JP2006332713A - 窒化物系半導体レーザ素子 - Google Patents

窒化物系半導体レーザ素子 Download PDF

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Abstract

【課題】素子の長寿命化を図ることが可能な窒化物系半導体レーザ素子を提供する。
【解決手段】この窒化物系半導体レーザ素子は、n型クラッド層3と、n型クラッド層3上に形成される発光層5と、発光層5上に形成されるp型クラッド層7とを備える。また、発光層5は、光を発生するMQW活性層と、光を閉じ込めるn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56と、活性層とn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56との間に配置され、それぞれn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55とを含む。
【選択図】図3

Description

本発明は、窒化物系半導体レーザ素子に関し、特に、活性層およびクラッド層などを順次結晶成長させることによって形成される窒化物系半導体レーザ素子に関する。
近年、窒化物系半導体レーザ素子は、次世代の大容量光ディスク用光源としての利用が期待されており、その開発が盛んに行われている。一般的に半導体レーザの重要な特性として、しきい値電流や動作電流などがある。しきい値電流とは、レーザ発振が開始するときの電流であり、しきい値電流が小さいほど動作電流も小さくなる。このため、しきい値電流は、小さいほど好ましい。
従来、窒化物系半導体レーザ素子においても、しきい値電流の低減が図られている。しきい値電流を低減させることによって、窒化物系半導体レーザ素子を駆動させるために必要な動作電流も低減することができるので、動作電流の増大に起因して素子内部の温度が上昇して素子が劣化するのを抑制することができる。
このため、窒化物系半導体レーザ素子の寿命を向上させるためにも、しきい値電流の低減は重要である。
従来では、しきい値電流を低減するために、発光層からクラッド層への光のしみ出しを小さくして光を発光層に効率よく閉じ込める必要があった。これは、以下の理由による。すなわち、従来の窒化物系半導体レーザ素子では、発光層とクラッド層との屈折率差を小さくすることにより光のしみ出しを大きくしようとすると、発光層とクラッド層とのバンドギャップ差が小さくなるので、発光層からクラッド層へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローが増加する。キャリアのオーバーフローが増加すると、発光しにくくなるので、しきい値電流が増加するとともに、動作電流が増大するという不都合が生じる。このため、従来では、キャリアのオーバーフローを抑制してしきい値電流を低減するために、発光層とクラッド層との屈折率差を大きくして発光層とクラッド層とのバンドギャップを大きくしていた。このように、発光層とクラッド層との屈折率差を大きくすると、発光層からクラッド層への光のしみ出しが小さくなるので、光が発光層に効率よく閉じ込められる。その結果、発光層内での光密度が高くなるので、垂直方向のビーム広がり角度が大きくなる。
このように、従来の窒化物系半導体レーザ素子では、垂直方向のビーム広がり角度は、30°前後と大きくなるように作製されていた(たとえば、非特許文献1参照)。この非特許文献1に開示された窒化物系半導体レーザ素子の垂直ビーム広がり角度は29.9°である。
Japanese Journal of Applied Physics Volume 39(2000)L647〜650
しかしながら、上記した従来の垂直ビーム広がり角度の大きい窒化物系半導体レーザ素子では、以下のような問題点があった。すなわち、窒化物系半導体レーザ素子は、赤外光や赤色光を発生するAlGaAs系およびAlGaInP系からなる半導体レーザ素子よりも、転位などの多くの結晶欠陥が含まれている。また、窒化物系半導体レーザ素子は、波長の短い紫〜紫外光を発しており、このような短波長光は、レーザ発振させるために大きなエネルギーを有する。上記した従来の垂直ビーム広がり角度の大きい窒化物系半導体レーザ素子では、光のしみ出しが小さくなるように構成されているので、発光層への光の閉じ込めが大きくなる。このため、素子内部の光密度が大きくなるので、転位などの結晶欠陥に起因した光吸収が発生しやすい。光吸収が発生すると、余分なエネルギーが消費されるので、動作電流が増加するという不都合が生じる。そして、動作電流が増加すると、素子内部の温度が上昇するため、バンドギャップが小さくなり、そのため、結晶欠陥に起因した光吸収が大きくなる。その結果、素子が急激に劣化するので、上記した従来の垂直ビーム広がり角度の大きい窒化物系半導体レーザ素子では、素子の長寿命化を図ることが困難であるという問題点があった。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、素子の長寿命化を図ることが可能な窒化物系半導体レーザ素子を提供することである。
この発明のもう1つの目的は、上記の窒化物系半導体レーザ素子において、発光層からクラッド層への光のしみ出しを大きくすることを可能にすることである。
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子は、第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、発光層は、光を発生する活性層と、光を閉じ込める光ガイド層と、活性層と光ガイド層との間に配置され、光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層とを含む。
この第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、活性層と光ガイド層との間に、光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層を設けることによって、発光層とクラッド層との屈折率差を小さくすることなどにより光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層からクラッド層へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをそのキャリアブロック層により抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、発光層と第1クラッド層との間、および、発光層と第2クラッド層との間の少なくとも一方に配置され、隣接する第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備える。このように構成すれば、第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さい光しみ出し促進層により、発光層から第1または第2クラッド層への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、第1または第2クラッド層よりもバンドギャップが大きい光しみ出し促進層により、キャリアを発光層内に強く閉じ込めることができる。このように、光のしみ出しを大きくすることができるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。また、上記のように、キャリアを発光層内に強く閉じ込めることができるので、発光層からクラッド層へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをより抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大をより抑制することができる。このように、動作電流の増大をより抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができ、その結果、素子の長寿命化をより図ることができる。
この場合、好ましくは、キャリアブロック層および光しみ出し促進層の少なくとも一方は、B、Al、In、GaおよびTlからなるグループより選択された1つまたは2つの元素を含む。このように構成すれば、容易に、光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層と、第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層とを形成することができる。
上記の場合、好ましくは、第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方は、AlとGaとInとを含む窒化物からなる。このように構成すれば、発光層とクラッド層との屈折率差を小さくした場合にも、発光層とクラッド層とのバンドギャップ差を大きく保つことができるので、発光層からクラッド層への光のしみ出しを大きくした場合にも、容易に、キャリアを発光層内に強く閉じ込めることができる。
この発明の第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子は、第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、発光層は、光を発生する活性層と、活性層の上面側および下面側の少なくとも一方に形成された光を閉じ込めるための光ガイド層とを含み、第1クラッド層と第2クラッド層のうち、前記光ガイド層を有する側のクラッド層と光ガイド層との間に、前記光ガイド層を有する側のクラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備えている。
