JP2006337342A - シリカの反応量測定方法及びその方法を用いて反応量を規定したゴム組成物 - Google Patents

シリカの反応量測定方法及びその方法を用いて反応量を規定したゴム組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 ゴム組成物中のシリカの反応量を求める方法の開発。
【解決手段】 固体高分解能29Si−NMR測定によって得られるゴム中のシリカのスペクトルの帰属から、−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれ、SQ2,SQ3及びSQ4とし、式(I):
反応量=[SQ4/(SQ2+SQ3)]×100
によりシリカとシランカップリング剤との反応量を求める方法並びにそれにより求めた最適な耐摩耗性を有するゴム組成物。
【選択図】 図2

Description

本発明は、シリカの反応量測定方法に関し、更に詳しくは固体高分解能29Si−NMR測定によって得られるゴム中のシリカのスペクトルの帰属からシリカ−シランカップリング剤の反応量を予測する方法及びその方法を用いて反応量を規定したゴム組成物に関する。
近年、ゴム組成物の低発熱化や耐摩耗性改良などの目的でゴム組成物にシリカを配合することが知られており、シリカの分散性を向上するためにシランカップリング剤を配合することが行われている(例えば特許文献1参照)。
従来シリカのゴム組成物の配合技術として反応混合を行うことが知られているが、ゴム組成物中での、例えばシリカ−シランカップリング剤の反応を直接測定する方法がなく、ペイン効果などゴムの物性値から反応量を推定しているに過ぎなかった。しかしながら、タイヤ用などのゴム組成物へのシリカ配合が盛んに行われるようになり、性能及び品質向上の面からシリカの反応を直接測定する方法が求められている。
特許文献2にはシリカ表面に直接結合している化学種などを特定し定量化する手法に関し、表面処理シリカと粉末シロキサンを混合加熱し、シリカ表面の活性点をシリル化することで結合部をNMRで観察することができる(固体高分解能29Si−DD/MAS,CP/MAS併用)旨記載されているが、ゴム中の反応量の評価についての記載はない。また非特許文献1には固体高分解能29Si−DD/MAS,CP/MAS,CRAMPS,SAXS,USAXSによるシリカ表面及び構造の詳細な解析が報告されているが、ゴム中の反応量の評価についての記載はない。
特開平11−263878号公報 特開平11−281598号公報 Solid State NMR to Characterize Silica(ACS 1999 Sep., paper No.121)
従って、本発明の目的は、ゴム成分にシリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物におけるシリカの反応量を測定する方法を開発し、その方法を用いて耐摩耗性の最適なゴム組成物を提供することにある。
本発明に従えば、固体高分解能29Si−NMR測定によって得られるゴム中のシリカのスペクトルの帰属から、−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれ、SQ2,SQ3及びSQ4とし、式(I):
反応量=[SQ4/(SQ2+SQ3)]×100
によりシリカとシランカップリング剤との反応量を求める方法が提供される。
本発明に従えば、更にゴム100重量部、シリカ5〜120重量部を含む充填剤10〜150重量部及びシリカ配合量の3〜15重量%のシランカップリング剤からなるゴム組成物において、前記方法を用いてNMRの、測定モードCP/MAS、コンタクトタイム5msec、遅延時間5secの測定条件で求めたシリカ−シランカップリング剤の反応量が105〜150であるゴム組成物が提供される。
本発明によれば、固体高分解能29Si−NMR(CP/MAS)測定によりゴム中のシリカを分析し、そのスペクトルの水酸基の有無のピークの比率からシリカの相対的な反応量を推定する方法を開発することに成功し、その方法を用いて耐摩耗性の最適なゴム組成物の組成を設計することができる。
本発明者らは、従来、ゴムに対してシリカ及びシランカップリング剤を配合する場合のシリカの混合技術として反応混合が行われていたが、ゴム中でのシリカ−シランカップリング剤の反応を直接測定する方法がなく、ペイン効果などのゴムの物性値から推測せざるを得なかったという現状に鑑み、更にゴム中へのシリカの配合が盛んに行われるようになり、ゴム組成物の性能及び品質向上の面から反応を直接測定する方法の開発が求められているというニーズに鑑み、鋭意研究をすすめた結果、固体高分解能29Si−NMR(CP/MAS)測定によりシリカを分析し、そのスペクトルの水酸基有無のピークの比率から相対的な反応量を推定できる方法を開発することに成功し、その方法を用いて耐摩耗性の最適なゴム組成物を提供することができるようになった。
