、溶解性のマージンが狭くなるために好ましくない。また、炭素含有量が50質量%未満となると、溶解性のマージンが狭くなるために好ましくなく、また、58質量%を超えると、保存安定性が悪くなるために好ましくない。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の特徴は、液体であること、保存安定性に優れること、混合安定性に優れること、溶解性のマージンが広いことであり、それ故、MOD法のプレカーサとして有用である。このような特徴は、有機酸成分として2−エチルヘキサン酸を選択したことも寄与している。
例えば、酢酸や吉草酸等の有機酸成分である炭素数の少ない有機酸ニオブ誘導体は、固体化する傾向があり、安定な塗布液を与え難い。また、有機溶剤に対する溶解性が低いので、溶解性のマージンが得られない。更には、不快な臭気を発生する問題を有している。また、有機酸成分の炭素数が多いものは、ニオブ含有量が少ないので、モル換算の溶解性について、充分な溶解性マージンが得られない場合がある。また、このような有機酸ニオブ誘導体をプレカーサに用いて得られる薄膜は不純物カーボン残渣が多くなる。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法は、出発原料としてペンタキス(アルコキシ)ニオブを原料に用いる方法である。ペンタキス(アルコキシ)ニオブを原料に用いる方法としては、2−エチルヘキサン酸を加えて加熱する方法、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと2−エチルヘキサン酸との反応時に副生する水を取り除く、脱水剤を併用する方法が挙げられる。なお、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと2−エチルヘキサン酸の反応割合は、ペンタキス(アルコキシ)ニオブ1モルに対して、2−エチルヘキサン酸3〜8モル、好ましくは4〜6モルの範囲内である。ここで、2−エチルヘキサン酸の量が3モル未満となると、アルコキシ基が残留し、保存安定性が悪化するため好ましくなく、また、8モルを超えると、添加量の増加に伴う効果が発揮されず、経済的に不利となるために好ましくない。
なお、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法において、出発原料として使用されるペンタキス(アルコキシ)ニオブとしては、例えばペンタキス(メトキシ)ニオブ、ペンタキス(エトキシ)ニオブ、ペンタキス(プロポキシ)ニオブ、ペンタキス(イソプロポキシ)ニオブ、ペンタキス(ブトキシ)ニオブ等の炭素数1〜4のアルコキシドを例示することができる。
なお、ペンタキス(アルコキシ)ニオブを出発原料として使用する場合に、反応系内に水が存在するとNb−O−Nbの連鎖が進むので、反応の制御が難しくなる。従って、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法としては、副生する水を消費する脱水剤を用いるのが好ましい。上記の脱水剤としては、無水酢酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水マロン酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、無水スクシン酸等の酸無水物、オルトギ酸トリエチル、オルトギ酸トリメチル等のオルトギ酸エステル等が挙げられる。この中でも、反応後、反応系内から除去するのが容易であるので酸無水物が好ましく、無水酢酸が最も好ましい。また、脱水剤の使用量は、原料であるペンタキス(アルコキシ)ニオブ1モルに対して、0.5〜10モル、好ましくは1〜8モルの範囲内である。脱水剤の使用量が0.5モル未満であると、使用効果が発現しない場合があるために好ましくなく、また、10モルを超えると、添加量の増加に伴う効果が発揮されず、経済的に不利となるために好ましくない。
また、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法において、反応温度は、100〜150℃、好ましくは110〜140℃の範囲内である。ここで、反応温度が100℃未満であると、反応を完結させるために時間が掛り、また、生成物中にアルコキシ基が残留することがあるため好ましくなく、また、150℃を超えると、反応の制御が難しくなり、分子量、ニオブ含有量のコントロールが困難になる場合があるために好ましくない。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体をMOD法の原料として用いる場合、有機溶剤並びに必要により用いられる他の元素を薄膜に導入するプレカーサ化合物等を含有する組成物として用いることができる。該組成物の形態は、エマルション、サスペンション、ディスパージョン、コロイダル分散液、溶液のいずれでも良いが、薄膜組成の均一性が良好で且つ表面状態が良好な薄膜を形成することができる溶液として使用することが好ましい。また、該組成物中の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の含有量は、通常、基体への塗布が容易である1〜50質量%の範囲内であり、好ましくは5〜40質量%の範囲内である。
上記の有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ポリオール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系、エーテル系溶剤、ポリエーテル系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、塩素系溶剤、シアノ基を有する炭化水素溶剤、ピロリドン溶剤等が挙げられ、これらは1種又は2種以上を混合して用いることができる。
上記の他の元素を薄膜に導入するためのプレカーサ化合物としては、金属アルコキシド化合物、有機酸金属化合物、β−ジケトン金属錯体が好ましく、金属アルコキシド化合物、有機酸金属塩化合物がより好ましい。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体を用いるMOD用原料を用いるMOD法により製造可能な薄膜としては、例えば酸化ニオブ、ニオブ−タンタル酸化物(Ta2−xNbxO5)等の誘電体薄膜;ニオブ酸リチウム等の圧電体薄膜;ニオブ−タンタル酸ビスマス[Bi2(TamNb1−m)2O5]、ニオブ−タンタル酸ビスマスストロンチウム(Sr1−xBaxTa2−yNbyO9)、ニオブ添加チタン酸鉛、ニオブ添加チタン酸ビスマス、ニオブ添加チタン酸鉛、ニオブ添加チタン酸ジルコン酸鉛等の強誘電体薄膜が挙げられる。