この第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、発光層が活性層と光ガイド層とを含み、光ガイド層と第1クラッド層、または、光ガイド層と第2クラッド層との間に、隣接する第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層を設けることによって、第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さい光しみ出し促進層により、発光層から第1または第2クラッド層への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、第1または第2クラッド層よりもバンドギャップが大きい光しみ出し促進層により、キャリアを発光層内に強く閉じ込めることができる。このように、光のしみ出しを大きくすることができるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。また、上記のように、キャリアを発光層内により強く閉じ込めることができるので、発光層からクラッド層へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをより抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大をより抑制することができる。このように、動作電流の増大をより抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができる。その結果、素子をより長寿命化することができる。
ここで、光ガイド層と光しみ出し層との界面には、不純物準位が形成される。この不純物準位に起因して光吸収が生じることにより動作電流やしきい値電流が増大する虞がある。一方、この第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子では、光しみ出し層は、活性層から光ガイド層の厚み分離れて配置されるので、光ガイド層と光しみ出し層との界面位置における光密度を小さくすることができる。この結果、上記界面における不純物準位に起因した光吸収を抑制することができるので、動作電流やしきい値電流の増大をより抑制することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、活性層の上面側および下面側の両方に光を閉じ込めるための光ガイド層を有している。このように構成すれば、活性層の両側に位置する光ガイド層により、発光層への光閉じ込めを容易に調整することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、第1クラッド層と第2クラッド層のうち、光ガイド層を有する側と反対側のクラッド層と活性層との間に、前記光ガイド層を有する側と反対側のクラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備える。このように構成すれば、第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さい両方の光しみ出し促進層により、発光層から第1または第2クラッド層両方への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、第1または第2クラッド層よりもバンドギャップが大きい両方の光しみ出し促進層により、キャリアを発光層内にさらに強く閉じ込めることができる。
この発明の第3の局面による窒化物系半導体レーザ素子は、第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、発光層への光の閉じ込め度合いを小さくすることにより、垂直方向のビーム広がり角度を20°以下にした。
この第3の局面による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、発光層への光の閉じ込め度合いを小さくすることにより、垂直方向のビーム広がり角度を20°以下にすることによって、発光層から第1クラッド層および第2クラッド層への光のしみ出しが大きくなるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、動作電流が増大するのを抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
なお、上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、光ガイド層は、活性層の上面上および下面上にそれぞれ形成されており、キャリアブロック層は、活性層と活性層の上面上に形成された光ガイド層との間、および、活性層と活性層の下面上に形成された光ガイド層との間の両方に配置されている。このように構成すれば、発光層から第1および第2クラッド層の両方へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをそのキャリアブロック層により抑制することができる。
上記光しみ出し促進層を備えた第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、光しみ出し促進層は、発光層と第1クラッド層との間、および、発光層と第2クラッド層との間の両方に配置されている。このように構成すれば、発光層から第1および第2クラッド層の両方への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、キャリアを発光層内により強く閉じ込めることができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、キャリアブロック層は、AlとGaとInとを含む窒化物からなるようにしてもよい。
また、上記第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方がAlとGaとInとを含む窒化物からなる第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、発光層と第1クラッド層との間、および、発光層と第2クラッド層との間の少なくとも一方に配置され、隣接する第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備え、キャリアブロック層および光しみ出し促進層の少なくとも一方は、AlとGaとInとを含む窒化物からなるようにしてもよい。
また、上記第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方がAlとGaとInとを含む窒化物からなる第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方は、GaNと実質的に同じ格子定数を有するAlとGaとInとを含む窒化物からなるのが好ましい。このように構成すれば、GaNからなる下地層を用いる場合に、下地層との格子定数差に起因する結晶欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、発光層は、単一量子井戸構造および多重量子井戸構造のいずれか一方からなる活性層を含む。このように構成すれば、光閉じ込めの制御が容易になる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層は、第1導電型の窒化物系半導体基板上に形成されているのが好ましい。このように構成すれば、結晶欠陥の少ない第1クラッド層を形成することができる。
上記第1の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、垂直方向のビーム広がり角度が20°以下であるのが好ましい。このように構成すれば、発光層から第1クラッド層および第2クラッド層への光のしみ出しが大きくなるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、動作電流が増大するのを抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、活性層と光ガイド層との間に、光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層をさらに備える。このように構成すれば、発光層とクラッド層との屈折率差を小さくすることなどにより光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層からクラッド層へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをそのキャリアブロック層により抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大をより抑制することができる。
また、上記のキャリアブロック層と光しみ出し促進層とを含む第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、キャリアブロック層および光しみ出し促進層の少なくとも一方は、B、Al、In、GaおよびTlからなるグループより選択された1つまたは2つの元素を含む。このように構成すれば、容易に、光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層と、第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層とを形成することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方は、AlとGaとInとを含む窒化物からなる。このように構成すれば、発光層とクラッド層との屈折率差を小さくした場合にも、発光層とクラッド層とのバンドギャップ差を大きく保つことができるので、発光層からクラッド層への光のしみ出しを大きくした場合にも、容易に、キャリアを発光層内に強く閉じ込めることができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、光しみ出し促進層は、AlとGaとInとを含む窒化物からなっていてもよい。
また、上記第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方がAlとGaとInとを含む窒化物からなる第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、第1クラッド層および第2クラッド層の少なくとも一方は、GaNと実質的に同じ格子定数を有するAlとGaとInとを含む窒化物からなる。このように構成すれば、GaNからなる下地層を用いる場合に、下地層との格子定数差に起因する結晶欠陥の発生を大幅に抑制することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、好ましくは、発光層は、単一量子井戸構造および多重量子井戸構造のいずれか一方からなる活性層を含む。このように構成すれば、光閉じ込めの制御が容易になる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層は、第1導電型の窒化物系半導体基板上に形成されているのが好ましい。このように構成すれば、結晶欠陥の少ない第1クラッド層を形成することができる。