本発明に係るゴム組成物は、ゴム100重量部、シリカ5〜120重量部、好ましくは20〜80重量部を含む充填剤10〜150重量部、好ましくは40〜100重量部及びシリカ配合量の3〜15重量%、好ましくは5〜8重量%のシランカップリング剤からなるゴム組成物において、前記式(I)を用いて、測定モードCP/MAS、コンタクトタイム5msec、遅延時間5secの測定条件で求めたシリカ−シランカップリング剤の反応量を105〜150、好ましくは110〜140とすることにより、このゴム組成物をトレッド部に用いることによって耐摩耗性に優れた空気入りタイヤを得ることができる。
ゴム、シリカ及びシランカップリング剤を配合したゴム組成物の固体高分解能29Si−NMR測定(測定モード:CP/MAS、コンタクトタイム5msec、遅延時間5sec)によって得られるゴム中のシリカのスペクトルは、典型的には図1に模式的に示した通りであり、−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造(図1に示すようにSi原子に2個のOH基が結合)、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造(図1に示すようにSi原子に1個のOH基が結合)及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造(図1に示すようにSi原子にOH基が結合していない)を示し、このピークはシリカとシランカップリング剤との反応によって図1の矢印に示す方向に移動する。
なお、固体高分解能29Si−NMR測定に供するゴムとしては、未加硫又は加硫ゴム組成物のいずれであってもよい。
本発明に従えば図2に典型的に示すような様式で上記Q2,Q3及びQ4の構造のピークの面積SQ2,SQ3及びSQ4を求め、前記式(I)に従って計算することによりシリカとシランカップリング剤との反応量を求めることができ、この反応量は絶対値に化学的意味は無く、同一配合における混合条件の違いによるシリカとシランカップリング剤の反応進行度合いの相対値を示す数値であり、この数値が小さいほどシリカとシランカップリング剤の反応が不十分であり、大きいほどシリカとシランカップリング剤の反応が十分であることを示す。
本発明のゴム組成物において使用することができるゴム成分としては、ジエン系ゴム、例えば天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、各種スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、各種ポリブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムなどをあげることができ、これらは単独又は任意のブレンドとして使用することができる。
本発明において充填剤として使用するシリカは、ゴム100重量部当り5〜120重量部を用いるが、このシリカの配合量が少ないとタイヤに用いた場合シリカの性能を発揮しないので好ましくなく、逆に多いと分散不良を起こしてしまうので好ましくない。本発明において使用するシリカは湿式シリカ、乾式シリカなどのタイヤ用などのゴム組成物に配合することができる任意のシリカを用いることができる。本発明のゴム組成物には更にシリカの他にカーボンブラック等他の充填剤を配合することができるが、充填剤の合計量は補強効果とゴムらしいしなやかさの観点からゴム100重量部に対し10〜150重量部である。
本発明のゴム組成物において使用するシランカップリング剤は従来からタイヤ用などのゴム組成物にシリカと共に配合される任意のシランカップリング剤とすることができ、シランカップリング剤はシリカ表面の反応サイト量との兼ね合いの観点からシリカの3〜15重量%配合する。本発明で用いるシランカップリング剤の種類には特に限定はないが、具体例をあげれば以下の通りである。
ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド(TESPT)
ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕ジスルフィド(TESPD)
本発明に係るゴム組成物には、前記した成分に加えて、加硫剤、加硫促進剤、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などのタイヤ用、その他のゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練して組成物とし、加硫するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲をこれらの実施例に限定するものでないことはいうまでもない。
