しかしながら、回線閉結に際してDAAにて実行される上記のインピーダンスの整合は、電圧検出回路により電圧値を監視しながら、電流を(繰り返して)調整することによって、最終的に目的のインピーダンスへと収束させるものである。このため、リレーによって直流ループを閉結する場合に比べて、オフフック(またはスピーカホンキーの押下など、回線閉結の要求動作)から回線の閉結を完了するまでの所用時間が長くなる。その結果、操作者が、オフフック(スピーカホンキーの押下)動作後、直ちに電話番号の入力を開始すると、回線閉結前に電話番号が入力されてしまう。回線閉結前に入力された番号に対応するダイヤル信号は交換機には受信されず、電話番号(電話番号に対応するダイヤル信号)は桁落ちとなってしまう。その結果、操作者が入力した電話番号に対応する本来の発呼先装置との間で通信を確立することができないという問題点があった。
更には、操作者は、オフフックまたはスピーカホンキーの押下後、ダイヤルトーンを確認せずに電話番号の入力を開始してしまうことも多い。ここで、ダイヤルトーンは、交換機がダイヤル信号を受信できる状態となると送出される信号である。従って、交換機からのダイヤルトーンを受信する前に通信装置から送信されたダイヤル信号は、多くの場合、交換機では受信することができない。一方で、交換機は、発呼信号の受信からダイヤルトーンを通信装置に送信するまでにかかる所要時間が長くなる傾向にある。つまり、操作者がオフフック等の回線閉結の要求動作を行ってからダイヤルトーンの受信まで(発呼された中継装置がダイヤル信号を受信可能となるまで)のタイムラグが長くなる方向にある。このため、このタイムラグの間にダイヤル信号が発信されてしまう可能性が増大しており、操作者が入力した電話番号に対応するダイヤル信号に対し、益々、桁落ちが発生しやすくなっているという問題点があった。
本発明はこのような問題点を解決するために為されたものであり、ダイヤル信号の桁落ちを回避して、発呼先装置との間で的確に通信状態を確立することのできる通信装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1記載の通信装置は、操作者による操作によって回線接続の契機となる動作を行う動作部と、その動作部の動作を契機として回線を接続し回線上に設けられた中継装置に発呼する回線接続手段と、発呼先装置を指定する番号を操作者の操作に応じて入力する番号入力手段と、その番号入力手段により入力された番号に対応するダイヤル信号を前記回線接続手段により接続される回線に送信するダイヤル信号送信手段とを備え、回線上に設けられた前記中継装置を介して前記発呼先装置との間で通信を実行するものであり、前記動作部の動作を検出する動作検出手段と、その動作検出手段により前記動作部の動作が検出されると、所定時間を計時する計時手段と、前記番号入力手段により入力された番号であって、前記計時手段による所定時間の計時終了前に入力された番号を記憶する番号記憶手段とを備えており、更に、前記ダイヤル信号送信手段は、前記番号記憶手段に記憶された番号に対応するダイヤル信号の回線への送信を前記計時手段による所定時間の計時が終了するまで待機する待機手段を備え、前記番号記憶手段に記憶された番号に対応するダイヤル信号を、前記待機手段による待機動作の終了後に回線へ送信するものである。
請求項2記載の通信装置は、請求項1記載の通信装置において、前記ダイヤル信号送信手段は、前記計時手段による所定時間の計時が終了した後は、前記番号入力手段による番号の入力を契機として該番号に対応するダイヤル信号を回線へ送信するものである。
請求項3記載の通信装置は、請求項1または2に記載の通信装置において、回線を介して送受信される信号をモニタ用音声として出力可能な音声出力手段と、その音声出力手段と回線とを接続可能に構成され、回線を介して送受信される信号を前記音声出力手段から音声出力させる出力実行手段と、前記出力実行手段により前記音声出力手段に出力される信号のレベルを設定するレベル設定手段と、前記回線接続手段による発呼に応答して前記中継装置から送信されると共に前記ダイヤル信号送信手段によって送信されたダイヤル信号を前記中継装置が受信するまでその中継装置から送信される応答信号を、回線を介して受信する受信手段と、前記計時手段による所定時間の計時が終了する前に前記番号入力手段によって番号入力された場合には、その番号入力を契機として、前記受信手段により受信され前記出力実行手段にて前記音声出力手段から出力される応答信号のレベルを、番号入力がなされなかった場合に比べて低いレベルとなるように前記レベル設定手段にレベルを設定させるレベル低減手段とを備えている。
このため、計時手段による所定時間の計時終了前に番号入力手段により番号入力が実行された場合には、レベル低減手段の動作によって、音声出力手段から出力される信号の音量は番号入力前に比べて小さくされる。この音量変化により、番号入力手段による番号入力が実行されたことが通知される。
請求項4記載の通信装置は、請求項1または2に記載の通信装置において、回線を介して送受信される信号をモニタ用音声として出力可能な音声出力手段と、その音声出力手段と回線とを接続可能に構成され、回線を介して送受信される信号をモニタ用音声として前記音声出力手段から出力させる出力実行手段と、前記出力実行手段により前記音声出力手段に出力される信号のレベルを設定するレベル設定手段と、前記回線接続手段による発呼に応答して前記中継装置から送信されると共に前記ダイヤル信号送信手段によって送信されたダイヤル信号を前記中継装置が受信するまでその中継装置から送信される応答信号を、回線を介して受信する受信手段と、前記計時手段による所定時間の計時が終了する前に前記番号入力手段によって番号入力された場合、その番号入力を契機として、前記受信手段により受信され前記出力実行手段にて前記音声出力手段から出力される応答信号が消音されるように前記レベル設定手段を動作させるレベルオフ手段とを備えている。
このため、計時手段による所定時間の計時終了前に番号入力手段により番号入力が実行された場合には、レベルオフ手段の動作によって、音声出力手段から出力される信号が消音される。この音量変化(消音)により、番号入力手段による番号入力が実行されたことが通知される。
尚、レベルオフ手段は、レベル設定手段にて設定される信号のレベルが可聴限界以下のレベルとなるようにレベル設定手段を動作させるものであってもよく、音声出力手段との接続を遮断することにより信号の出力そのものを停止させるようにレベル設定手段を動作させるものであっても良い。
請求項5記載の通信装置は、請求項3または4に記載の通信装置において、前記計時手段による所定時間の計時が終了すると、前記レベル低減手段または前記レベルオフ手段によって実行された前記レベル設定手段の動作を解除して、前記レベル設定手段の状態を、前記レベル低減手段または前記レベルオフ手段による動作前の状態に回復させる回復手段を備えており、前記ダイヤル信号送信手段により回線へ送信するダイヤル信号を前記出力実行手段により前記音声出力手段に出力する場合は、前記回復手段によって回復されたレベルで、ダイヤル信号を前記音声出力手段から出力する。