上記第2の局面による窒化物系半導体レーザ素子において、垂直方向のビーム広がり角度が20°以下であるのが好ましい。このように構成すれば、発光層から第1クラッド層および第2クラッド層への光のしみ出しが大きくなるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、動作電流が増大するのを抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。図2は、本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図3は、図1および図2に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。
まず、図1〜図3を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造について説明する。第1実施形態の窒化物系半導体レーザ素子では、図1および図2に示すように、サファイア基板1上に、約4μmの膜厚を有するn型GaNからなるn型コンタクト層2が形成されている。n型コンタクト層2上には、約1μmの膜厚を有するn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層3が形成されている。この第1実施形態によるn型クラッド層3では、Al組成を小さくすることによって、後述する発光層5との屈折率差を小さくしている。これにより、発光層5からn型クラッド層3への光のしみ出しが大きくなる。
また、第1実施形態では、n型クラッド層3上に、約20nmの膜厚を有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型光しみ出し促進層4が形成されている。このn型光しみ出し促進層4は、n型クラッド層3よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい。なお、n型クラッド層3は、本発明の「第1クラッド層」の一例であり、n型光しみ出し促進層4は、本発明の「光しみ出し促進層」の一例である。
また、n型光しみ出し促進層4上には、多層膜構造からなる発光層5が形成されている。この多層膜構造からなる発光層5は、図3に示すように、約4nmの厚みを有する3つのInxGa1-xNからなる量子井戸層51と、約20nmの厚みを有する4つのInyGa1-yNからなる量子障壁層52とが交互に積層された多重量子井戸(MQW;Multiple Quantum Well)活性層を有する。ここで、x>yであり、第1実施形態においては、x=0.13、y=0.05である。
また、第1実施形態では、このMQW活性層の下面下に、約20nmの厚みを有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型キャリアブロック層53が形成されているとともに、n型キャリアブロック層53の下には、約100nmの厚みを有するn型GaNからなるn型光ガイド層54が形成されている。このn型キャリアブロック層53は、n型光ガイド層54よりもバンドギャップが大きくなるように形成されている。また、n型キャリアブロック層53は、キャリアのオーバーフローを抑制する機能と、光をしみ出させる機能とを有する。また、MQW活性層の上面上には、約20nmの厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型キャリアブロック層55が形成されているとともに、p型キャリアブロック層55の上には、約100nmの厚みを有するp型GaNからなるp型光ガイド層56が形成されている。このp型キャリアブロック層55は、p型光ガイド層56よりもバンドギャップが大きくなるように形成されている。また、p型キャリアブロック層55は、キャリアのオーバーフローを抑制する機能と、光をしみ出させる機能とを有する。
なお、MQW活性層は、本発明の「活性層」の一例であり、n型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55は、本発明の「キャリアブロック層」の一例である。また、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56は、本発明の「光ガイド層」の一例である。
また、第1実施形態では、発光層5上に、約20nmの膜厚を有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型光しみ出し促進層6が形成されている。p型光しみ出し促進層6上には、突出部を有するAl0.03Ga0.97Nからなるp型クラッド層7が形成されている。p型光しみ出し促進層6は、p型クラッド層7よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい。また、第1実施形態では、p型クラッド層7のAl組成を小さくすることによって、発光層5とp型クラッド層7との屈折率差を小さくしている。これにより、発光層5からp型クラッド層7への光のしみ出しが大きくなる。なお、p型クラッド層7は、本発明の「第2クラッド層」の一例であり、p型光しみ出し促進層6は、本発明の「光しみ出し促進層」の一例である。
また、p型クラッド層7の突出部の膜厚は約0.3μmであるとともに、突出部以外の領域の膜厚は約0.1μmである。p型クラッド層7の突出部の上面上には、約0.07μmの膜厚を有するGaNからなるp型コンタクト層8が形成されている。このp型コンタクト層8とp型クラッド層7の突出部とによって、リッジ部9が構成されている。
そして、p型クラッド層7からn型コンタクト層2までの一部領域が除去されている。この除去されて露出しているn型コンタクト層2上の一部と、n型クラッド層3、n型光しみ出し促進層4、発光層5、p型光しみ出し促進層6、p型クラッド層7およびp型コンタクト層8の側面上と、p型クラッド層7のリッジ部9以外の上面上と、共振器端面近傍のリッジ部9の上面上とに、約0.2μmの厚さを有するSiO2からなる電流ブロック層10が形成されている。
また、p型コンタクト層8上には、約1nmの膜厚を有する下層のPtと、約3nmの膜厚を有する上層のPdとからなるp側オーミック電極11が形成されている。さらに、このp側オーミック電極11上と電流ブロック層10上とには、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるp側パッド電極12が形成されている。
また、露出しているn型コンタクト層2上の電流ブロック層10が形成されていない部分に、約10nmの膜厚を有する下層のTiと、約0.1μmの膜厚を有する上層のAlとからなるn側オーミック電極13が形成されている。そして、このn側オーミック電極13上には、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるn側パッド電極14が形成されている。
第1実施形態では、上記のように、発光層5内において、MQW活性層とn型光ガイド層54との間およびMQW活性層とp型光ガイド層56との間に、それぞれ、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55を設けることによって、光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリアのオーバーフローをn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55により抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第1実施形態では、発光層5とn型クラッド層3およびp型クラッド層7との間に、それぞれn型クラッド層3およびp型クラッド層7よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6を設けることによって、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりもそれぞれ屈折率が小さいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6により、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりもそれぞれバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6によりキャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができる。これにより、光のしみ出しを大きくすることができるので、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。また、上記のように、キャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができるので、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローをより抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大をより抑制することができる。このように、動作電流の増大をより抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができ、その結果、素子の長寿命化をより図ることができる。
また、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、光のしみ出しを大きくすることができるので、レーザ発振時の垂直広がり角度を約16°と小さくすることができる。これにより、垂直方向のビーム広がり角度が30°前後と大きくなるように作製された従来の窒化物系半導体レーザ素子に比べて、垂直方向のビーム広がり角度を大幅に小さくすることができる。
