JP5526593B2 - 強誘電体薄膜形成用組成物、強誘電体薄膜の形成方法並びに該方法により形成された強誘電体薄膜 - Google Patents

強誘電体薄膜形成用組成物、強誘電体薄膜の形成方法並びに該方法により形成された強誘電体薄膜 Download PDF

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Description

本発明は、高容量密度の薄膜キャパシタ用途に適した強誘電体薄膜形成用組成物、強誘電体薄膜の形成方法並びに該方法により形成された強誘電体薄膜に関するものである。
この種の強誘電体膜の製造方法として、各成分金属のアルコキシドや有機酸塩を極性溶媒に溶解してなる混合溶液を用い、金属基板に塗布、乾燥して、塗膜を形成し、結晶化温度以上の温度に加熱して焼成することにより、誘電体薄膜を成膜することが一般的に知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、DRAMや不揮発性メモリ用途として、半導体基板上に非晶質又は結晶性の誘電体膜を形成した後に、この誘電体膜に不純物を熱拡散法やイオン注入法、イオンドーピング法などの手法によってドーピングする誘電体素子の製造方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2では、金属誘電体膜としてPZT膜が、ドーパントとしてP(燐)イオンが開示されている。P(燐)をドープすることで誘電体キャパシタを備えたDRAMや不揮発性メモリのメモリ保持特性を向上することができる。
また、半導体メモリセルのキャパシタ用途として、ゾル−ゲル法によってPZTからなる強誘電体膜を形成するに際し、鉛チタニウム・ダブルアルコキシドや鉛ジルコニウム・ダブルアルコキシドを生成させ、これらの反応生成物を加水分解しかつ縮合反応により高分子化を行い、原料溶液を調製し、この原料溶液を塗布し、この塗布された原料溶液を乾燥して乾燥膜を形成し、この乾燥膜を焼結する強誘電体膜の形成方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この特許文献3では、成膜されるPZT薄膜の使用時での印加電圧の反転による疲労(残留分極値の減少)やリーク電流を抑えるために、原料溶液にランタン、ニオブ、鉄のごとき第4の金属元素を添加しても良いことが記載されている。特許文献3によれば、各ダブルアルコキシドの加水分解及び縮合反応が均一に進行し、このゾルゲル溶液から成膜されたPZT薄膜は平滑な表面を呈し、残留分極が大きく、漏れ電流も小さいなど、電気特性が十分となり、要求される性能を満足することができる。
また、電気的又は光学的性質を利用した各種デバイス用途として、PLZT強誘電体薄膜を形成するための組成物において、PLZTで示される複合金属化合物Aと、Bi、Si、Pb、Ge、Sn、Al、Ga、In、Mg、Ca、Sr、Ba、V、Nb、Ta、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Cd、Li、Na及びKのうちから選ばれる1種又は2種以上の元素から構成される複合金属酸化物Bの混合複合金属酸化物の薄膜を形成するための液状組成物であり、該金属酸化物を構成する化合物が、所望の金属原子比を与えるような割合で有機溶媒中に溶解している溶液からなる組成物が知られている(例えば、特許文献4参照。)。この特許文献4では、この組成物を用いることで、強誘電体薄膜を形成するに当たり、450℃以下の低温でも結晶化を行うことが可能となる。
更に、不揮発性メモリー用途として、PZTにCaやSr、Laを添加する強誘電体薄膜を形成するための混合液が開示されている(例えば、特許文献5参照。)。
特開昭60−236404号公報(第3頁右下欄11行目〜第4頁左下欄10行目、第5頁右上欄10行目〜同頁左下欄17行目) 特開平5−343641号公報(請求項3,4、8、段落[0001]、[0065]) 特開平7−252664号公報(請求項2,3,7,8、段落[0001]、[0035]、[0117]、[0118]) 特開2003−2647号公報(請求項1、段落[0001]、[0013]) 米国特許第6203608号明細書(FIELD OF THE INVENTION, Claim 1)
上記特許文献2のように、誘電体膜にP(燐)をドープすることでメモリ保持特性を向上させることが可能であるが、この特許文献2では、誘電体膜を形成した後に、形成した誘電体膜にP(燐)をドープする手法であるため、ドーパントが膜中で不均一となったり、ドーパント以外の不純物が導入されるおそれがあり、また、誘電体膜の膜質の劣化も懸念される。更に、熱処理工程が必要となるなど複数の工程を経ることから、作業が繁雑となることも考えられる。