請求項6記載の通信装置は、請求項3から5のいずれかに記載の通信装置において、前記ダイヤル信号送信手段により回線へ送信されるダイヤル信号が、ダイヤルパルス信号であるかを判断する判断手段と、その判断手段により該ダイヤル信号がダイヤルパルス信号であると判断されると、そのダイヤル信号を前記ダイヤル信号送信手段によって回線へ送信する前に、前記レベル設定手段をダイヤル信号が消音される状態または元のレベルより低いレベルに設定される状態とするダイヤルパルスレベル設定手段とを備えている。
請求項1記載の通信装置によれば、動作検出手段により動作部の動作が検出されると、計時手段により所定時間が計時される。そして、この所定時間の計時終了前に、番号入力手段にて入力された番号は、番号記憶手段に記憶される。その番号記憶手段に記憶された番号に対応するダイヤル信号のダイヤル信号送信手段による回線への送信は、待機手段により、所定時間の計時が終了するまで待機される。そして、待機手段による待機動作が終了すると、即ち、所定時間の計時終了後に、番号記憶手段に記憶される番号に対応するダイヤル信号は、ダイヤル信号送信手段によって回線へ送信される。
よって、動作部の動作が検出されてから所定時間が経過するまでは、番号入力手段による番号入力があっても、その入力番号に対応するダイヤル信号を回線へ送信するダイヤル信号送信手段の送信動作は直ちに実行されることはない。操作者が、動作部の操作後直ちに番号入力手段を操作した場合、その番号入力のタイミングが、回線接続手段により回線が接続される前や、中継装置が通信装置からの情報を受信可能な状態となる前となることがある。かかる場合に、入力番号に対応するダイヤル信号を直ちに回線へ送信させるべく、ダイヤル信号送信手段に送信動作を実行させてしまうと、そのダイヤル信号は中継装置に受信されない。まだ、中継装置がダイヤル信号を受信不能な状態であるからである。
しかし、動作部の動作から所定時間が経過するまでに番号入力手段により入力された番号を番号記憶手段に記憶させておくことができ、所定時間の計時終了後に、ダイヤル信号送信手段により回線へ送信することができるので、入力された番号に対応するダイヤル信号を確実に中継装置に受信させることができる(桁落ちの回避)という効果がある。従って、回線接続手段により回線が接続される前や、中継装置が通信装置からの情報を受信可能な状態となる前に番号が入力されても、その入力番号が桁落ちとなることを回避でき、操作者が入力した番号に対応する発呼先装置を的確に発呼することができるという効果がある。
請求項2記載の通信装置によれば、請求項1記載の通信装置の奏する効果に加え、計時手段による所定時間の計時が終了した後は、ダイヤル信号送信手段により、番号入力手段による番号の入力を契機として、該番号に対応するダイヤル信号は回線へ送信されるので、入力された番号の桁落ちを回避しつつ、無駄な待機を省略し、効率的にダイヤル信号を回線へ送信することができるという効果がある。例えば、所定時間は、動作部の動作が動作検出手段により検出されてから回線接続手段が回線の接続を完了するまでにかかる時間と、中継装置が発呼に応答して情報受信可能な状態となるまでの応答時間とに基づいて設定することができる。かかる場合には、所定時間の経過後においては、回線は接続され、また、中継装置は通話装置からの情報を受信できる状態(通信装置と中継装置との通信状態が確立された状態)となっている。言い換えれば、所定時間の計時終了後においては、ダイヤル信号を通信装置から送信し得、また、中継装置は通信装置からのダイヤル信号を受信することができる。従って、所定時間の計時終了後は、番号入力手段による番号の入力を契機として該番号に対応するダイヤル信号は回線へ送信することにより、無用な待機を省略でき、所定時間の計時終了後においても待機動作を継続する場合に比べて、ダイヤル信号送信全体にかかる時間を短縮し、効率的にダイヤル信号を回線へ送信することができる。
請求項3記載の通信装置によれば、請求項1または2記載の通信装置の奏する効果に加え、回線を介して送受信される信号は、音声出力手段と回線とを接続可能に構成された出力実行手段により、音声出力手段から音声出力される。従って、受信手段によって受信された応答信号についても出力実行手段により音声出力手段から出力される。この出力実行手段により音声出力手段に出力される信号のレベルは、レベル設定手段により設定される。計時手段による所定時間の計時が終了する前に番号入力手段による番号入力がなされた場合には、その番号入力を契機として、音声出力手段から出力される応答信号のレベルが、番号入力がなされなかった場合に比べて低いレベルとなるように、レベル低減手段によってレベル設定手段が動作される。このため、計時手段による所定時間の計時が終了する前においては、操作者により番号入力が実行されると、応答信号を継続して受信している状態にあっても、レベル低減手段の動作(通信装置内部の処理)により、番号入力を契機として音声出力手段から出力される応答信号のレベルを変化させること、即ち音量を変化させることができるという効果がある。
応答信号は、中継装置から送信される信号であり、中継装置におけるダイヤル信号の受信に応答してその送信が停止する信号である。このため、番号入力手段による番号入力後に直ちにダイヤル信号が送信される場合は、番号入力を契機として音声出力手段からの応答信号の出力が停止する。言い換えれば、番号入力が実行されると中継装置の動作によって音声出力手段からの応答信号が変化する。
一方で、所定時間の計時が終了するまでは番号入力が実行されてもその番号に対応するダイヤル信号の送信は待機されるので、中継装置からの応答信号は送信停止とならず、受信手段により継続して受信される。ここで、受信する応答信号には変化がないため、そのまま音声出力手段から応答信号を出力してしまうと、番号入力を行った操作者を混乱させかねないが、本装置では、所定時間の計時が終了するまでに番号入力が実行された場合には、その番号入力を契機として変化させた応答信号(レベルを低下させた応答信号)を、音声出力手段から出力することができるので、操作者の混乱を回避することができるという効果がある。
これによれば、所定時間の計時が終了するまでにおいても、番号入力が実行されたことを、音声出力手段から出力される応答信号の変化(レベルを低下させること、即ち音量を小さくすること)により、操作者に認識させ得る。従って、操作者が、番号入力操作は行ったものの、実際に番号が入力されたか否かを的確に判断できず、番号が入力されなかったと誤って判断して番号の再入力を行ってしまうといった事態を回避できるという効果がある。その結果、発呼先装置を示す番号入力が操作者により正しく実行され、目的の発呼先装置を的確に発呼することができる。
請求項4記載の通信装置によれば、請求項1または2に記載の通信装置の奏する効果に加え、回線を介して送受信される信号は、音声出力手段と回線とを接続可能に構成された出力実行手段により、音声出力手段から音声出力される。受信手段によって受信された応答信号についても出力実行手段により音声出力手段から出力される。この出力実行手段により音声出力手段に出力される信号のレベルは、レベル設定手段により設定される。ここで、計時手段による所定時間の計時が終了する前に番号入力手段による番号入力がなされた場合には、その番号入力を契機として、音声出力手段から出力される応答信号が消音されるように、レベルオフ手段によってレベル設定手段が動作される。このため、計時手段による所定時間の計時が終了する前においては、操作者により番号入力が実行されると、応答信号を継続して受信している状態にあっても、レベルオフ手段の動作(通信装置内部の処理)により、番号入力を契機として音声出力手段から出力される応答信号を消音することができるという効果がある。