図4〜図7は、図1〜図3に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。次に、図4〜図7を参照して、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図4に示すように、サファイア基板1上に、MOCVD法(MetalOrganic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相堆積法)を用いて、約4μmの膜厚を有するn型GaNからなるn型コンタクト層2、約1μmの膜厚を有するn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層3、約20nmの膜厚を有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型光しみ出し促進層4、および、多層膜構造からなる発光層5を順次形成する。
この多層膜構造からなる発光層5は、n型光しみ出し促進層4上に、図3に示したような、約100nmの厚みを有するn型GaNからなるn型光ガイド層54、および、約20nmの厚みを有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型キャリアブロック層53を順次形成する。続いて、n型キャリアブロック層53上に、約20nmの厚みを有する4つのInyGa1-yNからなる量子障壁層52と、約4nmの厚みを有する3つのInxGa1-xNからなる量子井戸層51とを交互に順次形成することにより、MQW活性層を形成する。次に、MQW活性層上に、約20nmの厚みを有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型キャリアブロック層55、および、約100nmの厚みを有するp型GaNからなるp型光ガイド層56を順次形成する。
次に、図4に示すように、発光層5上に、MOCVD法を用いて、約20nmの膜厚を有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型光しみ出し促進層6、約0.3μmの膜厚を有するp型Al0.03Ga0.97Nからなるp型クラッド層7、および、約0.07μmの膜厚を有するp型GaNからなるp型コンタクト層8を順次形成する。なお、上記結晶成長において、n型ドーパントとしてはSiを用い、p型ドーパントとしては、Mgを用いる。
次に、図5に示すように、p型コンタクト層8上の全面に、プラズマCVD法を用いて、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜15を形成する。フォトリソグラフィー技術およびフッ酸系のエッチング技術を用いて、SiO2膜15の一部領域をエッチング除去する。そして、塩素系ガスによるRIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、p型コンタクト層8、p型クラッド層7、p型光しみ出し層6、発光層5、n型光しみ出し層4、n型クラッド層3、および、n型コンタクト層2の途中までエッチングすることによって、n型コンタクト層2の上面を露出させる。
次に、フォトリソグラフィー技術およびフッ酸系のエッチング技術を用いて、SiO2膜15をパターニングすることによって、図6に示すような、約2μmの幅を有するストライプ状のSiO2膜15を形成する。そして、ストライプ状のSiO2膜15をエッチングマスクとして、塩素系ガスによるRIE法を用いて、p型コンタクト層8およびp型クラッド層7の一部をエッチング除去することにより、リッジ部9を形成する。なお、リッジ部9の形成時のエッチングの深さは、p型コンタクト層8の上面から約0.27μmとする。これにより、リッジ部9以外のp型クラッド層7の膜厚は約0.1μmとなる。その後、フッ酸系のエッチングを用いて、リッジ部9上のSiO2膜15を除去する。
次に、図7に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2からなる電流ブロック層10を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびCF4によるRIE法を用いて、共振器端面近傍を除くリッジ部9上の電流ブロック層10と、n型コンタクト層2の一部上の電流ブロック層10とを除去することによって、図2に示したように、p型コンタクト層8の上面の一部を露出させるとともに、n型コンタクト層2上の一部を露出させる。
最後に、図2に示したように、真空蒸着法を用いて、共振器端面近傍を除くリッジ部9上のp型コンタクト層8上に、約1nmの膜厚を有する下層のPtと、約3nmの膜厚を有する上層のPdとからなるp側オーミック電極11を形成する。そして、p側オーミック電極11上と、電流ブロック層10上とに、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるp側パッド電極12を形成する。また、真空蒸着法を用いて、n型コンタクト層2上に、約10nmの膜厚を有する下層のTiと、約0.1μmの膜厚を有する上層のAlとからなるn側オーミック電極13を形成する。そして、n側オーミック電極13上に、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるn側パッド電極14を形成する。このようにして、第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
(第2実施形態)
図8は、本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図8を参照して、この第2実施形態では、上記第1実施形態の構造において、発光層5と、n型クラッド層3およびp型クラッド層7との間に、光しみ出し促進層が形成されていない例について説明する。なお、第2実施形態のその他の構造および製造方法は、第1実施形態とほぼ同様である。
すなわち、第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図3に示した第1実施形態と同様、発光層5内において、MQW活性層とn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56との間に、それぞれn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55が設けられている。これにより、光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリアのオーバーフローをn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55により抑制することができる。このため、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第2実施形態では、n型クラッド層3およびp型クラッド層7のAl組成を小さくすることにより発光層5とn型クラッド層3およびp型クラッド層7との屈折率差を小さくすることによって、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7への光のしみ出しを大きくすることができる。なお、第2実施形態では、光しみ出し促進層を設けていないので、その分、第1実施形態に比べて光のしみ出し度合いは小さい。したがって、この第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、レーザ発振時の垂直広がり角度は、第1実施形態(約16°)よりも若干大きい約17°となる。ただし、垂直方向のビーム広がり角度が30°前後と大きくなるように作製された従来の窒化物系半導体レーザ素子に比べると、垂直方向のビーム広がり角度を大幅に小さくすることができる。これにより、素子内部での光密度を低減することができるので、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができる。このため、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。これによっても、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができるので、素子の長寿命化を図ることができる。
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。図9を参照して、この第3実施形態では、上記第1実施形態の構造において、発光層5内において、MQW活性層とn型光ガイド層54およびp型光ガイド層56との間に、キャリアブロック層が形成されていない例について説明する。なお、第3実施形態のその他の構造および製造方法は、第1実施形態とほぼ同様である。
すなわち、第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図2に示した第1実施形態と同様、発光層5とn型クラッド層3およびp型クラッド層7との間に、それぞれn型クラッド層3およびp型クラッド層7よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6が設けられている。これにより、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりもそれぞれ屈折率が小さいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6により、発光・BR>W5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりもそれぞれバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6によりキャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができる。このため、素子内部での光密度を低減することができる。これにより、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。
また、上記のように、キャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができるので、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリア(電子や正孔)のオーバーフローを抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。