また、上記特許文献3〜5のように、誘電体膜の特性を改善させるために様々な元素を添加する技術が開発されているが、強誘電体薄膜を高容量密度の薄膜キャパシタ用途で考えた場合、リーク電流の低減と絶縁耐圧の向上の双方の特性をバランス良く改善することが必要となっていた。
本発明の目的は、簡便な手法で、リーク電流の低減と絶縁耐圧の向上の両特性をバランスよく改善することができる、高容量密度の薄膜キャパシタ用途に適した強誘電体薄膜形成用組成物、強誘電体薄膜の形成方法並びに該方法により形成された強誘電体薄膜を提供することにある。
本発明の第1の観点は、PLZT及びPZTからなる群より選ばれた1種の強誘電体薄膜を形成するための強誘電体薄膜形成用組成物において、一般式:(PbxLay)(ZrzTi(1-z))O3(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属酸化物Aに、P(燐)を含む複合酸化物Bが混合した混合複合金属酸化物の形態をとる薄膜を形成するための液状組成物であり、前記複合金属酸化物Aを構成するための原料並びに前記複合酸化物Bを構成するための原料が上記一般式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなり、有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数50個/mL以下であり、前記複合金属酸化物Bがトリエチルフォスフェートからなることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に複合金属酸化物Aを構成するための原料が、有機基がその酸素又は窒素原子を介して金属元素と結合している化合物であることを特徴とする。
本発明の第3の観点は、第2の観点に基づく発明であって、更に複合金属酸化物Aを構成するための原料が、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく発明であって、更に複合酸化物Bを構成するための原料が、有機基がその酸素又は窒素原子を介してP(燐)元素と結合している化合物であることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第4の観点に基づく発明であって、更に複合酸化物Bを構成するための原料が、アルコキシド化合物、ジオール化合物、トリオール化合物、カルボン酸塩化合物、β−ジケトネート化合物、β−ジケトエステル化合物、β−イミノケト化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上であることを特徴とする。
本発明の第6の観点は、第1ないし第5の観点に基づく発明であって、更にβ−ジケトン、β−ケトン酸、β−ケトエステル、オキシ酸、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン及び多価アミンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の安定化剤を、組成物中の金属合計量1モルに対して、0.2〜3モルの割合で更に含有することを特徴とする。
本発明の第7の観点は、第1ないし第6の観点に基づく発明であって、更にBとAとのモル比B/Aが0<B/A<0.2であることを特徴とする。
本発明の第8の観点は、第7の観点に基づく発明であって、更にBとAとのモル比B/Aが0.003≦B/A≦0.1であることを特徴とする。
本発明の第9の観点は、第1ないし第8の観点に基づく強誘電体薄膜形成用組成物を耐熱性基板に塗布し、空気中、酸化雰囲気中又は含水蒸気雰囲気中で加熱する工程を1回又は所望の厚さの膜が得られるまで繰返し、少なくとも最終工程における加熱中或いは加熱後に該膜を結晶化温度以上で焼成することを特徴とする強誘電体薄膜の形成方法である。
本発明の第10の観点は、第9の観点に基づく方法により形成された強誘電体薄膜である。
本発明の第11の観点は、第10の観点に基づく強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD(Integrated Passive Device)、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品である。
本発明の第12の観点は、第11の観点に基づく100MHz以上の周波数帯域に対応した、強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品である。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物は、一般式:(PbxLay)(ZrzTi(1-z))O3(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属酸化物Aに、P(燐)を含む複合酸化物Bが混合した混合複合金属酸化物の形態をとるように、有機金属化合物溶液に複合金属酸化物Aを構成するための原料並びに複合酸化物Bを構成するための原料を所定の割合で有機溶媒中に溶解させている。この組成物を用いて強誘電体薄膜を形成することにより、リーク電流の低減と絶縁耐圧の向上の両特性をバランスよく改善した高容量密度の薄膜キャパシタ用途に適した強誘電体薄膜を簡便な手法で得ることができる、という利点がある。