応答信号は、中継装置から送信される信号であり、中継装置におけるダイヤル信号の受信に応答してその送信が停止する信号である。このため、番号入力手段による番号入力後に直ちにダイヤル信号が送信される場合は、番号入力を契機として音声出力手段からの応答信号の出力が停止する。言い換えれば、番号入力が実行されると中継装置の動作によって音声出力手段からの応答信号が消音する。
一方で、所定時間の計時が終了するまでは番号入力が実行されてもその番号に対応するダイヤル信号の送信は待機されるので、中継装置からの応答信号は送信停止とならず、受信手段により継続して受信される。ここで、受信する応答信号には変化がないため、そのまま音声出力手段から応答信号を出力してしまうと、番号入力を行った操作者を混乱させかねないが、本装置では、所定時間の計時が終了するまでに番号入力が実行された場合には、その番号入力を契機として応答信号を消音することができるので、操作者の混乱を回避することができるという効果がある。
これによれば、所定時間の計時が終了するまでにおいても、番号入力が実行されたことを音声出力手段からの応答信号の消音により、操作者に認識させ得る。従って、操作者が、番号入力操作は行ったものの、実際に番号が入力されたか否かを的確に判断できず、番号が入力されなかったと誤って判断して番号の再入力を行ってしまうといった事態を回避できるという効果がある。その結果、発呼先装置を示す番号入力が操作者により正しく実行され、目的の発呼先装置を的確に発呼することができる。
更に、番号入力後直ちにダイヤル信号が回線へ送信される一般的な通信装置では、番号入力が応答信号の消音によって示されることが多い。従って、ダイヤル信号の送信が待機された状態においても、番号入力を、応答信号の消音によって示すことにより、操作者に、違和感を与えることなく、また、操作者に番号入力が実行されたことを容易に理解させることができ、操作者にとって使い勝手が良いという効果がある。
請求項5記載の通信装置によれば、請求項3または4に記載の通信装置の奏する効果に加え、計時手段による所定時間の計時が終了すると、回復手段により、レベル低減手段またはレベルオフ手段によって実行されたレベル設定手段の動作を解除して、レベル設定手段の状態を、レベル低減手段またはレベルオフ手段による動作前の状態に回復させることができる。その結果、ダイヤル信号送信手段により回線へ送信するダイヤル信号を出力実行手段により音声出力手段に出力する場合は、回復手段によって回復されたレベルで、前記音声出力手段から出力することができる。よって、ダイヤル信号送信手段によって送信されるダイヤル信号の音声を、操作者が聞き取るのに十分な音量で音声出力手段から出力することができ、その結果、ダイヤル信号の送信を明確に操作者に通知することができるという効果がある。
請求項6記載の通信装置によれば、請求項3から5のいずれかに記載の通信装置の奏する効果に加え、ダイヤル信号送信手段により回線へ送信されるダイヤル信号が、ダイヤルパルス信号であると判断されると、そのダイヤル信号をダイヤル信号送信手段によって回線へ送信する前に、ダイヤルパルスレベル設定手段によってレベル設定手段を動作させ、ダイヤル信号が消音される状態または元のレベルより低いレベルに設定される状態とすることができる。よって、回線へ送信されるダイヤル信号がダイヤルパルス信号である場合には、消音されるか元のレベルより低いレベルで音声出力手段から出力されるので、一般的にDTMF信号に比べて信号レベルの高いダイヤルパルス信号が、そのままのレベルで音声出力手段から出力されてしまうことを回避できるという効果がある。このため、DTMF信号に比べて大音量になっていまうダイヤルパルス信号が、耳障りな音量で音声出力手段から出力されることがない。
尚、ダイヤルパルスレベル設定手段は、判断手段によりダイヤルパルス信号であると判断された場合に、レベル低減手段またはレベルオフ手段の動作を継続させて、信号の出力レベルを低い状態または消音状態のまま維持するものであっても良く、レベル低減手段またはレベルオフ手段の動作解除後に、再度、信号の出力レベルを低下或いは消音状態とするものであっても良い。
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、ファクシミリ装置1の電気的構成を示したブロック図である。ファクシミリ装置1には、CPU11、ROM12、EEPROM13、RAM14、画像メモリ15、回線I/F部19、モデム20、バッファ21、音声CODEC36、スキャナ22、符号化部23、復号化部24、プリンタ25、ハンドセット3、操作パネル4、液晶表示器(LCD)5およびアンプ27が設けられており、これらはバスラインやケーブルにより形成される接続ライン30にて互いに接続されている。
回線I/F部19は回線制御を行うためのものであり、シリコンDAA(以下単に「SDAA」と称す)33を有している。SDAA33は、回線の閉結及び開放動作を行うものであり、電圧検出回路が内蔵されている。電圧検出回路による検出結果は、SDAA33から、モデム20を介して、CPU11へ出力される。このSDAA33では、電圧検出回路により検出される回線閉結時の回線電圧が、予め定められた電圧電流特性となるように調整する制御が行われる。具体的には、SDAA33では、操作者による操作により回線閉結が要求されると、電圧検出回路によって検出される電圧に基づいて電流を調節し、ファクシミリ装置1側のインピーダンスを電話回線31のインピーダンス(例えば600Ω)に整合させる。これにより、回線は(自身と)整合されたインピーダンスで終端され、ファクシミリ装置1は、回線を介して良好なデータ(信号)通信を行うことができる。回線の閉結開放動作を行う装置として、従来のリレーに代えてこのSDAA33を用いることにより、ファクシミリ装置1を小型化することができる。
ファクシミリ装置1はこの回線I/F部19を介して電話回線31に接続されている。回線I/F部19は、交換機29から送られる呼出信号(リング信号)や相手側装置の電話番号(発信者番号)を示す信号などの各種信号を受信するとともに、操作パネル4上のキーの操作に応じた発信時のダイヤル信号を交換機29へ送信する。アナログ音声信号は、回線I/F部19のSDAA33によってデジタル化され、モデム20を通して音声CODEC36に入力され、音声CODEC36によってアナログ音声信号に戻される。また、音声CODEC36には、ハンドセット3が接続されている。
ハンドセット3は、送話器としてのマイク35a及び受話器としてのスピーカ35bを備えた送受話器であり、図示しないフック上にセットされている。通話時には、フックから取り上げられて使用される。前者をオンフック状態、後者をオフフック状態と称している。このハンドセット3がオフフックされると、図示しないフックスイッチがオンされる。このフックスイッチのオンによりSDAAは回線閉結動作を開始する。つまり、操作者の操作によるハンドセット3のオフフックが、回線接続の契機となる動作(回線閉結の要求)となっている。