このように、動作電流の増大を抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができ、その結果、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第3実施形態では、光しみ出し促進層4および6を光ガイド層54および56の厚み分(約100nm)MQW活性層から離間させて形成している。一方、上記した第2実施形態で用いるキャリアブロック層53、55はMQW活性層と接して形成している。光しみ出し促進層4および6、キャリアブロック層53および55は、バンドギャップを大きくする必要があるために、多くのAlを含有している(第2および第3実施形態では、いずれもAl0.15Ga0.85Nからなる)。Alは活性な元素であるため、結晶成長装置内に存在するたとえば酸素や炭素などの不純物ガスと反応しやすい。したがって、光しみ出し促進層4、6やキャリアブロック層53、55と、これらの層と接する上層との界面(n型光しみ出し促進層4と発光層5の下面(n型光ガイド層54の下面)との界面、p型光しみ出し促進層6とp型クラッド層7の下面との界面、n型キャリアブロック層53と最下層の量子障壁層52の下面との界面、および、p型キャリアブロック層55とp型光ガイド層56の下面との界面)に、結晶成長装置内に存在するたとえば酸素や炭素などの不純物元素が蓄積されやすい。これらの不純物元素は、不純物準位を形成し、これらの準位を介して、光吸収が生じる虞がある。この結果、しきい値電流や動作電流が増大する虞がある。上述のように、第3実施形態では、第2実施形態と比べて、光ガイド層54、56の厚み分(約100nm)、MQW活性層から、これらの界面を遠ざけることができる。光密度は、MQW活性層から遠ざかると小さくなるので、上記界面で生じる光吸収は、第2実施形態と比べて第3実施形態の方が小さくなる。したがって、第3実施形態では、第2実施形態と比べて、しきい値電流や動作電流の増大をより一層抑制することができる。
また、第3実施形態では、第1実施形態と同様、発光層5とn型クラッド層3およびp型クラッド層7との屈折率差を小さくするとともに、n型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6を設けることによって、光のしみ出しを大きくすることができるので、レーザ発振時の垂直広がり角度を約18°と小さくすることができる。すなわち、垂直方向のビーム広がり角度が30°前後と大きくなるように作製された従来の窒化物系半導体レーザ素子に比べると、垂直方向のビーム広がり角度を大幅に小さくすることができる。なお、第3実施形態では、キャリアのブロック機能を有するキャリアブロック層を設けていないので、その分、第1実施形態に比べるとキャリアの閉じ込めが弱くなる。
なお、第3実施形態では、MQW活性層の上下に光ガイド層54、56を設けたが、どちらか一方を設けない構造がより好ましい。この場合、MQW活性層に光を閉じ込めるための光ガイド層の一方が存在しないので、図9に示した第3実施形態と比較してMQW活性層への光の閉じ込めを小さくすることができる。したがって、n型クラッド層3あるいはp型クラッド層7への光のしみ出しを大きくすることができる。一方、発光層5の上面上および下面上の両方に、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6が設けられているので、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリア(電子やホール)のオーバフローを抑制することができる。この結果、第3実施形態において、光ガイド層54および56のどちらか一方を設けないようにすれば、しきい値電流の増加を抑制し、かつ、第1実施形態と同様に、レーザ発振時の垂直広がり角度を約16°と小さくすることができる。
(第4実施形態)
図10は、本発明の第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図10を参照して、この第4実施形態では、第1実施形態の構造において、サファイア基板1の代わりに導電性のn型GaN基板61を用いた例について説明する。
この第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、第1実施形態と異なり、導電性のn型GaN基板61の裏面に、n側オーミック電極13およびn側パッド電極14が形成されている。また、第1実施形態と異なり、p型コンタクト層8からn型コンタクト層2の一部領域が除去されていない。なお、第4実施形態のその他の構造は、第1実施形態とほぼ同様である。
なお、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の効果は、上記した第1実施形態と同様である。すなわち、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55によって、光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7へのキャリアのオーバーフローをn型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55により抑制することができるので、しきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。
また、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりも屈折率が小さいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6により、発光層5からn型クラッド層3およびp型クラッド層7への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、n型クラッド層3およびp型クラッド層7よりもバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層4およびp型光しみ出し促進層6によりキャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができる。これにより、光のしみ出しを大きくすることができるので、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することがでる。このため、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。上記のように、動作電流の増大を抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができる。その結果、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、光のしみ出しを大きくすることができるので、第1実施形態と同様、レーザ発振時の垂直広がり角度を約16°と小さくすることができる。
図11〜14は、図10に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。次に、図11〜図14を参照して、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法について説明する。
まず、図11に示すように、n型GaN基板61上に、MOCVD法を用いて、約4μmの膜厚を有するn型GaNからなるn型コンタクト層2、約1μmの膜厚を有するn型Al0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層3、約20nmの膜厚を有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型光しみ出し促進層4、および、多層膜構造からなる発光層5を順次形成する。
この多層膜構造からなる発光層5の形成方法としては、n型光しみ出し促進層4上に、図3に示した第1実施形態と同様のプロセスを用いて、約100nmの厚みを有するn型GaNからなるn型光ガイド層54、約20nmの厚みを有するn型Al0.15Ga0.85Nからなるn型キャリアブロック層53、約20nmの厚みを有する4つのInyGa1-yNからなる量子障壁層52と約4nmの厚みを有する3つのInxGa1-xNからなる量子井戸層51とが交互に配置されたMQW活性層、約20nmの厚みを有するAl0.15Ga0.85Nからなるp型キャリアブロック層55、および、約100nmの厚みを有するGaNからなるp型光ガイド層56を順次形成する。
次に、発光層5上に、MOCVD法を用いて、約20nmの膜厚を有するp型Al0.15Ga0.85Nからなるp型光しみ出し促進層6、約0.3μmの膜厚を有するp型Al0.03Ga0.97Nからなるp型クラッド層7、および、約0.07μmの膜厚を有するp型GaNからなるp型コンタクト層8を順次形成する。なお、上記結晶成長において、n型ドーパントとしてはSiを用い、p型ドーパントとしては、Mgを用いる。
次に、図12に示すように、p型コンタクト層8上の全面に、プラズマCVD法を用いて、約0.2μmの膜厚を有するSiO2膜15を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびフッ酸系のエッチング技術を用いて、SiO2膜15をパターニングすることによって、図13に示すような約2μmの幅を有するストライプ状のSiO2膜15を形成する。そして、ストライプ状のSiO2膜15をエッチングマスクとして、塩素系ガスによるRIE法を用いて、p型コンタクト層8およびp型クラッド層7の一部をエッチング除去することにより、リッジ部9を形成する。なお、リッジ部9の形成時のエッチングの深さは、p型コンタクト層8の上面から約0.27μmとする。これにより、リッジ部9以外のp型クラッド層の膜厚は約0.1μmとなる。その後、フッ酸系のエッチングを用いて、リッジ部9上のSiO2膜15を除去する。
次に、図14に示すように、プラズマCVD法を用いて、全面を覆うように、約0.2μmの膜厚を有するSiO2からなる電流ブロック層10を形成する。そして、フォトリソグラフィー技術およびCF4によるRIE法を用いて、共振器端面近傍を除くリッジ部9上の電流ブロック層10を除去することによって、図10に示したように、p型コンタクト層8の上面の一部を露出させる。