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例等によって限定されるものではないことを理解されたい。
実施例1:2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにペンタキス(エトキシ)ニオブ0.5モル、乾燥トルエン200mlを仕込み、これを無水酢酸2.6モル、2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、バス温度120℃で4時間還流させた後、バス温度135℃でトルエン及び低沸点物を反応系から留去し、更に、系内を3〜1トールに減圧して濃縮することにより黄色粘性液体345gを得た。得られた黄色粘性液体について、以下の測定を行った:
実施例1:2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにペンタキス(エトキシ)ニオブ0.5モル、乾燥トルエン200mlを仕込み、これを無水酢酸2.6モル、2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、バス温度120℃で4時間還流させた後、バス温度135℃でトルエン及び低沸点物を反応系から留去し、更に、系内を3〜1トールに減圧して濃縮することにより黄色粘性液体345gを得た。得られた黄色粘性液体について、以下の測定を行った:
(1)元素分析
試料質量に対し45倍の63%硝酸水を加え、100℃に加熱して得た粉末をNb2O5として定量したところ、ニオブ含有量は13.7質量%であった。
また、炭素及び水素含有量をCHN元素分析により行ったところ、C含有量は55.1質量%、H含有量は8.3質量%であった。
(2)スペクトル分析
・1H−NMR分析:得られたチャートを図1に示す。図1に示す1H−NMR分析のチャートから、アルコキシ基が不在であることが確認できた。
・13C−NMR(溶媒:重ベンゼン):得られたチャートを図2に示す。図2に示すチャートから、アルコキシ基が不在であることが確認できた。また、2−エチルヘキサン酸残基の炭素ピークが各々複数観察された。このことは、複数の環境の2−エチルヘキサン酸残基が存在していることを示すものである。
・IR(塗布法):得られたチャートを図3に示す。図3に示すチャートから、1500〜1600cm−1に複数の吸収が観察され、1400〜1500cm−1にも複数の吸収が観察された。このことは、複数種のCOONbが存在していることを示している。
(3)熱分析
TG−DTA(空気300ml/分、昇温速度:10℃/分、サンプル量38.8037mg、リファレンスアルミナ7.1320mg):得られたチャートを図4に示す。
試料質量に対し45倍の63%硝酸水を加え、100℃に加熱して得た粉末をNb2O5として定量したところ、ニオブ含有量は13.7質量%であった。
また、炭素及び水素含有量をCHN元素分析により行ったところ、C含有量は55.1質量%、H含有量は8.3質量%であった。
(2)スペクトル分析
・1H−NMR分析:得られたチャートを図1に示す。図1に示す1H−NMR分析のチャートから、アルコキシ基が不在であることが確認できた。
・13C−NMR(溶媒:重ベンゼン):得られたチャートを図2に示す。図2に示すチャートから、アルコキシ基が不在であることが確認できた。また、2−エチルヘキサン酸残基の炭素ピークが各々複数観察された。このことは、複数の環境の2−エチルヘキサン酸残基が存在していることを示すものである。
・IR(塗布法):得られたチャートを図3に示す。図3に示すチャートから、1500〜1600cm−1に複数の吸収が観察され、1400〜1500cm−1にも複数の吸収が観察された。このことは、複数種のCOONbが存在していることを示している。
(3)熱分析
TG−DTA(空気300ml/分、昇温速度:10℃/分、サンプル量38.8037mg、リファレンスアルミナ7.1320mg):得られたチャートを図4に示す。
比較例1:2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体2の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコに五塩化ニオブ0.5モル、エタノール200mlを仕込み、2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、アンモニアガスを吹き込みながら2時間撹拌した。アンモニアガスを止め、バス温度80℃で4時間還流させた後、アルゴンガスを吹き込みながら、更に1時間還流した。反応液を室温まで冷却し、塩化アンモニウムをデカンション及び濾過により取り除いた溶液について、溶媒をエタノールからトルエンに交換して、析出した塩化アンモニウムを濾別した。この溶液をバス温度135℃でトルエン及び低沸点物を留去した後、更に系内を3〜1トールに減圧して濃縮を行い、黄色粘性液体345gを得た。得られた黄色粘性液体について、上記実施例1と同様に元素分析を行ったところ、ニオブ含有量は12.2質量%であり、炭素含有量は59.0質量%であった。
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコに五塩化ニオブ0.5モル、エタノール200mlを仕込み、2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、アンモニアガスを吹き込みながら2時間撹拌した。アンモニアガスを止め、バス温度80℃で4時間還流させた後、アルゴンガスを吹き込みながら、更に1時間還流した。反応液を室温まで冷却し、塩化アンモニウムをデカンション及び濾過により取り除いた溶液について、溶媒をエタノールからトルエンに交換して、析出した塩化アンモニウムを濾別した。この溶液をバス温度135℃でトルエン及び低沸点物を留去した後、更に系内を3〜1トールに減圧して濃縮を行い、黄色粘性液体345gを得た。得られた黄色粘性液体について、上記実施例1と同様に元素分析を行ったところ、ニオブ含有量は12.2質量%であり、炭素含有量は59.0質量%であった。
比較例2:2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体3の製造
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにペンタキス(エトキシ)ニオブ0.5モル、乾燥キシレン200mlを仕込み、これに2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、バス温度145℃で4時間還流させた後、バス温度145℃でキシレン及び低沸点物を反応系から留去し、更に、系内を3〜1トールに減圧して濃縮することにより黄色粘性液体335gを得た。得られた黄色粘性液体について、実施例1と同様に元素分析を行ったところ、ニオブ含有量は17.4質量%であり、炭素含有量は53.0質量%であった。