尚、本ファクシミリ装置1は、ハンドセット3がオンフック状態で通話を行うスピーカホン機能を備えており、スピーカホン機能を実行する為のスピーカホンキー(図示を省略)が設けられている。このスピーカホンキーが押下されると、スピーカホン通話スイッチがオンされて、SDAA33に回線閉結を要求する信号が入力され、SDAAによる回線閉結動作が開始される。つまり、本ファクシミリ装置1では、ハンドセット3のオフフックのみならず、操作者によるスピーカホンキーの押下についても、回線接続の契機となる動作(回線閉結の要求)となっている。このフックおよびスピーカホンキーが請求項1記載の動作部に該当する。
CPU11は、回線I/F部19を介して送受信される各種信号に従って、接続ライン30により接続された各部を制御し、ファクシミリ動作、即ち、データ通信や、電話動作(音声通信)を実行するものである。このCPU11には、所定時間の計時を行うタイマ11aが設けられている。CPU11は、上記のフックスイッチの状態とスピーカホン通話スイッチの状態とを常時監視しており、CPU11により、フックスイッチのオン(即ちハンドセット3のオフフック)またはスピーカホン通話スイッチのオン(スピーカホンキーの押下)が検出されると、このタイマ11aは起動される。これにより所定時間の計時が実行される。尚、ここでタイマ11aにて計時される所定時間とは、SDAA33が回線の閉結に要する時間と発呼信号を受信した交換機29がダイヤルトーンを送出する保証時間(発呼信号を受信した交換機29がダイヤル信号を受信可能な状態となるまでに必要な時間)との合計時間である。本実施の形態では3秒が所定時間として設定されている。
本ファクシミリ装置1は、このタイマ11aにより所定時間(3秒)が計時されている間、即ち、回線閉結が要求されてから暫時は、ダイヤル入力がなされても、入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号(DTMF信号またはダイヤルパルス信号)の電話回線31への送出が待機されるように構成されている。
ROM12は、このファクシミリ装置1で実行される制御プログラムや固定値などを格納した書換不能なメモリであり、図2のフローチャートに示すプログラムは、このROM12内に格納されている。
RAM14は、ファクシミリ装置1の各動作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリであり、未送出ダイヤルメモリ14aを備えている。未送出ダイヤルメモリ14aは、タイマ11aによる計時動作中に入力されたダイヤルであって、電話回線31へ未送出のダイヤル(未送出ダイヤル)を記憶するためのメモリである。上記したように、本ファクシミリ装置1では、タイマ11aにより所定時間(3秒)が計時されている間は、ダイヤルが入力されても、その入力ダイヤルに対応するダイヤル信号は、電話回線31に送信されない。タイマ11aの計時動作中に入力されたダイヤルは、この未送出ダイヤルメモリ14aに書き込まれ、タイマ11aが所定時間(3秒)の計時を終了するまで、この未送出ダイヤルメモリ14aに記憶される。未送出ダイヤルメモリ14aに記憶された未送出ダイヤルは、所定時間(3秒)の経過後において、未送出ダイヤルメモリ14aから読み出され、その対応するダイヤル信号が電話回線31に送信される。読み出された未送出ダイヤルは、ダイヤル信号が送信された後において、未送出ダイヤルメモリ14aから消去される。
尚、ダイヤルの入力は、操作者が、発呼先の電話番号を構成する各番号(ダイヤル)のそれぞれを操作パネル4に設けられたテンキー4bの押下によって入力するか、または、操作パネル4上の所定のキー操作により後述の登録番号メモリ13aに記憶されている電話番号を指定することによって実行される。タイマ11aの計時動作中に入力されたダイヤル入力が前者の場合は、1のダイヤル入力毎に、その入力された1のダイヤルが未送出ダイヤルメモリ14aに書き込まれる。また、後者の場合は、指定された電話番号を構成する全ダイヤルが一度に未送出ダイヤルメモリ14aに書き込まれる。
EEPROM13は書換可能な不揮発性のメモリであり、登録番号メモリ13aを備えている。登録番号メモリ13aは、操作パネル4の所定の操作(登録操作)によって入力された電話番号を記憶するためのメモリであり、複数の電話番号を記憶可能に構成され、また、1の電話番号にはその電話番号を示す1の代表値が対応つけられて記憶されている。操作パネル4の所定の操作(指定操作)によって代表値を指定すると、その代表値に対応する電話番号が指定され、指定された電話番号のダイヤル入力としてCPU11に認識される。かかる電話番号の指定が、タイマ11aの計時動作中に実行された場合は、上記したように、指定された電話番号(入力されたダイヤル)は、未送出ダイヤルメモリ14aに書き込まれる。一方、タイマ11aの計時動作終了後に電話番号の指定が実行された場合は、指定された電話番号を構成する各ダイヤルに対応する各ダイヤル信号が、直ちに、電話回線31に送出される。
画像メモリ15は、通信履歴、画像データ及び印刷のためのビットイメージを記憶するためのメモリであり、安価な大容量メモリであるダイナミックRAM(DRAM)により構成されている。受信された画像データは、一旦画像メモリ15に記憶され、プリンタ25によって記録紙に印刷された後に、この画像メモリ15から消去される。また、スキャナ22によって読み取られた画像データも、この画像メモリ15に記憶される。
モデム20は、画情報及び通信データを変調及び復調して伝送すると共に伝送制御用の各種手順信号を送受信するためのものである。バッファ21は、相手側装置との間で送受信される符号化された画情報を含むデータを一時的に記憶するためのものである。
スピーカ28(アンプ27)およびハンドセット3のスピーカ35bと、回線I/F部19との間には、図示を省略しているがミュート回路が設けられている。電話回線31から受信または電話回線31へ送信される各種信号(ダイヤルトーン、ビジートーン、リングバックトーン、ダイヤル信号、切断信号など)や、発呼先装置からの音声信号(発話)は、ミュート回路を経由して、スピーカ28(アンプ27)またはスピーカ35bのいずれかから音声出力される。尚、このミュート回路が請求項3および4に記載のレベル設定手段に該当する。
ミュート回路は、CPU11によって制御され、スピーカ28,35bへ出力する信号のレベルを零または低いレベル(信号音が可聴不能、即ち、消音するレベル)に減衰させ、スピーカ28,35bからの信号音を消音するものである。このミュート回路は、ミュート機能のオンおよびオフが設定可能に構成されており、ミュート機能がオンされると、ミュート回路に入力された信号のレベルは零(または低いレベル)に変換され、その信号音はスピーカ28,35bから消音される(受話ミュート)。ミュート機能がオフされると、ミュート回路に入力された信号は、入力レベルのまま、スピーカ28,35bから出力される。