最後に、図10に示したように、真空蒸着法を用いて、共振器端面近傍を除くリッジ部9上のp型コンタクト層8上に、約1nmの膜厚を有する下層のPtと、約3nmの膜厚を有する上層のPdとからなるp側オーミック電極11を形成する。そして、p側オーミック電極11上と、電流ブロック層10上とに、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるp側パッド電極12を形成する。また、n型GaN基板61の裏面を、ラッピングにより基板厚が約100μmになるまで削る。その後、真空蒸着法を用いて、n型GaN基板61の裏面上に、約10nmの膜厚を有する下層のTiと、約0.1μmの膜厚を有する上層のAlとからなるn側オーミック電極13を形成する。そして、n側オーミック電極13下に、約0.1μmの膜厚を有する下層のNiと、約3μmの膜厚を有する上層のAuとからなるn側パッド電極14を形成する。このようにして、第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子が製造される。
(第5実施形態)
図15は、本発明の第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図16は、図15に示した第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。図15および図16を参照して、この第5実施形態では、上記第1〜第4実施形態で用いた3元混晶AlGaNと異なり、4元混晶AlInGaNを用いる例について説明する。
具体的には、第1〜第4実施形態で用いたAl0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層3およびp型クラッド層7に代えて、Al0.12In0.05Ga0.83Nからなるn型クラッド層73およびp型クラッド層77を用いる。また、第1〜第4実施形態で用いたAl0.15Ga0.85Nからなるn型光しみ出し促進層4、p型光しみ出し促進層6、n型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55に代えて、Al0.24In0.05Ga0.71Nからなるn型光しみ出し促進層74、p型光しみ出し促進層76、n型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755を用いる。
ここで、n型光しみ出し促進層74およびp型光しみ出し促進層76は、n型クラッド層73およびp型クラッド層77よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい。また、n型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755は、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップが大きい。このn型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755は、キャリアのオーバーフローを抑制する機能と、光をしみ出させる機能とを有する。なお、n型クラッド層73は、本発明の「第1クラッド層」の一例であり、p型クラッド層77は、本発明の「第2クラッド層」の一例である。また、n型光しみ出し促進層74およびp型光しみ出し促進層76は、本発明の「光しみ出し促進層」の一例である。また、n型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755は、本発明の「キャリアブロック層」の一例である。なお、第5実施形態のその他の構造および製造方法は、第1実施形態とほぼ同様である。
ここで、第5実施形態のn型クラッド層73およびp型クラッド層77として用いる4元混晶Al0.12In0.05Ga0.83Nの屈折率は2.540であり、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶Al0.03Ga0.97Nとほぼ同じ屈折率である。また、第5実施形態のn型光しみ出し促進層74、p型光しみ出し促進層76、n型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755として用いる4元混晶Al0.24In0.05Ga0.71Nの屈折率は2.501であり、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶Al0.15Ga0.85Nとほぼ同じ屈折率である。これにより、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、光閉じ込めにおいて、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
さらに、第5実施形態のn型クラッド層73およびp型クラッド層77として用いる4元混晶Al0.12In0.05Ga0.83Nのバンドギャップは、3元混晶Al0.03Ga0.97Nのバンドギャップよりも大きいとともに、第5実施形態のn型光しみ出し促進層74、p型光しみ出し促進層76、n型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755として用いる4元混晶Al0.24In0.05Ga0.71Nのバンドギャップは、3元混晶Al0.15Ga0.85Nよりも大きい。これにより、同じ屈折率を有する3元混晶と4元混晶とを比較した場合、4元混晶のバンドギャップは、3元混晶のバンドギャップより大きくなる。
図17は、本発明の第5実施形態による3元混晶および4元混晶のバンドギャップと屈折率との関係を計算によって求めたグラフである。図17中のAlInGaN(In=2%)の直線は、In組成を2%で一定にした場合において、AlとGaとの組成を変化させた場合のバンドギャップと屈折率との関係を示している。このAlInGaN(In=2%)の組成の一般式は、AlWIn0.02Ga(0.98-W)Nとなる。また、AlInGaN(In=5%)の直線は、In組成を5%で一定にした場合において、AlとGaとの組成を変化させた場合のバンドギャップと屈折率との関係を示している。このAlInGaN(In=5%)の組成の一般式は、AlVIn0.05Ga(0.95-V)Nとなる。
図17を参照して、全ての3元混晶および4元混晶の直線において、バンドギャップと屈折率との関係は、ほぼ直線的な関係になっているとともに、屈折率が小さいほどバンドギャップは大きくなっている。また、4元混晶AlInGaN(In=2%)の直線は、3元混晶AlGaNの直線よりも上方に位置するとともに、4元混晶AlInGaN(In=5%)の直線は、4元混晶AlInGaN(In=2%)の直線よりも上方に位置する。これにより、同じ屈折率において、バンドギャップは、AlGaN、AlWIn0.02Ga(0.98-W)N、AlVIn0.05Ga(0.95-V)Nの順に大きくなる。たとえば、屈折率2.52では、AlGaN、AlWIn0.02Ga(0.98-W)NおよびAlVIn0.05Ga(0.95-V)Nのバンドギャップは、それぞれ、3.61、3.69および3.79となっている。このように、Inの増加に伴いバンドギャップは大きくなっている。
これは、以下の理由による。すなわち、Inの増加に伴い、屈折率が大きくなる。この場合、Inを添加する前の屈折率を保つためには、Inが添加されている状態で屈折率を小さくする必要がある。このためには、Al組成を大きくする必要がある。Al組成が大きくなると、AlInGaNのバンドギャップも大きくなる。このため、Inの増加に伴ってバンドギャップが大きくなる。
第5実施形態では、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶AlGaNよりもバンドギャップが大きい4元混晶AlInGaNを用いることによって、第1〜第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子よりも、キャリアのオーバーフローをより抑制することができるので、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を大幅に抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができるので、第1実施形態に比べて、より素子の長寿命化を図ることができる。
なお、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のその他の効果は、上記した第1実施形態と同様である。すなわち、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755によって、光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からn型クラッド層73およびp型クラッド層77へのキャリアのオーバーフローをn型キャリアブロック層753およびp型キャリアブロック層755により抑制することができるので、しきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。
また、n型クラッド層73およびp型クラッド層77よりも屈折率が小さいn型光しみ出し促進層74およびp型光しみ出し促進層76により、発光層5からn型クラッド層73およびp型クラッド層77への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、n型クラッド層73およびp型クラッド層77よりもバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層74およびp型光しみ出し促進層76によりキャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができる。これにより、光のしみ出しを大きくすることができるので、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができる。このため、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。このため、動作電流の増大を抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができる。その結果、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、光のしみ出しを大きくすることができるので、第1実施形態と同様、レーザ発振時の垂直広がり角度を約16°と小さくすることができる。