乾燥アルゴンガス雰囲気下で、反応フラスコにペンタキス(エトキシ)ニオブ0.5モル、乾燥キシレン200mlを仕込み、これに2−エチルヘキサン酸2.6モルを加え、バス温度145℃で4時間還流させた後、バス温度145℃でキシレン及び低沸点物を反応系から留去し、更に、系内を3〜1トールに減圧して濃縮することにより黄色粘性液体335gを得た。得られた黄色粘性液体について、実施例1と同様に元素分析を行ったところ、ニオブ含有量は17.4質量%であり、炭素含有量は53.0質量%であった。
評価1
上記実施例1、比較例1及び比較例2で得られた2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1〜3について、トルエン及びブタノールを用いて有機溶剤への溶解性を評価した。有機溶剤6gと2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体4gを混合した結果を表1に示す。
上記実施例1、比較例1及び比較例2で得られた2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1〜3について、トルエン及びブタノールを用いて有機溶剤への溶解性を評価した。有機溶剤6gと2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体4gを混合した結果を表1に示す。
評価2
上記実施例1及び比較例1で得られた2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1〜2について、ペンタキス(エトキシ)タンタル0.6モル/リットルのテトラヒドロフラン溶液を用いて混合安定性の試験を行った。タンタルアルコキシド溶液に2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体をニオブのモル数がタンタルの50%になる量加えた溶液と2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体を加えない溶液を20mlのサンプル瓶に10ml入れ、30℃湿度50%の恒温恒湿槽に18時間保存した後の試料の様子を観察した。結果を表2に示す。
上記実施例1及び比較例1で得られた2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体1〜2について、ペンタキス(エトキシ)タンタル0.6モル/リットルのテトラヒドロフラン溶液を用いて混合安定性の試験を行った。タンタルアルコキシド溶液に2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体をニオブのモル数がタンタルの50%になる量加えた溶液と2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体を加えない溶液を20mlのサンプル瓶に10ml入れ、30℃湿度50%の恒温恒湿槽に18時間保存した後の試料の様子を観察した。結果を表2に示す。
上記結果より、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、有機溶剤に対する溶解性が良好であり、また、他のプレカーサ化合物との混合安定性も良好であることが確認できた。なお、タンタルエトキシドに対しては安定化付与効果も有することが確認できた。 これに対し、ニオブ含有量の多い2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、溶解性が劣り、ニオブ含有量が少ない2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、他のプレカーサ化合物との混合安定化に劣る。
このことは、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体が、MOD法のプレカーサとして特異的に優れた効果を示すものである。
このことは、本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体が、MOD法のプレカーサとして特異的に優れた効果を示すものである。
本発明の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体は、MOD法のプレカーサとして好適に使用することができる。
Claims (6)
- ニオブ含有量が13〜16質量%であり、炭素含有量が50〜58質量%の範囲内であり、且つニオブ原子、酸素原子及び2−エチルヘキサン酸残基のみから構成されていることを特徴とする2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体。
- 請求項1記載の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法において、ペンタキス(アルコキシ)ニオブと、2−エチルヘキサン酸とを反応させることを特徴とする2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法。
- ペンタキス(アルコキシ)ニオブ1モルに対して、2−エチルヘキサン酸4〜6モルを脱水剤の存在下で反応させる、請求項2記載の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法。
- ペンタキス(アルコキシ)ニオブ1モルに対して、1〜8モルの脱水剤を使用する、請求項3記載の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法。
- 脱水剤として、ペンタキス(アルコキシ)ニオブ1モルに対して、4〜6モルの無水酢酸を使用する、請求項3または4記載の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法。
- 反応温度が100〜150℃の範囲内である、請求項2ないし5のいずれか1項記載の2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体の製造方法。
Priority Applications (6)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005171441A JP2006342138A (ja) | 2005-06-10 | 2005-06-10 | 2−エチルヘキサン酸ニオブ誘導体及びその製造方法 |
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