尚、ここで、消音とは、操作者が通常の状態で信号音が可聴不能な音量にあることを意味している。このため、完全に信号が消失した状態のみならず、僅かにレベルを有する信号が出力されている場合も含む概念である。
また、このミュート回路を、ミュート機能オンにおいて、スピーカ28,35bからの信号音が聞き取り可能な音量となる程度に減衰する(出力レベルが入力レベルより低くなるように変更する)ものとしても良い。
更に、入力された信号の減衰レベルを、複数設定できるように構成しても良い。また、ミュート回路に代えて、信号音を消音する装置として、例えば、信号レベルを増減する音量コントローラを設けても良く、また、スピーカ28,35bと信号の伝送経路(電話回線31)とを遮断可能に接続するスイッチの動作によって、ミュートではなく、信号の伝送経路とスピーカ28,35bとの接続を遮断することにより、スピーカ28,35bからの信号音を消音する装置を設けても良い。
操作パネル4は、モード切換スイッチ4a、テンキー4b、コマンドキーなどを備えている。モード切換スイッチ4aは、ダイヤル信号をDTMF信号で送信するDTMFモードと、ダイヤルパルス信号をダイヤルパルス信号で送信するDPモードとの切り替えを行うスイッチである。テンキー4bは、0〜9の各数字(番号)をそれぞれ個別に入力するためのキーであり、ダイヤル入力や、登録番号メモリ13aに記憶させる電話番号入力を行うためのものである。
コマンドキーは、各種コマンドを入力するためのキーであり、例えば、登録番号メモリ13aへの電話番号の登録を要求する登録要求キーや、スピーカホン機能を動作させる上記のスピーカホンキー、更には、発呼先装置への画像データの送信予約するためのスタートキーなどが設けられている。
ファクシミリ装置1は、操作パネル4上に設けられた各キーやスイッチが押下されて各種操作が実行されると、その操作状態や操作手順、更には、エラーメッセージや未印刷データの有無などがLCD5へ表示される。
スキャナ22は、原稿挿入口に挿入された原稿を画像データとして読み取るためのものであり、原稿搬送用モータを備えている。符号化部23は、スキャナ22により読み取られた画像データの符号化を行うものである。復号化部24は、バッファ21または画像メモリ15に記憶された画像データを読み出して、これを復号化するものであり、復号化されたデータは、プリンタ25により記録紙に印刷される。プリンタ25は、インクジェット方式のプリンタで構成され、記録紙を搬送する記録紙用搬送モータと、印字ヘッドを搭載したキャリッジを移動させるキャリッジモータと、記録紙へインクを吐出する印字ヘッドとを備えている。アンプ27は、そのアンプ27に接続されたスピーカ28を鳴動して、呼出音や音声を出力するためのものである。
このように構成されたファクシミリ装置1は、回線I/F部19を介して、電話回線31に接続されている。この電話回線31は、交換機29に接続され、この交換機29は電話回線32を介して、他の交換機に接続されている。なお、他の交換機は、更に、電話回線を介して発呼先装置や転送先となる他の装置に接続されている。
次に、上記のように構成されたファクシミリ装置1で実行されるハンドセット通話処理について、図2のフローチャートを参照して説明する。図2に示すハンドセット通話処理は、ファクシミリ装置1に電源が投入されている間、繰り返してROM12から読み出され、CPU11により実行される。ハンドセット通話処理は、操作者がハンドセット3を使用して通話を行うための処理である。また、このハンドセット通話処理は、操作者がハンドセット3をオフフックしてから所定時間は、ダイヤルが入力されても、そのダイヤル信号の電話回線31への送信を待機する待機動作を実行するように構成されている。
このハンドセット通話処理では、まず、ハンドセット3がオフフックされたか否かを確認する(S1)。このハンドセット3のオフフックは、上記したようにフックスイッチのオンにより検出される。ここで、ハンドセット3がオフフックされていなければ(フックスイッチオフ)(S1:No)、オフフックを待機する。一方、ハンドセット3がオフフックされていれば(フックスイッチオン)(S1:Yes)、タイマ11aに3秒をセットして、タイマ11aを起動し(S2)、3秒の計時を開始する。
そして、電話回線31を閉結する回線閉結処理を実行する(S3)。具体的には、この回線閉結処理(S3)では、SDAA33の電圧検出回路で検出された電圧に基づいて、SDAA33を流れる電流を調節し、ファクシミリ装置1側のインピーダンスを回線のインピーダンス(例えば600Ω)に整合して、直流ループを閉結(電話回線31を閉結)する。この回線閉結処理(S3)の後は、閉結された電話回線31にハンドセット3のマイク35aとスピーカ35bとを接続する(S4)。これにより、電話回線31を介してファクシミリ装置1に受信された信号およびファクシミリ装置1から電話回線31へ送信される信号がスピーカ35bから音声出力され、出力される音声により回線状況等がモニタされる。
その後、ハンドセット3がオンフックされたか否かを確認し(S5)、オンフックされていなければ(S5:No)、通信の継続が操作者から要求されていると判断して、タイマ11aが0であるか否かを確認する(S10)。
S10の処理で確認した結果、タイマ11aが0でなければ(S10:No)、タイマ11aは3秒の計時中、即ち、ダイヤル信号の送信を待機するべき期間中であるので、ダイヤル入力があったかか否かを確認した後(S16)、ダイヤル入力があれば(S16:Yes)、入力されたダイヤルを未送出ダイヤルとして未送出ダイヤルメモリ14aに書き込んで(S17)、その処理をS5の処理に移行する。一方、ダイヤル入力がなければ(S16:No)、そのまま、その処理をS5の処理に移行する。これにより、タイマ11aが0となるまでは、S5,S10,S16,S17の処理が繰り返して実行され、S11以降の処理は待機される。このため、入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号を電話回線31へ送出するS12,S15の処理が回避される。つまり、入力されたダイヤルは未送出ダイヤルメモリ14aに保持され、その対応するダイヤル信号は電話回線31へは送信されない。
尚、ダイヤル入力が、登録番号メモリ13aに記憶される電話番号を指定することによって実行された場合には、その指定された電話番号を構成する全てのダイヤルが1度に入力されるので、S17の処理において、指定された電話番号を構成する全てのダイヤルが未送出ダイヤルとして未送出ダイヤルメモリ14aに書き込まれる。
一方、S10の処理で確認した結果、タイマ11aが0となっている場合は(S10:Yes)、ダイヤル信号の送信を待機するべき期間(オフフックの検出から3秒)は終了しているので、未送出ダイヤルメモリ14aに、未送出ダイヤルが記憶されているか否かを確認し(S11)、記憶されていなければ(S11:No)、S12,S13の処理をスキップして、その処理をS14の処理に移行する。