(第6実施形態)
図18は、本発明の第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図19は、図18に示した第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。図18および図19を参照して、この第6実施形態では、上記した第5実施形態の構造において、Al0.24In0.05Ga0.71Nからなるn型光しみ出し促進層、p型光しみ出し促進層およびn型キャリアブロック層を形成せず、4元混晶Al0.24In0.05Ga0.71Nからなるp型キャリアブロック層755のみを設けた例について説明する。なお、第6実施形態のその他の構造および製造方法は、第5実施形態とほぼ同様である。
すなわち、第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、図19に示すように、発光層5内において、MQW活性層とp型光ガイド層56との間に、p型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいp型キャリアブロック層755が設けられている。これにより、発光層5とp型クラッド層77との屈折率差を小さくすることにより光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からp型クラッド層77へのキャリアのオーバーフローをp型キャリアブロック層755により抑制することができる。これにより、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。
また、上記第6実施形態では、n型クラッド層73およびp型クラッド層77のAl組成を大きくすることによって、n型クラッド層73およびp型クラッド層77と発光層5との屈折率差を小さくすることができるので、光のしみ出しを大きくすることができる。なお、第6実施形態では、n型光しみ出し促進層、p型光しみ出し促進層およびn型キャリアブロック層を設けていないため、第5実施形態に比べて、光のしみ出しは小さくなる。このため、第6実施形態のレーザ発振時の垂直広がり角度は約18°と、第5実施形態(約16°)に比べて少し大きくなる。ただし、垂直方向のビーム広がり角度が30°前後と大きくなるように作製された従来の窒化物系半導体レーザ素子に比べると、垂直方向のビーム広がり角度を大幅に小さくすることができる。
さらに、第6実施形態では、第5実施形態と同様、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶AlGaNよりもバンドギャップが大きい4元混晶AlInGaNを用いることによって、キャリアのオーバーフローをより抑制することができるので、しきい値電流の上昇や動作電流の増大を大幅に抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができるので、大幅に素子の長寿命化を図ることができる。
(第7実施形態)
図20は、本発明の第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。図21は、図20に示した第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。図20および図21を参照して、この第7実施形態では、上記第1〜第4実施形態で用いた3元混晶AlGaNと異なり、4元混晶AlInGaNを用いるとともに、GaNと格子整合する4元混晶AlInGaNを用いる。
具体的には、第1〜第4実施形態で用いたAl0.03Ga0.97Nからなるn型クラッド層3およびp型クラッド層7に代えて、Al0.04In0.005Ga0.955Nからなるn型クラッド層83およびp型クラッド層87を用いる。また、第1〜第4実施形態で用いたAl0.15Ga0.85Nからなるn型光しみ出し促進層4、p型光しみ出し促進層6、n型キャリアブロック層53およびp型キャリアブロック層55に代えて、Al0.19In0.025Ga0.785Nからなるn型光しみ出し促進層84、p型光しみ出し促進層86、n型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855を用いる。さらに、第7実施形態で用いる上記4元混晶は、第5および第6実施形態で用いた4元混晶と異なり、GaNとほぼ同じ格子定数を有しているので、GaNと格子整合する。
ここで、n型光しみ出し促進層84およびp型光しみ出し促進層86は、n型クラッド層83およびp型クラッド層87よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい。また、n型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855は、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップが大きい。n型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855は、キャリアのオーバーフローを抑制する機能と、光をしみ出させる機能とを有する。なお、n型クラッド層83は、本発明の「第1クラッド層」の一例であり、p型クラッド層87は、本発明の「第2クラッド層」の一例である。また、n型光しみ出し促進層84およびp型光しみ出し促進層86は、本発明の「光しみ出し促進層」の一例である。また、n型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855は、本発明の「キャリアブロック層」の一例である。なお、第7実施形態のその他の構造および製造方法は、第1実施形態とほぼ同様である。
図22は、本発明の第7実施形態によるGaNと格子整合する4元混晶および3元混晶のバンドギャップと屈折率との関係を計算によって求めたグラフである。図22を参照して、GaNに格子整合する4元混晶の直線は、3元混晶のAlGaNの直線よりも上方に位置する。これにより、同じ屈折率において、バンドギャップは、GaNに格子整合する4元混晶の方が3元混晶より大きくなる。
また、第7実施形態のn型クラッド層83およびp型クラッド層87として用いる4元混晶Al0.04In0.005Ga0.955Nの屈折率は2.540であり、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶Al0.03Ga0.97Nとほぼ同じ屈折率である。また、第7実施形態のn型光しみ出し促進層84、p型光しみ出し促進層86、n型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855として用いる4元混晶Al0.19In0.025Ga0.785Nの屈折率は2.501であり、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶Al0.15Ga0.85Nとほぼ同じ屈折率である。これにより、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、光閉じ込めにおいて、第1〜第4実施形態と同様の効果を得ることができる。また、バンドギャップは、GaNに格子整合する4元混晶Al0.04In0.005Ga0.955Nの方が、3元混晶Al0.03Ga0.97Nより大きいとともに、GaNに格子整合する4元混晶Al0.19In0.025Ga0.785Nの方が3元混晶Al0.15Ga0.85Nより大きくなっている。
第7実施形態では、第1〜第4実施形態で用いた3元混晶AlGaNよりもバンドギャップが大きい4元混晶AlInGaNを用いることによって、第1〜第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子よりも、キャリアのオーバーフローをより抑制することができるので、キャリアのオーバーフローに伴って発光しにくくなるために発生するしきい値電流の上昇や動作電流の増大を大幅に抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができるので、第1実施形態に比べて、より素子の長寿命化を図ることができる。
また、第7実施形態では、第5および第6実施形態で用いた4元混晶AlInGaNと異なり、n型GaNコンタクト層2と同じ格子定数を有する4元混晶を用いることによって、第5および第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子よりも、格子定数差に起因する結晶欠陥の発生を大幅に抑制することができる。これにより、高品質な結晶を得ることができるとともに、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大を大幅に抑制することができる。その結果、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのをより抑制することができるので、大幅に素子の長寿命化を図ることができる。
なお、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子のその他の効果は、上記した第1実施形態と同様である。すなわち、n型光ガイド層54およびp型光ガイド層56よりもバンドギャップの大きいn型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855によって、光のしみ出しを大きくした場合にも、発光層5からn型クラッド層83およびp型クラッド層87へのキャリアのオーバーフローをn型キャリアブロック層853およびp型キャリアブロック層855により抑制することができるので、しきい値電流の上昇や動作電流の増大を抑制することができる。