実施例、比較例における5V印加時のリーク電流密度とP(燐)添加量の関係を示す図である。 実施例、比較例における20V印加時のリーク電流密度とP(燐)添加量の関係を示す図である。 実施例、比較例における50V印加時のリーク電流密度とP(燐)添加量の関係を示す図である。 実施例、比較例における絶縁耐圧とP(燐)添加量の関係を示す図である。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物は、PLZT、PZT及びPTからなる群より選ばれた1種の強誘電体薄膜を形成するための組成物である。この組成物を用いて形成される強誘電体薄膜は、一般式:(PbxLay)(ZrzTi(1-z))O3(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0≦z<0.9)で示される複合金属酸化物Aに、P(燐)を含む複合酸化物Bが混合した混合複合金属酸化物の形態をとる。なお、上記式のy≠0かつz≠0の場合はPLZTであり、y=0かつz≠0の場合はPZTであり、y=0かつz=0の場合はPTである。この組成物は、複合金属酸化物Aを構成するための原料と、複合酸化物Bを構成するための原料が上記一般式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなる。
複合金属酸化物A用原料は、Pb、La、Zr及びTiの各金属元素に、有機基がその酸素又は窒素原子を介して結合している化合物が好適である。例えば、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上が例示される。特に好適な化合物は、金属アルコキシド、その部分加水分解物、有機酸塩である。このうち、Pb化合物、La化合物としては、酢酸塩(酢酸鉛、酢酸ランタン)等の有機酸塩、鉛ジイソプロポキシドなどのアルコキシドが挙げられる。Ti化合物としては、チタニウムテトラエトキシド、チタニウムテトライソプロポキシド、チタニウムテトラブトキシド、チタニウムジメトキシジイソプロポキシドなどのアルコキシドが挙げられる。Zr化合物としては、上記Ti化合物と同様なアルコキシド類が好ましい。金属アルコキシドはそのまま使用しても良いが、分解を促進させるためにその部分加水分解物を使用しても良い。
また、複合酸化物B用原料は、P(燐)元素に、有機基がその酸素又は窒素原子を介して結合している化合物が好適である。例えば、アルコキシド化合物、ジオール化合物、トリオール化合物、カルボン酸塩化合物、β−ジケトネート化合物、β−ジケトエステル化合物、β−イミノケト化合物、及びアミノ化合物からなる群より選ばれた1種又は2種以上が例示される。特に好適な化合物は、アルコキシド化合物、その部分加水分解物である。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物を調製するには、これらの原料を所望の強誘電体薄膜組成に相当する比率で適当な溶媒に溶解して、塗布に適した濃度に調製する。
BとAとのモル比B/Aは、0<B/A<0.2の範囲内となるように調整される。上記範囲内であれば、本発明の効果であるリーク電流の低減と絶縁耐圧の向上の強誘電体薄膜の両特性をバランスよく改善することができる。なお、上限値を越えると比誘電率の劣化の不具合を生じる。このうち、0.003≦B/A≦0.1が特に好ましい。
ここで用いる強誘電体薄膜形成用組成物の溶媒は、使用する原料に応じて適宜決定されるが、一般的には、カルボン酸、アルコール、エステル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル)、シクロアルカン類(例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノール)、芳香族系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、その他テトラヒドロフランなど、或いはこれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
カルボン酸としては、具体的には、n−酪酸、α−メチル酪酸、i−吉草酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸、3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。