また、未送出ダイヤルメモリ14aに、未送出ダイヤルが記憶されていれば(S11:Yes)、未送出ダイヤルに対応するダイヤル信号を、モード切換スイッチ4aにて設定されたモードに応じ、DTMF信号またはダイヤルパルス信号のいずれかで電話回線31へ送信(送出)する(S12)。その後、未送出ダイヤルメモリ14aの内容をクリアしてから(S13)、ダイヤル入力がなされたか否かを確認し(S14)、ダイヤル入力があれば(S14:Yes)、入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号を、モード切換スイッチ4aにて設定されたモードに応じDTMF信号またはダイヤルパルス信号のいずれかで、電話回線31へ送信する(S15)。これにより、タイマ11aが所定時間の計時を終了した後(ダイヤル信号の送信を待機するべき期間の終了後)は、ダイヤル入力に連動して、直ちに、その対応するダイヤル信号が電話回線31に送信される。このため、無駄な待機動作が実行されることはなく、ダイヤル信号の送信全体にかかる時間を短縮することができる。更に、S14の処理で確認した結果、ダイヤル入力がなければ(S14:No)、その処理をS5の処理に移行し、タイマ11aの終了後は、ハンドセット3のオンフックが生じるまで、S5,S10〜S15の処理を繰り返す。
そして、S5の処理でハンドセット3がオンフックされた場合は(S5:Yes)、回線開放処理を実行し(S6)、SDAA33の動作により回線が開放される。その後、ハンドセット3のマイク35aおよびスピーカ35bと開放された電話回線31との接続を遮断し(S7)、このハンドセット通話処理を終了する。
図3は、図2のハンドセット通話処理の実行時において、本ファクシミリ装置1と交換機29との間で通信される各種信号の送受信のタイミングを示したタイミングチャートである。2本の縦線は時間軸を示し、左側にはファクシミリ装置1における動作を時系列で示し、右側には交換機29における動作を時系列で示している。各装置1,29において発生する各動作のタイミングは、時間軸上に黒丸にて表示している。
図3に示したように、ファクシミリ装置1において、ハンドセット3のオフフックが発生すると(「オフフック」)、タイマ11aに3秒がセットされる(「3秒のタイマセット」)。このハンドセット3のオフフックによるフックスイッチのオンが、回線閉結要求としてCPU11に判断され、SDAA33における回線閉結動作が開始される。本ファクシミリ装置1に設けられたSDAA33では、回線閉結動作の開始から完了するまでに約1〜2秒を要する。従って、かかる時間の経過後、回線閉結(直流ループ閉結)となり、発呼信号が交換機29に送信される(「回線閉結」)。これにより、ファクシミリ装置1と交換機29との通信が開始される。
一方、交換機29では、常時、発呼信号の着信(直流ループの閉結)を監視しており、発呼信号を検出すると(「発呼検出」)、ファクシミリ装置1からのダイヤル信号を受信するための受信準備を開始する。そして、この受信準備の完了によりファクシミリ装置1からのダイヤル信号の受信が可能となると、交換機29からは、ダイヤルトーンが送出される(「ダイヤルトーン送出」)。
そして、ファクシミリ装置1において、このダイヤルトーンの着信が検出されると(「ダイヤルトーン検出」)、ハンドセット3のスピーカ35bからダイヤルトーンの信号音(所定ピッチの連続音)が出力される。上記したように、本ファクシミリ装置1では、タイマ11aにセットする所定時間を、SDAA33が回線の閉結に要する時間と発呼信号を受信した交換機29がダイヤルトーンを送出する保証時間との合計時間としてるので、タイマ11aでの計時が終了するまえに、ダイヤルトーンは着信する。
ここで、ファクシミリ装置1では、オフフック直後からダイヤル入力は許可されるので、操作者が、ダイヤルトーンの着信を待たずにダイヤル入力を実行することがある(「ダイヤル入力1」、「ダイヤル入力2」)。「ダイヤル入力1」では、回線閉結前であるので、交換機29側ではダイヤル信号が受信されない状態にある。また、「ダイヤル入力2」では、回線閉結後であるが、交換機29側のダイヤル信号の受信準備が完了していないため、交換機29側でダイヤル信号が受信されない状態にある。本ファクシミリ装置1では、タイマ11aによる3秒の計時が終了する前にダイヤル入力が行われた場合(「ダイヤル入力1」、「ダイヤル入力2」、「ダイヤル入力3」)、入力されたタイミングでは、ダイヤル信号は電話回線31へ送信されない。
その後、ファクシミリ装置1では、タイマ11aの計時動作が終了する、即ち、3秒の計時が終了すると(「タイマ終了」)、それまでに入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号が電話回線31へと送信される(「ダイヤル送出1」)。タイマ11aの計時終了後にダイヤルが入力されると(「ダイヤル入力4」)、直ちに対応するダイヤル信号が電話回線31へと送信される(「ダイヤル送出2」)。
また、交換機29では、ダイヤルトーン送出後においては、ダイヤル信号受信可能な状態となっているので、ファクシミリ装置1からのダイヤル信号は、交換機29において的確に受信される。交換機29にて、ファクシミリ装置1からの最初のダイヤル信号が受信されると(「ダイヤル検出1」)、これを契機としてダイヤルトーンの送出は停止される。その後、ファクシミリ装置1から送信されるダイヤル信号は、順次、交換機29に受信される(「ダイヤル検出2」)。
尚、オフフックのみならず、スピーカホンキーの押下によっても、同様のタイミングで、各種信号の送受信は実行される。また、登録番号メモリ13aに記憶される電話番号を指定することによってダイヤル入力が実行される場合には、1の電話番号を構成する全てのダイヤルが1度に入力されるので、ファクシミリ装置1におけるダイヤル入力とダイヤル送出は各1回ずつになり、交換機29におけるダイヤル検出も1回となる。
このように、本実施の形態のファクシミリ装置1によれば、ダイヤルトーン着信前に、操作者によりダイヤル入力が実行されても、その入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号を確実に交換機29に受信させることができるので、操作者が入力した電話番号が桁落ちとなることがなく、本ファクシミリ装置1と目的とする発呼先装置との間で適切に通信を行うことができる。
次に、図4と図5とを参照して本発明の第2の実施形態について説明する。上記した第1の実施形態では、ファクシミリ装置1は、操作者によりハンドセット3のオフフックまたはスピーカホンキーの押下(回線閉結の要求)が実行されてから所定時間は、ダイヤル入力が実行されても、入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号の電話回線31への送信が待機されるように構成された。第2の実施形態においては、ファクシミリ装置1は、上記第1の実施形態の構成に加え、操作者によりハンドセット3のオフフックまたはスピーカホンキーの押下(回線の閉結要求)が実行されてから所定時間の内(タイマ11aが計時動作中)にダイヤル入力が実行されると、交換機29から送信されたダイヤルトーンをミュート(消音)するように構成されている。
尚、上記した第1の実施形態と同じ部分には同じ符号を付してその説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