また、n型クラッド層83およびp型クラッド層87よりも屈折率が小さいn型光しみ出し促進層84およびp型光しみ出し促進層86により、発光層5からn型クラッド層83およびp型クラッド層87への光のしみ出しを大きくすることができるとともに、n型クラッド層83およびp型クラッド層87よりもバンドギャップが大きいn型光しみ出し促進層84およびp型光しみ出し促進層86によりキャリアを発光層5内に強く閉じ込めることができる。これにより、光のしみ出しを大きくすることができるので、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することがでる。このため、光吸収に起因する動作電流の増大を抑制することができる。上記のように、動作電流の増大を抑制することができるので、動作電流の増大に伴う素子内部の温度上昇に起因して素子が劣化するのを抑制することができる。その結果、素子の長寿命化を図ることができる。
また、第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子では、上記のように、光のしみ出しを大きくすることができるので、第1実施形態と同様、レーザ発振時の垂直広がり角度を約16°と小さくすることができる。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1〜第7実施例では、基板とn型コンタクト層との間にバッファ層を形成していないが、本発明はこれに限らず、基板とn型コンタクト層との間にAlN、GaNまたはAlGaNからなる低温バッファ層を形成してもよい。さらに、この低温バッファ層上にアンドープのAlN、GaNまたはAlGaNからなる高温バッファ層を形成してもよい。
また、上記第7実施形態では、約1μmの膜厚を有するn型クラッド層3を形成したが、本発明はこれに限らず、n型コンタクト層2と同等の格子定数を有する4元混晶を用いるので、1.5μm以上の大きい膜厚を有するn型クラッド層を形成してもよい。この場合、n型クラッド層への光のしみ出しを、さらに大きくすることができるので、垂直方向のビーム広がり角度をさらに小さくすることができる。
また、上記第7実施形態では、Al0.19In0.025Ga0.785Nからなるn型光しみ出し促進層、p型光しみ出し促進層およびn型キャリアブロック層を形成したが、本発明はこれに限らず、これらの層を形成しなくてもよい。この場合には、第6実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、この効果に加えて、n型GaNコンタクト層2と同等の格子定数を有する4元混晶を用いるので、格子定数差に起因する結晶欠陥の発生を抑制することができる。これにより、高品質な結晶を得ることができるとともに、結晶欠陥に起因する光吸収を低減することができるので、光吸収に起因する動作電流の増大をより抑制することができる。また、n型コンタクト層2と同等の格子定数を有する4元混晶を用いるので、1.5μm以上の大きい膜厚を有するn型クラッド層を形成することができる。この場合、n型クラッド層への光のしみ出しを、さらに大きくすることができるので、垂直方向のビーム広がり角度をさらに小さくできる。
以上のように、本発明によれば、素子の長寿命化を図ることが可能な窒化物系半導体レーザ素子を提供することができる。
本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の構造を示した斜視図である。 本発明の第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 図1および図2に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。 図1〜図3に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための窒化物系半導体レーザ素子の断面図である。 図1〜図3に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための窒化物系半導体レーザ素子の断面図である。 図1〜図3に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための窒化物系半導体レーザ素子の断面図である。 図1〜図3に示した第1実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための窒化物系半導体レーザ素子の断面図である。 本発明の第2実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 本発明の第3実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。 本発明の第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 図10に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。 図10に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。 図10に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面図である。 図10に示した第4実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の製造方法を説明するための断面模式図である。 本発明の第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 図15に示した第5実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。 本発明の第5実施形態による3元混晶および4元混晶のバンドギャップと屈折率との関係を計算によって求めたグラフである。 本発明の第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 図18に示した第6実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。 本発明の第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子を示した断面図である。 図20に示した第7実施形態による窒化物系半導体レーザ素子の発光層の詳細断面図である。 本発明の第7実施形態によるGaNと格子整合する4元混晶および3元混晶のバンドギャップと屈折率との関係を計算によって求めたグラフである。
符号の説明
3、73、83 n型クラッド層(第1クラッド層)
5 発光層
7、77、87 p型クラッド層(第2クラッド層)
53、753、853 n型キャリアブロック層(キャリアブロック層)
54 n型光ガイド層(光ガイド層)
55、755、855 p型キャリアブロック層(キャリアブロック層)
56 p型光ガイド層(光ガイド層)

Claims (8)

  1. 第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、
    前記第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、
    前記発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、
    前記発光層は、
    光を発生する活性層と、
    光を閉じ込める光ガイド層と、
    前記活性層と前記光ガイド層との間に配置され、前記光ガイド層よりもバンドギャップの大きいキャリアブロック層とを含む、窒化物系半導体レーザ素子。
  2. 前記発光層と前記第1クラッド層との間、および、前記発光層と前記第2クラッド層との間の少なくとも一方に配置され、隣接する前記第1または第2クラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備える、請求項1に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
  3. 前記キャリアブロック層および前記光しみ出し促進層の少なくとも一方は、B、Al、In、GaおよびTlからなるグループより選択された1つまたは2つの元素を含む、請求項2に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
  4. 前記第1クラッド層および前記第2クラッド層の少なくとも一方は、AlとGaとInとを含む窒化物からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
  5. 第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、
    前記第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、
    前記発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、
    前記発光層は、
    光を発生する活性層と、
    前記活性層の上面側および下面側の少なくとも一方に形成された光を閉じ込めるための光ガイド層とを含み、
    前記第1クラッド層と前記第2クラッド層のうち、前記光ガイド層を有する側のクラッド層と前記光ガイド層との間に、前記光ガイド層を有する側のクラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備える、窒化物系半導体レーザ素子。
  6. 前記活性層の上面側および下面側の両方に光を閉じ込めるための光ガイド層を有している、請求項5に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
  7. 前記第1クラッド層と前記第2クラッド層のうち、前記光ガイド層を有する側と反対側のクラッド層と前記活性層との間に、前記光ガイド層を有する側と反対側のクラッド層よりも屈折率が小さく、かつ、バンドギャップが大きい光しみ出し促進層をさらに備える、請求項5に記載の窒化物系半導体レーザ素子。
  8. 第1導電型の窒化物系半導体からなる第1クラッド層と、
    前記第1クラッド層上に形成され、窒化物系半導体からなる発光層と、
    前記発光層上に形成され、第2導電型の窒化物系半導体からなる第2クラッド層とを備え、
    前記発光層への光の閉じ込め度合いを小さくすることにより、垂直方向のビーム広がり角度を20°以下にした、窒化物系半導体レーザ素子。
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