また、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸sec−アミル、酢酸tert−アミル、酢酸イソアミルを用いるのが好ましく、アルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソ−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノールを用いるのが好適である。
なお、強誘電体薄膜形成用組成物の有機金属化合物溶液中の有機金属化合物の合計濃度は、金属酸化物換算量で0.1〜20重量%程度とすることが好ましい。
この有機金属化合物溶液中には、必要に応じて安定化剤として、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、β−ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、β−ケトエステル類(例えば、上記ケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類)、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、上記オキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)、多価アミン等を、(安定化剤分子数)/(金属原子数)で0.2〜3程度添加しても良い。
本発明では、上記調製された有機金属化合物溶液を濾過処理等によって、パーティクルを除去して、粒径0.5μm以上(特に0.3μm以上とりわけ0.2μm以上)のパーティクルの個数が溶液1mL当り50個/mL以下とするのが好ましい。
なお、当該有機金属化合物溶液中のパーティクルの個数の測定には、光散乱式パーティクルカウンターを用いる。
有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数が50個/mLを越えると、長期保存安定性が劣るものとなる。この有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数は少ない程好ましく、特に30個/mL以下であることが好ましい。
上記パーティクル個数となるように、調製後の有機金属化合物溶液を処理する方法は特に限定されるものではないが、例えば、次のような方法が挙げられる。第1の方法としては、市販の0.2μm孔径のメンブランフィルターを使用し、シリンジで圧送する濾過法である。第2の方法としては、市販の0.05μm孔径のメンブランフィルターと加圧タンクを組み合せた加圧濾過法である。第3の方法としては、上記第2の方法で使用したフィルターと溶液循環槽を組み合せた循環濾過法である。
いずれの方法においても、溶液圧送圧力によって、フィルターによるパーティクル捕捉率が異なる。圧力が低いほど捕捉率が高くなることは一般的に知られており、特に、第1の方法、第2の方法について、粒径0.5μm以上のパーティクルの個数を50個以下とする条件を実現するためには、溶液を低圧で非常にゆっくりとフィルターに通すのが好ましい。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物を用いることで、PLZT、PZT及びPTからなる群より選ばれた1種の複合金属酸化物Aに、P(燐)を含む複合酸化物Bが混合した混合複合金属酸化物の形態をとる強誘電体薄膜を簡便に形成することができる。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物を用いて、強誘電体薄膜を形成するには、上記組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source MistedChemical Deposition)法等の塗布法により耐熱性基板上に塗布し、乾燥(仮焼成)及び本焼成を行う。
使用される耐熱性基板の具体例としては、基板表層部に、単結晶Si、多結晶Si,Pt,Pt(最上層)/Ti,Pt(最上層)/Ta,Ru,RuO2,Ru(最上層)/RuO2,RuO2(最上層)/Ru,Ir,IrO2,Ir(最上層)/IrO2,Pt(最上層)/Ir,Pt(最上層)/IrO2,SrRuO3又は(LaxSr(1-x))CoO3等のペロブスカイト型導電性酸化物等を用いた基板が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、1回の塗布では、所望の膜厚が得られない場合には、塗布、乾燥の工程を複数回繰返し行った後、本焼成を行う。ここで、所望の膜厚とは、本焼成後に得られる強誘電体薄膜の厚さをいい、高容量密度の薄膜キャパシタ用途の場合、本焼成後の強誘電体薄膜の膜厚が50〜500nmの範囲である。