図4は、第2の実施形態のハンドセット通話処理を示したフローチャートである。第2の実施形態のハンドセット通話処理は、第1の実施形態と同様に、操作者がハンドセット3を使用して通話を行うための処理であり、操作者がハンドセット3をオフフックしてから所定時間は、ダイヤルが入力されても、そのダイヤル信号の電話回線31への送信を待機する待機動作を実行するようになっている。更に、第2の実施形態のハンドセット通話処理は、ハンドセット3の受話ミュートとその解除とが、ダイヤル入力とダイヤル信号送信とのタイミングに応じて適宜実行されるようになっている。
この第2の実施形態のハンドセット通話処理では、まず、第1の実施形態と同様に、オフフックを検出するとタイマ11aを起動してから電話回線31の閉結を実行すると共に、オンフックの発生により回線を開放する処理を実行する(S1〜S7)。ここで、タイマ11aが計時動作中にある、即ち、ダイヤル信号の送信を待機するべき期間中にあると(S10:No)、ダイヤル入力があったか否かを確認した後(S16)、ダイヤル入力があれば(S16:Yes)、入力されたダイヤルを未送出ダイヤルとして未送出ダイヤルメモリ14aに書き込み(S17)、更に、ミュート回路のミュート機能をオンしてハンドセット3の受話ミュートを行う(S18)。上記したように、電話回線31から受信した各種信号は、ミュート回路を経由してスピーカ35bへ出力されるので、交換機29からのダイヤルトーンを受信している場合には、スピーカ35bからのダイヤルトーンの信号音が消音される。
ダイヤルトーンは、ファクシミリ装置や電話装置などの通信装置からの発呼に応答して交換機29から送信(送出)されると共に、交換機29が発呼元の通信装置からダイヤル信号を受信することによりその送信が停止される信号である。従来のファクシミリ装置などでは、通話を行う場合に操作者がダイヤル入力を行うと、ダイヤル入力を契機として直ちにダイヤル信号が電話回線へと送信されるように構成されている。従って、ファクシミリ装置から出力されるダイヤルトーンは、ダイヤル入力に連動して消音する。このため、、一般に、操作者は、ダイヤルトーンの消音を、ダイヤル入力が実行されたことを示すものと理解していることが多い。
ところが、本ファクシミリ装置1では、タイマ11aが所定時間(3秒)の計時中であると、ダイヤル信号は送信されないようになっている。このため、タイマ11aの計時動作中にダイヤル入力が実行されても、交換機29からはダイヤルトーンが継続して送信されたままとなる。ここで、ダイヤル入力が実行されたにも関わらずダイヤルトーンがそのままスピーカ35bから出力されてしまうと、操作者に違和感を抱かせてしまう。また、場合によっては、正しくダイヤル入力がなされなかったと操作者に判断させてしまい、ダイヤルを再入力させかねない。
そこで、第2の実施形態においては、タイマ11aによる3秒の計時中、即ち、ダイヤル信号の送信を待機する期間中は、ダイヤル入力を契機として受話ミュートを行い、ダイヤルトーンを消音させている。つまり、ダイヤル入力が実行されると、模擬的にダイヤルトーンの送信が停止されたのと同様の状態を創出しているのである。このダイヤル入力を契機とした受話ミュートによるダイヤルトーンの消音により、操作者には、正しくダイヤル入力が実行されたことが通知されるので、操作者に違和感を抱かせることやダイヤルの再入力を回避させることができる。
S18の処理の後は、その処理をS5の処理に移行する。また、S16の処理で確認した結果、ダイヤル入力がなければ(S16:No)、そのまま、その処理をS5の処理に移行する。
更に、S10の処理でタイマ11aを確認した結果、タイマ11aが0となっている場合は(S10:Yes)、ダイヤル信号の送信を待機するべき期間(オフフックの検出から3秒)は経過しているので、未送出ダイヤルメモリ14aに、未送出ダイヤルが記憶されているか否かを確認し(S20)、記憶されていなければ(S20:No)、S21〜S26の処理をスキップして、その処理をS27の処理に移行する。
また、未送出ダイヤルメモリ14aに、未送出ダイヤルが記憶されていれば(S20:Yes)、モード切換スイッチ4aにて設定されたモードがDPモードであるか否かを確認し(S21)、DPモードでなければ(S21:No)、DTMFモードであるので、ミュート回路のミュート機能をオフして受話ミュートを解除する(S22)。続いて、未送出ダイヤルメモリ14aに記憶される未送出ダイヤルを、電話回線31へと送信(送出)する(S23)。これにより、送信されるダイヤル信号(DTMF信号)の信号音がスピーカ35bから出力されるので、ダイヤル信号の送信を明確に操作者に通知し、操作者にダイヤル信号の発信が正しく行われなかったのではないかという危惧を与えることがない。
一方、S21の処理で確認した結果、モード切換スイッチ4aにて設定されたモードがDPモードであれば(S21:Yes)、未送出ダイヤルメモリ14aに記憶される未送出ダイヤルを電話回線31へと送信してから(S24)、ミュート回路のミュート機能をオフして受話ミュートを解除する(S25)。
一般に、ダイヤルパルス信号は、(DTMF信号に比べて)信号のレベルが高い。このため、入力ダイヤルに応じて発生させたダイヤルパルス信号を、そのままのレベルでスピーカ35bから出力させると大きな信号音が発生し、操作者が耳障りに感じることがある。そこで、第2の実施形態においては、ダイヤル信号送出前において、DPモードであるか否かを判断し、DPモードである場合には受話ミュートを実行して、スピーカ35bから耳障りなダイヤルパルス信号の信号音が出力されることを回避しているのである。
S23またはS25の処理の後は、その処理をS26の処理に移行して、未送出ダイヤルメモリ14aの内容をクリアし(S26)、次に、ダイヤル入力がなされたか否かを確認する(S27)。ここで、ダイヤル入力がなければ(S27:No)、その処理をS5の処理に移行する。一方、ダイヤル入力があれば(S27:Yes)、DPモードであるか否かを確認し(S28)、DPモードでなければ(S28:No)、ミュート回路のミュート機能をオフしてハンドセット3の受話ミュートを解除し(S29)、また、DPモードであれば(S28:Yes)、ミュート回路のミュート機能をオンしてハンドセット3の受話ミュートを行ってから(S30)、入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号を電話回線31へと送信する(S31)。そして、ミュート回路のミュート機能をオフしてハンドセット3の受話ミュートを解除した後(S32)、その処理をS5の処理に移行する。
尚、この第2の実施形態のハンドセット通話処理において、ダイヤルトーンの消音は、ダイヤル入力を通知することを目的として実行するものであるので、消音ではなくスピーカ35bから出力される音量を、ダイヤル入力前に比べて小さくするだけでも良い。かかる場合には、ミュート回路から出力されるダイヤルトーンのレベルを入力レベルよりも低下させると共に、その出力レベルが消音よりも高いレベルとなるように、ミュート回路を設定する。かかる場合には、S18,S30の処理によって受話ミュートが実行されると、スピーカ35bからのダイヤルトーンの信号音は、ダイヤル入力前(受話ミュート前)に比べて小さくなって出力される。尚、このように、ミュート回路を入力信号レベルに比べて出力信号レベルを低くする設定とした場合の上記ハンドセット通話処理のS18の処理が、請求項3記載のレベル低減手段に該当する。