実施例1〜2及び比較例1〜3
サンプルの調製
表Iに示す配合において、加硫促進剤と硫黄を除く成分を1.7リットルの密閉型ミキサーで5〜20分間混練し、100℃又は150℃に達したときに放出してマスターバッチを得た。このマスターバッチに加硫促進剤と硫黄をオープンロールで混練し、ゴム組成物を得た。このゴム組成物を用いて以下に示す試験法でシリカとシランカップリング剤の反応量を求めた。結果は表Iに示す。
次に得られたゴム組成物を15×15×0.2cmの金型中で160℃で30分間加硫して加硫ゴムシートを調製し、以下に示す試験法で加硫ゴムの物性(耐摩耗性)を測定した。結果は表Iに示す。
ゴム物性評価試験法
反応量の測定計算法:日本電子(株)製固体高分解能NMR(ECA400)を用いて測定モード29Si−NMR(CP/MAS、コンタクトタイム5msec及び遅延時間5sec)でゴム中のシリカのスペクトルを求め、Q2構造(−85〜−95ppm)、Q3構造(−96〜−105ppm)及びQ4構造(−106〜−115ppm)のピーク表面積を求め、前記式(I)に従って反応量を計算し、結果を表Iに示した。図3及び図4はそれぞれ比較例1及び実施例2のスペクトルを示す。
耐摩耗性:JIS K6264に準拠して、一連ランボーン試験機を用いて、温度20℃、スリップ率50%、荷重15Nの条件下で、摩耗減量を測定した。なお結果は実施例1の値を100として指数表示した。この値が大きいほど耐摩耗性に優れていることを示す。
Figure 2006337342
表I脚注
SBR:バイエル社製溶液重合SBR「VSL5025」(油展量37.5phr)
BR:NIPOL 1220:日本ゼオン(株)製、ガラス転移温度=−101℃
CB(カーボンブラック):昭和キャボット(株)製SHOBLACK N220(N2SA:111m2/g、DBP吸油量:111ml/100g)
シリカ:日本シリカ工業(株)製Nipsil AQ
シランカップリング剤:デグッサ社製ビス−〔3−(トリエトキシシリル)−プロピル〕テトラスルフィド(Si69)
ZnO:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
StA:日本油脂(株)製ステアリン酸
6C:FLEXSYS製老化防止剤SANTOFLEX 6PPD
ワックス:大内新興化学工業製サンノック
オイル:富士興産(株)製アロマオイル
硫黄:(株)軽井沢精練所製
CBS:FLEXSYS製加硫促進剤SANTOCURE CBS
DPG:住友化学製加硫促進剤ソクシノールD−G
以上の通り、本発明によれば、ゴム中でのシリカ−シランカップリング剤の反応を直接測定する方法として、固体高分解能29Si−NMR(CP/MAS)測定によりゴム中のシリカに帰属するスペクトルの水酸基の有無のピークの比率から相対的な反応量を求めることができるので、その方法を用いて、例えば空気入りタイヤ用ゴム、特にトレッド用ゴムなどに使用するのに好適な耐摩耗性の最適なゴム組成物を得ることができる。
本発明のシリカ−シランカップリング剤の反応量を求めるゴム中のシリカの固体高分解能29Si−NMRのスペクトルを示す説明図である。 図1のようなスペクトルの各ピークの面積の測定法を示す図面である。 比較例1の固体高分解能29Si−NMRのスペクトルを示す。 実施例2の固体高分解能29Si−NMRのスペクトルを示す。

Claims (3)

  1. 固体高分解能29Si−NMR測定によって得られるゴム中のシリカのスペクトルの帰属から、−85〜−95ppm付近にピークをもつQ2構造、−96〜−105ppm付近にピークをもつQ3構造及び−106〜−115ppm付近にピークをもつQ4構造のピーク面積を、それぞれ、SQ2,SQ3及びSQ4とし、式(I):
    反応量=[SQ4/(SQ2+SQ3)]×100
    によりシリカとシランカップリング剤との反応量を求める方法。
  2. ゴム100重量部、シリカ5〜120重量部を含む充填剤10〜150重量部及びシリカ配合量の3〜15重量%のシランカップリング剤からなるゴム組成物において、請求項1に記載の方法を用いてNMRの、測定モードCP/MAS、コンタクトタイム5msec、遅延時間5secの測定条件で求めたシリカ−シランカップリング剤の反応量が105〜150であるゴム組成物。
  3. 請求項2に記載のゴム組成物をトレッド部に用いた空気入りタイヤ。
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