また、仮焼成は、溶媒を除去するとともに有機金属化合物や有機化合物を熱分解又は加水分解して複合酸化物に転化させるために行うことから、空気中、酸化雰囲気中、又は含水蒸気雰囲気中で行う。空気中での加熱でも、加水分解に必要な水分は空気中の湿気により十分に確保される。この加熱は、溶媒の除去のための低温加熱と、有機金属化合物や有機化合物の分解のための高温加熱の2段階で実施しても良い。
本焼成は、仮焼成で得られた薄膜を結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させるための工程であり、これにより強誘電体薄膜が得られる。この結晶化工程の焼成雰囲気はO2、N2、Ar、N2O又はH2等或いはこれらの混合ガス等が好適である。
仮焼成は、150〜550℃で1〜30分間程度行われ、本焼成は450〜800℃で1〜10分間程度行われる。本焼成は、急速加熱処理(RTA処理)で行っても良い。RTA処理で本焼成する場合、その昇温速度は10〜100℃/秒が好ましい。
このようにして形成された本発明の強誘電体薄膜は、リーク電流の低減と絶縁耐圧の向上の両特性をバランスよく改善したものとなり、キャパシタとしての基本的特性に優れ、高容量密度の薄膜キャパシタ用途に好適である。また、本発明の強誘電体薄膜は、IPDとしての基本的特性にも優れる。
また、本発明の強誘電体薄膜は、薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品における構成材料として使用することができる。このうち特に100MHz以上の周波数帯域に対応したものに使用することもできる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。以下に示す実施例1、2、6、9、14〜19は、実施例ではなく参考例である。
なお、以下の実施例及び比較例において、原料としては、次のものを用いた。
Pb化合物: 酢酸鉛3水和物
La化合物: 酢酸ランタン1.5水和物
Zr化合物: ジルコニウムテトラt−ブトキシド
Ti化合物: チタンテトライソプロポキシド
P(燐)化合物: P(燐)トリイソプロポキシド、トリエチルフォスフェート
<実施例1〜29、比較例1〜8>
有機溶媒として、十分に脱水処理した2−メトキシエタノールを使用し、これに有機酸塩形態の有機金属化合物(Pb,La化合物など)を溶解させ、共沸蒸留により結晶水を除去した。その後、得られた溶液にアルコキシド形態の有機金属化合物や有機化合物(Zr,Ti,P(燐)化合物など)を添加して溶解させ、溶液安定化のためアセチルアセトン或いはジエタノールアミンをアルコキシドに対して2倍モル加え、PZTに次の表1或いは表2に示す添加元素種及び添加量となるように、有機金属化合物の合計濃度が金属酸化物換算濃度で約10重量%の薄膜形成用溶液を調製した。
各々の溶液を用いて、下記方法によりCSD法による薄膜の形成を行った。
即ち、各々の溶液をスピンコート法により500rpmで3秒間、その後3000rpmで15秒間の条件でPt薄膜を表面にスパッタリング法にて形成した6インチシリコン基板上に塗布した。
次いで、ホットプレートを用い、350℃で10分間加熱して仮焼成を行った。この塗布、仮焼成の工程を6回繰返した後、100%酸素雰囲気或いは乾燥空気雰囲気中で700℃、1分間RTA(急速加熱処理装置)で焼成して膜厚300nmの強誘電体薄膜を形成した。
その後、メタルマスクを用い、表面に約250μm□のPt上部電極をスパッタリング法にて作製し、強誘電体薄膜直下のPt下部電極間にて直流電圧を印加し、I−V特性(リーク電流密度の電圧依存性及び絶縁耐圧)を評価した。なお、I−V特性の測定には、Keithley社製 236 SMUを用い、Bias step 0.5V、Delay time 0.1sec、Temperature 23℃、Hygrometry 50±10%の条件で測定した。また、「絶縁耐圧」の定義はリーク電流密度が1A/cm2を越える1つ前のBias stepでの電圧とする。その結果を次の表1,表2及び図1〜図4に示す。
Figure 0005526593
Figure 0005526593
表1及び図1〜図4から明らかなように、P(燐)を含まない比較例1の強誘電体薄膜に比べて、P(燐)を添加した実施例1〜5の強誘電体薄膜では、リーク電流密度の低減と同時に絶縁耐圧の向上が確認された。
また、Laを含む比較例2,3の強誘電体薄膜と、P(燐)をLaと同時に含む実施例11〜13の強誘電体薄膜の比較でも、同様の傾向を示した。
比較例1及び比較例4より、Snを添加するとリーク電流密度は増大するが、実施例6〜8に示すように、P(燐)を共存させると、同様にリーク電流密度の低減と同時に絶縁耐圧の向上効果が確認された。
また、実施例6〜10の強誘電体薄膜の結果から、P(燐)と同時にSnやSi等の他の成分を1%前後共存させてもP(燐)の良好な効果を確認でき、P(燐)は非常に特性に影響する添加元素であることが確認された。