更には、ダイヤルトーンのミュートのレベルと、ダイヤルパルス信号のミュートのレベルとは異なるレベルとしてもよく、ダイヤルトーンについては、消音となるようにミュートのレベルを設定し、一方、ダイヤルパルス信号については消音ではなく、耳障りでない音量となるように(可聴可能な)ミュートのレベルを設定しても良い。
また、スピーカホンキーの押下により、スピーカホン通話が実行される場合においては、ハンドセット3のマイク35aとスピーカ35bとに代えて、電話回線31にはマイク(非図示)とスピーカ28とが接続され、上記にて説明したハンドセット通話処理と同様に、ダイヤル信号の送信が実行される。また、ハンドセット3のスピーカ35bからの出力パターンと同様のパターンで、スピーカ28からの信号音の出力と受話ミュートとが実行される。
図5は、図4のハンドセット通話処理の実行時において、第2の実施形態のファクシミリ装置1と交換機29との間で通信される各種信号の送受信のタイミングを示したタイミングチャートである。図5においては、DTMFモードでダイヤル信号が電話回線31へ送信される場合のタイミングチャートを示している。2本の縦線は時間軸を示し、左側はファクシミリ装置1における動作を時系列で示し、右側には交換機29における動作を時系列で示している。各装置1,29において発生する各動作のタイミングは、時間軸上に黒丸にて表示している。
ファクシミリ装置1においては、図3に示した第1の実施形態と同様のタイミングで、ハンドセット3のオフフック(「オフフック」)、タイマ11aの起動(「3秒のタイマセット」)が実行され、SDAA33における回線閉結動作が開始される。そして回線閉結(直流ループ閉結)によって、発呼信号が交換機29に送信される(「回線閉結」)。
一方、交換機29においても、第1の実施形態と同様に、発呼信号が検出されると(「発呼検出」)、ファクシミリ装置1からのダイヤル信号の受信準備が開始される。そして、この受信準備が完了することによりファクシミリ装置1からのダイヤル信号の受信が可能となると、交換機29からダイヤルトーンが送出される(「ダイヤルトーン送出」)。
そして、ファクシミリ装置1で、このダイヤルトーンの着信が検出されると(「ダイヤルトーン検出」)、ハンドセット3のスピーカ35bからダイヤルトーンの信号音(所定ピッチの連続音)が出力される。また、ファクシミリ装置1において、タイマ11aによる3秒の計時が終了する前にダイヤル入力が行われると(「ダイヤル入力1’」)、直ちに、受話ミュートが実行される(「受話ミュート開始」)。ダイヤルトーンは、ファクシミリ装置1からのダイヤル信号を交換機29が受信するまで、交換機29から送信され続けるが、この受話ミュートにより、ハンドセット3のスピーカ35bからは、ダイヤルトーンの信号音は消音する。その後、ファクシミリ装置1では、タイマ11aによる3秒の計時が終了すると(「タイマ終了」)、受話ミュートを終了し(「受話ミュート終了」)、直ちに、それまでに入力されたダイヤル(「ダイヤル入力1’」)に対応するダイヤル信号が、電話回線31へと送信される(「ダイヤル送出1」)。更に、タイマ11aの計時終了後にダイヤルが入力されると(「ダイヤル入力2’」)、直ちに対応するダイヤル信号が電話回線31へと送信される(「ダイヤル送出2」)。ダイヤル信号の送信は受話ミュートの解除後に行われるので、スピーカ35bからはDTMF信号の信号音が発せられ、操作者に、ダイヤル信号の発信が通知される。
また、交換機29では、ダイヤルトーン送出後においては、ダイヤル信号受信可能な状態となっているので、ファクシミリ装置1からのダイヤル信号は、交換機29において的確に受信される。交換機29にて、ファクシミリ装置1からの最初のダイヤル信号が受信されると(「ダイヤル検出1」)、これを契機としてダイヤルトーンの送出は停止される。その後、ファクシミリ装置1から送信されるダイヤル信号は、順次、交換機29に受信される(「ダイヤル検出2」)。
尚、第2の実施形態のファクシミリ装置1では、上記したように、ダイヤル信号送信前(「ダイヤル送出1」の前および「ダイヤル送出2」の前)において、送信するダイヤル信号がダイヤルパルス信号であるかDTMF信号であるかの判断を行い、その判断結果に応じて受話ミュートが実行されている。図5においては、送信するダイヤル信号がDTMF信号である場合を示しているので、受話ミュートが解除された状態で、ダイヤル信号が送信されている。尚、送信するダイヤル信号がダイヤルパルス信号であれば、その送信前に再度受話ミュートが実行され、ダイヤルパルス信号の送信後に受話ミュートは解除される。
このように、第2の実施形態のファクシミリ装置1によれば、ダイヤルトーン着信前に操作者によりダイヤル入力が実行されても、その入力されたダイヤルに対応するダイヤル信号を確実に交換機29に受信させることができる。更に、ダイヤル信号の送信を待機する期間中は、ダイヤル入力を契機として受話ミュートによってダイヤルトーンを消音し、操作者に、その操作により正しくダイヤル入力が実行されたことを通知することができる。また、送信するダイヤル信号がDTMF信号である場合とダイヤルパルス信号である場合とでは、受話ミュート解除のタイミングを変更するように構成しているので、ダイヤル信号の送信に際しては、両方の信号に応じた適切なレベルで信号音を発生させることができる。
以上各実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記各実施形態に何ら限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
たとえば、上記各実施形態においては、通信装置をファクシミリ装置1で構成したが、通信装置はファクシミリ装置には限られるものではなく、ファクシミリ機能を持たない電話装置で構成されても良い。更には、中継装置は交換機29で構成されたが、通信装置がIP電話などで構成されている場合には、呼制御サーバなどで構成される。
また、上記第2の実施形態においては、ダイヤル信号の送信を待機する期間中(タイマ11aによる所定時間の計時中)においてダイヤル入力がなされると、該ダイヤル入力を契機としてミュート回路のミュート機能をオンして、ダイヤルトーンの信号音を消音(レベルの低下)し、ダイヤル入力の実行を通知する構成とした。これに代えて、ダイヤル入力を契機としてダイヤルトーンの態様を変更し、ダイヤル入力の実行を通知してもよい。この態様の変更とは、例えば、入力されたダイヤルトーンに対し周波数変調を行い、異なるピッチのダイヤルトーンに変更することや、連続した信号であるダイヤルトーンを断続的な出力状態とすることなどが例示される。これによれば、ダイヤル信号の送信によってダイヤルトーンは消音するので、ダイヤル入力が実行されたことと、ダイヤル発信が実行されたこととを区別して、操作者に通知することができる。