また、実施例14〜19,20〜25及び比較例5,6の強誘電体薄膜の結果から、添加P(燐)化合物形態、安定化剤種類、焼成雰囲気に関係なく、リーク電流密度の低減と絶縁耐圧の向上が同時に実現できた。
更に、実施例26〜29及び比較例7,8の強誘電体薄膜の結果から、Laの共存下でも同様の良好な傾向が確認できた。
これらの結果から、実施例1〜29の強誘電体薄膜は、リーク耐圧と絶縁耐圧に優れた効果を有しており、薄層化が可能であることから、高容量密度が達成できる。
本発明の強誘電体薄膜形成用組成物、強誘電体薄膜の形成方法並びに該方法により形成された強誘電体薄膜は、キャパシタとしての基本的特性に優れ、高容量密度の薄膜キャパシタの用途に利用可能である。その他、IPDとしての基本的特性にも優れ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子等の複合電子部品に利用が可能である。

Claims (11)

  1. PLZT及びPZTからなる群より選ばれた1種の強誘電体薄膜を形成するための強誘電体薄膜形成用組成物において、
    一般式:(PbxLay)(ZrzTi(1-z))O3(式中0.9<x<1.3、0≦y<0.1、0z<0.9)で示される複合金属酸化物Aに、P(燐)を含む複合酸化物Bが混合した混合複合金属酸化物の形態をとる薄膜を形成するための液状組成物であり、
    前記複合金属酸化物Aを構成するための原料並びに前記複合酸化物Bを構成するための原料が上記一般式で示される金属原子比を与えるような割合で有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなり、
    有機金属化合物溶液中の粒径0.5μm以上のパーティクルの個数50個/mL以下であり、
    前記複合金属酸化物Bがトリエチルフォスフェートからなる
    ことを特徴とする強誘電体薄膜形成用組成物。
  2. 複合金属酸化物Aを構成するための原料が、有機基がその酸素又は窒素原子を介して金属元素と結合している化合物である請求項1記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  3. 複合金属酸化物Aを構成するための原料が、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上である請求項2記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  4. 複合酸化物Bを構成するための原料が、有機基がその酸素又は窒素原子を介してP(燐)元素と結合している化合物である請求項1記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  5. β−ジケトン、β−ケトン酸、β−ケトエステル、オキシ酸、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン及び多価アミンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の安定化剤を、組成物中の金属合計量1モルに対して、0.2〜3モルの割合で更に含有する請求項1ないしいずれか1項に記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  6. BとAとのモル比B/Aが0<B/A<0.2である請求項1ないしいずれか1項に記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  7. BとAとのモル比B/Aが0.003≦B/A≦0.1である請求項記載の強誘電体薄膜形成用組成物。
  8. 請求項1ないしのいずれか1項に記載の強誘電体薄膜形成用組成物を耐熱性基板に塗布し、空気中、酸化雰囲気中又は含水蒸気雰囲気中で加熱する工程を1回又は所望の厚さの膜が得られるまで繰返し、少なくとも最終工程における加熱中或いは加熱後に該膜を結晶化温度以上で焼成することを特徴とする強誘電体薄膜の形成方法。
  9. 請求項記載の方法により形成された強誘電体薄膜。
  10. 請求項記載の強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品。
  11. 請求項10に記載する100MHz以上の周波数帯域に対応した、強誘電体薄膜を有する薄膜コンデンサ、キャパシタ、IPD、DRAMメモリ用コンデンサ、積層コンデンサ、トランジスタのゲート絶縁体、不揮発性メモリ、焦電型赤外線検出素子、圧電素子、電気光学素子、アクチュエータ、共振子、超音波モータ、又はLCノイズフィルタ素子の複合電子部品。
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